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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1324904
異議申立番号 異議2016-701123  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-08 
確定日 2017-02-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第5930391号発明「リアルタイム採血管準備装置及び採血方法並びに採血管準備システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5930391号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5930391号の請求項1?3に係る特許についての出願は,平成24年6月1日に特許出願され,平成28年5月13日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許に対し,平成28年12月8日に特許異議申立人熊沢邦宏により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5930391号の請求項1?3の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
採血指示情報に基づいて採血管を選択し,当該採血管に患者情報や採血指示情報の必要データを印字したラベルを貼り付けて準備する採血管準備装置において,採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイと,前記採血管準備装置の上端面の背面側にあって待合室側へ向けて取り付けられた患者の呼出表示装置とを備えて成り,装置本体中間部の手前側にラベル貼着後の採血管を受け取るためのトレイ取出し部が形成されていることを特徴とするリアルタイム採血管準備装置。
【請求項2】
採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイのいずれかの採血発行ボタンが採血作業者によって押されて採血管発行要求があると,制御装置が病院システムの電子カルテのデータベースから最も先に採血受付がなされた未発行の患者のIDとこれに紐付けされた採血検査情報とを採血管準備装置に出力して採血管を患者ごとのトレイへ排出して準備し,また制御装置は前記採血管の発行要求と同時に患者呼出表示装置に患者呼出番号を表示し,前記トレイ内の採血管の患者IDと,診察券やリストバンドや採血受付票に記載された患者IDとを照合し,一致していれば採血作業者は採血を行うようにし,採血管の発行要求と,採血管の準備と,患者の呼出表示とを同時に行うようにしたことを特徴とするリアルタイム採血方法。
【請求項3】
採血指示情報に基づいて採血管を選択し,当該採血管に患者情報や採血指示情報の必要データを印字したラベルを貼り付けて準備する採血管準備装置と,採血管準備装置の両サイドに設置された採血作業台と,採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に自在継手を介して角度調節自在に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイと,前記採血管準備装置の上端面の背面側にあって待合室側へ向けられた患者の呼出表示装置と,病院システムの電子カルテのデータベースに接続された制御装置と,該制御装置に接続された採血受付装置とから成り,前記制御装置は前記採血情報ディスプレイを通じて採血管の発行要求があったとき,前記採血受付装置に受け付けられた先頭の患者情報を採血管準備装置へ送信すると共に,患者の呼出表示装置へ患者の呼出を指示するようにしたことを特徴とするリアルタイム採血管準備システム。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は,主たる証拠として「曽根伸治 外6名,外来採血システムによる患者および採血管取り違え防止,日本臨床検査自動化学会会誌,2010年11月1日,日本臨床検査自動化学会,第35巻,第5号,p.857-862」(以下「甲第1号証」という。)を,また,従たる証拠として特開2002-102210号公報(以下「甲第2号証」という。)及び特開2005-69844号公報(以下「甲第3号証」という。)を提出し,請求項1?3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨,また,請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから,請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

