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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1324368
審判番号 不服2015-17612  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-28 
確定日 2017-01-25 
事件の表示 特願2010-523241「広スペクトル光源を有する選別デバイスとその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日国際公開、WO2009/030004、平成22年12月 9日国内公表、特表2010-538278〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年9月3日(パリ条約による優先権主張:2007年9月3日 EP)を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成25年4月26日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月7日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに平成26年6月25日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、平成27年1月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月19日付けで平成27年1月5日に提出された手続補正書による補正について却下の決定がなされるとともに、却下の決定と同日付けで拒絶査定がなされ、同拒絶査定の謄本は、同年5月26日に請求人に送達された。
これに対して、同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正書の提出がなされたものである。

第2 平成27年9月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年9月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正するものであって、上記第1の手続の経緯において説示したように、平成27年1月5日に提出された手続補正書による補正は却下されていることから、平成25年11月7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲を、平成27年9月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の記載のとおりに補正をするものである。

(1)平成25年11月7日提出の手続補正書の特許請求の範囲の記載
【請求項1】
広帯域スペクトルを有する高い空間コヒーレンシー光ビームを生成する放射源と、検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけるための選別デバイスであって、前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され、検出手段が、前記散乱光及び/又は反射光を検出するために設けられ、前記検出手段が前記製品を特徴づけるための処理ユニットと協働する、デバイスにおいて、前記放射源がスーパコンティニューム放射源を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
5nmと30nmの間である帯域幅を有する光ビームが、前記検出手段に向かって通過することを可能にする、少なくとも1つの帯域幅フィルタが設けられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記帯域幅フィルタが、10nm?20nmである帯域幅を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つのスペクトル・バンド・ブロック・フィルタが、前記スーパコンティニューム放射源と前記検出ゾーンとの間の前記光ビームの光路の中に設けられ、それにより、前記スペクトル・バンド・ブロック・フィルタが、前記フィルタによりブロックされたスペクトル帯域の外に位置する波長を有する光の、前記製品上への衝突による蛍光発光によって生成される光に相当する波長を有する前記スーパコンティニューム放射源からの光が前記検出手段に到達することを、実質的に防止する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記検出手段が、例えばダイクロイック・ミラーなど、選択されたスペクトル成分をフィルタリングする手段を備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記スーパコンティニューム放射源が、スーパコンティニューム放射を生成するためのフォトニック結晶ファイバを備える、請求項1から5までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記フォトニック結晶ファイバがエンドレス・シングル・モード・ファイバである、請求項1から6までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記光ビームが、エンドレス・シングル・モード・ファイバにより、前記放射源から、前記ビームを前記検出ゾーンに導くための焦点調節システムに向かって誘導される、請求項1から7までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、回転するポリゴン・ミラーなどの走査要素を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コンティニューム放射源の前記スペクトルが、1100nmと1600nmの間の波長の光を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コンティニューム放射源の前記スペクトルが、1000nmと3000nmの間の波長の光を含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コンティニューム放射源の前記スペクトルが、350nmと3000nmの間の波長の光を含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
製品の流れを検査、及び選別する方法であって、少なくとも1本の高い空間コヒーレンシー光ビームが前記製品の流れに向けて誘導され、前記製品が検出ゾーンを通って特定の方向に移動し、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に動かされ、前記製品の経路を横断し、それにより、前記光ビームが前記製品により少なくとも部分的に散乱及び/又は反射され、前記製品が、測定された散乱光及び/又は反射光に基づいて選別される、方法において、前記光ビームがスーパコンティニューム放射源により生成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記光ビームが、光ファイバの中で生成されるスーパコンティニュームである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記散乱光及び/又は反射光の選択されたスペクトル成分だけが検出される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記光ビームの選択されたスペクトル成分だけが、前記検出ゾーンの中で前記製品上に衝突する、請求項13から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
干渉現象が前記製品の表面で生成される帯域幅より大きい帯域幅を有する光ビームが、前記検出手段に向かって通過することを可能にする、少なくとも1つの帯域幅フィルタが前記スーパコンティニューム放射源と前記検出ゾーンとの間に設けられる、請求項13から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記帯域幅フィルタは、5nmと30nmの間である帯域幅を有する光ビームが、前記検出手段に向かって通過することを可能にする、請求項17に記載の方法。

(2)平成27年9月28日提出の手続補正書の特許請求の範囲の記載(下線は、本件補正による補正箇所を示す。)
【請求項1】
広帯域スペクトルを有する光ビームを生成する放射源と、検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけて選別するための選別デバイスであって、前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され、検出手段が、前記散乱光及び/又は反射光を検出するために設けられ、前記検出手段が前記製品を特徴づけるための処理ユニットと協働し、除去システムが製品流れからの望ましくない製品又は異物を取り除くために設けられるデバイスにおいて、前記放射源がスーパコンティニューム放射源を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
干渉現象が前記製品の表面で生成される帯域幅より大きい帯域幅を有する光ビームが、前記検出手段に向かって通過することを可能にする、少なくとも1つの帯域幅フィルタが設けられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
5nmと30nmの間である帯域幅を有する光ビームが、前記検出手段に向かって通過することを可能にする、少なくとも1つの帯域幅フィルタが設けられる、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記帯域幅フィルタが、10nm?20nmである帯域幅を有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
少なくとも1つのスペクトル・バンド・ブロック・フィルタが、前記スーパコンティニューム放射源と前記検出ゾーンとの間の前記光ビームの光路の中に設けられ、それにより、前記スペクトル・バンド・ブロック・フィルタが、前記フィルタによりブロックされたスペクトル帯域の外に位置する波長を有する光の、前記製品上への衝突による蛍光発光によって生成される光が前記検出手段に到達することを、実質的に防止する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記検出手段が、例えばダイクロイック・ミラーなど、選択されたスペクトル成分をフィルタリングする手段を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記スーパコンティニューム放射源が、スーパコンティニューム放射を生成するためのフォトニック結晶ファイバを備える、請求項1から6までのいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記フォトニック結晶ファイバがエンドレス・シングル・モード・ファイバである、請求項1から7までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記光ビームが、エンドレス・シングル・モード・ファイバにより、前記放射源から、前記ビームを前記検出ゾーンに導くための焦点調節システムに向かって誘導される、請求項1から8までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、回転するポリゴン・ミラーなどの走査要素を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コンティニューム放射源の前記スペクトルが、1100nmと1600nmの間の波長の光を含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コンティニューム放射源の前記スペクトルが、1000nmと3000nmの間の波長の光を含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記コンティニューム放射源の前記スペクトルが、350nmと3000nmの間の波長の光を含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
製品の流れを選別する方法であって、少なくとも1本の光ビームが前記製品の流れに向けて誘導され、前記製品が検出ゾーンを通って特定の方向に移動し、それにより、前記光ビームが前記製品により少なくとも部分的に散乱及び/又は反射され、前記製品が、測定された散乱光及び/又は反射光に基づいて選別され、望ましくない製品又は異物が製品流れから取り除かれる方法において、前記光ビームがスーパコンティニューム放射源により生成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記光ビームが、光ファイバの中で生成されるスーパコンティニュームである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記散乱光及び/又は反射光の選択されたスペクトル成分だけが検出される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記光ビームの選択されたスペクトル成分だけが、前記検出ゾーンの中で前記製品上に衝突する、請求項14から16までのいずれか一項に記載の方法。

