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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1324418
審判番号 不服2016-5039  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-05 
確定日 2017-02-21 
事件の表示 特願2014-505871「ハイブリッド車両の駆動制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/140540、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2012年3月21日を国際出願日とする出願であって、平成26年9月19日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面、手続補正書及び上申書が提出され、平成27年8月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年10月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年12月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して平成28年4月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年11月10日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して平成28年12月13日に意見書が提出されるとともに同日に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本件出願の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成28年12月13日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。

「 【請求項1】
全体として4つの回転要素を有する第1差動機構及び第2差動機構と、該4つの回転要素にそれぞれ連結されたエンジン、第1電動機、第2電動機、及び出力回転部材とを、備え、
前記4つの回転要素のうちの1つは、前記第1差動機構の回転要素と前記第2差動機構の回転要素とがクラッチを介して選択的に連結されたものであり、
該クラッチによる係合対象となる前記第1差動機構又は前記第2差動機構の回転要素が、非回転部材に対してブレーキを介して選択的に連結され、
走行モードとして、前記ブレーキを係合させ且つ前記クラッチを解放させて前記第1電動機により前記エンジンの出力の反力を受け且つ前記第2電動機により前記出力部材を駆動することで走行する第1ハイブリッド走行モード、および、前記ブレーキを解放させ且つ前記クラッチを係合させて前記エンジンの出力の反力を前記第1電動機および前記第2電動機により分担して受けることで走行する第2ハイブリッド走行モードを有するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
前記第2ハイブリッド走行モードが選択されているときに前記エンジンの停止要求があった場合には、前記クラッチを解放させ且つ前記ブレーキを係合させることで前記第1ハイブリッド走行モードへ切り換えられた後に該エンジンを停止させ、
前記エンジン回転速度が予め設定された動力伝達系における共振が予測される判定値を下回ったときに前記第1電動機を用いて該エンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、該第1電動機によるエンジン回転速度低下による前記出力部材に発生する反力を相殺するように前記第2電動機が制御される
ことを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項2】
車両の走行を許容する走行ポジションおよび車両の走行を機械的に阻止するパーキングポジションを手動操作で選択する手動操作装置を含み、
該手動操作装置により前記パーキングポジションが選択されている場合は、前第2ハイブリッド走行モードのままで前記エンジンを停止させる
ことを特徴とする請求項1のハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記第1差動機構は、第1電動機に連結された第1回転要素、エンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材に連結された第3回転要素を備えるものであり、
前記第2差動機構は、第2電動機に連結された第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を備え、それら第2回転要素及び第3回転要素の何れか一方が前記第1差動機構における第3回転要素に連結されるものであり、
前記クラッチは、前記第1差動機構における第2回転要素と、前記第2差動機構における第2回転要素及び第3回転要素のうち前記第1差動機構における第3回転要素に連結されていない方の回転要素とを選択的に係合させるものであり、
前記ブレーキは、前記第2差動機構における第2回転要素及び第3回転要素のうち前記第1差動機構における第3回転要素に連結されていない方の回転要素を、非回転部材に対して選択的に係合させるものである
請求項1または2のハイブリッド車両の駆動制御装置。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由
(1)平成27年8月5日付けで通知した拒絶理由の内容
平成27年8月5日付けで通知した拒絶理由の内容は、次のとおりである。

「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

理由

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献1には、走行モードとして、ブレーキB1を係合させ且つクラッチC1を解放させて走行する第1ハイブリッド走行モード、および、ブレーキを解放させ且つクラッチを係合させて走行する第2ハイブリッド走行モードを有するハイブリッド車両の駆動制御装において、第2ハイブリッド走行モードが選択されているときにエンジンの停止要求があった場合には、第1ハイブリッド走行モードに切り換えてからエンジンを停止させることが開示若しくは示唆されている(例えば図1-5,請求項1等参照)。
ハイブリッド車両の駆動制御装の技術分野において、エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されるよう構成することは、従来より周知である(必要ならば、引用文献2の段落[0027],図2,4、引用文献3の段落[0028],図2,4等参照)。
したがって引用文献1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置において、上記周知の技術を参照して、エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されるよう構成することに格別の困難性があるとは認められない。またこれを阻害する特段の事情も見当たらない。
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の事項及び上記周知の技術から当業者が容易になし得たものである。

・請求項 2
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献1の認定については、上記記載を参照のこと。また上記周知の技術も参照のこと。
ハイブリッド車両の駆動制御装置において、車両の走行を許容する走行ポジションおよび車両の走行を機械的に阻止するパーキングポジションを手動操作で選択する手動操作装置を設けることは、文献を示すまでもなく普通に実施されている事項である。
そして引用文献1の図1のハイブリッド車両の構成や図3の共線図を参照すると、パーキングポジションを選択してエンジンを上記周知の技術のように第1電動機で強制的に停止するときには、第1電動機による反力を相殺するように第2電動機を制御することとなるから、クラッチC1を係合しブレーキB1を開放することは当然である。これは本願の「第2ハイブリッド走行モード」に対応する。
以上を総合して考慮すると、引用文献1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置において、車両の走行を許容する走行ポジションおよび車両の走行を機械的に阻止するパーキングポジションを手動操作で選択する手動操作装置を含み、手動操作装置によりパーキングポジションが選択されている場合は、第2ハイブリッド走行モードのままでエンジンを停止させる構成とすることに格別の困難性があるとは認められない。

・請求項 3
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献1の認定については、上記記載を参照のこと。また上記周知の技術も参照のこと。
引用文献1の図1には、第1差動機構P1は、第1電動機MG1に連結された第1回転要素31、エンジンに連結された第2回転要素33、及び出力回転部材に連結された第3回転要素32を備えるものであり、第2差動機構P2は、第2電動機MG2に連結された第1回転要素36、第2回転要素38、及び第3回転要素37を備え、それら第2回転要素及び第3回転要素の何れか一方が第1差動機構における第3回転要素に連結されるものであり、クラッチC1は、第1差動機構における第2回転要素と、第2差動機構における第2回転要素及び第3回転要素のうち第1差動機構における第3回転要素に連結されていない方の回転要素とを選択的に係合させるものであり、ブレーキB2は、第2差動機構における第2回転要素及び第3回転要素のうち第1差動機構における第3回転要素に連結されていない方の回転要素を、非回転部材に対して選択的に係合させるものであることが開示若しくは示唆されている。

●理由2(明確性)について

・請求項 1,2
・備考
請求項1には「全体として4つの回転要素を有する第1差動機構及び第2差動機構と、該4つの回転要素にそれぞれ連結されたエンジン、第1電動機、第2電動機、及び出力回転部材とを、備え…。」と記載されている。
本願の例えば図1を参照すると、回転要素は5つであることが看取されるので、請求項1に記載の「4つの回転要素」は「5つの回転要素」の誤記ではないか。
よって、請求項1,2に係る発明は明確でない。

<引用文献等一覧>

1.特開2005-199942号公報
2.特開2009-143306号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2009-143377号公報(周知技術を示す文献)」

(2)原査定の内容
原査定の内容は、次のとおりである。

「この出願については、平成27年 8月 5日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由1(特許法第29条第2項)について

