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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C02F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C02F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C02F
管理番号 1324893
異議申立番号 異議2016-701048  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-11 
確定日 2017-02-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第5915834号「浄化処理材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5915834号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5915834号は、平成23年8月31日(優先権主張 平成22年10月29日 日本国(JP))に出願された特願2011-188651号について、平成28年4月15日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1-4に係る特許に対し、特許異議申立人 コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーションにより特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明の認定
上記特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項ごとに「本件発明1」-「本件発明4」という。)。

「【請求項1】
酸化マグネシウム表面にハイドロタルサイトが形成された浄化処理材の製造方法であって、酸化マグネシウムと可溶性アルミニウム塩とを水に添加する工程と、pH7?11の液性下で、酸化マグネシウムの表面を溶解させると共にその他は未溶解部分として残し、溶解した酸化マグネシウムと可溶性アルミニウム塩とを反応させることによって上記酸化マグネシウムの未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成された浄化処理材を生成させる反応工程と、この浄化処理材を沈降させて固液分離する固液分離工程を有することを特徴とする有害物質含有水の浄化処理材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する製造方法において、固液分離した浄化処理材の一部または全部を反応工程に返送してハイドロタルサイトの形成を促進する有害物質含有水の浄化処理材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する製造方法において、酸化マグネシウムと可溶性アルミニウム塩とを水に添加する工程として、可溶性アルミニウム塩を水に溶解して反応工程に送り、該反応工程において酸化マグネシウムを添加し、あるいは、固液分離した浄化処理材の一部または全部に酸化マグネシウムを添加して反応工程に返送することによって酸化マグネシウムを添加する有害物質含有水の浄化処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載する製造方法において、沈降初期の酸化マグネシウム量の多い浄化処理材スラリーを固液分離して反応工程に返送する有害物質含有水の浄化処理材の製造方法。」

第3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1-5号証(以下、「甲1-5」という。)を提出し、下記申立理由1)-4)により、本件発明1-4に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消すべきものである旨、主張している。

1)本件発明1は、本件特許の優先日前に発行された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本件発明1-4は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2)本件発明1は、本件特許の優先日前に発行された甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、本件発明1-4は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3)本件発明1-4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
4)本件発明1-4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。

甲1:国際公開第2007/112509号
甲2:国際公開第2010/105303号
甲3:アルミン酸ナトリウムの安全データシート
甲4:酸化マグネシウムの安全データシート
甲5:特許第5915834号公報(本件特許公報)

