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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B
管理番号 1325597
審判番号 不服2016-4480  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-25 
確定日 2017-03-27 
事件の表示 特願2014-517047「フリップポケット及び/又は対称なクラブセパレータを有するゴルフバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日国際公開、WO2012/177541、平成26年 8月21日国内公表、特表2014-519954、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年6月18日(パリ条約による優先権主張2011年6月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月15日付けで手続補正書が提出され、同年11月24日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成28年3月25日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、同年12月6日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年12月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願に係る発明は、上記の平成28年12月12日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項18に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下請求項1乃至請求項18に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」乃至「本願発明18」といい、これらを総称して「本願発明」という。)。
「【請求項1】
複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定するゴルフバッグ本体部材であって、収容されるゴルフクラブシャフトを受けるための開口した第1の端部を含む、ゴルフバッグ本体部材;
ゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できるフリップポケットであって、該フリップポケットが引下げ位置にあるときに該フリップポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われる、フリップポケット;
該フリップポケットを該ゴルフバッグ本体部材と係合させるための係合システムであって、該フリップポケットの第1の部分を該ゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合させ、且つ(a)該ゴルフバッグ本体部材の表面の一部分が覆われた状態にある閉塞位置と(b)該ゴルフバッグ本体部材の表面のその同じ部分が露出された状態にある開放位置との間を該フリップポケットの第2の部分が該フリップポケットの該第1の部分に対して移動できるようにする、係合システム;及び
前記ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている第1の滑り防止要素であって、前記フリップポケットが前記引下げ位置にあるときに該フリップポケットの裏面によって少なくとも部分的に覆われる、第1の滑り防止要素
を含むゴルフバッグ。
【請求項2】
前記第1の滑り防止要素が、前記フリップポケットが前記閉塞位置にあるときに該フリップポケットの裏面によって完全に覆われる、請求項1記載のゴルフバッグ。
【請求項3】
複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定する容器であって、収容されるゴルフクラブシャフトを受けるための開口した第1の端部を有する上端部を含む、容器;
該容器の該上端部に近接して該容器と取り外し不能に係合されているか又は該容器の一部として一体形成されている第1の部分と、該容器と取り外し不能に係合されてはおらず且つ該容器の一部として一体形成されてはいない第2の部分とを含むフリップポケットであって、ゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動でき、かつ該フリップポケットが引下げ位置にあるときに該フリップポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われる、フリップポケット;
該フリップポケットを該引下げ位置に解放可能に保持するための解放可能コネクタシステムであって、(a)該フリップポケットの該第1の部分よりも該フリップポケットの該第2の部分の近くで該フリップポケットと係合されているか又は該フリップポケットの一部として一体形成されている第1の構成要素と、(b)該フリップポケットが該引下げ位置にあるときに該第1の構成要素と相互作用できるように所定の場所で該容器と係合されているか又は該容器の一部として一体形成されている第2の構成要素とを含む、解放可能コネクタシステム;および
該容器に係合されているか又は該フリックポケットの一部として一体形成されている第1の滑り防止要素であって、該フリップポケットが該引下げ位置にあるときに該フリップポケットにより少なくとも一部が覆われるように所定位置に位置付けられている、第1の滑り防止要素
を含むゴルフバッグ。
【請求項4】
前記第1の滑り防止要素が、前記フリップポケットが前記引下げ位置にあるときに該フリップポケットによって完全に覆われるように寸法付けられており且つ所定位置に位置付けられている、請求項3記載のゴルフバッグ。
【請求項5】
前記容器と係合されているか又は該容器の一部として一体形成されている第2の滑り防止要素であって、前記フリップポケットの第1の側に位置付けられている、第2の滑り防止要素;及び
該容器と係合されているか又は該容器の一部として一体形成されている第3の滑り防止要素であって、該第1の側の反対側の該フリップポケットの第2の側に位置付けられている、第3の滑り防止要素
を更に含む、請求項3記載のゴルフバッグ。
【請求項6】
複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定するゴルフバッグ本体部材であって、収容されるゴルフクラブシャフトを受けるための開口した第1の端部を含む、ゴルフバッグ本体部材;
該ゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている上端部と、該ゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合されてはおらず且つ該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されてはいない下端部とを有するポケットであって、(a)該ポケットの第1の部分から下方に離間された場所にある第1の解放可能接続構造の第1の部分と、(b)該ポケットの該第1の部分から下方に離間された場所にある第2の解放可能接続構造の第1の部分とを含み、ゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置との間を移動でき、かつ該ポケットが引下げ位置にあるときに該ポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われる、ポケット;
該ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている該第1の解放可能接続構造の第2の部分であって、該ポケットが該引下げ位置にあるときに該ポケットに設けられている該第1の解放可能接続構造の該第1の部分と相互作用できるように、該ゴルフバッグ本体部材の所定の場所に設けられている、第1の解放可能接続構造の第2の部分;
該ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている該第2の解放可能接続構造の第2の部分であって、該ポケットが該引下げ位置にあるときに該ポケットに設けられている該第2の解放可能接続構造の該第1の部分と相互作用できるように、該ゴルフバッグ本体部材の所定の場所に設けられている、第2の解放可能接続構造の第2の部分;並びに
該ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ部材の一部として一体形成されている第1の滑り防止要素であって、該ポケットの裏面及び該第1の滑り防止要素の主面が、該ポケットが該引下げ位置にあるときにストラップのためのスロットをもたらすように配置されている、第1の滑り防止要素
を含むゴルフバッグ。
【請求項7】
前記ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている第2の滑り防止要素であって、前記ポケットの第1の側に位置付けられている、第2の滑り防止要素;及び
該ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている第3の滑り防止要素であって、該第1の側の反対側の該ポケットの第2の側に位置付けられている、第3の滑り防止要素
を更に含む、請求項6記載のゴルフバッグ。
【請求項8】
前記ポケットが前記引下げ位置にあるときに前記第2の滑り防止要素が該ポケットにより覆われず、該ポケットが該引下げ位置にあるときに前記第3の滑り防止要素が前記ポケットにより覆われない、請求項7記載のゴルフバッグ。
【請求項9】
ポケットの第1の部分をゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合させる工程;
解放可能接続構造の第1の部分を該ポケットと係合させる工程;
該解放可能接続構造の第2の部分を該ゴルフバッグ本体部材と係合させる工程であって、該ポケットが、ゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できるとともに、該ポケットが引下げ位置にあるときに該ポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われ、かつ(a)該解放可能接続構造の該第1の部分及び該解放可能接続構造の該第2の部分が互いに係合されている引下げ状態と、(b)該解放可能接続構造の該第1の部分及び該解放可能接続構造の該第2の部分が互いに離脱されているめくり上げ状態との間を選択的に変換でき、該めくり上げ状態において、該ポケットの該第1の部分が該ゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合されたままである、工程;
前記ゴルフバッグ本体部材の表面に又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として第1の滑り防止要素を設ける工程であって、該第1の滑り防止要素が、前記ポケットが前記引下げ位置にあるときに該ポケットにより少なくとも部分的に覆われるように所定位置に設けられる、工程
を含む、ゴルフバッグを作製する方法。
【請求項10】
前記ゴルフバッグ本体部材の表面に又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として第1の滑り防止要素を設ける工程を更に含み、該第1の滑り防止要素が、前記ポケットが前記引下げ状態にあるときに該ポケットにより完全に覆われるように寸法付けられ且つ所定位置に設けられる、請求項9記載のゴルフバッグを作製する方法。
【請求項11】
前記ゴルフバッグ本体部材の表面に又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として第1の滑り防止要素を設ける工程であって、該第1の滑り防止要素が、前記ポケットが前記引下げ状態にあるときに該ポケットにより少なくとも部分的に覆われるように所定位置に設けられる、工程;
該ゴルフバッグ本体部材の表面に又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として第2の滑り防止要素を設ける工程であって、該第2の滑り防止要素が該ポケットの第1の側に設けられる、工程;及び
該ゴルフバッグ本体部材の表面に又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として第3の滑り防止要素を設ける工程であって、該第3の滑り防止要素が、該第1の側の反対側の該ポケットの第2の側に設けられる、工程
を更に含む、請求項9記載のゴルフバッグを作製する方法。
【請求項12】
前記ポケットが前記引下げ状態にあるときに前記第2の滑り防止要素が該ポケットにより覆われず、該ポケットが該引下げ状態にあるときに前記第3の滑り防止要素が該ポケットにより覆われない、請求項11記載のゴルフバッグを作製する方法。
【請求項13】
ゴルフバッグ本体部材を用意する工程;及び
