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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01M
管理番号 1325857
異議申立番号 異議2016-700343  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-21 
確定日 2017-02-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5799183号発明「建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5799183号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕、13、14、15、16、17、18について訂正することを認める。 特許第5799183号の請求項1ないし8、10ないし18に係る特許を維持する。 特許第5799183号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5799183号の請求項1?18に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年1月9日にされた特願2013-2078号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年1月22日に新たな特許出願(特願2015-10366号)としたもの(分割出願)であって、平成27年8月28日にその特許権の設定登録がされ、平成28年4月21日に特許異議申立人 株式会社クラウズ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年8月8日付けの取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年10月7日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされたものである。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容
本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)請求項1?12からなる一群の請求項に係る訂正

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する(請求項3を引用する請求項5?12も同様に訂正する)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無とを判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。(請求項4を引用する請求項5?12も同様に訂正する)。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサを設けた層の層間変位を算出する」とあるのを、「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する」に訂正する(請求項6を引用する請求項7?9、11、12も同様に訂正する)。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9を削除する(訂正前の請求項9を引用する請求項11、12も同様に訂正する)。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」とあるのを、「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」に訂正する(請求項10を引用する請求項11、12も同様に訂正する)。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件に含めた判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる特定の層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」とあるのを、「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」に訂正し、さらに、引用先を「請求項1又は請求項2」に変更する(請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する)。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12において、引用先を「請求項1から請求項11の何れか1項」から、「請求項1から請求項8、請求項10、請求項11の何れか1項」に変更する。

ク 訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0008】に記載された「(3)また、上記の建物安全性検証システムは、前記計測部が、前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサが検知した当該層の振動のデータとから、前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサを設けた層の層間変位を算出することを特徴とする。」とあるのを、また、明細書の段落【0008】に「(10)また、上記の建物安全性検証システムは、前記層間変位計測部が、前記建物の第1層の層間変位を、前記第1層の変位量と前記建物の基礎部の変位量に基づいて算出することを特徴とする。」とあるのを、また、明細書の段落【0008】に「(11)また、上記の建物安全性検証システムにおける前記建物の第1層は、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層、基礎部に近い層のうちいずれかの層であることを特徴とする。」とあるのを、いずれも、削除する。

(2)請求項14に係る訂正

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項14に「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。

(3)請求項15に係る訂正

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項15に「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無とを判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを倫理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。

(4)請求項17に係る訂正

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項17に「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。

(5)請求項18に係る訂正

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項18に「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無とを判定する」とあるのを、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か

(1)請求項1?12からなる一群の請求項に係る訂正

ア 訂正事項1
訂正前の請求項3では、「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項3に記載の特許発明では、「建物の健全性を判定する」ことまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2
訂正前の請求項4では、「前記層間変位の判定結果と前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し」という広い意味で記載されており、具体的に限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項4に記載の特許発明では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し」であることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し」に特定することに係る説明として、段落【0065】、【0069】?【0070】及び【図8】に記載されているから、訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3
訂正前の請求項6では、「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層のセンサ以外の何れかの前記センサを設けた層の層間変位を算出する」という訂正前の明細書に明確には記載されていない事項を含み、かつ、原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原明細書等」という。)に記載されていたとはいえない事項を包含する記載になっていた。これに対し、訂正後の請求項6では、「前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する」ことを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記複数の層の各層の隣接する層同士のセンサが検出した当該層の振動データの変位の差分から前記センサを設けた層の層間変位を算出する」に限定することに係る説明として、本件訂正前の明細書段落【0062】?【0064】及び【図8】に記載されているから、訂正事項3は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、請求項9を削除する(訂正前の請求項9を引用する請求項11?12も同様に訂正する)ものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであることは明らかである。
また、訂正事項4は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項5
訂正前の請求項10では、「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を越えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を越えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」という広い意味を包含する記載になっており、具体的な条件が記載されていなかった。これに対し、訂正後の請求項10では、「前記層間変位が予め設定、された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を越えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」ことを明確にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する」に特定することに係る説明として、段落【0061】?【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項5は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項5は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項6
訂正前の請求項11では、「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件に含めた判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる特定の層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」という広い意味を包含する記載になっていたり、具体的な条件が記載されていなかったり、曖昧な記載になっていた。また、訂正前の請求項11では、請求項3と請求項4を引用する場合に、対応関係が不明な記載になっていた。これに対し、訂正後の請求項11では、「前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急な調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」ことを明確にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。また、訂正後の請求項11では、対応関係が不明な記載となる請求項3と請求項4とを引用先から削減して、対応関係が明らかな記載にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。したがって、当該訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「早急な調査が必要な層」に特定することに係る説明として、段落【0022】及び【図3】?【図5】に記載されているから、訂正事項6は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項7
訂正事項7は、請求項12の引用先を「請求項1から請求項11の何れか1項」から、「請求項1から請求項8、請求項10、請求項11の何れか1項」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項7は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ク 訂正事項8
訂正事項8は、上記訂正事項3及び4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の記載を訂正しようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8は、新規事項の追加に該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ケ 一群の請求項ごとに訂正の請求を行っているか否か
訂正事項1?8は、請求項1?12に関する訂正であり、訂正前の請求項1?12は一群の請求項であるから、この訂正は一群の請求項ごとにされている。

(2)請求項14に係る訂正

ア 訂正事項1
訂正前の請求項14では、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項14に記載の特許発明では、建物の健全性を判定することまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)請求項15に係る訂正

ア 訂正事項1
訂正前の請求項15では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することまでは限定されていなかった。また、訂正前の請求項15では、「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項15に記載の特許発明では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、こららの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」すること及び「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0052】、【0054】、【0066】?【0070】及び【図8】に記載されており、また、この「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)請求項17に係る訂正

ア 訂正事項1
訂正前の請求項17では、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」とは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項17に記載の特許発明では、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことを明らかにすることで、特許請求の範囲を滅縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)請求項18に係る訂正

ア 訂正事項1
訂正前の請求項18では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することまでは限定されていなかった。また、訂正前の請求項18では、「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまでは限定されていなかった。これに対して、訂正後の請求項18記載の特許発明では、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」すること、及び、「当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」することまで限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定」することに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0052】、【0054】、【0066】?【0070】及び【図8】に記載されており、また、この「地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」ことに係る説明として、願書に添付した明細書の段落【0062】、【0063】、【0071】及び【図8】に記載されているから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正の請求による訂正後の〔1?12〕、13、14、15、16、17、18について、訂正を認める。

第3 本件特許発明について

本件訂正の請求により訂正された請求項1?18に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明18」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?18に記載された以下の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項2】
前記評価部が、
前記建物の変形が予め設定された前記閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の建物安全性検証システム。
【請求項3】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項4】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項5】
前記評価部は、
地震による前記建物の傾斜の変化を前記評価の条件に含めて、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の建物安全性検証システム。
【請求項6】
前記計測部は、
前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動のデータとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項7】
前記固有周期計測部は、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、地震発生後の当該建物の固有周期を求める
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項8】
前記固有周期計測部は、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の常時微動の固有周期を求め、
前記層の振動を層ごとに検知する前記センサから前記最下層のセンサを除いたセンサ
のうちの一つのセンサは、
前記微振動センサが微振動を計測する層と同じ層に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の建物安全性検証システム。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記評価部が、
前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項11】
前記評価部が、
前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物安全性検証システム。
【請求項12】
前記センサは、前記地震による振動の加速度を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項8、請求項10、請求項11の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項13】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項14】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項15】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、最下層のセンサが前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項16】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤を含めて建物の健全性を判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定するステップと
を実行させるためのプログラム。」