2 補正の適否についての検討
上記1によれば、本件補正は、請求項1についての補正(以下、「本件補正事項1」という。)、請求項2についての補正(以下、「本件補正事項2」という。)、及び、請求項14についての補正(以下、「本件補正事項3」という。)をその一部に含むものである。
(1)本件補正事項1について
ア 本件補正事項1は、請求項1を補正するものであって、具体的には、(a)本件補正前の請求項1の発明特定事項である「広帯域スペクトルを有する高い空間コヒーレンシー光ビームを生成する放射源」を「広帯域スペクトルを有する光ビームを生成する放射源」とする補正、(b)本件補正前の請求項1の発明特定事項である「製品の流れの中で製品を特徴づけるための選別デバイス」を「製品の流れの中で製品を特徴づけて選別するための選別デバイス」とする補正、及び(c)本件補正前の請求項1の発明特定事項である「前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され、検出手段が、前記散乱光及び/又は反射光を検出するために設けられ、前記検出手段が前記製品を特徴づけるための処理ユニットと協働する、デバイス」を「前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され、検出手段が、前記散乱光及び/又は反射光を検出するために設けられ、前記検出手段が前記製品を特徴づけるための処理ユニットと協働し、除去システムが製品流れからの望ましくない製品又は異物を取り除くために設けられるデバイス」とする補正を含むものである。
イ 上記各補正事項のうち、上記(a)の補正は、「放射源」が生成する「光ビーム」を「広帯域スペクトルを有する高い空間コヒーレンシー」なものから、「広帯域スペクトルを有する」ものに変更するもの、すなわち、「高い空間コヒーレンシー」という発明特定事項を削除するものであるが、原査定の拒絶の理由において、「高い空間コヒーレンシー」が不明確と指摘したことに対応した補正であると認められるから、上記(a)の補正は、特許法第17条の2第5項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
ウ 上記(b)の補正は、「選別デバイス」がもつ機能として「製品を選別する」ことをさらに特定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
エ 上記(c)の補正は、本件補正前の「デバイス」が、「散乱光及び/又は反射光を検出するために設けられ」、「製品を特徴付けるための処理ユニットと協働する」「検出手段」を備えるものであることが特定されていたのに対して、本件補正後は、「デバイス」に、「除去システム」が「製品流れからの望ましくない製品又は異物を取り除くために設けられ」ていることが新たに追加して特定されることとなったから、一応は、当該補正は、請求項1に係る発明を減縮するものということはできる。
しかしながら、この「デバイス」に追加された「除去システム」については、本件補正前の請求項1において何ら特定されておらず、また、本件補正前の請求項1において、その「デバイス」が「望ましくない製品」や「異物」を取り除く機能を備えるものであることや、そのような作用を奏するものであることについても特定されていないことからすれば、上記(c)の補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものと評価することはできないから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しないことは明らかである。
そして、当該補正が同項第3号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものに該当するものともいえないし、原査定の理由において、「デバイス」が不明確であると指摘した事実はないから、同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものとすることもできない。

(2)本件補正事項2について
上記1の(1)及び(2)によれば、本件補正後の請求項1ないし13に係る発明は、いずれも「デバイス」という物の発明であるところ、その請求項1、請求項3ないし13は、それぞれ、本件補正前の請求項1、請求項2ないし12に対応するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の「デバイス」という物の発明においては、本件補正後の請求項2に対応するものは存在しないから、本件補正事項2は、本件補正前の請求項1と請求項2の間に、本件補正後の請求項2を追加するものであると評価できる。
なお、本件補正前の方法の発明についての請求項17が、本件補正後の請求項2の発明特定事項の一部を含むものとして存在していたが、当該本件補正前の請求項17は、請求項1を引用するものではないし、また、その発明は方法の発明であって、本件補正後の請求項に係る発明とは、カテゴリーが異なるものであるから、それをもって、本件補正前に本件補正後の請求項2に対応する請求項が存在していたものということはできない。
以上のことからすれば、本件補正事項2は、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれを目的とするものにも該当しない。

