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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1324523
審判番号 不服2016-3950  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-15 
確定日 2017-02-03 
事件の表示 特願2014-150979「データ読み出し装置及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 72676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年7月24日(国内優先権主張日:平成25年9月3日)を出願日とする出願であって,平成27年7月17日付けで拒絶理由通知がなされ,平成27年9月10日付けで意見書と共に手続補正書が提出されたが,平成27年12月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成28年3月15日付けで拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2 本願発明について
平成27年9月10日付けの手続補正書による特許請求の範囲の請求項1(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
記録媒体に記録されたデータを電波を介して非接触で読み出すデータ読み出し装置において,
画像の表示面を有する画像表示部と,
該画像表示部に,記録媒体をかざすべき前記表示面上の所定部分を表す画像を表示させる制御手段と,
前記所定部分にかざされた記録媒体に記録されたデータを電波を介して非接触で読み出す読み出し手段とを備え,
前記制御手段は,前記画像表示部に,かざされるべき記録媒体の外観を示す画像を前記所定部分の位置に表示させるように構成してあること
を特徴とするデータ読み出し装置。」

第3 当審の判断
1.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された,特開2004-133009号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(なお,下線は当審において付加したものである。)
ア.「【0007】
本発明の目的は,近接カード・リーダを外から見えない電子機器を実現することである。
【0008】
本発明の別の目的は,非接触型カードをフラットパネル表示装置の所定位置に近づけるだけで認証が行われる電子機器を実現することである。」
イ.「【0019】
【発明の好ましい実施形態】
図1は,本発明の実施形態によるタブレット形の電子機器または端末100の構成を示している。電子機器100は,筐体110と,フラットパネル表示装置120とを具えている。フラットパネル表示装置120には,ユーザの認証が必要なとき,認証用の画面が表示されて,ユーザによって非接触型セキュリティ・スマートカード(ICカード)200の配置されるべき位置122がその画面に表示される。
【0020】
非接触型スマートカード200は,その内部に,コイル・アンテナを有するRF(無線周波数)送受信機204と,プロセッサを含むICチップ206とを有する。スマートカード200はバッテリを含んでいない。
【0021】
図2は,図1の電子機器100の分解斜視図を示している。電子機器100は,フロント・フレーム112と,正面に透明のタッチ・パネル123を有する例えば液晶表示装置(LCD)のようなフラットパネル表示装置120と,フラットパネル表示装置120の背部に設けられた,プロセッサ133を含むメイン・ボード132,認証用の近接スマートカード・リーダ134およびハードディスク装置136と,バッテリ138と,背面パネル114とを含んでいる。電子機器100は,一般的な工具では分解できないような構造を有することが望ましい。
【0022】
近接スマートカード・リーダ134は,小型のコイル・アンテナを有するRF送受信機を有し,そのコイル・アンテナを介してスマートカード200との間で例えば約13MHzの認証用のRF信号を送受信する。
【0023】
ユーザの認証が必要なとき,電子機器100のメイン・ボード132上のプロセッサ133は,例えばハードディスク136等のメモリに格納された認証用のプログラムに従って,予めスマートカード・リーダ134の送受信機がスマートカード200の送受信機204と充分接近するように,スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122をフラットパネル表示装置120に表示する。電子機器100は,認証用の領域または外形122に合わせてスマートカード200を近づけるよう,フラットパネル表示装置120上に視覚的にまたはスピーカ113から聴覚的にユーザに指示する。その指示は,画像,テキストまたは音声によるものであってもよい。スマートカード・リーダ134は,連続的にまたは間欠的にRF信号を送信してスマートカード200の接近を待ち受ける。
【0024】
非接触型スマートカード200は,それが近接スマートカード・リーダ134に近づいたとき,スマートカード・リーダ134からコイル・アンテナを介して約13MHzの認証用の比較的高い電力の問い合わせRF信号を受信して電磁波エネルギをキャパシタに蓄え,その蓄えられた電磁波エネルギによって給電されて認証のために応答し,例えばIDコードで変調された約13MHzのキャリアからなるRF応答信号をスマートカード・リーダ134に送信する。
【0025】
スマートカード200がスマートカード・リーダ134に接近するほど,スマートカード・リーダ134からスマートカード200に効率良く電力が供給される。従って,ユーザによる領域122に対するスマートカード200の位置合わせはより正確であることが好ましい。」

