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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1325835
異議申立番号 異議2016-700333  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-20 
確定日 2017-01-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5801653号発明「低温硬化性エポキシ組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5801653号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10、12、13〕について訂正することを認める。 特許第5801653号の請求項1ないし9、11、13に係る特許を維持する。 特許第5801653号の請求項10、12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第5801653号の請求項1ないし13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年8月31日(パリ条約による優先権主張2010年9月1日(US)米国、2011年3月30日(US)米国)を国際出願日とする出願であり、平成27年9月4日に設定登録され、同年10月28日に特許公報が発行され、その後、特許異議申立人渡邉明(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年8月3日付けで請求項10、12及び13に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月2日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、いわゆる新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
ア 請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正前の請求項1ないし13は、請求項1の記載を、請求項2ないし13が直接・間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし13は、一群の請求項である。
したがって、訂正後の請求項1ないし9、11及び13は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

ウ 請求項10を単に削除するものであるから、いわゆる新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

エ 請求項10を特許請求の範囲の減縮を目的として単に削除するものであり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(2) 訂正事項2
ア 請求項12を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正前の請求項1ないし13は、請求項1の記載を、請求項2ないし13が直接・間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし13は、一群の請求項である。
したがって、訂正後の請求項1ないし9、11及び13は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

ウ 請求項12を単に削除するものであるから、いわゆる新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

エ 請求項12を特許請求の範囲の減縮を目的として単に削除するものであり、特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明13」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(a)次の一般式(A)を有するフェノール樹脂:
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ互いに独立して、水素、又は分岐していない若しくは分岐している炭素数1?17のアルキル基であり、且つnは0?50の整数である);及び
(b)第1のエポキシ樹脂と、1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である、変性アミン化合物:
【化2】


(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、水素、メチル又はエチルを表し;n及びmは、独立して1?10の整数であり;且つXは、1?10の整数である)の反応生成物を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の反応生成物と、少なくとも1種の第2のエポキシ樹脂とを含む、組成物。
【請求項3】
前記第2のエポキシ樹脂が、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン及びビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタンのグリシジルエーテルからなる群より選択される、少なくとも1つの物質を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のエポキシ樹脂が、多官能エポキシ樹脂を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2のエポキシ樹脂が、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記多価フェノールのグリシジルエーテルが、次の構造を有する、請求項5に記載の組成物:
【化3】


(式中、mは整数であり、且つRは二価フェノールの炭化水素の二価基である)。
【請求項7】
前記多官能エポキシ樹脂が、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、鎖伸長している又は高分子量であるDGEBA、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂又はこれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の物質を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記多官能エポキシ樹脂が、フェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、C_(4)?C_(14)アルコールのグリシジルエーテル、並びにスチレンオキシド、シクロへキセンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド、又はこれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の物質を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
前記第2のエポキシ樹脂が、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
さらに、ジシアンジアミド又は酸無水物を含む、請求項1?9及び11のいずれか一項に記載の組成物。」

第4 取消理由
当審が平成28年8月3日に通知した取消理由は、以下のとおりのものであった。

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。



請求項10
請求項10には、「ポリアルキレンポリアミンが、ポリ(N-メチル)アゼチジン」との記載があり、当該「ポリアルキレンポリアミン」は、「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する」「ポリアルキレンポリアミン」(請求項1)であるところ、「ポリ(N-メチル)アゼチジン」は、「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミン」を有していないから、請求項10の「ポリアルキレンポリアミンが、ポリ(N-メチル)アゼチジン」との記載は不明確である。
よって、本件請求項10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項12及び請求項12を引用する請求項13
請求項12には、「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有するポリ(N-メチル)アゼチジン」との記載があるが、「ポリ(N-メチル)アゼチジン」は、「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミン」を有していないから、請求項12の「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有するポリ(N-メチル)アゼチジン」との記載は不明確である。
よって、本件請求項12及び13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 判断
1 上記当審が通知した取消理由について
本件訂正請求の訂正により、請求項10および12は、削除されたので、上記取消理由は解消された。

2 申立人が主張する取消理由について
(1)特許異議の申立ての理由1(特許法第29条の2)について
特許異議申立人が「本件特許に対する先願:特願2012-528597号の出願当初明細書として扱うことができる」と主張する甲第1号証には、本件特許発明1の「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミン」が記載されているとはいえないから、本件特許発明1は、先願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。
本件特許発明2ないし9及び11についても同様である。