1.申立理由1)について
(1)甲1の記載事項
甲1には、「REMEDIATION OF GROUNDWATER」(発明の名称)について、次の記載がある。なお、日本語訳については、甲1に添付された抄訳文を参考に作成した。
(ア)「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for remediation of groundwater. In another aspect, the present invention relates to a method for management of in situ leaching of an ore body or to a heap leaching method or to stabilization of an ore body or waste material.」(第1頁第3行-第7行)
(日本語訳:「[本発明の分野]
本発明は、地下水を浄化する方法に関する。別の観点では、本発明は、in situでの鉱体浸出を管理する方法、堆積浸出方法、又は鉱体若しくは廃棄物の安定化に関する。」)
(イ)「Layered double hydroxides (LDH)」(第1頁第31行)
(日本語訳:「層状複水酸化物(LDH)」)
(ウ)「Layered double hydroxides most commonly formed by the coprecipitation of divalent (e.g. Mg^(2+), Fe^(2+)) and trivalent (e.g. Al^(3+), Fe^(3+)) metal cation solutions at moderate to high pH」(第2頁第2行-第4行)
(日本語訳:「層状複水酸化物は、二価(例えば、Mg^(2+)、Fe^(2+))及び三価(例えば、Al^(3+)、Fe^(3+))の金属カチオン溶液の中程度?高いpHでの共沈によって、最も一般的に形成される。」)
(エ)「Common forms of layered double hydroxides comprise Mg^(2+) and Al^(3+)(commonly known as hydrotalcites)」(第2頁第12行-第13行)
(日本語訳:「層状複水酸化物の一般的な型はMg^(2+)及びAl^(3+)を含む(ハイドロタルサイトとして一般に知られている)」)
(オ)「Layered double hydroxides are generally unstable below a pH of approximately 5 」(第3頁第8行-第9行)
(日本語訳:「層状複水酸化物は、一般的に、pH約5未満で不安定である」)
(カ)「 In a first aspect, the present invention provides a groundwater remediation method for treating acidic or alkaline groundwater containing divalent or trivalent metal cations, the method including the step of injecting a slurry or suspension of solid alkaline material into the ground, said slurry or suspension being injected into one or more regions such that the groundwater contacts the solid alkaline material and the divalent and trivalent metal cations react to form a layered double hydroxide (LDH) material.」(第6頁第1行-第6行)
(日本語訳:「第1の観点では、本発明は、二価又は三価の金属カチオンを含む酸性又はアルカリ性の地下水を処理するための地下水浄化方法であって、固体アルカリ性物質のスラリー又は懸濁液を地中に注入する工程であって、地下水が固体アルカリ性物質と接触し、二価及び三価の金属カチオンが反応して層状複水酸化物(LDH)物質を形成するように、前記スラリー又は懸濁液を1以上の領域に注入する前記工程を含む前記方法を提供する。」)
(キ)「The solid alkaline material may be, for example, lime, calcium hydroxide, magnesia or magnesium hydroxide or a combination of two or more of the above or other alkaline materials or amendments as required. Preferably, the solid alkaline material is magnesia or magnesium hydroxide or a combination thereof. Other reagents such as, but not limited to, aluminate and/or silicate anions may also be added with the magnesia or magnesium hydroxide to achieve the desired system geochemistry」(第6頁第11行-第16行)
(日本語訳:「固体アルカリ性物質は、例えば、石灰、水酸化カルシウム、マグネシア又は水酸化マグネシウム・・・・・・でありうる。好ましくは、固体アルカリ性物質は、マグネシア若しくは水酸化マグネシウム又はそれらの組み合わせである。他の試薬、例えば、これらに限定されないが、アルミン酸塩及び/又はケイ酸塩アニオンを、望ましいシステム地球化学を達成するために、マグネシア又は水酸化マグネシウムと一緒に加えてもよい。」)
(ク)「 It is also possible to add other components (for example, reagents such as silicate and/or aluminate) to the slurry in order to improve the remediation of the groundwater.」(第8頁第17行-第19行)
(日本語訳:「地下水の浄化を高めるために、他の成分(例えば、ケイ酸塩及び/又はアルミン酸塩などの試薬)をスラリーに加えることも可能である。」
(ケ)「 The method of the first aspect of the present invention results in the in situ formation of layered double hydroxide materials. These materials are solids. These materials are generally stable at circumneutral to alkaline pH (usually pH>5). Thus, formation of the layered double hydroxide materials removes metal cations from the groundwater. Advantageously, the layered double hydroxide materials also include exchangeable anions in their interlayer spaces, which anions may ion exchange with other deleterious anions in the groundwater, such as arsenic containing anions and phosphorus containing anions. This further remediates the groundwater.」(第8頁第29行-第9頁第4行)
(日本語訳:「本発明の第1の観点の方法により、in situで層状複水酸化物が形成される。これらの物質は固体である。これらの物質は、一般的に、中性付近?アルカリ性のpH(通常pH>5)で安定である。そのため、層状複水酸化物の形成によって金属カチオンが地下水から除去される。有利なことに、層状複水酸化物はその中間層スペースに交換可能なアニオンも含み、このアニオンが地下水中の他の有害なアニオン(例えば、ヒ素含有アニオン、リン酸含有アニオン)とイオン交換しうる。これによって地下水がさらに浄化される。」)
(コ)「 The layered double hydroxide formed may be hydrotalcite.」(第9頁第5行)
(日本語訳:「形成した層状複水酸化物はハイドロタルサイトでありうる。」)
(サ)「 Although the layered double hydroxide material formed in situ is stable at alkaline pH, if the plume of acidic groundwater is very large or is replenished (for example, by further acid contamination of the groundwater), there is a risk that the magnesia or the magnesium hydroxide injected into the ground could become depleted. If this occurs, the pH could decrease to a level where the layered double hydroxide material could dissolve, thereby again liberating the metal cations. To avoid this, an overdose of slurry (excess to that required for neutralization of acidity and/or formation of a layered double hydroxide) could be used. Alternatively or additionally, further injection of a slurry of calcined magnesia or magnesium hydroxide (and other reagents as required) could be carried out.」(第9頁第17行-第25行)
(日本語訳:「in situで形成した層状複水酸化物はアルカリ性のpHで安定であるが、酸性地下プルームが大量である又は(例えば、地下水の更なる酸汚染により)補充されている場合には、地中に注入したマグネシア又は水酸化マグネシウムが枯渇するリスクがある。これが起こると、層状複水酸化物が溶解するレベルにまでpHが低下し、これによって金属カチオンが再び放出されてしまう。これを避けるために、(酸性の中和及び/又は層状複水酸化物の形成に必要とされる量を超える)過剰量のスラリーを使用することができる。或いは又は加えて、焼成マグネシア又は水酸化マグネシウム(及び必要に応じて他の試薬)のスラリーをさらに注入することができる。」)
(シ)「In all aspects of the present invention, the method may further include the step of conducting a pre-treatment to facilitate the formation of a desired or pre-determined layered double hydroxide material. For example, where the site being treated has insufficient levels of Al-cations for hydrotalcite formation, the site may be treated to increase the level of Al-cations in the soil or groundwater to promote the formation of hydrotalcite as the predominant layered double hydroxide.
For example, an additional type of (pre-) amendment may involve the pre- injection of Al as an acidified solution to yield a desired range of trivalent cation ratios (Al/(A1+Fe)) expressed as mole fractions ranging from that present in the groundwater up to mole ratios of Al/(A1+Fe) of e.g. >0.9. On this basis, a specific type of layered double hydroxide mineral may be formed such as hydrotalcite which will be more resistant to changes in the redox geochemistry of the groundwater. Similarly a combination of reagents such as for example calcined magnesia and sodium aluminate may be added simultaneously. Other pretreatments will also be apparent.」(第18頁第6行-第18行)
(日本語訳:「本発明の全ての観点において、本方法は、望ましい又は所定の層状複水酸化物の形成を促進させるために前処理を行う工程を更に含みうる。例えば、処理する場所が、層状複水酸化物を形成させるのに十分な濃度のAlカチオンを含んでいない場合、主な層状複水酸化物としてのハイドロタルサイトの形成を促進させるために、この場所を、土壌又は地下水中のAlカチオン濃度を増加させるように処理してもよい。
例えば、・・・・・・。同様に、試薬、例えば、焼成マグネシア及びアルミン酸ナトリウムの組み合わせを同時に加えてもよい。」
(ス)「1. A groundwater remediation method for treating acidic or alkaline groundwater containing divalent or bivalent metal cations, the method including the step of injecting a slurry or suspension of solid alkaline material into the ground, said slurry or suspension being injected into one or more regions such that the groundwater contacts the solid alkaline material and the divalent and trivalent metal cations react to form a layered double hydroxide (LDH) material.」(第24頁第3行-第8行)
(日本語訳:「[請求項1]
二価又は三価の金属カチオンを含む酸性又はアルカリ性の地下水を処理するための地下水浄化方法であって、固体アルカリ性物質のスラリー又は懸濁液を地中に注入する工程であって、地下水が固体アルカリ性物質と接触し、二価及び三価の金属カチオンが反応して層状複水酸化物(LDH)物質を形成するように、前記スラリー又は懸濁液を1以上の領域に注入する前記工程を含む前記方法。」)

