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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1324334
審判番号 不服2016-5380  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-12 
確定日 2017-02-14 
事件の表示 特願2012-224978「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-102145、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年10月10日(国内優先権主張 先の出願日平成23年10月14日)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 1月31日 審査請求・手続補正
平成27年 2月17日 拒絶理由通知
平成27年 3月 3日 意見書・手続補正
平成27年 8月21日 拒絶理由通知
平成27年 9月23日 意見書・手続補正
平成28年 3月22日 拒絶査定(以下,「原査定」という)
平成28年 4月12日 審判請求・手続補正
平成28年 9月 7日 上申書
平成28年12月 5日 補正却下決定・拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という)
平成28年12年21日 意見書・手続補正

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は,平成28年12月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められる。
1 本願発明1
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
ゲート電極と,
前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜と,
前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極と,
前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜と,
前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜と,を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜の端部と接する第2の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記第2の領域の外側で,前記ゲート絶縁膜と接する第3の領域を有し,
前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し,
前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し,
前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有し,
前記第3の絶縁膜は,前記酸素の含有量が前記窒素の含有量よりも多く,
前記第3の絶縁膜の密度は,2.32g/cm^(3)以上(ただし,2.50g/cm^(3)以上を除く)を有し,
前記第3の絶縁膜の膜厚は,600nm以上700nm以下を有することを特徴とする半導体装置。」
2 本願発明2
本願の請求項2に係る発明(以下,「本願発明2」という。)は以下のとおりである。
「【請求項2】
ゲート電極と,
前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜と,
前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極と,
前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜と,
前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜と,を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜の端部と接する第2の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記第2の領域の外側で,前記ゲート絶縁膜と接する第3の領域を有し,
前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し,
前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し,
前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有し,
前記第3の絶縁膜は,前記酸素の含有量が前記窒素の含有量よりも多く,
前記第3の絶縁膜は,温度130℃,相対湿度100%,12時間の試験後の膨潤率が4体積%以下を有し,
前記第3の絶縁膜の膜厚は,600nm以上700nm以下を有することを特徴とする半導体装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
・請求項 1,2
・引用文献等 1-5
・・・
引用文献1には,チャネルとなる酸化物半導体上に「チャネル保護膜130」(第1の絶縁膜に相当)を設けることが記載されており(段落[0241],図8),この上にさらに酸化珪素膜(第2の絶縁膜に相当)と窒化酸化珪素膜(第3の絶縁膜に相当)との積層構造を有する「絶縁膜113」を設けることに,当業者にとって特別な困難性は認められない。
引用文献1の「チャネル保護膜130」は,酸化珪素,酸化窒化珪素,窒化酸化珪素等からなることが記載されており(段落[0242]),また,「ゲート絶縁膜102」も酸化珪素,酸化窒化珪素,窒化酸化珪素等からなることが記載されているため(段落[0041]),両者を同一の材料とすることに当業者にとって特別な困難性は認められない。
