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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1324687
審判番号 不服2015-17824  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-30 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2011-134369号「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013-1247号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月16日の出願であって、平成26年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月26日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年9月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成28年9月26日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下「本願発明1?4」という。)は、平成27年9月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝によって前記トレッドに形成された複数の陸部と、
前記陸部の前記周方向溝側の側壁面から前記周方向溝と交差する方向に延びる幅方向溝と、
前記幅方向溝の奥壁面に形成され、前記陸部の踏面側から前記幅方向溝の底面側に向かって延び、前記陸部の高さ方向と直交する方向の面積が前記踏面側よりも前記底面側で大きく、前記奥壁面のみに開口する切欠きと、
を有する空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記切欠きの前記開口の幅が、前記踏面側から前記底面側に向かって広くなっている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記切欠きの奥行きが、前記踏面側から前記底面側に向かって深くなっている請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記切欠きは、タイヤ幅方向から見て前記陸部の高さ方向に対して傾斜し、前記陸部が路面に接地した際に閉じるように幅が設定されている、請求項1?請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の請求項1?5に係る発明(平成27年1月15日付けの手続補正により補正されたもの)は、下記刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


刊行物1:特開2011-031773号公報(拒絶査定時の引用文献3)
刊行物2:特開2001-277815号公報(拒絶査定時の引用文献1)
刊行物3:特開2004-098737号公報(拒絶査定時の引用文献2)

刊行物1に記載された発明において、内側及び外側サイプ状部15b、16bにより剛性を確保する点が示唆されており(特に【0041】参照)、刊行物2また刊行物3に記載された発明を適用し、幅方向溝の奥壁面を請求項1に係る発明のように形成することは、当業者が容易に想到しうることである。

2 当審の判断
2-1 刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項 (下線は当審で付与した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
本発明は、操縦安定性能を維持しつつウェット性能と騒音性能とをバランス良く向上させた空気入りタイヤに関する。」
(1b)「【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1及び図2に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1は、例えば乗用車用タイヤ、特に車両重量の大きい乗用車用タイヤとして好適に利用される。
【0021】
本実施形態の空気入りタイヤのトレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のクラウン主溝3と、前記クラウン主溝3のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝4とが設けられる。これにより、トレッド部2には、前記一対のクラウン主溝3、3間をのびるクラウンリブ8、前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4との間をのびる一対のミドルリブ9、及び、前記ショルダー主溝4と接地端Teとの間をのびる一対のショルダーリブ12がそれぞれ形成される。
・・・
【0031】
図3に示されるように、ミドルリブ9には、タイヤ周方向に連続してのびる1本のミドル副溝5が設けられる。該ミドル副溝5は、ミドルリブ9のタイヤ軸方向内側縁9iからミドルリブ幅W6の20?45%の距離W9を隔てた位置に溝中心線G3を有する。また、ミドル副溝5は、溝幅W3が1.5?3.0mmで形成される。これにより、前記ミドルリブ9は、内側ミドル部10と外側ミドル部11とに区分される。
・・・
【0035】
また、図1及び図3に示されるように、内側ミドル部10には、ミドル副溝5からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記クラウン主溝3に連通することなく終端する内側ミドルラグ溝15がタイヤ周方向に隔設される。また、外側ミドル部11には、ショルダー主溝4からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記ミドル副溝5に連通することなく終端する外側ミドルラグ溝16がタイヤ周方向に隔設される。このようなラグ溝15、16は、内側ミドル部10及び外側ミドル部11それぞれにおいて、相対的に接地圧が高いタイヤ赤道C側の剛性を確保する一方、接地端側の排水性を向上させることができる。
・・・
【0039】
また、図3に示されるように、本実施形態の内側ミドルラグ溝15は、ミドル副溝5側に形成されかつ溝幅W10が1.5mm以上の一定幅でのびる内側ラグ主部15aと、該内側ラグ主部15aのタイヤ赤道C側に形成されかつ溝幅W11が1.5mm未満の一定幅でのびる内側サイプ状部15bとを含んで構成される。内側ラグ主部15aと、内側サイプ状部15bとは、段差を介して接続されても良いが、本実施形態では、これらの間に、該内側ラグ主部15a側から該内側サイプ状部15bに向かって溝幅が漸減する内側継ぎ部15cが配されている。
【0040】
また、本実施形態の外側ミドルラグ溝16は、ショルダー主溝4側に形成されかつ溝幅W12が2.0mm以上の一定幅でのびる外側ラグ主部16aと、該外側ラグ主部16aのタイヤ赤道C側に形成されかつ溝幅W13が2.0mm未満の一定幅でのびる外側サイプ状部16bとを含んで構成される。外側ミドルラグ溝16においても、この実施形態では、外側ラグ主部16aと外側サイプ状部16bとの間には、外側ラグ主部16a側から外側サイプ状部16bに向かって溝幅が漸減する外側継ぎ部16cが配されている。
【0041】
このような各ラグ溝15、16は、幅広の内側、外側ラグ主部15a、16aによりミドルリブ9での排水性能を向上させるとともに、幅狭の内側、外側サイプ状部15b、16bにより内側ミドル部10、外側ミドル部11の剛性低下を防ぐことができる。また、前記継ぎ部15c、16cは、各ラグ主部15a、16aと各サイプ状部15b、16bとが直接接続された場合に生じがちな剛性段差を緩和し、ラグ溝を起点とした偏摩耗の発生を抑制しうる。」
(1c)刊行物1には、以下の図が示されている。



