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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06T 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06T 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G06T |
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管理番号 | 1324473 |
審判番号 | 不服2016-228 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-06 |
確定日 | 2017-02-27 |
事件の表示 | 特願2014-529746「情報処理装置、制御方法、プログラム、及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/123128、平成27年 5月21日国内公表、特表2015-515030、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年1月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年2月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年5月21日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月9日付けで手続補正がされ、平成27年10月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、平成28年2月5日に前置報告がなされ、平成28年12月6日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成28年12月21日付けで手続補正がされたものである。 第2 原査定の理由の概要と前置報告の内容及び当審の拒絶理由 1.原査定の理由の概要 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-9,16-24 ・引用文献等 1-2 出願人は平成27年7月9日付け意見書の段落3-3において、「従いまして、引用文献1と2とを組み合わせたとしても、1)毎フレーム、距離ごとに動的マップ(シャドウマップ)を生成して格納し、2)動的マップを生成したフレームについてシーンを描画する際に、該動的マップがキャッシュミスしていれば適用をサスペンドして動的マップを再生成することが開示されるのみであり、本願発明のような、生成の時点で他の視点について生成された視点非依存マップが既に格納されているのであれば生成に係る演算を行わない制御を行う点については開示も示唆もされるものではないと思料します。」と主張している。 しかし、「生成の時点で他の視点について生成された視点非依存マップが既に格納されているのであれば生成に係る演算を行わない制御を行う点」は、本願の請求項1-9,16-24で特定された事項ではない結果、本願の請求項1-9,16-24に係る発明は、「1)毎フレーム、距離ごとに動的マップ(シャドウマップ)を生成して格納し、2)動的マップを生成したフレームについてシーンを描画する際に、該動的マップがキャッシュミスしていれば適用をサスペンドして動的マップを再生成すること」を発明の範囲に包含しているから、出願人の主張は採用できない。 また、引用文献1の段落[0075]には、「特に好ましい一実施形態では、本発明が使用される際に対象となるデータ(メモリからのフェッチが試みられるデータなど)は、上述のような好ましくは動的グラフィックスデータなどの、典型的にはシーン毎に生成されるか、または計算されるデータを含む。」との記載があり、シーン毎に生成されないデータをも対象とすることが示唆されているから、引用文献1に記載された発明において、「生成の時点で他の視点について生成された視点非依存マップが既に格納されているのであれば生成に係る演算を行わない制御を行う」ように構成することは当業者が容易になし得たことである。 よって、請求項1-9,16-24に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 10-15,25-32 ・引用文献等 1-3 上記「・請求項 1-9,16-24」の欄、及び、平成27年5月21日付け拒絶理由通知書の「・請求項 10-13,23-28」の欄の記載を参照されたい。 <引用文献等一覧> 1.特開2009-295162号公報 2.「デジタルコンテンツの次世代基盤技術に関する調査研究報告書」,財団法人デジタルコンテンツ協会,2007年 3月,p.69-70 3.特開2012-245347号公報 2.前置報告の内容 ・根拠条文 第17条の2第3項 ・請求項 1-26 ・特許査定できない理由 審判請求人は、平成28年1月6日付け手続補正書において、請求項1,13に対し、「各視点に係る描画範囲に含まれるオブジェクトについての視点非依存マップであって、前記複数の視点につき共通の視点非依存マップを所定の演算により生成する」と補正を行った。 