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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1325299
審判番号 不服2016-6803  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2017-02-16 
事件の表示 特願2014-108589号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月14日出願公開、特開2015-223231号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月26日に出願されたものであって、平成27年9月29日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し平成27年11月27日付けで手続補正がなされたが平成28年2月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年5月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

(補正前:平成27年11月27日付け手続補正)
「【請求項1】
移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報を表示可能な変化情報表示部と、
前記移動画像が前記目標位置に到達すると、保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段と、
遊技球を検知する検知手段と、
前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段と、
を備え、
前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始する
ことを特徴とする遊技機。」
から、

(補正後:本件補正である平成28年5月9日付け手続補正)
「【請求項1】
移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報を表示可能な変化情報表示部と、
前記移動画像が前記目標位置に到達すると、保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段と、
遊技球を検知する検知手段と、
前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段と、
を備え、
前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始するに際し、通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、前記移動画像が前記目標位置に到達した際には当該特定保留に対応する保留表示の表示態様を変化させるよう構成されている
ことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決で付した。)。

2 本件補正の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「変化表示開始決定手段」及び「演出実行手段」について、「通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、前記移動画像が前記目標位置に到達した際には当該特定保留に対応する保留表示の表示態様を変化させる」との限定を付加する補正を行うものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1) 本願補正発明
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Eは本願補正発明を分説するため当審で付与した。)。

「【請求項1】
A 移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報を表示可能な変化情報表示部と、
B 前記移動画像が前記目標位置に到達すると、保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段と、
C 遊技球を検知する検知手段と、
D 前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段と、
を備え、
E 前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始するに際し、通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、前記移動画像が前記目標位置に到達した際には当該特定保留に対応する保留表示の表示態様を変化させるよう構成されている
ことを特徴とする遊技機。」

(2) 刊行物に記載された事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-9951号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。

(ア) 「【0073】
そして、主制御装置80は、始動口等といった入賞口への遊技球の入賞を検出する入賞確認処理と(S50),始動口への入賞に起因して大当り抽選を行う当否判定処理と(S55)、大当り抽選で当った際に行われる大当り遊技を制御する大当り遊技処理と(S60)を行う。・・・
【0074】
・・・次に、第1,第2始動口11,12への入賞を検出し、該入賞に応じて保留記憶の生成等を行う始動入賞確認処理について、図6に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、メインルーチンから実行される入賞確認処理(S50)からコールされるサブルーチンとして構成されている。」

(イ) 「【0079】
S150では、主制御装置80は、新たに発生した保留記憶に係る大当り決定用乱数の値が特定値(大当り抽選で当りとなる値)か否かを判定し、肯定判定が得られた場合には(S150:Yes)、S155に処理を移行すると共に、否定判定が得られた場合には(S150:No)、S160に処理を移行する。
【0080】
S155では、主制御装置80は、新たに発生した保留記憶に係る大当り決定用乱数の値が上記特定値であることを示す先読みコマンド1を生成してサブ統合制御装置83に送信し、本処理を終了する。」

(ウ) 「【0126】
(6)保留表示処理について
次に、保留記憶に対応する保留図柄を演出図柄表示装置6に表示する保留表示処理について、図15に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、サブ統合制御装置83にて定期的(例えば、2ms周期のタイマ割り込み処理)に実行される処理である。
・・・
【0130】
S615では、サブ統合制御装置83は、先読みコマンドの種別(換言すれば、新たに発生した保留記憶に係る大当り決定用乱数,リーチ判定用乱数の値が上述した特定値であるか否か)と、先読み演出の実行可否抽選に係る乱数に基づく抽選結果とに基づき、新たに発生した保留記憶について先読み演出を行うか否かを決定する。そして、先読み演出を行う場合には(S620:Yes)、S625に処理を移行し、先読み演出を行わない場合には(S620:No)、S670に処理を移行する。」

