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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 A62C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A62C
管理番号 1324812
審判番号 不服2015-19001  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-21 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2011-131696「ノズル構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月 7日出願公開、特開2013- 195、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成23年6月13日の出願であって、平成27年2月20日付けで拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年4月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年7月16日付けで拒絶査定(以下、「原審拒絶査定」という。)がされ、これに対し、平成27年10月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成28年3月1日に上申書が提出され、その後、当審において平成28年10月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年12月19日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成28年12月19日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりものと認める。

「【請求項1】
(a)ノズル部であって、
ノズル部における消火ガスの噴射方向上流側に、ノズル部の軸線L1に同軸に設けられ、消火ガス供給源から供給される高圧の消火ガスを導く導管の端部に接続される取付け筒部と、
取付け筒部の噴射方向下流で前記軸線L1に同軸に連なって、取付け筒部よりも半径方向外方に拡がって設けられる端壁と、
前記軸線L1に同軸に端壁から噴射方向下流に、取付け筒部よりも半径方向外方に拡がる空間を形成して、連なる隔壁部とを有し、
隔壁部には、複数のノズル孔が、前記軸線L1に平行に延び、各ノズル孔を通過する消火ガスの流速が均一化されるように、前記軸線L1から複数の異なる半径線上で、各半径線毎に前記軸線L1から半径方向に離れた複数の位置に分散して配置されるノズル部と、
(b)ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音装置であって、
多孔質材料から成り、各ノズル孔の開口の直後に設けられたケーシングに収容され、その開口を規定する表面部に密接する吸音部材を有する消音装置とを含み、
(c)消音装置は、
隔壁部から噴射方向下流に連なり、前記軸線L1に沿って延び、吸音部材が隙間なく詰められて収容され、
(d)吸音部材は、前記軸線L1に沿って延びる円柱状であり、
(e)各ノズル孔からの消火ガスは、吸音部材内に直接流れ込み、該吸音部材の噴射方向最下流の開口部から直接外部へ放出されることを特徴とするノズル構造体。
【請求項2】
各ノズル孔は、前記軸線L1に垂直な断面が、前記軸線L1の方向に一様であることを特徴とする請求項1に記載のノズル構造体。
【請求項3】
消音装置の噴射方向下流で軸線方向端部には、半径方向内方に突出して吸音部材を隔壁部に保持する部材が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のノズル構造体。」

第3 原審拒絶査定の理由について
1 原審拒絶査定の理由の内容
(1)原審拒絶理由の内容
「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

理 由

理由1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1-2
・引用文献等1、2
・備考
引用文献1(段落【0022】-【0038】、図1-8等参照)には、消火ガスを空間に向けて噴射するノズル孔(hole7)を有する噴射ヘッドと、多孔質材料から成り、噴射ヘッド内にノズル孔の開口の直後に、開口を規定する表面部に密接して配置される吸音部材(filter32、31)を有する消音装置とを含むノズル構造体が記載されている。
そして、引用文献2(図1等参照)には、消音装置を含むノズル構造体において、吸音部材(sound absorbing insert3)に接続するノズル孔(perforations24)を複数設けることが記載されており、引用文献1に記載のノズル構造体においても同様に、ノズル孔を複数設けるようにすることに困難性は認められない。また、ノズル孔を複数設ける場合に、それらを、開口を規定する表面部に分散して配置することは当業者にとって自明である。

なお、請求項1には、「ノズル孔の開口に直前に、・・・吸音部材を有する」と記載されているが、ガスの流れる方向を基準とするならば、「ノズル孔の開口の直後に、・・・吸音部材を有する」と記載する方が正確なのではないか。

----------------------------------
理由2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1-2
・引用文献等3
・備考
先願明細書等3(引用文献等3)に記載の発明における「オリフィス2」、「金属多孔性材料7a」は、各々本願の請求項1及び2に係る発明における「ノズル孔」、「吸音部材」に相当する。

