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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23D
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A23D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23D
管理番号 1324844
異議申立番号 異議2016-700223  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-16 
確定日 2017-01-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5779289号発明「食用オイルソース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5779289号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について、訂正することを認める。 特許第5779289号の請求項2及び4ないし8に係る特許を維持する。 特許第5779289号の請求項1及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5779289号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成27年7月17日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 石川郁子 より特許異議の申立てがなされ、平成28年5月31日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成28年7月29日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、その後指定期間内に特許異議申立人より意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正の適否
1 訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、
乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、HLBが4より大きい可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含むことを特徴とする、
上記加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。
【請求項2】
さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上であることを特徴とする、請求項1記載の加熱調理用オイルソース。
【請求項3】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、
乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含み、下記(1)及び(2)の特性を有することを特徴とする加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く):
(1)品温80℃の食用オイルソースを16メッシュのふるいでろ過し、得られたろ液100gを80℃に調温した水400ml中に、乳化分散機を用いてパドルミキサーの回転
数60rpm、ホモミキサーの回転数12,000rpmの条件で撹拌しながら5分かけて添加し、添加後、80℃に維持しながら同条件でさらに1分間撹拌した後の調製液の水相中の粒子のメディアン径またはモード径が10μm以下、
(2)上記撹拌後の調製液を10℃で1時間静置した後に測定した「全体容積に対する水相容積の割合(%)」が83%以上。
【請求項4】
さらに難消化性食物繊維を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載する加熱調理用オイルソース。
【請求項5】
乾燥調味料が、粉末状または顆粒状の形態を有する、食塩、糖質、甘味料、醤油、味噌、味醂、畜肉エキス、野菜エキス、魚介類エキス、酵母エキス、魚介類の発酵物、蛋白加水分解物、旨味調味料、酢、及び酸味料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至4のいずれかに記載する加熱調理用オイルソース。
【請求項6】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材、並びに請求項1乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースを含む加熱調理用食品。
【請求項7】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材が、請求項1乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースの存在下で加熱処理されてなる加熱調理済食品。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースの存在下で食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材を加熱処理する工程を有する、当該食材の焦げ付き防止方法。」

2 平成28年7月29日付け訂正請求の訂正の内容
特許権者は、訂正前の特許請求の範囲を、以下のとおり、特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2を他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、請求項3を削除し、請求項4を他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするとともに減縮し、請求項5ないし8を減縮するとの訂正を請求する(以下、「訂正事項1」ないし「訂正事項8」という。また、下線部が訂正部分である。)。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、HLBが4より大きい可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上であることを特徴とする加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、HLBが4より大きい可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、さらに難消化性食物繊維を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上であることを特徴とする加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。
【請求項5】
乾燥調味料が、粉末状または顆粒状の形態を有する、食塩、糖質、甘味料、醤油、味噌、味醂、畜肉エキス、野菜エキス、魚介類エキス、酵母エキス、魚介類の発酵物、蛋白加水分解物、旨味調味料、酢、及び酸味料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2及び4のいずれかに記載する加熱調理用オイルソース。
【請求項6】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材、並びに請求項2及び請求項4乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースを含む加熱調理用食品。
【請求項7】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材が、請求項2及び請求項4乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースの存在下で加熱処理されてなる加熱調理済食品。
【請求項8】
請求項2及び請求項4乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースの存在下で食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材を加熱処理する工程を有する、当該食材の焦げ付き防止方法。」

3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(2) 訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(3) 訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(4) 訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、かつ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(5) 訂正事項5ないし8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

4 むすび
したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕について、訂正することを認める。

第3 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 本件特許第5779289号の請求項2及び4ないし8に係る発明
本件特許の請求項2及び4ないし8に係る発明は、それぞれ、上記訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項2及び4ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 平成28年5月31日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1) 本件特許の訂正前の請求項1及び3ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(甲第1号証に係る発明)であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、また、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第1号証に係る発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるか、その出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(甲第1号証に係る発明)、または、その出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲第1号証に係る発明)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(以下、「取消理由1」という。)。
2) 本件特許の訂正前の請求項1及び3ないし8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において、頒布された刊行物(甲第6号証)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)。

<甲号証一覧>
甲第1号証:日本食研株式会社業務用ストア
鶏ももバジルソテーオイル販売ページ及び商品レビューのページの印刷物
<URL:http://item.rakuten.co.jp/nihonshokken/234508/?s-id=review_PC_il_item_01>
及び
<URL:http://review.rakuten.co.jp/item/1/208142_10000416/2.1/>
甲第2号証:日本食研ホールディングス株式会社 ニュースリリース
<URL:http://www.nihonshokken.co.jp/release/_17.html>
甲第3号証:特開2001-240894号公報
甲第4号証:特開2011-36265号公報
甲第6号証:特開2007-185155号公報