そして、審判請求書の段落3-1(1)において「◇『各フレームに係る前記複数の視点それぞれに対応する画面の描画処理の過程において、前記取得された視点情報に基づき、各視点に係る描画範囲に含まれるオブジェクトについての視点非依存マップであって、前記複数の視点につき共通の視点非依存マップを所定の演算により生成する生成手段』は、例えば出願当初の明細書の段落0027、0033、0034及び0042の記載に基づきます。」と主張している。 請求項1,13に記載された「複数の視点につき共通の視点非依存マップ」の定義は不明であるが、複数の視点が利用する(複数の視点の描画範囲に共通して含まれる)視点非依存マップであると解釈できる。 ここで、本願明細書の段落[0027]には以下の記載がある。 「また、視点非依存であるため、各クライアント機器について生成した視点非依存マップは、他のクライアント機器に対するゲーム画面の生成において参照することが可能である。…従って、例えば図3に示されるように同一のフィールド304に設定される複数の視点301?303についてゲーム画面を描画する際には、いずれかのゲーム画面の描画において生成した視点非依存マップを使用することができる。」 上記下線部の記載から、本願の実施例においては、「複数の視点につき共通の視点非依存マップを…生成する」わけでははく、他の視点が参照(再利用)可能な視点非依存マップを生成しているのみである(必ずしも再利用されるとは限らない)と考えられる。 また、本願明細書の段落[0034]-[0048]に記載された処理を参照しても、ある視点について視点非依存マップを生成する時点では、他の視点がその視点非依存マップを参照するか否かは不明である(「共通の視点非依存マップ」となるか否かは不明である)と考えられる。 よって、この補正は、当初明細書等に明示的に記載された事項ではなく、また、当初明細書等から自明な事項でもない。 したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。 仮に、この補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反するものでないとしても、上述の理由により、請求項1,13に記載された「複数の視点につき共通の視点非依存マップ」との表現は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと考えられる。 また、本願の請求項18には「前記複数のマップ」との記載があるが、この記載に対応する「複数のマップ」の記載は、選択的に引用される請求項14-17にしか存在せず、請求項18が請求項13を引用する場合に、「前記複数のマップ」が指し示すものが不明確となると考えられる(請求項18の「…請求項13乃至17のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。」との記載は、「…請求項14乃至17のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。」の誤記であると考えられる。)。 3.当審の拒絶理由 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1について 格納されているかどうかの判断の対象である、「描画範囲に含まれるオブジェクトについての前記視点非依存マップの画素」が何を示すのか不明瞭である。 明細書【0041】を参照すれば、格納されているかどうかの判断は、「各画素オブジェクトについて生成すべきシャドウマップの値」(「オブジェクトについて」でなく「画素オブジェクトについて」であり、「画素」でなく「値」である。)について判断を行っていることが記載されているだけである。 「取得手段」、「生成手段」、「格納手段」がそれぞれどの様な構成であるのか不明瞭である。 請求項13について 請求項1と同様である。 請求項2-12、14-26について いずれも請求項1または請求項13を引用して記載しているから同様の理由を有する。 <補正の示唆> 例えば請求項1を、下記のように補正することで、請求項1についての拒絶理由は解消する。 【請求項1】 連続した複数のフレームの各々について複数の視点情報を取得する取得手段と、 前記複数の視点情報は、複数の視点の各々を示す情報であり、 前記複数の視点は、並行して描画が行われる同一の3次元シーンについての複数の視点であり、 前記複数の視点につき共通の視点非依存マップを生成する生成手段と、 前記視点非依存マップは、各フレームに係る前記複数の視点それぞれに対応する画面の描画処理の過程において、前記取得された視点情報に基づき、各視点に係る描画範囲に含まれるオブジェクトについての視点非依存マップであり、 前記生成手段は、 前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が既に格納されている場合に、所定の演算を行わず、 前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が格納されていない場合に、前記所定の演算を行い、前記視点非依存マップの対応する画素を生成するものであり、 生成された前記視点非依存マップの各画素を、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けて格納し、前記視点非依存マップを前記複数のフレームに渡って保持する格納手段と、 を有することを特徴とする情報処理装置。 