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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1325514
審判番号 不服2016-6491  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-02 
確定日 2017-02-23 
事件の表示 特願2011-289092「情報端末、プログラムおよび運転支援方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日出願公開、特開2013-137271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年12月28日の出願であって、平成27年7月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年9月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年2月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年5月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 平成28年5月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年5月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
〔1〕本件補正の内容
平成28年5月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年9月10日に提出された手続補正書により補正された)下記の(A)に示す請求項1を、下記の(B)に示す請求項1とする補正を含むものである。
(A)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
複数の現在地の候補および当該現在地の候補の確度を算出する現在地候補算出手段と、
前記現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、前記現在地の候補の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段と、
前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させる外部誘導利用開始手段と、
を備えることを特徴とする情報端末。」

(B)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
複数の現在地の候補および当該現在地の候補の確度を算出する現在地候補算出手段と、
前記現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、前記現在地の候補の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段と、
前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させるための指示を出し前記外部機器から得た映像に表示を切り替える外部誘導利用開始手段と、
を備えることを特徴とする情報端末。」
(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

〔2〕本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1における「前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させる外部誘導利用開始手段」という記載を、「前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させるための指示を出し前記外部機器から得た映像に表示を切り替える外部誘導利用開始手段」という記載にするものであるから、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「外部誘導利用開始手段」の機能を限定するものといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

〔3〕本願補正発明の独立特許要件について
1 本願補正発明
本願補正発明は、平成28年5月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記〔1〕(B)に示したとおりのものである。