係合システムを使用してフリップポケットの第1の部分をゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合させる工程であって、該フリップポケットがゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できるとともに、該ポケットが引下げ位置にあるときに該ポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われ、かつ該係合システムによって、(a)該ゴルフバッグ本体部材の表面の一部分が覆われた状態にある引下げ位置と(b)該ゴルフバッグ本体部材の表面のその同じ部分が露出された状態にあるめくり上げ位置との間を、該フリップポケットの第2の部分が該フリップポケットの該第1の部分に対して移動できるようになる、工程
を含む、ゴルフバッグを作製する方法であって、
該ゴルフバッグ本体部材が第1の滑り防止要素であって、該フリックポケットが該引下げ位置にあるときに少なくとも部分的に該フリップポケットの後ろに位置付けられる、第1の滑り防止要素をさらに含む、
前記方法。
【請求項14】
ゴルフバッグを搬送装置の支持部の上に配置する工程であって、該ゴルフバッグが、(a)複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定するゴルフバッグ本体部材と、(b)該ゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている第1の部分を有するポケットであって、該ポケットの該第1の部分から離間された場所にある解放可能接続構造の第1の部分を含む、ポケットと、(c)該ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている該解放可能接続構造の第2の部分とを含み、該ポケットがゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置との間を上方向と下方向に選択的に移動できる、工程;
該ポケットを該めくり上げ位置に配置する工程;
固定ストラップを該ゴルフバッグ本体部材の少なくとも一部の周囲にわたって延在させる工程;
該固定ストラップを使用して該ゴルフバッグ本体部材を該搬送装置に固定する工程;
該固定ストラップを部分的に覆うように該ポケットを該引下げ位置へ移動させる工程;及び
該ポケットを該引下げ位置で解放可能に保持するために、該解放可能接続構造の該第1の部分と該解放可能接続構造の該第2の部分とを解放可能に係合させる工程を含む、ゴルフバッグを搬送装置に固定する方法であって、
該ゴルフバッグ本体部材が、該ポケットが引下げ位置にあるときに少なくとも部分的に該ポケットの後ろに位置付けられる、第1の滑り防止要素をさらに含み、かつ該延在させる工程が、該固定ストラップの一部を該第1の滑り防止要素と接触して配置することを含む、
前記方法。
【請求項15】
前記ゴルフバッグ本体部材が、前記ポケットの第1の側に位置付けられている第2の滑り防止要素と、該第1の側の反対側の該ポケットの第2の側に位置付けられている第3の滑り防止要素とを更に含み、前記延在させる工程が、前記固定ストラップの一部を該第1の滑り防止要素、該第2の滑り防止要素、及び該第3の滑り防止要素と接触させた状態に配置することを含む、請求項14記載のゴルフバッグを搬送装置に固定する方法。
【請求項16】
前記ポケットが前記引下げ位置状態にあるときに前記第2の滑り防止要素が該ポケットにより覆われず、該ポケットが該引下げ位置にあるときに前記第3の滑り防止要素が該ポケットにより覆われない、請求項15記載のゴルフバッグを搬送装置に固定する方法。
【請求項17】
前記ゴルフバッグ本体部材が、前記第1の滑り防止要素とは別個の第2の滑り防止要素とを更に含み、前記延在させる工程が、前記固定ストラップの一部を該第1の滑り防止要素及び該第2の滑り防止要素と接触させた状態に配置することを含む、請求項14記載のゴルフバッグを搬送装置に固定する方法。
【請求項18】
ゴルフバッグを搬送装置の支持部の上に配置する工程であって、該ゴルフバッグが、複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定するゴルフバッグ本体部材と、フリップポケットと、該フリップポケットと該ゴルフバッグ本体部材とを係合させるための係合システムとを含み、該係合システムが、該フリップポケットの第1の部分と該ゴルフバッグ本体部材とを取り外し不能に係合させ、該係合システムによって、(a)該ゴルフバッグ本体部材の表面の一部分が覆われた状態にある引下げ位置と(b)該ゴルフバッグ本体部材の表面のその同じ部分が露出された状態にあるめくり上げ位置との間を上方向と下方向に、該フリップポケットの第2の部分が該フリップポケットの該第1の部分に対して移動できるようになる、工程;
該フリップポケットを該めくり上げ位置に配置する工程;
固定ストラップを該ゴルフバッグ本体部材の少なくとも一部の周囲にわたって延在させる工程;
該固定ストラップを使用して該ゴルフバッグ本体部材を該搬送装置に固定する工程;及び
該固定ストラップを部分的に覆うように該フリップポケットを該引下げ位置へ移動させる工程
を含む、ゴルフバッグを搬送装置に固定する方法であって、
該ゴルフバッグ本体部材が、該ポケットが引下げ位置にあるときに少なくとも部分的に該ポケットの後ろに位置付けられる、第1の滑り防止要素をさらに含み、かつ該延在させる工程が、該固定ストラップの一部を該第1の滑り防止要素と接触して配置することを含む、
前記方法。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
(1)(発明の単一性)この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
請求項53?77に係る発明は、ゴルフバッグ本体部材と係合されている第1の部分と、開放位置と閉塞位置との間を移動できる裏側部分とを含むフリップポケットを含むという共通の技術的特徴を有している。しかしながら、当該技術的特徴は、下記引用例1,2,4等の開示内容に照らして、先行技術に対する貢献をもたらすものではないから、特別な技術的特徴であるとはいえない。また、請求項1に係る発明と、請求項53?77に係る発明との間に、他に同一の又は対応する特別な技術的特徴は存在しない。
したがって、この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
(2)(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先基準日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先基準日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1?52
・引用例1?3
<引用文献等一覧>
(1)特開2001-095965号公報
(2)特開2007-135618号公報
(3)実願昭49-103515号(実開昭51-031652号)のマイクロフィルム
(4)特開2009-118939号公報

