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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1324532
審判番号 不服2016-2536  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-19 
確定日 2017-01-31 
事件の表示 特願2010-277820「放射性医薬物質の放射能を決定するための装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日出願公開、特開2013- 11441〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成22年12月14日(パリ条約による優先権主張 2009年12月14日 米国)の出願であって、平成26年10月22日付けで拒絶理由が通知され(発送日:同年同月28日)、平成27年1月27日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年4月14日付けで最後の拒絶理由が通知され(発送日:同年同月21日)、同年7月17日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年10月13日付けで拒絶査定がなされ(送達日:同年同月19日)、これに対して平成28年2月19日に該拒絶査定を不服として審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、同年7月19日付けで上申書が提出されたものである。


第2 平成28年2月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年2月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成28年2月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成27年7月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1である
「放射能を有する物質を測定するためのシステムであって、
少なくとも1つのアリコートを受け入れるための流体経路と、
凹面を有するように形成されており、前記流体経路に接続されていて、前記流体経路から前記少なくとも1つのアリコートを受け入れるアリコートポジショナと、
前記アリコートポジショナから前記凹面の中心軸に沿って離れた軸方向距離に位置しており、前記アリコートポジショナに配置された前記少なくとも1つのアリコートの放射能のレベルを決定するように動作する検出器とを含んでおり、
前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記アリコートポジショナに沿った前記少なくとも1つのアリコートの位置に拘わらず、検出器の計数率が前記少なくとも1つのアリコートの放射能に比例するように導き出されている、
システム。」を
「放射能を有する物質を測定するためのシステムであって、
少なくとも1つのアリコートを受け入れるための流体経路と、
前記流体経路に接続されたチューブ状導管を備えている凹面を有するように形成されており、前記流体経路から前記少なくとも1つのアリコートを受け入れる皿形状のアリコートポジショナと、
前記アリコートポジショナから前記凹面の主軸に沿って離れた軸方向距離に位置しており、前記アリコートポジショナに配置された前記少なくとも1つのアリコートの放射能のレベルを決定するように動作する検出器とを含んでおり、
前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記凹面の前記チューブ状導管の直径よりも大きく、
前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記アリコートポジショナに沿った前記少なくとも1つのアリコートの位置に拘わらず、検出器の計数率が前記少なくとも1つのアリコートの放射能に比例するように導き出されている、
システム。」
とするものである(下線は請求人が付与した。)。

2 本件補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1の「凹面を有するように形成されており」を「前記流体経路に接続されたチューブ状導管を備えている凹面を有するように形成されており」と限定し、「前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離」について「前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記凹面の前記チューブ状導管の直径よりも大きく」と限定することを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、新規性(特許法第29条第1項第3号)について以下に検討する。

(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記1において、補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定における拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された、国際公開第2009/149367号(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(引用文献のファミリー文献である特表2011-522623号公報を参考に当審で訳した。下線は当審で付与した。)。