第4 取消理由及び申立て理由の概要

1 取消理由の概要
取消理由の概要は、以下の通りである。

(1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反)
本件特許発明3?12、14、15、17及び18に係る特許は、以下のア及びイにより、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

ア 本件特許発明3?12、14、15、17及び18について
図8のフローチャートにおけるS31?S35と、請求項3?12、14、15、17及び18で特定されている「判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」こととの対応関係が、明確であるとはいえない。

イ 本件特許発明11及び12について
請求項11及び12の「特定の層」と「特定の層より上の層の対応」の特定は、発明の詳細な説明と対応しない。

(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号違反)
本件特許発明1?18に係る特許は、以下の理由により、いずれも特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。

本件特許発明6及び9は、原明細書等に記載した事項の範囲内のものではないから、原明細書等に記載されていない発明について特許出願がなされており、特許法第44条第1項の分割要件を満たしていないので、特許法第44条第2項の適用がなく、その出願日は、本件特許に係る出願の現実の出願日である平成27年1月22日であると認める。
その結果、原出願の公開公報である特開2014-134436号公報(以下「引用文献1」という。)は、平成26年7月24日に公開されているから、本件特許に係る出願の前に頒布された刊行物であると認められ、本件特許発明1?18は、引用文献1に記載された発明であるといえる。

2 取消理由以外の申立ての理由の概要
特許異議申立人は、上記取消理由に関連しないものとして、以下の理由(1)?(3)を申立てていた。

(1)理由1(特許法第29条第2項違反、特許異議申立書第3?35頁の(4)欄)
本件特許発明1?18は、いずれも、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

甲第1?7号証を以下に示す。
甲第1号証:「多世代利用住宅の維持管理・流通を支える構造ヘルスモニタリング技術の利用ガイドライン(案)」平成23年12月 国土技術政策総合研究所(多世代利用総プロ 管理技術WG)国土交通省 国土技術政策総合研究所 HP掲載(2012年8月15日配信開始日)
http://www.nilim.go.jp/cgi-bin/mailmag/backnumber.cgi?no=123
http://www.nilim.go.jp/lab/ieg/tasedai/seika/shmguideline.pdf
甲第2号証:特開2008-281435号公報
甲第3号証:特開2003-344213号公報
甲第4号証:特開2008-224338号公報
甲第5号証:特開2011-149249号公報
甲第6号証:特開2004-93579号公報
甲第7号証:計測と制御 第46巻 第8号 2007年8月号 p632?636

(3)理由2(特許法第36条第6項第2号違反、特許異議申立書第35?37頁の(5)欄)
本件特許発明3?12、14、15、17、18は、以下のア?ウにより、いずれも、特許を受けようとする発明が明確でない。

ア 請求項3?12、14、15、17、18に記載の「論理的に組み合わせて判定」は、その定義がなく技術的意義が不明である。

イ 請求項9に記載の「前記建物の特定の層の層間変位を、前記特定の層の変位量と前記建物の基礎部の変位量に基づいて算出する」は、その技術的意義が不明である。

ウ 請求項11に記載の「特定の層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」は、その技術的意義が不明である。

第5 当審の判断

1 取消理由についての検討

(1)取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反)について

アについて
訂正後の本件特許発明3?8、10?12、14、15、17及び18(請求項9は削除)は、 訂正前の本件特許発明3?12、14、15、17及び18に記載の「判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷による影響の有無を判定する」を、「判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」と訂正するとともに、各々の本件特許発明において、図8のフローチャートにおけるS31?S35との対応関係を明確にする訂正をした。これにより、訂正後の本件特許発明3?8、10?12、14、15、17及び18(請求項9は削除)は、発明の詳細な説明との対応関係が明確になった。

イについて
訂正後の本件特許発明11及び12は、 訂正前の本件特許発明11及び12に記載の「特定の層」を、「早急な調査が必要な層」と訂正したことで、発明の詳細な説明との対応関係が明確になった。

(2)取消理由2(特許法第29条第1項第3号違反)について
訂正後の本件特許発明6(請求項9は削除)は、原明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第44条第1項の分割要件を満たしているので、本件特許に係る出願日は、原出願の平成25年1月9日に遡及するものと認める。
その結果、引用文献1は、本件特許に係る出願の前に頒布された刊行物ではないので、本件特許発明1?8、10?18は、引用文献1に記載された発明であるといえない。

(3)小括
上記(1)及び(2)のとおりであるから、もはや、取消理由1及び2によっては、本件請求項1?18(請求項9は削除)に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由以外の申立ての理由についての検討

(1)理由1(特許法第29条第2項違反)について

ア 甲第1号証の記載
甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与した。

(ア)「本書は、多世代利用住宅の振動特性の変化を把握する新たな診断技術として、構造へルスモニタリング技術(SHM: Structural Health Monitoring)の普及・利活用のための計測・評価、情報の蓄積・管理等に関するガイドラインを与えるものである。」(1頁「1.1 本書の適用範囲」の上段の枠囲い)

(イ)「一般にSHMは、構造物の強振動(大規模地震・強風)や微小振動(風・中小地震・常時微動)の計測データから振動特性等を推定し、その経時・経年変化等を踏まえ、構造物の損傷・劣化の有無・箇所・度合い等を評価し、ユーザが行う補修等の対策の意思決定を支援する技術である。構造物にSHMシステムを実装することにより、例えば壁面に生じている亀裂やひび割れが構造物全体にどの程度の影響を与えるものであるか、また、外観からは把握できない構造物内部に蓄積・進展した損傷・劣化がどのような状況であるかについて、評価できる。これにより、構造物性能のうち主に「安全性」「耐久性」について、使用期間を通じて目標内容以上に維持管理し続けることを目的としている。」(2頁「(1)SHMの基本概念」の1ないし8行)

(ウ)図17

(エ)表20?22


イ 甲第1号証に記載された発明

(ア)上記ア(ウ)及び(エ)における表20によれば、災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求めることが理解できる。

(イ)上記ア(ウ)及び(エ)における表20によれば、災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、当該共同住宅の各次モード振動数を求めることが理解できる。

(ウ)上記ア(ウ)及び(エ)における表20によれば、災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき、避難の要否が情報提供されることが理解できる。

(エ)構造へルスモニタリング技術は、上記ア(ウ)によれば、SHMサービス事業者のサーバを用いた構造へルスモニタリングのための支援システム、支援方法、支援プログラムであるといえる。

(オ)上記(ア)?(エ)を含む上記(1)の記載を総合すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。

「多世代利用住宅の振動特性の変化を把握する構造へルスモニタリング(SHM: Structural Health Monitoring)システム(方法、プログラム)であって、
SHMは、構造物の強振動(大規模地震・強風)や微小振動(風・中小地震・常時微動)の計測データから振動特性等を推定し、その経時・経年変化等を踏まえ、構造物の損傷・劣化の有無・箇所・度合い等を評価し、ユーザが行う補修等の対策の意思決定を支援するシステムであり、
災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求め、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、当該共同住宅の各次モード振動数を求め、前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき、避難の要否が情報提供される、構造へルスモニタリングシステム(方法、プログラム)。」(以下、「甲1発明」という。)