(エ) 「【0133】
S630では、サブ統合制御装置83は、先読み実行タイマに対し、予め定められた遅延時間に対応するタイマ値を設定することで、先読み演出として後続保留図柄を変化させるタイミング(以後、変化タイミングと記載)を該遅延時間が経過した時点に設定し、S635に処理を移行する。なお、該遅延時間が経過すると、上述の第1条件が成立したものとみなされる。また、遅延時間としてどのような時間が用いられるかについては、後述する。
・・・
【0137】
S655では、サブ統合制御装置83は、演出図柄制御装置82に対し、新たに発生した保留記憶に対応する保留図柄を表示させると共に、演出設定バッファの内容に基づき後続保留数に応じて後続保留図柄を変化させ、S660に処理を移行する。
・・・
【0139】
(7)先読み実行タイマ減算処理について
次に、遅延時間が経過した際に(第1条件が成立した際に)、後続保留図柄を変化させる先読み実行タイマ減算処理について、図16に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、上述した保留表示処理に続いて、サブ統合制御装置83にて定期的(例えば、2ms周期のタイマ割り込み処理)に実行される処理である。」

(オ) 「【0156】
演出図柄表示装置6には、当該変動として特別図柄に対応した飾り(装飾)図柄が、左図柄に「3」、右図柄に「4」が停止し、中図柄が未だ変動中である状態において、3番目に消化される保留記憶(上述の消化順番が3番目の保留記憶)として新たな保留記憶が発生し、該保留記憶についての先読み演出を行うことが決定されると、該保留記憶に対応する保留図柄として、先読み示唆保留図柄102が表示される(図19(a)参照)。このとき、第1条件に係る遅延時間として25秒が設定されると共に、抽選により第2条件に係る後続保留数として3個或いは4個が選択されたとする。そして、該遅延時間の経過を計測するための先読みタイマが始動され、大当り演出画面における向かって左上の領域110には、第1条件成立までの残り時間が表示される。
・・・
【0158】
さらに、当該変動がハズレで確定表示した後、次いで先読み演出を行う保留記憶よりも先に発生した保留記憶に基づいて新たな変動が開始されると共に該保留記憶が消化され、該保留記憶による大当り演出の最中に先読みタイマがタイムアウトし、上述した第2条件(後続保留数として3個或いは4個)が成立する前に、第1条件が成立すると、後続保留図柄103,104を、「熱」、「い」と変化させることで、先読み演出が行われる(図20(b),(c))。」

(カ) 「【0166】
また、先読み演出の対象となる保留記憶に対応する保留図柄として、先読み示唆保留図柄に替えて通常保留図柄を表示しても良い。こうすることにより、遊技者は、先読み演出が開始されたかどうかを判別することができず、遊技者の止め打ちをより確実に抑止することができると共に、唐突に先読み演出が行われる構成となり、意外性のある演出が可能となる。
【0167】
また、第一実施形態では、第1条件或いは第2条件の成立により後続保留図柄が変化するが、第1条件と第2条件のうちの一方のみについて成立したか否かを判定し、該一方の条件の成立により後続保留図柄を変化させても良い。このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。」

(キ) 上記(ア)、(エ)、(オ)には、主制御装置80での遊技玉の検出に基づいて、新たな保留記憶が発生し、当該保留記憶についての先読み演出を行うことが決定されると、予め定められた遅延時間の経過を計測するための先読みタイマを始動し、当該予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示することが記載されている。

(ク) 上記(イ)、(ウ)には、新たに発生した保留記憶に係る大当り決定用乱数の値が大当り抽選で当りとなる値か否かを判定し、肯定判定が得られた場合には、先読みコマンド1を生成してサブ統合制御装置83に送信し、サブ統合制御装置83は、先読みコマンドの種別と、先読み演出の実行可否抽選に係る乱数に基づく抽選結果とに基づき、新たに発生した保留記憶について先読み演出を行うか否かを決定することが記載されている。
そうすると、刊行物1には、新たに発生した保留記憶が大当りとなる場合、当該新たに発生した保留記憶に基づき先読み演出を行うか否かを決定することが記載されているし、上記(キ)から、先読み演出を行うことが決定されると、予め定められた遅延時間の経過を計測するための先読みタイマを始動し、当該予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示することも記載されている。
したがって、刊行物1には、予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示するに際し、新たに発生した保留記憶が大当りとなる場合、当該新たに発生した保留記憶に基づき当該残り時間を表示することが記載されているといえる。