2 先願明細書等
(1)先願明細書等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願の日前の他の特許出願であって本件出願後に出願公開がされた特願2011-150683号(特開2013-19676号)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、自動車に搭載されたナビゲーション装置における、地図データの道路データの欠落に対応する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されたナビゲーション装置において用いられる地図データには、当該地図データの作成後に新たな道路が完成したなどの理由により、現実に存在する道路の道路データの欠落が発生することがある。
そして、このようなナビゲーション装置における地図データの道路データの欠落に対応する技術としては、算出した現在位置が、ナビゲーション装置が備える地図データが表す地図中の道路上に無いときに、通信を介して情報センタにアクセスし最新の地図データをダウンロードする技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、GPS受信機等より現在位置を算出すると共に、通信を介してサーバから地図データを取得しつつ、取得した地図データを用いて、地図上で現在位置や目的地までのルートを案内するナビゲーション機能を備えた携帯装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-050765号公報
【特許文献2】特開2004-340633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような、算出した現在位置が、ナビゲーション装置が備える地図データが表す地図中の道路上に無いときに、通信を介して情報センタにアクセスし最新の地図データをダウンロードする技術によれば、地図データのダウンロードに時間を要するため、直ちに、地図上で現在位置を正しく案内することはできない。
【0006】
また、このような技術は、情報センタを利用することのできないナビゲーション装置には適用することができず、また、情報センタから有料で地図データが提供されるものである場合には、相応のコストが発生することとなる。
そこで、本発明は、ナビゲーション装置において、算出した現在位置がナビゲーション装置が備える地図データが表す地図中の道路上に無い場合であっても、直ちに、地図上で現在位置を正しく案内することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、無線通信を介してサーバから地図を取得し表示する機能を備えたモバイル装置を接続可能な、自動車に搭載されるナビゲーション装置に、地図を表す地図データを記憶した記憶手段と、現在位置を算出する現在位置算出手段と、前記記憶手段に記憶された地図データが表す地図上に前記現在位置算出手段が算出した現在位置を表した第1案内画像を生成する第1案内画像生成手段と、前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、前記記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段が車両走行が不能な地点でないと判定した場合に前記第1案内画像を表示し、前記判定手段が車両走行が不能な地点であると判定した場合に前記接続されたモバイル装置から当該モバイル装置が前記サーバから取得した地図を取得し、取得した地図上に前記現在位置算出手段が算出した現在位置を表した第2案内画像を生成して表示する案内画像出力手段とを設けたものである。
【0008】
このようなナビゲーション装置によれば、前記モバイル装置が前記サーバから取得する地図データは最新のものであることが期待できるので、ナビゲーション装置の記憶手段に記憶されている地図データに走行中道路のデータが欠落している場合にも、正しく、地図上で現在位置を案内できるようになる。
【0009】
ここで、このようなナビゲーション装置は、前記案内画像出力手段において、前記判定手段が車両走行が不能な地点であると判定した場合であっても、前記モバイル装置が前記サーバから取得した地図上の、前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する地点が、車両走行が不能な地点である場合には、前記第1案内画像を表示するように構成してもよい。
【0010】
このようにすることにより真にナビゲーション装置の記憶手段に記憶されている地図データに走行中道路のデータが欠落している場合にのみ、第2案内画像を表示できるようになる。
また、前記課題達成のために、本発明は、現在位置を算出すると共に、無線通信を介して地図情報を提供するサーバと協調動作して、地図上に算出した現在位置を表したナビゲーション画像を生成して表示するナビゲーション機能を備えたモバイル装置を接続可能な、自動車に搭載されるナビゲーション装置に、地図を表す地図データを記憶した記憶手段と、現在位置を算出する現在位置算出手段と、前記記憶手段に記憶された地図データが表す地図上に前記現在位置算出手段が算出した現在位置を表した第1案内画像を生成する第1案内画像生成手段と、前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、前記記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段が車両走行が不能な地点でないと判定した場合に前記第1案内画像を表示し、前記判定手段が車両走行が不能な地点であると判定した場合に前記接続されたモバイル装置の前記ナビゲーション機能から前記ナビゲーション画像を表示する案内画像出力手段とを備えたものである。
【0011】
このようなナビゲーション装置によれば、前記サーバの地図情報は最新のものであることが期待できるので、ナビゲーション装置の記憶手段に記憶されている地図データに走行中道路のデータが欠落している場合にも、正しく、地図上で現在位置を案内できるようになる。
【0012】
ここで、このようなナビゲーション装置は、前記案内画像出力手段において、前記判定手段が車両走行が不能な地点であると判定した場合であっても、前記ナビゲーション画像に含まれる地図上の、前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する地点が、車両走行が不能な地点である場合には、前記第1案内画像を表示するようにしてもよい。
【0013】
このようにすることにより真にナビゲーション装置の記憶手段に記憶されている地図データに走行中道路のデータが欠落している場合にのみ、第2案内画像を表示できるようになる。
また、前記モバイル装置のナビゲーション機能を、前記ナビゲーション画像として、当該ナビゲーション機能に設定された目的地までのルートを表したナビゲーション画像を表示するものとして、このようなナビゲーション装置に、当該ナビゲーション装置に設定された目的地までのルートを設定するルート設定手段と、前記モバイル装置のナビゲーション機能に、当該ナビゲーション装置に設定された目的地と同じ地点を目的地として設定する目的地同期手段とを設け、前記第1案内画像生成手段において、前記記憶手段に記憶された地図データが表す地図上に前記現在位置算出手段が算出した現在位置と前記ルート設定手段が設定したルートを表した前記第1案内画像を生成するようにしてもよい。
【0014】
このようにすることにより、ナビゲーション画像を表示している期間中も、ナビゲーション装置に設定された目的地までのルートをユーザに提示することができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によればナビゲーション装置において、算出した現在位置がナビゲーション装置が備える地図データが表す地図中の道路上に無い場合であっても、直ちに、地図上で現在位置を正しく案内することができる。」(段落【0001】ないし【0015】)