また,チャネル保護膜を,チャネルとなる酸化物半導体の端部やゲート絶縁膜上にも設けることは引用文献4(図1),引用文献5(図7)に記載されているように周知技術であるため,引用文献1の「チャネル保護膜130」をチャネルとなる酸化物半導体の端部やゲート絶縁膜上にも設けることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,バリア性を有する窒化酸化珪素膜の密度,元素比,膜厚等の性質は,所望のバリア性能に応じて当業者が適宜最適化できる設計的事項に過ぎないため,密度を2.32g/cm^(3)以上(ただし,2.50g/cm^(3)以上を除く)とすることや,膜厚を500nm以上700nm以下とすることは,当業者が容易になし得たことであり,当然,その結果として,温度130℃,相対湿度100%,12時間の試験後の膨潤率が4体積%以下であるような膜を得ることも,当業者が容易になし得たことである。
また,引用文献3(Table 1)には,成膜時の酸素の圧力を変化させると,得られる膜密度が変化することが記載されており,このように当業者であれば所望の特性に応じてプロセス条件を変更して様々な性質を変化できるため,上述の性質を持つ膜を得ることに,当業者にとって特別な困難性を有しているとも認められない。
・・・
よって,請求項1,2に係る発明は,引用文献1に記載された発明,引用文献2,3に記載された技術及び引用文献4,5に記載された周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2011-139050号公報
引用文献2 特開2007-083493号公報
引用文献3 A. Brunet-Bruneau et al.,Infrared ellipsometry investigation of SiOxNy thin films on silicon,Applied Optics,1996年,Vol. 35, Issue 25,pp. 4998-5004
引用文献4 特開2011-049548号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
引用文献5 特開2011-142316号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

2 本願発明1についての判断
(1)引用文献1の記載と引用発明1
ア 引用文献1
引用文献1には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
酸化物半導体を用いる半導体装置及びその作製方法に関する。」
(イ)「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは,酸化物半導体膜中に存在する水素,水などの不純物が,閾値電圧のシフトなどの経時劣化をトランジスタにもたらす要因であることに着目した。スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には,不純物としての水素または水が多量に含まれていることが判明している。そこで,本発明の一態様では,酸化物半導体膜中の水分または水素などの不純物を低減するために,酸化物半導体膜を形成した後,酸化物半導体膜が露出した状態で,減圧雰囲気下,窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下,酸素ガス雰囲気下,又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下,好ましくは1ppm以下,好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で第1の加熱処理を行う。次いで,酸化物半導体膜中の水分,または水素などの不純物をさらに低減するために,イオン注入法またはイオンドーピング法などを用いて,酸化物半導体膜に酸素を添加した後,再び,酸化物半導体膜が露出した状態で,減圧雰囲気下,窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下,酸素ガス雰囲気下,又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下,好ましくは1ppm以下,好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で第2の加熱処理を行う。
【0011】
第1の加熱処理により,酸化物半導体膜中の水分または水素などの不純物は低減されるが,完全には取り除かれてはおらず,改善の余地が残されている。これは,酸化物半導体を構成している金属と結合している水素または水酸基が原因であると考えられる。本発明では,イオン注入法またはイオンドーピング法などを用いて,酸化物半導体膜に酸素を添加することで,酸化物半導体を構成している金属と水素の間の結合,或いは該金属と水酸基の間の結合を切断するとともに,これら水素または水酸基を酸素と反応させて,水を生成する。そして,酸素の添加後に第2の加熱処理を行うことで,強固に残存していた水素または水酸基などの不純物を,水として,脱離させやすくすることができる。」
(ウ)「【0030】
(実施の形態1)
チャネルエッチ構造のボトムゲート型のトランジスタを例に挙げ,本発明の一態様に係る半導体装置が有する,トランジスタの構造とその作製方法について説明する。
【0031】
図1(A)に示すように,基板100上にゲート電極101を形成する。
・・・
【0041】
次いで,ゲート電極101上に,ゲート絶縁膜102を形成する。ゲート絶縁膜102は,プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて,酸化珪素膜,窒化珪素膜,酸化窒化珪素膜,窒化酸化珪素膜,酸化アルミニウム膜,窒化アルミニウム膜,酸化窒化アルミニウム膜,窒化酸化アルミニウム膜,酸化ハフニウム膜または酸化タンタル膜を単層で又は積層させて形成することができる。ゲート絶縁膜102は,水分や,水素などの不純物を極力含まないことが望ましい。スパッタリング法により酸化珪素膜を成膜する場合には,ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い,スパッタガスとして酸素又は,酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
・・・
【0049】
