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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1325499
審判番号 不服2015-13911  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-23 
確定日 2017-03-17 
事件の表示 特願2012-553824「データ伝送方法及び装置、並びにデータ受信方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日国際公開、WO2011/105811、平成25年 6月 6日国内公表、特表2013-520861、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年) 2月23日を国際出願日
(パリ条約による優先権主張
外国庁受理2010年 2月23日 米国、
外国庁受理2010年 3月 3日 米国、
外国庁受理2010年 3月16日 米国、
外国庁受理2010年 4月13日 米国、
外国庁受理2010年 8月 5日 米国、
外国庁受理2010年 9月 7日 米国、
外国庁受理2010年10月 5日 米国、
外国庁受理2010年10月13日 米国、
外国庁受理2010年10月22日 韓国)
とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由 :平成26年 9月19日(起案日)
手続補正 :平成27年 1月26日
拒絶査定 :平成27年 3月13日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成27年 7月23日
手続補正 :平成27年 7月23日
平成27年 7月23日付け手続補正の却下の決定
:平成28年 5月27日(起案日)
拒絶理由(当審) :平成28年 5月27日(起案日)
手続補正 :平成28年 8月30日
拒絶理由(当審・最後):平成28年 9月27日(起案日)
手続補正 :平成29年 1月 4日

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下、「本願発明1ないし13」という。)は、平成29年 1月 4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される以下のものと認められる。
なお、本願発明1、3及び6に係る発明のA1ないしI6については、説明のために当審にて付したものである(以下、「構成A1」等という。)。

「【請求項1】
A1 コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップであって、
B1 前記セグメントは、前記メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す、ステップと、
C1 前記複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得するステップであって、
D1 前記情報は、前記複数のセグメントのうちの第1のセグメントに含まれ、
E1 前記情報は、前記複数のセグメントのうちの前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報を含む、ステップと、
F1 前記情報に基づき前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスするステップとを含み、
G1 前記情報は、前記複数のセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報を含み、
H1 前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なあらゆるパケットの位置を示す第2オフセット情報を含む
I1 ことを特徴とするデータ受信方法。

【請求項2】
前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能な次のパケットの位置を示す第1オフセット情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ受信方法。

【請求項3】
A3 コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップであって、
B3 前記セグメントは、前記メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す、ステップと、
C3 前記複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得するステップであって、
D3 前記情報は、前記複数のセグメントのうちの第1のセグメントに含まれ、
E3 前記情報は、前記複数のセグメントのうちの前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報を含む、ステップと、
F3 前記情報に基づき前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスするステップとを含み、
G3 前記情報は、前記複数のセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報を含み、
H3 前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントのあらゆるアクセスユニットについての情報を示す第3オフセット情報を含む
I3 ことを特徴とするデータ受信方法。

【請求項4】
前記情報は、前記アクセスユニットが示す映像フレームのタイプを示す映像タイプ情報をさらに含む
ことを特徴とする請求項3に記載のデータ受信方法。

【請求項5】
前記情報は、前記情報に対応するタイプ情報をさらに含み、
前記タイプ情報は、前記情報が前記受信されたメディアデータ内でランダムアクセスが可能なポイントを示す方式によって分類される
ことを特徴とする請求項1または3に記載のデータ受信方法。

【請求項6】
A6 コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップであって、
B6 前記セグメントは、前記メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す、ステップと、
C6 前記複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得するステップであって、
D6 前記情報は、前記複数のセグメントのうちの第1のセグメントに含まれ、
E6 前記情報は、前記複数のセグメントのうちの前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報を含む、ステップと、
F6 前記情報に基づき前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスするステップとを含み、
G6 前記情報は、前記複数のセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報を含み、
H6 前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なパケットが、他のパケットと共に再生されるか否かを示す依存情報をさらに含む
I6 ことを特徴とするデータ受信方法。

【請求項7】
前記情報は、前記共に再生されるパケットの個数を示す依存度情報をさらに含む
ことを特徴とする請求項6に記載のデータ受信方法。

【請求項8】
前記ランダムアクセスするステップは、前記情報に基づいて、前記共に再生されるパケットを獲得するステップを有する
ことを特徴とする請求項7に記載のデータ受信方法。

【請求項9】
前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なパケットが、三次元映像を提供するのに使われるか否かを示す三次元映像情報をさらに含む
ことを特徴とする請求項1、3、および6のいずれか一項に記載のデータ受信方法。

【請求項10】
前記情報は、前記ランダムアクセスが可能なパケットが提供する映像フレームの視点を示す視点情報をさらに含む
ことを特徴とする請求項8に記載のデータ受信方法。

【請求項11】
前記情報は、前記情報が複数個のパケットにまたがって存在する場合、現在パケットが、前記情報を含む最後のパケットであるか否かを示す終了情報をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ受信方法。

【請求項12】
データを受信する装置において、
コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信する受信部であって、
前記セグメントは、前記メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す、受信部と、
前記複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得する獲得部と、
前記情報に基づいて、前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスする提供部とを備え、
前記情報は、前記複数のセグメントのうちの第1のセグメントに含まれ、
前記情報は、前記複数のセグメントのうちの前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報を含み、
前記情報は、前記複数のセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報を含み、
前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なあらゆるパケットの位置を示す第2オフセット情報を含む
ことを特徴とするデータ受信装置。

