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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01D
管理番号 1324859
異議申立番号 異議2016-700656  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-01 
確定日 2017-01-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第5850113号発明「電動作業機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5850113号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由
第1 手続の経緯
特許第5850113号の請求項1ないし10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成21年3月3日を出願日とする特願2009-49740号の一部を、平成26年9月3日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成27年12月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人株式会社マキタにより特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明
特許第5850113号の請求項1ないし10の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)。

「【請求項1】
長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングと、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作し、
前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、
前記バッテリは、前記ガイド部に沿った方向で前記ハウジングより小さい寸法を有し、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるとともに、前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置することを特徴とする電動作業機。

【請求項2】
前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の上面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリより上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。

【請求項3】
前記バッテリは、前記ハウジングに取り付けた状態で前記バッテリの重心が前記操作棹の略軸芯上に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動作業機。

【請求項4】
前記ハウジングには、前記バッテリを前記バッテリの挿入方向と反対方向から覆う突出部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の電動作業機。

【請求項5】
前記電動モータへの電力供給を制御するスイッチ部が前記ハウジング内に設けられ、
作業者が前記電動作業機を保持して作業を行うための前記把持部が、前記操作棹の外周に、前記操作棹の延びる方向に沿って形成されていると共に、
前記把持部には、前記スイッチ部を操作するための前記操作部が設けられ、
前記操作部の操作に連動して、前記スイッチ部が操作されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の電動作業機。

【請求項6】
前記把持部近傍の前端側には、前記電動モータを制御する電子回路部品に電力が供給されていることを作業者に知らせる報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の電動作業機。

【請求項7】
前記操作棹は中間部で着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の電動作業機。

【請求項8】
前記ハウジングの上面には凹部が形成され、前記凹部には前記バッテリから前記電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチ又は/及び前記バッテリの残量を表示する残量表示部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の電動作業機。

【請求項9】
長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングと、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作し、
前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、
前記バッテリは、前記ガイド部に沿った方向で前記ハウジングより小さい寸法を有し、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるとともに、前記ハウジングの上面には凹部が形成され、前記凹部には前記バッテリから前記電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、前記バッテリの残量を表示する残量表示部が設けられ、前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置することを特徴とする電動作業機。

【請求項10】
前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の上面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリより上方に位置することを特徴とする請求項9に記載の電動作業機。」


第3 申立された取消理由の概要
申立人が主張する取消理由の概要は以下のとおりである。

1 特許法第36条第4項第1号実施可能要件」(「取消理由1」という。以下同様)
申立人は、本件発明1ないし10について、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下(1)、(2)のとおり主張している。

(1)本件発明1ないし10は、電動モータが配置されている位置に関する限定がなく、ハウジングが電動モータを収容する旨の限定もなく、操作棹の内部に動力伝達軸を備える点も限定されていない。したがって、操作棹の前端に作業部と電動モータが配置され、操作棹の後端にハウジングとバッテリが配置された電動作業機(とくに、操作棹の前端に電動モータが配置される点)を含むものとなっているが、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明には、そのような電動作業機は開示されておらず、よって本件発明1ないし10を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(2)平成27年6月29日付け意見書(甲第2号証)における主張内容を、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明から読み取ることはできない。

2 特許法第36条第6項第1号「サポート要件」(「取消理由2」)
申立人は、本件発明1ないし10は、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下(1)、(2)のとおり主張している。

(1)取消理由1で述べたとおり、本件発明1ないし10は、操作棹の前端に作業部と電動モータが配置され、操作棹の後端にハウジングとバッテリが配置された電動作業機を含むものであるが、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明には、操作棹の前端に電動モータを配置しながら、操作棹の前端に作業部を接続する技術は開示されていない。

(2)本件発明1ないし10は、ガイド部が操作棹の軸方向と「交差する」方向に延びることを要件としている。従って、本件発明1ないし10は、ガイド部が、操作棹の軸方向と「略直交する」方向に延びるものに加えて、ガイド部が、操作棹の軸方向と、例えば45度、60度等の角度で「交差する」方向に延びるものも含んでいるが、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明には、ガイド部が、操作棹の軸方向と「略直交する」方向に延びるものしか開示されていない。

3 特許法第29条第1項(第3号)「分割要件」(新規性)(「取消理由3」)
申立人は、本件特許に係る出願は、分割出願の実体的要件を満たしておらず、原出願日に遡及しない。本件発明1ないし4、8ないし10は、分割出願の出願前に頒布された刊行物(特開2013-165678号公報(甲第5号証))と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当する。従って、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである旨主張し、分割出願の実体的要件を満たさない理由として概ね以下(1)ないし(3)のとおり主張している(なお、特許異議申立書記載の「」特許法第29条第1項第2号」は「特許法第29条第1項第3号」の誤記と認める。)。

(1)本件発明1ないし10は、操作棹の前端に作業部と電動モータが配置され、操作棹の後端にハウジングとバッテリが配置された電動作業機を含むものであるが、本件特許に係る出願の原出願の出願当初の明細書には、そのような電動作業機は開示されていない。

(2)平成27年6月29日付け意見書(甲第2号証)における主張内容は、本件特許に係る出願の原出願の出願当初の明細書に記載されていない。

(3)本件発明1ないし10は、ガイド部が操作棹の軸方向と「交差する」方向に延びることを要件としている。従って、本件発明1ないし10は、ガイド部が、操作棹の軸方向と「略直交する」方向に延びるものに加えて、ガイド部が、操作棹の軸方向と、例えば45度、60度等の角度で「交差する」方向に延びるものも含んでいるが、本件特許に係る出願の原出願の出願当初の明細書には、ガイド部が、操作棹の軸方向と「略直交する」方向に延びるものしか開示されていない。

4 特許法第29条第2項「分割要件」(進歩性)(「取消理由4」)
申立人は、本件特許に係る出願は、分割出願の実体的要件を満たしておらず、原出願日に遡及しない。本件発明1ないし10は、分割出願の出願前に頒布された刊行物(特開2013-165678号公報(甲第5号証))に記載された発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。従って、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張し、分割出願の実体的要件を満たさない理由として、取消理由3と同様に、概ね上記3(1)ないし(3)のとおり主張している。

5 特許法第29条第1項(第2号)「公然実施発明に対する新規性」(「取消理由5」)
申立人は、本件発明1ないし4、6ないし10は、本件特許に係る出願の出願前に公然と販売されたコードレス刈払機FCG18DL(公然実施発明)と同一であるから、特許法第29条第1項第2号の発明に該当する。従って、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下のとおり主張している。

コードレス刈払機FCG18DLは甲第10号証に示されるように本件特許の出願前に発売され、そして甲第11号証に示されるように本件発明1ないし4、6ないし10の構成を全て備えている。

6 特許法第29条第2項公然実施発明に対する進歩性」(「取消理由6」)
申立人は、本件発明1ないし10は、本件特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、公然実施発明(上記コードレス刈払機FCG18DL)と周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。従って、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下のとおり主張している。

取消理由5で述べたとおり本件発明1ないし4、6ないし10は公然実施発明と同一であるが、仮に両者間に相違点があったにしても微差に過ぎず、出願時の公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。また本件特許発明5も、公然実施発明と出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 特許法第29条第2項「甲第6号証に対する進歩性」(「取消理由7」)
申立人は、本件発明1ないし10は、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物(特開平10-56845号公報(甲第6号証))に記載された発明と周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。従って、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下(1)ないし(4)のとおり主張している。

(1)本件発明1について
本件発明1と甲第6号証記載の発明は、以下の点で相違している。
(相違点1)本件発明1では、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲第6号証記載の発明では、ハウジングの上面の操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と平行に延びるガイド部が形成され、バッテリは、ガイド部に沿って、後方から挿入されることで取り付けられる点。
(相違点2)本件発明1では、バッテリは、ガイド部に沿った方向(操作棹の軸方向と交差する方向)でハウジングより小さい寸法を有するのに対し、甲第6号証記載の発明では、バッテリは、ガイド部に沿った方向(操作棹の軸方向と平行な方向)でハウジングより小さい寸法を有する点。

相違点1については、バッテリをいわゆる差込式(甲第6号証記載の発明)で取り付ける構成とするか、いわゆるスライド式(本件発明1)で取り付ける構成とするかは、当業者が適宜選択する設計的事項に過ぎない。甲第12、13号証のそれぞれには、スライド式の形態と差込式の形態がともに記載されている。
そして、バッテリを差込式で取り付ける構成からスライド式で取り付ける構成とすることは、動機付けが存在する。甲第14号証には、差込式からスライド式に変更することで、ハンドグリップの形状に関する設計の自由度が高まるということが記載されている。甲第15ないし17号証には、差込式からスライド式への置き換えが進められていることが示されている。
そして、バッテリをスライド式で取り付ける構成において、ハウジングにガイド部が形成され、バッテリがガイド部に沿って上方から挿入されることで取り付けられるものは、甲第18ないし20号証に記載されているように、当業者には広く知られたものである。

相違点2については、バッテリをスライド式でハウジングに取り付ける構成において、スライド方向でバッテリがハウジングよりも小さい寸法を有するものは、甲第21、22号証や、また充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19,20号証)から、当業者には広く知られたものである。

(2)本件発明2ないし8について
本件発明2で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第21、22号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明3で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第7、23号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明4で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第24号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明5で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明6で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第25号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明7で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第7ないし9号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明8で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第12、25、26号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。

(3)本件発明9について
本件発明9と甲第6号証記載の発明は、以下の点で相違している。
(相違点1)本件発明9では、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲第6号証記載の発明では、ハウジングの上面の操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と平行に延びるガイド部が形成され、バッテリは、ガイド部に沿って、後方から挿入されることで取り付けられる点。
(相違点2)本件発明9では、ハウジングの上面には、凹部が形成されていると共に、凹部に電源スイッチと残量表示部が設けられているのに対して、甲第6号証記載の発明では、ハウジングの上面に凹部は形成されておらず、電源スイッチと残量表示部も設けられていない点。