次いで,ゲート絶縁膜102上に膜厚2nm以上200nm以下,好ましくは膜厚3nm以上50nm以下,さらに好ましくは膜厚3nm以上20nm以下の酸化物半導体膜103を形成する。酸化物半導体膜103は,酸化物半導体をターゲットとして用い,スパッタ法により成膜する。また,酸化物半導体膜103は,希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下,酸素雰囲気下,又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
・・・
【0097】
次いで,図2(A)に示すように,ゲート絶縁膜102,及び酸化物半導体膜108上に,ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成した後,該導電膜をパターニングすることで,ソース電極111,ドレイン電極112を形成する。導電膜をスパッタ法や真空蒸着法で形成すればよい。ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜の材料としては,Al,Cr,Cu,Ta,Ti,Mo,Wからから選ばれた元素,または上述した元素を成分とする合金か,上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また,Al,Cuなどの金属膜の下側もしくは上側にCr,Ta,Ti,Mo,Wなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また,Si,Ti,Ta,W,Mo,Cr,Nd,Sc,YなどAl膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が添加されているAl材料を用いることで耐熱性を向上させることが可能となる。
・・・
【0109】
なお,プラズマ処理を行った後,図2(B)に示すように,ソース電極111,ドレイン電極112及び酸化物半導体膜108を覆うように絶縁膜113を形成する。絶縁膜113は,水分や,水素などの不純物を極力含まないことが望ましく,単層の絶縁膜であっても良いし,積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。絶縁膜113に水素が含まれると,その水素の酸化物半導体膜への侵入,又は水素が酸化物半導体膜中の酸素の引き抜きが生じ,酸化物半導体膜のバックチャネル部が低抵抗化(n型化)してしまい,寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって,絶縁膜113はできるだけ水素を含まない膜になるように,成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記絶縁膜113には,バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば,バリア性の高い絶縁膜として,窒化珪素膜,窒化酸化珪素膜,窒化アルミニウム膜,または窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合,上記バリア性の高い絶縁膜よりも,窒素の比率が低い酸化珪素膜,酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を,酸化物半導体膜108に近い側に形成する。そして,窒素の比率が低い絶縁膜を間に挟んで,ソース電極111,ドレイン電極112及び酸化物半導体膜108と重なるように,バリア性を有する絶縁膜を形成する。バリア性を有する絶縁膜を用いることで,酸化物半導体膜108内,ゲート絶縁膜102内,或いは,酸化物半導体膜108と他の絶縁膜の界面とその近傍に,水分または水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また,酸化物半導体膜108に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜,酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで,バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接酸化物半導体膜108に接するのを防ぐことができる。
【0110】
本実施の形態では,スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に,スパッタ法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する,絶縁膜113を形成する。成膜時の基板温度は,室温以上300℃以下とすればよく,本実施の形態では100℃とする。
【0111】
なお,絶縁膜113を形成した後に,加熱処理を施しても良い。加熱処理は,不活性ガス雰囲気(窒素,またはヘリウム,ネオン,アルゴン等)下において,好ましくは200℃以上400℃以下,例えば250℃以上350℃以下で行う。本実施の形態では,例えば,窒素雰囲気下で250℃,1時間の加熱処理を行う。または,ソース電極111,ドレイン電極112を形成する前に,酸化物半導体膜に対して行った先の加熱処理と同様に,高温短時間のRTA処理を行っても良い。ソース電極111又はドレイン電極112の間に設けられた酸化物半導体膜108の露出領域と,酸素を含む絶縁膜113とが接して設けられた後に,加熱処理が施されることによって,酸化物半導体膜108に酸素が供与されるため,酸化物半導体膜108の絶縁膜113と接する領域を選択的に酸素過剰な状態とすることができる。その結果,化学量論的組成比を満たす構成とすることが可能であり,ゲート電極101と重なるチャネル形成領域はI型となり,トランジスタの電気特性の向上および,電気特性のばらつきを軽減することができる。この加熱処理を行うタイミングは,絶縁膜113の形成後であれば特に限定されず,他の工程,例えば樹脂膜形成時の加熱処理や,透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで,工程数を増やすことなく行うことができる。
【0112】
以上の工程でトランジスタ114が形成される。」
(エ)「【0240】
(実施の形態3)