(3) 取消理由1及び取消理由2については、以下のとおり理由がない。
上記訂正により、本件特許の請求項4ないし8に係る発明は、取消理由通知に記載した取消理由1及び取消理由2のない訂正前の請求項2に記載された発明を特定する事項を含むものに訂正された。したがって、上記訂正後の本件特許の請求項4ないし8に係る発明は、取消理由1及び取消理由2について理由がない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 本件特許第5779289号の請求項2及び請求項4ないし8に係る発明
本件特許の請求項2及び4ないし8に係る発明は、特許明細書の記載からみて、それぞれ、上記訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項2及び4ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
特許異議申立人 石川郁子 は、訂正前の請求項1ないし8に係る特許について、甲第1号証に係る発明であり、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張し、訂正前の請求項2に係る特許について、甲第1号証あるいは甲第6号証に係る発明に基き、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張し、また、訂正前の請求項1ないし8に係る特許について、さらに甲第7号証(特許第4632988号公報)及び甲第8号証(マリンフード株式会社ホームページ ガーリックフレッシュ商品案内書 <URL:http://marinfood.co.jp/product/images/pdf/003232.pdf>)を提出し、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張するとともに、訂正前の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明に関し、請求項3は「可食性乳化剤」のHLBを特定していないが、実施例では、HLBが4より大きい可食性乳化剤を用いた場合において実証しているにすぎないから、請求項3は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであって、特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を取り消すべきものである旨主張している。