なお、上記の案は、法律的効果を生じさせるものではなく、一案であって、上記以外の記載も否定しない。明細書等についてどのように補正をするかは、出願人が決定すべきものである。 第3 本願発明 本願の請求項1-26に係る発明は、平成28年12月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-26に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 連続した複数のフレームの各々について複数の視点情報を取得する取得手段と、 前記複数の視点情報は、複数の視点の各々を示す情報であり、 前記複数の視点は、並行して描画が行われる同一の3次元シーンについての複数の視点であり、 前記複数の視点につき共通の視点非依存マップを生成する生成手段と、 前記視点非依存マップは、各フレームに係る前記複数の視点それぞれに対応する画面の描画処理の過程において、前記取得された視点情報に基づき、各視点に係る描画範囲に含まれるオブジェクトについての視点非依存マップであり、 前記生成手段は、 前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が既に格納されている場合に、所定の演算を行わず、 前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が格納されていない場合に、前記所定の演算を行い、前記視点非依存マップの対応する画素を生成するものであり、 生成された前記視点非依存マップの各画素を、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けて格納し、前記視点非依存マップを前記複数のフレームに渡って保持する格納手段と、 を有することを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 前記同一の3次元シーンについての前記視点非依存マップは、各々異なる距離が関連付けられた複数のマップで構成され、 前記格納手段は、前記複数のマップのうちの前記視点との距離に対応するマップに、生成された前記視点非依存マップの各画素を格納する ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記複数のマップは、各々異なる解像度を有するマップであることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。 【請求項4】 前記複数のマップは、関連付けられている距離が短いほど同一のオブジェクトに対して高い解像度を有するマップであることを特徴とする請求項2または3に記載の情報処理装置。 【請求項5】 前記複数のマップのうち、第1の距離が関連付けられた第1のマップの画素の値は、前記第1の距離よりも短い第2の距離が関連付けられた第2のマップの対応する位置の画素の値の平均値に対応することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項6】 前記複数のマップのうちの第1の距離が関連付けられた第1のマップの対象画素を、 前記第1の距離よりも短い第2の距離が関連付けられた第2のマップの前記対象画素に対応する位置の画素、及び 前記第1のマップの前記対象画素の周辺画素と前記第1の距離よりも長い第3の距離が関連付けられた第3のマップの前記対象画素に対応する位置の画素 の少なくともいずれかに基づいて新たに生成する追加手段をさらに有し、 前記格納手段は、前記追加手段により生成された前記対象画素を、前記第1の距離に関連付けて格納する ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項7】 前記追加手段は、前記第2のマップの前記対象画素に対応する位置の全ての画素の値が前記格納手段により格納された場合に、これらの画素の平均値を有して前記対象画素を生成することを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。 【請求項8】 前記追加手段は、前記第3のマップの前記対象画素に対応する位置の画素の値と、前記第1のマップの該画素に対応する前記対象画素以外の周辺画素の値とが前記格納手段により格納されている場合に、前記第3のマップの対応する位置の画素の値から該周辺画素の平均値を減じて得られた値を有して前記対象画素を生成することを特徴とする請求項6または7に記載の情報処理装置。 