(3)本件補正事項3について
ア 本件補正事項3は、本件補正前の請求項13を本件補正後の請求項14に補正するものであって、(a)本件補正前の請求項13の発明特定事項である「製品の流れを検査、及び選別する方法」を「製品の流れを選別する方法」とする補正、(b)本件補正前の請求項13の発明特定事項である「少なくとも1本の高い空間コヒーレンシー光ビームが前記製品の流れに向けて誘導され」を「少なくとも1本の光ビームが前記製品の流れに向けて誘導され」とする補正、(c)本件補正前の請求項13の発明特定事項である「前記製品が検出ゾーンを通って特定の方向に移動し、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に動かされ、前記製品の経路を横断し、それにより、前記光ビームが前記製品により少なくとも部分的に散乱及び/又は反射され」を「前記製品が検出ゾーンを通って特定の方向に移動し、それにより、前記光ビームが前記製品により少なくとも部分的に散乱及び/又は反射され」とする補正、及び(d)本件補正前の請求項13の発明特定事項である「前記製品が、測定された散乱光及び/又は反射光に基づいて選別される、方法」を、「前記製品が、測定された散乱光及び/又は反射光に基づいて選別され、望ましくない製品又は異物が製品流れから取り除かれる方法」とする補正を含むものである。
イ 上記各補正事項のうち、上記(a)の補正は、発明特定事項である「製品の流れを検査、及び選別する方法」を「製品の流れを選別する方法」へと変更するもの、すなわち「検査」を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しないことは明らかである。
そして、当該補正が同項第3号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものに該当するものともいえないし、原査定の理由において、「製品の流れを検査、及び選別する方法」が不明確であると指摘した事実はないから、同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものとすることもできない。
ウ 上記(b)の補正は、「製品の流れに向けて誘導され」る「光ビーム」を「少なくとも1本の高い空間コヒーレンシー」なものから、「少なくとも1本」のものに変更するもの、すなわち「高い空間コヒーレンシー」という発明特定事項を削除するものであるが、原査定の拒絶の理由において、「高い空間コヒーレンシー」が不明確と指摘したことに対応した補正であると認められるから、上記(b)の補正は、特許法第17条の2第5項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
エ 上記(c)の補正は、発明特定事項である「前記製品が検出ゾーンを通って特定の方向に移動し、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に動かされ、前記製品の経路を横断し、それにより、前記光ビームが前記製品により少なくとも部分的に散乱及び/又は反射され」を「前記製品が検出ゾーンを通って特定の方向に移動し、それにより、前記光ビームが前記製品により少なくとも部分的に散乱及び/又は反射され」と変更するもの、すなわち発明特定事項である「前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に動かされ、前記製品の経路を横断し」を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しないことは明らかである。
そして、当該補正が同項第3号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものに該当するものともいえないし、原査定の理由において、「製品の流れを検査、及び選別する方法」が不明確であると指摘した事実はないから、同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものとすることもできない。
オ 上記(d)の補正は、「望ましくない製品又は異物が製品流れから取り除かれる」という手順を本件補正前の請求項13に係る発明に追加するものであるところ、本件補正前の請求項13には、そのような手順に対応する発明特定事項は記載されておらず、本件補正前の請求項13に係る方法の発明において、「望ましくない製品又は異物」を「製品流れから取り除く」手順を有するものであることが特定されていないことからすれば、上記(d)の補正は、本件補正前の請求項13の発明特定事項をさらに限定するものと評価することはできないから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しないことは明らかである。
そして、当該補正が同項第3号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものに該当するものともいえないし、原査定の理由において、この点が不明確であると指摘した事実はないから、同項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものとすることもできない。

(4)請求人の主張について
請求人は、本件補正の目的については、明示的に主張しておらず、審判請求書において、本件補正の内容につき「補正前の請求項1を明確にする修正を行うと共に、明細書の記載を加えて新請求項1と致しました。さらに、補正前の請求項17を新請求項2と致しました。この請求項の移動に伴い、補正前の請求項2?16、18をそれぞれ、新請求項3?17と致しました。新請求項8におきましては、記載を明確にする修正を行っております。新請求項14におきましては、新請求項1と同様の修正を行っております。上記手続補正書による補正が何れも出願当初の明細書の〔0078〕、〔0082〕段の記載の範囲内であることは明らかであると思料致します。上記、手続補正書においては、補正前の対応する記載と異なる記載にのみ下線が引いてあります。」と主張するところ、請求項1及び14に係る補正については、上記で検討したとおり、明りょうでない記載の釈明や特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する補正事項を含むものの、いずれを目的とするものにも該当しない補正事項が含まれることは上記(1)及び(3)で検討したとおりであり、また、請求項2に係る補正については、請求項の単なる移動とはいえないことは、上記(2)で検討したとおりであるから、当該主張を勘案しても、上記(1)ないし(3)の判断を左右しない。

(5)補正の適否についての小括
上記(1)ないし(4)で検討したとおり、上記本件補正事項1ないし3は、補正の目的が特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれのものでもないものを含むものである。
なお、本件補正事項1は、上記(1)ウのとおり、同(b)の補正が同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すること、また、上記(1)エのとおり同(c)の補正は、同号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないものの、一応請求項に係る発明を減縮するものと評価し得ることから、念のため、本件補正事項1が同号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとした場合の、当該本件補正事項1による補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすものであるか否か、すなわち、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討しておくこととする。

3 本件補正発明についての独立特許要件の検討
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に説示した特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるとおりのものである。

(2)引用例及び引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由において引用され、本願優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされた国際公開2007/083755号(以下、「引用例」という。)には、つぎの事項が記載されている。(下線は、当審により付加したもの。)