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引 用 文 献 等 一 覧
1.欧州特許出願公開第1151800号明細書
2.米国特許第4082160号明細書
3.特願2010-105342号(特開2011-125673号)」

(2)原審拒絶査定の内容
「この出願については、平成27年 2月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

●理由2(特許法第29条の2)について

・請求項1
・引用文献等3
・備考
出願人は、意見書において、「引用文献3の図7(a)に関連する明細書段落[0050]には、「複数個(本実施例においては、6個)のオリフィス2を備え、」と記載されるが、図7(a)には2個のオリフィス2だけが図示されるにすぎない。したがって、前述の新たな請求項1の本発明の重要な構成(A)の一部「各ノズル孔26は、各ノズル孔26を通過する消火ガスの流速が均一化されるように、前記軸線L1から半径方向に離れた位置に分散して、かつ周方向に分散して配置される」構成は、開示されていないことは、明らかである。」と主張する。
確かに、出願人の主張するように、引用文献等3では、噴射ヘッドの断面図が示されている図7(a)及び図8(a)には、2個のオリフィスだけが図示されており、断面図に表れないオリフィスがどのような配置となっているかまでは記載されていない。
しかしながら、引用文献等3に記載されている噴射ヘッドは、噴射ヘッドの軸線に対して対象形状にされており、また、敢えてオリフィスを偏在させて設ける理由も存在しないことから、技術常識を考慮すれば、隔壁部に均一に分散させてオリフィスを配置させることは自明であり、「各ノズル孔は、軸線L1から半径方向に離れた位置に分散して、かつ周方向に分散して配置される」構成は記載されているに等しい事項である。

・請求項2
・引用文献等2、3
・備考
上記備考に加えて、引用文献2に記載されているノズル孔(perforations24)のように、ガスの流通方向に垂直な断面が、流通方向に一様であることは従来より周知であるから、請求項2に係る発明と引用文献等3に記載された発明とが、ノズル孔の断面形状の点において相違するとしても、当該相違は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない)であり、両発明は実質的に同一である。

したがって、請求項1及び2に係る発明は、引用文献等3に記載された発明と実質的に同一であるから、依然として、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

<審査を行っていない請求項>
平成27年 4月21日付け手続補正書による補正後の請求項(3、4)に係る発明については、先の拒絶理由通知の際に審査対象としていないため、当該請求項に係る発明については審査を行っていない。

<引用文献等一覧>
(1.欧州特許出願公開第1151800号明細書)
2.米国特許第4082160号明細書(周知技術を示す文献)
3.特願2010-105342号(特開2011-125673号)」