・請求項 1
・引用文献等 1-3
引用文献1には、全体として4つの回転要素を有する第1差動機構及び第2差動機構と、4つの回転要素にそれぞれ連結されたエンジン、第1電動機、第2電動機、及び出力回転部材とを、備え、4つの回転要素のうちの1つは、第1差動機構の回転要素と第2差動機構の回転要素とがクラッチ(C1)を介して連結されたものであり、クラッチによる係合対象となる第1差動機構又は第2差動機構の回転要素が、非回転部材に対してブレーキ(B1)を介して選択的に連結され、走行モードとして、ブレーキを係合させ且つクラッチを解放させて第1電動機によりエンジンの出力の反力を受け且つ第2電動機により出力部材を駆動することで走行する第1ハイブリッド走行モード、および、ブレーキを解放させ且つクラッチを係合させてエンジンの出力の反力を第1電動機および第2電動機により分担して受けることで走行する第2ハイブリッド走行モードを有するハイブリッド車両の駆動制御装置が開示若しくは示唆されている(例えば図1-5,請求項1等参照)。
引用文献1の図5のS150及びS160を参照すると、ブレーキを係合させ且つクラッチを解放させてエンジンを停止することが看取される。したがって、引用文献1には、第2ハイブリッド走行モードが選択されているときにエンジンの停止要求があった場合には、クラッチを解放させ且つブレーキを係合させることで第1ハイブリッド走行モードに切り換えてからエンジンを停止させることも開示若しくは示唆されているといえる。
請求項1に係る発明と、引用文献1に記載のものとを対比すると、前者は「エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに前記第1電動機を用いて該エンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、該第1電動機によるエンジン回転速度低下による前記出力部材に発生する反力を相殺するように前記第2電動機が制御される」としているのに対して、後者はそのようになっているのかが不明な点で、両者は相違する。
この相違点について検討するに、ハイブリッド車両の駆動制御装の技術分野において、エンジンを適切に停止させるよう、エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されるよう構成することは、従来より周知である(必要ならば、引用文献2の段落[0027],図2,4、引用文献3の段落[0028],図2,4等参照)。
引用文献1に記載のハイブリッド車両においても、エンジンを適切に停止させることは、当然考慮すべき事項である。したがって、引用文献1に記載のハイブリッド車両において、エンジンをより適切に停止させるよう、上記周知技術を参照して、エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されるよう構成することに格別の困難性があるとは認められない。またこれを阻害する特段の事情も見当たらない。
ところで出願人は、上記意見書において、『「第2ハイブリッド走行モードが選択されているときに前記エンジンの停止要求があった場合には、前記クラッチを解放させ且つ前記ブレーキを係合させることで前記第1ハイブリッド走行モードに切り換えてから該エンジンを停止させる」点は、引用文献1、2、3のいずれにも記載されておりません。』と述べている。
しかしながら引用文献1には、上記のとおり、「第2ハイブリッド走行モードが選択されているときに前記エンジンの停止要求があった場合には、前記クラッチを解放させ且つ前記ブレーキを係合させることで前記第1ハイブリッド走行モードに切り換えてから該エンジンを停止させる」ことが開示若しくは示唆されているので、出願人の上記意見書による主張は適切ではなく採用することができない。
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の技術思想及び上記周知技術から当業者が容易になし得たものである。

・請求項 2,3
・引用文献等 1-3
上記記載事項と、上記拒絶理由通知書で通知した理由を参照されたい。

<引用文献等一覧>

1.特開2005-199942号公報
2.特開2009-143306号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2009-143377号公報(周知技術を示す文献)」

2 原査定の理由についての判断
2-1 引用刊行物
(1)刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-199942号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力伝達装置に関し、詳しくは、駆動軸に動力を出力する動力出力装置およびこれを備える自動車並びに内燃機関と第1電動機と第2電動機とからの動力を変換して駆動軸に伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジンの出力軸を遊星歯車機構を介して車軸に連結された駆動軸に接続すると共に遊星歯車機構の回転要素に発電機を接続し、駆動軸に変速機を介して電動機を接続した自動車に搭載されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、変速機の変速段を車速に応じて変更することにより電動機からの動力を車速に応じた動力にして駆動軸に出力している。
【特許文献1】特開2002-225578号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の動力出力装置では、その駆動軸に要求される動力によっては、発電機が負回転して電動機として駆動されると共に電動機を発電機として駆動され、発電機によって出力した動力の一部を電動機により発電し、この発電電力を発電機に供給するという動力-電力-動力のエネルギ循環が生じ、装置全体のエネルギ効率を低下させる場合がある。また、駆動軸を高速で回転駆動するときには、電動機を高回転で回転駆動させる必要があるため、電動機の引き摺りロスや鉄損などの増加を招く。
【0004】
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車は、動力-電力-動力のエネルギ循環を抑制して装置や自動車のエネルギ効率の向上を図ることを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車は、駆動軸を高速で回転駆動するときでも電動機の回転数を低くしてロスや鉄損の増加を抑制し、装置や自動車のエネルギ効率を向上させることを目的の一つとする。本発明の動力伝達装置は、動力-電力-動力のエネルギ循環を抑制して内燃機関と第1電動機と第2電動機とからの動力を変換して駆動軸に伝達することを目的の一つとする。また、本発明の動力伝達装置は、効率よく内燃機関と第1電動機と第2電動機とからの動力を変換して駆動軸に伝達することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力伝達装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の第1の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
動力の入出力が可能な第1電動機と、
動力の入出力が可能な第2電動機と、
前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と前記第1電動機の回転軸と前記第2電動機の回転軸とに接続された4軸を含む複数軸を有し、前記第1電動機からの電力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に伝達すると共に前記第2電動機からの動力を回転数を変換して前記駆動軸に伝達する第1の伝達状態と、前記第1電動機からの電力の入出力を伴って前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を前記駆動軸に伝達すると共に前記第2電動機からの電力の入出力を伴って前記内燃機関から出力され回転数の変換された動力の少なくとも一部を前記駆動軸に伝達する第2の伝達状態と、を含む複数の伝達状態を切り替えて前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とからの動力を変換して前記駆動軸に伝達する動力伝達手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の第1の動力出力装置では、動力伝達手段により、第1電動機からの電力の入出力を伴って内燃機関からの動力の少なくとも一部を駆動軸に伝達すると共に第2電動機からの動力を回転数を変換して駆動軸に伝達する第1の伝達状態と、第1電動機からの電力の入出力を伴って内燃機関からの動力の少なくとも一部を駆動軸に伝達すると共に第2電動機からの電力の入出力を伴って内燃機関から出力され回転数の変換された動力の少なくとも一部を駆動軸に伝達する第2の伝達状態と、を含む複数の伝達状態を切り替えて内燃機関と第1電動機と第2電動機とからの動力を変換して駆動軸に伝達する。したがって、内燃機関と第1電動機と第2電動機とからの動力の駆動軸への伝達を第1の伝達状態と第2の伝達状態とを含む複数の伝達状態から選択することができるから、適当に伝達状態を選択することにより、動力-電力-動力のエネルギ循環を抑制することができると共に第1電動機や第2電動機を高回転で回転駆動するのを抑制することができる。この結果、装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0008】
この本発明の第1の動力出力装置において、前記第1の伝達状態は前記第2電動機からの動力を減速した回転数の動力として前記駆動軸に伝達する状態であり、前記第2の伝達状態は前記内燃機関から出力された動力を増速した回転数の動力の一部を前記駆動軸に伝達する状態であるものとすることもできる。こうすれば、第1の伝達状態では第2電動機を高回転低トルク領域を多く用いて駆動することができ、第2の伝達状態では内燃機関の回転数を増速したものとして動力変換を行なうことができる。この結果、装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の第1の動力出力装置において、前記動力伝達手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と前記第1電動機の回転軸の3軸に接続され該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する第1の3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸と前記第2電動機の回転軸と伝達軸の3軸に接続され該3軸のうちいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する第2の3軸式動力入出力手段と、前記内燃機関からの動力を回転数を変速して前記伝達軸に伝達する該内燃機関の出力軸と該伝達軸との接続および該接続の解除を行なう接続伝達手段と、前記伝達軸の回転を停止した状態で固定可能な固定手段と、を備える手段であるものとすることもできる。この場合、接続伝達手段により内燃機関の出力軸と伝達軸との接続を解除すると共に固定手段により伝達軸を固定することにより第1の伝達状態とすることができ、接続伝達手段により内燃機関の出力軸と伝達軸とを接続すると共に固定手段により伝達軸の固定を解除することにより第2の伝達状態とすることができる。ここで、第1の3軸式動力入出力手段や第2の3軸式動力入出力手段としては、遊星歯車機構を用いることができる。
【0010】
さらに、本発明の第1の動力出力装置において、前記第1電動機が正回転で駆動されるときには前記第1の伝達状態により前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とからの動力が変換されて前記駆動軸に伝達されるよう前記動力伝達手段を制御し、前記第1電動機が負回転で駆動されるときには前記第2の伝達状態により前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とからの動力が変換されて前記駆動軸に伝達されるよう前記動力伝達手段を制御する伝達制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、動力-電力-動力のエネルギ循環をより有効に抑制することができる。」(段落【0001】ないし【0010】)