ア「[000115] A radiation detecting system 2000 which is an alternative to a hollow cylindrical ion chamber dose calibrator is represented in FIG. 16. A coiled tubing segment 2001 is held by a tray 2002 to create a module 2003 that can be placed over a simple generally cylindrical radiation detector 2010. Radiation detectors of this general geometry are common, including Geiger tubes, ion chambers, and solid state crystal detectors, as examples. If the whole tubing segment 2001 contains fluid of substantially the same concentration of radioactivity, system 2000 works well. Or, system 2000 works well if only the integral of the dose is measured as the drug flows through the whole tubing set at a constant flow rate. External shielding (not shown) may then be employed to protect workers, to prevent radiation from affecting other devices, and to prevent radiation from getting in and affecting this device. However, there is possibly a problem if the "tight" injection bolus as described earlier in this disclosure is a short compared to the length of the coiled tubing segment 2001 so that it only occupies some of the volume of the coiled tubing segment 2001, or if laminar flow spreads the injection bolus so that the concentration is not uniform throughout the length of the coiled tubing segment 2001, and also if the flow is not uniform or if the measurement of interest is something other than the total dose integrated over the whole transit time. In the embodiment of FIG. 16, the radiation detector will have a greater sensitivity to radioactivity in some coil segments as compare to others, for example, to coil segment 2001a than to coil segment 2001b. This causes non-uniformity in response to the same amount of radioactive drug depending upon where it is in the coiled fluid path or tubing segment 2001.
[000116] To overcome this difficulty a radiation detection system 2000', as shown in FIGS. 17A, 17B, and 17C according to an inventive embodiment of this disclosure, tray 2002' may be shaped to hold fluid path segment or coiled tubing segment 2001' so that they the coils lie along surfaces of "equal sensitivity" for radiation detector 2010'. For simplicity, radiation detector 2010' and the individual geometrical shapes shown in FIGS. 17A 5 17B, and 17C are assumed to be cylindrically symmetrical, although this disclosure is not intended to be limited to shapes with this property. For each radiation detector 2010', the geometry of the radiation detector 2010' has a surface that is a function of R and Z axes such that anywhere on that surface, a small volume of radioactive fluid will give the same measurement of radioactivity at the radiation detector 2010 ' . In FIG. 17 A, the center coil elements of coiled tubing segment 2001' are moved back a little from the surface of the radiation detector 2010' to achieve this effect. If the radiation detector 2010' is a small spherical detector, then the equal sensitivity surface is a sphere around the center of the radiation detector 2010', as illustrated in FIG. 17B. FIG. 17C illustrates a coiled tubing segment 2001' arranged in a cap shape which can be put onto or over the radiation detector 2010'. This geometry has benefits for ease of installing the tray 2003' and for overall fluid path design of the system 2000' which can more readily be done in a planar cassette to ease manufacture, assembly, and user interfacing. As shown in FIG. 17C, this tray could be placed in container body 332, and the dosimeter or radiation detector 2010' could either be part of the container body 332 or there could be a hole in the container body 332 which can be opened to allow the dosimeter to penetrate the container and measure the dose in the fluid path element 2003'. The opening could be covered by shielding when it is not in use to measure radiation and be arranged so that it can be opened and closed without exposing the operator to any radiation.」
[000115]
中空円筒状イオンチャンバーの投与較正器の他の実施例である放射線検出システム(2000)が、図16に示されている。コイル状のチュービングセグメント(2001)は、トレイ(2002)により保持されてモジュール(2003)が作成され、該モジュールは、略円筒形の簡易な放射線検出器(2010)の上に配置されることができる。この種幾何学的形状の放射線検出器は、例えば、ガイガーチューブ、イオンチャンバー、ソリッドステート結晶検知器などが挙げられ、一般的に用いられている。全体のチュービングセグメント(2001)がほぼ同濃度の放射能の流体を含む場合、システム(2000)はうまく機能する。或いはまた、薬剤が一定の流速でチュービングセット全体を通じて流れるときに投与量の全体だけを計測しさえすれば、システム(2000)はうまく機能する。外部シールド(図示されていない)を用いることにより、作業者を保護し、放射能が他の装置に影響を及ぼすことを防止し、放射能がこの装置に進入して装置に影響を及ぼすことを防止する。しかしながら、前述した“タイト”な注入ボーラスはコイル状チュービングセグメント(2001)の長さと比べて短いため、それだけでコイル状チュービングセグメント(2001)の体積の相当な部分を占める場合、又は層状の流れが注入ボーラスを拡げるため、濃度がコイル状チュービングセグメント(2001)の長さ全体を通じて一様でない場合、又は流れが一様でない場合、又は測定対象が輸送時間全体における全投与量以外の何かである場合には問題が生じる可能性がある。図16の実施例において、放射線検出器は、あるコイルセグメントが他のコイルセグメントに比べて放射能に対する感受性が大きく、例えば、コイルセグメント(2001b)に対する感受性よりもコイルセグメント(2001a)に対する感受性の方が大きい。それゆえ、コイル状流体経路の中にあるか、又はチュービングセグメント(2001)の中にあるかによって、放射性薬剤の量が同じでも、それに対する反応は不均一になる。
[000116]
放射線検出システム(2000')のこの問題を解消させるために、本発明の実施例では、図17A、17B及び17Cに示されるように、流体経路セグメント又はコイル状チュービングセグメント(2001')が放射線検出器(2010')に対して''等しい感受性''となる表面に沿って置かれるように、トレイ(2002')は、それらのコイルを保持する形状に作られている。説明の簡素化のために、図17A、17B及び17Cに示される放射線検出器(2010')及び個々の幾何学的形状は対称な円筒形としているが、その形状に限定するものと解するべきではない。各放射線検出器(2010')の幾何学的形状は、表面がR軸及びZ軸の関数であるから、該表面のどの位置でも、少量の放射性流体は、放射線検出器(2010')で同じ放射能測定値を与えることになる。図17Aにおいて、コイル状チュービングセグメント(2001')の中心コイル要素は、放射線検出器(2010')の表面から少しだけ戻され、この効果が達成される。放射線検出器(2010')が小型の球状検出器である場合、感受性が等しい表面は、図17Bに示されるように、放射線検出器(2010')の中心の周りの球面である。図17Cは、キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')を示しており、放射線検出器(2010')の上方に置かれている。この形状は、トレイ(2003')の設置を容易に行なうことができ、システム(2000')の流体経路構造全体がより容易く平面的カセットの形にされ得るから、製造、組立及び使用者の接続を容易に行なうことができる利点がある。図17Cに示されるように、このトレイは、容器本体(332)の中に入れられ、薬量計又は放射線検出器(2010')は、容器本体(332)の一部分であるか、又は薬量計が容器を貫通し、流体経路要素(2003')の中で投与量を測定できるように開口された容器本体(332)の孔である。開口は、測定のために使用されていないときはシールドすることによって被覆され、操作者がどんな放射線にも曝露されることなく開閉できるように構成される。