2.原審拒絶査定の理由に対する当審の判断
(1)先願
ア 先願の記載
本願の出願の日前の出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2010-105342号(特開2011-125673号)の明細書(以下、「先願」という。)には、次の記載がある。
(ア) 「【0029】
図3に、本発明のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッドの第3実施例を示す。
このガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド1Cは、消火剤ガスが供給される配管4に接続された噴射ヘッド1Cに横方向に開口する複数個(本実施例においては、4個)のオリフィス2を備えるとともに、その外周を覆うように消音器3Cを配設し、この消音器3Cを介して消火剤ガスを消火対象区画に放出するようにしている。」(段落【0029】)。
(イ) 「【0049】
また、同様に、第3実施例の第2変形実施例を示す、オリフィス2の出口部に気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料を配設する構造のみ(筒状の筐体38を省略。)によって消音効果を得るようにすることもできる。
この場合、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料は、オリフィス2の出口部に、気流の乱れを生じさせる空隙を生じることがないように、できるだけ近接して配設することが好ましい。
【0050】
具体的には、図7に示すように、噴射ヘッド1I、1Jのオリフィス2の出口部に気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7を配設することにより、オリフィス2を通過した消火剤ガスが、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7を通過する間に徐々に膨張することによって、大気中に放出される際に急激に膨張することを緩和し、消火剤ガスが膨張することによって生じる衝撃波を弱めて、消火剤ガスが放出される際に発生する騒音を低減することができる。
ここで、図7(a)に示す噴射ヘッド1Iは、複数個(本実施例においては、6個)のオリフィス2を備え、その出口に円板形状(又は図9(b)に示すような円錐形状)のデフレクタ(偏向部材)5を設けて横方向に偏向させた開口を備えたものであり、図7(b)に示す噴射ヘッド1Jは、1個のオリフィス2に連なる下方向の開口を備えたものである。
なお、噴射ヘッドやオリフィスの形式は、本実施例のものに限定されるものではない。
【0051】
この場合において、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7には、特に、グラスウール、ロックウール、スチールウール等の金属製ウールや形状保持性能の高い無機材料(金属、金属の酸化物、金属の水酸化物を含む。)の焼結体からなる多孔体を、その材質等に応じて、必要に応じて、パンチングメタル、エキスパンドメタル、焼結金属製の板材、ハニカム構造の整流器等からなるカバー部材を併用することによって、好適に用いることができる。
【0052】
このように、消音手段を、オリフィス2の出口部に配設した気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7で構成することにより、消音手段を簡易な構造とし、噴射ヘッドをコンパクトに構成でき、既存の設備にもそのまま適用することができる。
【0053】
本実施例のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド1I、1Jのその他の作用は、上記第3実施例の第2変形実施例のガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド1C2と同様である。
【0054】
ところで、オリフィス2の出口部に配設する気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7は、全体を均質な材料で構成するほか、図8に示す噴射ヘッド1K、1Lに示すように、繊維状又は多孔性材料の空隙の孔径を気体が流通する方向に変化させた材料、例えば、繊維状又は多孔性材料の空隙の孔径を気体が流通する方向に小さくした材料を用いることができる。
具体的には、図8(a)に示す噴射ヘッド1Kは、複数個のオリフィス2を備え、その出口に、中心部に空隙の孔径が大きな3次元の網目状組織からなる金属多孔性材料7aを、外周部にそれより空隙の孔径が小さな金属多孔性材料7bを層状に配して構成した円板形状の多孔性の気流の乱れをなくす材料7を配設したものであり、図8(b)に示す噴射ヘッド1Lは、複数個のオリフィス2を備え、その出口に、中心部に空隙の孔径が大きな3次元の網目状組織からなる金属多孔性材料7aを、外周部にそれより空隙の孔径が小さな金属多孔性材料7bを層状に配して構成した円筒形状の多孔性の気流の乱れをなくす材料7を配設したものである。
なお、噴射ヘッドやオリフィスの形式、さらに、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7は、本実施例のものに限定されるものではない。」(段落【0049】ないし【0054】)。

イ 先願記載の事項
上記ア(ア)及び(イ)並びに図4及び8から、次のことが分かる。
(カ) 上記ア(ア)並びに図4及び8の記載から、先願には、ガス系消火設備用の消音機能を有する噴射ヘッド1Kが記載されていることが分かる。
(キ) 上記ア(ア)の記載から、噴射ヘッド1Kは、消火剤ガスが供給される配管4に接続されることが分かる。
(ク) 上記ア(ア)及び(イ)の記載から、噴射ヘッド1Kはオリフィス2及びオリフィス2の出口にできるだけ近接して配接された、金属多孔性材料7a及び7bからなる円筒形状の多孔性の気流の乱れをなくす材料7を備えることが分かる。
(ケ) 図4及び8において、噴射方向上流側に、噴射方向の軸線に同軸に配管4と接続される筒部が形成されていることが看取できる。
(コ) 図8において、噴射ヘッド1Kは、配管4と接続される筒部の噴射方向下流に、筒部より半径方向外方に広がる空間を形成する端壁及び隔壁と、端壁の軸線から等距離の位置に複数形成され、軸線と平行に延びたオリフィス2とを備えていることが看取できる。
(サ) 図8において、多孔性の気流の乱れをなくす材料7は、隔壁から噴射方向下流に連なり、軸線に沿って延びることが看取できる。
(シ) 上記ア(イ)の段落【0054】及び図8の記載から、消火剤ガスは、金属多孔性材料7aから軸方向下流及び径方向外径側の金属多孔性材料7bに向かう方向に流れ、金属多孔性材料7bから放出されることが分かる。