本実施の形態では,チャネル保護構造のボトムゲート型のトランジスタを例に挙げ,半導体装置の構造及び作製方法について説明する。なお,実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分,及び工程は,実施の形態1と同様に行うことができるため,繰り返しの説明は省略する。
【0241】
実施の形態1の図1(E)に示すように,第2の加熱処理の工程まで,同様に行う。次いで,図8(A)に示すように,酸化物半導体膜108内のゲート電極101と重なる領域,すなわちチャネル形成領域と重なるように,酸化物半導体膜108上にチャネル保護膜130を形成する。チャネル保護膜130を設けることによって,酸化物半導体膜108のチャネル形成領域となる部分に対する,後の工程時におけるダメージ(エッチング時のプラズマやエッチング剤による膜減りなど)を防ぐことができる。従ってトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0242】
チャネル保護膜130には,酸素を含む無機材料(酸化珪素,酸化窒化珪素,窒化酸化珪素など)を用いることができる。チャネル保護膜130は,プラズマCVD法や熱CVD法などの気相成長法やスパッタリング法を用いて形成することができる。チャネル保護膜130は成膜後にエッチングにより形状を加工する。ここでは,スパッタ法により酸化珪素膜を形成し,フォトリソグラフィによるマスクを用いてエッチング加工することでチャネル保護膜130を形成する。
【0243】
なお,チャネル保護膜130を形成した後に,加熱処理を施しても良い。加熱処理は,不活性ガス雰囲気(窒素,またはヘリウム,ネオン,アルゴン等)下において,好ましくは200℃以上400℃以下,例えば250℃以上350℃以下)で行う。本実施の形態では,例えば,窒素雰囲気下で250℃,1時間の加熱処理を行う。酸化物半導体膜108のチャネル形成領域となる部分と,酸素を含む絶縁膜であるチャネル保護膜130とが接して設けられた後に,加熱処理が施されることによって,酸化物半導体膜108に酸素が供与されるため,酸化物半導体膜108のチャネル保護膜130と接する領域を選択的に酸素過剰な状態とすることができる。その結果,酸化物半導体膜108の少なくともチャネル保護膜130と接する領域において,第2の加熱処理により酸素欠損が発生していたとしても,ドナーとなる酸素欠損を低減して化学量論的組成比を満たす構成とすることが可能であり,ゲート電極101と重なるチャネル形成領域はi型化または実質的にi型化となり,トランジスタの電気特性の向上および,電気特性のばらつきを軽減することができる。この加熱処理を行うタイミングは,チャネル保護膜130の形成後であれば特に限定されず,他の工程,例えば樹脂膜形成時の加熱処理や,透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで,工程数を増やすことなく行うことができる。
【0244】
次いで,図8(B)に示すように,酸化物半導体膜108上に,ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成した後,該導電膜をエッチング等により所望の形状に加工することで,ソース電極131,ドレイン電極132を形成する。ソース電極131,ドレイン電極132の材料,膜厚及び構造と,作製方法については,実施の形態1に示したソース電極111,ドレイン電極112についての記載を参照すれば良い。
・・・
【0247】
なお,プラズマ処理を行った後,図8(C)に示すように,ソース電極131,ドレイン電極132,チャネル保護膜130及び酸化物半導体膜108を覆うように,絶縁膜133を形成する。絶縁膜133の材料,膜厚及び構造と,作製方法については,実施の形態1に示した絶縁膜113についての記載を参照すれば良い。
【0248】
なお,絶縁膜133を形成した後に,加熱処理を施しても良い。加熱処理は,不活性ガス雰囲気(窒素,またはヘリウム,ネオン,アルゴン等)下において,好ましくは200℃以上400℃以下,例えば250℃以上350℃以下)で行う。本実施の形態では,例えば,窒素雰囲気下で250℃,1時間の加熱処理を行う。
【0249】
以上の工程でトランジスタ140が形成される。」
(オ)図8(c)には,ゲート電極101と,酸化物半導体膜108が重なる領域を有すること,が記載されていると認められる。
イ 引用発明1
前記アより,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ゲート電極と,
ゲート電極上のゲート絶縁膜と,ゲート絶縁膜上の酸化物半導体膜と,
チャネル形成領域と重なるような酸化物半導体膜上のチャネル保護膜と,
酸化物半導体膜上のソース電極と,
酸化物半導体膜上のドレイン電極と,
ソース電極,ドレイン電極,チャネル保護膜及び酸化物半導体膜を覆う絶縁膜と,
チャネル保護膜は,ゲート絶縁膜と同じ酸化珪素を用い,
絶縁膜は,酸化物半導体膜に近い側に形成した酸化珪素膜とバリア性の高い窒化酸化珪素膜の積層された絶縁膜である,
半導体装置。」
(2)引用文献2の記載と引用発明2
ア 引用文献2
引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。
「【0021】
《ガスバリアフィルム》
本発明のガスバリアフィルムは,透明な可撓性支持体基板と,無機薄膜からなる最外ガスバリア層(A)と,金属窒化物または金属炭化物からなる無機薄膜保護層(D)とをこの順で有し,且つ,前記可撓性支持体基板と前記最外ガスバリア層(A)との間に,少なくとも1層の中間層(B)と,少なくとも1層の無機薄膜からなる中間ガスバリア層(C)と,を有するガスバリアフィルムであって,
前記無機薄膜保護層(D)が前記最外ガスバリア層(A)の表面に接するように設けられており,且つ,前記無機薄膜保護層(D)の水素および酸素の含有量が,前記無機薄膜保護層(D)を構成する前記金属窒化物または金属炭化物の金属原子に対してそれぞれ20原子%以下であることを特徴とする。
本発明のガスバリアフィルムは,無機薄膜保護層(D)を最外ガスバリア層(A)上に積層することにより,初期の高バリア性能と経時でのバリア性能の安定性とを両立させることができる。
