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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L |
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管理番号 | 1324839 |
異議申立番号 | 異議2016-700146 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-02-19 |
確定日 | 2016-12-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5766975号発明「吸収性樹脂粒子組成物、これを含む吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5766975号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5766975号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第5766975号の請求項1ないし12に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年2月25日に特許出願され、平成27年6月26日に設定登録され、同年8月19日に特許公報が発行され、その後、特許異議申立人山田宏基(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年5月25日付けで請求項1ないし4及びこれらを引用する請求項6ないし12に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年7月13日付けの意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、その訂正の請求に対して異議申立人から同年10月17日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正の内容は、次の「訂正事項1」のとおりである。 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「0.25?2.0%含有してなる吸収性樹脂粒子組成物。」 とあるのを、 「0.25?2.0%含有してなり、疎水性物質(C)が長鎖脂肪酸エステル、又は疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールである吸収性樹脂粒子組成物。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1は、「疎水性物質(C)」を「疎水性物質(C)が長鎖脂肪酸エステル、又は疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールである」と要件を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし12は、訂正事項1を含む請求項1の記載を、請求項2ないし12が直接・間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし12は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1に係る訂正後の請求項1ないし12は、一群の請求項を構成する。 (3)訂正事項1の「疎水性物質(C)が長鎖脂肪酸エステル、又は疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールである」は、願書に添付した明細書の段落【0046】ないし段落【0049】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (4)訂正事項1は、「疎水性物質(C)」を「疎水性物質(C)が長鎖脂肪酸エステル、又は疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールである」と減縮するものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし12について訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】吸収性樹脂粒子(B1)と吸収性樹脂粒子(B2)とを含んでなる吸収性樹脂粒子組成物であって、(B1)が水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子であり、(B2)が水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A2)を含んでなる吸収性樹脂粒子であり、(B1)及び(B2)の下記膨潤時間比(t2/t1)が各々3?20であり、(B1)の膨潤容積が5mlに達するまでの時間(t1)が10秒以上30秒未満であり、(B2)の膨潤容積が5mlに達するまでの時間(t1)が30秒以上120秒以下であり、吸収性樹脂粒子(B1)と吸収性樹脂粒子(B2)との重量{((B1)の重量/(B2)の重量}が30/70?70/30であり、吸収性樹脂粒子(B1)が疎水性物質(C)を架橋重合体(A1)の重量に基づき、0.03?0.1%含有してなり、吸収性樹脂粒子(B2)が疎水性物質(C)を架橋重合体(A2)の重量に基づき、0.25?2.0%含有してなり、疎水性物質(C)が長鎖脂肪酸エステル、又は疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールである吸収性樹脂粒子組成物。 