イ 「【0017】
以下、本発明の実施形態について、車載装置に接続される携帯装置がスマートフォンである場合を例にとり説明する。
図1に、本第1実施形態に係る車載装置1とスマートフォン2の構成を示す。
スマートフォン2は、ユーザによって携帯されるモバイル装置であり、図示するように、操作部201、ディスプレイ202、マイクやスピーカなどを備えた音声入出力部203、ホストインタフェース204、スマートフォン2のOSであるところのSP-オペレーティングシステム205、SP-オペレーティングシステム205によって管理されSP-オペレーティングシステム205上で稼働するアプリケーションであるSP-AP206、GPS受信機207、ジャイロセンサ208、記憶部209、移動電話網にアクセスするための移動通信装置210を備えている。
【0018】
ここで、スマートフォン2は、SP-AP206として、移動通信装置210や音声入出力部203や操作部201を用いた移動電話機能を提供する移動電話アプリケーションや、ナビゲーション機能を提供するナビゲーションアプリケーションや、移動通信装置210を介して、地図を提供するサーバから地図画像を取得して表示する地図アプリケーションなどの、複数のアプリケーションを備えている。
【0019】
次に、車載装置1は、自動車に搭載される装置であり、図示するように、入力装置101、表示装置102、マイクやスピーカなどを備えた音声入出力装置103、デバイスインタフェース104、車載装置1のOSであるところのH-オペレーティングシステム105、H-オペレーティングシステム105によって管理されH-オペレーティングシステム105上で稼働するアプリケーションであるH-AP106、GPS受信装置107、自動車の車速や角速度を検出する車両状態センサ108、地図データを記憶した記憶装置109とを備えている。
【0020】
ここで、車載装置1は、H-AP106として、ナビゲーション機能を提供するカーナビゲーションアプリケーションなどの、複数のアプリケーションを備えている。
ここで、スマートフォン2のホストインタフェース204と車載装置1のデバイスインタフェース104は、Bluetooth(登録商標)や、WIFIなどの無線通信インタフェースやUSBなどの有線インタフェースによって無線接続して相互通信を行うものである。
ただし、スマートフォン2は、ハードウエア的には、CPUやメモリなどを備えたコンピュータを用いて構成されるものあり、SP-オペレーティングシステム205や、SP-AP206などは、当該コンピュータが、所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0021】
また、同様に車載装置1は、ハードウエア的には、CPUやメモリなどを備えたコンピュータを用いて構成されるものであり、H-オペレーティングシステム105や、H-AP106などは、当該コンピュータが、所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0022】
さて、このような構成において、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、GPS受信装置107や車両状態センサ108を利用した現在位置や現在進行方向の算出や、ユーザからの目的地の設定の受け付けや、設定された目的地までのルートの探索を、記憶装置109に記憶されている地図データを用いて行う。また、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、記憶装置109に記憶された地図データが表す地図上に、記憶装置109に記憶された施設データが表す施設位置を表す施設アイコンや、現在位置や現在の進行方向を表す現在地マークや目的地までのルートを表した案内画像の生成を行う。
【0023】
図2a1は、このような車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが生成する案内画像の例を示すものであり、案内画像は、記憶装置109に記憶された地図データが表す地図301上に、算出した現在位置を表す現在地マーク302や、ルート303や、施設を表す施設アイコン304を表したものとなっている。
【0024】
一方、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、移動通信装置210を用いた通信を介してサーバから所要地理的範囲の地図データを取得しつつ、サーバと協調動作して、GPS受信装置107や車両状態センサ108を利用した現在位置の算出や、設定された目的地までのルートの探索や、サーバから提供された地図データが表す地図上に現在位置や現在の進行方向を表すマークや目的地までのルートを表したナビゲーション画像を生成し、ディスプレイ202に表示出力する。
【0025】
図2b1は、このようなスマートフォン2のナビゲーションアプリケーションが生成するナビゲーション画像の例を示すものであり、ナビゲーション画像は、サーバから取得した地図データが表す地図401上に、算出した現在位置402や、ルート403等を表したものとなっている。ただし、地図401やナビゲーション画像は、画像としてサーバから、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションに提供されるものであってよい。
【0026】
ここで、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーション、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、それぞれ、目的地までのルートを設定しているときに、算出した現在位置がルートから逸脱すると、目的地までのルートを再度それぞれ上述のように探索して設定する機能を備えている。
【0027】
また、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、目的地の設定を受け付けたときに上述のように自身でルートを設定するとともに、当該目的地までのルートの設定をスマートフォン2のナビゲーションアプリケーションに要求し、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは要求に応えて、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが設定している目的地をスマートフォン2のナビゲーションアプリケーションの目的地として設定し、設定した目的地までのルートを、必要な場合にはサーバから所要地理的範囲の地図データを取得しつつサーバと協調動作して探索して設定する。」(段落【0017】ないし【0027】)