第4 特許法第29条第2項について
1.各甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
ア 「2.機器
2008年5月に検査部機器のリプレースに併せて,外来患者の増加および過誤防止を目的として,従来の装置と異なり,採血患者個別の採血管が収納されたケースを2台の採血台に供給する自動採血管準備装置(オートラベラー)i-pres gear(小林クリエイト(株)製;Fig.1)7台と包括的外来患者採血システム一式,タッチパネル式採血照合端末およびバーコード・リーダー14台(ニューコン製,以下採血照合システム;Fig.2)を導入した。」(第858頁右欄第2行-同頁右欄第10行)
イ 「2)採血管照合
採血担当者が呼出しボタンで患者を呼出すと同時に自動採血管準備装置より採血ラベルを貼付した血清分離用採血管(生化学検査および院外検査用),血算用採血管,凝固検査用採血管,血糖検査用採血管,血沈検査用採血管,遺伝子検査用採血管など主な採血管8種類が,採血患者個別のケースに収納されて搬出される。この採血管の入ったケースを取り誤る可能性や別患者の採血管が混入することを考慮して,採血管に貼付された採血ラベルの採取番号バーコードを1本ずつ読み取り,採血管の種類およびその本数を採血照合システムで確認する(Fig.5)。」(第860頁左欄第4行-同頁左欄第15行)
ウ Fig.1の自動採血管準備装置(オートラベラー)i-pres gear(小林クリエイト(株)製)の写真から,当該自動採血管準備装置には,8種類の採血管が収容される収容部と,装置本体の上部右側に採血管を収納するためのケースの挿入部と,装置本体の中間部の手前側に該ケースの取出部が形成されていることがわかる。
エ 以上ア?ウによれば,甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「患者毎の採血管の種類及びその本数に基づいて採血管を選択し,当該採血管に採取番号バーコードを印字した採血ラベルを貼付しケースに収納して供給する自動採血管準備装置において,当該自動採血管準備装置には,8種類の採血管が収容される収容部と,装置本体の上部右側に採血管を収納するためのケースの挿入部と,装置本体の中間部の手前側に採血ラベルを貼付した採血管を収納したケースの取出部が形成されている自動採血管準備装置。」
(2)甲第2号証
甲第2号証には以下の記載がある。なお下線は当審において付加したものである。
オ 「【0015】
一方,装置本体2の上面に取り付けられたモニター4は,病棟内処理又は外来患者処理の切り換えを行ったり,自動運転又は手動運転のモード切り換えを行ったり,上位システムに対して患者情報の要求を行ったり,不在患者の呼び出しを行ったり,採血管準備情報を表示したりするためのものであり,採血を行うオペレーターが操作するようになっている。また患者の呼び出し表示器5は,これから採血を行う患者を呼び出すためのものであり,受付番号や患者を特定できる情報を表示して行う。更に,手貼り用のカットラベルプリンター6は,患者情報又は検体情報等をラベルに印刷して表示したり,採血管準備装置1で自動的に準備することのできない特殊な採血管についての患者情報又は検体情報等をラベルに印刷して手貼りするためのものである。」
カ 図1には,採血管準備装置の装置本体の上面に,モニター4と2つの患者の呼び出し表示器5が設けられることが示されている。
キ 以上オ及びカによれば,甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「病棟内処理又は外来患者処理の切り換えを行ったり,自動運転又は手動運転のモード切り換えを行ったり,上位システムに対して患者情報の要求を行ったり,不在患者の呼び出しを行ったり,採血管準備情報を表示したりするためのものであり,採血を行うオペレーターが操作するためのモニターと,これから採血を行う患者を呼び出すためのものであり,受付番号や患者を特定できる情報を表示する2つの患者の呼び出し表示器を装置本体の上面に取り付けた採血管準備装置。」
(3)甲第3号証
甲第3号証には以下の記載がある。
ク 図1及び図2によれば,採血管自動準備システムの上部にモニターが設けられていることが示されている。
よって,甲第3号証には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「上部にモニターが設けられた採血管自動準備システム。」

2.対比判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と甲1発明乃至甲3発明を対比すると,請求項1に係る発明の「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイ」との事項が甲1発明乃至甲3発明には記載されていないし,また,当該事項を示唆する記載もない。
したがって,請求項1に係る発明は,甲1発明乃至甲3発明から当業者が容易になし得るものではない。
なお,この点について特許異議申立人は,特許異議申立書の第13頁第12行-第17行における対比において,「また,甲第1号証における各採血台に設けられたタッチパネル式採血照合端末装置(ディスプレイ)が,呼出ボタンを備えていることを考慮すると,各タッチパネル式採血照合端末装置(ディスプレイ)が,データケーブル等を介して自動採血管準備に取り付けられていることは明らかであるので,引用発明1における構成要件B’は,本件特許発明1における構成要件Bに対応する。」(なお,ここで本件特許発明1における構成要件Bとは「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイと,」であり,また,引用発明1における構成要件B’とは「自動採血管準備装置の左右に配置された採血台に設けられたタッチパネル式採血照合端末装置(ディスプレイ)と,」である。)と主張し,また,特許異議申立書の第14頁第3行-第5行において,「上記したように,本件特許発明1と引用発明1とは,引用発明1では,呼出表示装置が,採血管準備装置の上端面の背面側に設けられていない点のみで相違し,他の点では実質的に一致している。」と主張している。
しかしながら,そもそも上記「タッチパネル式採血照合端末装置(ディスプレイ)」は,甲第1号証によれば採血管準備装置とは全く別体の端末装置として採血台に設置されたものであり,また,当該「タッチパネル式採血照合端末装置(ディスプレイ)」が「データケーブル等を介して自動採血管準備に取り付けられている」ことは甲第1号証には記載されていないし,自明であるともいえないから,請求項1に係る発明の「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイ」は相違点であることは明らかであり,異議申立人の主張には理由がない。
(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は「リアルタイム採血方法」であって,上記請求項1に係る発明である「リアルタイム採血管準備装置」の使用を前提とした方法である。
そして,当該方法における一つのステップとして「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイのいずれかの採血発行ボタンが採血作業者によって押されて採血管発行要求があると」との事項が特定されており,当該事項は甲1発明乃至甲3発明には記載されていないし,また,当該事項を示唆する記載もない。
したがって,請求項2に係る発明は,甲1発明乃至甲3発明から当業者が容易になし得るものではない。
(3)請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は「リアルタイム採血管準備システム」であって,上記請求項1に係る発明である「リアルタイム採血管準備装置」を構成の一部としたシステムである。
そして,当該システムには,「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に自在継手を介して角度調節自在に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイ」との事項が特定されており,当該事項は甲1発明乃至甲3発明には記載されていないし,また,当該事項を示唆する記載もない。
したがって,請求項3に係る発明は,甲1発明乃至甲3発明から当業者が容易になし得るものではない。
3.まとめ
以上のとおりであるから,特許異議申立人が提出した甲第1号証乃至甲第3号証によっては,請求項1?3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