(イ)「【0024】
図1は、本発明の実施例としての動力出力装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介して接続されると共に駆動輪69a,69bにデファレンシャルギヤ68とギヤ機構66とを介して接続された動力分配統合機構30と、この動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、同じく動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0025】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0026】
動力分配統合機構30は、2つのプラネタリギヤP1,P2と増速ギヤ40とクラッチC1とブレーキB1とにより構成されている。第1プラネタリギヤP1のサンギヤ31にはモータMG1の回転軸が、リングギヤ32にはギヤ機構66が、ピニオンギヤ33を連結するキャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26がそれぞれ接続されている。第1プラネタリギヤP1のリングギヤ32は、上述したようにギヤ機構66に接続され、最終的には駆動輪69a,69bに接続されているから、その回転軸を説明の都合上、「駆動軸」65と呼ぶことにする。第2プラネタリギヤP2のサンギヤ36にはモータMG2の回転軸が、リングギヤ37にはリングギヤ32とギヤ機構66とが、ピニオンギヤ38を連結するキャリア39には増速ギヤ40がそれぞれ接続されている。増速ギヤ40は、クラッチC1を介してエンジン22のクランクシャフト26が接続されており、クラッチC1をオンとすることによりエンジン22の回転数を増速して第2プラネタリギヤP2のキャリア39に入力できるようになっている。また、キャリア39はブレーキB1を介してケースに接続されている。
【0027】
こうして構成された動力分配統合機構30は、クラッチC1をオフとすると共にブレーキB1をオンとすることにより、エンジン22からの動力をモータMG1で反力をとることにより駆動軸65(リングギヤ32およびリングギヤ37の回転軸)に出力すると共にモータMG2からの動力を減速して駆動軸65に出力することができる。クラッチC1をオフとすると共にブレーキB1をオンとした状態で駆動軸65に動力を出力している際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図2に示す。図中、左からS1軸はモータMG1の回転数Nm1である第1プラネタリギヤP1のサンギヤ31の回転数を示し、C1軸はエンジン22の回転数Neである第1プラネタリギヤP1のキャリア34の回転数を示し、R1,R2軸は駆動軸65、即ち第1プラネタリギヤP1のリングギヤ32および第2プラネタリギヤP2のリングギヤ37の回転数を示し、C2軸は第2プラネタリギヤP2のキャリア39の回転数を示し、S2軸はモータMG2の回転数Nm2である第2プラネタリギヤP2のサンギヤ36の回転数を示す。なお、共線図は、各回転要素(各軸)に作用するトルクを共線を梁に見立てたときにこの梁に作用する力と同一視することができるものである。図2の状態では、クラッチC1がオフとされていることから、第1プラネタリギヤP1はサンギヤ31,リングギヤ32,キャリア34を回転要素として機能し、エンジン22から出力されたトルクTeの一部をモータMG1からトルクTm1を出力することによって駆動軸65に出力する。このとき、駆動軸65に出力されるトルクは、ρ1を第1プラネタリギヤP1のギヤ比(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とするとTm1/ρ1により表わされる。また、ブレーキB1がオンとされていることから、第2プラネタリギヤP2はモータMG2の動力を減速して駆動軸65に伝達する減速ギヤとして機能し、モータMG2からのトルクTm2を増大して駆動軸65に出力する。このとき、駆動軸65に出力されるトルクは、ρ2を第2プラネタリギヤP2のギヤ比(サンギヤ36の歯数/リングギヤ37の歯数)とするとTm2/ρ2により表わされる。したがって、駆動軸65(リングギヤ32およびリングギヤ37の回転軸)に出力されるトルクは、第1プラネタリギヤP1とモータMG1とにより伝達されるエンジン22からのトルクの一部と第2プラネタリギヤP2により増出して出力されるモータMG2からのトルクの和となる。
【0028】
また、動力分配統合機構30は、クラッチC1をオンとすると共にブレーキB1をオフとすることにより、エンジン22からの動力をモータMG1とモータMG2とで反力をとることにより駆動軸65(リングギヤ32およびリングギヤ37の回転軸)に出力することができる。この状態の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図3に示す。第1プラネタリギヤP1の状態についてはキャリア34に作用するトルク(エンジン22からのトルク)の大きさが異なるだけでその力学的関係は上述したとおりである。クラッチC1がオンとされると共にブレーキB1がオフとされていることから、エンジン22からのトルクは第1プラネタリギヤP1のキャリア34だけでなく増速ギヤ40を介して第2プラネタリギヤP2のキャリア39にも入力される。したがって、第2プラネタリギヤP2の状態は、キャリア39に作用するトルク(増速ギヤ40を介して作用するエンジン22からのトルク)の大きさが異なるだけで力学的関係は第1プラネタリギヤP1と同様になり、モータMG2で反力としてのトルクTm2を出力することにより、エンジン22から出力されたトルクTeの一部を駆動軸65に出力する。このとき、駆動軸65に出力されるトルクは、Tm2/ρ2により表わされる。エンジン22からのトルクTeは第1プラネタリギヤP1のキャリア34にも第2プラネタリギヤP2のキャリア39にも作用させることができるが、その反力をモータMG2ですべて受け持てばモータMG1からのトルクの出力は必要なくなり、その反力をモータMG1ですべて受け持てばモータMG2からのトルクの出力は必要なくなる。即ち、この状態では、エンジン22の回転数NeについてのコントロールはモータMG1によってもモータMG2によっても行なうことができる。また、ブレーキB1がオフとされることにより、ブレーキB1をオンとした状態に比してモータMG2の回転数Nm2は小さくなる。車両が高速で走行している状態を考えると、ブレーキB1をオンとした状態ではモータMG2は高回転数で回転駆動させなければならないが、ブレーキB1をオフとすることによりモータMG2を低回転数で回転駆動させることができる。したがって、モータMG2における引き摺りロスや鉄損の増加を抑制することができる。
【0029】
さらに、動力分配統合機構30は、クラッチC1とブレーキB1とを共にオンとすることにより、エンジン22のクランクシャフト26を第2プラネタリギヤP2のキャリア39を介してケースに固定した状態とすることができる。この状態の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図4に示す。この状態では、エンジン22のクランクシャフト26が回転不能に固定されたことにより、第1プラネタリギヤP1はモータMG1の動力を減速して駆動軸65(リングギヤ32およびリングギヤ37の回転軸)に伝達する減速ギヤとして機能し、モータMG1からのトルクTm1を増大して駆動軸65に出力する。このとき、駆動軸65に出力されるトルクは、Tm1/ρ1により表わされる。前述したように、ブレーキB1をオンとすることにより第2プラネタリギヤP2も減速ギヤとして機能するから、モータMG2からのトルクTm2を増大して駆動軸65に出力することができる。したがって、この状態では、駆動軸には、第1プラネタリギヤP1により減速されたモータMG1の動力と第2プラネタリギヤP2により減速されたモータMG2の動力の和が出力される。
【0030】
加えて、動力分配統合機構30は、クラッチC1とブレーキB1とを共にオフとすることにより、モータMG2を切り離すことができる。この状態の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図は、図2における第1プラネタリギヤP1側だけとなる。なお、上述したクラッチC1やブレーキB1のオンオフ制御は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により行なわれる。」(段落【0024】ないし【0030】)