ウ 先願発明
上記ア(ア)及び(イ)並びにイ(カ)ないし(シ)から、先願には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認める。
「消火剤ガスの噴射方向上流側に、噴射方向の軸線に同軸に設けられ、高圧の消火剤ガスが供給される配管4の端部に接続される筒部と、
筒部の噴射方向下流で前記軸線に同軸に連なって筒部よりも半径方向外方に拡がって設けられる端壁と、
前記軸線に同軸に端壁から噴射方向下流に、筒部よりも半径方向外方に拡がる空間を形成して、連なる隔壁とを有し、
前記隔壁には、複数のオリフィス2が、前記軸線に平行に延び、軸線から等距離の位置に配置され、
金属多孔性材料7a及び7bから成り、各オリフィス2の開口の直後にできるだけ各オリフィス2に近接して配置された多孔性の気流の乱れをなくす材料7を有し、
多孔性の気流の乱れをなくす材料7は、隔壁から噴射方向下流に連なり、前記軸線に沿って延び、
多孔性の気流の乱れをなくす材料7は前記軸線に沿って延びる円筒形状であり、
各オリフィス2からの消火剤ガスは、多孔性の気流の乱れをなくす材料7に直接流れ込み、該多孔性の気流の乱れをなくす材料7の外周及び軸線方向最下流から直接外部へ放出される、噴射ヘッド1K。」

(2)対比・判断
ア 本願発明1との対比
本願発明1と先願発明とを対比すると、先願発明における「消火剤ガス」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「消火ガス」に相当し、以下同様に「軸線」は「軸線L1」に、「筒部」は「取付け筒部」に、「配管4」は「導管」に、「端壁」は「端壁」に、「隔壁」は「隔壁部」に、「オリフィス2」は「ノズル孔」に、「金属多孔性材料7a及び7b」は「多孔質材料」に、「多孔性の気流の乱れをなくす材料7」は「消音部材」に、「噴射ヘッド1K」は「ノズル構造体」に、相当する。

また、「分散して配置される」という限りにおいて、先願発明においてオリフィス2が「軸線から等距離に配置される」ことは、本願発明において複数のノズル孔が「各ノズル孔を通過する消火ガスの流速が均一化されるように、前記軸線L1から複数の異なる半径線上で、各半径線毎に前記軸線L1から半径方向に離れた複数の位置に分散して配置される」ことに相当する。
さらに、先願発明において「多孔性の気流の乱れをなくす材料7は前記軸線に沿って延びる円筒形状」であることは、本願発明において「吸音部材は前記軸線L1に沿って延びる円柱状」であることに相当する。
そして、先願発明において「多孔性の気流の乱れをなくす材料7」を「各オリフィス2の開口の直後にできるだけ近接して配置」することは、本願発明において「吸音部材」を「その開口を規定する表面部に密接」することに相当する。

