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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1324783
審判番号 不服2015-22156  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-15 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2014-176625号「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 6880号、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2011年3月10日(優先権主張 2011年2月2日 日本国、2010年3月12日 日本国、2010年3月12日 日本国)を国際出願日として出願した特願2012-504339号の一部を平成26年8月29日に新たな特許出願としたものであって、平成26年9月18日に手続補正書が提出され、平成27年2月4日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日に意見書が提出されたが、同年9月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出された。その後、当審において、平成28年10月28日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1?9に係る発明は、平成29年1月10日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを配設して、前記横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロックを区画形成し、ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設し、
前記横サイプは、一端が一方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、一端が他方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、
前記複合横サイプは、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に複合横サイプを投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法が、当該複合横サイプを配設したブロックを前記平面に投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法と等しく、
前記第1サイプと前記第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップし、
前記ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成されており、当該ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており、
前記底部拡大サイプの前記拡大部は、タイヤ周方向に沿う断面において円形状をなし、
当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは前記底部拡大サイプを構成していないことを特徴とする、空気入りタイヤ。」

第2 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
この出願の請求項1?10に係る発明は、原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開平5-178032号公報
引用文献2 特開平3-10913号公報
引用文献3 特開平5-112105号公報
引用文献4 特開平2-189205号公報
引用文献5 特開2003-118320号公報
引用文献6 特開2009-166762号公報
引用文献7 特開平5-330319号公報
引用文献8 特開平2-267009号公報
引用文献9 特開平3-92402号公報
引用文献10 特開2001-63321号公報
引用文献11 特開2001-1722号公報
引用文献12 特開2002-192917号公報
引用文献13 特開2001-30720号公報
備考
請求項3に係る発明は、引用文献4に記載の発明及び引用文献6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、あるいは、引用文献2または5に記載の発明及び引用文献1、3、4、6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.原査定の理由の判断
(1)引用文献4、2、5に記載された事項及び記載された発明

引用文献4には、特許請求の範囲、3頁左下欄6行?5頁右下欄3行、6頁右上欄15行?同頁右下欄7行、及び、第1?3、11図(第11図から、主溝、横溝はそれぞれ複数本あること、タイヤブロック3に細溝16を3本以上設けることを看取しうる。)の記載から、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
〔引用発明1〕
「トレッド部2に複数本の主溝、横溝により区画されたタイヤブロック3が設けられた空気入りタイヤ1であって、
タイヤブロック3は、
長手方向中央部4が長手方向一端5及び他端6よりタイヤ回転方向後方に位置するとともに、該長手方向中央部4において延在方向が反転しており、
長手方向一端5側及び他端6側の表面15には、該部位の長手方向と平行な3本以上の細溝16が形成され、細溝16は長手方向一端5の側壁18及び他端6の側壁19にそれぞれ開口している、
空気入りタイヤ1。」


引用文献2には、特許請求の範囲、2頁左上欄18行?同頁左下欄14行、第1、2図(第1図から、ブロック3はタイヤ周方向に凸形状であること、薄い切り込み4はブロック3の凸形状に沿っていることを看取しうる。)の記載から、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
〔引用発明2〕
「トレッド面にタイヤ周方向の複数本の主溝1と該主溝1と交差する複数本の副溝2とにより区分された、タイヤ周方向に凸形状であるブロック3からなるブロックパターンを有するタイヤにおいて、
前記ブロック3に、ブロック3の凸形状に沿って開き角が40°?140°の山形をなし、両端部がそれぞれ前記主溝1に連通する薄い切り込み4を設け、前記山形の先端をタイヤ周方向に向けて配列した空気入りタイヤ。」


引用文献5には、【特許請求の範囲】の【請求項1】、段落【0001】、【0019】、【0027】及び、【図2】の記載から、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。
〔引用発明3〕
「トレッド面5Sを、周方向に連続してのびる複数の縦溝Gと、この縦溝G間を横切る複数の横溝gとにより区分されるブロックBが周方向に隔設され、
前記ブロックBに、V字の突端aがタイヤ周方向に向き、かつ巾方向に連続して両端が前記縦溝Gに開口するV字状サイピングSaを2本以上、4本以下有するV字サイプブロックBaを含んだ、
重荷重用空気入りタイヤ。」