(ウ)「【0035】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図5は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば8msec毎)に繰り返し実行される。
【0036】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ60を充放電するための要求充放電パワーPb*など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、図示しないクランクポジションセンサにより検出されたクランクシャフト26の回転位置に基づいて計算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ53,54により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU50から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ60を充放電するための要求充放電パワーPb*は、残容量(SOC)に基づいて設定されたものをバッテリECU62から通信により入力するものとした。
【0037】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動軸65に出力すべき駆動要求トルクTr*と車両に要求される車両要求パワーP*とを設定する(ステップS110)。駆動要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと駆動要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する駆動要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に駆動要求トルク設定用マップの一例を示す。車両要求パワーP*は、設定した駆動要求トルクTd*に駆動軸65の回転数Nrを乗じたものとバッテリ60が要求する要求充放電パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、駆動軸65の回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めることができる。
【0038】
駆動要求トルクTr*と車両要求パワーP*とを設定すると、設定した車両要求パワーP*に基づいてエンジン22から出力すべきエンジン要求パワーPe*を設定する(ステップS120)。エンジン要求パワーPe*の設定は、エンジン22の応答性がモータMG1,MG2などに比して遅いことから、いままでにこのルーチンが実行されて設定されたエンジン要求パワーPe*と今回設定された車両要求パワーP*とを用いて車両要求パワーP*がいずれエンジン要求パワーPe*として設定されるようなまし処理やレート処理を用いてエンジン要求パワーPe*を設定する。続いて、設定したエンジン要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS130)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインとエンジン要求パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインとエンジン要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0039】
次に、エンジン要求パワーPe*を閾値Prefと比較する(ステップS140)。ここで、閾値Prefは、エンジン22を停止するか否かを判定するために設定されるものである。エンジン要求パワーPe*が閾値Pref未満のときには、エンジン22を停止してモータMG2からのトルクだけで走行するためにクラッチC1をオフとすると共にブレーキB1をオンとし(ステップS150)、エンジン22の運転を停止するためにエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに値0を設定し(ステップS160)、モータMG1のトルク指令Tm1*にも値0を設定すると共に駆動要求トルクTr*を第2プラネタリギヤP2のギヤ比ρ2で除してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS170)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信して(ステップS260)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU50は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ51,52のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。なお、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とには値0が設定されているから、エンジンECU24は、エンジン22が運転されているときには燃料噴射制御や点火制御などの制御を停止してエンジン22の運転を停止し、エンジン22が停止しているときにその状態(停止状態)を保持する。」(段落【0035】ないし【0039】)

イ 上記ア及び図面の記載から分かること
上記ア及び図1の記載から次のことが分かる。
(ア)上記ア(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし7の記載によれば、刊行物1には、ハイブリッド自動車20の動力出力装置が記載されていることが分かる。

(イ)上記ア(イ)(特に、段落【0026】及び【0028】)及び図1の記載によれば、ハイブリッド自動車20の動力出力装置は、全体としてサンギヤ31、サンギヤ36、相互に連結されたキャリア34及びキャリア39、相互に連結されたリングギヤ32及び37からなる4つの回転要素を有することが可能な第1プラネタリギヤP1及び第2プラネタリギヤP2と、該4つの回転要素にそれぞれ連結されたエンジン22、モータMG1、モータMG2、及び駆動軸65とを、備えることが分かる。

(ウ)上記ア(イ)(特に、段落【0026】及び【0028】)及び図1の記載によれば、ハイブリッド自動車20の動力出力装置において、第1プラネタリギヤP1及び第2プラネタリギヤP2における4つの回転要素のうちの1つは、第1プラネタリギヤP1のキャリア34と第2プラネタリギヤP2のキャリア39とがクラッチC1を介して選択的に連結されたものであることが分かる。

(エ)上記ア(イ)(特に、段落【0026】及び【0027】)及び図1の記載によれば、ハイブリッド自動車20の動力出力装置において、クラッチC1による係合対象となる第2プラネタリギヤP2のキャリア39が、ケースに対してブレーキB1を介して選択的に連結されることが分かる。

(オ)上記ア(ア)及び(イ)(特に、段落【0006】、【0026】及び【0027】)並びに図1の記載によれば、ハイブリッド自動車20の動力出力装置は、伝達状態として、ブレーキB1を係合させ且つクラッチC1を解放させてモータMG1によりエンジン22の出力の反力を受け且つモータMG2により駆動軸65を駆動することで走行する第1の伝達状態を有することが分かる。

(カ)上記ア(ア)及び(イ)(特に、段落【0006】、【0026】及び【0028】)並びに図1の記載によれば、ハイブリッド自動車20の動力出力装置は、伝達状態として、ブレーキB1を解放させ且つクラッチC1を係合させてエンジン22の出力の反力をモータMG1およびモータMG2により分担して受けることで走行する第2の伝達状態を有することが分かる。