ウ 本件特許発明1について

(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比

a 甲1発明の「複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサ」は、本件特許発明1の「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサ」に相当する。

b 甲1発明の「災害時システムにおける推定の対象が層レベルの場合、複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求め」ることは、本件特許発明1の「前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部」に相当する。

c 甲1発明の「複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、当該共同住宅の各次モード振動数を求め」ることに、建物の最上層の加速度センサの計測データを用いて1次モード振動数を求めることが含めれていることは明らかである。このこと(1次モード振動数を求めること)が、上記イ(エ)における表20の推定対象が全体レベルの場合の損傷指標となっていることからも裏付けられる。また、1次モード振動数の逆数が1次モード周期である。
これらの点に鑑みると、甲1発明の係る特定事項は、本件特許発明1の「前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部」に相当する。

d 甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることは、本件特許発明1の「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部」に相当する。

e 甲1発明の「複数の層からなる大規模な共同住宅の前記層の加速度を計測する加速度センサ」は、共同住宅の最下層にも設けることは明らかであるから、本件特許発明1の「前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し」するものを含むといえる。

f 甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることと、
本件特許発明1の「前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する」こととは、
「前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とにより、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する」点で共通する。

g 甲1発明の「構造へルスモニタリングシステム(方法、プログラム)」は、本件特許発明1の「建物安全性検証システム」に相当する。

(イ)本件特許発明1と甲1発明との一定点・相違点
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とにより、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する
建物安全性検証システム。」

(相違点)
本件特許発明1では、前記評価部は、
前記層間変位により示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを「組み合わせて」判定し、「前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する」のに対し、甲1発明では、この点が明確でない。

(ウ)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項、特に、建物の変形と固有周期とを「組み合わせて」判定する点については、甲1における他の記載箇所及び甲2?7号証(以下、「甲2?7」という。)のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(エ)小括
上記(ウ)で検討したとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件特許発明3について

(ア)本件特許発明3と甲1発明との対比
本件特許発明3の「評価部」と甲1発明との対比を示す。

甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることと、
本件特許発明3の「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」、
「前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」こととは、
「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」る点で共通する。

(イ)本件特許発明3と甲1発明との一定点・相違点
よって、本件特許発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、次の2点で相違する。

(一致点)
「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する、
建物安全性検証システム。」

(相違点1)
本件特許発明3では、「前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部」を備えているのに対し、甲1発明では、この点が明確でない。

(相違点2)
本件特許発明3では、前記建物の変形と前記固有周期と「前記建物の傾斜角」とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記評価部は、
「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」のに対し、甲1発明では、この点が明確でない。

(ウ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項、特に、固有周期の判定結果と傾斜角の判定結果とを「論理的に組み合わせて」判定する点については、甲1における他の記載箇所及び甲2?7号証(以下、「甲2?7」という。)のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(エ)小括
上記(ウ)で検討したとおりであるから、上記相違点1について検討するもでもなく、本件特許発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件特許発明4について

(ア)本件特許発明4と甲1発明との対比
本件特許発明4の「評価部」と甲1発明との対比を示す。

甲1発明の「前記各層の層間変位が予め定めた閾値を超過したかを判断し、前記各次モード振動数が予め定めた閾値を超過したかを判断し、これらの判断結果から、共同住宅の継続使用可否が把握でき」ることと、
本件特許発明4の「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」、
「前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」こととは、
「前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え」る点で共通する。

(イ)本件特許発明4と甲1発明との一定点・相違点
よって、本件特許発明3と甲1発明とは、次の点で一致し、次の2点で相違する。

(一致点)
「複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する、
建物安全性検証システム。」

(相違点1)
本件特許発明4では、「前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部」を備えているのに対し、甲1発明では、この点が明確でない。

(相違点2)
本件特許発明4では、前記建物の変形と前記固有周期と「前記建物の傾斜角」とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記評価部は、
「前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する」のに対し、甲1発明では、この点が明確でない。

(ウ)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記相違点に係る発明特定事項、特に、固有周期の判定結果と傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と層間変位の判定結果とを「論理的に組み合わせて」判定する点については、甲1における他の記載箇所及び甲2?7号証(以下、「甲2?7」という。)のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(エ)小括
上記(ウ)で検討したとおりであるから、上記相違点1について検討するもでもなく、本件特許発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件特許発明2、5?8、10?12について
本件特許発明1、3及び4は、上記ウ?オで検討したとおり、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件特許発明1、3及び4のいずれか1項をさらに限定する特許発明2、5?8、10?12も、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ 本件特許発明13?18について
本件特許発明13及び16は、本件特許発明1に記載の建物安全性検証システムにおける発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ方法及びプログラムに変更しただけのものである。
また、本件特許発明14及び17は、本件特許発明3に記載の建物安全性検証システムにおける発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ方法及びプログラムに変更しただけのものである。
また、本件特許発明15及び18は、本件特許発明4に記載の建物安全性検証システムにおける発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ方法及びプログラムに変更しただけのものである。

以上のとおりであるから、本件特許発明1、3及び4が、上記ウ?オで検討したとおり、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件特許発明13?18は、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について

アについて
請求項3?12、14、15、17、18に記載の「論理的に組み合わせて判定」という記載は、日本語として明確であり、その意味も把握できるので、不明瞭であるとはいえない。

イについて
請求項9は、本件訂正の請求により削除されたので、この理由は解消されている。

ウについて
訂正後の請求項11における「早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する」という記載は、日本語として明確であり、その意味も把握できるので、不明瞭な記載とはいえない。

以上のとおりであるから、本件特許発明3?12、14、15、17、18は、いずれも、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。

(3)小括
上記(1)及び(2)で検討したとおりであるから、取消理由以外の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1?8、10?18に係る特許を取り消すことはできない。