(2)引用発明の認定
「(1)甲1の記載事項」によれば、甲1には、
「地下水を浄化する方法であって、
マグネシア及びアルミン酸塩(例えば、アルミン酸ナトリウム)をアルカリ性の地下水に注入し、
マグネシア、アルミン酸塩、及びアルカリ性の地下水中の二価又は三価の金属カチオンが反応してハイドロタルサイトを形成し、
ハイドロタルサイトの形成によって、地下水中の二価又は三価の金属カチオン及び有害なアニオン(例えば、ヒ素含有アニオン、リン酸含有アニオン)が除去される、前記方法。」が記載されている(以下、「甲1発明」という。)と認められる。

(3)本件発明1と甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも下記(相違点1)、(相違点2)で相違している。

(相違点1)
本件発明1では、「pH7?11の液性下で、酸化マグネシウムの表面を溶解させると共にその他は未溶解部分として残し、溶解した酸化マグネシウムと可溶性アルミニウム塩とを反応させることによって上記酸化マグネシウムの未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成」されているのに対し、甲1発明では、ハイドロタルサイトがどのように形成されているのか明確でない点。

(相違点2)
本件発明1は、「浄化処理材の製造方法」であって、「未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成され」た「酸化マグネシウム」が、沈降によって固液分離されることにより、「浄化処理材」となるのに対し、甲1発明は、「地下水を浄化する方法」であって、地下水中で生成したハイドロタルサイトは、そのまま地下水中で「有害なアニオン」を除去して地下水を浄化するものであり、固液分離されているものでない点。