ア 「[0001]
この発明は、スーパーコンティニューム光(SC光)を利用した分析装置、印刷物の真贋判定装置、印刷物の真贋判定方法、及び地中探索方法に関するものである。
背景技術
[0002]
スーパーコンティニューム光(SC光)とは、ピークパワーの強いレーザ光が非線形媒質に入射された際、該媒質中で発生する非線形現象によって、スペクトル帯域が拡大された広帯域光である。0.1μm程度から2μm程度のスペクトル帯域幅を有する広帯域光を生成する光源のひとつであるSC光源は、その高出力性、広帯域性、スペクトル平坦性などから、様々な応用分野への重要光源として期待されている。このようなSC光源として様々な構成が提案されているが、光ファイバ内でSC光を生成させる構成は、簡便であり、相互作用長を容易に長くでき、かつスペクトル制御も容易であることから、一般的に広く用いられている。」
イ 「[0004]
発明者らは、従来の分光測定装置について検討した結果、以下のような課題を発見した。
[0005]
すなわち、非線形現象を発生するPCFの零分散波長はせいぜい0.8μm程度と短いのが一般的である。そのため、SC光を生成するためにPCFに入射されるレーザ光の波長も0.8μmの近傍に制限され、PCFにより生成されるSC光は0.4μm?1.75μmといった比較的短い波長域に制限される(特許文献1参照)。しかしながら、赤外分光分析などにおいては、1.75μmよりも長い吸収波長等を有する物質の測定も必要になる場合がある。このような場合、PCFを用いたSC光源は不向きであり、より長波長域まで広がるスペクトルを実現可能なSC光源が望まれる。
[0006]
また、PCFは、空孔を有し断面構造が複雑なためファイバ同士の接合が容易ではい(当審注:「ではない」の誤記)。すなわち、PCFと他の光ファイバの接合では、接合面における光損失も大きくなる傾向がある。さらに、PCFは、出射光のエネルギーによって端面が損傷(溶融)してしまうおそれがある。そのため、PCFが適用されたSC光源では、強い励起光の導入ができず、強いSC光を生成することが困難である。このようにPCFには様々な課題が残っており、現状ではSC光源としての実用性に乏しい。
[0007]
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、実用性に優れ、より長い波長域まで赤外分光分析等を可能にするための構造を備えた分析装置を提供するとともに、この分析装置を応用した印刷物の真贋判定装置、印刷物の真贋判定方法、及び地中探索方法を提供することを目的としている。」
ウ 「[0008]
上述の課題を解決するため、この発明に係る分析装置は、光源部と、光検出部を、少なくとも備える。光源部は、所定の対象物に向けて照射される照明光としてスペクトル帯域が拡大されたスーパーコンティニューム光(SC光)を出射する発光ユニットであって、種光源と、中実の光ファイバを含む。種光源は、レーザ光を出射する。中実の光ファイバは、該レーザ光を入射してSC光を生成する。特に、この発明に係る分析装置において、種光源から出射されるレーザ光の中心波長は、1.3μm以上かつ1.8μm以下の範囲内に収まっている。
[0009]
上述のような構造を有する当該分析装置では、空孔を有するPCFではなく中実の光ファイバにレーザ光を入射させ、該中実の光ファイバ内でSC光を含むSC光パルスを生成している。なお、このような中実の光ファイバとしては、いわゆる非ホールアシスト型の(すなわち中実の)高非線形光ファイバ(HNLF:Highly Nonlinear Fiber)が好適である。HNLFとは、非線形係数γが通常の伝送用光ファイバの5倍以上と高く、非線形現象が発生し易い光ファイバである。例えば、XPM法で測定した場合、HNLFの非線形係数γは7.5(/W/km)以上であることが望ましい。更に望ましくは、通常の伝送用光ファイバの10倍以上(15(/W/km)以上)、特に望ましくは20倍以上(30(/W/km)以上)であるとよい。このような光ファイバは、SC光の発生に寄与する四光波混合現象やソリトン効果が発生し易い零分散波長が1.3μm以上かつ1.8μm以下に設計されるのが望ましい。HNLFは、零分散波長を1.3μm以上かつ1.8μm以下に設計することが容易であり、当該分析装置において、種光源からのレーザ光の中心波長もこの波長域に設定されている。この構成により、零分散波長域を中心とする広帯域のスペクトルを有するSC光が好適に生成される。また、当該分析装置の光源部に適用される光ファイバは空孔を有しないので、ファイバ同士の結合が容易である。具体的には、これらファイバ間の接合面における光損失も1dB/接続以下、典型的には0.1dB/接続程度と小さくでき、強いSC光の生成が可能である。HNLFは、PMDを1.0ps/km1/2以下(典型的には0.1ps/km1/2以下)と小さくすることができる。そのため、直交偏波モード間のカップリングが発生し難く、SC光スペクトルを安定させることができる。また、HNLFは、波長分散特性の制御が比較的容易であり、所望の零分散波長、分散値、分散スロープ、四次分散(分散スロープの波長微分)が実現可能である。製造過程における制御性も高く、光ファイバの長さ方向に沿った伝送特性の変動も小さい。したがって、この発明に係る分析装置によれば、実用性に優れ、より長い波長域まで赤外分光分析等が可能になる。
[0010]
なお、赤外分光分析等において互いに異なる複数の波長の光が必要な場合、各波長に応じた光源を用意すると装置自体が大型化してしまう。しかしながら、この発明に係る分析装置のような構成であれば、装置自体の小型化が可能になる。すなわち、当該分析装置によれば、広帯域のスペクトルを有するSC光を光源部が生成することにより、装置自体の小型化一つの光源から複数の波長成分を容易に生成できる。また、この発明に係る分析装置において、光源部は、SC光を出射するための複数の出射端を有してもよい。このような構成は、SN感度の悪い波長(例えば2500nm付近)で分光分析を行う場合や、照明領域が広すぎるために照射光量が不足している場合に特に有効である。」
エ 「[0012]
この発明に係る分析装置において、SC光のスペクトル帯域は、0.8μm以上かつ3μm以下であるのが好ましい。上述のように、当該分析装置では、中実の光ファイバ(例えばHNLF)が適用されるので、このような比較的長い波長域のSC光を好適に生成できる。なお、この明細書において「0.8μm以上かつ3μm以下の範囲」とは、例えばSC光のスペクトル強度が波長0.8μm、3μmのそれぞれにおいてピーク強度の10%以下であることを意味する。
[0013]
この発明に係る分析装置は、光源部から出射される照射光が対象物の表面において照射径1μm以上かつ50mm以下のスポット状になるよう、該照射光の照射径を制限する照射径制限部をさらに備えてもよい。この場合、照射光の単位面積あたりの光強度(照度)をさらに高めることができる。なお、この明細書において「照射径」とは、対象物の表面において照度が最大照度の10%以上である範囲の最大径をいう。」
オ 「[0100]
(第3実施例)
図12の領域(a)及び領域(b)は、この発明に係る分析装置の第3実施例の構成を示す図である。これら領域(a)及び領域(b)に示された分析装置1b、1cは、上述の第1実施例に係る分析装置1を変形例であり、例えば食品検査などの際の近赤外分光分析に使用することができる。
[0101]
図12の領域(a)に示されたように、分析装置1bは、光検出部3b、モニタ/分析部6a(信号処理部に含まれる)、分光器7、レンズ14、及び光源部20bを備える。光源部20bは、SC光P2を照射光P3として食品などの対象物A2に照射するための構成要素である。光源部20bは、種光源2及び光ファイバ9によって構成されている。なお、種光源2及び光ファイバ9の構成は、第1実施例と同様である。