ウ 「【0028】
以下、このような構成において、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが行う案内画像表示処理について説明する。
図3に、この案内画像表示処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、現在、カーナビゲーションアプリケーションにおいて算出している現在位置が、記憶装置109に記憶している地図データが表す地図上において車両走行が可能な地点であるかどうかを調べる(ステップ502)。ここで、車両走行が可能な地点とは、地図上において道路上である地点、地図上において駐車場内である地点などである。
【0029】
そして、車両走行が可能な地点であれば(ステップ502)、上述のように生成した案内画像を表示装置102に表示し(ステップ512)、ステップ502からの処理に戻る。
一方、算出している現在位置に相当する、記憶装置109に記憶している地図データが表す地図上の地点が車両走行が可能な地点でなければ(ステップ502)、カーナビゲーションアプリケーションにおいて算出している現在位置が、サーバから取得した地図データが表す地図上において車両走行が可能な地点であるかどうかを判定する(ステップ504)。
【0030】
この判定は、たとえば、次のように行う。
すなわち、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションに、カーナビゲーションアプリケーションにおいて算出している現在位置を通知し、通知した現在位置が、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバから取得した地図データが表す地図上において車両走行が可能な地点であるかどうかを問い合わせる。
【0031】
一方、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、当該問い合わせを受けると、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションから通知された現在位置が、サーバから取得した地図データが表す地図上において車両走行が可能な地点であるかどうかを判定し、判定結果を車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションに応答する。なお、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションが、上述のようにサーバから、地図やナビゲーション画像を画像として取得している場合には、当該画像を画像解析して、画像内の道路や駐車場の領域を識別し、通知された現在位置に相当する画像上の位置が道路や駐車場を表す図形の領域内の位置である場合に、車両が走行が可能な地点であると判定するようにする。なお、画像内の道路や駐車場の図形の領域は、たとえば、当該画像中において道路を表す色として用いられている色や、駐車場を表す色として用いられている色によって描画されている領域を道路や駐車場の図形の領域とすることにより識別することができる。
【0032】
そして、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションには、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションの応答に基づいて、算出している現在位置に相当する、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバから取得した地図データが表す地図上の地点が、車両走行が可能な地点であるかどうかを決定する。
【0033】
さて、次に、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、算出している現在位置が、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバから取得した地図データが表す地図上において、車両走行が可能な地点でないと判定された場合には(ステップ504)、上述のように生成した案内画像を表示装置102に表示し(ステップ512)、ステップ502からの処理に戻る。
【0034】
一方、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、算出している現在位置が、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバから取得した地図データが表す地図上において、車両走行が可能な地点であると判定された場合には(ステップ504)、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションに、現在、生成している案内画像と同地理的範囲、同地図縮尺のナビゲーション画像、または、案内画像と同地理的範囲、同地図縮尺の地図画像上にスマートフォン2のナビゲーションアプリケーションが設定しているルートを表したルート付地図画像の転送を要求し、当該ナビゲーション画像またはルート付地図画像をスマートフォン2のナビゲーションアプリケーションから取得する(ステップ506)。
【0035】
ここで、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションからナビゲーション画像の要求を受け取ると、要求された地理的範囲、地図縮尺のナビゲーション画像を、必要に応じてサーバから地図データ(もしくは、ナビゲーション画像または地図を表す画像)を取得しながら生成し、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションに転送する。または、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションからルート付地図画像の要求を受け取ると、要求された地理的範囲、地図縮尺の地図画像上にスマートフォン2のナビゲーションアプリケーションに設定されている目的地までのルートを表した画像をルート付地図画像として、必要に応じてサーバから地図データ(もしくは、地図を表す画像もしくはルート付地図画像自体)を取得しながら生成し、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションに転送する。
【0036】
そして、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、このようにして、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションから、ナビゲーション画像またはルート付地図画像を取得したならば、取得した、ナビゲーション画像またはルート付地図画像から第2案内画像を生成する(ステップ508)。
【0037】
ここで、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションにおける第2案内画像の生成は、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションからナビゲーション画像を取得している場合には、取得したナビゲーション画像を第2案内画像とすることにより生成する。また、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションにおける第2案内画像の生成は、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションからルート付地図画像を取得している場合には、取得したルート付地図画像上に、カーナビゲーションアプリケーションが算出している現在位置や現在の進行方向を表すマークや、記憶装置109に記憶している地図データが表す施設アイコン304を配置した画像を第2案内画像とすることにより生成する。
そして、生成した第2案内画像を表示装置102に表示し(ステップ510)、ステップ502からの処理に戻る。
【0038】
以上、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが行う案内画像表示処理について説明した。
以上のような案内画像表示処理によれば、たとえば、図2a1に示すように、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションにおいて、記憶装置109に記憶された地図データが表す地図における道路上に現在位置が算出されている場合には、当該図2a1に示す案内画像が車載装置1の表示装置102に表示される。
【0039】
一方、この後、たとえば、図2a2に示すように、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションにおいて、記憶装置109に記憶された地図データが表す地図上において道路外に現在位置が逸脱した場合であって、この時点において、図2b2に示すように、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが算出した現在位置が、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバから取得した地図データが表す地図上において道路上にある場合には、当該図2b2に示すナビゲーション画面が第2案内画像として車載装置1の表示装置102に表示される。
【0040】
または、この場合には、当該図2b2に示すナビゲーション画面を構成する地図とルートよりなるルート付画像に、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが算出した現在位置を表す現座位置マークや、記憶装置109に記憶された地図データが表す施設アイコン304を配置した、図2cに示すような画像が第2案内画像として、車載装置1の表示装置102に表示される。
【0041】
・・・略・・・
【0045】
・・・略・・・
以上、本発明の実施形態について説明した。
このように本実施形態によれば、ナビゲーション装置の記憶装置109に記憶されている地図データに走行中道路のデータが欠落している場合にも、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバの最新の地図データを利用して生成したナビゲーション画像や地図画像を用いて生成した地図上で現在位置を案内する第2案内画像を表示することにより、正しく、地図上で現在位置を案内できるようになる。」(段落【0028】ないし【0045】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)アないしウ及び図1ないし3の記載(特に、段落【0001】ないし【0015】及び【0045】並びに図1ないし3の記載)によれば、先願明細書等には、ナビゲーション装置が記載されていることが分かる。