事案に鑑み、(相違点2)について検討する。
本件明細書の段落【0046】及び図5等の記載によれば、本件発明1における、「未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成され」た「酸化マグネシウム」は、「固液分離」された後、「有害物質含有水」にあたる「原水」に加えられ、「原水」中の「有害物質」を取り込んで除去するものであるから、本件発明1では、「固液分離」が行われた状態のものを「浄化処理材」と呼んでいるものと解される。
これに対し、甲1発明では「ハイドロタルサイト」による「有害なアニオン」の除去は、当該「ハイドロタルサイト」の生成が行われた地下水中で行われ、他の「有害物質含有水」に添加して行うものではないから、「固液分離」が行われた状態の「浄化処理材」を製造するものではなく、(相違点2)は実質的な相違点である。
さらに、甲1発明においては、「ハイドロタルサイト」が生成される「地下水」中に、除去すべき「有害なアニオン」が存在するから、生成した「ハイドロタルサイト」を他の「有害物質含有水」に加えて「浄化処理材」として使用するために、当該「地下水」から「ハイドロタルサイト」を固液分離する動機づけがあるともいえない。
よって、(相違点1)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明でなく、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1及び、本件発明1を引用し、本件発明1をさらに限定する本件発明2-4は、甲1に記載された発明でないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。