【請求項13】
データ受信方法を具現するためのプログラムが記録されたコンピュータで読み取り可能な記録媒体であって、
前記方法は、コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップであって、
前記セグメントは、前記メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す、ステップと、
前記複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得するステップであって、
前記情報は、前記複数のセグメントのうちの第1のセグメントに含まれ、
前記情報は、前記複数のセグメントのうちの前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報を含む、ステップと、
前記情報に基づき前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスするステップとを含み、
前記情報は、前記複数のセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報を含み、
前記情報は、前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なあらゆるパケットの位置を示す第2オフセット情報を含む
ことを特徴とする記録媒体。」

第3 当審拒絶理由について
1.平成28年 9月27日付け当審拒絶理由について
(1)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の概要

『理由1
本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)及び同項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない。
理由2
この出願の請求項1?3、7、11に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



1.理由1)について
以下の説明の便宜上、本願の請求項1、2の記載を以下のように分説し、符号を付した(以下、段落を指し示す際に、段落(A)、段落(B)などと称することとする。)。

【請求項1】
(A)コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成されるそれぞれ少なくとも1つのセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップと、
(B)前記少なくとも1つのセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得するステップであって、
(C)前記情報は、前記受信されたメディアデータの第1のセグメントに含まれ、前記情報は、前記第1のセグメント以外のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報を含む、ステップと、
(D)前記情報に基づき前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスするステップとを
含み、
(E)前記情報は、前記少なくとも一つのセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報を含むことを特徴とする
(F)データ受信方法。

【請求項2】
(G)前記獲得するステップは、
前記少なくとも1つのセグメントそれぞれに含まれた少なくとも1つのパケットから、前記少なくとも1つのセグメントそれぞれに対応する情報を獲得するステップを有することを特徴とする
(H)請求項1に記載のデータ受信方法。


(1)請求項1の段落(A)には、「少なくとも1つのセグメント」を含むメディアデータのうち少なくとも一つを受信する、と記載されている。
他方、請求項1の段落(C)には、ランダムアクセスが可能なポイントを示す情報が、「第1のセグメント」に含まれ、前記情報が、「前記第1のセグメント以外のセグメント」についてのランダムアクセスが可能なポイントを示す旨、記載されており、当該記載は、複数のセグメントの存在を前提としたものと認められる。
そうすると、受信するセグメントが複数あることを前提とした請求項1の段落(C)の記載と、受信するセグメントが一つでもよいとする請求項1の段落(A)の記載とは整合しない。
したがって、この不整合の点において、請求項1の記載が明確性要件を充足しているということはできない。
また、段落(C)の構成を前提とする発明において、段落(A)が許容する、受信するセグメントが一つしかない場合については、何ら発明の詳細な説明に開示されていないから、請求項1の記載がサポート要件を充足しているということもできない。

これらの記載不備は、請求項1を引用する請求項2ないし13、及び請求項1のいわゆるカテゴリー違いの発明を記載した請求項14、15においても、同様に認められる。

(2)請求項2の段落(G)には、「前記少なくとも1つのセグメントそれぞれに含まれた少なくとも1つのパケットから、前記少なくとも1つのセグメントそれぞれに対応する情報を獲得する」と記載されているところ、当該記載は、前記「情報」が、受信した一つのセグメント内でランダムアクセスするためのものである場合を含んでいる(以下、当該場合について検討する。)。
他方、請求項2が引用する請求項1の段落(C)には、ランダムアクセスが可能なポイントを示す情報が、「第1のセグメント」に含まれ、前記「情報」が、「前記第1のセグメント以外のセグメント」についてのランダムアクセスが可能なポイントを示す旨、記載されている。
そうすると、前記「情報」が複数のセグメント間でのランダムアクセスのためのものであるとする、請求項1の段落(C)の記載と、一つのセグメント内でのランダムアクセスのためのものであるとする請求項2の段落(G)の記載とは整合しない。
したがって、この不整合の点において、請求項2の記載が明確性要件を充足しているということはできない。
また、請求項1の段落(C)を前提とし、請求項2の段落(G)の構成を備えるとすれば、複数のセグメント間のランダムアクセスのための前記「情報」が、一つのセグメント内のランダムアクセスのための情報を兼ねることになるが、そのようなことについては、何ら発明の詳細な説明に開示されていないから、請求項2の記載がサポート要件を充足しているということもできない。

これらの記載不備は、請求項2を引用する請求項3ないし13においても、同様に認められる。

(3)請求項1に記載された、メディアデータの「セグメント」とは、メディアデータにおける、どのような部分を意味しているのか、現記載では不明確であるとともに、様々なものが想定され得る(発明の詳細な説明の段落【0043】に記載されているように、ストリーミングされるメディアデータを時間に基づいて分割した各部分ということか?)。
したがって、この点において、請求項1の記載が明確性要件を充足しているということはできず、また、サポート要件を充足しているということもできない。