【請求項9】 前記複数の視点の各々について、前記3次元シーンの描画処理を行って対応する画面を生成する描画手段をさらに有し、 前記描画手段は、生成する画面の各画素について、前記格納手段に格納されている、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けられた前記視点非依存マップの画素を用いて前記対応する画面を生成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項10】 複数の外部装置との通信を行う通信手段と、 前記複数の視点の各々について、前記3次元シーンの描画処理を行って対応する画面を生成する描画手段と、をさらに有し、 前記取得手段は、通信が行われている複数の外部装置について前記複数の視点情報を取得し、 前記描画手段は、生成する画面の各画素について、前記格納手段に格納されている、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けられた前記視点非依存マップの画素を用いて前記対応する画面を生成し、 前記通信手段は、前記描画された画面を対応する外部装置に対して送信する ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項11】 前記視点非依存マップは、前記3次元シーンに配置された静的な光源及びオブジェクトに基づくライトマップあるいはシャドウマップを含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項12】 前記格納手段は、格納している前記視点非依存マップの画素のうちの描画に使用されない画素が所定の条件を満たす場合に、該画素を削除することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。 【請求項13】 連続した複数のフレームの各々について複数の視点情報を取得する取得工程と、 前記複数の視点情報は、複数の視点の各々を示す情報であり、 前記複数の視点は、並行して描画が行われる同一の3次元シーンについての複数の視点であり、 前記複数の視点につき共通の視点非依存マップを生成する生成工程と、 前記視点非依存マップは、各フレームに係る前記複数の視点それぞれに対応する画面の描画処理の過程において、前記取得された視点情報に基づき、各視点に係る描画範囲に含まれるオブジェクトについての視点非依存マップであり、 前記生成工程において、 前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が既に格納されている場合に、所定の演算は行われず、 前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについての生成すべき視点非依存マップの値が格納されていない場合に、前記所定の演算を行い、前記視点非依存マップの対応する画素が生成されるものであり 生成された前記視点非依存マップの各画素を、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けて格納し、前記視点非依存マップを前記複数のフレームに渡って保持する格納工程と、 を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法。 【請求項14】 前記同一の3次元シーンについての前記視点非依存マップは、各々異なる距離が関連付けられた複数のマップで構成され、 前記格納工程において、前記複数のマップのうちの前記視点との距離に対応するマップに、生成された前記視点非依存マップの各画素が格納される ことを特徴とする請求項13に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項15】 前記複数のマップは、各々異なる解像度を有するマップであることを特徴とする請求項14に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項16】 前記複数のマップは、関連付けられている距離が短いほど同一のオブジェクトに対して高い解像度を有するマップであることを特徴とする請求項14または15に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項17】 前記複数のマップのうち、第1の距離が関連付けられた第1のマップの画素の値は、前記第1の距離よりも短い第2の距離が関連付けられた第2のマップの対応する位置の画素の値の平均値に対応することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項18】 前記複数のマップのうちの第1の距離が関連付けられた第1のマップの対象画素を、 前記第1の距離よりも短い第2の距離が関連付けられた第2のマップの前記対象画素に対応する位置の画素、及び 前記第1のマップの前記対象画素の周辺画素と前記第1の距離よりも長い第3の距離が関連付けられた第3のマップの前記対象画素に対応する位置の画素 の少なくともいずれかに基づいて新たに生成する追加工程をさらに有し、 前記追加工程において生成された前記対象画素が、前記格納工程において前記第1の距離に関連付けて格納される ことを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項19】 前記第2のマップの前記対象画素に対応する位置の全ての画素の値が前記格納工程において格納された場合に、前記追加工程においてこれらの画素の平均値を有して前記対象画素が生成されることを特徴とする請求項18に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項20】 