相違点1については、本件発明1について述べたとおりである。

相違点2については、電動作業機の使用時、及びバッテリの着脱時に、使用者から見やすい位置に、電源スイッチや残量表示部を配置すること、及び電源スイッチや残量表示部をハウジングに形成された凹部に配置することは、周知技術である。
甲第12号証には、バッテリの着脱時に使用者から見やすい位置に、残量表示部を配置する構成が開示されている。
甲第25号証には、電動工具の使用時に使用者から見やすい位置に、凹部が形成され、凹部にはバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、バッテリの残量を表示する残量表示部が配置された構成が開示されている。
甲第26号証には、電動作業機の使用時に使用者から見やすい位置に、電源スイッチと残量表示部がそれぞれ配置された構成が開示されている。

(4)本件発明10について
本件発明10で付加される構成は、甲第6号証に記載された発明と、周知技術(甲第21、22号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。

8 特許法第29条第2項「甲第24号証に対する進歩性」(「取消理由8」)
申立人は、本件発明1ないし10は、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物(実開昭49-1429号公報(甲第24号証))に記載された発明と周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものである。従って、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下(1)ないし(4)のとおり主張している。

(1)本件発明1について
本件発明1と甲第24号証記載の発明は、以下の点で相違している。
(相違点)本件発明1では、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲第24号証記載の発明では、ハウジングには、断面L字状のバッテリ取付台が形成され、バッテリは、バッテリ取付台に上方から挿入されることで取り付けられる点。

相違点については、バッテリ取付部にガイド部を設けて、バッテリがガイド部に沿って上方から挿入されることで取り付けられるものは、甲第18ないし20号証に記載されているように、当業者には広く知られたものである。

(2)本件発明2ないし8について
本件発明2で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第21、22号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明3で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第7、23号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明4で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明5で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第6号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明6で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第25号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明7で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第7ないし9号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。
本件発明8で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第12、25、26号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。

(3)本件発明9について
本件発明9と甲第24号証記載の発明は、以下の点で相違している。
(相違点1)本件発明1では、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲24号証記載の発明では、ハウジングには、断面L字状のバッテリ取付台が形成され、バッテリは、バッテリ取付台に上方から挿入されることで取り付けられる点。
(相違点2)本件発明9では、ハウジングの上面には、凹部が形成されていると共に、凹部に電源スイッチと残量表示部が設けられているのに対して、甲第24号証記載の発明では、ハウジングの上面に凹部は形成されておらず、電源スイッチと残量表示部も設けられていない点。

相違点1については、本件発明1について述べたとおりである。

相違点2については、電動作業機の使用時、及びバッテリの着脱時に、使用者から見やすい位置に、電源スイッチや残量表示部を配置すること、及び電源スイッチや残量表示部をハウジングに形成された凹部に配置することは、周知技術である。
甲第12号証には、バッテリの着脱時に使用者から見やすい位置に、残量表示部を配置する構成が開示されている。
甲第25号証には、電動工具の使用時に使用者から見やすい位置に、凹部が形成され、凹部にはバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、バッテリの残量を表示する残量表示部が配置された構成が開示されている。
甲第26号証には、電動作業機の使用時に使用者から見やすい位置に、電源スイッチと残量表示部がそれぞれ配置された構成が開示されている。

(4)本件発明10について
本件発明10で付加される構成は、甲第24号証に記載された発明と、周知技術(甲第21、22号証)に基づき当業者が容易に発明できたものである。

9 特許法第29条の2「拡大先願」(「取消理由9」)
申立人は、本件発明1ないし3、6、8ないし10は、本件特許に係る出願の出願日前に出願され、本件特許に係る出願の出願日後に出願公開された特許出願である特願2008-206927号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載された発明(甲第27号証)と同一である。従って、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである旨主張し、その理由として概ね以下のとおり主張している。

(1)本件発明1について
本件発明1と甲第27号証の発明は、以下の点で一応相違している。
(相違点)本件発明1では、バッテリは、ガイド部に沿った方向でハウジングより小さい寸法を有するのに対し、甲第27号証の発明では、バッテリは、ガイド部に沿った方向でハウジングより小さい寸法を有する点。

一応の相違点に関して、バッテリをスライド式でハウジングに取り付ける構成において、スライド方向でバッテリがハウジングよりも小さい寸法を有するものは、甲第21、22号証や、また充電式チェーンソーUC121DRF(甲19,20号証)から、当業者には広く知られたものである。

(2)本件発明2、3、6及び8について
本件発明2で付加される構成に係る相違点は、実質的な相違点ではない(周知技術として甲第21、22号証)。
本件発明3で付加される構成に係る相違点は、実質的な相違点ではない(周知技術として甲第7、23号証)。
本件発明6で付加される構成に係る相違点は、実質的な相違点ではない(周知技術として甲第25号証)。
本件発明8で付加される構成に係る相違点は、実質的な相違点ではない(周知技術として甲第12、25、26号証)。

(3)本件発明9について
本件発明9と甲第27号証記載の発明は、以下の点で一応相違している。
(相違点1) 本件発明9と甲第27号証の発明は、本件発明9では、バッテリは、ガイド部に沿った方向でハウジングより小さい寸法を有するのに対し、甲第27号証の発明では、バッテリは、ガイド部に沿った方向でハウジングより小さい寸法を有する点。
(相違点2)本件発明9では、ハウジングの上面には、凹部が形成されていると共に、凹部にはバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、バッテリの残量を表示する残量表示部が設けられているのに対して、甲第27号証記載の発明では、ハウジングの上面に凹部は形成されておらず、ハウジングの上面に電源スイッチや残量表示部が設けられてるか否か不明な点。

一応の相違点1については、本件発明1について述べたとおりである。

一応の相違点2については、電動作業機の使用時、及びバッテリの着脱時に、使用者から見やすい位置に、電源スイッチや残量表示部を配置すること、及び電源スイッチや残量表示部をハウジングに形成された凹部に配置することは、周知技術である。
甲第12号証には、バッテリの着脱時に使用者から見やすい位置に、残量表示部を配置する構成が開示されている。
甲第25号証には、電動工具の使用時に使用者から見やすい位置に、凹部が形成され、凹部にはバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、バッテリの残量を表示する残量表示部が配置された構成が開示されている。
甲第26号証には、電動作業機の使用時に使用者から見やすい位置に、電源スイッチと残量表示部がそれぞれ配置された構成が開示されている。

(4)本件発明10について
本件発明10で付加される構成に係る相違点は、実質的な相違点ではない(周知技術として甲第21、22号証)

[証拠方法]
甲第1号証:特許第5850113号公報(本件特許公報)

甲第2号証:平成27年6月29日付け意見書(本件特許に係る出願での意見書)

甲第3号証:実願平3-48218号(実開平5-2620号)のCD-ROM
(特許異議申立書の「実開平5-2620号公報」は「実願平3-48218号(実開平5-2620号)のCD-ROM」の誤記と認める。)

甲第4号証:特開2010-200673号公報(本件特許に係る原出願の公開公報)

甲第5号証:特開2013-165678号公報

甲第6号証:特開平10-56845号公報

甲第7号証:特開2008-67号公報

甲第8号証:実願昭61-164859号(実開昭63-68723号)のマイクロフィルム
(特許異議申立書の「実開昭63-68723号公報」は「実願昭61-164859号(実開昭63-68723号)のマイクロフィルム」の誤記と認める。)

甲第9号証:実願昭62-63070号(実開昭63-169819号)のマイクロフィルム
(特許異議申立書の「実開昭63-169819号公報」は「実願昭62-63070号(実開昭63-169819号)のマイクロフィルム」の誤記と認める。)

甲第10号証:コードレス刈払機FCG18DLの環境データシートの写し

甲第11号証:コードレス刈払機FCG18DLの取扱説明書の写し

甲第12号証:特開2008-229740号公報

甲第13号証:特開2007-118098号公報

甲第14号証:特開2006-218583号公報

甲第15号証:株式会社マキタの2000年4月版の総合カタログの表紙、第6頁及び第7頁の写し

甲第16号証:株式会社マキタの2000年10月版の総合カタログの表紙、第6頁及び第7頁の写し

甲第17号証:株式会社マキタの2008年10月版の総合カタログの表紙、第8頁及び第9頁の写し

甲第18号証:米国特許第6181032号明細書
(注;申立人による抄訳添付)

甲第19号証:株式会社マキタの2007年12月4日付けプレスリリースの写し

甲第20号証:充電式チェーンソーUC121DRFの取扱説明書の写し

甲第21号証:特開2003-282041号公報

甲第22号証:特開2002-260619号公報

甲第23号証:特開2006-217843号公報

甲第24号証:実願昭47-42027号(実開昭49-1429号)のマイクロフィルム
(注;特許異議申立書の「実開昭49-1429号公報」は「実願昭47-42027号(実開昭49-1429号)のマイクロフィルム」の誤記と認める。)

甲第25号証:特開2008-68355号公報

甲第26号証:特開平10-191750号公報

甲第27号証:特開2010-41943号公報(特願2008-206927号の公開公報)