(キ)上記ア(ウ)(特に、段落【0039】)並びに図1及び5ないし7の記載によれば、ハイブリッド自動車20の動力出力装置は、第2の伝達状態が選択されているときにエンジン22から出力すべきエンジン要求パワーPe*が閾値Pref未満のときには、クラッチC1を解放させ且つブレーキB1を係合させることで第1の伝達状態へ切り換えられた後にエンジン22を停止させることが分かる。

ウ 引用発明
上記ア及びイを総合して、本願発明1の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「全体としてサンギヤ31、サンギヤ36、相互に連結されたキャリア34及びキャリア39、相互に連結されたリングギヤ32及び37からなる4つの回転要素を有することが可能な第1プラネタリギヤP1及び第2プラネタリギヤP2と、該4つの回転要素にそれぞれ連結されたエンジン22、モータMG1、モータMG2、及び駆動軸65とを、備え、
前記4つの回転要素のうちの1つは、前記第1プラネタリギヤP1のキャリア34と前記第2プラネタリギヤP2のキャリア39とがクラッチC1を介して選択的に連結されたものであり、
該クラッチC1による係合対象となる前記第2プラネタリギヤP2のキャリア39が、ケースに対してブレーキB1を介して選択的に連結され、
伝達状態として、前記ブレーキB1を係合させ且つ前記クラッチC1を解放させて前記モータMG1により前記エンジン22の出力の反力を受け且つ前記モータMG2により前記駆動軸65を駆動することで走行する第1の伝達状態、および、前記ブレーキB1を解放させ且つ前記クラッチC1を係合させて前記エンジン22の出力の反力を前記モータMG1および前記モータMG2により分担して受けることで走行する第2の伝達状態を有するハイブリッド自動車20の動力出力装置であって、
前記第2の伝達状態が選択されているときに前記エンジン22から出力すべきエンジン要求パワーPe*が閾値Pref未満のときには、前記クラッチC1を解放させ且つ前記ブレーキB1を係合させることで前記第1の伝達状態へ切り換えられた後に該エンジン22を停止させるハイブリッド自動車20の動力出力装置。」

(2)刊行物2
ア 刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由において、周知技術を例証するために引用された刊行物であって、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-143306号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22を停止させる際の動作について説明する。エンジン22を停止させる処理は、例えば、車速Vがエンジン22を停止してもよい閾値未満の状態でアクセル開度Accや車速V,バッテリ50の状態から車両に要求される車両要求パワーが閾値未満となり、他にエンジン22の運転を継続する要求がないときに行なわれる。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の運転停止が指示されたときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、このエンジン停止時制御ルーチンによる処理の開始と同時に、エンジンECU24によりエンジン22における燃料噴射の停止などが行なわれる。
・・・略・・・
【0027】
続いて、エンジン22の回転数Neを閾値Nref1と比較する(ステップS120)。ここで、閾値Nref1は、例えば、500rpmや600rpmなどを用いることができる。この閾値Nref1を用いる理由については後述する。エンジン22の回転数Neが閾値Nref1以上のときには、クランク角CAに基づいてエンジン22の回転数Neをスムーズに低下させる(引き下げる)と共にエンジン22の回転に伴う振動を抑制するトルクとしての回転低下用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信する(ステップS130)。トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されるようインバータ41のスイッチング素子をスイッチング制御する。エンジン22への燃料供給を停止した状態でエンジン22の回転数Neを低下させているときの動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、S軸上の矢印はモータMG1からサンギヤ31に出力される回転低下用トルクを示し、C軸上の矢印はエンジン22の回転による摺動摩擦や圧縮仕事などによりキャリア34に作用するトルクを示し、R軸上の矢印はモータMG2から減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力されるトルクを示す。
・・・略・・・
【0031】
ステップS120でエンジン22の回転数Neが閾値Nref1未満のときには、今回入力されたエンジン22の回転数Neから前回このルーチンが実行されたときに入力されたエンジン22の回転数(前回Ne)を減じることにより回転数差ΔNeを計算するとと共に(ステップS140)、今回計算した回転数差ΔNeと前回計算した回転数差(前回ΔNe)との和を値2で除することにより回転数差ΔNeの平均としての平均回転数差ΔNeavを計算し(ステップS150)、計算した平均回転数差ΔNeavの絶対値でエンジン22の回転数Neを除することによりエンジン22の回転数Neが現在値からゼロに至るまでに要すると予測される時間としてのゼロ到達予測時間tzを計算する(ステップS160)。ここで、平均回転数差ΔNeavの絶対値を用いるのは、エンジン22の回転数Neが低下しているときには平均回転数差ΔNeavが負の値になるためである。
【0032】
続いて、エンジン22が完全に停止したか否かを判定する(ステップS170)。ここで、エンジン22が完全に停止したか否かの判定は、例えば、エンジン22の回転数Neがゼロの状態で所定時間が経過したか否かを調べることにより行なうことができる。エンジン22が完全に停止していないと判定されたときには、ゼロ到達予測時間tzを閾値tzrefと比較すると共に(ステップS180)、エンジン22の回転数Neを閾値Nref2と比較し(ステップS190)、ゼロ到達予測時間tzが閾値tzrefより大きくエンジン22の回転数Neが閾値Nref2より大きいときには、回転低下用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信し(ステップS130)、トルク指令Tm1*を用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信し(ステップS210?S230),ブレーキトルク指令Tb*を設定してブレーキECU94に送信して(ステップS240)、エンジン停止時制御ルーチンを終了する。ここで、閾値tzrefや閾値Nref2は、モータMG1から回転低下用トルクの出力を継続するとエンジン22が逆方向に回転する可能性があるか否かを判定するために用いられるものであり、閾値tzrefは例えば50msや60msなどを用いることができ、閾値Nref2は例えば300rpmや350rpmなどを用いることができる。このように、ゼロ到達予測時間tzが閾値tzrefより大きくエンジン22の回転数Neが閾値Nref2より大きいときには、回転低下用トルクをモータMG1から出力することにより、エンジン22をスムーズに低下させることができる。
【0033】
一方、ゼロ到達予測時間tzが閾値tzref以下のときや、ゼロ到達予測時間tzが閾値tzrefより大きいがエンジン22の回転数Neが閾値Nref2以下のときには、エンジン22が逆方向に回転する可能性があると判断し、クランク角CAに基づいてエンジン22を逆回転させずに目標停止位置(例えば、圧縮行程の上死点近傍など)で停止させるトルクとしての停止用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信し(ステップS200)、トルク指令Tm1*を用いてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信し(ステップS210?S230),ブレーキトルク指令Tb*を設定してブレーキECU94に送信して(ステップS240)、エンジン停止時制御ルーチンを終了する。ここで、停止用トルクとしては、クランク角CAに基づいてエンジン22を目標停止位置で緩やかに停止させるトルクが用いられ、実施例では正のトルクが用いられるものとした。いま、エンジン22を停止させている最中にブレーキペダル85が大きく踏み込まれたときを考えると、リングギヤ軸32aの回転数Nr(=Nm2/Gr)が急減速することとモータMG1から回転低下用トルクが出力されることとにより、エンジン22の回転数Neは比較的迅速に低下する。この場合、エンジン22の回転数Neだけを用いてモータMG1から出力するトルクを回転低下用トルクから停止用トルクに切り替えると、エンジン22の回転数Neの迅速な低下によってエンジン22は逆方向に回転してしまうことがある。これに対して、実施例では、エンジン22の回転数Neに加えてゼロ到達予測時間tzを用いてモータMG1から出力するトルクを回転低下用トルクから停止用トルクに切り替えるから、エンジン22の回転数Neが比較的迅速に低下するときでも、エンジン22が逆回転するのを抑制することができる。なお、前述したようにエンジン22の回転数Neが閾値Nref1以上のときにゼロ到達予測時間tzを計算せずに回転低下用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定するものとしたのは(S120,S130)、エンジン22の回転数Neがある程度大きいときに平均回転数差ΔNeavの大きさが一時的に大きくなってゼロ到達予測時間tzが閾値tzref以下になったときにモータMG1から出力するトルクが回転低下用トルクから停止用トルクに切り替わるのを回避するためである。
【0034】
こうしてこのルーチンを繰り返し実行している最中にステップS170でエンジン22が完全に停止したと判定されたときには、エンジン停止時制御ルーチンを終了する。そして、その後は、モータMG2からの出力トルクだけで走行するモータ運転モードによる図示しないモータ走行時駆動制御ルーチンが繰り返し実行される。
【0035】
図5は、エンジン22の燃料噴射を停止してエンジン22を回転停止させる際のエンジン22の回転数Neとゼロ到達予測時間tzとモータMG1の出力トルクTm1との時間変化の様子を示す説明図である。図中、実線は実施例の時間変化を示し、一点鎖線はゼロ到達予測時間tzを用いずにエンジン22の回転数Neだけを用いてモータMG1の出力トルクを回転低下用トルクから停止用トルクに変更するときの比較例の時間変化を示す。エンジン22の停止指示がなされてエンジン22の燃料カットが行なわれた時刻t0以降は、モータMG1から回転低下用トルクが出力されてエンジン22の回転数Neがスムーズに低下する。その後の時刻t1にブレーキペダル85が大きく踏み込まれてリングギヤ軸32aに大きな制動力が作用してその回転数が急減速し始めると、これに伴ってエンジン22の回転数Neも迅速に低下し始める。比較例では、エンジン22の回転数Neが閾値Nref2未満に至った時刻t3にモータMG1の出力トルクを回転低下用トルクから停止用トルクに切り替えるため、エンジン22が逆回転するが、実施例では、ゼロ到達予測時間tzが閾値tzref以下に至った時刻t2(時刻t3より前の時刻)にエンジン22の回転数Neに拘わらずモータMG1の出力トルクを回転低下用トルクから停止用トルクに切り替えるため、エンジン22が逆回転するのを抑制することができる。
【0036】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の燃料噴射を停止してエンジン22を回転停止させる際に、エンジン22の回転数Neに基づく平均回転数差ΔNeavを用いて回転数Neが現在値からゼロに至るまでに要すると予測される時間としてのゼロ到達予測時間tzを計算し、計算したゼロ到達予測時間tzが所定時間tzrefより大きいときには回転低下用トルクをモータMG1から出力し、ゼロ到達予測時間tzが所定時間tzref以下に至った以降は停止用トルクをモータMG1から出力するから、エンジン22の回転数Neをスムーズに低下させることができると共にエンジン22の回転数Neの変化率の程度に拘わらずエンジン22が逆回転するのを抑制することができる。」(段落【0024】ないし【0036】)