前記第3のマップの前記対象画素に対応する位置の画素の値と、前記第1のマップの該画素に対応する前記対象画素以外の周辺画素の値とが前記格納工程において格納されている場合に、前記追加工程において前記第3のマップの対応する位置の画素の値から該周辺画素の平均値を減じて得られた値を有して前記対象画素が生成されることを特徴とする請求項18または19に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項21】 前記複数の視点の各々について、前記3次元シーンの描画処理を行って対応する画面を生成する描画工程をさらに有し、 前記描画工程において、生成する画面の各画素について、格納されている、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けられた前記視点非依存マップの画素を用いて前記対応する画面が生成されることを特徴とする請求項13乃至20のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項22】 複数の外部装置との通信を行う通信工程と、 前記複数の視点の各々について、前記3次元シーンの描画処理を行って対応する画面を生成する描画工程と、をさらに有し、 前記取得工程において、通信が行われている複数の外部装置について定められた前記複数の視点情報が取得され、 前記描画工程において、生成する画面の各画素について、格納されている、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けられた前記視点非依存マップの画素を用いて前記対応する画面が生成され、 前記通信工程において、前記描画された画面が対応する外部装置に対して送信される ことを特徴とする請求項13乃至20のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項23】 前記視点非依存マップは、前記3次元シーンに配置された静的な光源及びオブジェクトに基づくライトマップあるいはシャドウマップを含むことを特徴とする請求項13乃至22のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項24】 前記格納工程において、格納している前記視点非依存マップの画素のうちの描画に使用されない画素が所定の条件を満たす場合に、該画素が削除されることを特徴とする請求項13乃至23のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。 【請求項25】 コンピュータに、請求項13乃至24のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。 【請求項26】 コンピュータに、請求項13乃至24のいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法の各工程を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。」 第4 当審の判断 1.特許法第29条第2項について (1)引用発明 原査定の理由に用いられた特開2009-295162号公報(以下「引用例1」という。)には、 「【0001】 本発明は、グラフィックスの処理に関するものであり、具体的には、例えば、ディスプレイ画面に表示する三次元(3D)グラフィックスの処理に関するものである。 【背景技術】 【0002】 当業で知られているように、3Dグラフィックス処理は、通常、まずは表示するシーンを複数の類似の基本コンポーネント(いわゆる「プリミティブ」)に分割して、3Dグラフィックス処理オペレーションを実行しやすくすることによって行われる。これらの「プリミティブ」は、通常、三角形などの単純な多角形の形態をとる。 【0003】 表示するシーンに対応するプリミティブは、通常、グラフィックス処理システム用のアプリケーションプログラムインターフェイスにより生成され、そのために、グラフィックスの表示を必要とするアプリケーション(例えば、ゲーム)から受け取ったグラフィックス描画命令(リクエスト)を使用する。」 「【0018】 これらの処理オペレーションを行いやすくするために、グラフィックス処理システムは、通常、シーンが表示用に処理されるときにこの方法でグラフィックスプロセスによりフェッチされる必要があると思われるデータすべてが、必ずメモリ内に格納されており、関連プロセスが始まる前に使用するグラフィックスプロセスに利用可能であるように構成される。これは、関連するデータが、表示するシーンを処理する際にグラフィックスプロセスがメモリ内を探したときに必ず見つかるようにするためのものである。(シーンは、典型的には、当業で知られているように、1つまたは複数の、通常は複数の描画コール(つまり、描画される(複数の)プリミティブからなるグループ)で構成される。) 【0019】 これは、いわゆる「静的」グラフィックスデータ(つまり、例えば「静的」テクスチャマップなどの共通の複数のシーンに対し定義済みであるとしてよいデータ)およびいわゆる「動的」グラフィックスデータ(つまり、シーン毎に生成されるグラフィックスデータ(実際には、予め複数のシーンとしてではなくシーンの一部として))の両方に適用される。