第4 当審の判断
1 取消理由1(実施可能要件)について
(1) 検討
本件発明にかかる発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)に記載された実施の形態が本件発明1ないし10に含まれるものであることは明らかであり、また、物の発明である本件発明1ないし10について、「物の発明」を明確に説明し、当業者がその物を作りかつ使用できるように記載されていることも明らかであり、実施可能要件に反するところはない(申立においても、該実施の形態自体について実施可能でないとの主張はされていない。)。
申立人は、上記第3の1(1)に記載したように、本件発明1ないし10は、操作棹の前端に作業部と電動モータが配置され、操作棹の後端にハウジングとバッテリが配置された電動作業機を含むものであるが、発明の詳細な説明にはそのような電動作業機は開示されておらず、よって本件発明1ないし10を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。さらに要約すれば、発明の詳細な説明には操作棹の後端に電動モータが配置される電動作業機の実施の形態のみが記載され、これに対し申立人は操作棹の前端に電動モータが配置される電動作業機が記載されていないと主張しているものである。しかしながら、発明の詳細な説明にある実施の形態のみが実施可能に記載されていること、逆にいえば他のある実施の形態は記載されていないことが、直ちに実施可能要件違反となるものではない。
これが実施可能要件違反にあたるかどうか検討すると、まず、本件発明1ないし10は電動モータの配置位置について特定する発明ではないので、請求項に上位概念の発明が記載されており発明の詳細な説明にその上位概念に含まれる「一部の下位概念」についての実施の形態のみが実施可能に記載され、かつその上位概念に含まれる他の下位概念については、その「一部の下位概念」についての実施の形態のみでは当業者が出願時の技術常識を考慮しても実施できる程度に明確かつ十分に説明されていないという場合にはあたらない。
また、発明の詳細な説明に記載された実施の形態に、本件発明1ないし10に含まれる特異点である等の格別の理由もみあたらないので、発明の詳細な説明に特定の実施の形態のみが実施可能に記載され、かつその特定の実施の形態が請求項に係る発明に含まれる特異点である等の理由によって、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、その請求項に係る発明に含まれる他の部分についてはその実施をすることができないという場合でもない。
このように、操作棹の前端に電動モータが配置される電動作業機が発明の詳細な説明に記載されていないことで実施可能要件違反となる理由はない。また他に、発明の詳細な説明に実施可能要件違反となる点もない。

次に、上記第3の1(2)に記載した、申立人の平成27年6月29日付け意見書(甲第2号証)に関する主張について検討すると、意見書における主張内容を発明の詳細な説明から読み取ることが仮にできないとしても、そのこと自体は特許法第36条第4項第1号違反にあたらない。

(2) 小括
以上のとおり、取消理由1によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由2(サポート要件)について
(1) 検討
発明の詳細な説明には、発明の課題について、
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】 このようなバッテリ駆動式の作業機においては、バッテリの着脱時に草や地面が邪魔となることがあり、また、電動モータとバッテリ等の重量物がハンドルに対してそれぞれ離間した位置にあるため、作業時の取り回しに負担となっていた。
【0006】 本発明の目的は、上記した従来技術の欠点をなくし、作業時の取り回しを向上させながら、バッテリの着脱を容易にした電動作業機を提供することにある。」
と記載されている。
すなわち、「また、電動モータとバッテリ等の重量物がハンドルに対してそれぞれ離間した位置にあるため、作業時の取り回しに負担となっていた」という課題(以下「課題A」という。)だけでなく、別の「バッテリの着脱時に草や地面が邪魔となることがあり」という課題(以下「課題B」という。)が記載され、また、課題Aが必須の課題である旨の記載、あるいは課題Aが課題Bと不可分である旨の記載もない。
よって、上記第3の2(1)に記載したように請求人が主張する、請求項1ないし10に電動モータの配置位置等の限定がないということによっては、課題(課題B)を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えることにはならず、サポート要件違反にはあたらない。
また、上記第3の2(2)に記載したように請求人が主張する、発明の詳細な説明では、駆動軸36の軸方向と「略直交」する方向に延びて形成されるガイド部33と記載され、他方請求項1ないし10においては、「バッテリは・・・ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられ」、ガイド部は操作棹の軸方向と「交差」する方向に延びると記載されている点については、請求項1ないし10におけるその構成でも「バッテリの着脱時に草や地面が邪魔となることがあり」という課題Bを解決できることは当業者ならば認識できる(逆にいえば、「略直交」でなければ「バッテリの着脱時に草や地面が邪魔となる」というものではない。)。よってやはり課題Bを解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えることになっておらず、サポート要件違反にはあたらない。また他に、サポート要件違反となる点もない。

(2) 小括
以上のとおり、取消理由2によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由3(分割要件 新規性)について
(1) 検討
まず、上記第3の3(1)に記載したように請求人が主張する、原出願の出願当初の明細書等と対比すると本件発明1ないし10では電動モータの配置位置等の事項が限定されていない点については、当該事項は上記2で検討したように課題B(原出願の出願当初の明細書等にも記載されている。)の解決に関係するものではなく、この点は新たな技術上の意義を追加するものではない。
次に、上記第3の3(3)に記載したように請求人が主張する、原出願の出願当初の明細書等と対比すると本件発明1ないし10では、ガイド部の操作棹の軸方向に対する方向が、「略直交」する方向から「交差」する方向に上位概念化されている点については、原出願の出願当初の明細書等ではたまたま該方向が「略直交」と限定されていたとしても、課題Bを解決するにおいて該方向は「略直交」するものに限定されず、バッテリがガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられ、該ガイド部は操作棹の軸方向と「交差」する方向に延びるものであればよいことは原出願の出願当初の明細書等の記載より自明であるので、この点も発明の技術上の意義に何ら変更をもたらすものではない。
また、記第3の3(2)に記載したように請求人が主張する、申立人の平成27年6月29日付け意見書(甲第2号証)に関する主張に関して、意見書における主張内容を発明の詳細な説明から読み取ることが仮にできないとしても、そのこと自体により、本件特許に係る出願(分割出願)の明細書等に記載された事項が原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲を超えることにはならない。
また他に、原出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、本件特許に係る出願(分割出願)の明細書等に記載された事項に、新たな技術的事項を導入する点は見出せない。
よって、本件特許に係る出願(分割出願)の明細書等に記載された事項は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲を超えるものではない。
また、本件特許に係る出願(分割出願)の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内ではないとする点もない。
以上より、分割は適法である。

(2) 小括
以上のとおり、甲第5号証について検討するまでもなく、取消理由3によっては、請求項1ないし4、8ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

4 取消理由4(分割要件 進歩性)について
(1) 検討
上記3(1)で検討したように、本件特許に係る出願(分割出願)の明細書等に記載された事項は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲を超えるものではなく、また原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内ではないとする点もないので、分割は適法である。

(2) 小括
以上のとおり、甲第5号証について検討するまでもなく、取消理由4によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

5 取消理由5(公然実施発明に対する新規性)について
(1) コードレス刈払機FCG18DLの発売日について
取消理由5は、コードレス刈払機FCG18DLの発売時期が、本件特許の出願前であることが甲第10号証により立証されることを前提とするものである。
甲第10号証は日立工機株式会社の「環境データシート」と題するウェブページの写しであり、該「環境データシート」の「製品名」欄には「18Vコードレス刈払機FCG18DL/DAL形」と記載され、「発売時期」欄には「単位」を「年、月」として「2009.01」と記載されている。
しかしながら、平成28年11月15日付け意見書に添付された宣誓書にて、その日立工機株式会社における甲第10号証「環境データシート」の直接の作成者である「林崎 利彦」は、上記「発売時期」欄の「2009.01」という記載は誤りであり、コードレス刈払機FCG18DLの実際の発売時期は本件発明に係る特許出願日より後で、当該ウェブページの「発売時期」欄を「2009.03」に修正した旨陳述している。
さらに、同意見書に添付された陳述書にて、日立工機株式会社の営業及びサービスの企画・推進、営業管理を行う営業企画部の責任者である「菊地 義徳」は、コードレス刈払機FCG18DLの発売時期は2009年3月30日と設定され、2009年4月2日に同社国内工場から出荷が開始されたものである旨を陳述している。
これら宣誓書及び陳述書には、自署と推認される記名、及び押印がなされ、陳述内容に矛盾する点あるいは通常の社会的常識に反する内容もないから、これら陳述内容は、信用性が高いといえる。
よって、甲第10号証により申立人が立証しようとする「本件特許出願の出願前にコードレス刈払機FCG18DLが販売したこと」には疑義があり、事実であるとは認められない。

(2) 小括
以上のとおり、甲第11号証について検討するまでもなく、取消理由5によっては、請求項1ないし4、6ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

6 取消理由6(公然実施発明に対する進歩性)について
(1) 検討
上記5で検討したとおり、本件特許出願の出願前にコードレス刈払機FCG18DLが販売されたことが甲第10号証により立証されるとは認められない。

(2) 小括
以上のとおり、甲第11号証について検討するまでもなく、取消理由6によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

7 取消理由7(甲第6号証に対する進歩性)について
(1) 甲第6号証
本理由において主引例とされる、本件特許に係る出願の原出願前(以下「本件特許に係る出願前」という。)に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある

ア 「【請求項1】 長尺状の操作桿の先端部に刈刃を配置し、この刈刃を電動モータ及びバッテリーからなる駆動部によって駆動するようにした人力操作用の電動草刈機であって、前記駆動部を操作桿の基端側に配置し、前記刈刃と電動モータをドライブシャフトで連結することを特徴とする電動草刈機。
【請求項2】 請求項1に記載の電動草刈機において、前記操作桿の中間部の基端側寄りには、肩掛式ベルト装着用の懸吊部が設けられるとともに、この懸吊部の前方には、操作用の把手部が設けられ、この懸吊部と把手部の中間部に重心位置が設定されることを特徴とする電動草刈機。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の電動草刈機において、前記電動モータは駆動部の前方側上部に配設され、前記バッテリーは駆動部の後方側下部に配設されることを特徴とする電動草刈機。」