2.原査定の理由の判断
(1)発明の単一性について
上記「第2 本願発明」のとおり、平成27年6月15日付け手続補正書に記載の請求項53乃至請求項77は削除されたことにより、本願の単一性違反は解消された。

(2)刊行物の記載事項
ア 原査定で引用され、本願の優先権主張日前の平成13年4月10日に頒布された特開2001-95965号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(ア)「【請求項1】 前壁、右壁、後壁及び左壁からなる胴部と、前壁に取り付けられた収納部と、前壁と右壁との境界の近傍に取り付けられた右取手と、前壁と左壁との境界の近傍に取り付けられた左取手とを備えているキャディバッグ。
【請求項2】 肩掛けベルトをさらに備えており、この肩掛けベルトが右壁又は左壁に位置する請求項1に記載のキャディバッグ。
【請求項3】 前壁に取り付けられた収納部の、全収納部に占める面積の比率が70%以上である請求項1又は請求項2に記載のキャディバッグ。
【請求項4】 前壁に、胴部に対して着脱自在な収納部が設けられてる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャディバッグ。
【請求項5】 前壁と収納部との間に間隙が設けられ、カートに固定される際の固定ベルトがこの間隙を通過するように構成された請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキャディバッグ。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴルフに使用されるキャディバッグに関する。」
(ウ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、カートに載置された場合でも用具の出し入れが可能な収納部の収納力が高められたキャディバッグの提供をその目的とする。」
(エ)「【0017】このキャディバッグ1は、胴部2、底部3及び口枠4を備えている。胴部2は、前壁5、右壁6、後壁7及び左壁8からなる。前壁5と右壁6との境界の近傍には右取手9が取り付けられており、前壁5と左壁8との境界の近傍には左取手10が取り付けられている。前壁5には、第一収納部11、第二収納部12及び第三収納部13が取り付けられている。なお、キャディバッグ1はフード(図示されず)を備えてもよい。
【0018】右取手9と左取手10とは離れて取り付けられているので、両者の間に第一収納部11が配置され、前壁5の収納スペースが高められている。第一収納部11にはファスナー14が取り付けられており、このファスナー14のスライダー15が移動することによって第一収納部11が開閉し、用具の出し入れがなされる。同様に、第二収納部12及び第三収納部13にもファスナー14が設けられており、スライダー15の移動によって開閉がなされる。
【0019】右壁6、後壁7及び左壁8には収納部は設けられていない。すなわち、全ての収納部は前壁5に集中している。前壁5は、キャディバッグ1がカートに載置される際に正面となる部分であるので、プレイ中でも第一収納部11、第二収納部12及び第三収納部13からの用具の取り出しが可能である。右壁6、後壁7又は左壁8に補助的に収納部が設けられてもよいが、前壁5以外の収納部からは用具の取り出しが困難であるので、収納部はなるべく前壁5に設けられるのが効率的である。具体的には、前壁5に取り付けられた収納部の面積(すなわち第一収納部11、第二収納部12及び第三収納部13の面積の合計)の全収納部の面積に占める比率は70%以上が好ましく、80%以上が特に好ましく、90%以上がさらに好ましい。また、右壁6及び左壁8の収納部はカートに載置された際に左右方向のスペースをとってしまい、1台のカートに積み込めるキャディバッグ1の数を少なくしてしまうおそれがあるので、右壁6及び左壁8には全く収納部が設けられないのが理想的である。
【0020】前壁5にはなるべく多くの収納部が設けられるのが、収納力向上の観点から好ましい。具体的には、前壁5に取り付けられた収納部の面積の前壁5の面積に占める比率は50%以上が好ましく、60%以上が特に好ましく、80%以上がさらに好ましい。なお、図1及び図2に示されたキャディバッグ1では、この比率は83%である。
【0021】第一収納部11は、バックル16によって前壁5に取り付けられている。バックル16の係止の解除によって、第一収納部11が前壁5から取り外される。前壁5に取り付けられた第一収納部11に紙幣や硬貨が収納されることにより、プレー中も必要に応じてゴルファーがこれらを取り出すことができ、例えば茶店で飲み物を購入することができる。また、ゴルファーが例えばクラブハウスで休憩する際には、前壁5から第一収納部11を取り外して、硬貨や紙幣を第一収納部11ごと携帯することができる。
【0022】第一収納部11はバックル16によってのみ固定されているので、前壁5と第一収納部11の裏面との間には間隙が形成され得る。キャディバッグ1がカートに固定される際には、固定ベルトがこの間隙と右取手9と左取手10とに通される。従って、第一収納部11が固定ベルトで押さえつけられることがなく、第一収納部11の収納力が維持される。また、固定ベルトが巻かれた状態のままで、第一収納部11の前壁5との着脱がなされ得る。」
(オ)「【0030】図3は、図1のキャディバッグ1の口枠4が示された平面図である。この図において左側が前壁5側であり、右側が後壁7側である。この口枠4は、本体22、第一仕切材23、第二仕切材24及び第三仕切材25を備えている。通常、第一仕切材23よりも左側にウッド型ゴルフクラブが差し込まれ、第一仕切材23よりも右側にアイアンゴルフクラブが差し込まれる。第三仕切材25には、「WOOD」と記載された矢印26と「IRON」と記載された矢印27とが表示されている。これらの矢印26、27によって、ゴルファーがゴルフクラブを所定位置に差し込むことが促される。ウッド型ゴルフクラブ及びアイアンゴルフクラブがそれぞれ所定位置に差し込まれたキャディバッグ1をキャディがカートに載置する場合、ゴルフクラブが目印となり、キャディが方向を間違えることが防止される。従って、前壁5が確実に正面となり、収納部からの用具の取り出しが行われる。」
(カ)上記(エ)【0021】及び図1より、第一収納部は、バックルによって胴部の前壁5にぶら下がるように取り付けられるものであって、めくり上げも引下げも可能であるから、「収納部は、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できる」といえる。
(キ)上記(オ)及び図4より、複数のゴルフクラブを収容するための胴部2、及びゴルフクラブシャフトを受けるための口枠4が看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(キ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のゴルフクラブを収容するための、前壁、右壁、後壁及び左壁からなる胴部と、前壁に取り付けられた収納部と、前壁と右壁との境界の近傍に取り付けられた右取手と、前壁と左壁との境界の近傍に取り付けられた左取手とを備えているキャディバッグであって、
前壁に、胴部に対して着脱自在な収納部が設けられ、
前壁と収納部との間に間隙が設けられ、カートに固定される際の固定ベルトがこの間隙を通過するように構成され、
キャディバッグは、胴部、底部及びゴルフクラブシャフトを受けるための口枠を備え、
口枠は、本体、第一仕切材、第二仕切材及び第三仕切材を備え、通常、第一仕切材よりも左側にウッド型ゴルフクラブが差し込まれ、第一仕切材よりも右側にアイアンゴルフクラブが差し込まれ、第三仕切材には、「WOOD」と記載された矢印と「IRON」と記載された矢印とが表示され、これらの矢印によって、ゴルファーがゴルフクラブを所定位置に差し込むことが促され、
収納部は、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できる、キャディバッグ。」