これらの記載不備は、請求項1を引用する請求項2ないし13、及び請求項1のいわゆるカテゴリー違いの発明を記載した請求項14、15においても、同様に認められる。

(4)請求項1の段落(C)には、「前記第1のセグメント以外のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報」と記載されているが、「前記第1のセグメント」と、それ「以外のセグメント」との関係が不明である(例えば、段落【0117】、【0121】、【0122】や図10等に記載されているような、複数のメディアデータのヘッダである一の「ヘッダファイル」と、複数のメディアデータがそれぞれ含んでいる「Slice」のような関係があるのか?)。また、現記載では、「前記第1のセグメント」が、それ「以外のセグメント」よりも、時間的に後に受信したものである場合をも包含しているが、発明の詳細な説明において、当該場合については、何ら開示されていない。
したがって、これらの点において、請求項1の記載が明確性要件を充足しているということはできず、また、サポート要件を充足しているということもできない。

これらの記載不備は、請求項1を引用する請求項2ないし13、及び請求項1のいわゆるカテゴリー違いの発明を記載した請求項14、15においても、同様に認められる。

2.理由2)について
この出願の請求項1?3、7、11に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例A.国際公開第2009/158344号
引用例B.特開2009-159625号公報』

(2)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の判断
ア 理由1について
(ア-1)
平成29年 1月 4日付け手続補正によって、請求項1の段落(A)の、「少なくとも1つのセグメント」という記載が、「複数のセグメント」に補正された。
これにより、セグメントが複数あることが明確となり、請求項1の他の記載との不整合が解消されたため、請求項1の記載は明確となり、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。

(ア-2)
平成29年 1月 4日付け手続補正によって、請求項2は削除されたため、請求項2に関する不備は解消された。

(ア-3)
平成29年 1月 4日付け手続補正によって、「セグメント」が、「メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す」ものであることが明確になるように補正された。
これにより、請求項1の記載は明確となり、また、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。

(ア-4)
平成29年 1月 4日付け手続補正によって、「前記第1のセグメント以外のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報」という記載が、「前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報」と補正された。
これにより、「第1のセグメント以外のセグメント」は、「第1のセグメント以後のセグメント」であることが明確となり、また、「第1のセグメント」と「第1のセグメント以後のセグメント」との関係が明確となり、さらに、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。

請求項1についての不備が解消したため、請求項1を引用する請求項についての不備も解消した。また、同様の不備のあった請求項12及び13についても、請求項1と同様の補正が行われたため、これらの不備も解消した。
よって、平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の理由1は解消した。

イ 理由2について
(ア)引用例の記載及び引用発明
A.引用例Aの記載及び引用発明A
(A)引用例Aの記載
当審の拒絶理由に引用例Aとして引用された、国際公開第2009/158344号(以下、「引用例A」という。)には、「SEGMENTED MEDIA CONTENT RIGHTS MANAGEMENT」(邦訳「セグメント化メディアコンテンツ著作権管理」)(発明の名称)として、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、邦訳に当たっては、上記国際公開された国際出願の日本出願の公表公報である特表2011-526136号公報の訳を参照している。

i.「[0008] Embodiments of segmented media content rights management provide that a media device, such as a television client device or portable music device, can receive segments of protected media content from media content streams that each include a different version of the same media content. The different versions of the same media content (e.g., a movie) can be distributed with varying parameters, such as different resolutions, quality, bit rate, and the like. For example, a movie may be distributed from a content distributor in several different versions, or formats, to accommodate the different rendering capabilities of the various types of media devices that a consumer or subscriber utilizes to watch the movie. The movie can be distributed in high-definition for a television client device that can render high- definition video for display on an HDTV, for example. The movie can also be distributed in standard-definition for processing and display on a portable computer, for example. In addition, the movie can be distributed in a low-definition or other minimal resolution format for display on a portable hand-held device.
[0009] A content distributor can segment the different media content streams at a uniform interval across all of the different media content streams, such as in two-second slices, which may be referred to as segmented streaming. A client device or media device can then acquire or receive segments of the media content from any of the different media content streams. For example, a laptop computer may be connected via a cable modem to receive segments of a movie in high- definition from a media content stream. While watching the movie, a user may then move outside and connect the laptop computer wirelessly to continue watching the movie. Because of a decrease in available bandwidth, the laptop computer can continue to receive segments of the movie in standard-definition from a different media content stream. If the signal degrades further, the laptop computer can then continue to receive segments of the movie in a low-definition format from yet another different media content stream. The media device (e.g., the laptop computer in this example) will then have received segments of the protected media content (e.g., the movie) in different versions from any number of the different media content streams.」
(邦訳)
「[0008] セグメント化メディアコンテンツ著作権管理の実施形態は、テレビジョンクライアントデバイスまたはポータブル音楽デバイスのようなメディアデバイスが、同一のメディアコンテンツの異なるバージョンを各々が含むメディアコンテンツストリームから保護されたメディアコンテンツのセグメントを受信することができるようにする。同一のメディアコンテンツ(たとえば、ムービー)の異なるバージョンは、さまざまな解像度、品質、ビットレートなどのような、可変のパラメーターで配信されてもよい。たとえば、ムービーは、消費者または加入者がムービーを見るために使用するさまざまなタイプのメディアデバイスの異なるレンダリング能力に対応するように、いくつかの異なるバージョンまたはフォーマットでコンテンツディストリビューターから配信されてもよい。ムービーは、たとえば、HDTVで表示するために高品位ビデオをレンダリングすることができるテレビジョンクライアントデバイス向けに高品位で配信されてもよい。ムービーはまた、たとえば、ポータブルコンピューターで処理して表示するために標準品位で配信されてもよい。加えて、ムービーは、ポータブルハンドヘルドデバイスで表示するために低品位またはその他の最小解像度フォーマットで配信されてもよい。
[0009] コンテンツディストリビューターは、異なるメディアコンテンツストリームを、異なるメディアコンテンツストリームのすべてにわたり、2秒の「スライス」のような均一の間隔でセグメント化することができるが、これはセグメント化ストリーミングと呼ばれることもある。次いで、クライアントデバイスまたはメディアデバイスは、異なるメディアコンテンツストリームのいずれからでもメディアコンテンツのセグメントを取得または受信することができる。たとえば、ラップトップコンピューターは、メディアコンテンツストリームから高品位でムービーのセグメントを受信するために、ケーブルモデムを介して接続されてもよい。ムービーを見ている間、ユーザーは戸外に移動して、ラップトップコンピューターを無線で接続してムービーを見続けることができる。使用可能な帯域幅が減少するので、ラップトップコンピューターは、異なるメディアコンテンツストリームから標準品位でムービーのセグメントを引き続き受信することができる。信号がさらに劣化する場合、ラップトップコンピューターは、さらに別の異なるメディアコンテンツストリームから低品位でムービーのセグメントを引き続き受信することができる。次いで、メディアデバイス(たとえば、この例においてラップトップコンピューター)は、任意の数の異なるメディアコンテンツストリームから異なるバージョンの保護されたメディアコンテンツ(たとえば、ムービー)のセグメントを受信することになる。」