(2)刊行物2の記載事項
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは操縦安定性を維持しつつ、摩耗しても従来タイヤと同等以上のウェット性能を有し、しかもエアポンピング音(走行時、タイヤ接地面内のトレッド溝内空気が、圧縮・放出のポンピング作用を受けて発生する音)の発生を抑制した空気入りタイヤに関する。」
(2b)「【0002】
【従来の技術】従来、トレッド表面がブロックパターンで構成される空気入りタイヤでは、図5に示すようなそのブロック1上面に細溝3が配置され、ウェット性能の向上が図られている。しかし、細溝3を配置するとブロック剛性を低め操縦安定性の低下を招くことより、その溝底部を底上げするという手法が用いられているが、この底上げは摩耗に伴うウェット性能の低下や、底上げ形状によっては図6の場合のような底上げによって細溝3に深い部分3aが形成されると、走行により摩耗が進んでくると深い部分3aのみがブロック1上面に閉鎖された溝として存在することになり、走行中のトレッド表面と路面との接触において、この深い部分Aの溝に空気が包み込まれ、その空気が開放されるときに音が発生する所謂エアポンピング音の原因になり、騒音性能が悪化するため、これらの相反する性能の両立が技術課題となっていた。」
(2c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の問題を解決すべく、操縦安定性を維持しつつ、摩耗しても上述の底上げタイヤと同等以上のウェット性能を有し、しかもエアポンピング音の発生を抑制した空気入りタイヤを提供することを課題とする。」
(2d)「【0004】
【発明を解決するための手段】このため、本発明は、トレッド表面のブロック上面にブロック側壁面に開口するように細溝を設けた空気入りタイヤにおいて、前記ブロック側壁面の前記細溝の溝底エッジ部近傍に該溝底エッジ部を挟むように副溝を少なくとも一対設け、前記細溝の深さがトレッド表面からトレッド主溝深さの30?80%であり、前記副溝上端部が主溝の溝底からトレッド主溝深さの30?80%の位置であって、両溝の深さ方向の重なりFがトレッド主溝深さの10%以上であるブロックを有する空気入りタイヤを提供する。」