イ 原査定で引用され、本願の優先権主張日前の平成19年6月7日に頒布された特開2007-135618号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
筒状の胴体部(2)と、
前記胴体部(2)に設けられ、折り畳み可能な帯状部(3)と、
前記胴体部(2)に設けられ、折り畳まれた前記帯状部(3)の少なくとも一部を覆い、前記帯状部(3)を固定可能な可動収納部(4)と、
を備えたゴルフバッグ(1)。
【請求項2】
前記帯状部(3)を折り畳んだ際に、該帯状部(3)の一部を前記帯状部(3)の他の部分に対し、固定することで、前記帯状部(3)を折り畳んだ状態で保持可能な固定手段(11)をさらに備えた、請求項1に記載のゴルフバッグ(1)。
【請求項3】
前記可動収納部(4)は、第1可動収納部(4A)と第2可動収納部(4B)とを含み、
前記帯状部(3)は、前記第1可動収納部(4A)と前記第2可動収納部(4B)との間に延在するように設けられ、
前記第1可動収納部(4A)と前記第2可動収納部(4B)とは、折り畳んだ状態の前記帯状部(3)を前記第1可動収納部(4A)と前記第2可動収納部(4B)とで固定した状態で固定可能な固定部(10a,10b)を有する、請求項1または請求項2に記載のゴルフバッグ(1)。
【請求項4】
前記可動収納部(4)を用いて、前記帯状部(3)を固定した際に、前記可動収納部(4)の表面の少なくとも一部に透光性を有する透光性部材(4c)を設けた、請求項1から請求項3のいずれかに記載のゴルフバッグ(1)。
【請求項5】
筒状の胴体部(2)と、
前記胴体部(2)に設けられ、折り畳み可能な帯状部(3)と、
前記帯状部(3)を折り畳まれた状態で保持するための第1固定手段(11)と、
前記折り畳まれた状態の前記帯状部(3)を前記胴体部(2)に固定することで、前記帯状部が揺れ動くのを抑制可能な第2固定手段(3B)と、
を備えたゴルフバッグ(1)。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブを収納するゴルフバッグ(キャディバッグ)に関し、特に、帯状部を折り畳み固定可能なゴルフバッグに関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のゴルフバッグにおいては、ボール等の収納物を出し入れする際に、ポケット等の収納部上に帯状部が覆い被さり、帯状部が邪魔になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、肩掛けベルト等の帯状部がゴルフバッグ本体に設けられた収納部上に覆い被さることを抑制して、収納物の出し入れを良好に行なうことができるゴルフバッグを提供することである。」
(エ)「【0008】
図1から図8を用いて、本実施の形態に係るゴルフバッグ1について説明する。図1は、本実施の形態に係るゴルフバッグ1の正面図であり、肩掛けベルト3を用いて、ゴルフバッグ1を持ち運び可能な状態を示した図である。この図1に示されるように、ゴルフバッグ1は、ゴルフクラブを挿入可能な開口部Pが形成され、ゴルフクラブを収納する筒状の胴体部2と、この胴体部2に設けられ、折り畳み可能な肩掛けベルト(帯状部)3と、胴体部2に設けられた可動収納部4A,4Bとを備えている。
【0009】
肩掛けベルト3は、胴体部2の長手方向に延在し、胴体部2の上端部側から下端部側に亘って長尺に設けられており、両端部が胴体部2に接続されている。このような肩掛けベルト3を肩にかけて、ゴルフバッグ1を持ち運びすることができる。この肩掛けベルト3はクッション等を有するパッド部3Aと、パッド部3Aの一方の端部に設けられ、胴体部2の上端部側に接続されたベルト3Eと、パッド部3Aの他方の端部に設けられ、胴体部2に接続されたベルト3Dとを備えている。パッド部3Aは、パッド部3Aの長手方向の中央部に形成された折り返し部3Cにおいて、折り返し可能とされている。なお、折り返し部3Cは、パッド部3Aの中央部に1つ形成されている場合に限られず、パッド部3A
に複数形成されてもよく、また、パッド部3A自体を丸められるようにしてもよい。すなわち、パッド部3Aまたは肩掛けベルト3自体が、長手方向の長さが短くなるようにコンパクトにすることが可能なように形成されておればよい。
【0010】
この肩掛けベルト3には、パッド部3Aが折り畳まれた状態を保持する固定手段(第1固定手段)11が設けられている。この固定手段11は、パッド部3Aに設けられた磁石等を有する固定部11aと、パッド部3Aを折り畳んだ際に、固定部11aと対向する部分に設けられ、固定部11aに対応する固定部11bとを備えている。この固定部11a、11bは、互いに引かれあうように設けられた磁石であってもよく、他に、たとえば、面ファスナ、ホック、ボタン等の互いに係合可能な係合部とされてもよい。なお、固定部11a、11bは、パッド部3Aの両端部に設けられているが、この位置に限られない。
【0011】
可動収納部4A,4Bは、肩掛けベルト3の長手方向と交差する肩掛けベルト3の幅方向から肩掛けベルト3を挟みこむように配置されており、肩掛けベルト3が可動収納部4A,4B間に延在するように配置されている。また、この可動収納部4A,4Bは、パッド部3Aの折り返し部3Cより、胴体部2の上端部側に位置しており、パッド部3Aが折り畳まれた際においても、パッド部3Aは、可動収納部4A,4B間に位置する。可動収納部4A,4Bの周辺部のうち、肩掛けベルト3に隣接して、肩掛けベルト3に沿うよう延在する周辺部が、胴体部2の表面に縫着され固定されており、この周辺部の他の部分では、可動収納部4A、4Bと胴体部2の表面とが着脱可能なように接続された部分が設けられている。
【0012】
このため、可動収納部4A,4Bは、肩掛けベルト3に沿って延在する周辺部を中心に回動して、胴体部2の表面に対して立ち上がり可能とされていると共に、胴体部2の表面に固定可能とされている。なお、本実施の形態においては、可動収納部4A、4Bは、肩掛けベルト3に隣接する周辺部を縫着し、この周辺部を中心に折り返し可能とすることで、胴体部2の表面に立ち上がり可能とされているが、これに限られない。たとえば、肩掛けベルト3に隣接する周辺部の一部をピン止めしてもよく、このピンを中心に可動収納部4A,4Bを回転可能とすることにより、胴体部2の表面に対して立ち上がり可能としてもよい。」

