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審決分類 審判 全部申し立て 原文新規事項追加の訂正  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H01L
管理番号 1324824
異議申立番号 異議2015-700266  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-03 
確定日 2016-12-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5727293号発明「有機誘電体を有する有機電界効果トランジスタ」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5727293号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔6-25〕について訂正することを認める。 特許第5727293号の請求項1ないし5,7ないし10,14,15,19,22,24及び25に係る特許を維持する。 特許第5727293号の請求項6,11ないし13,16ないし18,20,21及び23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5727293号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし25に係る特許についての手続の経緯は,以下のとおりである。
平成23年 5月16日 特許出願
(2002年(平成14年)11月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2001年12月19日及び12月20日,並びに2002年9月3日,英国)を国際出願日とする出願2003-553638号(以下「原出願」という。)の一部を,平成23年5月16日に新たな特許出願(特願2011-109286号)とした。)
平成27年 3月17日 特許査定
平成27年 4月10日 特許の設定登録
平成27年12月 4日 特許異議の申立て
(特許異議申立人ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア)
平成28年 2月19日 審尋
平成28年 3月22日 回答書
平成28年 4月27日 取消理由通知
平成28年 8月 9日 意見書・訂正請求書提出(特許権者)
平成28年 9月 2日 通知書
(特許法第120条の5第5項の規定により,特許異議申立人に訂正請求があった旨の通知をし,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,指定した期間内に特許異議申立人から意見書の提出はなかった。)


第2 訂正の適否

1 訂正の内容
平成28年8月8日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)の記載より,本件訂正請求書で特許権者が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)のうち,請求項6ないし25からなる一群の請求項についての訂正事項を整理すると,次のとおりであると認められる。(当審注.訂正箇所に下線を付した。)
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
・訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に「前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である,請求項6に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である,請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「前記有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する,請求項6または7に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する,請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「前記有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する,請求項6または7に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する,請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。」と訂正する。
・訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「前記高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する,請求項1または2に記載の方法によって製造された有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する,請求項1または2に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
・訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
・訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
・訂正事項9
特許請求の範囲の請求項14に「前記ゲート絶縁体層が有機材料を含む,請求項6?13のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記ゲート絶縁体層が有機材料を含む,請求項1?5および7?10のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項10
特許請求の範囲の請求項15に「前記低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む,請求項14に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む,請求項14に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項11
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
・訂正事項12
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
・訂正事項13
特許請求の範囲の請求項18を削除する。
・訂正事項14
特許請求の範囲の請求項19に「前記有機半導体層がポリアリールアミンを含む請求項18に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項15
特許請求の範囲の請求項20を削除する。
・訂正事項16
特許請求の範囲の請求項21を削除する。
・訂正事項17
特許請求の範囲の請求項22に「前記有機半導体層がチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む,請求項18に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつチオフェンを 含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項18
特許請求の範囲の請求項23を削除する。
・訂正事項19
特許請求の範囲の請求項24に「前記有機半導体層が少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む,請求項18に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつ少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
・訂正事項20
特許請求の範囲の請求項25に「前記有機半導体層がバインダー重合体を含んでいる,請求項18に記載の有機電界効果デバイス。」とあるのを,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつバインダー重合体を含んでいる,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。