以上(ア)?(ク)の記載事項及び認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)(a?eは引用発明を分説するため当審で付与した。)。

「a 予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間の情報が表示される演出図柄表示装置6と、
b 予め定められた遅延時間が経過すると、後続保留図柄を変化させる先読み演出を実行可能なサブ統合制御装置83と、
c 遊技球を検出する主制御装置80と、を備え、
d 主制御装置80での遊技玉の検出に基づいて、新たな保留記憶が発生し、当該保留記憶についての先読み演出を行うことが決定されると、予め定められた遅延時間の経過を計測するための先読みタイマを始動し、当該予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示し、
e 予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示するに際し、新たに発生した保留記憶が大当りとなる場合、当該新たに発生した保留記憶に基づき当該残り時間を表示し、予め定められた遅延時間が経過すると、後続保留図柄を変化させる
遊技機。」

イ 刊行物2
当審で新たに引用する特開2013-106653号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。

(ア) 「【0067】
この実施の形態では、先読み予告演出として、始動入賞記憶表示エリア5Hにおいて特図保留記憶数を特定可能に表示する表示部位を、通常時における表示態様とは異なる表示態様に変化させることにより、予告対象となる可変表示において「大当り」となる可能性などを予告する保留表示予告が実行されるようになっている。具体的には、始動入賞記憶表示エリア5Hにおいて特図保留記憶数を特定可能に表示する保留記憶表示の表示態様を「?」マークなどの特殊態様(この時点では「大当り」となる可能性などを予告するものではない表示態様であって、先読み予告演出が開始されたことを示す表示態様)とする。そして、所定のタイミングにおいて特殊態様で表示されている保留記憶表示の表示態様を特別態様(「大当り」となる可能性などを予告する表示態様)に変化させる保留表示予告が実行される。特別態様は複数種類設けられており、いずれの特別態様となったかに応じて、可変表示結果が「大当り」となること、可変表示結果が「大当り」となる可能性が通常よりも高いことを報知する。
【0068】
この実施の形態では、保留記憶表示が特殊態様で表示されている場合、変動が開始される毎に表示態様を特殊態様から特別態様に変化させるか否かの抽選(決定)を行う。即ち、この実施の形態では、先読み予告演出において保留記憶表示の表示態様を特殊態様から特別態様に変化させる所定のタイミングとは、表示態様を特別態様に変化させると決定された場合の変動開始時である。なお、先読み予告演出において保留記憶表示の表示態様を特殊態様から特別態様に変化させる所定のタイミングは、これに限定されず、保留記憶数(保留記憶表示)が増加したタイミングや、所定の時間経過ごとのタイミングであってもよい。この場合は、それぞれのタイミングで表示態様を特殊態様から特別態様に変化させるか否かの抽選(決定)を行うようにしてもよい。」

(イ)「【0327】
図31(A)に示す第1特別態様決定テーブル201や図32(B)に示す第2特別態様決定テーブル202では、予告対象となる可変表示に対応する始動入賞の発生に基づいて送信された変動カテゴリコマンドの指定内容に応じて、特別態様決定用の乱数値と比較される数値(決定値)が、「通常態様」、「第1態様」、「第2態様」の決定結果に割り当てられている。「通常態様」は、先読み予告演出が実行されない場合と同様の表示態様である。即ち、特殊態様で表示された後、通常態様に変化する先読み予告演出も実行されることがある。「第1態様」及び「第2態様」は特別態様に含まれる表示態様である。「第1態様」と「第2態様」とは、それぞれが異なる表示態様であればよい。この実施の形態では、「第1態様」は、白い星の表示「☆」であり、「第2態様」は、黒い星の表示「★」となっている。