[0102]
レンズ14は、対象物A2の表面における照射光P3(SC光P2)の照射範囲をスポット状に制限するための照射径制限部であり、光源部20bの光出射端に光学的に接続されている。なお、レンズ14は、対象物のサイズ(ゴマ、米粒などの小さな種子は狭く、ミカン、リンゴ、メロンといった大きな果実は広く)に応じて照射径を適切な範囲にする。すなわち、レンズ14は、照射光P3の単位面積あたりの光強度(照度)を高めるために、対象物A2の表面における照射光P3の照射径を1μm以上かつ50mm以下のスポット状にする。
[0103]
分光器7は、対象物A2からの被検出光Lを分光するための光学部品である。分光器7の構成としては、例えばプリズムやバルクタイプのグレーティング素子を用いた構成や、あるいはフーリエ変換分光を利用する構成などが適している。
[0104]
光検出部3bは、被検出光Lを検出する。第3実施例における光検出部3bは、例えばフォトダイオード(PD)やPDアレイ、赤外カメラ等によって実現され、対象物A2からの反射光又は散乱光を被検出光Lとして受光し、その光強度を電流値などの電気的な量に変換する。なお、光検出部3bの詳細な構成は、第1実施例における光検出部3と同様である。」
カ 「[0105]
モニタ/分析部6aは、種光源2からのレーザ光P1の出射タイミングと、光検出部3bにおける検出タイミングとを制御する制御部としての機能と、光検出部3bからの信号(検出結果)に基づいて、被検出光Lに関するスペクトル波形情報を生成する信号処理部としての機能とを兼備する。また、モニタ/分析部6aは、生成されたスペクトル波形情報を表示する表示部としての機能も備えている。
[0106]
一方、分析装置1cは、図12の領域(b)に示されたように、光検出部3c、モニタ/分析部6a (信号処理部)、レンズ14、及び光源部20cを備える。このうち、モニタ/分析部6a及びレンズ14の機能は、分析装置1bと同様である。
[0107]
光源部20cは、SC光P2に基づく照射光P3を対象物A2に照射するための発光ユニットである。光源部20cは、上述の光源部20bと異なり、種光源2及び光ファイバ9に加えて、光ファイバ9の出射端に光学的に接続された光学フィルタ16を有する。この光学フィルタ16は、照射光P3の波長範囲を所定範囲に制限するための光学部品であり、図12の領域(a)における分光器7に代えて設けられる。なお、この第3実施例における光学フィルタ16は、被測定物質の吸収波長に応じてその透過波長範囲が固定されるが、波長可変フィルタを用いても良い。また、光学フィルタ16は、互いに透過波長が異なる複数の波長固定フィルタによって構成されてもよい。この場合、複数の波長成分を同時に用いて被測定物質を分析することができる。
[0108]
光検出部3cは、上述の光検出部3bと同様に、例えばフォトダイオード(PD)やPDアレイ、赤外カメラ等によって実現される。ただし、この光検出部3cは、対象物A2からの透過光を被検出光Lとして受光し、その光強度を電流値などの電気的な量に変換する。この光検出部3cの詳細な構成も、第1実施例における光検出部3と同様である。
[0109]
なお、第3実施例に係る分析装置1b、1cは、反射光を検出する光検出部3b及び透過光を検出する光検出部3cをそれぞれ備えているが、分析装置1b(又は分析装置1c)は、光検出部3b、3cの双方を備えることにより反射光及び透過光の双方を撮像してもよい。また、分析装置1cにおいては、レンズ14又は対象物A2の位置を相対的に移動可能にすることにより、対象物A2の表面を照射光P3が走査させる構成であってもよい。」
キ 「[0119]
(食品検査・選別)
例えば、果実などの食品に照射光P3を照射し、フルクトースやグルコースなどの糖分に特有の吸収波長における被検出光Lと照射光P3との強度比を検出することによって、糖度の測定を容易に行うことができる。あるいは、クエン酸やアスコルビン酸に特有の吸収波長における被検出光Lと照射光P3との強度比を検出することによって、酸度の測定を容易に行うことができる。あるいは、エチレンやクロロフィルに特有の吸収波長における被検出光Lと照射光P3との強度比を検出することによって、熟度の測定を容易に行うことができる。あるいは、ペクチンに特有の吸収波長における被検出光Lと照射光P3との強度比を検出することによって、硬度の測定を容易に行うことができる。
[0120]
この食品検査・選別の際には、ケモメトリックス法が好適に用いられる。すなわち、測定対象物質(フルクトース、クエン酸、エチレンなど)の吸収波長に相当する被検出光Lの波長成分の光強度や、該光強度と他の波長成分の光強度との比が指標として準備される。そして、この指標と、水分量、糖度、酸度、及び熟度との予め測定された相関に基づいて、検量線との比較によって半経験的にこれら水分量、糖度、酸度、及び熟度が定量化される。あるいは、ある測定対象物質の吸収波長(例えば果物であれば、水分量なら波長2.1μm付近、糖分なら波長1.7μm付近、酸度なら波長1.1μm付近、熟度なら波長0.9μm付近、硬度なら波長1.2μm付近)における被検出光Lの光強度の大きさに基づいて、水分、糖度、酸度、熟度、硬度などが定量化されてもよい。
[0121]
第3実施例に係る分析装置1b(又は分析装置1c)によれば、第1実施例に係る分析装置1と同様に、実用性に優れ、かつ、より長い波長域まで近赤外分光分析等が可能になる。したがって、上述のような比較的長い吸収波長を有する被測定物質を好適に測定できるので、食品検査・選別に適している。
[0122]
また、従来の近赤外分光分析装置としては、例えばフェムト秒のチタンサファイアレーザを非線形結晶を用いて近赤外光に波長変換する構成(非特許文献2参照)が知られている。しかしながら、このような構成では、装置が高価かつ大型になってしまう。この第3実施例に係る分析装置1b(又は分析装置1c)は、このような従来の装置と比較して装置構成が単純であり、小型化を実現可能にする。しかも、光ファイバ9を光ファイバプローブとしても利用できるので、可搬型としても極めて精密な測定が可能となる。また、メンテナンスも不要である。したがって、食品の出荷時に用いられるだけでなく、倉庫や商店に当該分析装置1b(又は分析装置1c)を用意しておき、食べ頃の食品や腐敗した食品の選別も容易になる。
[0123]
なお、この第3実施例に係る分析装置1b(又は分析装置1c)は、果物だけでなく、種子、穀物、魚介類、肉類など広範な食品に適用可能である。また、醤油や味噌などの加工食品についても、製造メーカや商品に固有のスペクトルを有する。したがって、当該第3実施例に係る分析装置1b(又は分析装置1c)は、加工食品の管理にも適している。
[0124]
また、この第3実施例に係る分析装置1b(又は分析装置1c)においては、SC光を生成するための光ファイバ9として、第1実施例と同様に中実のHNLFが用いられる。これにより、PCFを用いる場合と比較してSC光P2の光強度を大きくできる。又は(当審注:「は」は「ハ」の誤記と認める。)ロゲンランプ等の照明を用いる場合と比較して集光も容易である。したがって、従来の赤外分光分析装置では測定が困難であった皮が硬い果実(メロンやパイナップルなど)も容易に測定できる。
[0125]
果実や穀物などの食品は、産地によって被検出光Lのスペクトルが異なることがある。このような場合、当該第3実施例に係る分析装置1b(又は分析装置1c)によって、産地調査も可能となる。また、分析装置1b(又は分析装置1c)によれば種子の一粒ごとの測定も可能なので、ブランド種や遺伝子組み換え種の分類ができ、混雑や交配を防止することもできる。」