このような「動的」データがなぜ必要かというと、例えば、データが必要になるシーンの前に予め事前定義または生成されえない、例えば、データがユーザー入力に基づいている、および/またはユーザー入力に応じて必要である、および/またはシーン毎に変化する、および/または中間動的ステージに依存し、したがって予め予測されえない場合があるからである。 【0020】 「動的」グラフィックスデータの実施例は、シーンに対するいわゆる「動的テクスチャ」(「動的テクスチャマップ」)およびタイルリストを含む(タイルベースのレンダリングシステムの場合)。例えば、このようなデータは、シーンの処理を目的としてシャドウマップなどのデータを供給するために、異なる角度から(例えば、実際の視点角度からではなく)なされるシーンの分析および/または表示に関係する。 【0021】 「静的」グラフィックスデータは、例えば、グラフィックス処理を必要とするアプリケーションにより提供され、シーンをレンダリングするときに使用するためメモリ内に格納しておくことができる。 【0022】 「動的」グラフィックスデータについては、ホストシステムおよび/またはグラフィックス処理システムは、通常、シーンが表示のため処理される前にそのデータを生成し格納するように制御され、これにより再びそのデータは、シーンそれ自体が表示のため処理される前に予めメモリ内で利用可能な状態になっている。」 「【0040】 本発明では、グラフィックス処理システムは、必要とされるデータがメモリ内で利用可能な状態になっていない場合にグラフィックス処理システムが使用するデータを生成するように、構成され、動作可能である。このことは、例えば、本発明のシステムを使用すれば、グラフィックス処理(例えば、フラグメントのレンダリング)に必要なデータが使用できるようにまだ格納されていない場合、必要になったときにそのデータが生成されうることを意味している。 【0041】 ここで、本発明は、既存の動的データ生成構成と対照的なものであり、つまり、これらの処理では、動的データはグラフィックス処理システムが受け取ったコマンドに応答して生成されるのであって、メモリ内にデータが存在しないことが判明したことに応答して生成されるわけではない(したがって、既存の動的生成構成において生成する前にメモリ内でデータが利用可能な状態になっているかどうかを最初に判定するステップもない)ことに留意されたい。」 「【0239】 必要なテクセルが、動的テクスチャに関係していると判定された場合、システムは、最初に、動的にテクスチャメモリ9からそれらのテクセルをフェッチすることを試みる(ステップ25)。 【0240】 テクセルが動的テクスチャメモリ9内に存在する場合、テクセルは、直接的に取り出せ、動的テクスチャは通常の方法で注目するフラグメントに適用されうる(つまり、静的テクスチャの場合のように)(ステップ31)。 【0241】 次いで、フラグメントは、通常どおりレンダリングされ、タイルバッファ5に出力されうる(ステップ32および33)。 【0242】 他方で、動的テクスチャを注目するフラグメントに適用するのに必要なテクセルが動的テクスチャメモリ9内で利用可能な状態にないことが判明した(つまり、実際に、動的テクスチャの「ミス」が発生した)場合、関連するテクセルが生成されなければならない。 【0243】 このプロセスの第1のステージでは、注目する動的テクセルを必要とするフラグメントのレンダリングをサスペンドする(この処理は、動的テクセルが生成されるまで完了しえないからである)(ステップ28)。これは、フラグメントキャッシュ10内にフラグメントに関係する関連フラグメントデータ、レンダリング状態データなどを格納することにより行われるので、新しい1つまたは複数の動的テクセル(動的テクスチャデータ)が生成された後、その現在データを取り出し、フラグメント処理を、そのサスペンドした時点から再開することができる。」 の記載があるから、 「ディスプレイ画面に表示する三次元(3D)グラフィックスの処理に関し、 3Dグラフィックス処理は、表示するシーンを複数の類似のプリミティブに分割して、3Dグラフィックス処理オペレーションを実行しやすくすることによって行われ、 表示するシーンに対応するプリミティブは、グラフィックスの表示を必要とする、ゲームアプリケーションから受け取ったグラフィックス描画命令を使用し、 グラフィックス処理システムは、シーンが表示用に処理されるときにこの方法でグラフィックスプロセスによりフェッチされる必要があると思われるデータすべてが、必ずメモリ内に格納されており、関連プロセスが始まる前に使用するグラフィックスプロセスに利用可能であるように構成されており、 いわゆる「静的」グラフィックスデータ(共通の複数のシーンに対し定義済みであるとしてよいデータ)およびいわゆる「動的」グラフィックスデータ(シーン毎に生成されるグラフィックスデータ)の両方に適用され、「動的」データは、予め予測されえない場合があるから必要であり、 「動的」グラフィックスデータは、シーンの処理を目的としてシャドウマップなどのデータを供給するために、異なる角度から(実際の視点角度からではなく)なされるシーンの分析および/または表示に関係し、 