そうすると、上記(ア)乃至(エ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「筒状の胴体部と、
前記胴体部に設けられ、折り畳み可能な帯状部と、
前記胴体部に設けられ、折り畳まれた前記帯状部の少なくとも一部を覆い、前記帯状部を固定可能な可動収納部と、
可動収納部は、肩掛けベルトに沿って延在する周辺部を中心に回動して、胴体部の表面に対して立ち上がり可能とされていると共に、胴体部の表面に固定可能とされている、ゴルフバッグ。」

ウ 原査定で引用され、本願の優先権主張日前の昭和51年3月8日に頒布された実願昭49-103515号(実開昭51-31652号)号のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「実用新案登録請求の範囲
ゴルフバツグ本体の所要個所に小型バツグを着脱自在に取付けて成るゴルフバツグ。
考案の詳細な説明
本考案はゴルフバツグの改良に関するものであって、図示せる実施例は前面の上辺に取手(1)および肩掛バンド(2)を、同じく前面の下辺および後面にポケツト(3)(4)を取付けたゴルフバツグ本体(5)を構成し、このゴルフバツグ本体(5)の側面上縁部の外側に二つ折りの短片(6)を配して其の基端を雌型ホツク(7)付きのリベツトを以て止着し、当該短片(6)の先端に雄型ホツク(8)を取付けると共にゴルフバツグ本体(5)の側面上辺部外側に小型のハンドバツグ(9)を配し、このハンドバツグ(9)に込ける提手(9)'を上記の短片(6)に挟入して雄型ホツク(8)を雌型ホツク(7)に係止することによってゴルフバツグ本体(5)の側面にハンドバツグ(9)を吊下げると共にこれ等ゴルフバツグ本体(5)、ハンドバツグ(9)に於て相互に対面する個所に相互に係合するベルベツト式フアスナー(10)(10)’(11)(11)’を取付け仍つてハンドバツグ(9)の揺動を阻止するようにしたものである。」(1頁3行?2頁11行)

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「ゴルフバツグ本体の所要個所に小型バツグを着脱自在に取付けて成るゴルフバツグであって、
相互に対面する個所に相互に係合するベルベツト式フアスナーを取付け仍つてハンドバツグの揺動を阻止するようにした、ゴルフバツグ。」

エ 原査定で引用され、本願の優先権主張日前の平成21年6月4日に頒布された特開2009-118939号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
筒状に形成されており、上部にポケット収容部を備えたバッグ本体と、
前記ポケット収容部に一端部の少なくとも一部が固定された状態で収容されており、使用時に引き出されて、他端部の上部に設けられた固定手段がバッグ本体に固定されるポケット部と、
を備えていることを特徴とするキャディバッグ。

【請求項3】
ポケット部の一端部が、ポケット収容部内部のバッグ本体側の開口部の近傍に縫いつけられて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャディバッグ。」
(イ)「【0029】
ポケット部は略四角形であって、その一方の側辺が、ポケット収容部内部のバッグ本体側の開口部の縁部に縫いつけられている。ポケット部の他方の先端側の側辺上端部には、固定手段が設けられている。バッグ本体側の開口部の縁部にポケット部の一方の側辺が縫いつけられていることにより、少ない移動量で効率よくポケット部の出し入れを行うことができる。又同時に、固定された部分の耐久性が充分に確保されている。
【0030】
ポケット部に設けられる固定手段として最も好適なものは、ナスカン、カラビナ、スナップフック等の連結具である。これらの連結部は、バッグ本体の口枠下部に取り付けられている環状部に連結される。これらの連結具は、着脱が非常に容易である一方で、一旦固定すると取り外しの操作をしない限り非常に外れにくいという特徴がある。」

そうすると、上記(ア)及び(イ)の記載事項から、刊行物4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。
「筒状に形成されており、上部にポケット収容部を備えたバッグ本体と、
前記ポケット収容部に一端部の少なくとも一部が固定された状態で収容されており、使用時に引き出されて、他端部の上部に設けられた固定手段がバッグ本体に固定されるポケット部と、
を備えているキャディバッグであって、
ポケット部の一端部が、ポケット収容部内部のバッグ本体側の開口部の近傍に縫いつけられて固定されており、
ポケット部の他方の先端側の側辺上端部には、固定手段が設けられており、
これらの連結部は、バッグ本体の口枠下部に取り付けられている環状部に連結されている、キャディバッグ。」

オ 前置報告書に引用され、本願の優先権主張日前の平成11年3月2日に頒布された特開平11-57091号公報(以下「刊行物5」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0016】ここで、ゴルフバッグ400は、車輪軸14上に直接載置された状態で支持部材18に支えられる。そして、この載置状態を安定して保持するための部材としてバッグ保持ベルト20が設けられている。このバッグ保持ベルト20は、L字部材16の立設部の間を一方側から他方側へ掛け渡されるもので、一端が何れかの立設部に取付けられ、自由端には接着布22などが施されている。これにより、車輪軸14上に載置されたゴルフバッグの外周部に巻回され、他方側のL字部材の立設部に掛け渡されてゴルフバッグを適度に締め付けた状態で保持することができるものである。また、バッグ保持ベルト20の裏面側には、図示のように、滑り止め部材としてのゴムプレート21が所定箇所に貼り付けられており、これにより保持されたゴルフバッグ400の円周方向への位置ずれを有効に防止することができる。」