2 新規事項の有無,拡張・変更の存否,訂正の目的の適否,及び一群の請求項について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は,特許請求の範囲の請求項6を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項7の記載は,「前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である,請求項6に記載の有機電界効果デバイス。」であるから,本件訂正前の請求項7に係る発明の対象は,「有機電界効果デバイス」という「物」であることは明らかである。
そして,本件訂正前の請求項7で引用する,本件訂正前の請求項6は,「請求項1?5のいずれか1項に記載の方法によって製造された有機電界効果デバイス。」であるから,本件訂正前の請求項7に係る発明である「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載されている。
ここで,「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号)。以下「最高裁判決における判示事項」という。)と判示されている。
そこで,最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項7には,当該請求項に係る発明である「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その製造方法が記載されているから,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。
そして,訂正事項2は,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある本件訂正前の請求項7を,「前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である,請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。」として,低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である有機電界効果デバイスを,請求項1?5のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項7に訂正するものであって,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,訂正事項2による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0028】には,本件訂正後の請求項7に係る発明における「低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内」とすることが記載されているから,訂正事項2による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項2による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
a 特許法第126条第6項は,第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。
また,特許法第36条第4項第1号の規定により委任された特許法施行規則の第24条の2には,「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから,本件訂正前の請求項7に係る発明と,本件訂正後の請求項7に係る発明において,発明が解決しようとする課題及びその解決手段が,実質的に変更されたものか否かにより,本件訂正後の請求項7に係る発明の技術的意義が,本件訂正前の請求項7に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更されたものであるか否かについて検討する。
b 本件訂正前の本件特許明細書の記載(【0020】,【0021】及び【0028】)から,本件訂正前の請求項7に係る発明の課題は,「高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導く」ことであり,その解決手段は「ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用」であって,「特に1.5-2.1の範囲内であるのがさらに好ましい」ものである。
他方,本件訂正後の本件特許明細書の記載(【0020】,【0021】及び【0028】)から,本件訂正後の請求項7に係る発明の課題は,「高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導く」ことであり,その解決手段は「ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用」であって,「特に1.5-2.1の範囲内であるのがさらに好ましい」ものである。
そうすると,本件訂正の前後で請求項7に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項7に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項7に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
a 特許請求の範囲は,「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法第36条第5項)である。
また,特許法第126条第6項は,第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって,訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる場合,言い換えれば,訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため,そうした事態が生じないことを担保したものである。
以上を踏まえ,本件訂正前の請求項7に係る発明と本件訂正後の請求項7に係る発明において,それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により,本件訂正後の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為が,本件訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものであるか否かについて検討する。
b ここで,特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(本件訂正前の請求項7に係る発明)及び第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(本件訂正後の請求項7に係る発明)の実施について比較する。
「物の発明」の実施(第1号)とは,「その物の生産,使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」であり,「物を生産する方法」の実施(第3号)とは,「その方法の使用をする行為」(第2号)のほか,その方法により生産した「物の使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」である。ここで,「物を生産する方法」の実施における「その方法の使用をする行為」とは,「その方法の使用により生産される物の生産をする行為」と解されることから,「物の発明」の実施における「その物の生産」をする行為に相当する。
すると,「物の発明」の実施においては,物の生産方法を特定するものではないのに対して,「物を生産する方法の発明」の実施においては,物の生産方法を「その方法」に特定している点で相違するが,その実施行為の各態様については,全て対応するものである。
c 本件訂正前の請求項7に係る発明は,「請求項1?5のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(2)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項7に係る発明は,上記特定の製造方法により,低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,本件訂正後の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項7に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項7に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項2による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項8は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項3は,「前記有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する,請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。」として,トップゲート配置を有する有機電界効果デバイスを,請求項1?5及び7のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項8に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項3による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0022】には,本件訂正後の請求項8に係る発明における「有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する」ことが記載されているから,訂正事項3による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項3による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項8に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項8に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項8に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項8に係る発明は,「請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(3)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項8に係る発明は,上記特定の製造方法により,トップゲート配置を有する有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項8に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項8に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項8に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項8に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項8に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項8に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項8に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項3による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項9は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項4は,「前記有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する,請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。」として,ボトムゲート配置を有する有機電界効果デバイスを,請求項1?5及び7のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項9に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項4による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0022】には,本件訂正後の請求項9に係る発明における「有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する」ことが記載されているから,訂正事項4による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項4による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項9に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項9に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項9に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項9に係る発明は,「請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(4)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項9に係る発明は,上記特定の製造方法により,ボトムゲート配置を有する有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項9に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項9に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項9に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項9に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項9に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項9に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項9に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項4による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項10は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項5は,「前記高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する,請求項1または2に記載の方法。」として,高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する有機電界効果デバイスを,請求項1または2に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項10に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項5による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0024】には,本件訂正後の請求項10に係る発明における「前記高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する」ことが記載されているから,訂正事項5による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項5による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
本件訂正前の本件特許明細書の記載(【0020】及び【0021】)から,本件訂正前の請求項10に係る発明の課題は,「高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導く」ことであり,その解決手段は「ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用」である。
他方,本件訂正後の本件特許明細書の記載(【0020】及び【0021】)から,本件訂正後の請求項10に係る発明の課題は,「高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導く」ことであり,その解決手段は「ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用」である。