ク 図12



ケ 引用例に記載された発明
上記アないしキの記載事項及び同クの図面によれば、引用例には、つぎの発明が記載されているものと認められる。
「光検出部3c、モニタ/分析部6a(信号処理部に含まれる)、レンズ14、及び光源部20cを備える分析装置(1c)であって、光源部20cはSC光P2に基づく照射光P3を対象物A2に照射するための発光ユニットで種光源2及び光ファイバ9に加えて光ファイバ9の出射端に光学的に接続された光学フィルタ16を有し、レンズ14は対象物A2の表面における照射光P3(SC光P2)の照射範囲をスポット状に制限するための照射径制限部で光源部20cの光出射端に光学的に接続され、光学フィルタ16は、照射光P3の波長範囲を所定範囲に制限するための光学部品であり、光検出部3cは対象物A2からの透過光を被検出光Lとして受光しその光強度を電流値などの電気的な量に変換するものであり、モニタ/分析部6aは、種光源2からのレーザ光P1の出射タイミングと、光検出部3cにおける検出タイミングとを制御する制御部としての機能と、光検出部3cからの信号(検出結果)に基づいて、被検出光Lに関するスペクトル波形情報を生成する信号処理部としての機能とを兼備するものであり、レンズ14又は対象物A2の位置を相対的に移動可能にすることにより対象物A2の表面を照射光P3が走査する構成とされているものであり、種子の一粒ごとの測定が可能でブランド種や遺伝子組み換え種の分類ができる分析装置」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「光源部20c」は「SC光P2に基づく照射光P3を対象物A2に照射するための発光ユニット」であって、「種光源2」及び「光ファイバ9」により構成されるものであるところ、光源部20cが対象物A2に照射する照射光P3となる「SC光P2」は、「スーパコンティニューム光」である(上記(2)ア参照)。
また、引用発明の「対象物A2」は、「スーパーコンティニューム光」である照射光P3が照射され、「光検出部3c」によりその透過光」を検出して測定を行う対象であって、「種子」などを含むものであるところ、種子のような細かい製品である検査対象を選別する際に、検査対象の流れを形成して検査を実施する構成を採用することは、常套手段である(国際公開02/31473号(以下「周知例1」という。)、国際公開98/31477号(以下、「周知例2」という。)、特開2007-330880号公報(以下、「周知例3」という。)、特開2006-150178号公報(以下、「周知例4」という。)及び特開2006-247490号公報(以下、「周知例5」という)という技術常識に鑑みれば、引用発明の「対象物A2」は、本件補正発明の「製品」に相当するものといえる。
してみると、引用発明の「SC光P2に基づく照射光P3を対象物A2に照射するための発光ユニットで種光源2及び光ファイバ9に加えて光ファイバ9の出射端に光学的に接続された光学フィルタ16を有」する「光源部20c」は、本件補正発明の「スーパコンティニューム放射源を備える」「広帯域スペクトルを有する光ビームを生成する放射源」に相当する。
イ 引用発明の「対象物A2からの透過光を被検出光Lとして受光しその光強度を電流値などの電気的な量に変換する」「光検出部3c」と、本件補正発明の「光ビームが製品に衝突し、それにより製品より光が散乱及び/又は反射される当該散乱光及び/又は反射光を検出するために設けられ」た「検出手段」とは、共に「製品からの被検出光を検出するために設けられた検出手段」である限りで共通する。
ウ 引用発明の「モニタ/分析部6a」は、「光検出部3cにおける検出タイミングを制御し」「光検出部3cからの信号に基づいて」「被検出光Lに関するスペクトル波形情報を生成する」のであるから「光検出部」と協働するものといえ、ここでの「被検出光Lに関するスペクトル波形情報」が対象物を特徴付ける情報であることは技術的に明らかであることに鑑みれば、引用発明の「モニタ/分析部6a」が「種光源2からのレーザ光P1の出射タイミングと、光検出部3cにおける検出タイミングとを制御する制御部としての機能と、光検出部3cからの信号(検出結果)に基づいて、被検出光Lに関するスペクトル波形情報を生成する信号処理部としての機能とを兼備する」ことは、本件補正発明の「前記検出手段が前記製品を特徴づけるための処理ユニットと協働」することに相当する。
エ 引用発明において、「レンズ14」が「対象物A2の表面における照射光P3(SC光P2)の照射範囲をスポット状に制限するための照射径制限部で光源部20cの光出射端に光学的に接続され」ており、この「レンズ14」又は「対象物A2」の「位置を相対的に移動可能にすることにより、対象物A2の表面を照射光P3」が走査するのであるから、引用発明は、「レンズ14」によりスポット状に制限された「照射光」に対して「対象物A2」を相対的に移動させることで、「照射光P3」が「対象物A2」を走査するものであるといえる。
また、引用発明は「種子の一粒ごとの測定が可能でブランド種や遺伝子組み換え種の分類ができる分析装置」であるから、種子を一粒ごとに分類、すなわち「選別」する装置であるといえる。
してみると、引用発明の「レンズ14」が「対象物A2の表面における照射光P3(SC光P2)の照射範囲をスポット状に制限するための照射径制限部で光源部20cの光出射端に光学的に接続され」ており、この「レンズ14」又は「対象物A2」の「位置を相対的に移動可能にすることにより、対象物A2の表面を照射光P3が走査する」ことにより、「種子の一粒ごとの測定が可能でブランド種や遺伝子組み換え種の分類ができる分析装置」と、本件補正発明の「検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけて選別するための選別デバイス」であって、「前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され」るものとは、「光ビームに対して製品を相対的に移動させることにより、光ビームで製品を走査する」ことにより、「製品を特徴づけて選別するデバイス」である点で共通するものといえる。
オ 以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、各相違点において相違する。