イ 上記(1)ア及びイ並びに図1の記載(特に、段落【0007】、【0010】及び【0017】ないし【0024】並びに図1の記載)によれば、ナビゲーション装置は、現在位置を算出する現在位置算出手段を備えることが分かる。

ウ 上記(1)ア及びウ並びに図1及び3の記載(特に、段落【0007】、【0010】及び【0028】並びに図3の記載)によれば、ナビゲーション装置は、現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段を備えることが分かる。

エ 上記(1)ア及びウ並びに図1及び3の記載(特に、段落【0010】及び【0029】ないし【0039】並びに図3の記載)によれば、ナビゲーション装置は、判定手段により車両走行が不能な地点であると判定された場合に、サーバから取得した地図を利用して経路誘導を行うことができるモバイル装置に経路誘導を開始させるための指示を出し前記モバイル装置から得たナビゲーション画像に表示を切り替える案内画像出力手段を備えることが分かる。
ここで、案内画像出力手段が、モバイル装置(スマートフォン2)に経路誘導を開始させるための指示を出すことについては、段落【0024】における「一方、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、移動通信装置210を用いた通信を介してサーバから所要地理的範囲の地図データを取得しつつ、サーバと協調動作して、GPS受信装置107や車両状態センサ108を利用した現在位置の算出や、設定された目的地までのルートの探索や、サーバから提供された地図データが表す地図上に現在位置や現在の進行方向を表すマークや目的地までのルートを表したナビゲーション画像を生成し、ディスプレイ202に表示出力する。」との記載、及び段落【0035】における「ここで、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションは、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションからナビゲーション画像の要求を受け取ると、要求された地理的範囲、地図縮尺のナビゲーション画像を、必要に応じてサーバから地図データ(もしくは、ナビゲーション画像または地図を表す画像)を取得しながら生成し、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションに転送する。」との記載からみて、明らかである。
さらに、案内画像出力手段が、モバイル装置から得たナビゲーション画像に表示を切り替えることについては、段落【0037】における「ここで、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションにおける第2案内画像の生成は、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションからナビゲーション画像を取得している場合には、取得したナビゲーション画像を第2案内画像とすることにより生成する。」との記載、並びに段落【0039】における「一方、この後、たとえば、図2a2に示すように、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションにおいて、記憶装置109に記憶された地図データが表す地図上において道路外に現在位置が逸脱した場合であって、この時点において、図2b2に示すように、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションが算出した現在位置が、スマートフォン2のナビゲーションアプリケーションがサーバから取得した地図データが表す地図上において道路上にある場合には、当該図2b2に示すナビゲーション画面が第2案内画像として車載装置1の表示装置102に表示される。」との記載及び図2のb2図からみて、明らかである。