そうすると,本件訂正の前後で請求項10に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項10に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項9に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項10に係る発明は,「請求項1または2に記載の方法」という製造方法(以下,(5)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項10に係る発明は,上記特定の製造方法により,高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項10に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項10に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項10に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項10に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項10に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項10に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項10に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項5による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は,特許請求の範囲の請求項11を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は,特許請求の範囲の請求項12を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は,特許請求の範囲の請求項13を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項14は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項9は,「前記ゲート絶縁体層が有機材料を含む,請求項1?5および7?10のいずれか1項に記載の方法。」として,ゲート絶縁体層が有機材料を含む有機電界効果デバイスを,請求項1?5及び7?10のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項14に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項9による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0027】には,本件訂正後の請求項14に係る発明における「ゲート絶縁体層が有機材料を含む」ことが記載されているから,訂正事項9による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項9による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア)及び上記(5)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項14に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項14に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項14に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項14に係る発明は,「請求項1?5および7?10のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(9)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項14に係る発明は,上記特定の製造方法により,ゲート絶縁体層が有機材料を含む有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項14に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項14に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項14に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項14に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項14に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項14に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項14に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項9による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項15は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項10は,「前記低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む,請求項14に記載の方法。」として,低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む有機電界効果デバイスを,請求項1?5及び7?10のいずれか1項を引用する請求項14に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項15に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項10による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0031】には,本件訂正後の請求項15に係る発明における「低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む」ことが記載されているから,訂正事項10による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項10による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
本件訂正前の本件特許明細書の記載(【0020】,【0021】,【0028】及び【0031】)から,本件訂正前の請求項15に係る発明の課題は,「高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導く」ことであり,その解決手段は「ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用」であって,「特に1.5-2.1の範囲内であるのがさらに好まし」く,「好ましい低誘電率材料は」,「低誘電率フルオロポリマー」である。
他方,本件訂正後の本件特許明細書の記載(【0020】,【0021】,【0028】及び【0031】)から,本件訂正後の請求項15に係る発明の課題は,「高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導く」ことであり,その解決手段は「ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用」であって,「特に1.5-2.1の範囲内であるのがさらに好まし」く,「好ましい低誘電率材料は」,「低誘電率フルオロポリマー」である。
そうすると,本件訂正の前後で請求項15に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項15に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項15に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項15に係る発明は,「請求項14に記載の方法」という製造方法(以下,(10)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項15に係る発明は,上記特定の製造方法により,低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項15に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項15に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項15に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項15に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項15に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項15に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項15に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項10による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項11について
訂正事項11は,特許請求の範囲の請求項16を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は,特許請求の範囲の請求項17を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(13)訂正事項13について
訂正事項13は,特許請求の範囲の請求項18を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(14)訂正事項14について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項19は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項14は,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」として,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む有機電界効果デバイスを,請求項1?5,7?10,14及び15のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項19に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項14による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0038】及び【0045】には,本件訂正後の請求項19に係る発明における「有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む」ことが記載されているから,訂正事項14による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項14による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア),上記(5)ウ(ア)及び上記(10)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項19に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項19に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項19に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項19に係る発明は,「請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(14)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項19に係る発明は,上記特定の製造方法により,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項19に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項19に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項19に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項19に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項19に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項19に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項19に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項14による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(15)訂正事項15について
訂正事項15は,特許請求の範囲の請求項20を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(16)訂正事項16について
訂正事項16は,特許請求の範囲の請求項21を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(17)訂正事項17について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項22は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項17は,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」として,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む有機電界効果デバイスを,請求項1?5,7?10,14及び15のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項22に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項17による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0038】及び【0078】には,本件訂正後の請求項22に係る発明における「有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む」ことが記載されているから,訂正事項17による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項17による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア),上記(5)ウ(ア)及び上記(10)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項22に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項22に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項22に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項22に係る発明は,「請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(17)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項22に係る発明は,上記特定の製造方法により,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項22に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項22に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項22に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項22に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項22に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項22に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項22に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項17による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(18)訂正事項18について
訂正事項18は,特許請求の範囲の請求項23を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められ,特許法第120条の5第2項ただし書きの規定に適合し,また,同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合する。