<一致点>
「広帯域スペクトルを有する光ビームを生成する放射源と、光ビームと製品とを相対的に移動させることにより、前記光ビームで製品を走査し、製品を特徴づけて選別するための選別デバイスであって、検出手段が製品からの光を検出するために設けられ、前記検出手段が前記製品を特徴づけるための処理ユニットと協働するデバイスにおいて、前記放射源がスーパコンティニューム放射源を備えることを特徴とするデバイス」である点

<相違点1>
本件補正発明が「検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけて選別するための選別デバイス」であって、「前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され」、検出手段が、「前記散乱光及び/又は反射光を検出する」のに対して、引用発明は、「レンズ14」によりスポット状に制限された照射光に対して「対象物A2」を相対的に移動させることで照射光P3が対象物A2を走査するもの」であって、「光検出部3c」は「対象物A2」の透過光を被検出光Lとして受光するものである点

<相違点2>
本件補正発明は、「除去システムが製品流れからの望ましくない製品又は異物を取り除くために設けられる」ものであるのに対して、引用発明は、そのような除去システムを備えるものであることが特定されない点

(4)当審の判断
ア 本願の優先権主張日における技術水準について
例えば、原査定において引用された上記周知例1の3欄6ないし9行の記載並びにFig.2、3及び6及び7欄11行?11欄最下行の記載から読み取れるような「干しぶどう、野菜、ナッツ、甲殻類などの食品」を検査対象とするのに特に有用である」ものであって、「少なくとも1つのレーザービーム発生器を含む光ビーム発生源18とポリゴンミラー90を含むビーム走査要素と検出または走査ゾーン14を通過する製品12からの反射/散乱光を検出する検出器62、66を含む光学パッケージ54と、検出または走査ゾーン14を通過する製品12の定常流れを形成する搬送装置36と、走査領域14の直ぐ下流に製品12の流れにおいて検出された異物又は排除すべき製品16を除去するために提供される除去装置48とを備え、製品12が走査ゾーンを通過するとき、高走査速度で1つ以上のレーザ20により走査され、走査領域14を通過する製品12からの反射/散乱光が検出されるようにされているレーザー選別装置」のような構成は、上記周知例2のFig1及び3欄31行?5欄11行にも同様の装置が記載されているように、本願優先権主張日前に従来周知のものである(以下、「周知技術1」という。)。

イ 相違点1について
(ア)周知技術1の「少なくとも1つのレーザービーム発生器を含む光ビーム発生源18とポリゴンミラー90を含むビーム走査要素と検出または走査ゾーン14を通過する製品12からの反射/散乱光を検出する検出器62、66を含む光学パッケージ54と、検出または走査ゾーン14を通過する製品12の定常流れを形成する搬送装置36とを備え、それにより「製品が走査ゾーンを通過するとき、高走査速度で1つ以上のレーザにより走査され、走査領域を通過する製品からの反射/散乱光が検出され」るよう構成された「レーザ選別装置」は、上記相違点1に係る本件補正発明の「検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけて選別するための選別デバイス」であって「前記製品の経路を横断して、前記検出ゾーンの中で前記製品の流れの上に前記光ビームを動かすための、走査要素を用いて、前記光ビームが前記検出ゾーンの中で前記製品に衝突し、それにより、前記製品により光が散乱及び/又は反射され」、検出手段が、「前記散乱光及び/又は反射光を検出する」ものに相当するものである。
(イ)ここで、引用発明が「種子の一粒ごとの測定が可能でブランド種や遺伝子組み換え種の分類ができる」ものであること、そして、その結果混雑や交配を防止することを可能とするものであるところ、種子のような細かい検査対象を選別する際に、検査対象の流れを形成して検査を実施する構成を採用することは、上記周知例1及び2に加えて、さらに上記周知例3ないし5にも記載されているように常套手段にすぎないこと、そして、上記周知技術1が「ナッツなどの食品」を検査対象とするのに特に有用であって、周知技術1のような「レーザ選別機」が検査対象である「製品」の分類に応じた選別を可能とするものであることが当業者にとって自明であることからすれば、引用発明に周知技術1を適用しようとすることには、十分な動機付けがあるものといえるし、引用発明に周知技術1を適用することを困難とする事情は特段認められない。
(ウ)してみると、引用発明において、「レンズ14又は対象物A2の位置を相対的に移動可能にすることにより対象物A2の表面を照射光P3が走査する構成とされている」ことに代えて、周知技術1を適用して、「ポリゴンミラーを含むビーム走査要素と検出または走査ゾーンを通過する製品からの反射/散乱光を検出する検出器を含む光学パッケージと、検出または走査ゾーンを通過する製品の定常流れを形成する搬送装置」とを備え、それにより「製品が走査ゾーンを通過するとき、高走査速度で1つ以上のレーザにより走査され、走査領域を通過する製品からの反射/散乱光が検出され」るよう構成することにより、上記相違点1に係る本件補正発明のように構成することに格別の困難性はない。
(エ)以上のとおりであるから、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

ウ 相違点2について
(ア)上記周知技術1の「走査領域の直ぐ下流に製品の流れにおいて検出された異物又は排除すべき製品を除去するために提供される除去装置」は、上記相違点2に係る本件補正発明の「除去システムが製品流れからの望ましくない製品又は異物を取り除くために設けられる」ことに相当するものである。
(イ)そして、引用発明に周知技術1を適用することに動機付けがあるものといえること、引用発明に周知技術1を適用することを困難とする事情がないことは、既に検討したとおりである。
(ウ)してみると、引用発明に周知技術1のような「除去装置」を備えるようにして、上記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることに格別の困難性はない。
(エ)以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本件補正発明の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