してみれば、本願発明と先願発明とは、
「消火ガスの噴射方向上流側に、軸線に同軸に設けられ、消火ガスを導く導管の端部に接続される取付け筒部と、
取付け筒部の噴射方向下流で前記軸線に同軸に連なって、取付け筒部よりも半径方向外方に拡がって設けられる端壁と、
前記軸線L1に同軸に端壁から噴射方向下流に、取付け筒部よりも半径方向外方に拡がる空間を形成して、連なる隔壁部とを有し、
隔壁部には、複数のノズル孔が、前記軸線L1に平行に延び、分散して配置され、
消火ガスの放出による音響を減衰させる吸音部材であって、
多孔質材料から成り、各ノズル孔の開口の直後に、その開口を規定する表面部に密接する吸音部材を含み、
吸音部材は、
隔壁部から噴射方向下流に連なり、前記軸線L1に沿って延び、
前記軸線L1に沿って延びる円柱状であり、
各ノズル孔からの消火ガスは、吸音部材内に直接流れ込み、該吸音部材の噴射方向最下流の開口部から直接外部へ放出されることを特徴とするノズル構造体。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明が「ノズル部」と「消音装置」を備える「ノズル構造体」であるのに対し、引用発明は「ノズル部」及び「消音装置」を明示しているものではない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「導管」に関し、本願発明においては「消火ガス供給源から供給される高圧の消火ガス」を導くものであるのに対し、引用発明において消火剤ガスが高圧であるか否か明示されていない点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
「複数のノズル孔」が「分散して配置される」に関し、本願発明においては、「複数のノズル孔」が「各ノズル孔を通過する消火ガスの流速が均一化されるように、前記軸線L1から複数の半径線上で、各半径線毎に前記軸線L1から半径方向に離れた複数の位置に分散して配置される」のに対し、先願発明においては、「複数のオリフィス2」が「軸線から等距離の位置に配置される」点(以下、「相違点3」という。)。

<相違点4>
「吸音部材」に関し、本願発明においては、「各ノズル孔の開口の直後に設けられたケーシングに収容される」ものであるのに対し、引用発明においては、「ケーシングに収容される」ものではない点(以下、「相違点4」という。)。

<相違点5>
「消火ガス」に関し、本願発明においては、「吸音部材内に直接流れ込み、該吸音部材の噴射方向最下流の開口部から直接外部へ放出される」のに対し、引用発明においては、「多孔性の気流の乱れをなくす材料7」の「開口部」が明示されていない点(以下、「相違点5」という。)。

イ 本願発明1に対する判断
事案に鑑み、まず相違点3及び相違点4が実質的な相違点といえるかどうか検討する。

(ア) 相違点3についての判断
先願には、段落【0050】に「複数個(本実施例においては、6個)オリフィス2」と記載されているように、先願は、オリフィス2が6個である実施例を開示している。しかし、先願は、「隔壁部には、複数のノズル孔が、前記軸線L1に平行に延び、各ノズル孔を通過する消火ガスの流速が均一化されるように、前記軸線L1から複数の異なる半径線上で、各半径線毎に前記軸線L1から半径方向に離れた複数の位置に分散して配置される」点について開示も示唆もしておらず、さらに当該配置が当業者にとって自明の配置とも消火設備のノズル構造体の技術分野における周知ないし慣用技術ということもできないから、相違点3が、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。
そうすると、相違点3は実質的な相違点である。

(イ) 相違点4についての判断
先願発明は、円筒形状の多孔性の気流の乱れをなくす材料7の周面からも消火剤ガスを放出するものであるから、ケーシングに収容するものではない。
そうすると、相違点4は実質的な相違点である。

してみれば、相違点1、2及び5を検討するまでもなく、本願発明は先願発明と同一ではなく、先願発明と実質的に同一であるということもできない。

ウ 本願発明2及び3についての判断
本願発明2及び3は、本願発明1を置換えることなく直接又は間接的に引用するものであって、本願発明1をさらに限定した発明である。
そうすると、本願発明2及び3も、先願発明と同一ではなく、先願発明と実質的に同一であるということもできない。

(4) 小括
上記(2)及び(3)のとおり、本願発明1ないし3は、先願発明と実質的な相違点を有するから、先願発明と同一ではない。
よって、原審拒絶査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の内容
当審拒絶理由は以下のとおりである。
「この審判事件に関する出願は、合議の結果、以下の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