(2)対比・判断

本願発明と引用発明1とを対比する。
(ア)後者の「トレッド部2」は、前者の「両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部」に相当する。
(イ)後者の「複数本の主溝」は、技術常識に照らして、前者の「タイヤ周方向に延びる複数本の主溝」に相当する。
(ウ)後者の「複数本の」「横溝」は、「主溝」とともに「タイヤブロック3」を区画するものであり、タイヤブロック3の回転方向(周方向)の外形形状を決めるものである。また、後者の「タイヤブロック3」は、「長手方向中央部4が長手方向一端5及び他端6よりタイヤ回転方向後方に位置するとともに、該長手方向中央部4において延在方向が反転」するものである。
そうすると、後者の「横溝」は、長手方向の中央部が回転方向(周方向)に突出するとともに延在方向が反転するものであり、前者の「主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝」に相当し、後者の「長手方向中央部4が長手方向一端5及び他端6よりタイヤ回転方向後方に位置するとともに、該長手方向中央部4において延在方向が反転」する「タイヤブロック3」は、前者の「横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロック」に相当する。
そして、後者の「複数本の主溝、横溝により」「タイヤブロック3が」「区画され」ることは、前者の「主溝」と「横溝とを配設して」「複数個のブロックを区画形成」することに相当する。
(エ)後者の「長手方向一端5側及び他端6側の表面15には、該部位の長手方向と平行な3本以上の細溝16が形成され」ることは、前者の「ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設」することに相当する。
(オ)後者の「3本以上の細溝16が形成され」ることは、前者の「ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成され」ることに相当する。
(カ)後者の「空気入りタイヤ1」は、前者の「空気入りタイヤ」に相当する。

そうすると、両者は、
「両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを配設して、前記横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロックを区画形成し、ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設し、
前記ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成されている、
空気入りタイヤ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
本願発明は、「横サイプは、一端が一方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、一端が他方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、複合横サイプは、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に複合横サイプを投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法が、当該複合横サイプを配設したブロックを前記平面に投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法と等しく、第1サイプと第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップし、」と特定されているのに対して、引用発明1は、細溝16についてそのように特定されていない点。
〔相違点2〕
本願発明は、「ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており、底部拡大サイプの拡大部は、タイヤ周方向に沿う断面において円形状をなし、当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは底部拡大サイプを構成していない」と特定されているのに対して、引用発明1は、細溝16についてそのように特定されていない点。

事案に鑑み、相違点2について検討する。
〔相違点2について〕
引用文献6には、小ブロック21のタイヤ周方向Cの一方側部分及び他方側部分に、タイヤ幅方向Wへ延びた2本の幅方向サイプ25が、小ブロック21をタイヤ周方向Cへ分断するようにそれぞれ形成され、各幅方向サイプ25は、サイプ底側に、円弧状断面の拡大部27をそれぞれ有していることが記載されている(段落【0028】?【0030】、【図2】参照)。
しかしながら、引用文献6は、少なくとも、相違点2に係る本願発明の構成の「ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており」、「当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは底部拡大サイプを構成していない」との事項を示すものとはいえない。

また、引用文献10(【図1】、段落【0006】参照)、引用文献12(段落【0013】、【0033】、【図3】(b)等参照)は、相違点1に係る本願発明の「第1サイプと第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップし、」との構成を示唆するものの、相違点2に係る本願発明の構成を示唆するものではない。

相違点2に係る本願発明の構成について、本願の明細書の発明の詳細な説明には次の記載がある。
なお、下線は当審で付したものである。
「【0053】
そして、中央側横サイプ43を底部拡大サイプとしたブロック4をトレッド部踏面に配設したこの変形例の空気入りタイヤでは、前述の図1?3に示す空気入りタイヤと同様にして、ブロック4の頂点47が位置する部分が倒れ込み変形しにくくなり、タイヤの接地面積を確保することができる。また、この変形例の空気入りタイヤでは、中央側横サイプ43を、サイプ底部に拡大部43aを有して排水性が高い底部拡大サイプとしているので、路面とタイヤとの間に発生する水膜を効果的に除去してタイヤのグリップ力を十分に確保することもできる。従って、タイヤの接地面積の確保と、エッジによる氷路の引っ掻き効果の向上とを両立すると共に、サイプによる水膜の除去効果を向上させて、タイヤの氷上摩擦特性を向上することができる。
【0054】
なお、一般に、ブロックに底部拡大サイプを配設した場合、ブロックの剛性が低下してブロックが倒れこみ変形し易くなるが、この変形例の空気入りタイヤでは、ブロック4のタイヤ周方向両端側に位置する周方向端側横サイプ42,44以外の中央側横サイプ43を底部拡大サイプとしているので、ブロック4のタイヤ周方向両端側の剛性が大幅に低下してブロックが過剰に倒れ込み変形するのを抑制することができる。」
そうすると、相違点2に係る本願発明の構成は、中央側横サイプ43の底部の拡大部43aにより排水性を向上させるとともに、タイヤ周方向両端側に位置する周方向端側横サイプ42,44を底部拡大サイプとしないことで、ブロック4のタイヤ周方向両端側の剛性の低下を抑制するとの作用効果(以下、「底部拡大サイプに関する効果」という。)を奏するものでる。