イ 刊行物2記載の技術
上記ア(特に、段落【0027】、【0035】及び【0036】)及び図1ないし5(特に、図2及び5)の記載によれば、刊行物2には、次の事項からなる技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認める。
「エンジン22の停止指示がされて、モータMG1から回転低下用トルクが出力され、エンジン22の回転数Neが閾値Nref2未満に至ったときに、モータMG1の出力トルクを回転低下用トルクから停止用トルクに切り替え、エンジン22が逆回転するのを抑制する技術。」

(3)刊行物3
ア 刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由おいて、周知技術を例証するために引用された刊行物であって、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-143377号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22を停止させる際の動作について説明する。エンジン22を停止させる処理は、例えば、車速Vがエンジン22を停止してもよい閾値未満の状態でアクセル開度Accや車速V,バッテリ50の状態から車両に要求される車両要求パワーが閾値未満となり、他にエンジン22の運転を継続する要求がないときに行なわれる。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の運転停止が指示されたときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、このエンジン停止時制御ルーチンによる処理の開始と同時に、エンジンECU24によりエンジン22における燃料噴射の停止などが行なわれる。
・・・略・・・
【0027】
次に、エンジン22の回転数Neを値0と比較することによりエンジン22が回転停止したか否かを判定し(ステップS120)、エンジン22の回転数Neが値0でないとき即ちエンジン22が回転停止していないときには、エンジン22の回転数Neを閾値Nref1および閾値Nref1より小さな閾値Nref2と比較する(ステップS130)。ここで、閾値Nref1は、後述の基本補正トルクTmodや学習トルクTleによるモータMG1のトルク指令Tm1*の補正を開始するエンジン22の回転数Neとして設定されており、例えば、600rpmや700rpm,800rpmなどを用いることができる。また、閾値Nref2は、基本補正トルクTmodや学習トルクTleによるモータMG1のトルク指令Tm1*の補正を終了するエンジン22の回転数Neとして設定されており、例えば、300rpmや350rpm,400rpmなどを用いることができる。
【0028】
エンジン22の回転数Neが閾値Nref1より大きいときには、クランク角CAに基づいてエンジン22の回転数Neをスムーズに低下させる(引き下げる)と共にエンジン22の回転に伴う振動を抑制するトルクとしての回転低下用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信する(ステップS140)。トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されるようインバータ41のスイッチング素子をスイッチング制御する。エンジン22への燃料供給を停止した状態でエンジン22の回転数Neを低下させているときの動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、S軸上の矢印はモータMG1からサンギヤ31に出力される回転低下用トルクを示し、C軸上の矢印はエンジン22の回転による摺動摩擦や圧縮仕事などによりキャリア34に作用するトルクを示し、R軸上の矢印はモータMG2から減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力されるトルクを示す。
・・・略・・・
【0039】
そして、このルーチンを繰り返し実行している最中にステップS120の判定処理でエンジン22が完全に停止したと判定されたときには、そのままエンジン停止時制御ルーチンを終了し、その後は、モータMG2からの出力トルクだけで走行するモータ運転モードによる図示しないモータ走行時駆動制御ルーチンが繰り返し実行される。
【0040】
図7は、エンジン22の燃料噴射を停止してエンジン22を回転停止させる際のエンジン22の回転数NeとモータMG1の出力トルクTm1と基本補正トルクTmodと学習トルクTleとの時間変化の様子を示す説明図である。エンジン22の停止指示がなされてエンジン22の燃料カットが行なわれた時刻t0以降は、モータMG1から回転低下用トルクが出力されることにより、エンジン22の回転数Neがスムーズに低下する。そして、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1に至ると、そのときのクランク角CAである初期クランク角CAsetに基づいて基本補正トルクTmodを設定し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1より小さい閾値Nref2に至る時刻t2まで、前回以前にエンジン22を回転停止させたときの目標クランク角変化量ΔCA*とクランク角変化量ΔCAとの偏差が打ち消されるように設定された学習トルクTleを基本補正トルクTmodと共に回転低下用トルクに加えたトルクがモータMG1から出力される。これにより、基本補正トルクTmodや学習トルクTleを考慮しないものに比して目標クランク角変化量ΔCA*とクランク角変化量ΔCAとの偏差をより小さくすることができる。そして、時刻t2より後は、停止用トルクをモータMG1から出力してエンジン22を目標停止クランク角CA*近傍で停止させる。
【0041】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の燃料噴射を停止してエンジン22を回転停止させる際には、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1に至る前は回転低下用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1に至った以降で閾値Nref2に至る以前は回転数Neが閾値Nref1に至ったときのクランク角CAである初期クランク角CAsetに基づく基本補正トルクTmodと前回以前にエンジン22を回転停止させた際に更新した学習トルクTleとを回転低下用トルクに加えたトルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref2未満に至った以降は初期クランク角CAsetに基づく目標クランク角変化量ΔCA*とクランク角変化量ΔCAとの偏差を用いて次回にエンジン22を回転停止させる際に用いる学習トルクTleを設定すると共に停止用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御するから、エンジン22の回転数Neをスムーズに低下させることができると共にエンジン22を回転停止させる際の初期クランク角CAsetに基づく目標クランク角変化量ΔCA*とクランク角変化量ΔCAとの偏差をより小さくすることができる。これにより、回転数Neが閾値Nref2未満に至った以降にエンジン22をより適正なクランク角CAで停止させることができる。」(段落【0024】ないし【0041】)