ウ.【図1】


図1には,認証用の領域または外形122が,長方形として表示され,その内部に「ここにカードを当てて下さい」との指示が表示されている。

エ.上記ア?ウによれば,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子機器100は,フロント・フレーム112と,正面に透明のタッチ・パネル123を有する例えば液晶表示装置(LCD)のようなフラットパネル表示装置120と,フラットパネル表示装置120の背部に設けられた,プロセッサ133を含むメイン・ボード132,認証用の近接スマートカード・リーダ134およびハードディスク装置136を含み,
前記近接スマートカード・リーダ134は,小型のコイル・アンテナを有するRF送受信機を有し,そのコイル・アンテナを介してスマートカード200との間で例えば約13MHzの認証用のRF信号を送受信するものであり,
ユーザの認証が必要なとき,電子機器100のメイン・ボード132上のプロセッサ133は,例えばハードディスク136等のメモリに格納された認証用のプログラムに従って,予めスマートカード・リーダ134の送受信機がスマートカード200の送受信機204と充分接近するように,スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122をフラットパネル表示装置120に表示するものであり,
電子機器100は,認証用の領域または外形122に合わせてスマートカード200を近づけるよう,フラットパネル表示装置120上に視覚的にまたはスピーカ113から聴覚的にユーザに指示し,その指示は,画像,テキストまたは音声によるものであってもよく,
認証用の領域または外形122が,長方形として表示され,その内部に「ここにカードを当てて下さい」との指示が表示されるものでよく,
非接触型スマートカード200は,それが近接スマートカード・リーダ134に近づいたとき,スマートカード・リーダ134からコイル・アンテナを介して約13MHzの認証用の比較的高い電力の問い合わせRF信号を受信して電磁波エネルギをキャパシタに蓄え,その蓄えられた電磁波エネルギによって給電されて認証のために応答し,例えばIDコードで変調された約13MHzのキャリアからなるRF応答信号をスマートカード・リーダ134に送信するものであり,
スマートカード200がスマートカード・リーダ134に接近するほど,スマートカード・リーダ134からスマートカード200に効率良く電力が供給され,従って,ユーザによる領域122に対するスマートカード200の位置合わせはより正確であることが好ましい,電子機器。」