(19)訂正事項19について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項24は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項19は,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」として,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつ少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む有機電界効果デバイスを,請求項1?5,7?10,14及び15のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項24に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項19による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0038】及び【0081】には,本件訂正後の請求項24に係る発明における「有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつ少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む」ことが記載されているから,訂正事項19による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項19による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア),上記(5)ウ(ア)及び上記(10)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項24に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項24に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項24に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項24に係る発明は,「請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(19)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項24に係る発明は,上記特定の製造方法により,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつ少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項24に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項24に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項24に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項24に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項24に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項24に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項24に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項19による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(20)訂正事項20について
ア 訂正の目的について
最高裁判決における判示事項を踏まえて検討すると,本件訂正前の請求項25は,「有機電界効果デバイス」の構成に関し,その「製造方法」が記載され,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるところ,訂正事項20は,「前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつバインダー重合体を含んでいる,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」として,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつバインダー重合体を含んでいる有機電界効果デバイスを,請求項1?5,7?10,14及び15のいずれか1項に記載の方法で製造する方法であることを特定する,本件訂正後の請求項25に訂正するもので,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
以上から,上記(2)アと同様の理由により,訂正事項20による訂正は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0038】及び【0115】には,本件訂正後の請求項25に係る発明における「有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつバインダー重合体を含んでいる」ことが記載されているから,訂正事項20による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
以上から,訂正事項20による訂正は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
上記(2)ウ(ア),上記(5)ウ(ア)及び上記(10)ウ(ア)と同様の理由により,本件訂正の前後で請求項25に係る発明の課題及び課題解決手段には,何ら変更はない。
以上から,本件訂正後の請求項25に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項25に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
本件訂正前の請求項25に係る発明は,「請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法」という製造方法(以下,(20)内において「特定の製造方法」という。)により「有機電界効果デバイス」という物が特定された「物の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」に加え,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」と同一の構造・特性を有する物も,特許発明の実施に含むものである。
他方,本件訂正後の請求項25に係る発明は,上記特定の製造方法により,有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつバインダー重合体を含んでいる有機電界効果デバイスを製造する方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから,上記特定の製造方法により製造された「有機電界効果デバイス」を,特許発明の実施に含むものである。
そうすると,上記(2)ウ(イ)bより,本件訂正後の請求項25に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項25に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから,本件訂正前の請求項25に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
本件訂正後の請求項25に係る発明の技術的意義は,本件訂正前の請求項25に係る発明の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではなく,本件訂正後の請求項25に係る発明の「実施」に該当する行為は,本件訂正前の請求項25に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえないから,訂正事項20による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。

(21)一群の請求項について
本件訂正は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものと認められる。

3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項[6-25]について訂正を認める。


第3 取消理由及び特許異議の申立てについて

1 本件発明
本件訂正により訂正された,訂正後の請求項1ないし25の各請求項(以下,訂正後の請求項1ないし25を「本件請求項1」ないし「本件請求項25」という。)に係る発明(以下,訂正後の各請求項に係る発明を,請求項1ないし25の区分に応じて,「本件発明1」ないし「本件発明25」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
有機電界効果デバイスを製造する方法であって,
a)溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
b)溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させて,その低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する工程を含み,ここで前記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.3から2.5までであり,そして前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積され,但し前記低誘電率絶縁材料はベンゾシクロブテン(BCB)ではない,上記の方法。
【請求項2】
前記有機半導体層から前記低誘電率絶縁材料層の他方の側に,少なくとも1層の高誘電率絶縁材料を堆積させることをさらに含み,ここで前記高誘電率絶縁材料は比誘電率が前記低誘電率絶縁材料よりも高い,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1層の高誘電率絶縁材料が溶液から堆積される,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記層の1つまたは2つ以上が溶液からスピンコーティングによって堆積される,請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
全ての工程が約100℃以下において遂行される,請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である,請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する,請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する,請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記高誘電率絶縁材料が3.5超で,200までの誘電率を有する,請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
前記ゲート絶縁体層が有機材料を含む,請求項1?5および7?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む,請求項14に記載の方法。
【請求項16】(削除)
【請求項17】(削除)
【請求項18】(削除)
【請求項19】
前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつポリアリールアミンを含む請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】(削除)
【請求項21】(削除)
【請求項22】
前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】(削除)
【請求項24】
前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつ少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記有機半導体層が,10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し,かつバインダー重合体を含んでいる,請求項1?5,7?10,14および15のいずれか1項に記載の方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の特許請求の範囲の請求項6ないし25の各請求項に係る特許に対して,平成28年4月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,以下のとおりである。
(1)取消理由1(特許法第36条第6項第2号)
本件特許の特許請求の範囲の請求項6,並びに請求項6を引用する請求項7ないし9,及び請求項14ないし25の各請求項には,その物の製造方法が記載されているが,本願明細書等には,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情について何ら記載がなく,当業者にとって上記の事情が明らかであるともいえないから,本件特許の特許請求の範囲の請求項7ないし9,及び請求項14ないし25の各請求項には,当該請求項に係る発明の構成が明確に記載されているということはできない。
そして,同様の理由により,請求項10,及び請求項10を引用する請求項14ないし25の各請求項,請求項11,及び請求項11を引用する請求項14ないし25の各請求項,請求項12,及び請求項12を引用する請求項14ないし25の各請求項,並びに請求項13,及び請求項13を引用する請求項14ないし25の各請求項にも,当該各請求項に係る発明の構成が明確に記載されているということはできない。
したがって,本件特許の請求項6ないし25の各請求項に係る特許は,いずれも,特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合しない特許出願に対してされたものであるから,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号)
本件特許の請求項6,請求項7,請求項9ないし15,請求項18及び請求項22の各請求項に係る発明は,いずれも,原出願の優先権主張の日前,米国において頒布された刊行物である,米国特許第5546889号明細書(甲第3号証)に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないから,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