2.申立理由2)について
(1)甲2の記載事項
甲2には、「TREATMENT OR REMEDIATION OF NATURAL OR WASTE WATER」(発明の名称)について、次の記載がある。なお、日本語訳については、甲2に添付された抄訳文を参考に作成した。
(タ)「 For convenience and brevity, the term hydrotalcite (HT) will specifically refer to hydrotalcite with Mg and Al as the predominant cations as a member of the group of minerals termed Layered Double Hydroxides (LDH)」(第2頁第2行-第4行)
(日本語訳:「便宜及び簡略のため、ハイドロタルサイト(HT)の用語は、層状複水酸化物(LDH)と呼ばれる無機物の群の一員としての、主なカチオンとしてMg及びAlを含むハイドロタルサイトを具体的に意味する。」)
(チ)「Layered double hydroxides are generally unstable below a pH of approximately 5 」(第5頁第8行-第9行)
(日本語訳:「層状複水酸化物は、一般的に、pH約5未満で不安定である」)
(ツ)「 In a first aspect, the present invention provides a process for treating a natural or wastewater containing dissolved Mg or dissolved Al comprising the steps of adding at least one Mg-containing compound or at least one Al-containing compound to the natural or wastewater to thereby form an LDH containing Mg and Al as predominant metal species in a lattice of the LDH.」(第7頁第5行-第9行)
(日本語訳:「第1の観点では、本発明は、溶解Mg又は溶解Alを含む天然水又は廃水を処理する方法であって、少なくとも1種のMg含有化合物又は少なくとも1種のAl含有化合物を天然水又は廃水に加えることによって、主な金属種としてMg及びAlをLDHの格子中に含むLDHを形成する工程を含む前記方法を提供する。」)
(テ)「 The LDH formed may be HT or include HT.」(第8頁第13行)
(日本語訳:「形成したLDHはHTであるか、又はHTを含みうる。)」)
(ト)「The at least one aluminium-containing compound may comprise aluminate. Throughout this specification, aluminate is used to denote Al(OH)_(4)^(-) or A1(OH)_(2)^(-)・2H_(2)0.
Other inorganic compounds such as aluminium sulphate (e.g. Al_(2)(SO_(4))_(3)・18H_(2)O), aluminium hydroxide (A1(OH)_(3)) or organometallic compounds (e.g. aluminium acetylacetonate C_(15)H_(21)AlO_(6)) may also be used where a source of Al is required. Preferably these sources of Al will be alkaline to raise solution pH to an appropriate level for LDH or HT formation, but also may be used where the final solution pH or the combination of these or other compounds is alkaline.
In some embodiments of the present invention, it may also be necessary to add additional Mg to the water in order to adjust the ratio of Al to Mg in the water to the desired level to obtain LDH or HT containing Mg and Al as predominant metal species in a lattice. This may be achieved, for example, by adding MgO or Mg(OH)_(2) to the water.」(第8頁第20行-第33行)
(日本語訳:「少なくとも1種のAl含有化合物はアルミン酸塩を含みうる。本明細書中において、アルミン酸塩はAl(OH)_(4)^(-)又はAl(OH)_(2)^(-)・2H_(2)Oで表される。
他の無機化合物、例えば硫酸アルミニウム(例えば、Al_(2)(SO_(4))_(3)・18H_(2)O)、水酸化アルミニウム(Al(OH)_(3))、又は有機金属化合物(例えばアルミニウムアセチルアセトナートC_(15)H_(21)AlO_(6))等を、Al源が必要とされる場合には、使用してもよい。・・・・・・。
本発明のいくつかの実施形態では、主な金属種としてMg及びAlを格子中に含むLDH又はHTを得るのに望ましいレベルに、水中のAlとMgとの比率を調節するために、水にMgを更に加えることも必要でありうる。これは、例えば水にMgO又はMg(OH)_(2)を加えることによって達成されうる。」)
(ナ)「This removal of Layered Double Hydroxide (LDH) or hydrotalcite (HT) and/or other mineral precipitates at various stages of the reactions whether via addition of various alkalis or acid-neutralising materials to acid waters, wastewaters or slurries or via addition of acid waters, wastewaters or slurries to various alkalis or acid-neutralising materials as described elsewhere in this specification may be facilitated or enhanced by mechanical (e.g. centrifugation) or chemical (e.g. via addition of flocculants) means or a combination thereof」(第10頁第4行-第10行)
(日本語訳:「本明細書の別の箇所に記載されているように、様々なアルカリ又は酸中和物質を酸性水、廃水又はスラリーに加えるか、又は酸性水、廃水又はスラリーを様々なアルカリ又は酸中和物質に加えるかに関わらず、反応の様々な段階での層状複水酸化物(LDH)若しくはハイドロタルサイト(HT)及び/又は他の無機沈殿物の除去は、機械的手段(例えば、遠心分離)又は化学的手段(例えば、凝集剤の添加)又はこれらの組み合わせによって促進又は増進される。」)
(ニ)「It is noted that not all waters (e.g. processing or wastewaters) have a major ion chemistry suitable for the formation of LDH or specific types of LDH such as Mg-Al HT or similar compositions. Thus, it may be necessary to tailor this chemistry for the formation of LDH or more specifically Mg-Al HT. The tailoring of the solution chemistry may take the form of the addition of one or more reagents such as those containing Mg and/or Al to achieve a suitable chemistiy or composition in addition to aluminate or calcined magnesia.」(第10頁第31行-第11頁第3行)
(日本語訳:「全ての水(例えば、処理水又は廃水)が、LDH又はLDHの特定の形態、例えばMg-Al HT若しくは同様の組成を形成するのに適した主要なイオンの化学的性質を有している分けではない。そのため、LDH又はより具体的にはMg-Al HTを形成させるために、この化学的性質を調節することが必要であり得る。溶液の化学的性質の調節としては、アルミン酸又は焼成マグネシアの添加に加えて、1種以上の試薬、例えばMg及び/又はAlを含有するものを添加して適切な化学的性質又は組成を達成する形態をとり得る。」)
(ヌ)「 The method of the first aspect of the present invention results in the in situ formation of LDH or HT materials. These materials are solids. These materials are generally stable at circumneutral to alkaline pH (usually pH>5). Thus, formation of the LDH or HT materials removes metal cations from the natural and wastewater(s). Advantageously, the LDH or HT materials also include exchangeable anions in the interlayer spaces, which anions may ion exchange with other deleterious anions in the natural or wastewater, such as arsenic containing anions and phosphorus containing anions. In addition there is also scope for further cation exchange or complexing with the LDH or HT after formation. This further remediates the natural or wastewater(s).」(第16頁第14行-第23行)
(日本語訳:「本発明の第1の観点の方法により、in situでLDH又はHT物質が形成される。これらの物質は固体である。これらの物質は、一般的に、中性付近?アルカリ性のpH(通常pH>5)で安定である。そのため、LDH又はHT物質の形成によって金属カチオンが天然水又は廃水から除去される。有利なことに、LDH又はHT物質はその中間層スペースに交換可能なアニオンも含み、このアニオンが天然水又は廃水中の他の有害なアニオン(例えば、ヒ素含有アニオン、リン酸含有アニオン)とイオン交換しうる。また、LDH又はHTが形成された後に、更にLDH又はHTとカチオン交換又は錯体形成する余地がある。これによって天然水又は廃水が更に浄化される。」)
(ネ)「 Although the LDH or HT material formed in situ is stable at alkaline pH, if the acidity is replenished (for example, by further acid contamination prior to or after disposal of the solid LDH or HT), there is a risk that the pH could decrease to a level where the LDH or HT material could dissolve, thereby again liberating the metal cations. To avoid this, an excess dose of calcined magnesia (excess to that required for neutralization of acidity and/or formation of a LDH or HT) could be used. Alternatively or additionally, further addition of aluminate, calcined magnesia or magnesium hydroxide (and other reagents as required) could be carried out.」(第17頁第21行-第28行)