イ 図17C

図17Cより、放射線検出器(2010')の中心と、キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')の中心とは、Z軸に沿って離れた軸方向距離に位置していることが、看取できる。
また、図17Cより、トレイ(2002')に保持された任意のコイル状チュービングセグメント(2001')から放射線検出器(2010')までの距離は、コイル状チュービングセグメント(2001')の直径よりも大きいことが、看取できる。

上記ア及びイより、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')が、放射線検出器(2010')の上方に置かれている、放射線検出システム(2000')であって、
前記放射線検出器(2010')は、ガイガーチューブ、イオンチャンバー、ソリッドステート結晶検知器などが挙げられ、
前記放射線検出器(2010')の中心と、前記キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')の中心とは、Z軸に沿って離れた軸方向距離に位置しており、
前記コイル状チュービングセグメント(2001')が前記放射線検出器(2010')に対して''等しい感受性''となる表面に沿って置かれるように、トレイ(2002')は、それらのコイルを保持する形状に作られ、
前記放射線検出器(2010')の幾何学的形状は、表面がR軸及びZ軸の関数であるから、該表面のどの位置でも、少量の放射性流体は、前記放射線検出器(2010')で同じ放射能測定値を与え、
前記トレイ(2002')に保持された任意の前記コイル状チュービングセグメント(2001')から前記放射線検出器(2010')までの距離は、前記コイル状チュービングセグメント(2001')の直径よりも大きい、
放射線検出システム(2000')。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「放射線検出システム(2000')」、「コイル状チュービングセグメント(2001')」及び「放射線検出器(2010')」は、本願補正発明の「放射能を有する物質を測定するためのシステム」、「チューブ状導管」及び「検出器」に、それぞれ相当する。

イ アリコートは試料の一部を意味するところ、引用発明の「少量の放射性流体」は、放射性流体の試料とするものの少量、つまり一部であるから、本願補正発明の「アリコート」に相当する。

ウ 引用発明の「コイル状チュービングセグメント(2001')」が流体経路に接続されることは自明のことである。また、引用発明の「キャップ形状」は、本願補正発明の「凹面」及び「皿形状」に相当する。
すると、引用発明の「キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')」は、本願補正発明の「少なくとも1つのアリコートを受け入れるための流体経路と、前記流体経路に接続されたチューブ状導管を備えている凹面を有するように形成されており、前記流体経路から前記少なくとも1つのアリコートを受け入れる皿形状のアリコートポジショナ」に相当する。

エ 引用発明の「前記放射線検出器(2010')の中心と、前記キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')の中心とは、Z軸に沿って離れた軸方向距離に位置して」いる「放射線検出器(2010')」は、本願補正発明の「前記アリコートポジショナから前記凹面の主軸に沿って離れた軸方向距離に位置して」いる「検出器」に相当する。

オ 引用発明の「前記コイル状チュービングセグメント(2001')が前記放射線検出器(2010')に対して''等しい感受性''となる表面に沿って置かれるように、トレイ(2002')は、それらのコイルを保持する形状に作られ、前記放射線検出器(2010')の幾何学的形状は、表面がR軸及びZ軸の関数であるから、該表面のどの位置でも、少量の放射性流体は、前記放射線検出器(2010')で同じ放射能測定値を与え」る「放射線検出器(2010')」は、本願補正発明の「前記アリコートポジショナに配置された前記少なくとも1つのアリコートの放射能のレベルを決定するように動作する検出器」に相当する。