イ 「【0012】本発明の電動草刈機1は、軽量で操作性に優れ、安全性が配慮された人力操作用の草刈機として構成され、図1に示すように、長尺状の操作桿としてのパイプ2と、このパイプ2の先端部に配置される刈刃3と、パイプ2の基端部に配設される駆動部4を備えている。そしてパイプ2の中間部の基端側寄りには、肩掛式ベルト装着用の懸吊部5が設けられ、この懸吊部5の前方寄りには、把手部6が設けられている。そして、この草刈機1の重心Wは、懸吊部5と把手部6の中間位置に設定されている。
【0013】また、懸吊部5と駆動部4の間には、スイッチ部7が設けられ、このスイッチ部7の後部側にはグリップ部8が設けられている。更に、パイプ3の前方寄り下方には、支持部材10が突設され、また基端側の駆動部4の下方には、脚部11を突設している。そして草刈機1を地上に置く際は、支持部材10と脚部11を地面に接触させて置くようにし、刈刃3と駆動部4を地上から離して保護し得るようにされている。
・・・
【0015】前記駆動部4は、図2に示すように、電動モータ14とバッテリー15を備えている。そして、電動モータ14は、駆動部4の前方上部に配置され、その駆動軸14aは、連結部材16を介して前記ドライブシャフト12の基端部に連結されている。また、バッテリー15は、電動モータ14の振動等の影響が少ない駆動部4の後方下部のバッテリーケース17内に収容され、このバッテリーケース17内の両側部には電極部材18、18(図3)が突設されている。そしてこの電極部材18、18はバッテリー15の両側面の凹部電極に係合可能とされている。
【0016】また、バッテリーケース17の後端部には、図2に示すようにピン軸21まわりに揺動自在な開閉蓋20が設けられ、締結ボルト22で係止出来るようにされている。そして、バッテリー15を充電、或いは交換する時は、締結ボルト22を外して開閉蓋20を開き、バッテリー15を取出し、又は挿入するようにしている。因みに、バッテリー15は、電動モータ14を駆動するため大電流を消費するとともに、15分?30分程度の短時間で充電し、また、年数回程度の使用による完全放電後の再充電等の点から、例えばニッケル-カドミウム電池を使用している。
【0017】前記懸吊部5は、図1に示すような肩掛式ベルト23を装着出来るようにされ、また前記把手部6は、図4に示すように、パイプ2に対して取付部材24を介して取付けられている。そして使用に際しては、肩掛式ベルト23を肩に掛け、把手部6とグリップ部8を両手で持って操作する。この際、前述のように重心位置が懸吊部5と把手部6の中間にくるように設定されているため、操作が楽であり、取り扱いやすい。
【0018】前記スイッチ部7は、図2に示すように、スイッチ本体25と、このスイッチ本体25から後方に向けて張出すスイッチレバー26を備え、このスイッチレバー26の張出先端部は上方に向けて揺動自在とされるとともに、張出先端部を上方に揺動させるとスイッチオンになるようにしている。
・・・
【0020】以上のような構成による電動草刈機1の作用等について説明する。草刈機1を使用して草等を刈る時は、懸吊部5に装着した肩掛式ベルト23を肩に掛け、例えば右手でグリップ部8を把持してスイッチ部7を操作し、左手で把手部6を握って刈刃3の位置を操作する。この際、スイッチ部7の操作は、安全レバー27を反時計方向に揺動させた後、スイッチレバー26を上方に倒すと、電動モータ14が作動してドライブシャフト12を通じて刈刃3が回転する。」

ウ 上記アおよびイを踏まえると、甲第6号証には、下記発明が記載されているといえる(以下「甲6発明」という。)。

「長尺状の操作棹としてのパイプ2の先端部に刈刃3を配置し、
刈刃3を電動モータ14及びバッテリー15からなる駆動部によって駆動するようにし、
駆動部4はパイプ2の基端部に設けられた電動草刈機1であって、
パイプ2の中間部の基端側寄りに設けられた懸吊部5と、懸吊部5の前方寄りに設けられた把手部6があり、
電動モータ14を作動させるスイッチ部7は懸吊部5と駆動部4の間に設けられ、スイッチ部7の後部側にグリップ部8が設けられ、
左手で把手部6を握り、右手でグリップ部8を把持してスイッチ部7を操作でき、
バッテリー15は駆動部4のバッテリーケース17内に収容され、
バッテリーケース17の後端部に開閉蓋20が設けられ、開閉蓋20を開けてバッテリー15の取出し、挿入を行い、
駆動部4の下方には、脚部11を突設し、草刈機1を地上に置く際は駆動部4は地上から離れ脚部11が地面に接触する、
電動草刈機1。」

(2) 甲第18号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第18号証には、以下の記載がある。
申立人が添付した抄訳に基づく(一部誤記を修正。)仮訳を付した。

ア 第5欄60行-第6欄47行
「DESCRIPTION OF EMBODIMENTS
Referring to FIG. 1, power string trimmer 10 consists of a motorized chassis 12 and a removable battery pack 14. Chassis 12 includes a head 16 with an internal electric motor (not shown) arranged to drive a partially shielded rotary string hub 18 with an extending string element 19 for cutting weeds and grasses. Head 16 is connected to an upper chassis housing 20 by a tube 22 through which wires conduct electrical power from battery pack 14 to the motor of head 16. The trimmer is held by both hands in use, with a forward stirrup grip 24 and a rear handle 26 on the battery pack. A forefinger-operable trigger 28 in handle 26 controls the flow of power from the battery pack to the trimmer motor, and a trigger lock 30 automatically locks the trigger in its "off" position until actuated, preventing inadvertent trigger operation.
(仮訳:図1を参照すると、電動ストリングトリマ10は、モータ式シャーシ12と、取り外し可能なバッテリパック14から構成される。シャーシ12は、雑草や草を切断するための延伸ストリング要素19を備える、部分的に遮蔽された回転ストリングハブ18を駆動するように配置された、内部電気モータ(図示せず)を備えるヘッド16を含んでいる、ヘッド16は、バッテリパック14からの電力をヘッド16のモータに伝達する配線が通過するチューブ22によって、上部シャーシハウジング20と接続されている。トリマは、使用時に両手で保持されるものであり、前方ストラップグリップ24と、バッテリパック上の後方ハンドル26を備えている。ハンドル26内の人差し指で操作可能なトリガ28は、バッテリパックからトリマのモータへの電力の流れを制御し、トリガロック30は、作業時まで自動的に「オフ」の位置にトリガをロックしており、不注意によるトリガ操作を防止する。)

Referring to FIGS. 2A-2C, battery pack 14 is readily attached to the upper chassis housing 20 of the trimmer in a two-motion sequence. First, as shown in FIG. 2A, the mounting faces of the battery pack 14 and upper chassis housing 20 are brought together in a motion perpendicular to the faces (indicated by arrow "A") with the alignment indicator 32 of the battery pack housing aligned with an "unlocked" indicator 34 of the upper chassis housing. At the end of this first motion, the battery pack 14 and upper chassis housing 20 are positioned as shown in FIG. 2B. Next, the battery pack and upper chassis housing mounting faces are slid across one another along their interface plane 35, as indicated by arrows "B" in FIG. 2B, until alignment indicator 32 is aligned with a "locked" indicator 36 of the upper chassis housing 20, and the mounting latch (discussed below with respect to FIGS. 6-8) snaps into place to securely retain the battery pack in place upon the upper chassis housing. Indicators 32, 34 and 36 are integrally molded as features of the plastic housings of the battery pack and upper chassis, and feature appropriate icons.
(仮訳:図2A-2Cを参照すると、バッテリパック14は、2つの動作手順によって、上部シャーシハウジング20に容易に取り付けられる。まず、図2Aに示すように、バッテリパックハウジングの位置合わせインジケータ32を上部シャーシハウジングの「アンロック」インジケータ34に位置合わせして、バッテリパック14と上部シャーシハウジング20の取付面を、それらの面に垂直な方向(矢印Aで示す)の動作によって一致させる。この最初の動作の終わりに、バッテリパック14と上部シャーシハウジング20は図2Bに示すように配置される。次に、バッテリパックと上部シャーシハウジングの取付面を、図2Bにおいて矢印Bで示すように、それらのインターフェース面35に沿って、位置合わせインジケータ32が上部シャーシハウジング20の「ロック」インジケータ36に位置合わせされて、取付ラッチ(図6-8に関して後述する)が所定の位置に収まり、バッテリパックが上部シャーシハウジングに対して所定の位置に保持されるまで、互いを横切るようにスライドさせる。インジケータ32、34および36は、バッテリパックおよび上部シャーシのプラスチック製のハウジングの面に一体的にモールド成形されており、適切なアイコンが備わっている。)

To remove battery pack 14 from upper chassis housing 20, the sequence of FIGS. 2A-2C is reversed. First, the user depresses a pair of latch release buttons 38 located on either side of the upper chassis housing (only one is shown in these views). Depressing the latch release buttons releases a battery pack mounting latch (not shown) and enables the user to slide the two mounting faces across each other to the position shown in FIG. 2B, where they may be separated perpendicularly as shown in FIG. 2A. With the battery pack mounted as shown in FIG. 2C, the internal configuration of the trigger mechanism and the mounting latch, as discussed in more detail below, disallows depressing latch release buttons 38 while trigger 28 is pulled, and disallows pulling the trigger while the latch release buttons are depressed. Thus, the trigger and latch cooperate to prevent contact arcing and inadvertent energizing of the trimmer motor during battery pack mounting and detachment, as well as accidental unlatching of the battery pack 14 from the chassis 12 (FIG. 1) while the power consuming device is operating.
(仮訳:上部シャーシハウジング20からバッテリパック14を取り外す際には、図2A-2Cの手順が逆になる。まず、ユーザは、上部シャーシハウジングの両側に配置された一対のラッチ解除ボタン38(一方のみがこれらの図に示されている)を押下する。ラッチ解除ボタンを押下すると、バッテリパック取付ラッチ(図示せず)が解除され、ユーザは、2つの取付面を図2Bに示す位置まで互いに横切るようにスライドさせることが可能になり、図2Bに示す位置では2つの取付面を図2Aに示すように垂直方向に分離させることができる。バッテリパックが図2Cに示すように取り付けられていると、トリガ機構および取付ラッチの内部構成は、以下でより詳細に説明するように、トリガ28が引かれている間は、ラッチ解除ボタン38が押下されることを禁止し、ラッチ解除ボタンが押下されている間は、トリガが引かれることを禁止する。したがって、トリガとラッチは協働して、バッテリパックの取り付けおよび取り外しの間に、トリマのモータの接点放電や不注意による通電を防止するとともに、電力を消費する装置が動作している間に、バッテリパック14がシャーシ12から偶発的にはずれてしまうことを防止する。)」