(日本語訳:「in situで形成したLDH又はHT物質はアルカリ性のpHで安定であるが、酸性が(例えば、固体のLDH又はHTを配置する前又は配置した後に、酸が更に混入することによって)補充されている場合には、LDH又はHT物質が溶解するレベルにまでpHが低下し、これによって金属カチオンが再び放出されるリスクがある。これを避けるために、(酸性の中和及び/又はLDH又はHTの形成に必要とされる量を超える)過剰量の焼成マグネシアを使用することができる。或いは又は加えて、アルミン酸塩、焼成マグネシア又は水酸化マグネシウム(及び必要に応じて他の試薬)を更に加えることができる。」)
(ノ)「 In all aspects of the present invention, the method may further include the step of conducting a pre-treatment to facilitate the formation of a desired or predetermined LDH or HT material. For example, where the natural or wastewater being treated has insufficient levels of Al- and/or Mg-cations for HT formation it may be treated to increase the level of Al-and/or Mg-cations in the natural or wastewater to promote the formation of HT as the predominant LDH.
For example, an additional type of (pre-) amendment may involve the addition of Al as an acidified solution to yield a desired range of trivalent cation ratios (Al/(A1+Fe)) expressed as mole fractions ranging from that present in the natural or wastewater up to mole ratios of Al/(A1+Fe) of e.g. >0.9. On this basis, a specific type of LDH mineral may be formed such as HT which will be more resistant to changes in the redox geochemistry of the wastewater. Similarly a combination of reagents such as, for example, magnesia, magnesium hydroxide and sodium aluminate may be added simultaneously. Other pretreatments will also be apparent.」(第24頁第6行-第19行)
(日本語訳:「本発明の全ての観点において、本方法は、望ましい又は所定のLDH又はHT物質の形成を促進させるために前処理を行う工程を更に含みうる。例えば、処理する天然水又は廃水が、HTを形成させるのに十分な濃度のAlカチオン及び/又はMgカチオンの濃度を増加させるように処理してもよい。
例えば、・・・・・・。同様に、試薬、例えば、マグネシア、水酸化マグネシウム、及びアルミン酸ナトリウムの組み合わせを同時に加えてもよい。」)
(ハ)「Example 3
In-situ leach (ISL) mining operations have been used extensively worldwide, principally for the recovery of uranium (Mudd, 2001a). This is because U may be soluble under both acid and alkaline conditions. While the majority of in-situ leach (ISL) mining operations have used acid, such as sulphuric acid, as part of a leaching agent, some ISL mines have also utilised alkali in the form of carbonate-bicarbonate leaching agent due to the solubility of uranium at high pH in carbonate complexes (e.g. former Soviet Union, Mudd, 2001).
Where acid ISL extraction is used there is a strong likelihood that Al from clays and other minerals will also be at least partially solubilised under these acidic conditions with possible colloidal or particulate phases also present. The dissolved Al will generally be in the form of Al^(3+) or complexes. Thus fluids generated from acid ISL mining may potentially be remediated in the subsurface by the addition of Mg in the form of calcined magnesia (MgO) or Mg salts to form LDH or HT. This remediation may be in-situ within the aquifer or may also be applied to acid waters or acid process waters generated from the ISL operation that require remediation. Al- balance may be achieved by adding Al-containing compounds, if necessary. Where alkaline ISL extraction is used there is a strong likelihood that Al from clays and other minerals will also be at least partially solubilised under these alkaline conditions with possible colloidal or particulate phases also present. The dissolved Al will generally be in the form of aluminate or alkaline complexes. In an analogous way to the generation of fluids containing uranium from acid leach ISL operations, the formation of LDH or HT from alkaline ISL operations may then be facilitated by the addition of Mg in the form of calcined magnesia (MgO) or Mg salts. This remediation may be in-situ within the aquifer or may also be applied to alkali waters or alkali process waters generated from the ISL operation that require remediation. Again, Al-balance may be achieved by adding Al-containing compounds, if necessary.」(第26頁第32行-第27頁第25行)
(日本語訳:「[実施例3]
in-situ浸出(ISL)採鉱作業・・・・・・。
・・・・・・。
アルカリ性のISL抽出物を使用する場合には、このアルカリ性条件下で粘土及び他の鉱物に由来するAlが少なくとも部分的に溶解している可能性が非常に高く、コロイド相又は粒子相もまた存在している可能性がある。溶解Alは通常アルミン酸塩又はアルカリ錯体の形態で存在する。酸浸出(ISL)作業に起因するウラン含有液体の発生に対するものと同様の方法で、アルカリ性(ISL)作業に由来するLDH又はHTの形成が、焼成マグネシア(MgO)又はMg塩の形態のMgの添加によって促進されうる。この浄化処理は、帯水層内でのin situでもよいし、又はアルカリ水若しくはISL作業によって発生した浄化が必要なアルカリ処理水に適用してもよい。必要であれば、Al含有化合物を加えることによってAlのバランスを調節してもよい。」)
(ヒ)「1. A process for treating a natural or wastewater containing dissolved Mg or dissolved Al comprising the steps of adding at least one Mg-containing compound or at least one Al-containing compound to the natural or wastewater to thereby form an LDH containing Mg and Al as predominant metal species in a lattice of the LDH.」(第34頁第4行-第8行)
(日本語訳:「[請求項1]
溶解Mg又は溶解Alを含む天然水又は廃水を処理する方法であって、少なくとも1種のMg含有化合物又は少なくとも1種のAl含有化合物を天然水又は廃水に加えることによって、主な金属種としてMg及びAlをLDHの格子中に含むLDHを形成する工程を含む前記方法。」)
(フ)「26. A process as claimed in any one of the preceding claims wherein an excess dose of calcined magnesia, aluminate, or magnesium hydroxide is added.」(第36頁第23行-第24行)
(日本語訳:「[請求項26]
過剰量の焼成マグネシア、アルミン酸塩、又は水酸化マグネシウムを加える、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。」)
(ヘ)「32. A process for treating water containing nuclear wastes comprising adding at least one Mg-containing compound or at least one Al-containing compound (or both) to the water to thereby form an LDH containing Mg and Al as predominant metal species in a lattice of the LDH.」(第37頁第12行-第15行)
(日本語訳:「[請求項32]
核廃棄物を含有する水を処理する方法であって、少なくとも1種のMg含有化合物又は少なくとも1種のAl含有化合物(又はその両方)を水に加えることによって、主な金属種としてMg及びAlをLDHの格子中に含むLDHを形成する工程を含む前記方法。」)