「静的」グラフィックスデータは、グラフィックス処理を必要とするアプリケーションにより提供され、シーンをレンダリングするときに使用するためメモリ内に格納しておくことができ、 「動的」グラフィックスデータについては、ホストシステムおよび/またはグラフィックス処理システムは、シーンが表示のため処理される前にそのデータを生成し格納するように制御され、これにより再びそのデータは、シーンそれ自体が表示のため処理される前に予めメモリ内で利用可能な状態になっており、 グラフィックス処理システムは、必要とされるデータがメモリ内で利用可能な状態になっていない場合にグラフィックス処理システムが使用するデータを生成するように、構成され、動作可能であり、グラフィックス処理(フラグメントのレンダリング)に必要なデータが使用できるようにまだ格納されていない場合、必要になったときにそのデータが生成されうることを意味しており、 動的データはグラフィックス処理システムが受け取ったコマンドに応答して生成されるのであって、メモリ内にデータが存在しないことが判明したことに応答して生成されるわけではなく、 必要なテクセルが、動的テクスチャに関係していると判定された場合、システムは、最初に、動的にテクスチャメモリ9からそれらのテクセルをフェッチすることを試み、 テクセルが動的テクスチャメモリ9内に存在する場合、テクセルは、直接的に取り出せ、動的テクスチャは通常の方法で注目するフラグメントに適用され、 フラグメントは、通常どおりレンダリングされ、タイルバッファ5に出力し、 動的テクスチャを注目するフラグメントに適用するのに必要なテクセルが動的テクスチャメモリ9内で利用可能な状態にないことが判明した場合、関連するテクセルが生成されなければならず、 注目する動的テクセルを必要とするフラグメントのレンダリングをサスペンドし、新しい1つまたは複数の動的テクセル(動的テクスチャデータ)が生成された後、その現在データを取り出し、フラグメント処理を、そのサスペンドした時点から再開することができる グラフィックス処理システム。」 が記載されている。(以下「引用発明」という。) (2)本願発明1と引用発明の比較 引用発明の「レンダリング」や「グラフィックス処理」は、本願発明1の「所定の演算」に相当する。 引用発明の「タイルバッファ5」は、本願発明1の「格納手段」に相当する。 引用発明1は、ゲーム用三次元グラフィックスの処理であるから、3次元シーンについての処理であるといえる。 本願発明1の「視点非依存マップ」は、本願明細書【0026】および【0027】によれば、「静的なオブジェクトの関係によってのみ定義される」データであって、「動的なオブジェクトが存在しない状態の3Dシーンについて事前に生成しておくことも可能」なデータであるから、引用発明における「『静的グラフィックスデータ』を用いて生成したデータ」に相当する。 そして、「表示するシーン」は「静的グラフィックスデータ」と「動的グラフィックスデータ」の両方を用いて処理されるものであるところ、「動的グラフィックスデータ」は、異なる角度からなされるシーンの分析に関係するのであるから、「静的グラフィックスデータ」もまた、異なる角度からなされるシーンの分析に関係するのは当然である。 上記によれば、引用発明の「静的グラフィックスデータ」は、「複数の視点」についての「共通のデータを生成」するレンダリングに関係しており、視点が視点情報で示されることは明らかである。 つまり、引用発明は、「複数の視点情報は、複数の視点の各々を示す情報」であり、「複数の視点は、同一の3次元シーンについての複数の視点」であり、「複数の視点につき共通の視点非依存マップを生成する」といえる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「複数の視点情報を取得する取得手段と、 前記複数の視点情報は、複数の視点の各々を示す情報であり、 前記複数の視点は、同一の3次元シーンについての複数の視点であり、 前記複数の視点につき共通の視点非依存マップを生成する生成手段と、 前記視点非依存マップは、前記複数の視点それぞれに対応する画面の描画処理の過程において、前記取得された視点情報に基づき、各視点に係る描画範囲に含まれるオブジェクトについての視点非依存マップであり、 格納手段と、 を有することを特徴とする情報処理装置。」 で一致し、下記の点で相違する。 相違点1 本願発明1は複数の視点情報について、「連続した複数のフレームの各々について」複数の視点情報を取得し、本願発明1は複数の視点について、「各フレームに係る」複数の視点であるのに対し、引用発明はいずれも記載が無い点。 相違点2 同一の3次元シーンについての複数の視点について、本願発明1は「並行して描画が行われる」同一の3次元シーンについてであるのに対し、引用発明は記載が無い点。 