エ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果についても、引用例及び周知技術1から予測し得る程度のものであって格別のものとはいえない。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は「引用文献2(当審注:上記周知例2のこと。)は本願のような種類の選別装置や選別方法に関するものでありますが、引用文献2や本願の請求の範囲における発明は、製品や個々の対象を分析するだけの引用文献1(当審注:上記引用例のこと。)の分野のものとは明らかに異なった技術分野に関するもので、引用文献1は、例えば、果物のような食物との関連で、砂糖、酸味、成熟度または固さを測定することができると説明しているものです。引用文献1では製品の選別、特に、製品の流れにおいて移動する製品を選別することについては何もいってはおらず、スーパーコンティニューム放射源を使用することによって一つずつ個々の製品を解析することを開示するのみであります。
よって、引用文献1に開示された装置は引用文献2の装置とは異なった目的を果たすものであります。
引用文献1が固定された製品の分析に関わり、大きな流れの中で高速で移動している製品のこの大きな流れから個々の製品を分離するための選別には関わっていないにもかかわらず、引用文献1がその明細書段落0109において「レンズ14又は対象A2が相対的に移動可能であり、そのため、対象A2の表面は照射光P3によって走査される」との記載は正しく、よって、この光ビームは分析される対象に対して動いていますが、これは、引用文献2によって開示されるような製品の流れを選別するために必要とされるように、製品が光ビームの走査の動きに対し横切る方向に沿って移動していることを示すものではないのであります。製品の流れを選別するために必要な二重の移動は存在してなく、よって、引用文献1の装置は製品の流れの選別を行うものではないのであります。
引用文献1の装置の目的は製品又は対象を分析することであって、製品の流れを選別することではないので、当業者は、後知恵によってしか、選別する目的に必要な、二重の動作を適用することによってこの装置を動機付けしようとすることはないものであります。すなわち、当業者は、後知恵によってでしか、引用文献1と引用文献2の教示を組み合わせることはないものであります。」と主張する。(審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】(5)、平成28年8月12日提出の上申書)
イ 上記(4)イ(イ)において説示したとおり、引用発明は、種子の選別を行うことをその対象とすることが記載されており、そのような種子の選別を行うにあたり周知技術1のような製品の流れを形成する構成を採用することが常套手段といえる以上、請求人の主張は採用の限りではない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明および周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正事項1及び2が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反することとなる。

4 補正の却下の決定のまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に規定するいずれをも目的とするものに該当しない補正事項を含む本件補正事項1ないし3を含むものである点で同項の規定に違反し、また、仮に本件補正事項1が同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったと仮定しても、本件補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるということはできないから、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反することとなる点で、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2の補正の却下の決定により、本件補正(平成27年9月28日にされたもの)は却下された。
したがって、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成25年11月7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に説示したとおりのものである。

2 引用例及び引用例に記載された発明について
引用例に記載の事項は上記第2の3(2)アないしクに摘示されたとおりであり、引用発明は、同ケで認定したとおりのものである。

3 対比・判断
(1)本願発明と引用発明の対比
本願発明は、前記第2の3で検討した本件補正発明の「広帯域スペクトルを有する光ビームを生成する放射源と、検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけて選別するための選別デバイス」が「広帯域スペクトルを有する高い空間コヒーレンシ-光ビームを生成する放射源と、検出ゾーンを通して製品を移動させる手段とを用いて、製品の流れの中で製品を特徴づけるための選別デバイス」と特定されるものであって、さらに本件補正発明の「デバイス」に設けられている「製品流れからの望ましくない製品又は異物を取り除くため」の「除去システム」についての特定を有さないものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2の3(3)オの<一致点>で一致し、同<相違点1>及び下記相違点Aにおいて相違する。

<相違点A>
本願発明の「放射源」が「スーパコンティニューム放射源を備える」「広帯域スペクトルを有する高い空間コヒーレンシー光ビームを生成する放射源」であるのに対して、引用発明の「光源部20c」は「SC光P2に基づく照射光P3を対象物A2に照射するための発光ユニット」であって、「種光源2」及び「光ファイバ9」により構成されるものは「スーパコンティニューム放射源を備える」「広帯域スペクトルを有する光ビームを生成する放射源」に相当するものであるとはいえるものの、「高い空間コヒーレンシー光ビーム」であるか否かが不明である点

(2)判断
ア 相違点1は上記第2の3(4)イで検討したとおりである。

イ 相違点Aについて検討するに、本願発明の「高い空間コヒーレンシー光ビーム」が特定するものは明確でないものの、「レーザー光」のようなコヒーレント光を特定しようとするものであると一応解される。
また、本願の明細書の発明の詳細な説明には、「高い空間コヒーレンシー」に関しては、「【0036】 ・・・スーパコンティニューム光源は、現在、市販されており、通常、UVから近赤外にまたがるスペクトル領域を有し、高いスペクトル密度と高い空間コヒーレンス長さを示す。」、「【0087】前記光源11は、既に上で述べた通りスーパコンティニューム放射源を備え、例えば、300nmと3000nmの間で高いスペクトル密度を持つ連続広帯域光を生成する。この光ビームは、高い空間コヒーレンシーをもたらし、それにより、好ましくは、選別される製品の平均サイズより少なくとも1桁小さく、有利には、選別目的で検出されなければならない製品の欠陥より少なくとも小さい断面直径を有する、集束された光ビームが得られる。」などと記載されていること、及び、引用発明の「光源部20c」が「種光源2」及び「光ファイバ9」により構成されるものであり、引用例には、「種光源」が「レーザ光」であり(上記第2の3(2)ウ[0010])、本願発明の実施例と同様の「高非線形光ファイバ(HNLF:Highly Nonlinear Fiber」である「中実の光ファイバ」に「該レーザ光を入射してSC光を生成」するものであることからすれば、引用発明の「光ビーム」は「高い空間コヒーレンシー」なものに相当するものというべきであるから、上記相違点Aは実質的な相違ではない。
また、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が予測し得る程度のものであって格別のものではない。

ウ してみると、本願発明は、引用発明に周知技術1を適用して容易に発明をすることができたものである。

4 小括
以上検討したように、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-25 
結審通知日 2016-08-26 
審決日 2016-09-12 
出願番号 特願2010-523241(P2010-523241)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G01N)
P 1 8・ 537- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波多江 進  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 尾崎 淳史
渡戸 正義
発明の名称 広スペクトル光源を有する選別デバイスとその方法  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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