(ウ) 「【0350】
次に、パチンコ遊技機1における具体的な演出動作について説明する。図33は、先読み予告演出が実行される場合の画像表示装置5における表示動作例を示している。図33(A)は、飾り図柄表示エリア(5L、5C、5R)にハズレ組合せの表示結果が停止表示され、可変表示が開始される前の画像表示装置5を示している。なお、図33(A)では、始動入賞記憶表示エリア5Hの保留番号(バッファ番号)が3番目と5番目の保留記憶表示について、図25のステップS710の処理において先読み予告演出を実行することが決定され、保留番号(バッファ番号)が3番目と5番目の保留記憶表示が特殊態様「?」で表示されている。
【0351】
・・・
【0352】
この場合、図33(B)に示すように、飾り図柄表示エリアにおいて可変表示が開始されたときに、バッファ番号が低い方の特殊態様「?」が第1態様「☆」に変化する。・・・」

したがって、刊行物4には、遊技機において、大当りとなる可能性を予告するために、先読み予告演出を実行することが決定された保留記憶表示について、保留記憶表示の表示態様を特別態様に変化させることが記載されている。

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。対比の見出しとしての(a)?(e)は引用発明の分説構成と対応させた。

(a) 引用発明の「予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間」は、「25秒」等の秒数が「20秒」、「18秒」・・・と減算されて変化しながら表示されるものであるから(刊行物1の図19(a)?20(c)参照。)、本願補正発明の「変化する情報」に対応する。また、引用発明の「演出図柄表示装置6」は、本願補正発明の「変化情報表示部」に対応するから、引用発明の「a 予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間の情報が表示される演出図柄表示装置6」と本願補正発明の「A 移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報を表示可能な変化情報表示部」とは「変化する情報を表示可能な変化情報表示部」を備える点で共通する。

(b) 引用発明の「後続保留図柄」は、「保留」が存在することを報知する表示であって、本願補正発明の「保留表示」に含まれることは明らかである。また、引用発明において当該後続保留図柄を「変化させる先読み演出」は、保留図柄の表示態様を変化させるものであるから(刊行物1の図20(c)参照。)、本願補正発明の「表示態様を変化させる特定演出」に対応する。そして、引用発明の「サブ統合制御装置83」は、本願補正発明の「演出実行手段」の機能を有する。
したがって、引用発明の「b 予め定められた遅延時間が経過すると、後続保留図柄を変化させる先読み演出を実行可能なサブ統合制御装置83」と本願補正発明の「B 前記移動画像が前記目標位置に到達すると、保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段」とは「保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段」を備える点で共通する。

(c) 引用発明の「遊技球を検出する主制御装置80」は、本願補正発明の「遊技球を検知する検知手段」に相当する。

(d) 上記(c)より、引用発明の「主制御装置80での遊技玉の検出」は、本願補正発明の「前記検知手段での遊技球の検知」に相当するから、引用発明の「主制御装置80での遊技玉の検出に基づいて、新たな保留記憶が発生し、当該新たな保留記憶についての先読み演出を行うことが決定される」ことは、「前記検知手段での遊技球の検知に基づいて」いるといえる。
引用発明の「予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間」は、上記(a)に示したとおり「変化する情報」であって、本願補正発明の「前記情報」に対応する。
引用発明の「予め定められた遅延時間の経過を計測するための先読みタイマを始動し、予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示」する点について検討すると、当該先読みタイマを「始動」する前は当該残り時間の表示を行うことはできない(表示を行う必要もない)から、当該「始動」に伴って当該「表示」が「開始」されることは明らかである。また、上記「(2) ア (ウ)」に、先読み演出を行うことの「決定」は、「サブ統合制御装置83」が行うことが記載されている。そして、サブ統合制御装置83が行う当該「決定」によって先読みタイマが「始動」し、当該「表示」が行われるから、当該表示を「開始することの決定」もサブ統合制御装置83の機能として含まれているといえる。
したがって、引用発明の「d 主制御装置80での遊技玉の検出に基づいて、新たな保留記憶が発生し、当該保留記憶についての先読み演出を行うことが決定されると、予め定められた遅延時間の経過を計測するための先読みタイマを始動し、当該予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示」することと、本願補正発明の「D 前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段」とは「前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段」を備える点で共通する。