(3)先願発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、先願明細書等には、次の事項からなる発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認める。
「現在位置を算出する現在位置算出手段と、
前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により車両走行が不能な地点であると判定された場合に、サーバから取得した地図を利用して経路誘導を行うことができるモバイル装置に経路誘導を開始させるための指示を出し前記モバイル装置から得たナビゲーション画像に表示を切り替える案内画像出力手段と、
を備えるナビゲーション装置。」

3 対比
本願補正発明(以下、「前者」ともいう。)と先願発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「判定手段」は、前者における「逸脱検出手段」に相当し、以下同様に、「モバイル装置」は「外部機器」に、「モバイル装置から得たナビゲーション画像」は「外部機器から得た映像」に、「案内画像出力手段」は「外部誘導利用開始手段」に、「ナビゲーション装置」は「情報端末」に、それぞれ相当する。

・後者における「現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点」は、前者における「現在地の候補」に、「現在地に対応する位置」という限りにおいて一致する。
そして、後者における「現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する」は、前者における「現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、前記現在地の候補の道路からの逸脱を検出する」に、「現在地に対応する位置が所定の状態にある場合に、現在地に対応する位置の道路からの逸脱を検出する」という限りにおいて一致する。
また、後者において、「現在位置算出手段」が算出した現在位置を用いて、「現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点」を算出する算出手段を含むことは明らかである。
ここで、「現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点」は、前述のとおり「現在地に対応する位置」ということができるから、後者において、「現在位置算出手段」が算出した現在位置を用いて、現在地に対応する位置を算出する算出手段を含むものということができる。
そうすると、後者における「現在位置を算出する現在位置算出手段」及び「前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段」を備えることは、前者における「複数の現在地の候補および当該現在地の候補の確度を算出する現在地候補算出手段」及び「前記現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、前記現在地の候補の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段」を備えることに、「現在地に対応する位置を算出する算出手段」及び「現在地に対応する位置が所定の状態にある場合に、現在地に対応する位置の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段」を備えるという限りにおいて一致する。

・後者における「判定手段により車両走行が不能な地点であると判定された場合」は、前者における「逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合」に相当する。
また、後者における「サーバから取得した地図を利用して経路誘導を行うことができるモバイル装置」は、先願明細書等の段落【0011】における「このようなナビゲーション装置によれば、前記サーバの地図情報は最新のものであることが期待できるので、ナビゲーション装置の記憶手段に記憶されている地図データに走行中道路のデータが欠落している場合にも、正しく、地図上で現在位置を案内できるようになる。」との記載によれば、サーバから取得した地図は最新のものといえることから、前者における「最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器」に相当する。
そうすると、後者における「前記判定手段により車両走行が不能な地点であると判定された場合に、サーバから取得した地図を利用して経路誘導を行うことができるモバイル装置に経路誘導を開始させるための指示を出し前記モバイル装置から得たナビゲーション画像に表示を切り替える案内画像出力手段」は、前者における「前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させるための指示を出し前記外部機器から得た映像に表示を切り替える外部誘導利用開始手段」に相当する。