(2)原査定の拒絶の理由に周知文献として引用された,特開2004-355580号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。(なお,下線は当審において付加したものである。)
ア.「【0006】
このような店舗等での使用時には,自動改札機と比べると,ICカードのかざし部の存在が認知されにくくなることが考えられる。そのため,ICカードのかざし部の存在をできるだけ分かりやすく認知可能となるための手段が求められている。」
イ.「【0017】
ICカード通信部3は,アンテナ部31,金額表示部32,信号音出力部33,ICカードかざし位置表示部34,およびICカード読取可能状態表示部35から構成されている。アンテナ部31は,ICカードと無線通信(非接触通信)を行う際に無線信号を送受信するためのアンテナと,制御部2の制御に従って無線信号を送受信するための回路とから構成されている。そのアンテナは,例えば,図2に示すようにICカードかざし位置表示部34を構成する表面(印刷面)の下層に形成されている。
【0018】
金額表示部32は,ICカードに対して決済処理を行うべき金額や,ICカードに蓄積されている電子マネー情報の残高を表示するための表示器である。各金額の表示は,例えば図3に示すように,それぞれ5個の7セグメントLED(発光ダイオード)によって行われる。図2では,一例として,決済処理金額(「ご利用金額」)が「480円」で,電子マネー情報の残高(「カード残高」)が「9520円」であることを表示している。
【0019】
信号音出力部33は,ブザーと,その駆動回路等から構成されていて,制御部2の制御によって,「ピピピッ」というような電子音を発生する。この実施形態では,金額表示部32の右上方にブザー用の開口部33aが設けられている。
【0020】
ICカードかざし位置表示部34は,本装置がICカードと通信接続する際のICカードのかざし位置(ICカードの読み取り(書き込み)可能位置)を利用者に対して表示するための構成である。この例では,ICカードの読み取り可能範囲を示すための標識であって,楕円リング状の形状(略楕円形状)を有する表示器(点灯手段)34aと,表示器34aに囲まれた位置に印刷されたICカードの形状やシンボルを示す標識(標章)34bとから構成されている。表示器34aは,例えば,LEDとその出力光を楕円状に導くための導光板とから構成されていて,制御部2の制御によって点灯,消灯や,点滅動作ができるようになっている。」
ウ.「【0034】
ICカードを多機能化し,駅売店でプリペイドカードとして使う場合,上記のような形態を持たせることは特に有効であると考えられる。一方,自動改札機の場合には,いつでもICカード(例えばSuica)が読める状態となっているが,駅売店等で使う場合は,自動改札の場合とは異なり,店員が金額表示操作をしたタイミング以降に読み取りが可能な状態になる。すなわち,今買い物をしている人のカードから電子マネーを引き落とすためには,この特定のタイミングが必須となる。この点が,何時かざしても良い構成の自動改札機とは異なる。そこで,駅売店等で使う場合には,かざし部の楕円リングの内側に設けられたICカード読取可能状態表示部35を構成する4点のLED35a,35a,…を点滅(あるいは点灯)させてタイミングを知らせるようにしている。
【0035】
なお,本実施の形態で用いた4点のLED35a,35a,…は,カードをかざすべき領域の目標範囲あるいは最大許容範囲を示すものと考えることができる。一方,標識34bはICカードと同じ大きさの枠表示を有するが,これは,有効範囲の中心を示すことになる。すなわち,4点のLED35a,35a,…の意味は,ICカードを定期入れに入れても,あるいはもっと大きな財布等に入れても,それよりやや大きい有効領域を示すことにより,ICカードを当てる領域を分かりやすくする点にある。仮に,この4点のLED35a,35a,…を設けていないと,標識34bの有効領域の表示が定期入れの陰に隠れてしまうこと等が発生しやすくなる。このLEDの数はもっと多くても,あるいは最少1個でも良いが,ICカードが4角形であるから,向きを示す意味で4つが有効であると考えられる。
【0036】
なお,ICカード読取可能状態表示部35としては,上記の形態を変形して,逆に,かざすタイミングになる前に禁止標示をしたり,領域を表示しない(LEDやICカードの標識34bなどが消えて領域が分からなくなる)といった表示をするようにしてもよい。
【0037】
また,上記実施の形態では,ICカードかざし位置表示部34とICカード読取可能状態表示部35を,それぞれが独立した表示器や標識から構成することとしているが,例えば,それらの構成を1つの表示手段(液晶等による表示板)の上に画像として表示することで,1体として構成するようにしてもよい。」
エ.【図2】

オ.【図3】


カ.以上のア?オによると,引用例2には以下の周知技術が記載されていると認められる。
「ICカードのかざし部の存在をできるだけ分かりやすく認知可能とするために,
ICカードかざし位置表示部34は,本装置がICカードと通信接続する際のICカードのかざし位置(ICカードの読み取り(書き込み)可能位置)を利用者に対して表示するための構成であり,ICカードの読み取り可能範囲を示すための標識であって,楕円リング状の形状(略楕円形状)を有する表示器(点灯手段)34aと,表示器34aに囲まれた位置に印刷されたICカードの形状やシンボルを示す標識(標章)34bとから構成され,
ICカード読取可能状態表示部35を構成する4点のLED35a,35a,…は,カードをかざすべき領域の目標範囲あるいは最大許容範囲を示すものと考えることができ,標識34bはICカードと同じ大きさの枠表示を有するが,これは,有効範囲の中心を示すことになり,
ICカードかざし位置表示部34とICカード読取可能状態表示部35を,それぞれが独立した表示器や標識から構成することとしているが,それらの構成を1つの表示手段(液晶等による表示板)の上に画像として表示することで,1体として構成するようにしてもよい技術。」