本発明のガスバリアフィルムは,以上のような構成とすることで40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率を,0.01g/m^(2)/day以下とすることができ,更に好ましくは0.005g/m^(2)/day以下とすることができる。
本発明のガスバリアフィルムは,透明な可撓性支持体基板上にガスバリア層や無機薄膜保護層に加えて,吸湿性層や帯電防止層,導電層等を設けることができる。
・・・
【0026】
(ガスバリア層)
本発明における「無機薄膜からなる最外(中間)ガスバリア層」とは,無機材料で構成されるガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜である層を意味し,例えば,金属化合物からなる薄膜(金属化合物薄膜)が挙げられる。ここで,本発明において「最外ガスバリア層(A)」とは,可撓性支持体基板の同じ側に設けられるガスバリア層のうち可撓性支持体基板から最も遠い部位に積層される層であり,該最外ガスバリア層(A)上に無機薄膜保護層(D)が設けられる。また,中間ガスバリア層(C)とは,最外ガスバリア層と可撓性支持体基板との間に設けられるガスバリア層であり,複数層設けられていてもよい。本明細書において,単に「ガスバリア層」と称した場合には,最外ガスバリア層(A)と中間ガスバリア層(C)との両者を含むものする。
【0027】
前記ガスバリア層の形成については,目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。前記形成方法としては,例えば,スパッタリング法,真空蒸着法,イオンプレーティング法,プラズマCVD法などが適しており,具体的には特許登録第3400324号公報,特開2002-322561号公報,特開2002-361774号公報等に記載の形成方法を採用することができる。
前記ガスバリア層を構成する無機薄膜に含まれる成分は,前記性能を満たすものであれば特に限定されないが,例えば,Si,Al,In,Sn,Zn,Ti,Cu,CeおよびTa等からなる群から選ばれた1種以上の金属を含む酸化物,窒化物もしくは酸化窒化物を用いることができ,好ましくはSi,Al,In,Sn,TiおよびZnからなる群から選ばれた少なくとも1つ以上の金属から選ばれる。特に最外ガスバリア層(A)は,前記金属の窒化物または酸化窒化物で構成される無機薄膜からなることが好ましい。
前記ガスバリア層は,ガス分子の透過を抑制しうる緻密な構造の薄膜であるので,薄膜の膜密度が2.6g/cm^(3)?7.0g/cm^(3)の範囲にあることが好ましく,2.6g/cm^(3)?6.0g/cm^(3)の範囲にあるとより好ましい。薄膜の膜密度の測定は,例えばSiウエハー上に形成した薄膜のX線反射率測定から算出することができる。
【0028】
また,前記ガスバリア層の厚みに関しても特に限定されないが,厚みが厚すぎると曲げ応力によるクラックの恐れがあり,薄すぎると膜が島状に分布するため,いずれもガスバリア性が悪くなる傾向がある。このため,各ガスバリア層の厚みは,それぞれ5nm?1000nmの範囲内であることが好ましく,さらに好ましくは10nm?1000nmであり,最も好ましくは10nm?200nmである。
また,2層以上の中間ガスバリア層(C)は,各々が同じ組成であってもよいし,異なる組成であってもよく,特に制限はされない。
・・・
【0030】
また,前記ガスバリア層として珪素酸化窒化物であるSiO_(x)N_(y)を用いる場合,密着性向上を重視するのであれば,酸素リッチの膜とすることが好ましく,具体的には1<x<2および,0<y<1を満足することが好ましい。一方,ガスバリア性の向上を重視する場合には,窒素リッチの膜とすることが好ましく,具体的には0<x<0.8および0.8<y<1.3を満足することが好ましい。」
イ 引用発明2
前記アより,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「透明な可撓性支持体基板と,無機薄膜からなる最外ガスバリア層と,金属窒化物または金属炭化物からなる無機薄膜保護層とをこの順で有し,且つ,前記可撓性支持体基板と前記最外ガスバリア層との間に,少なくとも1層の中間層と,少なくとも1層の無機薄膜からなる中間ガスバリア層と,を有するガスバリアフィルムであって,最外ガスバリア層及び中間ガスバリア層は,薄膜の膜密度が2.6g/cm^(3)?7.0g/cm^(3)の範囲にあり,酸素リッチの珪素酸化窒化物を用いる膜とすること。」
(3)引用文献3の記載と引用発明3
ア 引用文献3
引用文献3には,図面ともに,次の記載がある。(訳は当審で作成した。)
「2. Experimental
SiO_(x)N_(y) films were deposited on Si wafers at the Laboratorire Couches Minces pour l'Optique, Grenoble, France, by dual ion-beam sputtering(DIBS).
...
The composition of the films is determined by RBS(Rutherford backscattering spectrometry). Table1 indicates, for the studied set of SiO_(x)N_(y) films, the oxygen partial pressure during sputtering, the stoichiometry and the density of the films deduced by RBS, and the thickness and the value of the refractive index at 515nm obtained by UV-visible ellipsometry.
...
Table1. Process Parameters of Six SiO_(x)N_(y) Films
sample O_(2)pressure(SCCM) RBS Si:O:N Density(g/cm^(3)) ...
1 20 ...
2 15 1:1.38:0.49 2.50 ...
3 10 1:1.12:0.71 2.63 ...
4 7.5 1:0.96:0.79 2.69 ...
5 4 1:0.52:0.95 7.93 ...