相違点3 生成手段について、本願発明1は、「前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が既に格納されている場合に、所定の演算を行わず、前記視点との距離に対応した、前記描画範囲に含まれる画素オブジェクトについて生成すべき視点非依存マップの値が格納されていない場合に、前記所定の演算を行い、前記視点非依存マップの対応する画素を生成するものであ」るのに対し、引用発明は、「「動的」グラフィックスデータについては、ホストシステムおよび/またはグラフィックス処理システムは、シーンが表示のため処理される前にそのデータを生成し格納するように制御され」ており、「動的テクスチャを注目するフラグメントに適用するのに必要なテクセルが動的テクスチャメモリ9内で利用可能な状態にないことが判明した場合、関連するテクセルが生成されなければならず」、「注目する動的テクセルを必要とするフラグメントのレンダリングをサスペンドし、新しい1つまたは複数の動的テクセル(動的テクスチャデータ)が生成された後、その現在データを取り出し、フラグメント処理を、そのサスペンドした時点から再開」するのであって、「動的データはグラフィックス処理システムが受け取ったコマンドに応答して生成されるのであって、メモリ内にデータが存在しないことが判明したことに応答して生成されるわけではな」い点。 相違点4 格納手段について、本願発明1は、「生成された前記視点非依存マップの各画素を、該画素に対応するオブジェクトと該オブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けて格納し、前記視点非依存マップを前記複数のフレームに渡って保持する」のに対し、引用発明は、「フラグメントをレンダリングし」たデータをメモリに入力する点。 (3)判断 相違点3について 「(2)本願発明1と引用発明の比較」で記載したように、引用発明の「グラフィックス処理」は本願発明1の「所定の演算」に相当する。 そして、引用発明では、グラフィックス処理に必要なデータである「テクセル」が存在しない場合に、処理をサスペンド、すなわち中断して、存在しないテクセルが生成された後に処理を再開している。 つまり、「グラフィックス処理を実行」した際に、データが存在しない場合は「処理を中断」するのであるから、データが存在するかどうかの判断の前に「処理を実行」しているのであって、「データが存在しない」場合に「グラフィックス処理を行わない」のではない。 また、引用発明は「動的データはグラフィックス処理システムが受け取ったコマンドに応答して生成されるのであって、メモリ内にデータが存在しないことが判明したことに応答して生成されるわけではな」い。 ここで、引用発明の「動的データ」は「生成される」データすなわち「出力結果データ」であり、「メモリ内にデータが存在しないこと」の「データ」は該「出力結果データ」を示している。 つまり、引用発明は、「出力結果データは、受け取ったコマンドに応答して生成されるのであって、出力結果データが存在しないことが判明したことに応答して生成されるわけではな」いものであるといえる。 そうすると、本願発明1は、「視点非依存マップの値が格納されていない場合に、所定の演算を行い」として、引用発明が否定している処理を行うことをその構成要件としているのであるから、本願発明1が引用発明とは異なる発明であることは明らかである。 また、本願発明1は、画素オブジェクトが「視点との距離に対応した」画素オブジェクトであって、格納する「生成された視点非依存マップの各画素」は、各画素に対応するオブジェクトとオブジェクトを描画範囲に含む視点との距離に関連付けて格納するが、引用発明には、「画素オブジェクトと視点との距離」に関する記載は無いから、生成された視点非依存マップの各要素を「画素オブジェクトと視点との距離」に関連付けて格納していない。 したがって、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、少なくとも相違点3について当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本願発明1は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2-26に係る発明も、本願発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 2.第17条の2第3項について 平成28年12月21日付けの手続補正によって補正され、拒絶の理由は解消された。 3.第36条第6項第2号について 平成28年12月21日付けの手続補正によって補正され、拒絶の理由は解消された。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-26に係る発明は、いずれも、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-02-15 |
出願番号 | 特願2014-529746(P2014-529746) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WY
(G06T)
P 1 8・ 537- WY (G06T) P 1 8・ 121- WY (G06T) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 村松 貴士 |
特許庁審判長 |
近藤 聡 |
特許庁審判官 |
佐藤 智康 吉田 隆之 |
発明の名称 | 情報処理装置、制御方法、プログラム、及び記録媒体 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 永川 行光 |