(3)取消理由3(特許法第36条第6項第1号)
本件特許の請求項11及び17の各請求項に係る特許は,いずれも,特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない特許出願に対してされたものであるから,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

3 判断
(1)取消理由1について
前記第2の2のとおり,本件特許の特許請求の範囲の請求項7ないし10,請求項14及び15,請求項19,請求項22,並びに請求項24及び25の各請求項は,本件訂正により,「有機電界効果デバイスを製造する方法」に訂正され,「発明が明確であること」という要件を満たし,また,請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20及び21,並びに請求項23の各請求項は,本件訂正により削除された。
そうすると,本件特許の特許請求の範囲には,発明の構成が明確に記載されていると認められる。
以上から,本件特許の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合する。

(2)取消理由2について
ア 甲第3号証の記載及び甲3発明
(ア)甲第3号証の記載
原出願の優先権主張の日前,米国において頒布された刊行物である,米国特許第5546889号明細書(甲第3号証)には,以下の記載がある。(当審注.訳は,対応する日本出願の公開公報(特開平7-206599号公報)に基づいて,当審で作成したものである。)
・「The method of manufacturing an FET will be explained with reference to FIG. 8(a) to 8(d).
(1) Gate insulating layer 12 of SiO_(2) is formed on n-doped substrate 11 by thermally oxidizing one surface of substrate 11.
(2) Rod 13 of PTFE is pressed on gate insulating layer 12 at an appropriate pressure and is slid in one direction at a constant rate, for example, 1 mm/sec, to layer PTFE oriented film having a thickness of about 100 nm on gate insulating layer 12. During the process, substrate 11 is heated at an appropriate temperature, for example, 300℃
(3) Ctenoid-shaped source and drain electrodes 15 are provided on PTFE oriented film 14 by depositing chromium and gold on PTFE oriented film 14 using a vacuum deposition apparatus.
(4) Organic layer 16 is formed on and between source and drain electrodes 15 by depositing from gaseous-phase or casting from fluid.
(5) The other surface of silicon substrate 11, on which nothing is deposited, is polished to produce gate electrodes from substrate 11 itself. Gold lines for a lead are connected with each of three electrodes with silver paste.
For gate insulating layer 12, inorganic materials such as SiO_(2) or Ta_(2)O_(5), and organic insulating materials such as cyanoethyl pullulan or polyvinyl alcohol; however, the kind of the materials is not limited to those materials. The spin coating method can be used to form gate insulating layer 12 from organic insulating materials.」(6欄25行ないし54行)
(訳:本実施例における電子素子のうちFET素子の製造方法を,図8(a)ないし8(d)を参照して説明する。
(1)n-ドープされたシリコン基板11の片側を熱酸化してSiO_(2)からなるゲート絶縁層12を形成する。
(2)ゲート絶縁層12の上にPTFEロッド13を適当な圧力で押圧し,一定方向に一定速度,例えば1mm/secで掃引して,およそ100nmの厚さのPTFE配向薄膜14をゲート絶縁層12の上に積層する。このプロセスの間,シリコン基板11は,適当な温度,例えば300℃に加熱される。
(3)PTFE配向薄膜14の上に真空蒸着装置にてクロム及び金から構成される櫛形のソース及びドレイン電極15を設ける。
(4)有機電子材料からなる有機層16を気相からの蒸着法または溶液からのキャスト法にてソース及びドレイン電極上及びこれらの電極間に連続的に配置・形成する。
(5)素子が形成されてない方のシリコン基板を研磨し,表面層を削り取って基板11自身をゲート電極とする。この後,金線を銀ペーストにて3種類の各電極と接続し,取出線とする。
【0042】有機電子材料層16とゲート電極とを隔てるゲート絶縁材料12としての無機材料としてはSiO_(2),Ta_(2)O_(5)等,有機電子材料層16としてはシアノエチルプルラン,ポリビニルアルコール等の高分子系絶縁材料が挙げられるがこれに限定されない。また,高分子系絶縁材料を用いる場合は,ゲート絶縁層12は例えば溶液からのスピンコーティングによって形成し得る。)
・「The method of manufacturing an FET where an organic semiconductor layer of 5,5""'-dimethyl sexithiophene is deposited on a silicon/PTFE film will be explained with reference to FIG. 8(a)-(d).
PTFE oriented film 14 was formed on a thermally oxidized film over n-doped silicon substrate 11 as follows.
Substrate 11 having a thermally oxidized film for gate insulating film 12 was heated to 300℃. A rod 13 of PTFE was slid on substrate 11 in a direction at a rate of 1 mm/sec with substrate 11 applied with a pressure of 1 kg/cm^(2) to form PTFE oriented film 14. The rod 13 was also heated to a similar temperature. The thermally oxidized film and the PTFE oriented film 14 have a thickness of 100 and 50 nm, respectively.
To form source and drain electrodes 15, chromium and gold were deposited in 1×10^(-5 )Torr degree of vacuum using a mask for ctenoid-shaped electrode. Chromium was first deposited in a thickness of about 15 nm, and then, gold was deposited in a thickness of about 150 nm. This order of deposition improves adhesion of the gold electrode to the substrate.