イ 刊行物3記載の技術
上記ア(特に、段落【0028】、【0040】及び【0041】)及び図1ないし5(特に、図2及び5)の記載によれば、刊行物3には、次の事項からなる技術(以下、「刊行物3記載の技術」という。)が記載されていると認める。
「エンジン22の停止指示がされて、回転低下用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref1に至った以降で閾値Nref2に至る以前は回転数Neが閾値Nref1に至ったときのクランク角CAである初期クランク角CAsetに基づく基本補正トルクTmodと前回以前にエンジン22を回転停止させた際に更新した学習トルクTleとを回転低下用トルクに加えたトルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref2未満に至った以降は初期クランク角CAsetに基づく目標クランク角変化量ΔCA*とクランク角変化量ΔCAとの偏差を用いて停止用トルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータMG1を制御することにより、エンジン22をより適正なクランク角CAで停止させる技術。」

2-2 対比
本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明における「第1プラネタリギヤP1」は、本願発明1における「第1差動機構」に相当し、以下同様に、「第2プラネタリギヤP2」は「第2差動機構」に、「エンジン22」は「エンジン」に、「モータMG1」は「第1電動機」に、「モータMG2」は「第2電動機」に、「駆動軸65」は「出力回転部材」に、「キャリア34」は「回転要素」に、「キャリア39」は「回転要素」に、「クラッチC1」は「クラッチ」に、「第2プラネタリギヤP2のキャリア39」は「第1差動機構又は第2差動機構の回転要素」に、「ケース」は「非回転部材」に、「ブレーキB1」は「ブレーキ」に、「伝達状態」は「走行モード」に、「第1の伝達状態」は「第1ハイブリッド走行モード」に、「第2の伝達状態」は「第2ハイブリッド走行モード」に、「ハイブリッド自動車20の動力出力装置」は「ハイブリッド車両の駆動制御装置」に、「エンジン22から出力すべきエンジン要求パワーPe*が閾値Pref未満のとき」は「エンジンの停止要求があった場合」に、それぞれ相当する。

・引用発明における「サンギヤ31、サンギヤ36、相互に連結されたキャリア34及びキャリア39、相互に連結されたリングギヤ32及び37からなる4つの回転要素」又は「4つの回転要素」は、本件出願の明細書の段落【0038】における「図3に示す「HV-2」は、駆動装置10におけるモード4(第2ハイブリッド走行モード)に相当するものであり、好適には、エンジン12が駆動されて走行用の駆動源として用いられると共に、必要に応じて第1電動機MG1及び第2電動機MG2による駆動乃至発電が行われるハイブリッド走行モードである。 ・・・略・・・ すなわち、図6において紙面向かって左から順に示す4つの回転要素であるサンギヤS1(第1電動機MG1)、サンギヤS2(第2電動機MG2)、相互に連結されたキャリアC1及びC2(エンジン12)、相互に連結されたリングギヤR1及びR2(出力歯車30)の順に結合した複合スプリットモードとなる。」との記載を参酌すると、本願発明1における「4つの回転要素」に相当する。
そして、引用発明における「全体としてサンギヤ31、サンギヤ36、相互に連結されたキャリア34及びキャリア39、相互に連結されたリングギヤ32及び37からなる4つの回転要素を有することが可能な」は、本願発明1における「全体として4つの回転要素を有する」に相当する。

したがって、両者は、
「全体として4つの回転要素を有する第1差動機構及び第2差動機構と、該4つの回転要素にそれぞれ連結されたエンジン、第1電動機、第2電動機、及び出力回転部材とを、備え、
前記4つの回転要素のうちの1つは、前記第1差動機構の回転要素と前記第2差動機構の回転要素とがクラッチを介して選択的に連結されたものであり、
該クラッチによる係合対象となる前記第1差動機構又は前記第2差動機構の回転要素が、非回転部材に対してブレーキを介して選択的に連結され、
走行モードとして、前記ブレーキを係合させ且つ前記クラッチを解放させて前記第1電動機により前記エンジンの出力の反力を受け且つ前記第2電動機により前記出力部材を駆動することで走行する第1ハイブリッド走行モード、および、前記ブレーキを解放させ且つ前記クラッチを係合させて前記エンジンの出力の反力を前記第1電動機および前記第2電動機により分担して受けることで走行する第2ハイブリッド走行モードを有するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
前記第2ハイブリッド走行モードが選択されているときに前記エンジンの停止要求があった場合には、前記クラッチを解放させ且つ前記ブレーキを係合させることで前記第1ハイブリッド走行モードへ切り換えられた後に該エンジンを停止させるハイブリッド車両の駆動制御装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明1においては、「前記エンジン回転速度が予め設定された動力伝達系における共振が予測される判定値を下回ったときに前記第1電動機を用いて該エンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、該第1電動機によるエンジン回転速度低下による前記出力部材に発生する反力を相殺するように前記第2電動機が制御される」のに対して、引用発明においては、そのような制御がされるか否か不明である点(以下、「相違点」という。)。