カ 引用発明の「前記トレイ(2002')に保持された任意の前記コイル状チュービングセグメント(2001')から前記放射線検出器(2010')までの距離は、前記コイル状チュービングセグメント(2001')の直径よりも大きい」ことは、本願補正発明の「前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記凹面の前記チューブ状導管の直径よりも大き」いことに相当する。

キ 引用発明において「前記放射線検出器は、ガイガーチューブ、イオンチャンバー、ソリッドステート結晶検知器などが挙げられ」ることから、引用発明の「放射線検出器」の計数率が「少量の放射性流体」の放射能に比例するように導き出されていることは明らかである。
すると、引用発明の「前記放射線検出器(2010')は、ガイガーチューブ、イオンチャンバー、ソリッドステート結晶検知器などが挙げられ、」「前記コイル状チュービングセグメント(2001')が前記放射線検出器(2010')に対して''等しい感受性''となる表面に沿って置かれるように、トレイ(2002')は、それらのコイルを保持する形状に作られ、前記放射線検出器(2010')の幾何学的形状は、表面がR軸及びZ軸の関数であるから、該表面のどの位置でも、少量の放射性流体は、前記放射線検出器(2010')で同じ放射能測定値を与え」ることは、本願補正発明の「前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記アリコートポジショナに沿った前記少なくとも1つのアリコートの位置に拘わらず、検出器の計数率が前記少なくとも1つのアリコートの放射能に比例するように導き出されている」ことに相当する。

上記アないしキより、本願補正発明と引用発明とは、
「放射能を有する物質を測定するためのシステムであって、
少なくとも1つのアリコートを受け入れるための流体経路と、
前記流体経路に接続されたチューブ状導管を備えている凹面を有するように形成されており、前記流体経路から前記少なくとも1つのアリコートを受け入れる皿形状のアリコートポジショナと、
前記アリコートポジショナから前記凹面の主軸に沿って離れた軸方向距離に位置しており、前記アリコートポジショナに配置された前記少なくとも1つのアリコートの放射能のレベルを決定するように動作する検出器とを含んでおり、
前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記凹面の前記チューブ状導管の直径よりも大きく、
前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記アリコートポジショナに沿った前記少なくとも1つのアリコートの位置に拘わらず、検出器の計数率が前記少なくとも1つのアリコートの放射能に比例するように導き出されている、
システム。」の点で一致し、差異はない。

(4)結論
よって、本願補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)小括
以上の検討のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものである。

4 本件補正の却下の決定についての結び
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成27年7月17日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項によって特定されると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1」において、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1として示したとおりのものである。

2 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
上記「第2」[理由]「3」「(2)」のとおりである。

3 対比・判断
上記「第2」[理由]「2」「本件補正の目的」のとおり、本願発明は、本願補正発明の「前記流体経路に接続されたチューブ状導管を備えている凹面を有するように形成されており」を「凹面を有するように形成されており」とし、「前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記凹面の前記チューブ状導管の直径よりも大きく」を削除したものである。
そして、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加した本願補正発明が、引用発明である以上、上記「第2」[理由]「3」での検討と同様の理由により、本願発明は引用発明である。

なお、請求人は、平成28年7月19日付けの上申書において、請求項1の「前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記凹面の前記チューブ状導管の直径よりも大きく」を「前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記アリコートポジショナの直径より大きく」と補正する補正案を示している。
しかしながら、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初明細書等」という。)には、「アリコートポジショナと検出器の間の光学経路303を十分に大きくする」ことは記載されている(明細書の【0022】)ものの、アリコートポジショナの凹面上の任意の点から前記検出器までの距離が、アリコートポジショナの直径の大きい場合及び小さい場合についての実施例、比較例の記載もなく、技術思想として、「前記アリコートポジショナの前記凹面上の任意の点から前記検出器までの距離は、前記アリコートポジショナの直径より大きく」することは、出願当初明細書等に記載されておらず、また、記載されていることが自明であるとも認められない。
したがって、上記補正案は出願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないので、補正する機会を与える余地はない。


第4 結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-26 
結審通知日 2016-08-29 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願2010-277820(P2010-277820)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01T)
P 1 8・ 113- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 祐樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 松川 直樹
井口 猶二
発明の名称 放射性医薬物質の放射能を決定するための装置及び方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  

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