理 由

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)本願の請求項1の記載中「(a)高圧の消火ガスを導く導管と、(b)導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源と、(中略)を含み、(中略)ノズル構造体」という記載は、以下の点で、発明の課題を解決するための手段であるとして発明の詳細な説明に記載されている技術的特徴に関連する事項を反映したものではない。
請求項1に係る発明の内容として、発明の詳細な説明に開示されている技術において、「ノズル構造体」は、「前記噴射ヘッド23と消音装置27とによって、前記ノズル構造体21が構成される。」(段落【0015】)及び「本実施形態のノズル構造体21aは、ケーシング35と、ケーシング35内に同軸に形成される円板状のノズル部22とによって構成される。」(段落【0029】)の記載からみて、「ケーシング」または「消音装置」と「ノズル部」とにより構成されるものと解される。
発明の詳細な説明には、「本発明の一参考例」(段落【0013】)として、「ノズル構造体21は、高圧の消火ガスを前記消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル部22を有する噴射ヘッド23と、噴射ヘッド23が接続され、噴射ヘッド23に高圧の消火ガスを導く導管24と、導管24に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源25と、噴射ヘッド23に設けられ、ノズル部22に形成される複数(本実施形態では7)のノズル孔26から噴射される消火ガスの噴射による噴射音を減衰させる消音装置27とを含む。」(段落【0013】)という記載がある一方、同参考例には、「前記噴射ヘッド23と消音装置27とによって、前記ノズル構造体21が構成される。このようなノズル構造体21には、消火ガス供給源25から導管24を経て噴射ヘッド23に消火ガスが供給される。」(段落【0015】)、「噴射ヘッド23と消音装置27とによって構成されるノズル構造体21は、」(段落【0028】)とも記載されており、同参考例では、「噴射ヘッド23」及び「消音装置27」は一貫して「ノズル構造体21」を構成するものとされているものの、「導管24」及び「消火ガス供給源25」はその扱いが一貫していないため、即ち段落により「導管24」及び「消火ガス供給源25」が、「ノズル構造体21」に含まれるものとされたり、「ノズル構造体21」とは別のものとされたりするため、請求項1の前記記載が、同参考例の段落【0013】の記載をもとに、発明の詳細な説明に記載されている技術的特徴に関連する事項を反映したものと認めることはできない。また、「本発明の一実施形態」(段落【0029】)として発明の詳細な説明に開示されている技術では、「ノズル構造体」は「ノズル部22」及び「ケーシング35」により構成されるものとされており、「導管」及び「消火ガス供給源」が「ノズル構造体」を構成するとは開示されていないため、請求項1の前記記載が、同実施形態をもとに、発明の詳細な説明に記載されている技術的特徴を関連する事項を反映したものと認めることもできない。
このため、本願の請求項1及び請求項1を直接または間接的に引用する請求項2ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