(B)引用発明A
上記のi.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用例Aに開示された発明(以下、「引用発明A」という。)を方法の発明として認定する。

(ア)上記i.の段落0008には、同一のメディアコンテンツの異なるバージョンを各々が含むメディアコンテンツストリームを受信することが開示されている。ここで、「各々」という語句は、複数あることを前提とする表現であるから、メディアコンテンツストリームは複数存在するものである。
なお、受信を行うときには、複数のメディアコンテンツストリームのなかから、少なくとも1つを受信していることは明らかである。
また、上記i.の段落0008には、異なるバージョンは品質が異なることが開示されている。
さらに、上記i.の段落0009には、メディアコンテンツストリームは、時間に基づいてセグメントに分割されること、すなわち、メディアコンテンツストリームは、複数のセグメントを含むことが開示されている。

よって、引用例Aには、『同一のメディアコンテンツの品質の異なるバージョンのコンテンツであり、複数のセグメントを含む、複数のメディアコンテンツストリームのうち少なくとも1つを受信するステップからなるデータ受信方法』が開示されている。

(イ)さらに、上記(ア)で言及したように、引用例Aには、メディアコンテンツストリームは、時間に基づいてセグメントに分割されることを開示しているが、これは、セグメントは、メディアコンテンツストリームを時間に基づき分割した各部分であると言い換えることができる。

よって、引用例Aには、『セグメントは、メディアコンテンツストリームを時間に基づき分割した各部分を示す』ことが開示されている。

以上のとおり、引用例Aには、以下の引用発明Aが開示されている。
なお、下記のとおり、説明のためにaないしiの記号を当審において付与した。以下、構成a等と称することにする。

(引用発明A)
「a 同一のメディアコンテンツの品質の異なるバージョンのコンテンツであり、複数のセグメントを含む、複数のメディアコンテンツストリームのうち少なくとも1つを受信するステップであって、
b 前記セグメントは、前記メディアコンテンツストリームを時間に基づき分割した各部分を示す、ステップ、
i からなるデータ受信方法。」

B.引用例Bの記載及び引用発明B
(A)引用例Bの記載
当審の拒絶理由に引用例Bとして引用された特開2009-159625号公報(以下、「引用例B」という。)には、「デジタル放送用ストリームの蓄積方法」(発明の名称)として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ii.「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる点に鑑み、ストリーム形式のパケット化コンテンツ(TSパケット)のトリックプレイ、例えば早送り、巻き戻し、ダイジェクト再生、サムネール表示等を効率的に実行することが可能なデジタル放送方法、デジタル受信機等を提供することにある。
かかる課題を達成するため、ストリーム形式のパケット化コンテンツ(TSパケット)のトリックプレイを可能とするトリックプレイ制御情報を送信又は受信し、該トリックプレイ制御情報をもってTSパケットのトリックプレイを可能に構成した。」

iii.「【0015】
(トリックプレイ制御テーブル)
MPEG2のストリームにおいてトリックプレイを行う際には以下の位置を把握する必要がある。
(1)映像ストリームに関しては1枚のフレームを復元できる情報をもつIフレームの先頭パケット位置。
(2)音声ストリームに関しては音声の最小構成単位であるAAUの先頭パケット位置。
(3)その他のストリームに関しては映像や音声に対応するパケット位置。」

iv.「【0020】
(トリックプレイ制御テーブルの配信方法)
前述したように本発明のストリーム蓄積方法ではリアルタイム配信およびファイル配信の両方で蓄積を行うことができる。これらの配信形態によるトリックプレイ制御テーブルの配信方法について示す。
(1)リアルタイム配信の場合
リアルタイム配信のストリームを蓄積する際に問題となるのは、トリックプレイ制御テーブル内のパケット位置72の記述方法である。リアルタイムに配信されるストリームの記録はいつ開始してもよく、そのためストリームの先頭という概念がない。このため、図5のようにストリーム内にトリックプレイ制御テーブルを挿入し、パケット位置72は挿入されたテーブルからの相対パケット番地により記述する。」