(2)甲2発明の認定
「(1)甲2の記載事項」によれば、甲2には、
「溶解Mg又は溶解Alを含む天然水又は廃水を浄化する方法であって、
マグネシア(MgO)及びアルミン酸塩(例えば、硫酸アルミニウム)を天然水又は廃水に加え、
天然水又は廃水中でハイドロタルサイトを形成することによって、天然水又は廃水中に含まれるMg及びAlを含む金属カチオン及び有害なアニオン(例えば、ヒ素含有アニオン、リン酸含有アニオン)を除去した後、
形成されたハイドロタルサイトを、機械的手段(例えば、遠心分離)によって除去する、
前記方法。」が記載されている(以下、「甲2発明」という。)と認められる。

(3)本件発明1と甲2発明との対比・判断
本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも下記(相違点1)、(相違点2)で相違している。

(相違点1)
本件発明1では、「pH7?11の液性下で、酸化マグネシウムの表面を溶解させると共にその他は未溶解部分として残し、溶解した酸化マグネシウムと可溶性アルミニウム塩とを反応させることによって上記酸化マグネシウムの未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成」されているのに対し、甲2発明では、ハイドロタルサイトがどのように形成されているのか明確でない点。

(相違点2)
本件発明1は、「浄化処理材の製造方法」であって、「未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成され」た「酸化マグネシウム」は、「固液分離」により、「浄化処理材」となるのに対し、甲2発明は、「天然水又は廃水を浄化する方法」であって、天然水又は廃水中で形成される「ハイドロタルサイト」は、天然水又は廃水から除去されるべき「Mg及びAlを含む金属カチオン」及び「有害なアニオン」を含んでおり、天然水又は廃水から「除去」された後、「浄化処理材」として使用されるものでない点。