2.対比
そこで,本願発明と引用発明とを比較する。
(1)引用発明の「電子機器100」は,「認証用の近接スマートカード・リーダ134」を含んでおり,該「近接スマートカード・リーダ134」は「小型のコイル・アンテナを有するRF送受信機を有し,そのコイル・アンテナを介してスマートカード200との間で例えば約13MHzの認証用のRF信号を送受信するもの」との事項から,一般に記録媒体である「スマートカード200」との間でRF信号による無線により,つまり電波を介して非接触で送受信を行うものである。
また,引用発明の「非接触型スマートカード200は,それが近接スマートカード・リーダ134に近づいたとき,スマートカード・リーダ134からコイル・アンテナを介して約13MHzの認証用の比較的高い電力の問い合わせRF信号を受信して電磁波エネルギをキャパシタに蓄え,その蓄えられた電磁波エネルギによって給電されて認証のために応答し,例えばIDコードで変調された約13MHzのキャリアからなるRF応答信号をスマートカード・リーダ134に送信するもの」との事項によれば,認証のために当該「スマートカード200」に記録された「IDコード」を応答として「スマートカード・リーダ134」に送信することから,引用発明の「電子機器100」も,「スマートカード200」に記録されたデータである「IDコード」を,電波を介して非接触で読み出すデータ読み出し装置であるといえる。
そうすると,本願発明と引用発明は,後記する点で相違するものの,
「記録媒体に記録されたデータを電波を介して非接触で読み出すデータ読み出し装置」
である点で共通する。
(2)引用発明の「電子機器100」は,「正面に透明のタッチ・パネル123を有する例えば液晶表示装置(LCD)のようなフラットパネル表示装置120」を含んでいる。
そうすると,本願発明と引用発明は,後記する点で相違するものの,
「画像の表示面を有する画像表示部」
を備える点で共通する。
(3)引用発明の「電子機器100」は,「ユーザの認証が必要なとき,電子機器100のメイン・ボード132上のプロセッサ133は,例えばハードディスク136等のメモリに格納された認証用のプログラムに従って,予めスマートカード・リーダ134の送受信機がスマートカード200の送受信機204と充分接近するように,スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122をフラットパネル表示装置120に表示するものであり」との事項から,「プロセッサ133」が認証用プログラムに従って,「予めスマートカード・リーダ134の送受信機がスマートカード200の送受信機204と充分接近するように,スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122をフラットパネル表示装置120に表示する」ものであることから,当該「プロセッサ133」は,「フラットパネル表示装置120」に,「スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122を表示させる」ための制御手段であるといえる。
また,この「スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122」は,「スマートカード・リーダ134の送受信機がスマートカード200の送受信機204と充分接近するように」,「スマートカード200」をかざすべき「フラットパネル表示装置120」上の範囲位置を示す画像,つまり表示面上の所定部分を表す画像である。
そうすると,本願発明と引用発明は,後記する点で相違するものの,
「該画像表示部に,記録媒体をかざすべき前記表示面上の所定部分を表す画像を表示させる制御手段」
を備える点で共通する。
(4)引用発明の「電子機器100」は,「認証用の近接スマートカード・リーダ134」を含んでおり,また,当該「認証用の近接スマートカード・リーダ134」は,上記(1)及び(3)で示したように,認証のために「スマートカード200」が「フラットパネル表示装置120」上に表示された「スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122」の位置に当てられた際に,記録された「IDコード」を電波を介して非接触で読み出すものである。
そうすると,本願発明と引用発明は,後記する点で相違するものの,
「前記所定部分にかざされた記録媒体に記録されたデータを電波を介して非接触で読み出す読み出し手段」
を備える点で共通する。
(5)以上(1)?(4)から,本願発明と引用発明は,
「記録媒体に記録されたデータを電波を介して非接触で読み出すデータ読み出し装置において,
画像の表示面を有する画像表示部と,
該画像表示部に,記録媒体をかざすべき前記表示面上の所定部分を表す画像を表示させる制御手段と,
前記所定部分にかざされた記録媒体に記録されたデータを電波を介して非接触で読み出す読み出し手段とを備えたデータ読み出し装置。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明は「前記制御手段は,前記画像表示部に,かざされるべき記録媒体の外観を示す画像を前記所定部分の位置に表示させるように構成してある」のに対し,引用発明の「プロセッサ133」(本願発明の「制御手段」に相当)ではそのようになっていない点。