(e) 引用発明において「予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示する」ことは、上記(d)に示したとおり、本願補正発明の「前記情報の表示を開始する」ことに対応する。また、引用発明において当該残り時間を表示することは、上記(d)に示した「変化表示開始決定手段」の決定結果に基づいているといえる。
引用発明の「大当りとなる」「保留記憶」は、本願補正発明の「通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留」に相当することは明らかである。
また、引用発明において「新たに発生した保留記憶が大当りとなる場合」には、当該「大当りとなる」「保留記憶」が発生して「存在」していることは明らかであるから、本願補正発明の「通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合」に相当するし、引用発明において「当該新たに発生した保留記憶」に基づくことも、本願補正発明の「当該特定保留の存在」に基づくことに相当するといえる。そのため、引用発明の「当該新たに発生した保留記憶に基づき当該残り時間を表示する」ことは、本願補正発明の「当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始する」ことに対応するといえる。
上記(b)に示したとおり、引用発明の「後続保留図柄」を変化させることは、本願補正発明の「保留表示」の表示態様を変化させることに対応するといえる。
したがって、引用発明の「e 予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間を表示するに際し、新たに発生した保留記憶が大当りとなる場合、当該新たに発生した保留記憶に基づき当該残り時間を表示し、予め定められた遅延時間が経過すると、後続保留図柄を変化させる」ことと、本願補正発明の「E 前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始するに際し、通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、前記移動画像が前記目標位置に到達した際には当該特定保留に対応する保留表示の表示態様を変化させる」こととは「前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始するに際し、通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、保留表示の表示態様を変化させる」る点で共通する。

以上(a)?(e)の検討より、本願補正発明と引用発明とは、
「A’ 変化する情報を表示可能な変化情報表示部と、
B’ 保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段と、
C 遊技球を検知する検知手段と、
D’ 前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段と、
を備え、
E’ 前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始するに際し、通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、保留表示の表示態様を変化させる
遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]:保留表示の表示態様を変化させるタイミングが、本願補正発明では、「移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報」を表示したことに基づいて、「前記移動画像が前記目標位置に到達」した際であるのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。(A)(B)(D)(E)

[相違点2]:保留表示の表示態様を変化させる対象が、本願補正発明では、「当該特定保留に対応する保留表示」であるのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。(E)

(4) 判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
遊技機分野において、何等かの事象が発生するまでの残り時間を「移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報」によって表示(メータ表示)することは、拒絶査定時にも指摘されているとおり本願の出願日前に周知の技術であるといえる(例えば、特開2003-88638号公報(【0066】及び図7参照。)には、特図変動表示装置4aの一部において、普図変動入賞装置9の開放開始までの残り時間を表示するため、直方体4eがレベルメータ4c内の右端から左端に向かって徐々に短くなっていく情報を表示可能とすることが記載され、特開2003-10439号公報(【0062】及び図10?14参照。)には、動画表示部60aの一部において、当否映像が静止表示(確定)するまでの残り時間を表示するため、進行具合報知バー60dが左から右端へと伸びて行く情報を表示可能とすることが記載されている。)。
そして、引用発明における「予め定められた遅延時間が経過するまでの残り時間」の表示のために、「25秒」等の秒数の表示に代えて当該周知の技術を適用することは、当業者であれば適宜行い得たことである。
また、引用発明は、予め定められた遅延時間が経過した際に保留表示の表示態様を変化させるものであるから、引用発明において当該周知の技術を適用した場合、当該予め定められた遅延時間が経過したタイミング、つまり、移動画像が目標位置に到達したタイミングで当該保留表示の表示態様を変化させ、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることも、当業者であれば適宜行い得たことである。