第6 結び
以上のとおりであるから、取消理由及び申立ての理由によっては、本件特許発明1?8、10?18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?8、10?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許発明9に係る特許は、本件訂正の請求により削除されたので、請求項9に係る特許に対する申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震に対する建物の受ける影響を推定する建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物(建築物)の地震に対する耐震性能についての関心が高まってきている。このため、地震時の建物の健全性は、加速度計やひずみゲージおよび変位計等の構造物の変形に関わる情報を計測する計測手段を設けることにより、監視されていることがある。
そして、これらの計測手段で計測されたデータは、現場から離れたデータ監視室等に送られ、データ解析コンピュータ等によって収集される。データ解析コンピュータはこの建物の層間変形を算出し、設定値と比較することにより、建物の損傷の有無を判定し、地震発生後の健全性評価や安全性の確認等に使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、地震や強風等の外力若しくは構造材料の経年劣化によって発生する建物の損傷を常時微動計測に基づいて判定する方法も使用されている(例えば、特許文献2参照)。ここで、特許文献2においては、健全時の固有振動数と評価時の固有振動数とを振動特性の次数毎に比較して固有振動数の数値が低下している振動特性の次数が明らかになるので、固有振動数と固有モードとの間の関係に基づいて建物の何れの部分において損傷が発生しているのかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-281435号公報
【特許文献2】特開2010-276518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1においては、竣工後の建物が設計通りの強度に建設されたか否かが実際には判らない。すなわち、設計時に設定した設計基準値、例えば建設時に打たれたコンクリートの梁の強度が層間変形1/100で梁に損傷が生じるとの設計基準値であっても、実際に建設された建物が層間変形2/100で損傷が生じる強度となっている場合がある。この場合、地震において1/100の変形が発生したとしても、コンクリートの梁が損傷しているか否かは厳密には不明であり、損傷していない可能性もある。
【0006】
また、特許文献2においては、建物の健全時の固有振動数と評価時の固有振動数とを振動特性の次数毎に比較し、固有振動数の数値が低下している振動特性により損傷の発生を判定している。しかしながら、固有振動数は、建物を支える構造躯体の損傷だけでなく、構造躯体ではない雑壁や天井などの非構造部材の損傷によっても変化する。このため、構造躯体あるいは非構造部材(雑壁や天井など)のいずれがどの程度損傷したかの判定を行うことが困難であり、建物の継続使用を判定することが困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、地震発生後の建物の損傷程度を推定する建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様の建物安全性検証システムは、複数の層からなる建物の複数の層に設けられたセンサであって、当該層の振動を層ごとに検知するセンサがあり、前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータと前記基礎部又は前記最下層部分の振動のデータとから前記建物の変形を求める計測部と、前記計測部が求めた前記建物の変形に基づいて、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価する評価部とを備えたことを特徴とする。
(2)また、上記の建物安全性検証システムは、前記計測部が、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求めることを特徴とする。
(4)また、上記の建物安全性検証システムは、前記評価部が、地震による前記建物の傾斜の変化を考慮して、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
(5)また、上記の建物安全性検証システムは、前記センサを備え、前記計測部は、前記センサからのデータを取得できるように構成されていることを特徴とする。
(6)また、上記の建物安全性検証システムにおける前記評価部は、前記計測部が求めた前記層間変位と、測定して求めた前記建物の固有周期と、測定して求めた前記建物の傾斜角とのうちの何れかを組み合わせた判定により、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
(7)また、上記の建物安全性検証システムは、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部を備えることを特徴とする。
(8)また、上記の建物安全性検証システムは、前記固有周期計測部が、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、地震発生後の当該建物の固有周期を求めることを特徴とする。
(9)また、上記の建物安全性検証システムにおける前記固有周期計測部は、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の常時微動の固有周期を求め、一つの前記センサは、前記微振動センサが微振動を計測する層と同じ層に設けられていることを特徴とする。
(12)また、上記の建物安全性検証システムは、前記建物安全性評価部が、前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
(13)また、上記の建物安全性検証システムは、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部をさらに有し、前記建物安全性評価部が、前記層間変位、前記固有周期及び前記傾斜角により、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
(14)また、上記の建物安全性検証システムは、前記建物安全性評価部が、前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
(15)また、上記の建物安全性検証システムにおける前記センサは、地震による振動の加速度を検出することを特徴とする。
(16)また、本発明の一態様の建物安全性検証方法は、複数の層からなる建物の複数の層に設けられたセンサであって、当該層の振動を層ごとに検知するセンサがあり、前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータと前記基礎部又は前記最下層部分の振動のデータとから前記建物の変形を計測部が求め、前記計測部が求めた前記建物の変形に基づいて、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価する手順を含むことを特徴とする。
(17)また、本発明の一態様のプログラムは、複数の層からなる建物の複数の層に、当該層の振動を層ごとに検知するセンサが設けられ、前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、当該建物の健全性を評価する建物安全性検証システムのコンピュータに、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータと前記基礎部又は前記最下層部分の振動のデータとから前記建物の変形を計測部が求めるステップと、前記求めた前記建物の変形に基づいて、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価するステップとを実行させるためのプログラムである。
(18)また、本発明に関連する建物安全性検証システムには、以下のものがある。
例えば、建物安全性検証システムは、複数の層からなる建物の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求める層間変位計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の常時微動の固有周期を求める固有周期計測部と、前記層間変位計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とにより、前記建物の健全性を評価する建物安全性評価部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に関連する建物安全性検証システムは、前記建物安全性評価部が、前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
【0010】
本発明に関連する建物安全性検証システムは、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部をさらに有し、前記建物安全性評価部が、前記層間変位、前記固有周期及び前記傾斜角により、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
【0011】