(B)引用発明B
上記のii.-iv.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用例Bに開示された発明(以下、「引用発明B」という。)を方法の発明として認定する。

(引用発明B)
「パケット化コンテンツのトリックプレイ(例えば、早送り、巻き戻し等)を行う方法であって、
トリックプレイ再生に必要なパケットの先頭パケット位置を示す制御情報を、ストリーム内に配置し、
先頭パケット位置は、Iフレームの先頭パケット位置を示す、
方法。」

(イ)本願発明1の対比・判断
A.対比
本願発明1と引用発明Aを対比する。

(A-1)本願発明1の構成A1と引用発明Aの構成aについて
構成aの「メディアコンテンツ」及び「メディアコンテンツストリーム」は、コンテンツ及びコンテンツについて受信される情報であるから、構成A1の「コンテンツ」及び「メディアデータ」に一致する。
構成aの「セグメント」は、コンテンツを時間に基づき分割したものであるから、構成A1の「セグメント」に一致する。
構成aの「同一のメディアコンテンツの品質の異なるバージョン」は、同じコンテンツであるが品質が異なることを意味するから、構成A1「コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される」「メディアデータ」と「同じコンテンツであるが品質の異なる」「メディアデータ」である点で共通する。
構成aの「複数のメディアコンテンツストリームのうち少なくとも1つを受信」することは、明らかに、構成A1の「複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信」することと一致する。

よって、本願発明1の構成A1と引用発明Aの構成aとは、「同じコンテンツであるが品質の異なる、複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップ」で共通する。
しかし、「同じコンテンツであるが品質の異なる」「メディアデータ」に関し、本願発明1では、「コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される」のに対し、引用発明Aでは、その生成方法は規定されていない点で相違する。

(A-2)本願発明1の構成B1と引用発明Aの構成bについて
上記(A-1)で言及したように、構成bの「セグメント」は、構成B1の「セグメント」に一致する。

よって、本願発明1の構成B1は、引用発明Aの構成bに一致する。

(A-3)本願発明1の構成C1及びF1と引用発明Aについて
引用例Aには、ランダムアクセスを行うことに関する記載はないため、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報を獲得するステップである、本願発明1のC1に対応する構成がなく、また、ランダムアクセスを行うステップである、本願発明1のF1に対応する構成がない点で相違する。

(A-4)本願発明1の構成D1と引用発明Aについて
上記(A-3)で言及したように、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がないから、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報を限定する構成である、本願発明1のD1に対応する構成がない点で相違する。

(A-5)本願発明1の構成E1と引用発明Aについて
上記(A-3)で言及したように、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がないから、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報を限定する構成である、本願発明1のE1に対応する構成がない点で相違する。

(A-6)本願発明1の構成G1と引用発明Aについて
上記(A-3)で言及したように、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がないから、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報を限定する構成である、本願発明1のG1に対応する構成がない点で相違する。

(A-7)本願発明1の構成H1と引用発明Aについて
上記(A-3)で言及したように、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がないから、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報を限定する構成である、本願発明1のH1に対応する構成がない点で相違する。

(A-8)本願発明1の構成I1と引用発明Aの構成iについて
構成i1の「データ受信方法」は、明らかに、構成I1の「データ受信方法」に一致する。

よって、本願発明1の構成I1は、引用発明Aの構成iに一致する。

(A-9)小括
したがって、本願発明1と引用発明Aは、以下の点で一致ないし相違する。
[一致点]
同じコンテンツであるが品質の異なる、複数のセグメントを含む複数個のメディアデータのうち少なくとも一つを受信するステップであって、
前記セグメントは、前記メディアデータを時間に基づき分割した各部分を示す、ステップ、
を含むデータ受信方法。

[相違点1]
「同じコンテンツであるが品質の異なる」メディアデータに関し、本願発明1では、「コンテンツを異なる品質にエンコーディングすることで生成される」のに対し、引用発明Aでは、その生成方法は規定されていない点。

[相違点2]
ランダムアクセスに関し、本願発明1は、「複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報を獲得するステップ」と、「前記情報に基づき前記受信されたメディアデータ内の少なくとも1つのセグメントにランダムアクセスするステップ」を有するのに対し、引用発明Aには、これらの構成はない点。

[相違点3]
ランダムアクセスに関する情報に関し、本願発明1は、「前記複数のセグメントのうちの第1のセグメントに含まれ」ているのに対し、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がない点。

[相違点4]
ランダムアクセスに関する情報に関し、本願発明1は、「前記複数のセグメントのうちの前記第1のセグメント以後のセグメントについてのランダムアクセスが可能なポイントを示す位置情報」を含むのに対し、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がない点。