イ 相違点2について
刊行物2に記載された事項における「先読み予告演出」、当該先読み予告演出を実行することが決定された「保留記憶表示」は、それぞれ、引用発明における「先読み演出」、当該先読み演出を行うことが決定された「保留記憶」に対応する保留図柄、に対応する。
そして、引用発明と刊行物2に記載された事項は、遊技機において先読み演出を行う点で共通しているものであるから、引用発明において先読み演出を行う際に、先読み演出を行うことが決定された大当りとなる保留記憶(通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留)に対応する保留図柄について、刊行物2に記載された事項を適用し、当該保留図柄の表示態様を特別態様に変化させることで、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

ウ 請求人の主張及び本願補正発明が奏する効果について
請求人は本願補正発明について、請求の理由において、本願補正発明は引用発明と比較して「変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始するに際し、通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、前記移動画像が前記目標位置に到達した際には当該特定保留に対応する保留表示の表示態様を変化させるよう構成されている」との点で少なくとも相違する旨主張し、さらに、「・・・引用文献1に係る発明では、当初は遊技者にとって有利な「特定保留」の存在を示唆しつつ最終的には当該「特定保留」がいずれの保留であるかを確実に遊技者へ伝達する、という本願発明が意図しているような保留先読み演出の興趣性を創出することができない。更に、引用文献1に係る発明では、最終的には当該「特定保留」がいずれの保留であるかを確実に遊技者へ伝達するという思想ではないため、カウントダウンが0となる意味あいが、当該「特定保留」がいずれの保留であるかを確実に遊技者へ伝達するタイミングとはならない結果、仮に、保留の表示態様が変化するタイミングを開始位置から目標位置に向けて変化する移動画像によって報知されるよう構成したとしても、(カウントダウンが0となる意味あいが明確にならない恐れがあるため)遊技者に対する訴求力が乏しいものといえる。」と主張する。
しかしながら、請求人が主張する上記相違点については、上記ア、イで検討したとおり、当業者が刊行物1に記載された事項、周知の技術及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易になし得たことであるし、本願補正発明について請求人が主張する「保留先読み演出の興趣性」、「遊技者に対する訴求力」についても、当業者が引用発明、周知の技術及び刊行物2に記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(5) まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明、周知の技術及び刊行物2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定についてのむすび
上記2より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年11月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下「本願発明」とい

う。)は次のとおりである。(A?E’は本願発明を分説するため当審で付与した。)。

「【請求項1】
A 移動画像が開始位置から目標位置に向けて変化する情報を表示可能な変化情報表示部と、
B 前記移動画像が前記目標位置に到達すると、保留表示の表示態様を変化させる特定演出を実行可能な演出実行手段と、
C 遊技球を検知する検知手段と、
D 前記検知手段での遊技球の検知に基づいて、前記情報の表示を開始することを決定する変化表示開始決定手段と、
を備え、
E’ 前記変化表示開始決定手段での決定結果に基づいて、前記情報の表示を開始する
ことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された事項
刊行物1に記載された事項、引用発明及び周知の技術ついては、上記「第2 3 (2)」に示したとおり。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 3 (1)」に示した本願補正発明から、「通常の保留よりも遊技者にとって有利な特定保留が存在している場合、当該特定保留の存在に基づき前記情報の表示を開始し、前記移動画像が前記目標位置に到達した際には当該特定保留に対応する保留表示の表示態様を変化させるよう構成されている」という事項を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明の相違点は、上記「第2 2 (3)」に示した相違点1の一部((A)(B)(D)に係る部分)のみであり、上記「第2 3 (4)」に示したとおり、引用発明において、何等かの事象が発生するまでの残り時間をメータ表示する周知の技術を適用して、当該相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜行い得たことである。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-13 
結審通知日 2016-12-20 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2014-108589(P2014-108589)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 足立 俊彦  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 石原 徹弥
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 伊藤 温  

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