An organic semiconductor layer of 5,5""'-dimethyl sexithiophene (DMSxT) was deposited by resistance heating with part of electrodes 15 covered with an aluminum foil while the distance between the deposition source and the substrate surface was kept at 10 cm. DMSxT was placed in a tungsten boat. For the above-noted procedure, 29-30 Amps of electric current was supplied to the deposition source. The thickness of DMSxT layer was about 500 nm. Here, the ctenoid-shaped electrode was used for source and drain electrodes 15 of the objective FET. A surface of silicon substrate on which no DMSxT layer was deposited was polished, and an oxide film, which was generated in air, was also removed by shaving to produce both a gate electrode from silicon substrate 11 and a gate insulating layer from the thermally oxidized layer. 」(9欄25行ないし60行)
(訳:以下に5,5′′′′′-ジメチルセクシチオフェンを有機半導体層(有機電子材料層16)としてシリコン/PTFE上に蒸着したFET素子の作製方法を,図8(a)ないし8(d)を参照して説明する。
熱酸化膜が片側表面に形成されているn-ドープされたシリコン基板11の熱酸化膜上に,以下のようにしてPTFE配向膜14を形成した。
ゲート絶縁層12となる熱酸化膜を有するシリコン基板11の基板温度を300℃まで加熱した。PTFEロッド13を,1kg/cm^(2)の圧力を加えながら基板上を一定方向に一定速度,1mm/secでスライドさせて,PTFE配向膜14を形成した。PTFEロッド13は,基板温度とほぼ同じ温度にまで加熱した。熱酸化膜及びPTFE配向膜14の厚みはそれぞれ100nm及び50nmであった。
作製したPTFE配向膜14上にソース及びドレイン電極15として用いる櫛形電極形成のためのマスクをつけながら,1×10^(-5)Torrの真空下でクロム及び金を蒸着した。クロム層を約15nm形成した後,金層を約150nm蒸着した。この順序で蒸着することで,基板と金電極との密着性が向上される。
蒸着源から基板面までの距離を10cmに保ち,作製した電極15の一部をアルミホイル等にて覆いながら,抵抗加熱により,有機半導体層である5,5′′′′′-ジメチルセクシチオフェン(以下DMSxT)を蒸着した。DMSxTは,タングステンボートに入れられた。この工程で蒸着源に流れた電流は29?30Aであり,DMSxT層の厚みは約500nmであった。ここで,先に作製した櫛形電極をFET素子のソース及びドレイン電極15として用いた。DMSxT層が形成されていない側のシリコン基板を研磨し,空気中において形成された表面酸化膜を削り取ることにより,シリコン基板11からなるゲート電極と,熱酸化膜からなるゲート絶縁層を形成した。)
(イ)甲3発明
上記(ア)より,甲第3号証には,下記の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「n-ドープされたシリコン基板11の片面を熱酸化することによって,SiO_(2)のゲート絶縁層12を形成する工程,
ゲート絶縁層12の上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ロッド13を適当な圧力で押圧し,一定方向に一定速度で掃引して,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配向膜14を積層する工程,
PTFE配向膜14上にソース及びドレイン電極15を設置する工程,有機半導体層として有機電子材料層16を気相からの蒸着法又は流体からのキャスティング法にてソース及びドレイン電極上及びこれらの電極間に形成する工程,
何も積層されてない方のシリコン基板11の表面を研磨し,基板11自体からゲート電極を生成する工程を含む,電界効果トランジスタ素子の製造方法。」
イ 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明における「有機電子材料層16」及び「電界効果トランジスタ素子」は,それぞれ,本件発明1の「有機半導体層」及び「有機電界効果デバイス」に相当するということができる。
そうすると,本件発明1と甲3発明とは「有機電界効果デバイスを製造する方法」である点で共通するといえる。
(イ)甲3発明における「有機半導体層として有機電子材料層16を」「流体からのキャスティング法にてソース及びドレイン電極上及びこれらの電極間に形成する工程」は,本件発明1の「溶液から有機半導体層を堆積させ」ることに相当するといえる。
(ウ)甲3発明における「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配向膜14」は,比誘電率が1.3から2.5までであり,「基板11」自体からゲート電極を生成することにより,「有機電子材料層16」と接触してゲート絶縁体の少なくとも一部を構成すると認められる。
そうすると,本件発明1の「低誘電率絶縁材料の層」と甲3発明における「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配向膜14」とは,「有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する」ことを含み,「比誘電率が1.3から2.5までであり」,「但し前記低誘電率絶縁材料はベンゾシクロブテン(BCB)ではない」点で共通するといえる。
以上から,本件発明1と甲3発明とは,「低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する」ことを含み,「ここで前記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.3から2.5までであり,但し前記低誘電率絶縁材料はベンゾシクロブテン(BCB)ではない」点で共通するといえる。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)より,本願発明1と甲3発明との一致点及び相違点は,以下のとおりであると認める。
a 一致点
「有機電界効果デバイスを製造する方法であって,
a)溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
b)その低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する工程を含み,ここで前記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.3から2.5までであり,但し前記低誘電率絶縁材料はベンゾシクロブテン(BCB)ではない,上記の方法。」
b 相違点
・相違点1
本願発明1は,「溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させ」ることを含むのに対し,甲3発明における「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配向膜14」は,「ゲート絶縁層12の上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ロッド13を適当な圧力で押圧し,一定方向に一定速度で掃引して」積層されることを含む点。
・相違点2
本件発明1は,「前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積される」のに対し,甲3発明における「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)配向膜14」は,フルオロ溶媒を含む溶液から堆積されるものではなく,また,甲3発明におけるその他の層について,フルオロ溶媒を含む溶液から堆積されることは,甲第3号証には記載も示唆もされていない点。
新規性についての判断
上記イより,本件発明1と甲3発明との間には,相違点(相違点1及び2)が存在するから,本件発明1は甲3発明と同一とはいえない。
そして,本件特許の特許請求の範囲の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23は,本件訂正により削除され,また,本件発明7ないし10,本件発明14,本件発明15,本件発明19,本件発明22,本件発明24,及び本件発明25は,いずれも,本件特許の特許請求の範囲において請求項1を引用する請求項に係る発明で,本件発明1の構成を備えるから,上記イより,甲3発明と同一とはいえない。
エ 小括
以上から,本件特許の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は,いずれも,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当しない。