(3)刊行物3の記載事項
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロックを備えた空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、ブロックの偏摩耗抑制に関する。」
(3b)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
主溝方向に沿うブロックの辺縁部が他の部分より早く摩減する偏摩耗、ブロックの周方向両端に発生するトウアンドヒール摩耗の両者を抑制する必要がある。両偏摩耗に対して様々な方策が採られてきたが、両者に対して有効な方策ではなかった。
【0007】
すなわち、負荷に対するブロックの剪断歪みを小さくすることにより、ブロックのすべりを小さくすることと、ブロックの剪断歪みを均一化することにより、ブロックの辺に沿ってすべりの大きさを均一化することが必要であったが、両者に対する満足な方策がなかった。」
【0008】
本発明の目的は、トウアンドヒール摩耗及びブロック辺縁部の早期摩耗の両偏摩耗を抑制することにある。」
(3c)「【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、タイヤトレッドに刻まれたタイヤ周方向に連なる主溝と、前記主溝同士又は前記主溝とタイヤ接地端とを連通する横溝とを備え、前記主溝及び前記横溝により形成されたブロックを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記ブロックの側壁に開口部を有し、前記開口部が前記側壁に隣接する溝の溝底からブロック側壁高さの3/4より溝底側にあり、前記開口部より前記ブロックの内側に延びて閉塞する複数の細溝が前記側壁に隣接する前記溝の溝方向に沿って刻まれ、前記側壁に隣接する前記溝の溝方向中央部から前記側壁に隣接する前記溝の溝方向両端に向かって、前記細溝の奥行き面積が減少していることを特徴とする空気入りタイヤを採用した。」

2-2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、摘示(1a)のとおり「操縦安定性能を維持しつつウェット性能と騒音性能とをバランス良く向上させた空気入りタイヤ」について開示されるところ、摘示(1b)によれば、かかる空気入りタイヤの具体的構造として、以下の点の記載が認められる。
・トレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のクラウン主溝3と、前記クラウン主溝3のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝4とが設けられるとともに、前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4の配設により、前記トレッド部2には、前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4との間をのびる一対のミドルリブ9が形成されること(段落【0021】)、
・前記ミドルリブ9には、タイヤ周方向に連続してのびる1本のミドル副溝5が設けられるとともに、前記ミドル副溝5の配設により、前記ミドルリブ9は、内側ミドル部10と外側ミドル部11とに区分されること(段落【0031】)、
・前記内側ミドル部10には、ミドル副溝5からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記クラウン主溝3に連通することなく終端する内側ミドルラグ溝15がタイヤ周方向に隔設されること(段落【0035】)、
・前記外側ミドル部11には、ショルダー主溝4からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記ミドル副溝5に連通することなく終端する外側ミドルラグ溝16がタイヤ周方向に隔設されること(段落【0035】)、
・前記内側ミドルラグ溝15は、内側ラグ主部15aと内側サイプ状部15bとを含んで構成されること(段落【0039】)、
・前記外側ミドルラグ溝16は、外側ラグ主部16aと、外側サイプ状部16bとを含んで構成されること(段落【0040】)

以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「トレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のクラウン主溝3と、前記クラウン主溝3のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝4とが設けられるとともに、前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4の配設により、前記トレッド部2には、前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4との間をのびる一対のミドルリブ9が形成され、
前記ミドルリブ9には、タイヤ周方向に連続してのびる1本のミドル副溝5が設けられるとともに、前記ミドル副溝5の配設により、前記ミドルリブ9は、内側ミドル部10と外側ミドル部11とに区分され、
前記内側ミドル部10には、ミドル副溝5からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記クラウン主溝3に連通することなく終端する内側ミドルラグ溝15がタイヤ周方向に隔設され、
前記外側ミドル部11には、ショルダー主溝4からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記ミドル副溝5に連通することなく終端する外側ミドルラグ溝16がタイヤ周方向に隔設され、
前記内側ミドルラグ溝15は、内側ラグ主部15aと内側サイプ状部15bとを含んで構成され、
前記外側ミドルラグ溝16は、外側ラグ主部16aと、外側サイプ状部16bとを含んで構成される、空気入りタイヤ。」