本発明に関連する建物安全性検証システムは、前記建物安全性評価部が、前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価することを特徴とする。
【0012】
(19)また、本発明に関連する建物安全性検証方法には、以下のものがある。
建物安全性検証方法は、層間変位計測部が、複数の層からなる建物の前記層の加速度を計測する加速度センサの計測データから、前記各層の層間変位を求める層間変位計測過程と、固有周期計測部が、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の常時微動の固有周期を求める固有周期計測過程と、建物安全性評価部が、前記層間変位計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とにより、前記建物の健全性を評価する建物安全性評価過程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、地震発生後の建物の損傷程度を推定する建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態による建物安全性検証システムの構成例と、評価対象の建物に設けた加速度センサ及び微振動センサとが接続された構成を表す概念図である。
【図2】建物の固有周期の変化を示す図である。
【図3】図1のデータベース14に記憶されている判定テーブルの構成を示す図である。
【図4】データベース14に記憶されている判定結果テーブルの構成例を示す図である。
【図5】本実施形態による建物安全性検証システム1の建物の安全性を検証する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態による建物安全性検証システムの構成例と、評価対象の建物に設けた加速度センサ、微振動センサ及び傾斜センサとが接続された構成を表す概念図である。
【図7】図1のデータベース14に記憶されている判定テーブルにおけるパラメータパターンの組み合わせの構成例を示す図である。
【図8】本実施形態による建物安全性検証システム2の建物の安全性を検証する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の建物安全性検証システムは、複数の層からなる建物(建築物)の全層の各々、あるいはいくつかの層に加速度センサを設けて、加速度センサの計測した計測データから加速度センサを設けた層の層間変位を求める層間変位計測部を設置し、この相間変位計測部により建物の各層の層間変位を計測し、また建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層に固有周期計測部を設け、この固有周期計測部により当該建物の常時微動から建物の固有周期を計測する。また、本発明の建物安全性検証システムは、建物安全性評価部が、層間変位計測部が計測した層間変位と、固有周期計測部が計測した固有周期とにより、建物の健全性を評価する。これにより、本発明の建物耐震性評価システムは、地震が発生した際、地震の際における建物の相間変位と地震前後における固有周期の差分により、複合的な建物の継続使用の可否などに対応する判定を行うことができる。
【0016】
<第1の実施形態>
以下、図を用いて本発明の第1の実施形態の建物安全性検証システムの説明を行う。図1は、本発明の第1の実施形態による建物安全性検証システムの構成例と、評価対象の建物に設けた加速度センサ及び微振動センサとが接続された構成を表す概念図である。
図1において、建物安全性検証システム1は、インターネットなどからなる情報通信網を介して、建物100に設けられている加速度センサS0からSn(0は基礎、1からnまでは建物の階数)の各々から地震の振動データとして加速度データが供給される。加速度センサS0は、建物の基礎部分における加速度を計測するために設けられており、耐震評価の対象の建物の最下層部分(例えば、地下が無い場合、1階1001の下の地盤上に設けられた基礎)に印加される地動加速度を計測し、加速度データとして情報通信網を介して建物安全性検証システム1に対して出力する。
【0017】
また、加速度センサS1からSnの各々は、それぞれ1階からn階における自身に印加される加速度値を計測して加速度データとして、情報通信網を介して建物安全性検証システム1に対して送信している。ここで、加速度センサは、図1に示すように、建物のそれぞれの階に配置されている。図1の建物100が6階立ての建物である場合、1階1001に加速度センサS1が配置され、2階1002に加速度センサS2が配置され3階1003に加速度センサS3が配置され、4階1004に加速度センサS4が配置され、5階1005に加速度センサS5が配置され、6階1006に加速度センサS6が配置され、屋上100Rに加速度センサS7が配置されている。また、建物100の基礎部1000には加速度センサS0が配置されている。また、建物100の屋上100Rには、微振動センサSBが配置されている。また、この微振動センサSBは、屋上100Rでなくとも、屋上100R近傍の最上階に配置しても良い。
【0018】
建物安全性検証システム1は、層間変位計測部11、固有周期計測部12、建物安全性評価部13及びデータベース14を備えている。
層間変位計測部11は、例えば、加速度センサS0から加速度センサS6の各々から供給される加速度データを2回積分して、基礎1000、1階1001からn階100nまでの加速度方向の変位を求め、隣接する階同士の変位の差分を算出し、建物100のそれぞれの階の層間変位δを求める。このとき、層間変位計測部11は、各加速度センサから供給される地震における加速度データから、各階毎に最大加速度を抽出して、この最大加速度を2回積分して距離を求め、この距離を各階毎の変位とする。また、層間変位計測部11は、得られた各階の層間変位δの各々を、それぞれの階の高さで除算し、各階の層間変形角Δ(ラジアン)を算出する。なお、加速度データから変位を求める方法は、本実施形態に記載されているもの以外の他の方法を用いても良い。
【0019】
固有周期計測部12は、微振動センサSBから供給される微少振動データの周波数解析を行う。そして、固有周期計測部12は、パワースペクトルにおけるピーク(最も高いパワースペクトル値)となる周波数を固有周波数(固有振動数)として選択し、この固有周波数の周期を固有周期として出力する。
図2は、建物の固有周期の変化を示す図である。図2において、縦軸は固有周期を示しており、横軸は時間を示している。固有周期は、建物の剛性に対応するものであり、剛性が低い場合に長くなり、剛性が高い場合に短くなる。すなわち、図2に示すように、地震による強い地震により応力が与えられることにより、建物の構造躯体の部材(建物の主要な構造体や骨組みなど)あるいは非構造躯体の部材(雑壁、天井など)に損傷が発生し、建物の剛性が低下し、固有振動数が低くなる。本実施形態においては、層間変形角Δ及び固定周期Tは絶対値にて示される。
また、上述した微振動センサSBの他に、建物の最下層に他の微振動センサを設け、固有周期計測部12がこの他の微振動センサの微少振動データに基づいて、微振動センサSBの出力する微少振動データに重畳しているノイズ成分を除去し、より正確な固有周波数を求める構成としても良い。
【0020】
建物安全性評価部13は、層間変位計測部11の求めた層間変形角Δと、固有周期計測部12の求めた建物の固有周期とにより、構造躯体の損傷度合いを判定している。すなわち、建物安全性評価部13は、層間変形角Δと予め設定されている設計層間変形角(層間変位閾値)とを比較し、層間変形角Δが設計層間変形角を超えているか否かの判定を行う。このとき、建物安全性評価部13は、固有周期Tと固有周期の初期値(例えば、建物を建設した直後の固有周期あるいは地震発生直前の固定周期)とを比較し、固有周期Tが固有周期の初期値以下であるか否かの判定を行う。
また、固有周期の初期値に対して経時変化のマージンを加えて、固有周期の初期値の代わりに固有周期閾値を生成し、この固有周期閾値と固有周期Tとを比較するようにしても良い。ここで、固有周期の初期値<固有周期閾値である。この固有周期の初期値または固有周期閾値と、設計層間変位角とは、予め建物安全性評価部13内の記憶部に記憶されており、建物安全性評価部13が判定を行う際、自身内部の上記記憶部から読み出して用いる。
【0021】
図3は、図1のデータベース14に記憶されている判定テーブルの構成を示す図である。この判定テーブルは、層間変形角Δ及び設計層間変形角の比較結果と、固有周期T及び固有周期の初期値の比較結果との組み合わせによる建物の健全性の判定結果が示されている。設計層間変形角は、この値を超える層間変位が発生した場合、構造躯体の部材が変形などの損傷を受ける大きさ(破断などを含め、構造躯体の部材が変形した状態から元に戻らない状態となる塑性変形の限界を示す大きさ)に設定されている。以下、固有周期Tと層間変形角Δとの判定のパターンを示すパラメータパターンに対応する建物の安全性(健全性)の判定を示す。
【0022】
・パラメータパターンA
層間変形角Δが設計層間変形角を超えており、かつ固有周期閾値に比較して固有周期が長くなり剛性が低下していると判断される場合には、建物の損傷の程度は以下に示すように推定される。建物の状況は、構造躯体の損傷は想定以上であり、建物の損傷の大きさが想定以上であると推定される。これにより、判定結果は、「建物の損傷の早急な調査が必要である」とされている。
【0023】
・パラメータパターンB
層間変形角Δが設計層間変形角を超えており、一方、固有周期閾値に比較して固有周期Tに変化がなく剛性が維持されていると判断される場合には、建物の損傷の程度は以下に示すように推定される。固有周期Tの変化がないため、建物の構造躯体が設計における設計層間変形角より高い層間変形角として実際に建造されたとして、設計層間変形角を超えても損傷は想定以下と推定することができる。これにより、判定結果は、「継続使用可能であるが、注意して利用する必要がある」とされている。