(3)取消理由3について
前記第2の2のとおり,本件特許の特許請求の範囲の請求項11及び17は,いずれも本件訂正により削除されたので,本件特許の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。

(4)小括
したがって,取消理由1ないし3によっては,本件の特許請求の範囲の請求項6ないし25の各請求項に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が主張する特許異議申立理由のうち,取消理由通知において採用しなかったものの概要は,以下のとおりである。
ア 異議理由1(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
本件特許の請求項1ないし25の各請求項に係る発明は,いずれも,原出願の優先権主張の日前,欧州において頒布された刊行物である,欧州特許出願公開第1041652号明細書(甲第4号証)に記載の発明において,原出願の優先権主張の日前,外国において頒布された刊行物である,Katz,H.E.;Hong,X.M.;Dodabalapur,A.;Sarpeshkar,R.Journal of Applied Physics Vol.91,No.3(2002年2月1日),pp.1572-1576(甲第1号証),国際公開第03/038921号(甲第2号証),及び甲第3号証にそれぞれ記載の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

イ 異議理由2(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))
本件特許の請求項6ないし16,請求項18及び請求項22の各請求項に係る発明は,いずれも,甲第1号証,甲第2号証,及び甲第4号証のいずれかに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

ウ 異議理由3(特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号))
本件特許の請求項11における「高誘電率絶縁材料が‥・ポリ(塩化ビニル)またはポリ(酢酸ビニル)を含む」との記載は,2011年7月19日付けの手続補正書による補正で請求項12に追加され,2013年10月24日付けの手続補正書による補正で請求項12は請求項11に繰り上がっているが,高誘電率絶縁材料を構成する材料として,ポリ(塩化ビニル)及びポリ(酢酸ビニル)を追加する補正は,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内になく,新規事項の追加に該当するもので,特許法第17条の2第3項の規定に適合しないから,本件特許の請求項11に係る発明は,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。
エ 異議理由4(特許法第113条第5号)
本件特許の請求項11における「高誘電率絶縁材料が‥・ポリ(塩化ビニル)またはポリ(酢酸ビニル)を含む」との記載事項,及び本件特許の請求項17における「低誘電率絶縁材料層がテトラフルオロエチレンとジオキシド類との共重合体を含む」との記載事項は,いずれも,特許法第184条の4第1項の外国語特許出願に記載した事項の範囲内にないから,本件特許の請求項11及び17の各請求項に係る発明は,いずれも,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の検討
ア 異議理由1について
(ア)検討の前提
特許異議申立人は,本件特許に係る出願は,原出願の優先権主張の基礎となる出願3件のうち,英国で2002年9月3日に出願された特許出願にのみ基づくものである旨主張する(特許異議申立書13頁)するので,上記の主張どおりと仮定して,以下検討する。
(イ)甲号証の記載について
a 甲第1号証について
甲第1号証の記載(1572頁右欄24行?27行,同頁右欄30行?35行,及び1572頁右欄36行?1573頁左欄3行,並びにFIG.1)より,甲第1号証には,下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機電界効果デバイスを製造する方法であって,
TOPAS(登録商標)環状オレフィン共重合体を,メシチレン又はキシレンからインジウムスズ酸化物(ITO)ガラス基板上にスピンコーティングして,1?2μm厚の高分子誘電体膜を形成し,
標準的な方法を用いて調製した,半導体 1,4-ビス(5-フェニル-2-チェニル)ベンゼン(PTPTP)及びN,N’-ビス(1H,1H-ペルフルオロオクチル)ナフタレン1,4,5,8-テトラカルボン酸ジイミド(F15-NTCDI)を,高真空下で昇華させて,半導体膜を形成することを含む方法。」
b 甲第2号証について
特許異議申立人は,甲第2号証は,原出願の優先権主張の日前,外国において頒布された刊行物であると主張するが,甲第2号証によれば,その国際公開日は2003年5月8日で,原出願の優先権主張の基礎となる出願3件のいずれの出願日よりも後であるから,甲第2号証に記載された発明は,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明には該当しない。
なお,甲第2号証の記載(1頁5行?8行,2頁26行?29行,5頁7行?11行,6頁20行?24行,及び7頁19行?36行)より,甲第2号証には,下記の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機電界効果効果型トランジスタ(OFET)を製造する方法であって,
ポリイソブチレンのヘキサン溶液をスピンコーティングにより,ソース/ドレイン電極及び半導体を備えた基板上にコーティングし絶縁体層を形成することを含む方法。」
c 甲第3号証について
甲第3号証には,上記3(2)イ(ア)の記載があり,上記3(2)イ(イ)の甲3発明が記載されていると認められる。
d 甲第4号証について
甲第4号証の記載([0001],[0002],[0022],[0024],及び[0029]ないし[0034])の記載より,甲第4号証には,下記の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機回路の作製プロセスであって,
DHα5Tのトルエン溶液からDHα5Tを堆積させることと,
キシレン溶液から基材上にフッ素化シラン層を堆積させることを含むプロセス。」
そして,甲第4号証の記載([0009]ないし[0011],[0019],[0020],及び[0030])より,甲第4号証には,フッ素化シラン層は,基板をキシレン溶液に浸して形成され,これにより,有機半導体材料の溶液との接触角を大きくして,液相技術により結晶又は多結晶の有機半導体膜を形成できるようにしたことが記載されていると認められる。
(ウ)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりであると認められる。
a 一致点
「溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
溶液から絶縁材料の層を堆積させて,その絶縁材料が上記有機半導体層と接触するように形成する工程を含み,但し前記絶縁材料はベンゾシクロブテン(BCB)ではない,方法。」
b 相違点
・相違点1
本件発明1は「有機電界効果デバイスを製造する方法」の発明であるのに対し,甲4発明は「有機回路の作製プロセス」の発明であって,「有機電界効果デバイス」そのものを製造する発明ではない点。
・相違点2
「絶縁材料の層」について,本件発明1は「低誘電率絶縁材料の層」であって,「低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.3から2.5まで」であるのに対し,甲4発明の「フッ素化シラン層」の比誘電率は不明であり,「低誘電率絶縁材料」であるか否かも不明である点。
・相違点3
「絶縁材料の層」について,本件発明1の「低誘電率絶縁材料の層」は,「ゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する」ものであるのに対し,甲4発明の「フッ素化シラン層」が,「有機電界効果デバイス」における「ゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する」ことは特定されていない点。
・相違点4
本件発明1は,「前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積され」るのに対し,甲4発明の「DHα5T」は「トルエン溶液」から,「フッ素化シラン層」は「キシレン溶液」からそれぞれ堆積され,本件発明1の上記の構成を備えていない点。
(エ)相違点についての判断
上記相違点のうち,上記相違点1ないし3について判断する。
上記(イ)a及びcより,甲第1号証及び甲第3号証には,有機電界効果デバイスを製造する方法において,比誘電率が1.3から2.5までである低誘電率絶縁材料が,有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する工程を含むことが記載されていると認められる。
他方,上記(イ)dより,甲4発明の「フッ素化シラン層」は,基板をキシレン溶液に浸して形成され,有機半導体材料の溶液との接触角を大きくして,液相技術により結晶又は多結晶の有機半導体膜を形成できるようにするために形成されるものと認められる。
そして,甲第4号証には,「フッ素化シラン層」が「有機電界効果デバイス」における「ゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する」ことは,記載も示唆もされておらず,また,「フッ素化シラン層」の比誘電率も記載されていない。
そうすると,有機半導体材料の溶液との接触角を大きくするために設けられた,甲4発明の「フッ素化シラン層」を,作用が異なる甲第1号証及び甲第3号証に記載のゲート絶縁膜に置き換えることには,動機付けがあるとはいえず,むしろ阻害要因があるといえるから,甲4発明において,比誘電率が1.3から2.5までである,低誘電率絶縁材料がゲート絶縁体の少なくとも一部を形成するようにし,有機電界効果デバイスを製造すること(相違点1ないし3に係る構成とすること)を,甲第1号証及び甲第3号証それぞれに記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たということはできない。
また,上記(イ)bのとおり,甲第2号証に記載された発明は,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当せず,仮に,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとしても,上記(イ)bより,甲第2号証には,甲第1号証及び甲第3号証と同様の事項が開示されているにとどまると認められるから,甲4発明において,相違点1ないし3に係る構成とすることは,甲第2号証に記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たということもできない。
以上から,相違点4について検討するまでもなく,本件発明1は,甲第4号証記載の発明において,甲第1ないし3号証にそれぞれ記載の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
そして,本件特許の特許請求の範囲の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23は,本件訂正により削除され,また,本件発明7ないし10,本件発明14,本件発明15,本件発明19,本件発明22,本件発明24,及び本件発明25は,いずれも,本件特許の特許請求の範囲において請求項1を引用する請求項に係る発明で,本件発明1の構成を備えるから,同様の理由により,甲第4号証記載の発明において,甲第1ないし3号証にそれぞれ記載の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
(オ)小括
したがって,異議理由1に理由はない。