6 0 ...」
(訳:2.実験
SiO_(x)N_(y)膜が,シリコンウエハーの上に,2重イオンビームスパッタリングにより,フランス,グレノーブルのLCMO研究所において,堆積された。
・・・
膜の組成は,ラザフォード後方散乱分光法(RBS)により決定する。表1は,分析されたSiO_(x)N_(y)膜について,スパッタリング中の酸素分圧,RBSにより導かれた膜の化学量論比及び密度,厚さ,紫外光?可視光の偏光解析法により得られた515nmにおける屈折率の値を示す。
・・・
表1 6枚のSiO_(x)N_(y)膜の処理パラメータ
試料 酸素分圧(SCCM) RBS Si:O:N 密度(g/cm^(3))
(略))
イ 引用発明3
前記アより,引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「所定の酸素分圧下の2重イオンビームスパッタリングにより,酸素リッチな密度2.63及び2.69g/cm^(3)のSiO_(x)N_(y)膜が得られること。」
(4)周知技術
ア 引用文献4
引用文献4には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0050】
(実施の形態1)
本実施の形態では,半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を図1,及び図2を用いて説明する。
【0051】
また,図1(A)は画素に配置されるチャネル保護型の薄膜トランジスタ448の平面図であり,図1(B)は図1(A)の線D1-D2における断面図及び図1(A)の線D5?D6における断面図である。また,図1(C)は,図1(A)の線D3-D4における断面図である。なお,図2(E)は図1(B)と同一である。
【0052】
画素に配置される薄膜トランジスタ448はチャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)の薄膜トランジスタであり,絶縁表面を有する基板400上に,ゲート電極層421a,ゲート絶縁層402,チャネル形成領域423を含む酸化物半導体層442,チャネル保護層として機能する酸化物絶縁層426a,ソース電極層425a,及びドレイン電極層425bを含む。また,薄膜トランジスタ448を覆い,酸化物絶縁層426a,ソース電極層425a,及びドレイン電極層425bに接して絶縁層428,保護絶縁層403,及び平坦化絶縁層404が積層して設けられている。平坦化絶縁層404上にはドレイン電極層425bと接する画素電極層427が設けられており,薄膜トランジスタ448と電気的に接続している。
・・・
【0055】
また,ゲート配線とソース配線の交差する配線交差部は,寄生容量の低減を図るため,ゲート電極層421bとソース電極層425aとの間にゲート絶縁層402と酸化物絶縁層426bが設けられている。なお,チャネル形成領域423と重なる領域の酸化物絶縁層426aと,チャネル形成領域423と重ならない領域の酸化物絶縁層426bとを異なる符号で示しているが,同じ材料,同じ工程で形成される層である。
・・・
【0081】
次いで,ゲート絶縁層402,及び酸化物半導体層上に,スパッタ法で酸化物絶縁膜を形成した後,第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し,選択的にエッチングを行って酸化物絶縁層426a,426bを形成し,その後レジストマスクを除去する。この段階で,酸化物半導体層は,酸化物絶縁層と接する領域が形成され,この領域のうち,ゲート電極層とゲート絶縁層を介して重なり且つ酸化物絶縁層426aと重なる領域がチャネル形成領域となる。また,酸化物半導体層の周縁及び側面を覆う酸化物絶縁層426bと重なる領域も形成される。
【0082】
酸化物絶縁膜は,少なくとも1nm以上の膜厚とし,スパッタリング法など,酸化物絶縁膜に水,水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。本実施の形態では,酸化物絶縁膜として膜厚300nmの酸化珪素膜をスパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は,室温以上300℃以下とすればよく,本実施の形態では室温とする。酸化珪素膜のスパッタリング法による成膜は,希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下,酸素雰囲気下,または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下において行うことができる。また,ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素ターゲットを用いることができる。例えば,珪素ターゲットを用いて,酸素,及び窒素雰囲気下でスパッタリング法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁膜は,水分や,水素イオンや,OH-などの不純物を含まず,これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い,代表的には酸化珪素膜,窒化酸化珪素膜,酸化アルミニウム膜,または酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。」
(イ)図1(B)には,酸化物絶縁膜426bは,酸化物半導体膜442の端部と接する領域を有し,該領域の外側でゲート絶縁層402と接すること,が記載されていると認められる。
イ 引用文献5
引用文献5には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0128】
図7(D)に示すトランジスタ153は,図6に示す表示装置の画素部に適用された可視光を透過するボトムゲート型のトランジスタと同じ構成を有する。
【0129】
なお,図7(D)には,トランジスタ153と異なる構成を有するが,トランジスタ153と並行して同一基板上に作製可能なトランジスタ154も例示されている。
【0130】
トランジスタ154は,ゲート配線111cと同一の材料からなるゲート電極111dを有し,信号線116aと同一の材料で形成された第3の電極116c,及び第4の電極116dを有する。また,トランジスタ154は,酸化物半導体層113cのチャネル形成領域上に絶縁層107cを有し,絶縁層107cはチャネル保護層として機能する。
・・・」
(イ)図7(d)には,トランジスタ154において,絶縁層107は,酸化物半導体層113cの端部と接する領域を有し,該領域の外側で,ゲート電極111d上の第1の絶縁層102と接すること,が記載されていると認められる。
ウ 周知技術
前記ア及びイより,次の技術的事項は周知技術と認められる。
「トランジスタにおいて,チャネル保護層として機能する絶縁層は,酸化物半導体層の端部と接する領域を有し,該領域の外側で,ゲート絶縁層と接すること。」
(5)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「酸化物半導体膜」は,「ゲート電極上のゲート絶縁膜上」にあり,前記(1)ア(オ)と合わせれば,本願発明1の「前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜」に相当すると認められる。
イ 引用発明1の「チャネル形成領域と重なるような酸化物半導体膜上のチャネル保護膜」は,本願発明1の「前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜」に相当し,かつ,本願発明1の「前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し」を満たすと認められる。そして,引用発明1の「チャネル保護膜は,ゲート絶縁膜と同じ酸化珪素を用い」るから,本願発明1の「前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し」を満たすと認められる。