膨潤時間比(t2/t1):吸収性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水に対する膨潤容積測定法において、膨潤容積が5mlに達するまでの時間(t1)と、膨潤容積が40mlに達するまでの時間(t2)の比 【請求項2】疎水性物質(C)の一部が吸収性樹脂粒子の表面に存在してなる請求項1に記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項3】疎水性物質(C)が疎水部及び親水部からなり、かつ、融点が50℃?300℃である請求項1または2に記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項4】疎水性物質(C)が疎水部及び親水部からなり、かつ疎水性物質(C)の解離度が1×10^(-3)?1×10^(-20)である請求項1?3のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項5】疎水性物質(C)がステアリン酸Mg、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Al及びステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1?4のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項6】吸収性樹脂粒子(B1)及び吸収性樹脂粒子(B2)の形状が不定形破砕状である請求項1?5のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項7】吸収性樹脂粒子(B1)が無機質粉末(D)を架橋重合体(A1)の重量に基づき粒子表面に0.01?3.0%付着してなる請求項1?6のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項8】吸収性樹脂粒子(B2)が無機質粉末(D)を架橋重合体(A2)の重量に基づき粒子表面に0.01?3.0%付着してなる請求項1?7のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項9】吸収性樹脂粒子組成物の見掛け密度(g/ml)が0.54?0.70である請求項1?8のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項10】吸収性樹脂粒子組成物1重量部が人工尿30重量部を吸収して得られる30倍膨潤ゲルのゲル弾性率が2,000?3,000N/m^(2)である請求項1?9のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項11】請求項1?10のいずれかに記載された吸収性樹脂粒子組成物と繊維状物とを含有してなる吸収体。 【請求項12】請求項11に記載された吸収体を用いた吸収性物品。」 第4 取消しの理由 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 記 本件特許発明1ないし4は、段落【0039】ないし【0071】、段落【0114】ないし【0149】の記載から、実施例においては、疎水性物質(C)として、長鎖脂肪酸エステル、並びに疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩のみが記載されていることに鑑みれば、「疎水性物質(C)」として、自ずから一定の範囲を有するものと解される。 しかるところ、請求項1及び2には、単に「疎水性物質(C)」とのみ記載され、請求項3及び4には、それぞれ「疎水性物質(C)が疎水部及び親水部からなり、かつ、融点が50℃?300℃である」及び「疎水性物質(C)が疎水部及び親水部からなり、かつ疎水性物質(C)の解離度が1×10^(-3)?1×10^(-20)である」とのみ記載され、これらの疎水性物質において課題が解決されることは、発明の詳細な説明からは読み取れないし、出願時の技術常識であるともいえない。 したがって、疎水性物質(C)として、長鎖脂肪酸エステル、並びに疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールを超えた範囲まで発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし4及びこれらを引用する本件特許発明6ないし12は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 第5 判断 1 本件特許発明1について 本件特許発明1の課題は、「カブレ等の問題がない吸収性物品、これに使用し得る吸収性樹脂粒子」を提供することにあり(明細書の段落【0005】)、その解決手段の一つとして、「疎水性物質(C)」を特定している。 この「疎水性物質(C)」について、明細書の段落【0039】には、「吸収性樹脂粒子(B1)及び/又は(B2)は、さらに疎水性物質(C)を含有することが好ましい。(B1)における疎水性物質(C)の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子(B1)が含有する架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.01?10.0が好ましく、さらに好ましくは0.02?1.0、特に好ましくは0.03?0.1である。(B2)における疎水性物質(C)の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子(B2)が含有する架橋重合体(A2)の重量に基づいて、0.01?10.0が好ましく、さらに好ましくは0.05?5.0、特に好ましくは0.1?2.0である。この範囲であると、吸収性物品の耐カブレ性に優れるため好ましい。疎水性物質(C)としては、炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)、フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する疎水性物質(C2)及びポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(C3)等が含まれる。」と記載され、同段落【0040】には、「炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)としては、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、ワックス、長鎖脂肪酸エステル、疎水部及び親水部からなる化合物、及びこれらの2種以上の混合物等が含まれる。」と記載されており、実施例においては、具体的なものとして、「ステアリン酸各種金属塩」、「ステアリン酸」、「ステアリン酸エステル」が記載されている。 本件特許発明1は、上記「疎水性物質(C)」として例示された「疎水性物質(C)としては、炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)、フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する疎水性物質(C2)及びポリシロキサン構造をもつ疎水性物質(C3)等」の中から、特に「炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)」を選択した上、その中からさらに、実施例等で具体的に裏付けられたものに基づき、「長鎖脂肪酸エステル、並びに疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール」と特定しているものである。 