イ 図1より、チューブ22は長尺状であることがわかる。
また図2Aないし図2Cより、上部シャーシハウジング20側の取付面はチューブ22と反対側に設けられており、バッテリパック14は、上部シャーシハウジング20に対し上側からスライドさせて取り付けられていることがわかる。さらに、バッテリパック14は前記スライドに沿った方向で上部シャーシハウジング20より大きい寸法を有し、また上部シャーシハウジング20の長尺状のチューブ2のバッテリパック14の取付面側の下面は、前記スライドに沿った方向で、長尺状のチューブ2と接続される側の下面より下方に位置することがわかる。

ウ 上記アおよびイより、甲第18号証には、下記発明が記載されているといえる(以下「甲18発明」という。)。

「上部シャーシハウジング20と、雑草や草を切断するための延伸ストリング要素19を備える回転ストリングハブ18を備えるヘッド16とが、長尺状のチューブ22で接続され、
回転ストリングハブ18を駆動する電気モータと、電気モータに電力を伝達する取り外し可能なバッテリパック14を備えた電動ストリングトリマ10であって、
バッテリパック14は、上部シャーシハウジング20側の取付面とバッテリパック14の取付面をロック位置までスライドさせることにより上部シャーシハウジング20に取り付けられうものであり、上部シャーシハウジング20側において取付面はチューブ22と反対側で上下方向に設けられ、バッテリパック14は上部シャーシハウジング20に対し上方からスライドされて取り付けられ
バッテリパック14は前記スライドに沿った方向で上部シャーシハウジング20より大きい寸法を有し、
上部シャーシハウジング20の長尺状のチューブ2のバッテリパック14の取付面側の下面は、前記スライドに沿った方向で、長尺状のチューブ2と接続される側の下面より下方に位置する、電動ストリングトリマ10。」

(3) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
(ア) 甲6発明の「電動草刈機」は、本件発明の「電動作業機」に相当する。
そして甲6発明の「長尺状の操作棹としてのパイプ2」、「刈刃3」、「電動モータ14」及び「バッテリー15」は、それぞれ、本件発明1の「長尺状の操作棹」、「作業部」、「電動モータ」及び「バッテリ」に相当する。

(イ) 甲6発明の「電動モータ14」と「バッテリー15」からなる「駆動部4」について、技術常識として「電動モータ14」はむき出しの状態で配置されるのではなく何らかのハウジングに収められるものであるから、甲6発明の「駆動部4」は当然「ハウジング」を備えているものと認められる。

(ウ) 甲6発明の「グリップ部8」、「電動モータ14を作動させるスイッチ部7」は、それぞれ、本件発明1の「把持部」、「電動モータへの電力の供給を操作する操作部」に相当する。
ここで、甲6発明の「スイッチ部7」の「グリップ部8」との位置関係をみると、「スイッチ部7」は「右手でグリップ部8を把持して」「操作できる」位置に設けられているものであるから、これは本件発明1で「電動モータへの電力の供給を操作する操作部」が「把持部に設けられ」ていることに相当する。

(エ) 本件発明1において、バッテリは、前記ガイド部に沿った方向で前記ハウジングより小さい寸法を有していることに関し、甲6発明において、バッテリー15は、駆動部4のバッテリーケース17内に収容されるのでバッテリーケース17より小さい寸法を有することは明らかであるが、甲6発明は本件発明1とは前提となるバッテリの取り付け方が異なっているので、甲6発明において、バッテリー15がバッテリーケース17より小さい寸法を有することが、本件発明1において、バッテリはガイド部に沿った方向でハウジングより小さい寸法を有することに相当するとはいえない。

(オ) 甲6発明において、駆動部4でもっとも下方に位置するのが脚部11であるが、甲6発明では、脚部11が駆動部4のパイプ2と反対側に位置するか、パイプ2側に位置するか特定されていない(甲第6号証の図1、2を参照しても、脚部11が駆動部4のパイプ2と反対側に位置するか、パイプ2側に位置するか明確ではない。)。

(エ) 前記(ア)ないし(オ)から、本件発明1と甲6発明とは、

「長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングと、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作する、電動作業機。」

の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点1A] 本件発明1では、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲6発明では、バッテリー15は駆動部4のバッテリーケース17内に収容され、バッテリーケース17の後端部に開閉蓋20が設けられ、開閉蓋20を開けてバッテリー15の取出し、挿入を行う点。

[相違点2A] 本件発明1では、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置するのに対して、甲6発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3A] 本件発明1では、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリは、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部に沿った方向で長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングより小さい寸法を有するのに対して、甲6発明ではそのような特定はされていない点。

イ 判断
まず、相違点3Aについて検討する。
上記第3の7(1)に記載したように、申立人は、バッテリをスライド式でハウジングに取り付ける構成において、スライド方向でバッテリがハウジングよりも小さい寸法を有するものは、甲第21、22号証や、また充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19,20号証)から、当業者には広く知られたものである旨主張している。
しかし、上記充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)は、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングを有するものではなく(長尺状の操作棹を有するものではない)、よって、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間で、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係が特定されるものではない。
また、甲第21号証記載の手持ち式工作機械、甲第22号証記載の電池工具も、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングを有するものではなく(長尺状の操作棹を有するものではない)、加えて上方から挿入されることで取り付けられるバッテリを有するものでもない。
このように、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間で、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係を開示するものではない充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)あるいは甲第21、22号証の記載から、相違点3Aに係る本件発明1の構成を想到することは当業者が容易になし得るものではない。
さらに、上記第3の7(1)に記載したように、申立人が、バッテリをスライド式で取り付ける構成において、ハウジングにガイド部が形成され、バッテリがガイド部に沿って上方から挿入されることで取り付けられるとして提示する甲第18号証について検討する。
上記(2)ウのとおり、甲第18号証に記載の甲18発明では、バッテリパック14は、長尺状のチューブ22に接続される上部シャーシハウジング20に対し、上方からスライドされて取り付けられている。しかし、甲18発明においては、バッテリパック14はスライドに沿った方向で上部シャーシハウジング20より大きい寸法を有しており、また甲18発明に、そのバッテリパック14をスライドに沿った方向で上部シャーシハウジング20より小さくするという動機も見出せない。仮に、甲6発明に甲18発明を適用した上で、さらに充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)あるいは甲第21、22号証の記載事項から相違点3Aに係る本件発明1の構成を想到することを検討したとしても、上述したように、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間の寸法関係を開示するものではない充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)あるいは甲第21、22号証の記載事項を適用し、相違点3Aに係る本件発明1の構成を想到すること(バッテリパック14をスライドに沿った方向で上部シャーシハウジング20より小さくすること)はやはり当業者が容易になし得るものではない。
なお、他に申立人がバッテリをスライド式で取り付ける構成において、ハウジングにガイド部が形成され、バッテリがガイド部に沿って上方から挿入されることで取り付けられることに関して提示する甲第12ないし17号証は、いずれも、上方から挿入され取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間での、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係(スライド方向でバッテリがハウジングよりも小さい寸法を有する)は記載されていない。
以上のように、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は当業者が甲6発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、当業者が甲第6号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、甲第6号証を主引例とする取消理由7によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(4)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、当業者が甲第6号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、甲第6号証を主引例とする取消理由7によっては、請求項2ないし8に係る特許を取り消すことはできない。

(5)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲6発明とを対比する。
(ア) 甲6発明の「電動草刈機」は、本件発明9の「電動作業機」に相当する。
そして甲6発明の「長尺状の操作棹としてのパイプ2」、「刈刃3」、「電動モータ14」及び「バッテリー15」は、それぞれ、本件発明9の「長尺状の操作棹」、「作業部」、「電動モータ」及び「バッテリ」に相当する。

(イ) 甲6発明の「電動モータ14」と「バッテリー15」からなる「駆動部4」について、技術常識として「電動モータ14」はむき出しの状態で配置されるのではなく何らかのハウジングに収められるものであるから、甲6発明の「駆動部4」は当然「ハウジング」を備えているものと認められる。

(ウ) 甲6発明の「グリップ部8」、「電動モータ14を作動させるスイッチ部7」は、それぞれ、本件発明9の「把持部」、「電動モータへの電力の供給を操作する操作部」に相当する。
ここで、甲6発明の「スイッチ部7」の「グリップ部8」との位置関係をみると、「スイッチ部7」は「右手でグリップ部8を把持して」「操作できる」位置に設けられているものであるから、これは本件発明9で「電動モータへの電力の供給を操作する操作部」が「把持部に設けられ」ていることに相当する。

(エ) 本件発明9において、バッテリは、前記ガイド部に沿った方向で前記ハウジングより小さい寸法を有していることに関し、甲6発明において、バッテリー15は、駆動部4のバッテリーケース17内に収容されるのでバッテリーケース17より小さい寸法を有することは明らかであるが、甲6発明は本件発明1とは前提となるバッテリの取り付け方が異なっているので、甲6発明において、バッテリー15がバッテリーケース17より小さい寸法を有することが、本件発明9において、バッテリはガイド部に沿った方向でハウジングより小さい寸法を有することに相当するとはいえない。