[相違点5]
ランダムアクセスに関する情報に関し、本願発明1は、「前記複数のセグメントに含まれたアクセスユニットに対応する少なくとも一つのフレームをインデクシングする情報」を含むのに対し、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がない点。

[相違点6-1]
ランダムアクセスに関する情報に関し、本願発明1は、「前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なあらゆるパケットの位置を示す第2オフセット情報」を含むのに対し、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がない点。

B.判断
(B-1)相違点1について
同じコンテンツであって異なる品質の複数のデータを作成するために、同じコンテンツに対して異なる品質でエンコーディングすることによって複数のデータを作成する方法は、本願出願前に周知の技術である。
よって、引用発明Aにおける「同一のメディアコンテンツの品質の異なるバージョン」を作成する方法として、周知技術である、「同一のコンテンツに対して異なる品質でエンコーディングする」方法を採用し、相違点1に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、相違点1は、格別なものではない。

(B-2)相違点2について
引用発明Bの「トリックプレイ」は、早送り又は巻き戻し等、すなわち、ランダムアクセスを用いた再生を意味するものであるから、本願発明1の「ランダムアクセス」に相当する。
そして、引用発明Bの「トリックプレイ再生に必要なパケットの先頭パケットの位置」が記述された「制御情報」は、ランダムアクセスに関する情報であって、ランダムアクセスを行う位置を示すものであるから、本願発明1の「複数のセグメントそれぞれのランダムアクセスが可能なポイントを示す情報」に相当する。
また、トリックプレイを行うときには、トリックプレイに用いる情報が事前に獲得されていることは、明らかである。
ここで、取得したコンテンツを再生するにあたり、早送りや巻き戻し等のランダムアクセスを用いた再生を行えるようにすることは、本願出願前における周知の課題であり、引用発明Aにおいても、そのような課題が内在すると言える。
よって、引用発明Aに引用発明Bを組み合わせ、トリックプレイを行うとともに、「トリックプレイ再生に必要なパケットの先頭パケットの位置」が記述された「制御情報」を獲得し、「制御情報」に基づいてトリックプレイを行うようにすることで、相違点2に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、相違点2は、格別のものではない。

(B-3)相違点3について
引用発明Aの「メディアストリーム」は「複数のセグメント」を含むものである。
また、引用発明Bの「制御情報」は、「ストリーム内」に含まれるものである。
よって、引用発明Aに引用発明Bを組み合わせたときには、制御情報はメディアストリームのいずれかのセグメントに含まれることとなる。そして、「制御情報が含まれるセグメント」を、「第1のセグメント」と称することは、任意のことであるから、「制御情報」は、複数のセグメントのうちの「第1のセグメント」に含まれると言える。
よって、引用発明Aに引用発明Bを組み合わせることで、「制御情報」は「第1のセグメント」に含まれるようになるから、相違点3に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、相違点3は、格別のものではない。

(B-4)相違点4について
上記(B-2)で言及したように、引用発明Bの「制御情報」を用いたトリックプレイを行うときには、「制御情報」は事前に獲得されていることは明らかである。言い換えるならば、「制御情報」を用いたトリックプレイの対象となる位置は、「制御情報」が含まれるセグメントである、「第1のセグメント」以後のセグメントについての位置であることは明らかである。
よって、引用発明Aに引用発明Bを組み合わせることで、「制御情報」の「トリックプレイ再生に必要なパケットの先頭パケット位置」は、「第1のセグメント以後のセグメント」についての位置となるから、相違点4に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、相違点4は、格別のものではない。

(B-5)相違点5について
引用発明Bの「制御情報」の「トリックプレイ再生に必要なパケットの先頭パケット位置」は、「アクセスユニットであるIフレームの先頭パケット位置」を示すものであるから、「制御情報」は、アクセスユニットであるフレームをインデキシングする情報を含んでいると言える。
よって、引用発明Aに引用発明Bを組み合わせることで、「制御情報」は、「アクセスユニットであるフレームをインデキシングする情報を含む」こととなるから、相違点5に係る構成に至ることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、相違点5は、格別なものではない。

(B-6)相違点6-1について
引用発明Bの「制御情報」は、「前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なあらゆるパケットの位置を示す第2オフセット情報」に関するものではなく、また、引用例Bには、このことについては記載も示唆もされておらず、当業者が想定できないものである。

よって、引用発明A及びB並びに引用例A及びBに記載された技術を勘案しても、上記相違点6-1に係る構成を思い至ることは、論理に飛躍があり、容易に想到できるとは言えない。

したがって、本願発明1は、当業者が引用例A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。

(ウ)本願発明3の対比・判断
A.対比
本願発明3と引用発明Aを対比する。

(A-1)本願発明3の構成A3ないしG3及びI3と引用発明Aについて
本願発明3の構成A3ないしG3及びI3は、本願発明の構成A1ないしG1及びI1と同じ構成であるから、本願発明3の構成A3ないしG3及びI3と引用発明Aとの対比については、「第3.当審拒絶理由について 1.平成28年 9月27日付け当審拒絶理由について (2)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の判断 イ.理由2について (イ)本願発明1の対比・判断 A.対比 (A-1)本願発明1の構成A1と引用発明Aの構成aについて」ないし同「(A-6)本願発明1の構成G1と引用発明Aについて」及び同「(A-8)本願発明1の構成I1と引用発明Aの構成iについて」と同じである。