事案に鑑み、(相違点2)について検討する。
本件明細書の段落【0046】及び図5等の記載によれば、本件発明1における、「未溶解部分表面にハイドロタルサイトが形成され」た「酸化マグネシウム」は、「固液分離」された後、「有害物質含有水」にあたる「原水」に加えられ、「原水」中の「有害物質」を取り込んで除去するものであるから、本件発明1では、「固液分離」が行われた状態のものを「浄化処理材」と呼んでいるものと解される。
これに対し、甲2発明では、「天然水又は廃水」中で「ハイドロタルサイト」を形成することにより、「Mg及びAlを含む金属カチオン」及び「有害なアニオン」の除去が行われ、他の「有害物質含有水」に「ハイドロタルサイト」添加して行うものではないから、「固液分離」が行われた状態の「浄化処理材」を製造するものではなく、(相違点2)は実質的な相違点である。
さらに、甲2発明においては、「ハイドロタルサイト」が生成される「天然水又は廃水」中に、除去すべき「Mg及びAlを含む金属カチオン」及び「有害なアニオン」が存在するから、生成した「ハイドロタルサイト」を他の「有害物質含有水」に加えて「浄化処理材」として使用するために、当該「天然水又は廃水」から「ハイドロタルサイト」を固液分離する動機づけがあるともいえない。
よって、(相違点1)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明でなく、甲2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1及び、本件発明1を引用し、本件発明1をさらに限定する本件発明2-4は、甲2に記載された発明でないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲2に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。

3.申立理由3)4)について
(1)本件発明1-4について
特許異議申立人は、本件発明1-4は、「有害物質」との発明特定事項を有しており、当該「有害物質」には、無機物、有機物、低分子、高分子等に分類できる膨大な種類の物資が知られているが、本件明細書において実際に浄化試験が行われているものは、フッ素、ホウ素、カドミウム、鉛、クロム(VI)、ヒ素、及びセレンにすぎないから、このような限定的な有害物質に対する試験に基づいて、膨大な種類の他の有害物質についても浄化可能であるとは認識できない。
したがって、本件特許の請求項1-4の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合せず、また、本件特許の明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないと主張している。
また、特許異議申立人は、物質が「有害物質」であるか、無害若しくは有益な物質であるかは、技術分野によって異なるものであって、本件発明1-4において、如何なる物質が「有害物質」のかは明確でないから、本件特許の請求項1-4の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないと主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0013】、【0014】、【0015】、【0018】、【0019】には、本件発明1-4で製造される「浄化処理材」が使用される有害物質含有水中の浄化されるべき様々な種類の「有害物質」についての例示があり、また、段落【0018】、【0019】には、当該「有害物質」の種類毎に、浄化される機序について記載されているから、本件発明1-4は、発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載され、また、裏付けられているものである。
さらに、当業者であれば、膨大な種類の有害物質のうち、本件発明1-4で製造される「浄化処理材」により、「浄化」の効果が得られる「有害物質」も明確であるといえる。
よって、本件特許の請求項1-4の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合し、また、本件特許の明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しているといえる。

(2)本件発明4について
特許異議申立人は、本件発明4は、「沈降初期の酸化マグネシウム量の多い浄化処理材スラリー」との発明特定事項を有するが、「沈降初期」の具体的な定義は規定されていないため、沈降が開始してからどの程度までが「沈降初期」であるのか明確でなく、「酸化マグネシウム量の多い」との発明特定事項も、相対的な特定であるにもかかわらず、比較対象が規定されていないため、どの程度の量が「多い」のか明確でないから、本件特許の請求項4の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないと主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0037】、【0038】の記載を参酌すれば、「酸化マグネシウム量」は、「有害物質」の取り込みに関係する「ハイドロタルサイトの生成」量に関連すること、当該「酸化マグネシウム量」と「沈降」の早さに技術的関連性があり、「沈降初期」として所望の期間を選択すれば、「酸化マグネシウム量」及び「ハイドロタルサイトの生成」量を制御できることは、当業者であれば理解できるものであって、本件発明4の発明特定事項である「沈降初期」、「酸化マグネシウム量の多い」の技術的意味は明らかである。
よって、本件特許の請求項4の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しているといえる。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1-4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号又は2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでなく、また、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人が主張する申立理由1)-4)によっては、請求項1-4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-02-09 
出願番号 特願2011-188651(P2011-188651)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C02F)
P 1 651・ 537- Y (C02F)
P 1 651・ 121- Y (C02F)
P 1 651・ 113- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 萩原 周治
中澤 登
登録日 2016-04-15 
登録番号 特許第5915834号(P5915834)
権利者 三菱マテリアル株式会社
発明の名称 浄化処理材の製造方法  
代理人 岩崎 正路  
代理人 千葉 博史  
代理人 藤田 節  
代理人 菊田 尚子  
代理人 新井 栄一  
代理人 平木 祐輔  
代理人 田中 夏夫  
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