イ 異議理由2について
(ア)検討の前提
上記アと同様,本件特許に係る出願は,原出願の優先権主張の基礎となる出願3件のうち,英国で2002年9月3日に出願された特許出願にのみ基づくものと仮定して,以下検討する。
(イ)甲1発明との対比・判断
甲第1号証には,上記イ(イ)aのとおりの発明(甲1発明)が記載されていると認められる。
そして,本件発明1と甲1発明とを対比すると,両者は,少なくとも下記の点で相違すると認められる。
・相違点1
本件発明1では,「溶液から有機半導体層を堆積させ」るのに対し,甲1発明では,「半導体 1,4-ビス(5-フェニル-2-チェニル)ベンゼン(PTPTP)及びN,N’-ビス(1H,1H-ペルフルオロオクチル)ナフタレン1,4,5,8-テトラカルボン酸ジイミド(F15-NTCDI)を,高真空下で昇華させて,半導体膜を形成する」点。
・相違点2
本件発明1では,「前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積され」るのに対し,甲1発明は,上記の構成を備えていない点。
そうすると,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明であるということはできない。
そして,本件特許の特許請求の範囲の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23は,本件訂正により削除され,また,本件発明7ないし10,本件発明14,本件発明15,本件発明19,本件発明22,本件発明24,及び本件発明25は,いずれも,本件特許の特許請求の範囲において請求項1を引用する請求項に係る発明で,本件発明1の構成を備えるから,同様の理由により,甲第1号証に記載された発明であるということはできない。
(ウ)甲2発明との対比・判断
a 本件特許の特許請求の範囲の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23は,本件訂正により削除された。
そして,上記ア(イ)bのとおり,甲第2号証に記載された発明は,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当しないから,本件発明7ないし10,本件発明14,本件発明15,本件発明19,本件発明22,本件発明24,及び本件発明25は,いずれも,甲第2号証に記載された発明を理由に,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとは認められない。
b 仮に,甲第2号証に記載された発明が,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するとした場合に,本件発明1と甲第2号証に記載された発明(甲2発明,上記ア(イ)b)とを対比すると,両者は,少なくとも下記の点で相違すると認められる。
・相違点1
本件発明1では,「溶液から有機半導体層を堆積させ」るのに対し,甲2発明では,「半導体」の形成方法は不明である点。
・相違点2
本件発明1では,「前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積され」るのに対し,甲2発明は,上記の構成を備えていない点。
そうすると,本件発明1は,甲第2号証に記載された発明であるということはできない。
そして,本件発明7ないし10,本件発明14,本件発明15,本件発明19,本件発明22,本件発明24,及び本件発明25は,いずれも,本件特許の特許請求の範囲において請求項1を引用する請求項に係る発明で,本件発明1の構成を備えるから,同様の理由により,甲第2号証に記載された発明であるということはできない。
(エ)甲4発明との対比・判断
甲第4号証には,上記ア(イ)dのとおりの発明(甲4発明)が記載されていると認められる。
そして,本件発明1と甲4発明とを対比すると,両者は,上記ア(ウ)bの相違点1ないし4の点で,相違すると認められる。
そうすると,本件発明1は,甲第4号証に記載された発明であるということはできない。
そして,本件特許の特許請求の範囲の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23は,本件訂正により削除され,また,本件発明7ないし10,本件発明14,本件発明15,本件発明19,本件発明22,本件発明24,及び本件発明25は,いずれも,本件特許の特許請求の範囲において請求項1を引用する請求項に係る発明で,本件発明1の構成を備えるから,同様の理由により,甲第4号証に記載された発明であるということはできない。
(オ)小括
したがって,異議理由2に理由はない。

ウ 異議理由3及び4について
前記第2の2のとおり,本件特許の特許請求の範囲の請求項11及び17は,いずれも本件訂正により削除されたので,異議理由3及び4に理由はない。

(3)小括
したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23は,本件訂正により削除され,本件の特許請求の範囲の請求項1ないし5,請求項7ないし10,請求項14,請求項15,請求項19,請求項22,請求項24,及び請求項25の各請求項に係る特許を,異議理由1ないし4によって取り消すことはできない。


第4 結言

以上のとおりであるから,本件特許の請求項1ないし5,請求項7ないし10,請求項14,請求項15,請求項19,請求項22,請求項24,及び請求項25の各請求項に係る特許は,取消理由通知に記載した取消理由,及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,取り消すことができない。
また,他に,本件特許の上記各請求項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして,本件特許の請求項6,請求項11ないし13,請求項16ないし18,請求項20,請求項21,及び請求項23の各請求項に係る特許は,本件訂正により削除されたため,本件特許の上記各請求項に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。

よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界効果デバイスを製造する方法であって、
a)溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
b)溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させて、その低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する
工程を含み、ここで前記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.3から2.5までであり、そして前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積され、但し前記低誘電率絶縁材料はベンゾシクロブテン(BCB)ではない、上記の方法。
【請求項2】
前記有機半導体層から前記低誘電率絶縁材料層の他方の側に、少なくとも1層の高誘電率絶縁材料を堆積させることをさらに含み、ここで前記高誘電率絶縁材料は比誘電率が前記低誘電率絶縁材料よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1層の高誘電率絶縁材料が溶液から堆積される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記層の1つまたは2つ以上が溶液からスピンコーティングによって堆積される、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
全ての工程が約100℃以下において遂行される、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5?2.1の範囲内である、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する、請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する、請求項1?5および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記高誘電率絶縁材料が3.5超で、200までの誘電率を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
前記ゲート絶縁体層が有機材料を含む、請求項1?5および7?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】(削除)
【請求項17】(削除)
【請求項18】(削除)
【請求項19】
前記有機半導体層が、10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し、かつポリアリールアミンを含む請求項1?5、7?10、14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】(削除)
【請求項21】(削除)
【請求項22】
前記有機半導体層が、10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し、かつチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、請求項1?5、7?10、14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】(削除)
【請求項24】
前記有機半導体層が、10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し、かつ少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む、請求項1?5、7?10、14および15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記有機半導体層が、10^(-5)cm^(2)V^(-1)s^(-1)より大きい移動度を有し、かつバインダー重合体を含んでいる、請求項1?5、7?10、14および15のいずれか1項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-12-05 
出願番号 特願2011-109286(P2011-109286)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (H01L)
P 1 651・ 841- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 842- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 溝本 安展竹口 泰裕  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
河口 雅英
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5727293号(P5727293)
権利者 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 有機誘電体を有する有機電界効果トランジスタ  
代理人 野矢 宏彰  
代理人 野矢 宏彰  
代理人 特許業務法人 津国  

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