(2)本願の請求項1の記載中、「前記軸線L1から半径方向に離れた位置に分散して、かつ周方向に分散して配置されるノズル部」において、「軸線L1から半径方向に離れた位置」に「分散」する旨の当該記載では、ノズル孔の配置箇所が把握できず、不明確である。即ち、「軸線L1から半径方向に離れた位置」とは、1の位置が軸線L1から半径方向に離れている態様を特定する記載と解されるのに対し、「分散して配置」とは、複数がばらばらに散らばって配置する態様を特定する記載と解されるため、請求項1の前記記載では、1の半径方向の異なる複数位置に複数のノズル孔が配置されるのか、それとも異なる複数の半径方向の1の位置にノズル孔が配置されるのか、把握できない。明細書を参酌しても、段落【0032】の「各ノズル孔26を中心軸線Lから半径線方向に離れた位置に分散させて配置することによって、」と記載される一方、同段落には「これによって、各ノズル孔26を周方向に分散させて配置することによって、」とも記載されており、後者の記載における「これによって」という記載からは、後者の記載は、前者の記載内容を、表現を変えて繰り返し表したものとも解し得るため、結局明細書を参酌しても請求項1の前記「半径方向に離れた位置に分散して、」という記載が特定しようとするノズル孔の配置態様が把握できない。
(3)本願の請求項1の記載中、「(d)ノズル部からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音装置であって、多孔質材料から成り、各ノズル孔の開口の直後に配置され、その開口を規定する表面部に密接する吸音部材を有する消音装置とを含み、(e)消音装置は、隔壁部から噴射方向下流に連なり、前記軸線L1に沿って延び、吸音部材が隙間なく詰められて収容され、(f)吸音部材は、前記軸線L1に沿って延びる円柱状であり、(g)各ノズル孔からの消火ガスは、吸音部材内に直接流れ込み、噴射方向最下流の開口部から直接外部へ放出される」において、「消音装置」とは、「吸音部材を有する」及び「隔壁部から噴射方向下流に連なり、前記軸線L1に沿って延び」とは記載されているものの、吸音部材が「何に」又は「どこに」収容されているのかが特定されていないため、「吸音部材」の収容態様が把握できず、したがって不明確である。
(4)本願の請求項1の記載中、「噴射方向最下流の開口部」が何に設けられた開口部であるのか特定されていないため、不明確である。
(5)本願の請求項1の記載中、「…ことを特徴とするノズル構造体。むことを特徴とするノズル構造体。」という記載は、日本語として意味が把握できず、したがって不明確である。
このため、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし3に係る発明は明確でないから、本願の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 」

2.当審拒絶理由に対するの判断
(1) 平成28年12月19日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)によって、本願の請求項1における「(a)高圧の消火ガスを導く導管と、
(b)導管に高圧の消火ガスを供給する消火ガス供給源と、
(c)ノズル部であって、
ノズル部における消火ガスの噴射方向上流側に、ノズル部の軸線L1に同軸に設けられ、導管の端部に接続される取付け筒部」との記載は「(a)ノズル部であって、
ノズル部における消火ガスの噴射方向上流側に、ノズル部の軸線L1に同軸に設けられ、消火ガス供給源から供給される高圧の消火ガスを導く導管の端部に接続される取付け筒部」と補正された。
これにより、「ノズル構造体」が「消火ガス供給源」及び「導管」を有しないものとなり、本願の請求項1ないし3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。

(2) 本件補正によって、本願の請求項1における「前記軸線L1から半径方向に離れた位置に分散して、かつ周方向に分散して配置される」との記載は「前記軸線L1から複数の異なる半径線上で、各半径線毎に前記軸線L1から半径方向に離れた複数の位置に分散して配置される」と補正された。
これにより「複数のノズル孔」の配置位置が明確となった。

(3) 本件補正によって、本願の請求項1における「各ノズル孔の開口の直後に配置され、その開口を規定する表面部に密接する吸音部材」との記載は「各ノズル孔の開口の直後に設けられたケーシングに収容され・・・吸音部材」と補正された。
これにより、吸音部材が「何に」及び「どこに」収容されるのかが明確となった。

(4) 本件補正によって、本願の請求項1における「噴射方向最下流の開口部」との記載は「該吸音部材の噴射方向最下流の開口部」と補正された。
これにより、「開口部」が吸音部材の噴射方向最下流に位置することが明確となった。

(5) 本件補正によって、本願の請求項1における「・・・されることを特徴とするノズル構造体。
むことを特徴とするノズル構造体。」との記載は「・・・されることを特徴とするノズル構造体。」と補正された。
これにより、日本語として意味が把握できるようになり、明確となった。

よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原審拒絶査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-15 
出願番号 特願2011-131696(P2011-131696)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A62C)
P 1 8・ 16- WY (A62C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
三島木 英宏
発明の名称 ノズル構造体  
代理人 西教 圭一郎  
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