2-3 判断
上記相違点について検討する。
(1)原査定の拒絶の理由において、刊行物2及び刊行物3を例証として、「ハイブリッド車両の駆動制御装の技術分野において、エンジンを適切に停止させるよう、エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されるよう構成することは、従来より周知である(必要ならば、引用文献2の段落[0027],図2,4、引用文献3の段落[0028],図2,4等参照)。」とする。
しかしながら、刊行物2記載の技術及び刊行物3記載の技術からは、「ハイブリッド車両の駆動制御装置の技術分野において、エンジンの停止指示がされて、モータMG1から回転低下用トルクが出力され、エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに、エンジンを適切に停止させるためのトルクを出力する技術。」は、本件出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)であることは理解できるが、エンジン回転速度が予め設定された動力伝達系における共振が予測される判定値を下回ったときに第1電動機を用いて該エンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、該第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されることまでもが、本件出願の出願前に周知の技術であったとはいえない。
なお、刊行物1ないし3の全体をみても、エンジン回転速度が予め設定された動力伝達系における共振が予測される判定値を下回ったときに第1電動機を用いて該エンジン回転速度を積極的に低下させるとともに、該第1電動機によるエンジン回転速度低下による出力部材に発生する反力を相殺するように第2電動機が制御されることを示唆する記載がない。
そうすると、引用発明において、周知技術を適用することができたとしても、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。

(2)そして、本願発明1は、従来のハイブリッド車両において、「第2ハイブリッド走行モードで走行中においてエンジン停止要求に応じてエンジンを停止させる際に、たとえば共振域を速やかに通過させるために第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に引き下げようとすると、 ・・・略・・・ 車両の駆動トルクが意図しないで一時的に増大するという不都合があった。」(本件出願の明細書の段落【0006】)ところ、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を備えることにより、エンジンの回転速度が速やかに共振域を通過するようにされても、「第1電動機によりエンジン回転速度を積極的に引き下げようとしたときに出力回転部材に発生する意図しない駆動力の増大が、第2電動機の出力トルクを一時的に低下させて車両の駆動力を一定に維持させることにより補償(キャンセル)されることができる。このため、車両の駆動トルクが意図しないで一時的に増大するという不都合が解消される。」(本件出願の明細書の段落【0009】)という、引用発明及び周知技術からは当業者が予測することができない効果を奏するものである。

(3)したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2ないし4についても、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2-4 まとめ
上記2-3のとおりであるから、本願発明1ないし4については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
よって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の内容
当審拒絶理由の内容は、次のとおりである。

「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


本件出願の特許請求の範囲の請求項1において、「前記エンジン回転速度が予め設定された判定値を下回ったときに前記第1電動機を用いて該エンジン回転速度を積極的に低下させる」という発明特定事項が記載されている。
この発明特定事項に関し、本件出願の明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がされている。
・「【0006】
しかし、上記ハイブリッド車両において、第2ハイブリッド走行モードで走行中においてエンジン停止要求に応じてエンジンを停止させる際に、たとえば共振域を速やかに通過させるために第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に引き下げようとすると、前記第2差動機構における第2回転要素及び第3回転要素のうち前記第1差動機構における第3回転要素に連結されていない方の回転要素と第1差動機構における第2回転要素とがクラッチにより連結されていて、第1電動機によりエンジン回転速度を積極的に引き下げようとしたときに出力回転部材に発生する意図しない駆動トルクの増大を第2電動機が独立して補償(キャンセル)することができないため、車両の駆動トルクが意図しないで一時的に増大するという不都合があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、第2ハイブリッド走行モードで走行中にエンジンを停止させる場合に、意図しない車両の駆動トルクの増大が発生しないハイブリッド車両の駆動制御装置を提供することにある。」(明細書の段落【0006】及び【0007】)
・「【0054】
共振抑制制御部80は、予め定められた関係からエンジン12の回転速度N_(E)に基づいて動力伝達系における共振可能性を判定した時点すなわち共振開始を予測した時点、エンジン回転速度N_(E)が実験的に共振が予測されるたとえば400rpm程度に予め設定された判定値を下回った時点で、エンジン12の回転速度N_(E)が速やかに共振域を通過するように、第1電動機MG1のトルクを用いてエンジン12の回転速度N_(E)を積極的にすなわちそれまでの低下速度よりも速やかに低下させる。
【0055】
トルク補償制御部82は、上記第1電動機MG1を用いてエンジン12の回転速度N_(E)を積極的に低下させるときにリングギヤR1、R2と一体的に回転する出力歯車30が反力を受けてその回転が一時的に上昇しようとするが、車両は一定の駆動力で走行することが望まれるので、その反力を相殺するための補償トルク(正トルク)を第2電動機MG2から出力させる。」(明細書の段落【0054】及び【0055】)
・「【0058】
しかし、S3の判定が否定される場合は、エンジン制御部78に対応するS4において、クラッチCLが解放され、且つブレーキBKが係合させられることにより、車両の走行モードがそれまでのHV-2(モード4)モードからHV-1(モード3)モードへ切り換えられた後、エンジン停止制御部78に対応するS5において、第1電動機MG1のトルクを用いてエンジン12の回転速度N_(E)が積極的に低下させられてエンジン12の作動が停止させられ、エンジン回転速度N_(E)の低下が開始される。このエンジン回転速度N_(E)の低下中では、たとえば、エンジン回転速度N_(E)が実験的に共振が予測される予め設定された判定値を下回った時点で、エンジン12の回転速度N_(E)が速やかに共振域を通過するように、第1電動機MG1のトルクを用いてエンジン12の回転速度N_(E)を積極的にすなわちそれまでの低下速度よりも速やかに低下させられる。このようなエンジン12の停止要求に伴うエンジン回転速度N_(E)の低下過程では、クラッチCLが解放されているので、第1電動機MG1によるエンジン回転速度N_(E)の低下促進過程で第2電動機MG2によるトルク補償が可能となり、第2電動機MG2によるトルク補償が行なわれる。」(明細書の段落【0058】)
これらの記載によると、本件出願の発明の詳細な説明には、第1電動機を用いてエンジン回転速度を積極的に低下させるのに、速やかに動力伝達系における共振域を通過するように、「予め設定された判定値」として、予め設定された動力伝達系における共振が予測される回転速度である判定値とする例のみが記載されており、本件出願の出願時の技術常識を考慮しても、他の予め設定された判定値とすることを想定できない。
そうすると、出願時の技術常識に照らしても、本件出願の請求項1ないし3に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
また、本件出願の請求項1ないし3に係る発明が、本件出願の明細書における段落【0006】及び【0007】に記載された発明の課題を解決するためには、「予め設定された判定値」として、予め設定された動力伝達系における共振が予測される回転速度である判定値とすることが前提構成であると認められるが、本件出願の請求項1ないし3の記載には反映されていない。

よって、本件出願の請求項1ないし3に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。」

2 当審拒絶理由についての判断
平成28年12月13日に提出された手続補正書によって、本件出願の請求項1は、上記第2に示すものに補正された。
このことにより、本願発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、当審拒絶理由は解消した。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-06 
出願番号 特願2014-505871(P2014-505871)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B60K)
P 1 8・ 121- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 ハイブリッド車両の駆動制御装置  
代理人 池田 光治郎  
代理人 池田 治幸  
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