(2)特許異議の申立ての理由2(特許法第29条第2項)について
本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、前者では「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミン」が特定されているのに対して、引用発明では、かかる特定がない点で少なくとも相違する。
当該相違点について検討するに、甲第3号証には「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミン」は記載されていないから、引用発明に甲第3号証に記載の技術を適用したとしても、本件特許発明1が容易に発明できたとはいえない。
本件特許発明2ないし9及び11についても同様である。

(3)特許異議の申立ての理由3(特許法第29条第2項)について
本件訂正請求の訂正により、請求項10および12は、削除されたので、上記理由3に係る申立は不適法なものである。

(4)特許異議の申立ての理由4(特許法第29条第2項)について
本件特許発明13と引用発明とを対比すると、前者では「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミン」が特定されているのに対して、引用発明では、かかる特定がない点で少なくとも相違する。
当該相違点について検討するに、甲第3ないし5号証には「1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミン」は記載されていないから、引用発明に甲第3ないし5号証に記載の技術を適用したとしても、本件特許発明13が容易に発明できたとはいえない。

(5)特許異議の申立ての理由5(特許法第36条第4項第1号又は第6項)について
ア サポート要件について
本件特許の明細書の段落【0004】には、「少なくとも1つのエポキシ樹脂と、1つの第一級又は第二級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有するメチル化ポリアルキレンポリアミンとのアダクトを含む組成物であって、上記アダクトがフェノール樹脂でブロックされている本発明の組成物は、エポキシ系に、低温での硬化、並びに良好な貯蔵安定性及び機械的強度を与えることが分かった。」との記載があり、本件特許発明の課題を解決できることを理解できるから、サポート要件を満たしていると解するのが相当である。

実施可能要件について
本件訂正請求の訂正により、請求項10および12は、削除されたので、上記理由5に係る申立は不適法なものである。

なお、明確性要件については、「上記当審が通知した取消理由について」で説示したとおりである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし9及び11、13に係る特許を取り消すことができない。
また、請求項10、12に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除されたため、特許異議申立人の請求項10、12に係る特許についての特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない。
また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし9及び11、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次の一般式(A)を有するフェノール樹脂:
【化1】

(式中、R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)は、それぞれ互いに独立して、水素、又は分岐していない若しくは分岐している炭素数1?17のアルキル基であり、且つnは0?50の整数である);及び
(b)第1のエポキシ樹脂と、1つの第一級アミン及び少なくとも2つの第三級アミンを有する、次の一般式(B)のポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である、変性アミン化合物:
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、水素、メチル又はエチルを表し;n及びmは、独立して1?10の整数であり;且つXは、1?10の整数である)の反応生成物を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の反応生成物と、少なくとも1種の第2のエポキシ樹脂とを含む、組成物。
【請求項3】
前記第2のエポキシ樹脂が、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン及びビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタンのグリシジルエーテルからなる群より選択される、少なくとも1つの物質を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のエポキシ樹脂が、多官能エポキシ樹脂を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2のエポキシ樹脂が、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記多価フェノールのグリシジルエーテルが、次の構造を有する、請求項5に記載の組成物:
【化3】

(式中、mは整数であり、且つRは二価フェノールの炭化水素の二価基である)。
【請求項7】
前記多官能エポキシ樹脂が、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記多官能エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、鎖伸長している又は高分子量であるDGEBA、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂又はこれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の物質を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記多官能エポキシ樹脂が、フェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、C_(4)?C_(14)アルコールのグリシジルエーテル、並びにスチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド、又はこれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の物質を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
前記第2のエポキシ樹脂が、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
さらに、ジシアンジアミド又は酸無水物を含む、請求項1?9及び11のいずれか一項に記載の組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-13 
出願番号 特願2011-188895(P2011-188895)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 161- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新留 豊岩田 行剛  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 小柳 健悟
橋本 栄和
登録日 2015-09-04 
登録番号 特許第5801653号(P5801653)
権利者 エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
発明の名称 低温硬化性エポキシ組成物  
代理人 胡田 尚則  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 胡田 尚則  
代理人 石田 敬  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 木村 健治  
代理人 出野 知  
代理人 塩川 和哉  
代理人 青木 篤  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 関根 宣夫  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  
代理人 関根 宣夫  
代理人 古賀 哲次  
代理人 塩川 和哉  
代理人 木村 健治  

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