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。
「裏面側には、滑り止め部材としてのゴムプレートが所定箇所に貼り付けられているバッグ保持ベルトが外周部に巻回され、適度に締め付けた状態で保持することができる、車輪軸上に載置された、ゴルフバッグ。」

オ 前置報告書に引用され、本願の優先権主張日前の平成13年3月16日に頒布された実用新案登録第3075943号(以下「刊行物6」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】(イ)滑り止めの付いた板1に車輪2を設ける。
(ロ)滑り止めの付いた板1にベルト3を設ける。
(ハ)ベルト3にゴルフバッグを締め付ける金具4を設ける。
以上の如く構成された、装着型車付きゴルフバッグ運搬器具。」

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物6には、次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。
「滑り止めの付いた板に車輪を設け、滑り止めの付いた板にベルトを設け、ベルトにゴルフバッグを締め付ける金具を設けた、装着型車付きゴルフバッグ運搬器具。」

エ 前置報告書に引用され、本願の優先権主張日前の1999年2月16日に頒布された米国特許第5871183号明細書(以下「刊行物7」という。)には、以下の記載がある。(なお、原文の後の括弧{}内に記載したものは、当審での訳文である。)
(ア)「Referring to FIGS. 16 and 17, which illustrate a strapping system for strapping the bag 12 of FIG. 1 in the lower cradle 30 of the cart of FIG. 1, the strapping system preferably utilizes a strap 92 of essentially the same structure as the strap of the single strap embodiment of FIG. 14, the strap having back to back loop tapes with loop material on opposite sides of the strap and extending for essentially the length of the sides and hook end segments with the hook end segments having their hooks for interfacing with the loop material of the strap protruding outwardly of the same side of the strap as in the strap embodiment of FIG. 14. The bottom collar of the bag 12 does not have a male snap fastener part and a hook tape may be adhered to the cradle as in the embodiment of FIG. 15, but preferably a hook tape 94 is attached to the lower collar of the bag 12, so as to engage the strap 92 when the bag is in the cradle and hold the bottom of the bag from rotating relative to the strapping. While the strap 92 is of the same construction as the strap 47e of FIG. 14, the strap 47e and the other straps described for use with upper cradle preferably have a width of essentially 1 inch while the strap 92 for the lower cradle preferably has a width of essentially 3/4 inch so as to be better accommodated by the smaller strap slots 36c, 36d normally present in the arms of the lower cradle.」(14欄55行?15欄11行)
{図16および図17を参照すると、図1のカートの下のクレードル30における、図1のバッグ12を結束するための結束システムが示され、ストラップシステムは、好ましくは、図14に示す単一のストラップの実施形態のストラップと実質的に同じ構造のストラップ92を使用し、ストラップは、ストラップの両側にループ材料とループテープを背中合わせに有し、かつ本質的にするための辺の長さを拡張し、フック端部セグメントはストラップ突出ループ材料とインターフェースするためのそれらのフックを有する端末セグメントをフック図14のストラップ実施形態のように、ストラップの同じ側の外側へ、バッグ12の底のカラーは、雄スナップファスナ-部分を持たず、フックテープは、図1の実施形態のようにクレードルに接着することができます。バッグがクレードルにあるときにストラップ92を係合し、ストラップに相対回転バッグの底部を保持するように15、好ましくはフックテープ94は、バッグ12の下部カラーに取り付けられています。}

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物7には、次の発明(以下「引用発明7」という。)が記載されているものと認められる。
「クレードルにあるときにストラップを係合し、ストラップに、底部を保持するように、フックテープを、下部カラーに取り付けた、バッグ。」

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「複数のゴルフクラブ」、「胴部」、「ゴルフクラブシャフトを受けるための口枠」、「カート」、「固定ベルト」、「めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できる、収納部」、及び「キャディバッグ」は、それぞれ、前者の「複数のゴルフクラブ」、「ゴルフバッグ本体部材」、「収容されるゴルフクラブシャフトを受けるための開口した第1の端部」、「ゴルフカート」、「固定ストラップ」、「めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できるフリップポケット」、及び「ゴルフバッグ」に相当する。
イ 後者の「キャディバッグ」は、「口枠」を備え、「口枠は、本体、第一仕切材、第二仕切材及び第三仕切材を備え、通常、第一仕切材よりも左側にウッド型ゴルフクラブが差し込まれ、第一仕切材よりも右側にアイアンゴルフクラブが差し込まれ、第三仕切材には、「WOOD」と記載された矢印と「IRON」と記載された矢印とが表示され、これらの矢印によって、ゴルファーがゴルフクラブを所定位置に差し込むことが促され」るものであるから、後者の「キャディバッグ」は、「複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定する」「胴部」を備えるといえる。
ウ 後者は、「前壁と収納部との間に間隙が設けられ、カートに固定される際の固定ベルトがこの間隙を通過するように構成され」るものであるから、後者の「収容部」は、「ゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できるフリップポケットであって、該フリップポケットが引下げ位置にあるときに該フリップポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われる、フリップポケット」といえる。
エ 後者の「収納部」は、「前壁に、胴部に対して着脱自在な」ものであるから、後者の「キャディバッグ」は、「フリップポケットを該ゴルフバッグ本体部材と係合させるための係合システム」を有するといえる。