そうしてみると、引用発明1に、引用文献6、10、12に記載の事項を適用しても、相違点2に係る本願発明の構成とすることはできず、上記「底部拡大サイプに関する効果」を得ることもできない。

したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明1及び引用文献6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはいえない。


本願発明と引用発明2とを対比する。
(ア)後者の「トレッド面」は、前者の「両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部」に相当する。
(イ)後者の「タイヤ周方向の複数本の主溝1」は、前者の「タイヤ周方向に延びる複数本の主溝」に相当する。
(ウ)後者の「主溝1と交差する複数本の副溝2」は、「主溝1」とともに「タイヤ周方向に凸形状であるブロック3」を区画するものであるので、前者の「主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝」に相当する。
(エ)後者の「タイヤ周方向に凸形状であるブロック3」は、前者の「横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロック」に相当し、後者の「主溝1」と「副溝2」とにより「ブロック3」を「区分」することは、前者の「複数個のブロックを区画形成」することに相当する。
(オ)後者の「ブロック3に、ブロック3の凸形状に沿って開き角が40°?140°の山形をなし、両端部がそれぞれ主溝1に連通する薄い切り込み4を設け」ることは、前者の「ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設」することに相当する。
(カ)後者の「空気入りタイヤ」は、前者の「空気入りタイヤ」に相当する。

そうすると、両者は、
「両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを配設して、前記横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロックを区画形成し、ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設した、
空気入りタイヤ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点3〕
本願発明は、「横サイプは、一端が一方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、一端が他方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、複合横サイプは、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に複合横サイプを投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法が、当該複合横サイプを配設したブロックを前記平面に投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法と等しく、第1サイプと第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップし、」と特定されているのに対して、引用発明2は、薄い切り込み4についてそのように特定されていない点。
〔相違点4〕
本願発明は、「ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成されており、当該ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており、底部拡大サイプの拡大部は、タイヤ周方向に沿う断面において円形状をなし、当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは底部拡大サイプを構成していない」と特定されているのに対して、引用発明2は、薄い切り込み4についてそのように特定されていない点。

事案に鑑み、相違点4について検討する。
〔相違点4について〕
上記アの〔相違点2について〕で述べたと同様に、引用文献6は、少なくとも、相違点4に係る本願発明の構成の「ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており」、「当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは底部拡大サイプを構成していない」との事項を示すものとはいえない。

また、引用文献10、12は、上記アの〔相違点2について〕で述べたとおり、相違点2に係る本願発明の構成を示唆するものではない。
さらに、引用文献1(段落【0018】?【0021】、【図2】のサイピングKを参照)、引用文献3(段落【0037】、【図1】の横サイピングLSを参照)及び引用文献4(第11図参照)は、相違点4に係る本願発明の「ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成されており」との事項を示唆するものの、相違点2に係る本願発明の「底部拡大サイプ」に関する構成を示唆するものではない。

そうしてみると、仮にブロックに横サイプを少なくとも3本以上設けることが、引用文献1、3、4の記載から周知の事項と認められ、引用発明2の薄い切り込み4に、前記周知の事項及び引用文献6、10、12に記載の事項を適用できたとしても、相違点4に係る本願発明の構成とすることはできず、上記「底部拡大サイプに関する効果」を得ることもできない。

したがって、相違点3について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明2及び引用文献1、3、4、6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはいえない。


本願発明と引用発明3とを対比する。
(ア)後者の「トレッド面5S」は、前者の「両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部」に相当する。
(イ)後者の「周方向に連続してのびる複数の縦溝G」は、前者の「タイヤ周方向に延びる複数本の主溝」に相当する。
(ウ)後者の「縦溝G間を横切る複数の横溝g」は、「縦溝G」とともに「ブロックB」を区分するものであり、「ブロックB」は「V字サイプブロックBa」を含むものであるので、「横溝g」もV字状であるといえる。
そうすると、後者の「横溝g」は、前者の「主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝」に相当する。
(エ)後者の「V字の突端aがタイヤ周方向に向」いた「V字サイプブロックBa」は、前者の「横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロック」に相当する。
(オ)後者の「縦溝G」と「横溝g」とにより「ブロックB」を「区分」することは、前者の「複数個のブロックを区画形成」することに相当する。
(カ)後者の「V字サイプブロックBa」が「巾方向に連続して両端が縦溝Gに開口するV字状サイピングSa」を有することは、前者の「ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設」することに相当する。
(キ)後者の「V字サイプブロックBa」が「V字状サイピングSaを2本以上、4本以下有する」ことは、前者の「ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成され」ることに相当する。
(ク)後者の「重荷重用空気入りタイヤ」は、前者の「空気入りタイヤ」に相当する。