2-3 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「トレッド部2」は、本願発明1の「トレッド」に相当する。
イ 引用発明の「クラウン主溝3」、「ショルダー主溝4」及び「ミドル副溝5」は、いずれも「トレッド部2」に設けられ、「タイヤ周方向に連続してのびる」ものであるから、本願発明1の「トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝」に相当する。
ウ 引用発明の「ミドルリブ9」は、「前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4の配設により」、「前記クラウン主溝3と前記ショルダー主溝4との間をのびる」ように形成され、また、上記「ミドルリブ9」は、「前記ミドル副溝5の配設により」、「内側ミドル部10と外側ミドル部11とに区分され」るものである。
したがって、上記ア及びイをも踏まえると、引用発明の「ミドルリブ9」における「内側ミドル部10」及び「外側ミドル部10」は、本願発明1の「トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝によって前記トレッドに形成された複数の陸部」に相当するものといえる。
エ 引用発明の「内側ミドルラグ溝15」は、「内側ミドル部10」に設けられ、「ミドル副溝5からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記クラウン主溝3に連通することなく終端する」ものであり、その配設態様は、図1及び3(摘示(1c))にも示されるとおり、ミドル副溝5と交差する方向に延びるものといえる。
また、「外側ミドルラグ溝16」は、「外側ミドル部11」に設けられ、「ショルダー主溝4からタイヤ赤道側に向かってのびかつ前記ミドル副溝5に連通することなく終端する」ものであり、その配設態様は、図1及び3(摘示(1c))にも示されるとおり、ショルダー主溝4と交差する方向に延びるものといえる。
したがって、引用発明の「内側ミドルラグ溝15」及び「外側ミドルラグ溝16」は、上記イ及びウをも踏まえると、本願発明1の「前記陸部の前記周方向溝側の側壁面から前記周方向溝と交差する方向に延びる幅方向溝」に相当するものといえる。
オ 引用発明の「空気入りタイヤ」は、本願発明1の「空気入りタイヤ」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝によって前記トレッドに形成された複数の陸部と、
前記陸部の前記周方向溝側の側壁面から前記周方向溝と交差する方向に延びる幅方向溝と、
を有する空気入りタイヤ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記幅方向溝の奥壁面に形成され、前記陸部の踏面側から前記幅方向溝の底面側に向かって延び、前記陸部の高さ方向と直交する方向の面積が前記踏面側よりも前記底面側で大きく、前記奥壁面のみに開口する切欠き」を備えているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