(オ) 甲6発明において、駆動部4でもっとも下方に位置するのが脚部11であるが、甲6発明では、脚部11が駆動部4のパイプ2と反対側に位置するか、パイプ2側に位置するか特定されていない(甲第6号証の図1、2を参照しても、脚部11が駆動部4のパイプ2と反対側に位置するか、パイプ2側に位置するか明確ではない。)。

(エ) 前記(ア)ないし(オ)から、本件発明9と甲6発明とは、

「長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングと、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作する、電動作業機。」

の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点1B] 本件発明9では、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲6発明では、バッテリー15は駆動部4のバッテリーケース17内に収容され、バッテリーケース17の後端部に開閉蓋20が設けられ、開閉蓋20を開けてバッテリー15の取出し、挿入を行う点。

[相違点2B] 本件発明9では、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置するのに対して、甲6発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3B] 本件発明9では、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリは、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部に沿った方向で長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングより小さい寸法を有するのに対して、甲6発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点4B] 本件発明9では、長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングの上面に、凹部が形成されていると共に、前記凹部にバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、前記バッテリの残量を表示する残量表示部が設けられるのに対して、甲6発明ではそのような特定はされていない点。

イ 判断
まず、相違点3Bについて検討する。
本件発明1における相違点3Aについての検討と同様に、相違点3Bに係る本件発明9の構成を想到することは当業者が容易になし得るものではない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は当業者が甲6発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明9は、当業者が甲第6号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、甲第6号証を主引例とする取消理由7によっては、請求項9に係る特許を取り消すことはできない。

(6)本件発明10について
本件発明10は、本件発明9を更に減縮したものであるから、上記本件発明9についての判断と同様の理由により、当業者が甲第6号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、甲第6号証を主引例とする取消理由7によっては、請求項10に係る特許を取り消すことはできない。

8 取消理由8(甲第24号証に対する進歩性)について
(1) 甲第24号証
本理由において主引例とされる、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第24号証には、以下の記載がある。

ア 明細書1頁3?17行
「2.実用新案登録請求の範囲
内部に小型モーターを収容したモーターケース(1)の下方に、モーター軸に円鋸状の刈払刃(2)の中心をとりつけ、モーターケース(1)から突出する長杆(3)に操作ハンドル(4)をとりつけ、且モーターを作動するだめのスイツチ機構(11)を設けてなる電動刈払機に於て、長杆(3)の後端にバツテリー取付台(5)を固定し、所要蓄電量を大小2個のバツテリーに分け、小バツテリー(A)は前記小型モーター、モーターケース(1)、刈払刃(2)の総合重量と釣合う重量の大きさとしてバツテリー取付台(5)にとりつけて重鍾を兼ね、大バツテリー(B)は背のう(8)に収納して携行し、大小両バツテリー(A)(B)を使用してモーターに必要量の電力を供給するようにしてなる電動刈払機の構造。」

イ 明細書1頁18行?4頁15行
「3.考案の詳細な説明
この考案は、山野に育生する竹、葦を刈りとるための電動刈払機の改良に関するものであつて電動刈払機をコードレスにすることにより刈払作業がコードに制約されることなく行動目由であり刈払機のバランスがよく、且携行用バツテリーも比較的軽量とすることができる作業性を高めることかできる電動刈払機を提供しようとするものである。
図面に示す実施例について、この考案を詳細に説明すれば次の通りである。
(1)はモーターケースであつて内部に小型モーターを収容し、このモーター軸と同軸に円鋸状の刈払刃(2)が固定され、モーターの作動により回転するようになつている。(3)はパイプ状の長杆であつてモーターケース(1)から斜め上方に突設され、その中間より稍上方に二叉状の操作ハンドル(4)が設けられている。長杆(3)の先端には断面L状のバツテリー取付台(5)が固定されている。(6)(6)はバツテリー取付台(5)に設けた懸止爪であつて、このバツテリー取付台(5)には小バツテリー(A)をゴム紐(7)を懸止爪(6)にかけわたすことにより固定してある.。上記小バツテリー(A)は、電動刈払機の小モ-ターを作動して刈払作業をするに必要な蓄電量を2分して大小2個のバツテリー(A)(B)を形成した、その小バツテリーであって、その重量はその操作ハンドル(4)を握持して刈払作業中、刈払機先端のモーターケース(1)小型モーター、刈払刃(2)の総重量とバランスがとれる重量を有する大きさとして、バランスウエイトを兼ねている。再余の蓄電量は大バツテリー(B)を使用しこの大バツテリー(B)は背のう(8)に収容して刈払作業員が背負う。大バツテリー(B)、小バツテリー(A)共にその接続コード(9)(10)をパイプ状長杆(3)内を経て小型モーターに連結する。
刈払作業員は大バツテリー(B)を収容した背のう(8)を背負い、電動刈払機の操作ハンドル(4)を握持して刈払作業をおこなうのである。従来の電動刈払機は第3図に示すように、長杆(3)の先端にバランスウエイト(W)を固定し大型の発動発電機(12)からコード(13)により刈払機の電源を供給していた。このためコード(13)が邪魔になり行動範囲に制約を受け、作業性が悪いのみならす、バランスウエイト(W)ははバランスウエイトとしての役割しか有せずモーター作動のための動力源とはなつていなかった。
この考案に於ては、刈払機に別体の発動発電機からコードにより電力を供給することを止め、バツテリ一方式を採用し、而もこのバツテリーも、2個に分け小バツテリーは、刈払機先端の重量と重量バランスのとれる容積のものを使用し、大バツテリーは刈払作業に必要な蓄電量のうち上記小バツテリーの蓄電量を差引いた蓄電量を有する容積、重量のものを用いることができるから、その背負い重量は所要全蓄電量のバツテリーを背負う場合に比し軽量であり且コードレスであるため自由な作業行動が許されるのみならす、従来と同様バランスのよい電動発電機を提供することができる。」

ウ 上記アおよびイより、甲第24号証には、下記発明が記載されているといえる(以下「甲24発明」という。)。

「内部に小型モーターを収容したモーターケース(1)の下方に、モーター軸に円鋸状の刈払刃(2)の中心をとりつけ、モーターケース(1)から突出する長杆(3)に操作ハンドル(4)をとりつけ、且モーターを作動するだめのスイツチ機構(11)を設けてなる電動刈払機に於て、長杆(3)の後端に断面L状のバツテリー取付台(5)を固定し、
所要蓄電量を大小2個のバツテリーに分け、小バツテリー(A)は前記小型モーター、モーターケース(1)、刈払刃(2)の総合重量と釣合う重量の大きさとしてバツテリー取付台(5)にとりつけて重鍾を兼ね、大バツテリー(B)は背のう(8)に収納して携行し、大小両バツテリー(A)(B)を使用してモーターに必要量の電力を供給するようにし、
バツテリー取付台(5)に懸止爪(6)(6)を設け、ゴム紐(7)を懸止爪(6)にかけわたすことにより小バツテリー(A)をバツテリー取付台(5)に固定する、電動刈払機。」

(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲24発明とを対比する。
(ア) 甲24発明の「電動刈払機」は、本件発明1の「電動作業機」に相当する。
そして甲24発明の「長杆(3)」、「刈払刃(2)」、「小型モーター」、「操作ハンドル(4)」「スイツチ機構(11)」及び「小バツテリー(A)」は、それぞれ、本件発明1の「長尺状の操作棹」、「作業部」、「電動モータ」、「把持部」、「操作部」及び「バッテリ」に相当する。

(イ) 甲24発明は長杆(3)の後端に「断面L状のバツテリー取付台(5)」を有し、本件発明は長尺状の操作棹の一端に「ハウジング」を有することについて、本件発明1の「ハウジング」はそれに沿ってバッテリが挿入され取り付けられる「ガイド部」を有するものであるから、両者は長尺状の操作棹の一端に「バッテリ取付部」を有する点で共通する。

(ウ) 甲24発明において、「小バツテリー(A)」と「断面L状のバツテリー取付台(5)」の寸法関係は特定されていない。

(エ) 甲24発明において、バツテリー取付台(5)は断面L状であり、底辺部分にとくに他より下方に位置する部分がある旨の記載はない。

(オ) 前記(ア)ないし(エ)から、本件発明1と甲24発明とは、
「長尺状の操作棹の一端に接続されたバッテリ取付部と、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作し、
前記バッテリ取付部の前記操作棹と接続される側と反対側には、バッテリの取付面が形成される、電動作業機。」
の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点1C] バッテリの取付構成について、本件発明1では、長尺状の操作棹の一端にはハウジングが接続され、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と略直交する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲24発明では、長杆(3)の後端に断面L状のバツテリー取付台(5)を固定し、バツテリー取付台(5)に懸止爪(6)(6)を設け、ゴム紐(7)を懸止爪(6)にかけわたすことにより小バツテリー(A)をバツテリー取付台(5)に固定する点。

[相違点2C] 本件発明1では、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置するのに対して、甲24発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3C] 本件発明1では、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリは、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部に沿った方向で長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングより小さい寸法を有するのに対して、甲24発明ではそのような特定はされていない点。