(A-2)本願発明3の構成H3と引用発明Aについて
引用発明Aには、本願発明のH3に対応する構成はない。

(A-3)小括
したがって、本願発明3と引用発明Aとは、本願発明1と引用発明Aとの一致点と同じ点で一致し、本願発明1と引用発明Aとの相違点1ないし5と同じ点で相違する。さらに、本願発明3と引用発明Aとは、新たに相違点6-3で相違する。

[相違点6-3]
ランダムアクセスに関する情報に関し、本願発明3は、「前記第1のセグメント以後のセグメントのあらゆるアクセスユニットについての情報を示す第3オフセット情報」を含むのに対し、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がない点。

B.判断
(B-1)相違点1ないし5について
相違点1ないし5についての判断は、上記「第3.当審拒絶理由について 1.平成28年 9月27日付け当審拒絶理由について (2)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の判断 イ.理由2について (イ)本願発明1の対比・判断 B.判断 (B-1)相違点1について」ないし同「(B-5)相違点5について」のとおりであり、相違点1ないし5は、格別のものではない。

(B-2)相違点6-3について
引用発明Bの「制御情報」は、「前記第1のセグメント以後のセグメントのあらゆるアクセスユニットについての情報を示す第3オフセット情報」に関するものではなく、また、引用例Bには、このことについては記載も示唆もされておらず、当業者が想定できないものである。

よって、引用発明A及びB並びに引用例A及びBに記載された技術を勘案しても、上記相違点6-3に係る構成を思い至ることは、論理に飛躍があり、容易に想到できるとは言えない。

したがって、本願発明3は、当業者が引用例A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。

(エ)本願発明6の対比・判断
A.対比
本願発明6と引用発明Aを対比する。

(A-1)本願発明6の構成A6ないしG6及びI6と引用発明Aについて
本願発明6の構成A6ないしG6及びI6は、本願発明の構成A1ないしG1及びI1と同じ構成であるから、本願発明6の構成A6ないしG6及びI6と引用発明Aとの対比については、「第3.当審拒絶理由について 1.平成28年 9月27日付け当審拒絶理由について (2)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の判断 イ.理由2について (イ)本願発明1の対比・判断 A.対比 (A-1)本願発明1の構成A1と引用発明Aの構成aについて」ないし同「(A-6)本願発明1の構成G1と引用発明Aについて」及び同「(A-8)本願発明1の構成I1と引用発明Aの構成iについて」と同じである。

(A-2)本願発明6の構成H6について
引用発明Aには、本願発明のH6に対応する構成はない。

(A-3)小括
したがって、本願発明6と引用発明Aとは、本願発明1と引用発明Aとの一致点と同じ点で一致し、本願発明1と引用発明Aとの相違点1ないし5と同じ点で相違する。さらに、本願発明6と引用発明Aとは、新たに相違点6-6で相違する。

[相違点6-6]
ランダムアクセスに関する情報に関して、本願発明6は、「前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なパケットが、他のパケットと共に再生されるか否かを示す依存情報」を含むのに対し、引用発明Aには、ランダムアクセスに関する情報がない点。

B.判断
(B-1)相違点1ないし5について
相違点1ないし5についての判断は、上記「第3.当審拒絶理由について 1.平成28年 9月27日付け当審拒絶理由について (2)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の判断 イ.理由2について (イ)本願発明1の対比・判断 B.判断 (B-1)相違点1について」ないし同「(B-5)相違点5について」のとおりであり、相違点1ないし5は、格別のものではない。

(B-2)相違点6-6について
引用発明Bの「制御情報」は、「前記第1のセグメント以後のセグメントでランダムアクセスが可能なパケットが、他のパケットと共に再生されるか否かを示す依存情報」に関するものではなく、また、引用例Bには、このことについては記載も示唆もされておらず、当業者が想定できないものである。

よって、引用発明A及びB並びに引用例A及びBに記載された技術を勘案しても、上記相違点6-6に係る構成を思い至ることは、論理に飛躍があり、容易に想到できるとは言えない。

したがって、本願発明6は、当業者が引用例A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。

(オ)本願の請求項2、4、5、7ないし13に記載された発明の判断
上記のように、本願発明1、3及び6は、当業者が引用例A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。
本願の請求項2、4、5、7ないし11に記載された発明は、本願発明1、3又は6を直接又は間接的に引用する発明であり、本願発明1、3又は6の構成をさらに限定するものであるので、本願発明1、3及び6と同様に、当業者が引用例A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。
本願の請求項12は、方法の発明である本願発明1を物の発明として記載したものであり、本願の請求項13は、プログラムを記録した記録媒体の発明として記載したものであるから、本願の請求項12及び13に記載された発明は、本願発明1と同様に、当業者が引用例A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。

(カ)小括
よって、平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の理由2は解消した。

ウ 小括
したがって、平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の理由1及び理由2は解消した。

第4 拒絶査定(以下、「原査定」という。)の理由について
1.原査定の理由の概要

『本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1.特開2009-159625号公報
引用例2.国際公開第2009/158344号
引用例3.特開平06-252876号公報』