第5 特許法第36条第6項第2号について
審査基準によれば,特許法第36条第6項第2号は,特許請求の範囲の記載について,特許を受けようとする発明が明確でなければならないこと(明確性要件)を規定するものであり,請求項に係る発明が明確に把握されるためには,請求項に係る発明の範囲が明確であること,すなわち,ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要であり,その前提として,発明特定事項の記載が明確である必要がある。そして,明確性要件の審査は,請求項ごとに,請求項に記載された発明特定事項に基づいてなされるものである。
そこで,請求項1に係る発明の発明特定事項についてみると,「採血指示情報に基づいて採血管を選択し,当該採血管に患者情報や採血指示情報の必要データを印字したラベルを貼り付けて準備する採血管準備装置において」との発明特定事項は,「採血管準備装置」が「採血指示情報に基づいて採血管を選択」する機能と,「当該採血管に患者情報や採血指示情報の必要データを印字したラベルを貼り付けて準備する」機能を備えることを明確に特定するものであり,また,「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた二つの採血情報ディスプレイと」との発明特定事項は,「二つの採血情報ディスプレイ」が「採血管準備装置の本体上部側の正面における左右側面寄りの位置に取り付けられた」ものであることを明確に特定するものである。
また,「前記採血管準備装置の上端面の背面側にあって待合室側へ向けて取り付けられた患者の呼出表示装置とを備えて成り」との発明特定事項は,「患者の呼出表示装置」が「前記採血管準備装置の上端面の背面側にあって待合室側へ向けて取り付けられた」ものであることを明確に特定するものであり,また,「装置本体中間部の手前側にラベル貼着後の採血管を受け取るためのトレイ取出し部が形成されている」との発明特定事項は,「ラベル貼着後の採血管を受け取るためのトレイ取出し部」が「装置本体中間部の手前側に」「形成されている」ものであることを明確に特定するものである。
してみれば,請求項1に係る発明の各発明特定事項は明確であり,これら発明特定事項により「リアルタイム採血管準備装置」としての具体的な物の範囲が当業者に理解できるように明確に記載されているといえるから,当該請求項1に係る発明は明確であって,特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
ところで,特許異議申立人は,特許異議申立書の第18頁第18行-第19頁第3行において,「本件特許の請求項1に記載の特許発明1は,上記したように構成要件A?Eを有するリアルタイム採血管準備装置であるところ,本件特許の明細書0013欄には,本件特許発明1の作用効果として,「従って,・・・また採血管の発行要求と同時に当該患者の採血管の準備と,患者の呼出とを同時に行うことのできるリアルタイム採血が可能となる。」と記載されています。採血管の発行要求と同時に当該患者の採血管の準備と,患者の呼出とを同時に行うことができるようにするためには,少なくとも,採血管準備装置が前記採血管の発行要求と同時に患者呼出表示装置に患者呼出番号を表示するように構成されていなければならないことは明らかであるにもかかわらず,本件特許発明1は,係る構成要件を備えていません。従って,本件特許発明1は,その明細書に記載されている作用効果を奏するものではなく,その内容が不明確であります。」と主張している。
しかしながら,明細書の第【0013】段落には,「請求項1の採血管準備装置の発明にあっては,採血管準備装置自体が患者の呼出表示装置と,左右の二人の採血作業者が操作する採血情報ディスプレイとが搭載されている。従って,この装置を設置し,その両隣に単なる机を配置するだけで,患者の呼出表示装置を備えた採血システムを構築することができ,また採血管の発行要求と同時に当該患者の採血管の準備と,患者の呼出とを同時に行うことのできるリアルタイム採血が可能となる。」と記載されており,これは請求項1に係る発明である「リアルタイム採血管準備装置」のハードウェアの構成として「採血管準備装置自体が患者の呼出表示装置と,左右の二人の採血作業者が操作する採血情報ディスプレイとが搭載されている」ことにより,「この装置を設置し,その両隣に単なる机を配置するだけで,患者の呼出表示装置を備えた採血システムを構築することができ」との直接的な効果と,また,請求項1に係る発明である「リアルタイム採血管準備装置」が動作した際に,「採血管の発行要求と同時に当該患者の採血管の準備と,患者の呼出とを同時に行うことのできるリアルタイム採血が可能」となるという間接的な効果を単に記載したにすぎないし,また,当該効果の記載を考慮したとしても,特許請求の範囲の記載自体に影響するものではなく,上記したとおり請求項1に係る発明は明確であるから特許異議申立人の上記主張は採用できない。

したがって,特許異議申立人が主張する理由によっては,請求項1に係る特許が特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるということはできない。

第6 むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-02-13 
出願番号 特願2012-126256(P2012-126256)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G06Q)
P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大野 朋也  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 金子 幸一
貝塚 涼
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5930391号(P5930391)
権利者 株式会社OLPASO
発明の名称 リアルタイム採血管準備装置及び採血方法並びに採血管準備システム  
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