ウ 引用発明1の「酸化物半導体膜上のソース電極」及び「酸化物半導体膜上のドレイン電極」は,それぞれ,本願発明1の「前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極」及び「前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極」に相当すると認められる。
エ 引用発明1の「ソース電極,ドレイン電極,チャネル保護膜及び酸化物半導体膜を覆う絶縁膜」のうち「酸化物半導体膜に近い側に形成した酸化珪素膜」は,本願発明1の「前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜」に相当し,本願発明1の「前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し」を満たし,さらに,前記(1)ア(ウ)【0111】より,本願発明1の「前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し」をも満たすと認められる。
オ 引用発明1の「バリア性の高い窒化酸化珪素膜」は「酸化物半導体膜に近い側に形成した酸化珪素膜と積層された」ものであるから,本願発明1の「前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜」に相当すると認められる。そして,本願発明1の「前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有し」を満たすと認められる。
カ してみると,本願発明1と引用発明1とは,下記キの点で一致しているが,下記クの点で相違すると認められる。
キ 一致点
「ゲート電極と,
前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜と,
前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極と,
前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜と,
前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜と,を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し,
前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し,
前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し,
前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有する,
ことを特徴とする半導体装置。」
ク 相違点
(ア)相違点1
本願発明1においては「前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜の端部と接する第2の領域を有し,前記第1の絶縁膜は,前記第2の領域の外側で,前記ゲート絶縁膜と接する第3の領域を有」するのに対し,引用発明1においては「チャネル保護膜」は酸化物半導体膜の端部と接する領域及び該領域の外側でゲート絶縁膜と接する領域を有していない点。
(イ)相違点2
本願発明1においては「前記第3の絶縁膜は,前記酸素の含有量が前記窒素の含有量よりも多く,前記第3の絶縁膜の密度は,2.32g/cm^(3)以上(ただし,2.50g/cm^(3)以上を除く)を有し,前記第3の絶縁膜の膜厚は,600nm以上700nm以下を有する」(以下,「本願限定1」という。)のに対し,引用発明1においては「バリア性の高い窒化酸化珪素膜」は本願限定1を満たさない点。
(6)判断
相違点2について検討する。半導体装置の第3の絶縁膜において本願限定1を満たすことは,引用文献1ないし5のいずれにも,開示も示唆もない。
そして,本願発明1は本願限定1を満たすことにより,特性の変動の少ないトランジスタが得られる(本願明細書段落【0209】ないし【0224】)という,格別の有利な効果を奏するものと認められる。そして,この有利な効果についても,引用文献1ないし5のいずれにも,開示も示唆もないことから,当業者が予測できるものではない。
してみると,相違点2に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることではない。
(7)小括
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明2についての判断
(1)引用発明1ないし3及び周知技術
前記2(1)ないし(4)のとおり,引用文献1ないし3には,それぞれ引用発明1ないし3が記載されているものと認められ,引用文献4及び5より周知技術が認められる。
(2)本願発明2と引用発明1との対比
前記2(5)アないしオと同様であるから,本願発明2と引用発明1とは,下記アの点で一致しているが,下記イの点で相違すると認められる。
ア 一致点
「ゲート電極と,
前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜と,
前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極と,
前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜と,
前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜と,を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し,
前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し,
前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し,
前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有し,
ことを特徴とする半導体装置。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明2においては「前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜の端部と接する第2の領域を有し,前記第1の絶縁膜は,前記第2の領域の外側で,前記ゲート絶縁膜と接する第3の領域を有」するのに対し,引用発明1においては「チャネル保護膜」は酸化物半導体膜の端部と接する領域及び該領域の外側でゲート絶縁膜と接する領域を有していない点。
(イ)相違点2
本願発明2においては「前記第3の絶縁膜は,前記酸素の含有量が前記窒素の含有量よりも多く,前記第3の絶縁膜は,温度130℃,相対湿度100%,12時間の試験後の膨潤率が4体積%以下を有し,前記第3の絶縁膜の膜厚は,600nm以上700nm以下を有する」(以下,「本願限定2」という。)のに対し,引用発明2においては「バリア性の高い窒化酸化珪素膜」は本願限定2を満たさない点。
(3)判断
相違点2について検討する。半導体装置の第3の絶縁膜において本願限定2を満たすことは,引用文献1ないし5のいずれにも,開示も示唆もない。
そして,本願発明2は本願限定2を満たすことにより,特性の変動の少ないトランジスタが得られる(本願明細書段落【0209】ないし【0224】)という,格別の有利な効果を奏するものと認められる。そして,この有利な効果についても,引用文献1ないし5のいずれにも,開示も示唆もないことから,当業者が予測できるものではない。
してみると,相違点2に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることではない。
(4)小括
以上のとおりであるから,本願発明2は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 まとめ