イ 判断
まず、相違点3Cについて検討する。
上記第3の8(1)に記載したように、申立人は、バッテリをスライド式でハウジングに取り付ける構成において、スライド方向でバッテリがハウジングよりも小さい寸法を有するものは、甲第21、22号証や、また充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19,20号証)から、当業者には広く知られたものである旨主張している。
しかし、上記充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)は、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングを有するものではなく(長尺状の操作棹を有するものではない)、よって、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間で、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係が特定されるものではない。
また、甲第21号証記載の手持ち式工作機械、甲第22号証記載の電池工具も、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングを有するものではなく(長尺状の操作棹を有するものではない)、加えて上方から挿入されることで取り付けられるバッテリを有するものでもない。
このように、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間で、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係を開示するものではない充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)あるいは甲第21、22号証の記載から、相違点3Cに係る本件発明1の構成を想到することは当業者が容易になし得るものではない。
さらに、上記第3の8(1)に記載したとおり、申立人が、バッテリをスライド式で取り付ける構成において、ハウジングにガイド部が形成され、バッテリがガイド部に沿って上方から挿入されることで取り付けられるものとして提示する甲第18号証、さらに甲第12ないし17号証をみても、上記7(3)で検討したように、やはり相違点3Cに係る本件発明1の構成を想到することは当業者が容易になし得るものではない。
以上のように、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は当業者が甲24発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、当業者が甲第24号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、甲第24号証を主引例とする取消理由8によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(3)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、当業者が甲第24号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、甲第24号証を主引例とする取消理由8によっては、請求項2ないし8に係る特許を取り消すことはできない。

(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明1と甲24発明とを対比する。
(ア) 甲24発明の「電動刈払機」は、本件発明9の「電動作業機」に相当する。
そして甲24発明の「長杆(3)」、「刈払刃(2)」、「小型モーター」、「操作ハンドル(4)」「スイツチ機構(11)」及び「小バツテリー(A)」は、それぞれ、本件発明9の「長尺状の操作棹」、「作業部」、「電動モータ」、「把持部」、「操作部」及び「バッテリ」に相当する。

(イ) 甲24発明は長杆(3)の後端に「断面L状のバツテリー取付台(5)」を有し、本件発明は長尺状の操作棹の一端に「ハウジング」を有することについて、本件発明9の「ハウジング」はそれに沿ってバッテリが挿入され取り付けられる「ガイド部」を有するものであるから、両者は長尺状の操作棹の一端に「バッテリ取付部」を有する点で共通する。

(ウ) 甲24発明において、「小バツテリー(A)」と「断面L状のバツテリー取付台(5)」の寸法関係は特定されていない。

(エ) 甲24発明において、バツテリー取付台(5)は断面L状であり、底辺部分にとくに他より下方に位置する部分がある旨の記載はない。

(オ) 前記(ア)ないし(エ)から、本件発明9と甲24発明とは、
「長尺状の操作棹の一端に接続されたバッテリ取付部と、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作し、
前記バッテリ取付部の前記操作棹と接続される側と反対側には、バッテリの取付面が形成される、電動作業機。」
の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点1D] バッテリの取付構成について、本件発明9では、長尺状の操作棹の一端にはハウジングが接続され、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、操作棹の軸方向と略直交する方向に延びるガイド部が形成され、バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられるのに対して、甲24発明では、長杆(3)の後端に断面L状のバツテリー取付台(5)を固定し、バツテリー取付台(5)に懸止爪(6)(6)を設け、ゴム紐(7)を懸止爪(6)にかけわたすことにより小バツテリー(A)をバツテリー取付台(5)に固定する点。

[相違点2D] 本件発明9では、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置するのに対して、甲24発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3D] 本件発明9では、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリは、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部に沿った方向で長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングより小さい寸法を有するのに対して、甲24発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点4D] 本件発明9では、長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングの上面に、凹部が形成されていると共に、前記凹部にバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、前記バッテリの残量を表示する残量表示部が設けられるのに対して、甲24発明ではそのような特定はされていない点。

イ 判断
まず、相違点3Dについて検討する。
本件発明1における相違点3Cについての検討と同様に、相違点3Dに係る本件発明9の構成を想到することは当業者が容易になし得るものではない。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は当業者が甲24発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明9は、当業者が甲第24号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、甲第24号証を主引例とする取消理由8によっては、請求項9に係る特許を取り消すことはできない。

(5)本件発明10について
本件発明10は、本件発明9を更に減縮したものであるから、上記本件発明9についての判断と同様の理由により、当業者が甲第24号証記載の発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、甲第24号証を主引例とする取消理由8によっては、請求項10に係る特許を取り消すことはできない。

9 取消理由9(拡大先願)について
(1) 甲第27号証
本理由において主引例とされる、本件特許に係る出願の出願日前に出願され、本件特許に係る出願の出願日後に出願公開された特許出願である特願2008-206927号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(甲第27号証)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 操作棹と、
前記操作棹の前端に設けられており、刈刃を回転可能に支持する刈込ユニットと、
前記操作棹の後端に設けられており、前記刈刃を駆動するモータを内蔵する本体ユニットと、
前記操作棹の内部に設けられており、前記本体ユニットから前記刈刃ユニットへ前記モータの出力トルクを伝達する伝達シャフトを備え、
前記操作棹の後端部分には、その外周面にアダプタ部材が固定されており、
前記本体ユニットには、前記アダプタ部材が固定された操作棹の後端部分を受け入れる棹挿入穴が形成されていることを特徴とする刈払機。」

イ 「【実施例】【0015】 本発明を実施した実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例の刈払機10の外観を示している。刈払機10は、雑草等の刈り払い作業に用いられる電動工具である。
図1に示すように、刈払機10は、操作棹30と、操作棹30の前端30aに設けられている刈刃ユニット20と、操作棹30の後端30bに設けられている本体ユニット40を備えている。操作棹30は、中空のパイプ形状を有しており、直線状に伸びている。刈刃ユニット20には、刈刃12を回転可能に取り付けられている。本体ユニット40には、刈刃12を駆動するためのモータ46(図2参照)が収容されている。また、本体ユニット40には、モータ46に電力を供給する電池パック70が着脱可能に取り付けられている。・・・
【0016】 操作棹30には、利用者が把持するためのハンドル34が設けられている。ハンドル34は、右ハンドル34aと左ハンドル34bによって構成されている。右ハンドル34aには、トリガ式の起動スイッチ33が設けられている。起動スイッチ33は、電気コード36によって本体ユニット40と電気的に接続されている。電気コード36は、本体ユニット40から操作棹30に沿って右ハンドル34aまで配索されている。起動スイッチ33がオン操作されると、本体ユニット40のモータ46が回転し、起動スイッチ33がオフ操作されると、本体ユニット40のモータ46は停止する。
本体ユニット40には、スタンド66が設けられている。スタンド66は、本体ユニット40から突出するように設けられている。スタンド66は、刈払機10が地面に載置された際に、地面に当接して刈払機10を支持する。」

ウ 「【0018】 図2に示すように、本体ユニット40は、本体ハウジング42を備えている。本体ユニット40の前部40aには、操作棹30の後端30bが固定されている。本体ユニット40の後部40bには、電池パック70が着脱される電池パック装着部64が設けられている。本体ハウジング42の下部には、前述したスタンド66が着脱可能にボルト留めされている。スタンド66の先端部分には、地面等に当接するための接地面66aが形成されている。」

エ 「【0022】 次に、図2、図5を参照して、本体ユニット40における電池パック70の取付構造について説明する。図2に示すように、本体ユニット40の後部40bには、電池パック装着部64が形成されている。電池パック装着部64は、電池パック70を着脱可能な構造を有している。図5に示すよう、電池パック装着部64は、電池パック70をスライド可能に受け入れる。図5中の矢印Z1、Z2は、電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向を示している。電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向は、操作棹30の中心軸Xと略直交している。なお、下向きの矢印Z1は、電池パック70の取り付け時のスライド方向を示しており、上向きの矢印Z2は、電池パック70の取り外し時のスライド方向を示している。このように、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向は下方を向いており、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向は上方を向いている。正確に言えば、刈刃12の回転軸Y及び操作棹30の中心軸Xを鉛直面内に位置させるとともに、操作棹30の中心軸Xを水平面内に位置させたときに、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向くように構成されている。
【0023】 上記したように、本実施例の刈払機10では、電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向(Z1,Z2)が、操作棹30の中心軸Xに対して平行でなく、操作棹30の中心軸Xに対して角度を成すように構成されている。この構成によると、利用者が操作棹30を把持しながら電池パック70を着脱する際に、操作棹30を把持している手が滑りにくく、操作棹30及び電池パック70に力を加えやすい。それにより、電池パック70の着脱を容易に行うことができる。ここで、電池パック70のスライド方向(Z1,Z2)が、操作棹30の中心軸Xに対して必ずしも直交する必要はない。ただし、電池パック70のスライド方向(Z1,Z2)と操作棹30の中心軸Xとが成す角度は、大きいほど好ましく、特に45°以上とすると顕著な効果が得られることが確認されている。
また、本実施例の刈払機10では、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が上方を向くように構成されている。それにより、スタンド66を利用し、刈払機10を地面に載置した状態で電池パック70を着脱する際に、電池パック70やそれを把持する利用者の手が地面に干渉するようなことがない。」

オ 「【図面の簡単な説明】
【0039】【図1】実施例の刈払機の外観を示す図。
【図2】本体ユニットの構成を示す断面図。」

カ 図1及び2より、スタンド66は本体ユニット40の前部40a寄りに位置することがわかる。
また図1及び2より、取り付け時のスライド方向でみて、電池パック70の寸法は本体ユニット40より小さくはないことが分かる。