2.原査定の理由の判断
(1)引用例の記載事項及び引用発明
ア 引用例1の記載及び引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用例1として引用された特開2009-159625号公報(以下、「引用例1」という。)は、平成28年 9月27日付け当審拒絶理由に引用例Bとして引用された文献である。
よって、引用例1に開示された発明(以下、「引用発明1」という。)は、上記引用発明Bと同じ発明である。

イ 引用例2の記載及び引用発明2
原査定の拒絶の理由に引用例2として引用された国際公開第2009/158344号(以下、「引用例2」という。)は、平成28年 9月27日付け当審拒絶理由に引用例Aとして引用された文献である。
よって、引用例2に開示された発明(以下、「引用発明2」という。)は、上記引用発明Aと同じ発明である。

ウ 引用例3の記載及び引用発明3
(ア)引用例3の記載
原査定の拒絶の理由に引用例3として引用された特開平6-252876号公報(以下、「引用例3」という。)には、「画像音声符号化データ多重化装置及び多重化データ読み込み装置」(発明の名称)として、図面とともに以下の事項が記載されている。

v.「【0012】次に、図1の符号化デ-タ多重化装置で生成された多重化デ-タを、蓄積メディアから読み込む方法について述べる。図6は、本発明の一実施例を示す多重化デ-タ読み込み装置のブロック図である。蓄積メディア用動画像・音声復号化システムにおいては、多重化デ-タ読み込み装置を用いて蓄積メディアからのIntraデ-タの連続読み込みを行う。図6において、31は蓄積メディアから多重化デ-タを読み込む多重化デ-タ読み込み部、32は読み込んだ多重化デ-タから多重化パケットを得る多重化パケット取得手段、33は読み込んだ多重化パケットの多重化ヘッダから前方および後方Intraパケットオフセットを取得する多重化ヘッダ解析手段、34は前方または後方Intraパケットオフセットを用いて、前後のIntraパケットの先頭へ読み込み位置を移動する読み込み位置移動手段である。以下、図6の動作を説明する。先ず、多重化パケット読み込み手段32により、蓄積メディアに記載されている多重化デ-タからIntraパケットを1つ取得し、その多重化ヘッダを多重化ヘッダ解析手段33に転送する。多重化ヘッダ解析手段33は、多重化ヘッダを解析して前方および後方Intraパケットオフセットを取得する。そして、次に読み込むベきIntraパケットが過去のものであるときには、多重化ヘッダ解析手段33から後方Intraパケットオフセット値を読み込み位置移動手段34に入力することにより、読み込み位置移動手段34はその値の分だけ後方に蓄積メディアの読み込み位置を移動する。また、次に読み込むべきIntraパケットが未来のものであるときには、多重化ヘッダ解析手段33から前方Intraパケットオフセット値を読み込み位置移動手段34に入力することにより、読み込み位置移動手段34はその値の分だけ前方に蓄積メディアの読み込み位置を移動する。この処理を繰り返し行うことにより、Intraパケットの連続読み込みを行うことができる。」

(イ)引用発明3
上記のv.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して、引用例3に開示された発明(以下、「引用発明3」という。)を方法の発明として認定する。

(引用発明3)
「多重化データ読み取り装置が行う方法であって、パケットからパケットオフセットを取得して読み込み位置を移動する処理を繰り返してパケットの連続読み込みを行う方法。」

(2)本願発明1、3及び6の判断
上記「第3.当審拒絶理由について 1.平成28年 9月27日付け当審拒絶理由について (2)平成28年 9月27日付け当審拒絶理由の判断 イ.理由2について」で言及したように、本願発明1は、相違点6-1により、引用例1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。
同様に、本願発明3は、相違点6-3により、また、本願発明6は、相違点6-6により、引用例1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは言えない。

そして、引用発明3は、これらの相違点6-1ないし6-6に関するものではなく、また、引用例3には、これらのことについては記載も示唆もされておらず、当業者が想定できないものである。

よって、引用発明1ないし3並びに引用例1ないし3に記載された技術を勘案しても、上記相違点6-1ないし6-6に係る構成を思い至ることは、論理に飛躍があり、容易に想到できるとは言えない。

したがって、本願発明1、3及び6は、当業者が引用例1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。

(3)本願の請求項2、4、5、7ないし13に記載された発明の判断
上記のように、本願発明1、3及び6は、当業者が引用例1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。
本願の請求項2、4、5、7ないし11に記載された発明は、本願発明1、3又は6を直接又は間接的に引用する発明であり、本願発明1、3又は6の構成をさらに限定するものであるので、本願発明1、3及び6と同様に、当業者が引用例1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。
本願の請求項12は、方法の発明である本願発明1を物の発明として記載したものであり、本願の請求項13は、プログラムを記録した記録媒体の発明として記載したものであるから、本願の請求項12及び13に記載された発明は、本願発明1と同様に、当業者が引用例1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものとは言えない。

3.小括
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-07 
出願番号 特願2012-553824(P2012-553824)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎後藤 嘉宏  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 冨田 高史
小池 正彦
発明の名称 データ伝送方法及び装置、並びにデータ受信方法及び装置  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  

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