(3) 甲第1号証に係る発明に基く特許異議申立理由について
1) 特許法第29条第1項について
仮に甲第1号証に係る発明が「食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含む、上記加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。」の発明(以下、「甲1発明」という。)としても、少なくともその可食性乳化剤について「HLBが4より大きい可食性乳化剤を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上である」か否かは不明というほかない。よって、本件特許の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明であるとはいえず、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるともいえない。
また、本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に請求項2に係る発明を「さらに難消化性食物繊維を含み、」として更に減縮したものであり、本件特許の請求項5ないし8に係る発明は、請求項2又は4に係る発明を更に減縮したものであるから、本件特許の請求項2に係る発明についての判断と同様の理由により、その出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明であるとはいえず、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるともいえない。
以上のとおり、本件特許の請求項2及び4ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施された発明であるとはいえず、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるともいえない。
2) 特許法第29条第2項について
仮に甲1発明が上記のとおりとしても、本件特許の請求項2に係る発明は甲1発明と、少なくとも
[相違点]その可食性乳化剤について、本件特許の請求項2に係る発明が「HLBが4より大きい可食性乳化剤を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上である」のに対し、甲1発明ではその旨特定されない点
で相違する。
上記[相違点]について検討すると、甲1発明は「フライパンで焦がさずに調理できる」ものといえるから、甲第3号証及び甲第4号証に記載された「油脂にHLBが4より大きい乳化剤を配合することで焦げ付き防止効果が得られること」を考慮すれば、甲1発明をして、HLBが4より大きい可食性乳化剤を含むものとすることは当業者が容易に想到し得たことといえるとしても、「さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上である」とすることは、甲第5号証に粉体食材の分散性を向上させるためにHLBが3または4の乳化剤を配合することが記載されているとしても、焦げ付き防止効果が得られるようにHLBが4より大きい乳化剤を配合するとの先に指摘した事項に反するから、上記相違点に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成を採用する動機付けがあるとはいえず、甲1発明をして上記相違点に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許の請求項2に係る発明は甲1発明及び甲第3ないし5号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に請求項2に係る発明を「さらに難消化性食物繊維を含み、」として更に減縮したものであり、本件特許の請求項5ないし8に係る発明は、請求項2又は4に係る発明を更に減縮したものであるから、本件特許の請求項2に係る発明についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第3ないし5号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおり、本件特許の請求項2及び4ないし8に係る発明は、甲1発明及び甲第3ないし5号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 甲第6号証に係る発明に基く特許異議申立理由について
1) 甲第6号証には、特に実施例1を参照すると、「食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、及び可食性乳化剤を含む、上記加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。」の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されているとしても、本件特許の請求項2に係る発明は甲6発明と、少なくとも
[相違点1]その可食性乳化剤について、本件特許の請求項2に係る発明が「HLBが4より大きい可食性乳化剤を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上である」のに対し、甲6発明ではその旨特定されない点
[相違点2]本件特許の請求項2に係る発明は乾燥調味料を含むのに対し、甲6発明ではその旨特定されない点
で相違する。
上記[相違点2]について検討すると、一般に食品の味を調えるために塩こしょう等を加えることは常套手段であることを考慮すると、甲6発明に食塩等の乾燥調味料を含ませることで、甲6発明をして上記相違点2に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
しかし、上記[相違点1]について検討すると、上記「(3) 2)」において[相違点]について検討したように、上記相違点1に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成とする動機付けがあるとはいえず、甲6発明をして上記相違点1に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許の請求項2に係る発明は甲6発明及び甲第3ないし5号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2) 本件特許の請求項4ないし8に係る発明について
本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に請求項2に係る発明を「さらに難消化性食物繊維を含み、」として更に減縮したものであり、本件特許の請求項5ないし8に係る発明は、請求項2又は4に係る発明を更に減縮したものであるから、本件特許の請求項2に係る発明についての判断と同様の理由により、甲6発明及び甲第3ないし5号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3) 以上のとおり、本件特許の請求項2及び4ないし8に係る発明は、甲6発明及び甲第3ないし5号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5) 甲第7号証に基く特許異議申立理由について
1) 甲第7号証には、特に実施例4を参照すると、「ガーリックトースト用スプレッドであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、HLBが4より大きい可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含む、上記ガーリックトースト用スプレッド。」の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されているとしても、本件特許の請求項2に係る発明は甲7発明と、少なくとも
[相違点1]本件特許の請求項2に係る発明が「食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)」であるのに対し、甲7発明では「ガーリックトースト用スプレッド」である点
[相違点2]その可食性乳化剤について本件特許の請求項2に係る発明が「さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上である」のに対し、甲6発明ではその旨特定されない点
で相違する。
上記[相違点1]について検討すると、仮に甲第8号証に記載されているように「業務用スプレッド類」としての「ソフトタイプマーガリンに、おろしガーリックをはじめ」とした「スパイスをたっぷりとブレンドした」ものには、「焼きたてのパンに塗ってお手軽にガーリックトーストに」との「用途」や「魚介類やステーキの臭み消しに」との「用途」があるとしても、甲7発明の「ガーリックトースト用スプレッド」をして「食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)」とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、上記[相違点2]について検討すると、「さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上である」とすることは、甲第5号証に粉体食材の分散性を向上させるためにHLBが3または4の乳化剤を配合することが記載されているとしても、上記相違点2に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成を採用する動機付けがあるとはいえず、甲1発明をして上記相違点2に係る本件特許の請求項2に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許の請求項2に係る発明は甲7発明並びに甲第5及び8号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に請求項2に係る発明を「さらに難消化性食物繊維を含み、」として更に減縮したものであり、本件特許の請求項5ないし8に係る発明は、請求項2又は4に係る発明を更に減縮したものであるから、本件特許の請求項2に係る発明についての判断と同様の理由により、甲7発明並びに甲第5及び8号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおり、本件特許の請求項2及び4ないし8に係る発明は、甲7発明並びに甲第5及び8号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6) 特許法第36条に係る特許異議申立理由について
上記訂正により請求項3は削除されたから、対象となる請求項が存在しない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2及び4ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項2及び4ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1及び3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1及び3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、HLBが4より大きい可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上であることを特徴とする加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材の加熱調理に用いる加熱調理用オイルソースであって、乾燥植物及び乾燥キノコからなる群から選択される少なくとも1つ、HLBが4より大きい可食性乳化剤、並びに乾燥調味料を含み、さらにHLBが4以下の可食性乳化剤を含み、さらに難消化性食物繊維を含み、可食性乳化剤のHLBの加重平均値が3以上であることを特徴とする加熱調理用オイルソース(但し、油脂、粉末調味料、乳化剤、および必要に応じてこれに粉末油脂を加えた配合物を急冷捏和してなるパスタソースを除く)。
【請求項5】
乾燥調味料が、粉末状または顆粒状の形態を有する、食塩、糖質、甘味料、醤油、味噌、味醂、畜肉エキス、野菜エキス、魚介類エキス、酵母エキス、魚介類の発酵物、蛋白加水分解物、旨味調味料、酢、及び酸味料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2及び4のいずれかに記載する加熱調理用オイルソース。
【請求項6】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材、並びに請求項2及び請求項4乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースを含む加熱調理用食品。
【請求項7】
食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材が、請求項2及び請求項4乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースの存在下で加熱処理されてなる加熱調理済食品。
【請求項8】
請求項2及び請求項4乃至5のいずれかに記載する加熱調理用オイルソースの存在下で食肉、魚介類、及びこれらの加工食品からなる群から選択される少なくとも1つの食材を加熱処理する工程を有する、当該食材の焦げ付き防止方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-12-19 
出願番号 特願2015-31979(P2015-31979)
審決分類 P 1 651・ 112- YAA (A23D)
P 1 651・ 536- YAA (A23D)
P 1 651・ 113- YAA (A23D)
P 1 651・ 537- YAA (A23D)
P 1 651・ 121- YAA (A23D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 沙織  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 田村 嘉章
窪田 治彦
登録日 2015-07-17 
登録番号 特許第5779289号(P5779289)
権利者 日本食研ホールディングス株式会社
発明の名称 食用オイルソース  
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