【0024】
・パラメータパターンC
層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、一方、固有周期閾値に比較して固有周期Tが長くなり剛性が低下していると判断される場合には、建物の損傷の程度は以下に示すように推定される。固有周期Tが長くなっているが、層間変形角Δが設計層間変形以下であるため、構造躯体ではなく建物の非構造躯体が損傷を受けており、構造躯体の損傷は想定以下と推定することができる。これにより、判定結果は、「継続使用可能であるが、注意して利用する必要がある」とされている。
【0025】
・パラメータパターンD
層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、かつ固有周期閾値に比較して固有周期Tに変化がなく剛性が維持されていると判断される場合には、建物の損傷の程度は以下に示すように推定される。層間変形角Δが設計層間変形以下であり、かつ固有周期Tに変化がなく剛性が維持されているため、建物の構造躯体及び建物の非構造躯体のいずれも損傷を受けおらず、構造躯体の損傷は想定以下と推定することができる。これにより、判定結果は、「継続使用可能」とされている。
【0026】
本実施形態において、建物安全性評価部13は、上述した判定を、建物100の階毎に、建物100の固有周期Tと各階の層間変形角Δとを用いて、階毎に図3に示す判定テーブルによる判定を行う。そして、建物安全性評価部13は、建物100の階毎に判定結果を、データベース14の判定結果テーブルに書き込んで記憶させる。この判定結果テーブルは、建物毎に、各建物を識別する建物識別情報が付加されて、データベースに書き込まれる。
【0027】
図4は、データベース14に記憶されている判定結果テーブルの構成例を示す図である。この図4において、建物100の階毎に、その階の階数と、判定結果と、対応とについて記載されている。対応については、本実施形態においては、例えば、地震後の避難の緊急度が設定されている。この対応の項目については、使用者が適時設定する。
図4のように、1階1001が「継続使用可能」と判定され、2階1002が「継続使用可能だが、注意して利用する必要がある」と判定され、2階1003が「早急な調査が必要」と判定され、4階1004が「継続使用可能だが、注意して利用する必要がある」と判定されている。
【0028】
この場合、3階1003が危険な状態にあるため、例えば余震がくる前に、3階1003より上の階の人間を非難させる必要があり、対応としては「緊急避難」となる。避難する人間が集中すると危険なため、「早急な調査が必要」と判定された階より、下層の階、この場合、2階1002及び1階1001の人間は避難指示を受けるまで待機する「指示まで待機」と対応する。建物安全性評価部13は、この判定結果に対する対応を予め設定されたルール(各階の損傷程度のパターンの組み合わせと、この組み合わせに対する対応とを関連づけたルール)により決定し、データベース14の図4に示す判定結果テーブルの対応の欄に書き込んで記憶させる。
【0029】
次に、本実施形態による建物安全性検証システム1の建物の安全性を検証する処理を、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態による建物安全性検証システム1の建物の安全性を検証する処理の流れを示すフローチャートである。建物安全性検証システム1は、地震が発生した後、各階毎に図5のフローチャートの動作を行い、建物100の階毎の安全性の判定を行う。建物100がn階建てであれば、1階1001からn階100nまで順番にフローチャートによる判定処理を行う。層間変位計測部11は、加速度センサS0から供給される加速度センサS0が計測した加速度が所定の地震判定閾値以上の場合、地震発生として以下のフローチャートの処理を実行する。
【0030】
ステップS1:
層間変位計測部11は、供給されるセンサS0が計測した加速度データから加速度を抽出する。そして、層間変位計測部11は、この抽出した加速度を2回積分し、基礎部分の変位を算出する。
【0031】
ステップS2:
層間変位計測部11は、建物100のk階100k(1≦k≦n)に配置されたセンサSkから供給される、それぞれの加速度センサSkに計測した加速度から、加速度センサS0の加速度を抽出する。そして、層間変位計測部11は、この抽出した加速度を2回積分し、各階の変位を算出し、それぞれ隣接する階の変位の差分を算出し、各階の層間変位δを算出する。ここで、建物100の1階1001の層間変位δは、1階1001の変位から基礎1000の変位を減算して求められる。
【0032】
ステップS3:
層間変位計測部11は、算出したk階100kの層間変位δの各々を、k階100kの高さでそれぞれ除算し、k階100kの層間変形角Δを算出する。
【0033】
ステップS4:
固有周期計測部12は、屋上100Rに配置された微振動センサSBから、地震発生後に供給される微振動データに対し、信号処理を行う。すなわち、固有周期計測部12は、微振動データのフーリエ解析を行い、最も高いパワースペクトルを有する周波数を抽出し、この周波数を固有周波数とする。そして、固有周期計測部12は、抽出した固有周波数の周期を求め、この周期を固有周期Tとする。
【0034】
ステップS5:
建物安全性評価部13は、建物100における1階1001からn階100nまでの全ての階における損傷程度の判定が行われたか否かの判定を行う。
このとき、建物安全性評価部13は、建物100における全ての階に対する判定が終了した場合、処理を終了し、建物100における全ての階に対する判定が終了していない場合、処理をステップS4へ進める。
【0035】
ステップS6:
建物安全性評価部13は、建物100の判定の終了していない階の層間変形角Δを層間変位計測部11から読み込み、この読み込んだ判定対象のk階100kの層間変形角Δと設計層間変形角との比較を行い、層間変形角Δが設計層間変形角を超えているかを判定する(第1の判定結果を求める)。このとき、建物安全性評価部13は、層間変形角Δが設計層間変形角を超えている場合、処理をステップS7へ進め、一方層間変形角Δが設計層間変形角を超えていない場合、処理をステップS6へ進める。
【0036】
ステップS7:
建物安全性評価部13は、固有周期計測部12から供給される固有周期Tと固有周期閾値とを比較し、固有周期Tが固有周期閾値以下であるか否かの判定を行う(第2の判定結果を求める)。このとき、建物安全性評価部13は、固有周期Tが固有周期閾値を超える場合、処理をステップS9へ進め、一方、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、処理をステップS10へ進める。ここで、説明においては、建物100の固有周期の初期値ではなく、この固有周期の初期値に対してマージンを持たせた固有周期閾値を用いている。
【0037】
ステップS8:
建物安全性評価部13は、固有周期計測部12から供給される固有周期Tと固有周期閾値とを比較し、固有周期Tが固有周期閾値以下であるか否かの判定を行う(第2の判定結果を求める)。このとき、建物安全性評価部13は、固有周期Tが固有周期閾値を超える場合、処理をステップS11へ進め、一方、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、処理をステップS12へ進める。
【0038】
ステップS9:
建物安全性評価部13は、データベース14の判定テーブルを参照し、層間変形角Δが設計層間変形角を超え、かつ固有周期Tが固有周期閾値を超えている場合、パラメータパターンが状態Aであることを検出する。
次に、建物安全性評価部13は、パラメータパターンが状態Aの判定である「早急な調査が必要である(A)」を、データベース14の判定結果テーブルにおける対応する評価対象のk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS5へ進める。
【0039】
ステップS10:
建物安全性評価部13は、データベース14の判定テーブルを参照し、層間変形角Δが設計層間変形角を超え、一方、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、パラメータパターンが状態Bであることを検出する。
次に、建物安全性評価部13は、パラメータパターンが状態Bの判定である「継続使用可能だが、注意して利用する必要がある(B)」を、データベース14の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS5へ進める。
【0040】
ステップS11:
建物安全性評価部13は、データベース14の判定テーブルを参照し、層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、一方、固有周期Tが固有周期閾値以下でない場合、パラメータパターンが状態Cであることを検出する。
次に、建物安全性評価部13は、パラメータパターンが状態Cの判定である「継続使用可能だが、注意して利用する必要がある(C)」を、データベース14の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS5へ進める。
【0041】
ステップS12:
建物安全性評価部13は、データベース14の判定テーブルを参照し、層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、かつ固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、パラメータパターンが状態Dであることを検出する。