したがって,本願の請求項1及び2に係る発明は,いずれも引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願発明について
平成28年4月12日付けの手続補正は,本拒絶理由通知と同日付けの補正却下決定により,却下された。
したがって,本願の請求項1及び2に係る発明(以下,まとめて「本願発明」という。)は,それぞれ平成27年9月23日付け手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認める。
(2)「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」について
ア 本願発明の課題について,本願の発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,特許文献2に開示されているように,酸化物半導体を用いたトランジスタでは,酸化物半導体膜への水素原子の混入が特性に悪影響を与えることが知られている。酸化物半導体を用いたトランジスタに対する水素原子の悪影響は,非晶質シリコンを用いたトランジスタに対して水素原子が好影響を与えるのと対照的であり,かつ深刻である。 【0005】
製造後のトランジスタを有する半導体装置に混入しうる,水素原子を有する物質としては,第一に大気中に大量に存在する水が挙げられる。そのため酸化物半導体を用いた半導体装置への,水の混入を低減することが要求されている。
【0006】
そこで本発明の一態様は,酸化物半導体を用いた半導体装置に混入する,することを目的の一とする。」
よって,本願発明の課題は「酸化物半導体を用いた半導体装置に混入する,水素原子を有する物質,特に水を低減し,半導体装置の特性への悪影響を防ぐ」ところにあると認められる。
イ そこで,前記の課題にかんがみて,半導体装置の特性との関係で発明の構成について記載されている発明の詳細な説明の個所は,段落【0209】ないし【0224】であり(以下,「本個所」という。),他にはない。
本個所には,第2の保護膜112として,厚さ600nmの酸化窒化シリコン膜を用いて(段落【0211】),酸化窒化シリコン膜の密度が2.32g/cm^(3)以上又は膨潤率が4体積%以下のとき,特性の変動の少ないトランジスタとなる(段落【0223】)ことが記載されている。
ウ してみると,発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」は,「保護膜として厚さ600nmの酸化窒化シリコン膜を用いて,酸化窒化シリコン膜の密度が2.32g/cm^(3)以上又は膨潤率が4体積%以下のとき」と認められる。
エ なお,発明の詳細な説明の段落【0113】には,「第2の保護膜112の厚さは,十分に水の混入を低減し,かつ生産性よく形成するため,500nm以上700nm以下が好ましい。」と記載されているが,半導体装置の特性に与える影響が記載されていないので,この厚さの全範囲において発明の課題が解決できるかどうかは,当業者にとって不明といわざるをえない。
(3)判断
本願発明は,「第3の絶縁膜の膜厚は,500nm以上700nm以下を有する」点で前記「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものである。
(4)まとめ
したがって,本願の請求項1及び2に記載された発明は,いずれも発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるから,本願の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。

2 当審拒絶理由についての判断
平成28年12月21日付け手続補正書によって,本願の特許請求の範囲は次のように補正された。(下線は補正個所を示すものとして,当審で付加した。)
「【請求項1】
ゲート電極と,
前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜と,
前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極と,
前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜と,
前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜と,を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜の端部と接する第2の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記第2の領域の外側で,前記ゲート絶縁膜と接する第3の領域を有し,
前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し,
前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し,
前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有し,
前記第3の絶縁膜は,前記酸素の含有量が前記窒素の含有量よりも多く,
前記第3の絶縁膜の密度は,2.32g/cm^(3)以上(ただし,2.50g/cm^(3)以上を除く)を有し,
前記第3の絶縁膜の膜厚は,600nm以上700nm以下を有することを特徴とする
半導体装置。
【請求項2】
ゲート電極と,
前記ゲート電極と,ゲート絶縁膜を介して重なる領域を有する酸化物半導体膜と,
前記酸化物半導体膜上の,第1の絶縁膜と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ソース電極と,
前記酸化物半導体膜と電気的に接続する,ドレイン電極と,
前記第1の絶縁膜及び前記酸化物半導体膜上の,第2の絶縁膜と,
前記第2の絶縁膜上の,第3の絶縁膜と,を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜のチャネル形成領域と接する第1の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記酸化物半導体膜の端部と接する第2の領域を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記ゲート絶縁膜と同じ材料を有し,
前記第1の絶縁膜は,前記第2の領域の外側で,前記ゲート絶縁膜と接する第3の領域を有し,
前記第2の絶縁膜は,酸素と,シリコンとを有し,
前記第2の絶縁膜は,加熱により,酸素を放出する機能を有し,
前記第3の絶縁膜は,酸素と,窒素と,シリコンとを有し,
前記第3の絶縁膜は,前記酸素の含有量が前記窒素の含有量よりも多く,
前記第3の絶縁膜は,温度130℃,相対湿度100%,12時間の試験後の膨潤率が4体積%以下を有し,
前記第3の絶縁膜の膜厚は,600nm以上700nm以下を有することを特徴とする
半導体装置。」
そして,本願明細書における,本願に係る発明の課題に関する記載(【0004】ないし【0006】),及び課題解決手段に関する記載(【0209】ないし【0224】)より,補正後の請求項1及び2に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものと認められる。
よって,当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2012-224978(P2012-224978)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 市川 武宜小堺 行彦宇多川 勉篠原 功一  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 半導体装置  
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