キ 上記アないしカより、甲第27号証には、下記発明が記載されているといえる(以下「甲27発明」という。)。
「直線状に伸びている操作棹30と、
操作棹30の前端に設けられており、刈刃12を回転可能に支持する刈込ユニット20と、
操作棹30の後端に設けられており、刈刃12を駆動するモータ46を内蔵する本体ユニット40とを備え、
操作棹30には、利用者が把持するためのハンドル34が設けられ、
ハンドル34には、オン操作されるとモータ46が回転し、オフ操作されると停止する起動スイッチ33が設けられ、
本体ユニット40の前部40aには、操作棹30の後端30bが固定され、本体ユニット40の後部40bには、モータ46に電力を供給する電池パック70が着脱される電池パック装着部64が設けられ、
本体ユニット40の前部40a寄りには、刈払機10が地面に載置された際に、地面に当接して刈払機10を支持するスタンド66が、本体ユニット40から突出するように設けられ、
操作棹30の中心軸Xを水平面内に位置させたときに電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向は鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向き、
取り付け時のスライド方向でみて、電池パック70の寸法は本体ユニット40より小さくはない、
電動工具である刈払機10。」

(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲27発明とを対比する。
(ア) 甲27発明の「電動工具である刈払機10」は、本件発明1の「電動作業機」に相当する。
そして甲27発明の「直線状に伸びている操作棹30」、「刈刃12を回転可能に支持する刈込ユニット20」、「モータ46」、「ハンドル34」「起動スイッチ33」及び「電池パック70」は、それぞれ、本件発明1の「長尺状の操作棹」、「作業部」、「電動モータ」、「把持部」、「操作部」及び「バッテリ」に相当する。
また、甲27発明の「本体ユニット40」は「操作棹30の後端30bが固定され」るものであり、本件発明1の「ハウジング」に相当する。

(イ) 甲27発明は、本体ユニット40の操作棹30の後端30bが固定される前部40aとは後部40bに電池パック装着部64が設けられ、操作棹30の中心軸Xを水平面内に位置させたときに電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向くものであり、すなわち電池パック70のスライド方向は操作棹30の中心軸Xと直交する方向である。甲27発明では該方向のスライドが沿う「ガイド部」について特定されていないが、「電池パック装着部64」において「電池パック70」を「スライド」して取り付け取り外しする以上、その「スライド」が沿う部分が「電池パック装着部64」に存在することは明らかである。
よって、甲27発明の「本体ユニット40の前部40aには、操作棹30の後端30bが固定され、本体ユニット40の後部40bには、モータ46に電力を供給する電池パック70が着脱される電池パック装着部64が設けられ、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向く」ことは、本件発明1の「前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と略直交する方向に延びるガイド部が形成され、前記バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられる」ことに相当する。

(ウ) 本件発明1で、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側の下面は、ガイド部に沿ってバッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置しているのに対し、甲27発明において、スタンド66は刈払機10が地面に載置された際に、地面に当接して刈払機10を支持するように本体ユニット40から突出するように設けられており、すなわち本体ユニット40でもっとも下方に位置しているが、これは本体ユニット40の前部40a寄りに設けられている。

(エ) 前記(ア)ないし(ウ)から、本件発明1と甲27発明とは、
「長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングと、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作し、
前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と略直交する方向に延びるガイド部が形成され、
前記バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられる電動作業機。」
の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点2E] 本件発明1では、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置するのに対して、甲27発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3E] 本件発明1では、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリは、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部に沿った方向で長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングより小さい寸法を有するのに対して、甲27発明では、取り付け時のスライド方向でみて、電池パック70の寸法は本体ユニット40より小さくはない点。

イ 判断
まず、相違点3Eについて検討する。
上記第3の9(1)に記載したように、申立人は、バッテリをスライド式でハウジングに取り付ける構成において、スライド方向でバッテリがハウジングよりも小さい寸法を有するものは、甲第21、22号証や、また充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19,20号証)から、当業者には広く知られたものである旨主張している。
しかし、上記充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)は、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングを有するものではなく(長尺状の操作棹を有するものではない)、よって、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間で、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係が特定されるものではない。
また、甲第21号証記載の手持ち式工作機械、甲第22号証記載の電池工具も、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングを有するものではなく(長尺状の操作棹を有するものではない)、加えて上方から挿入されることで取り付けられるバッテリを有するものでもない。
このように、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリと、長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングとの間で、ガイド部に沿った方向における寸法の大小関係を開示するものではない充電式チェーンソーUC121DRF(甲第19、20号証)あるいは甲第21、22号証の記載から、相違点3Eに係る本件発明1の構成が周知とはいえない。
ここで、申立人が、バッテリをスライド式で取り付ける構成において、ハウジングにガイド部が形成され、バッテリがガイド部に沿って上方から挿入されることで取り付けられるものとして提示する甲第18号証、さらに甲第12ないし17号証を参照しても、やはり相違点3Eに係る本件発明1の構成が周知とはいえない。
以上のように、その余の相違点について検討するまでもなく、相違点3Eにおいて甲27発明と本件発明1とは実質的に相違している。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、本件特許に係る出願の出願日前に出願され、本件特許に係る出願の出願日後に出願公開された特許出願である特願2008-206927号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載された発明(甲第27号証)と同一ではなく、取消理由9によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(3)本件発明2、3、6及び8について
本件発明2、3、6及び8は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件特許に係る出願の出願日前に出願され、本件特許に係る出願の出願日後に出願公開された特許出願である特願2008-206927号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載された発明(甲第27号証)と同一ではなく、取消理由9によっては、請求項2、3、6及び8に係る特許を取り消すことはできない。

(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲27発明とを対比する。
(ア) 甲27発明の「電動工具である刈払機10」は、本件発明9の「電動作業機」に相当する。
そして甲27発明の「直線状に伸びている操作棹30」、「刈刃12を回転可能に支持する刈込ユニット20」、「モータ46」、「ハンドル34」「起動スイッチ33」及び「電池パック70」は、それぞれ、本件発明1の「長尺状の操作棹」、「作業部」、「電動モータ」、「把持部」、「操作部」及び「バッテリ」に相当する。
また、甲27発明の「本体ユニット40」は「操作棹30の後端30bが固定され」るものであり、本件発明9の「ハウジング」に相当する。

(イ) 甲27発明は、本体ユニット40の操作棹30の後端30bが固定される前部40aとは後部40bに電池パック装着部64が設けられ、操作棹30の中心軸Xを水平面内に位置させたときに電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向くものであり、すなわち電池パック70のスライド方向は操作棹30の中心軸Xと直交する方向である。甲27発明では該方向のスライドが沿う「ガイド部」について特定されていないが、「電池パック装着部64」において「電池パック70」を「スライド」して取り付け取り外しする以上、その「スライド」が沿う部分が「電池パック装着部64」に存在することは明らかである。
よって、甲27発明の「本体ユニット40の前部40aには、操作棹30の後端30bが固定され、本体ユニット40の後部40bには、モータ46に電力を供給する電池パック70が着脱される電池パック装着部64が設けられ、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向く」ことは、本件発明9の「前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と略直交する方向に延びるガイド部が形成され、前記バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられる」ことに相当する。

(ウ) 本件発明9で、ハウジングの操作棹と接続される側と反対側の下面は、ガイド部に沿ってバッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置しているのに対し、甲27発明において、スタンド66は刈払機10が地面に載置された際に、地面に当接して刈払機10を支持するように本体ユニット40から突出するように設けられており、すなわち本体ユニット40でもっとも下方に位置しているが、これは本体ユニット40の前部40a寄りに設けられている。

(エ) 前記(ア)ないし(ウ)から、本件発明9と甲27発明とは、
「長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングと、
前記操作棹の他端に接続される作業部と、
電力供給を受けて前記作業部を動作させる電動モータと、
前記操作棹に設けられた把持部と、
前記把持部に設けられ、前記電動モータへの電力の供給を操作する操作部と、を備えた電動作業機において、
前記電動モータは、着脱可能に構成されたバッテリからの電力供給によって動作し、
前記ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側には、前記操作棹の軸方向と略直交する方向に延びるガイド部が形成され、
前記バッテリは、前記ガイド部に沿って、上方から挿入されることで取り付けられる電動作業機。」
の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点2F] 本件発明9では、ハウジングの前記操作棹と接続される側と反対側の下面は、前記ガイド部に沿って前記バッテリが挿入される方向で前記バッテリ及び前記操作棹と接続される側の下面より下方に位置するのに対して、甲27発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3F] 本件発明9では、上方から挿入されることで取り付けられるバッテリは、操作棹の軸方向と交差する方向に延びるガイド部に沿った方向で長尺状の操作棹の一端に接続されるハウジングより小さい寸法を有するのに対して、甲27発明では、取り付け時のスライド方向でみて、電池パック70の寸法は本体ユニット40より小さくはない点。

[相違点4F] 本件発明9では、長尺状の操作棹の一端に接続されたハウジングの上面に、凹部が形成されていると共に、前記凹部にバッテリから電動モータへの電源供給を可能とする電源スイッチと、前記バッテリの残量を表示する残量表示部が設けられるのに対して、甲27発明ではそのような特定はされていない点。

イ 判断
まず、相違点3Fについて検討する。
本件発明1における相違点3Eについての検討と同様に、相違点3Fは実質的な相違点である。
以上のように、その余の相違点について検討するまでもなく、相違点3Fにおいて甲27発明と本件発明9とは実質的に相違している。

(5)本件発明10について
本件発明10は、本件発明9を更に減縮したものであるから、上記本件発明9についての判断と同様の理由により、本件特許に係る出願の出願日前に出願され、本件特許に係る出願の出願日後に出願公開された特許出願である特願2008-206927号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載された発明(甲第27号証)と同一ではなく、取消理由9によっては、請求項10に係る特許を取り消すことはできない。


第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-17 
出願番号 特願2014-179383(P2014-179383)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A01D)
P 1 651・ 536- Y (A01D)
P 1 651・ 113- Y (A01D)
P 1 651・ 121- Y (A01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 中田 誠
前川 慎喜
登録日 2015-12-11 
登録番号 特許第5850113号(P5850113)
権利者 日立工機株式会社
発明の名称 電動作業機  
代理人 青稜特許業務法人  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
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