次に、建物安全性評価部13は、パラメータパターンが状態Dの判定である「継続使用可能(D)」を、データベース14の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS5へ進める。
【0042】
上述した処理を行うことにより、本実施形態の建物安全性検証システム1は、建物100の固有周期Tと建物100におけるk階100kの層間変形角Δとの組み合わせにより、建物100の各々の階の損傷程度を判定する。これにより、本実施形態の建物安全性検証システム1は、建物100が設計基準値である設計層間変形角と異なる数値で建設されていても、建物100の固有周期と組み合わせて判定することにより、建設された実際の建物の設計層間変形角に対応して、各階の個別の損傷程度を従来に比較して高い精度にて推定して判定することができる。また、本実施形態の建物安全性検証システム1は、施工誤差、経年劣化、什器など建物内部設置物の重量変動、構造躯体や非構造部材の剛性などの条件が変化しても対応し、建物100における各階の個別の損傷程度を従来に比較して高い精度にて推定し、建物の安全性を判定することができる。
【0043】
また、本実施形態の建物安全性検証システム1によれば、データベース14における判定結果テーブルに対して、各階(加速度センサを設けた階)の判定結果を書き込むことにより、その判定結果によってすでに述べたように、建物100における各階の地震後の避難の優先度などを判定することができ、避難誘導を効率的に行うことができる。
また、本実施形態においては、建物100の全層に加速度センサを設けたが、例えば1階おきなど、複数階(複数層)のいくつかの層に加速度センサを設け、加速度センサを設けた階の損傷を判定するようにしても良い。
【0044】
<第2の実施形態>
以下、図を用いて本発明の第2の実施形態の建物安全性検証システムの説明を行う。図6は、本発明の第2の実施形態による建物安全性検証システムの構成例と、評価対象の建物に設けた加速度センサ、微振動センサ及び傾斜センサとが接続された構成を表す概念図である。
図6において、建物安全性検証システム2は、インターネットなどからなる情報通信網Iを介して、第1の実施形態と同様に、建物100に設けられている加速度センサS0からSn(0は基礎、1からnまでは建物の階数)の各々から地震の振動データとして加速度データが供給される。加速度センサS0、加速度センサS1からSnについては配置箇所が第1の実施形態と同様である。また、第2の実施形態においては、建物100の屋上100Rには、微振動センサSBに加え、傾斜センサSJが配置されている。この傾斜センサSJは、微振動センサSBと同様に、屋上100Rでなくとも、屋上100R近傍の最上階の上部(例えば、n階建てであればn階の天井など)に配置しても良い。
【0045】
建物安全性検証システム2は、層間変位計測部11、固有周期計測部12、建物安全性評価部23、データベース24及び傾斜角計測部25を備えている。層間変位計測部11及び固有周期計測部12の各々は、第1の実施形態における層間変位計測部11及び固有周期計測部12のそれぞれと同様の構成である。
傾斜角計測部25は、建物100の屋上100Rに配置された傾斜センサSJから供給される傾斜データによって、地平に対して垂直方向の軸に対する建物100の傾斜角θを算出する。本実施形態においては、層間変形角Δ、固定周期T及び傾斜角θは絶対値にて示される。
【0046】
建物安全性評価部23は、層間変位計測部11の求めた層間変形角Δと、固有周期計測部12の求めた建物の固有周期Tと、傾斜角計測部25が求めた傾斜角θとにより、構造躯体の損傷度合いを判定している。すなわち、建物安全性評価部23は、層間変形角Δと予め設定されている設計層間変形角とを比較し、層間変形角Δが設計層間変形角を超えているか否かの場合分けを行う。また、建物安全性評価部23は、固有周期Tと固有周期の初期値とを比較し、固有周期Tが固有周期の初期値以下であるか否かの判定を行う。また、建物安全性評価部23は、傾斜角θと傾斜角の初期値(例えば、建物の建設直後に計測された傾斜角)とを比較し、傾斜角θが初期値以下であるか否かの判定を行う。
また、固有周期の初期値に対して経時変化のマージンを加えて、固有周期の初期値の代わりに、この固有周期の初期値に対してマージンを加えて固有周期閾値を生成し、この固有周期閾値と固有周期Tとを比較するようにしても良い。ここで、固有周期の初期値<固有周期閾値である。
【0047】
図7は、図1のデータベース14に記憶されている判定テーブルにおけるパラメータパターンの組み合わせの構成例を示す図である。この判定テーブルは、層間変形角Δ及び設計層間変形角の比較結果と、固有周期T及び固有周期の初期値の比較結果と、傾斜角θ及び傾斜角の初期値(傾斜角閾値)の比較結果の組み合わせによる建物の健全性の判定結果が示されている。設計層間変形角は、この値を超える層間変位が発生した場合、構造躯体の部材が変形などの損傷を受ける大きさに設定されている。以下、固有周期Tと層間変形角Δと傾斜角θとの判定のパターンを示すパラメータパターンに対応する建物の健全性の判定を示す。この図7において、3次元の判定空間がパターンP1からパターンP8の8個の領域に分割されている。
【0048】
・パターンP1 層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であるパターン
・パターンP2 層間変形角Δが設計層間変形角を超えており、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であるパターン
・パターンP3 層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、固有周期Tが固有周期閾値を超えており、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であるパターン
・パターンP4 層間変形角Δが設計層間変形角を超えており、固有周期Tが固有周期閾値を超えており、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であるパターン
・パターンP5 層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えているパターン
・パターンP6 層間変形角Δが設計層間変形角を超えており、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えているパターン
・パターンP7 層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、固有周期Tが固有周期閾値を超えており、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えているパターン
・パターンP8 層間変形角Δが設計層間変形角を超えており、固有周期Tが固有周期閾値を超えており、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えているパターン
【0049】
本実施形態においては、上述したパターンP1からパターンP8を以下に示すように、5個の判定グループ(状態)に分類されている。データベース24には、この判定グループに対応した判定結果が判定テーブルとして予め書き込まれて記憶されている。
【0050】
・判定グループD:パターンP1、パターンP2
判定結果:継続使用可能。
判定理由:パターンP1については、層間変形角Δが設計層間変形角以下であり、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であるため、建物100に対する損傷がないと判定される。また、パターンP2については、層間変形角Δが設計層間変形角を超えているが、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であるため、建物100に対する損傷がないと判定される。ここで、層間変形角Δが設計層間変形角を超えているのに、固有周期Tが固有周期閾値以下であり、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であることから、建物100の実際の耐震性能が設計時より高く建設されているためと推定される。
【0051】
・判定グループE:パターンP5、パターンP6
判定結果:応急復旧時には使用可能と判断できるが、通常時に使用できるかどうかは調査が必要。
判定理由:固有周期Tが固有周期閾値以下であり、建物100の傾斜角θが傾斜角の閾値を超えている場合、建物100の立っている地盤が損傷していると推定される。
【0052】
・判定グループF:パターンP7
判定結果:非構造部材が損傷している可能性があり、応急復旧時に使用するとしても調査が必要。
判定理由:固有周期Tが固有周期閾値を超えており、建物100の傾斜角θが傾斜角の閾値を超えており、層間変形角Δが設計層間変形角以下である場合、建物100の非構造部材及び建物100の立っている地盤が損傷していると推定される。
【0053】
・判定グループG:パターンP3、パターンP4
判定結果:非構造部材が損傷している可能性があり、応急復旧時に使用するとしても調査が必要であるが、通常時の使用に関しては非構造部材を補修すれば継続使用可能。
判定理由:建物100の傾斜角θが傾斜角の閾値以下であるが、固有周期Tが固有周期閾値を超えているため、建物100の構造躯体に損傷が無く、非構造躯体に損傷の可能性があると推定される。
【0054】