したがって、両者は、
「複数のゴルフクラブを収容するための主区画室を画定するゴルフバッグ本体部材であって、収容されるゴルフクラブシャフトを受けるための開口した第1の端部を含む、ゴルフバッグ本体部材;
ゴルフカートの固定ストラップがバッグに巻き付けられるように、めくり上げ位置と引下げ位置の間を移動できるフリップポケットであって、該フリップポケットが引下げ位置にあるときに該フリップポケットによって該固定ストラップが部分的に覆われる、フリップポケット;
該フリップポケットを該ゴルフバッグ本体部材と係合させるための係合システム、
を含むゴルフバッグ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1は、「フリップポケットの第1の部分を該ゴルフバッグ本体部材と取り外し不能に係合させ、且つ(a)該ゴルフバッグ本体部材の表面の一部分が覆われた状態にある閉塞位置と(b)該ゴルフバッグ本体部材の表面のその同じ部分が露出された状態にある開放位置との間を該フリップポケットの第2の部分が該フリップポケットの該第1の部分に対して移動できるようにする、係合システム」を有するのに対して、引用発明1は、そのようなものを有していない点。

[相違点2]
本願発明1は、「ゴルフバッグ本体部材と係合されているか又は該ゴルフバッグ本体部材の一部として一体形成されている第1の滑り防止要素であって、フリップポケットが引下げ位置にあるときに該フリップポケットの裏面によって少なくとも部分的に覆われる、第1の滑り防止要素」を有しているのに対し、引用発明1では、そのようなものを有していない点。

(4)判断
上記[相違点2]について以下検討する。
引用発明2の「ゴルフバッグ」は、本願発明1の「ゴルフバッグ」に相当する。
引用発明3の「ゴルフバツグ」は、本願発明1の「ゴルフバッグ」に相当する。
しかしながら、引用発明2、及び引用発明3には、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は示されていない。
そうすると、原査定で引用されたいずれの引用文献にも、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、示されていないし、また、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「第1の滑り防止要素は、ゴルフバッグが搬送装置(例えば、手動牽引カート又は手動押圧カート、電動カートなど)によって搬送されているときにゴルフバッグが回転又はねじれを起こしにくいようにストラップをゴルフバッグに対して所定位置に保持するのに役立つ。」(【0018】)という作用効果を奏するものである。

なお、引用発明4の「キャディバッグ」、及び「ポケット部」は、それぞれ、本願発明1の「ゴルフバッグ」、及び「フリップポケット」に相当する。
また、引用発明5の「ゴルフバッグ」、「滑り止め部材としてのゴムプレート」、及び「バッグ保持ベルト」は、それぞれ、本願発明1の「ゴルフバッグ」、「第1の滑り止め要素」、及び「固定ストラップ」に相当する。
また、引用発明6の「ゴルフバッグ」、「滑り止め」、及び「ベルト」は、それぞれ、本願発明1の「ゴルフバッグ」、「第1の滑り止め要素」、及び「固定ストラップ」に相当する。
また、引用発明7の「バッグ」、「フックテープ」、及び「ストラップ」は、それぞれ、本願発明1の「ゴルフバッグ」、「第1の滑り止め要素」、及び「固定ストラップ」に相当する。
しかし、いずれの引用発明にも、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の「フリップポケットが引下げ位置にあるときに該フリップポケットの裏面によって少なくとも部分的に覆われる、第1の滑り防止要素」の点は、示されていない。

したがって、本願発明1は、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(5)本願発明2乃至本願発明18について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明3は、本願発明1の「ゴルフバッグ」における「ゴルフバッグ本体部材」、及び「係合システム」を、「容器」、及び「解放可能コネクタ」としたものであって、実質的に、本願発明1と相違しないし、本願発明4及び5は、本願発明3の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明6は、本願発明1の「ゴルフバッグ」の「係合システム」を「第1の解放可能接続構造」と「第2の解放可能接続構造」に分け、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明7は、本願発明6の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明8は、本願発明7の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明9は、本願発明6の「ゴルフバッグ」を「ゴルフバッグの作製する方法」とカテゴリーを変更したものであって、実質的に、本願発明1と相違しないし、本願発明10及び11は、本願発明9の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明12は、本願発明11の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明13は、本願発明1の「ゴルフバッグ」を「ゴルフバッグの作製する方法」とカテゴリーを変更したものであって、実質的に、本願発明1と相違しないし、本願発明18は、本願発明13の「ゴルフバッグを作製する方法」を「ゴルフバッグを搬送装置に固定する方法」としたものであって、実質的に、本願発明13と相違しないし、本願発明14は、本願発明18の「ゴルフバッグを搬送装置に固定する方法」に、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明15及び17は、本願発明14の発明特定事項に、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであり、本願発明16は、本願発明15の発明特定事項に、さらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至18は、上記(4)と同様の理由により、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.平成28年12月6日付け当審拒絶理由の概要
(1)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項9の特定では滑り防止要素が特定されていないから、課題を解決するための手段が不明である。 よって、請求項9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1,3,6,9,14,15,19の特定では、固定ストラップとフリップポケットの配置位置関係(特に、フリップポケットが引下げ位置にある時の関係)が不明である。
よって、請求項1?19に係る発明は明確でない。


3.当審拒絶理由の判断
平成28年12月12日に提出された手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1乃至請求項18の記載は補正されたことにより、請求項1乃至請求項18に係る発明の記載不備は解消された。
したがって、当審拒絶理由は解消した。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1乃至本願発明18は、引用発明1乃至引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-15 
出願番号 特願2014-517047(P2014-517047)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63B)
P 1 8・ 537- WY (A63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 東 治企  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉村 尚
発明の名称 フリップポケット及び/又は対称なクラブセパレータを有するゴルフバッグ  
代理人 大関 雅人  
代理人 井上 隆一  
代理人 新見 浩一  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 佐藤 利光  
代理人 春名 雅夫  
代理人 清水 初志  
代理人 川本 和弥  
代理人 小林 智彦  
代理人 刑部 俊  
代理人 山口 裕孝  
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