したがって、両者は、
「現在地に対応する位置を算出する算出手段と、
前記現在地に対応する位置が所定の状態にある場合に、前記現在地に対応する位置の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段と、
前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させるための指示を出し前記外部機器から得た映像に表示を切り替える外部誘導利用開始手段と、
を備えた情報端末。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
「現在地に対応する位置を算出する算出手段」及び「現在地に対応する位置が所定の状態にある場合に、現在地に対応する位置の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段」を備えることに関し、本願補正発明においては、「複数の現在地の候補および当該現在地の候補の確度を算出する現在地候補算出手段」及び「前記現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、前記現在地の候補の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段」を備えるのに対して、引用発明においては、「現在位置を算出する現在位置算出手段」及び「前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段」を備える点(以下、「相違点」という。)。

4 判断
上記相違点について検討する。
本願補正発明は、本件出願の願書に添付された明細書の段落【0035】における「基本制御部101は、様々な処理を行う中心的な機能部であり、処理内容に応じて、他の処理部を制御する。また、各種センサ、GPS受信装置9等の情報を取得し、マップマッチング処理等を行って、現在地が属する確度が高いリンクを特定することを試みる。また、基本制御部101は、現在地が属する確度が高いリンクを特定できなかった場合には、外部誘導利用制御処理を実施する。」との記載、段落【0039】における「道路逸脱判定部104は、基本制御部101が実施するマップマッチング処理により確度の高い現在地を特定できなかった場合に、現在地の候補が道路から逸脱していると判定する。すなわち、道路逸脱判定部104は、現在地が属するリンクとして算出された現在地の候補に、確度が所定以上となるリンクが含まれない場合には、現在地の候補が道路から逸脱していると判定する。」との記載、並びに、段落【0047】及び【0048】における「まず、道路逸脱判定部105は、現在地候補を取得する(ステップS001)。具体的には、道路逸脱判定部105は、基本制御部101に対して、マップマッチング処理により算出された現在地の候補と各候補の確度とを要求して取得する。
次に、道路逸脱判定部105は、取得した現在地候補のうち確度が高い候補を選択する(ステップS002)。具体的には、道路逸脱判定部105は、ステップS001において取得した現在地の候補のうち、確度が所定よりも高い候補、例えば確度が最も高い候補を対象として、以降の処理を実施する。」との記載によれば、現在地の候補を現在地が属するリンクとして算出し、現在地が属する確度が高いリンクを特定するマップマッチング処理を行うものであり、それに伴い、「複数の現在地の候補および当該現在地の候補の確度を算出する現在地候補算出手段」を備え、確度が所定よりも高い候補を現在地とし、経路の探索や誘導等の通常のナビゲーション装置の処理を行い、また、「逸脱検出手段」により、「現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、前記現在地の候補の道路からの逸脱を検出する」ものと認められる。
一方、先願発明における「前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段」に関し、上記2(1)ウに示した先願明細書等の段落【0028】ないし【0030】の記載によれば、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、現在、カーナビゲーションアプリケーションにおいて算出している現在位置が、記憶装置109に記憶している地図データが表す地図上において車両走行が可能な地点であるかどうかを調べる(ステップ502)ものであり、それを前提として、段落【0039】に記載されているように、記憶装置109に記憶された地図データが表す地図上において道路外に現在位置が逸脱した場合、スマートフォン2の地図上での自車の現在位置が道路上にあるかを判断している。すなわち、車載装置1のカーナビゲーションアプリケーションは、地図上において自車の現在位置が存在して良い地点か否かを判断している。
そして、ナビゲーション装置において、マップマッチング処理を行うことは本件出願の出願前に技術常識であることも考慮すると、先願発明においてもマップマッチング処理を行っているものと認められる。
また、ナビゲーション装置のマップマッチング処理において、複数の現在地の候補および当該現在地の候補の確度を算出し、複数の現在地の候補から確度の高いものを選択することは、本件出願の出願前にごく普通に行われていること(必要であれば、特開2009-287926号公報(特に、段落【0002】及び【0003】)、特開平8-334346号公報(特に、段落【0029】ないし【0060】及び図4ないし9)、国際出願公開第2008/050516号(特に、段落[0017])及び角本繁編著,「カーナビゲーションシステム 公開型データ構造KIWIとその利用方法」,初版,共立出版株式会社,2003年5月15日,p.89-98を参照。)であるとともに、現在地の候補に所定以上の確度の候補が含まれない場合に、現在地の候補が地図情報の道路に存在しないものとすることも、本件出願の出願前にごく普通に行われていること(必要であれば、国際出願公開第2008/050516号(特に、段落[0017])及び特開2011-117888号公報(特に、段落【0038】)及び角本繁編著,「カーナビゲーションシステム 公開型データ構造KIWIとその利用方法」,初版,共立出版株式会社,2003年5月15日,p.98を参照。)である。
そうすると、先願発明は、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を備えているものといえ、上記相違点は実質的な相違点ではない。