そして、「長鎖脂肪酸エステル、並びに疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール」に含まれるものにおいて、相互に一定の物性、構造及び炭素数の相違があったとしても、これらの化合物が共通する「長鎖脂肪」族基により「疎水性」を発揮するものであると認められることに鑑みれば、その相違は、上記「疎水性物質(C)」の「耐カブレ性」を解決することを阻害するほど大きな相違とまではいえないから、上記「疎水性物質(C)」が「長鎖脂肪酸エステル、並びに疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコール」であれば、上記課題は解決できると当業者が認識することができる範囲内のものと解するのが相当である。 よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されているというべきである。 2 本件特許発明2ないし12について 上記のように、本件特許発明1が発明の詳細な説明に記載されているから、これをさらに限定した本件特許発明2ないし12も、発明の詳細な説明に記載されているというべきである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由によっては、本件特許を取り消すことができない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】吸収性樹脂粒子(B1)と吸収性樹脂粒子(B2)とを含んでなる吸収性樹脂粒子組成物であって、(B1)が水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子であり、(B2)が水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A2)を含んでなる吸収性樹脂粒子であり、(B1)及び(B2)の下記膨潤時間比(t2/t1)が各々3?20であり、(B1)の膨潤容積が5mlに達するまでの時間(t1)が10秒以上30秒未満であり、(B2)の膨潤容積が5mlに達するまでの時間(t1)が30秒以上120秒以下であり、吸収性樹脂粒子(B1)と吸収性樹脂粒子(B2)との重量{((B1)の重量/(B2)の重量}が30/70?70/30であり、吸収性樹脂粒子(B1)が疎水性物質(C)を架橋重合体(A1)の重量に基づき、0.03?0.1%含有してなり、吸収性樹脂粒子(B2)が疎水性物質(C)を架橋重合体(A2)の重量に基づき、0.25?2.0%含有してなり、疎水性物質(C)が長鎖脂肪酸エステル、又は疎水部及び親水部からなる化合物としての長鎖脂肪酸及びその塩、長鎖脂肪族アルコールである吸収性樹脂粒子組成物。 膨潤時間比(t2/t1):吸収性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水に対する膨潤容積測定法において、膨潤容積が5mlに達するまでの時間(t1)と、膨潤容積が40mlに達するまでの時間(t2)の比 【請求項2】疎水性物質(C)の一部が吸収性樹脂粒子の表面に存在してなる請求項1に記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項3】疎水性物質(C)が疎水部及び親水部からなり、かつ、融点が50℃?300℃である請求項1または2に記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項4】疎水性物質(C)が疎水部及び親水部からなり、かつ疎水性物質(C)の解離度が1×10^(-3)?1×10^(-20)である請求項1?3のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項5】疎水性物質(C)がステアリン酸Mg、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Al及びステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1?4のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項6】吸収性樹脂粒子(B1)及び吸収性樹脂粒子(B2)の形状が不定形破砕状である請求項1?5のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項7】吸収性樹脂粒子(B1)が無機質粉末(D)を架橋重合体(A1)の重量に基づき粒子表面に0.01?3.0%付着してなる請求項1?6のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項8】吸収性樹脂粒子(B2)が無機質粉末(D)を架橋重合体(A2)の重量に基づき粒子表面に0.01?3.0%付着してなる請求項1?7のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項9】吸収性樹脂粒子組成物の見掛け密度(g/ml)が0.54?0.70である請求項1?8のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項10】吸収性樹脂粒子組成物1重量部が人工尿30重量部を吸収して得られる30倍膨潤ゲルのゲル弾性率が2,000?3,000N/m^(2)である請求項1?9のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子組成物。 【請求項11】請求項1?10のいずれかに記載された吸収性樹脂粒子組成物と繊維状物とを含有してなる吸収体。 【請求項12】請求項11に記載された吸収体を用いた吸収性物品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-12-12 |
出願番号 | 特願2011-39425(P2011-39425) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 安田 周史 |
特許庁審判長 |
小野寺 務 |
特許庁審判官 |
小柳 健悟 大島 祥吾 |
登録日 | 2015-06-26 |
登録番号 | 特許第5766975号(P5766975) |
権利者 | SDPグローバル株式会社 |
発明の名称 | 吸収性樹脂粒子組成物、これを含む吸収体及び吸収性物品 |
代理人 | 林 博史 |
代理人 | 林 博史 |