そうすると、両者は、
「両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを配設して、前記横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロックを区画形成し、ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設した、
空気入りタイヤ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点5〕
本願発明は、「横サイプは、一端が一方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、一端が他方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、複合横サイプは、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に複合横サイプを投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法が、当該複合横サイプを配設したブロックを前記平面に投影したときの投影図のタイヤ幅方向寸法と等しく、第1サイプと第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップし、」と特定されているのに対して、引用発明3は、V字状サイピングSaについてそのように特定されていない点。
〔相違点6〕
本願発明は、「ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成されており、当該ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており、底部拡大サイプの拡大部は、タイヤ周方向に沿う断面において円形状をなし、当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは底部拡大サイプを構成していない」と特定されているのに対して、引用発明3は、V字状サイピングSaは「2本以上、4本以下」であり、前記のように特定されていない点。

事案に鑑み、相違点6について検討する。
〔相違点6について〕
上記アの〔相違点2について〕で述べたと同様に、引用文献6は、少なくとも、相違点6に係る本願発明の構成の「ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプを構成しており」、「当該ブロックのタイヤ周方向両端側に位置する横サイプは底部拡大サイプを構成していない」との事項を示すものとはいえない。

また、引用文献10、12は、上記アの〔相違点2について〕で述べたとおり、相違点2に係る本願発明の構成を示唆するものではない。
さらに、引用文献1、3、4は、上記イの〔相違点4について〕で述べたとおり、相違点2に係る本願発明の「底部拡大サイプ」に関する構成を示唆するものではない。

そうしてみると、仮にブロックに横サイプを少なくとも3本以上設けることが、引用文献1、3、4の記載から周知の事項と認められ、引用発明3のV字状サイピングSaに、前記周知の事項及び引用文献6、10、12に記載の事項を適用できたとしても、相違点6に係る本願発明の構成とすることはできず、上記「底部拡大サイプに関する効果」を得ることもできない。

したがって、相違点5について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明3及び引用文献1、3、4、6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるので、本願発明は、引用発明1?3及び引用文献1、3、4、6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2?9に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明1?3及び引用文献1、3、4、6、10、12に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第3 当審拒絶理由について
1.平成28年10月28日付け当審拒絶理由の概要
この出願の請求項1?9に係る発明は、同日出願された下記の出願に係る発明と同一と認められ、かつ、下記の出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

同日出願:特願2014-176624号(特許第5714164号)
備考
請求項1に係る発明は、同日出願の請求項1を引用する請求項5に係る発明と同一である。
請求項2?9に係る発明も、同日出願の請求項5?11に係る発明と同一である。

2.当審拒絶理由の判断
(1)同日出願の発明
同日出願の請求項1及び5に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
両トレッド端間に位置するトレッド部踏面の少なくとも一部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝間および/または主溝とトレッド端間でタイヤ周方向に凸形状となるような1個の屈曲点をもってタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを配設して、前記横溝の凸形状に対応した形状の周方向突出部を有する複数個のブロックを区画形成し、ブロックに、横溝と対応した配設形状でタイヤ幅方向に延びる少なくとも一本の横サイプを配設し、
前記横サイプは、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したときのタイヤ幅方向寸法が、当該横サイプを配設したブロックを前記平面に投影したときのタイヤ幅方向寸法と等しく、
前記ブロックに少なくとも三本の横サイプが形成されており、当該ブロックのタイヤ周方向両端側にそれぞれ位置する周方向端側横サイプ以外の、周方向端側横サイプの間に位置する横サイプのうち少なくとも一本は、底部に拡大部を有する底部拡大サイプであり、前記周方向端側横サイプは底部拡大サイプではないことを特徴とする、空気入りタイヤ。」
「【請求項5】
前記横サイプは、一端が一方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第1サイプと、一端が他方の主溝またはトレッド端に開口し他端がブロック内で終端または横溝に開口する第2サイプとからなる1対の複合横サイプを含み、
前記第1サイプと前記第2サイプとを、タイヤ回転軸線を含みブロック表面に直交する平面に投影したとき、第1サイプのタイヤ幅方向寸法成分と第2サイプのタイヤ幅方向寸法成分とがオーバーラップすることを特徴とする、請求項1?4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。」

(2)対比・判断
本願発明には、平成29年1月10日付け手続補正により、「底部拡大サイプの拡大部は、タイヤ周方向に沿う断面において円形状をなし」との事項が付加されている。
本願発明と同日出願の請求項1を引用する請求項5に係る発明とを対比すると、前者は前記補正により付加された事項を有する点で、後者と相違し、もはや両者は同一であるとはいえなくなった。
また、本願の請求項2?9に係る発明は、本願発明を直接又は間接的に引用するものであるので、同様に、同日出願の請求項5?11に係る発明と同一であるとはいえなくなった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-16 
出願番号 特願2014-176625(P2014-176625)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60C)
P 1 8・ 4- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲さき▼ 潤  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 平田 信勝
小原 一郎
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 杉村 憲司  
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