3.当審の判断
一般に,「外観」とは外側から見た感じであって,上記相違点の「記録媒体の外観」であれば,記録媒体の形状,色,模様等の様々な見た感じが含まれるのは明らかである。
ここで,引用例2には,ICカードのかざし部の存在をできるだけ分かりやすく認知可能とするとの課題を解決するために,ICカードをかざすべき領域の目標範囲あるいは最大許容範囲と,ICカードの形状やシンボルを示す標識(標章)を,ICカードと同じ大きさの枠として印刷して表示し,有効範囲の中心を示すこと,また,これらを液晶等による表示手段の上に画像として表示する周知の技術が示されており,このICカードの形状やICカードと同じ大きさの枠はICカードの外観の一つであるし,また,ICカードのシンボルを示す標識(標章)は,例えばICカードに印刷されているSuica等のシンボルを示す標識(標章)であり,使用可能な,つまりかざされるべきICカードの種類を示しており,これもICカードの外観の一つであることから,ここにはかざされるべきICカードの外観を,ICカードをかざすべき領域の目標範囲あるいは最大許容範囲の中心を示すように表示すること,また,これらを表示手段上に画像として表示することが示されている。
また,引用発明は,上記「第3 1.(1)ア」によれば,近接カード・リーダを外から見えない電子機器を実現すること,また,非接触型カードをフラットパネル表示装置の所定位置に近づけるだけで認証が行われる電子機器を実現することを目的としたものであって,近接カード・リーダを外から見えないようにするため,ユーザがスマートカードをどこに近づけてよいかがわからないことから,その対策として認証が必要なときに「スマートカード200の配置されるべき認証のための領域または外形122をフラットパネル表示装置120に表示する」,「認証用の領域または外形122に合わせてスマートカード200を近づけるよう,フラットパネル表示装置120上に視覚的にまたはスピーカ113から聴覚的にユーザに指示し,その指示は,画像,テキストまたは音声によるものであってもよく」,及び,「認証用の領域または外形122が,長方形として表示され,その内部に「ここにカードを当てて下さい」との指示が表示される」という構成を採用することにより,ユーザがスマートカードを近づける位置や範囲を認知可能とするものである。
そうすると,引用発明も上記周知技術も,ユーザがスマートカードを近づける位置や範囲を認知可能とするという課題において共通するものであり,また,引用発明では「認証のための領域または外形122」を「長方形」として表示し,また,その内部に「ここにカードを当てて下さい」との指示を表示しているものの,一般にユーザにより分かり易くスマートカードを近づける位置や範囲,また,使用可能なスマートカードの種類を表示することは,非接触のスマートカード(ICカード)の使用を前提としたユーザインターフェイスの設計においては常に考慮されるべき課題である。
してみれば,引用発明において,ユーザにより分かり易くスマートカードを近づける位置や範囲,また,使用可能なスマートカードの種類を表示するために,さらに上記周知技術を適用し,「認証のための領域または外形122」を「長方形」として表示するのに加えて,当該領域または外形を表示する部分の位置に,スマートカードの形状やシンボルを示す標識(標章)を,スマートカードと同じ大きさの枠として表示させ,使用可能な,つまりかざされるべきスマートカードの外観を示す画像を所定部分の位置に表示させるように構成することにより,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして,上記相違点を勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

4.まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第4 むすび
以上のとおり,請求項1に係る発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-25 
結審通知日 2016-11-29 
審決日 2016-12-12 
出願番号 特願2014-150979(P2014-150979)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡北 有平  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 野崎 大進
金子 幸一
発明の名称 データ読み出し装置及び情報処理装置  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 英仁  

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