したがって、本願補正発明は、本件出願の出願の日前の他の特許出願であって本件出願後に出願公開がされた先願の先願明細書等に記載された先願発明と同一であり、しかも、先願発明をした者が本件出願に係る本願補正発明の発明者と同一の者ではなく、また、本件出願の時に本件出願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

なお、平成28年2月26日付けの拒絶査定の備考において、「出願人は意見書において、「引用文献1には、自車位置を車載装置(ナビゲーション装置)の持っている現在位置や進行方向の情報を使って、スマートフォンから地図画像を取得し、・・・略・・・
本願請求項1-10に係る発明においては、・・・略・・・したがって処理性能がそう高くない情報端末においても、もたつきなく軽快に動作させることができます。」と主張している。
しかしながら、本願請求項1には「最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させる」と記載されているのみで、・・・略・・・区別がつかない。その結果、前者も含むこととなっている。
・・・略・・・
したがって、出願人の上記主張を採用することはできず、本願請求項1-10に係る発明は、先願明細書1に記載されている発明と同一又は実質同一である。」と説示しているところ、当該説示は請求人(出願人)の主張が特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、請求人の主張を採用することができないことを説示したものにすぎない。

〔4〕むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成27年9月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、前記第2[理由]〔1〕(A)の【請求項1】に示したとおりのものである。

2 先願明細書等
原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書等及びその記載事項は、前記第2[理由]〔3〕2に記載したとおりである。
そして、前記第2[理由]〔3〕2の検討によると、先願明細書等には、次の事項からなる発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されていると認める。
「現在位置を算出する現在位置算出手段と、
前記現在位置算出手段が算出した現在位置に相当する、記憶手段に記憶された地図データが表す地図上の地点が車両走行が不能な地点であるかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により車両走行が不能な地点であると判定された場合に、サーバから取得した地図を利用して経路誘導を行うことができるモバイル装置に経路誘導を開始させる案内画像出力手段と、
を備えるナビゲーション装置。」

3 対比・判断
本願発明と先願発明2とを、前記第2[理由]〔3〕3の検討を参酌して対比すると、両者は、
「現在地に対応する位置を算出する算出手段と、
前記現在地に対応する位置が所定の状態にある場合に、前記現在地に対応する位置の道路からの逸脱を検出する逸脱検出手段と、
前記逸脱検出手段により逸脱の検出がなされた場合に、最新状態を保たれた地図情報を利用して経路誘導を行うことができる外部機器に経路誘導を開始させる外部誘導利用開始手段と、
を備えた情報端末。」の点で一致し、前記第2[理由]〔3〕3の検討で述べた相違点と同じ点で相違する。
そうすると、本願発明は、前記第2[理由]〔3〕4の検討を踏まえると、先願発明2と同一である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本件出願の出願の日前の他の特許出願であって本件出願後に出願公開がされた先願の先願明細書等に記載された先願発明2と同一であり、しかも、先願発明2をした者が本件出願に係る本願発明の発明者と同一の者ではなく、また、本件出願の時に本件出願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-14 
結審通知日 2016-12-20 
審決日 2017-01-06 
出願番号 特願2011-289092(P2011-289092)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 161- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫小川 恭司  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
三島木 英宏
発明の名称 情報端末、プログラムおよび運転支援方法  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  

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