2-4 判断
上記相違点について検討する。
(1)刊行物2には、空気入りタイヤに関し(摘示(2a))、トレッド表面のブロック上面にウエット性能の向上を図るための「細溝」を配置することに起因した従来技術の問題に鑑みて(摘示(2b))、操縦安定性を維持しつつ、摩耗しても底上げタイヤと同等以上のウェット性能を有し、しかもエアポンピング音の発生を抑制した空気入りタイヤを提供することを課題とし(摘示(2c))、かかる課題を解決するために、トレッド表面のブロック上面にブロック側壁面に開口するように細溝を設けた空気入りタイヤにおいて、前記ブロック側壁面の前記細溝の溝底エッジ部近傍に該溝底エッジ部を挟むように副溝を少なくとも一対設け、前記細溝の深さがトレッド表面からトレッド主溝深さの30?80%であり、前記副溝上端部が主溝の溝底からトレッド主溝深さの30?80%の位置であって、両溝の深さ方向の重なりFがトレッド主溝深さの10%以上であるブロックを有する、という解決手段を採用することが記載されている(摘示(2d))。
上記刊行物2に記載された技術事項(解決手段)は、トレッド表面のブロック上面にブロック側壁面に開口するように「細溝」を設けた空気入りタイヤを前提とするものであって、上記「細溝」との関係において「副溝」を設けることが明らかであるから、そもそも「細溝」の存在しない引用発明において、上記刊行物2に記載された「副溝」を用いようとする動機付けがあるとはいえない。
また、仮に引用発明に上記刊行物2に記載された技術事項(解決手段)を適用する動機付けがあるとしても、引用発明は、「前記内側ミドルラグ溝15は、内側ラグ主部15aと内側サイプ状部15bとを含んで構成され、前記外側ミドルラグ溝16は、外側ラグ主部16aと、外側サイプ状部16bとを含んで構成される」ものであり、「幅方向溝(内側ミドルラグ溝15、外側ミドルラグ溝16)」の「奥壁面」は、「内側サイプ状部15b」及び「外側サイプ状部16b」の端部の面がそれに該当するが、「内側サイプ状部15b」及び「外側サイプ状部16b」の構造(摘示(1b)段落【0039】?段落【0040】)及びその配設意義(摘示(1b)段落【0041】)に照らせば、それらの端部の面に、「細溝」を設けるとともに「副溝」をも設ける合理性はない。
(2)刊行物3には、ブロックを備えた空気入りタイヤに関し(摘示(3a))、主溝方向に沿うブロックの辺縁部が他の部分より早く摩減する偏摩耗、ブロックの周方向両端に発生するトウアンドヒール摩耗の両者を抑制する必要がある、という従来技術の問題に鑑みて、トウアンドヒール摩耗及びブロック辺縁部の早期摩耗の両偏摩耗を抑制することを課題とし(摘示(3b))、かかる課題を解決するために、タイヤトレッドに刻まれたタイヤ周方向に連なる主溝と、前記主溝同士又は前記主溝とタイヤ接地端とを連通する横溝とを備え、前記主溝及び前記横溝により形成されたブロックを備えた空気入りタイヤにおいて、前記ブロックの側壁に開口部を有し、前記開口部が前記側壁に隣接する溝の溝底からブロック側壁高さの3/4より溝底側にあり、前記開口部より前記ブロックの内側に延びて閉塞する複数の細溝が前記側壁に隣接する前記溝の溝方向に沿って刻まれ、前記側壁に隣接する前記溝の溝方向中央部から前記側壁に隣接する前記溝の溝方向両端に向かって、前記細溝の奥行き面積が減少している、という解決手段を採用することが記載されている(摘示(3c))。
上記刊行物3に記載された技術事項(解決手段)は、トウアンドヒール摩耗及びブロック辺縁部の早期摩耗の両偏摩耗を抑制するために、ブロックの「側壁」に「複数の細溝」を設ける、というものであるところ、引用発明の「幅方向溝(内側ミドルラグ溝15、外側ミドルラグ溝16)」の「奥壁面」は、上記(1)で述べたとおり、「内側サイプ状部15b」及び「外側サイプ状部16b」の端部の面がそれに該当し、「内側サイプ状部15b」及び「外側サイプ状部16b」の構造(摘示(1b)段落【0039】?段落【0040】)及びその配設意義(摘示(1b)段落【0041】)に照らして、それらの端部の面にトウアンドヒール摩耗やブロック辺縁部の早期摩耗といった問題が生じるものと解すべき合理性はないから、引用発明の「幅方向溝(内側ミドルラグ溝15、外側ミドルラグ溝16)」の「奥壁面」に、上記刊行物3に記載された「複数の細溝」を用いることが当業者にとって容易に想到し得るものということはできない。
(3)そして、本願発明1は、上記相違点に係る「切欠き」を設けることにより、「新品時の走行騒音を抑制しつつ、摩耗の進行による陸部の剛性の上昇を抑制することができる」(段落【0020】)との効果、より具体的には、「ブロック状陸部80に形成された幅方向溝74の奥壁面74Aに切欠き82が形成されていることから、例えば、ブロック状陸部80の側壁面80Bに切欠き82を形成するものと比べて、切欠きの深さが浅くても十分にブロック状陸部80のタイヤ周方向の剛性を低下させることができる」(段落【0072】)という格別の効果を奏するものである。

2-5 小活
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、あるいは、引用発明及び刊行物3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明2?4は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
2 当審拒絶理由の判断
平成28年11月25日付けの手続補正により、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が補正された。
そして、この補正により、上記理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-16 
出願番号 特願2011-134369(P2011-134369)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60C)
P 1 8・ 536- WY (B60C)
P 1 8・ 113- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 小原 一郎
氏原 康宏
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
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