・判定グループH:パターンP8
判定結果:継続使用不可。
判定理由:建物100の傾斜角θが傾斜角の閾値を超え、かつ固有周期Tが固有周期閾値を超え、かつ層間変形角Δが設計層間変形角を超えているため、建物100の構造躯体、非構造躯体及び地盤に損傷の可能性があると推定される。
【0055】
次に、本実施形態による建物安全性検証システム2の建物の安全性を検証する処理を、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態による建物安全性検証システム2の建物の安全性を検証する処理の流れを示すフローチャートである。建物安全性検証システム2は、地震が発生した後、各階毎に図8のフローチャートの動作を行い、建物100の階毎の安全性の判定を行う。建物100がn階建てであれば、1階1001からn階100nまで順番にフローチャートによる判定処理を行う。層間変位計測部11は、供給されるセンサS0から地動加速度が所定の地震判定閾値以上の場合、地震発生として以下のフローチャートの処理を実行する。
【0056】
ステップS21:
層間変位計測部11は、供給されるセンサS0が計測した加速度データから加速度を抽出する。そして、層間変位計測部11は、この抽出した加速度を2回積分し、基礎部分の変位を算出する。
【0057】
ステップS22:
層間変位計測部11は、建物100のk階100k(1≦k≦n)に配置されたセンサSkから供給される、それぞれの加速度センサSkに計測した加速度から、加速度センサS0の加速度を抽出する。そして、層間変位計測部11は、この抽出した加速度を2回積分し、各階の変位を算出し、それぞれ隣接する階の変位の差分を算出し、各階の層間変位δを算出する。ここで、建物100の1階1001の層間変位δは、1階1001の変位から基礎1000の変位を減算して求められる。
なお、全体曲げ変形やロッキングが支配的な建物などに対しては、層間変位を算出する際に、傾斜角θの計測データを用いることでせん断変形成分をより精緻に算出する。
【0058】
ステップS23:
層間変位計測部11は、算出したk階100kの層間変位δの各々を、k階100kの高さでそれぞれ除算し、k階100kの層間変形角Δを算出する。なお、加速度データから変位を求める方法は、本実施形態に記載されているもの以外の他の方法を用いても良い。
【0059】
ステップS24:
固有周期計測部12は、屋上100Rに配置された微振動センサSBから、地震発生後に供給される微振動データに対し、信号処理を行う。すなわち、固有周期計測部12は、微振動データのフーリエ解析を行い、最も高いパワースペクトルを有する周波数を抽出し、この周波数を固有周波数とする。そして、固有周期計測部12は、抽出した固有周波数の周期を求め、この周期を固有周期Tとする。
【0060】
ステップS25:
傾斜角計測部25は、建物100の屋上100Rに配置されている傾斜角センサSJから供給される傾斜角データにより、建物100の傾斜角θを求める。
【0061】
ステップS26:
建物安全性評価部23は、建物100における1階1001からn階100nまでの全ての階における損傷程度の判定が行われたか否かの判定を行う。
このとき、建物安全性評価部23は、建物100における全ての階に対する判定が終了した場合、処理を終了し、建物100における全ての階に対する判定が終了していない場合、処理をステップS27へ進める。
【0062】
ステップS27:
建物安全性評価部23は、傾斜角計測部25から供給される傾斜角θと建物100の傾斜角の初期値との比較を行い、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えているか否かを判定する(第3の判定結果を求める)。このとき、建物安全性評価部23は、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えていない場合、処理をステップS28へ進め、一方、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えている場合、処理をステップS29へ進める。
【0063】
ステップS28:
建物安全性評価部23は、固有周期計測部12から供給される固有周期Tと固有周期閾値とを比較し、固有周期Tが固有周期閾値以下であるか否かの判定を行う(第2の判定結果を求める)。このとき、建物安全性評価部23は、固有周期Tが固有周期閾値を超える場合、処理をステップS32へ進め、一方、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、処理をステップS31へ進める。ここで、説明においては、建物100の固有周期の初期値ではなく、この固有周期の初期値に対してマージンを持たせた固有周期閾値を用いている。
【0064】
ステップS29:
建物安全性評価部23は、固有周期計測部12から供給される固有周期Tと固有周期閾値とを比較し、固有周期Tが固有周期閾値以下であるか否かの判定を行う。このとき、建物安全性評価部23は、固有周期Tが固有周期閾値を超える場合、処理をステップS30へ進め、一方、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、処理をステップS33へ進める。
【0065】
ステップS30:
建物安全性評価部23は、建物100の判定の終了していない階の層間変形角Δを層間変位計測部11から読み込み、この読み込んだ判定対象のk階100kの層間変形角Δと設計層間変形角との比較を行い、層間変形角Δが設計層間変形角を超えているかを判定する(第1の判定結果を求める)。このとき、建物安全性評価部23は、層間変形角Δが設計層間変形角を超えている場合、処理をステップS35へ進め、一方層間変形角Δが設計層間変形角を超えていない場合、処理をステップS34へ進める。
【0066】
ステップS31:
建物安全性評価部23は、データベース24の判定テーブルを参照し、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であり、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、パラメータパターンが状態Dであることを検出する。
次に、建物安全性評価部23は、パラメータパターンが状態Dの判定である「継続使用可能(D)」を、データベース24の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS26へ進める。
【0067】
ステップS32:
建物安全性評価部23は、データベース24の判定テーブルを参照し、傾斜角θが傾斜角の初期値以下であり、固有周期Tが固有周期閾値を超えている場合、パラメータパターンが状態Gであることを検出する。
次に、建物安全性評価部23は、パラメータパターンが状態Gの判定である「非構造部材が損傷している可能性があり、応急復旧時に使用するとしても調査が必要であるが、通常時の使用に関しては非構造部材を補修すれば継続使用可能(G)」を、データベース24の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS26へ進める。
【0068】
ステップS33:
建物安全性評価部23は、データベース24の判定テーブルを参照し、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えており、固有周期Tが固有周期閾値以下である場合、パラメータパターンが状態Eであることを検出する。
次に、建物安全性評価部23は、パラメータパターンが状態Eの判定である「応急復旧時には使用可能と判断できるが、通常時に使用できるかどうかは調査が必要(E)」を、データベース24の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS26へ進める。
【0069】
ステップS34:
建物安全性評価部23は、データベース24の判定テーブルを参照し、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えており、固有周期Tが固有周期閾値を超えており、層間変形角Δが設計層間変形角以下である場合、パラメータパターンが状態Fであることを検出する。
次に、建物安全性評価部23は、パラメータパターンが状態Fの判定である「非構造部材が損傷している可能性があり、応急復旧時に使用するとしても調査が必要(F)」を、データベース24の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS26へ進める。
【0070】
ステップS35:
建物安全性評価部23は、データベース24の判定テーブルを参照し、傾斜角θが傾斜角の初期値を超えており、固有周期Tが固有周期閾値を超えており、層間変形角Δが設計層間変形角を超えている場合、パラメータパターンが状態Hであることを検出する。
次に、建物安全性評価部23は、パラメータパターンが状態Hの判定である「継続使用不可(H)」を、データベース24の判定結果テーブルにおける対応するk階100kの判定結果の欄に書き込んで記憶させ、処理をステップS26へ進める。
【0071】
上述した処理を行うことにより、本実施形態の建物安全性検証システム2は、建物100の固有周期Tと建物100におけるk階100kの層間変形角Δと建物100の傾斜角θの組み合わせにより、建物100の各々の階の損傷程度を判定する。これにより、本実施形態の建物安全性検証システム2は、建物100が設計層間変形角と異なる数値で建設されていても、建物100の固有周期T及び傾斜角θと組み合わせることにより、建設された実際の建物の設計層間変形角に対応して、各階の個別の損傷程度及び地盤の損傷程度を従来に比較して高い精度にて推定して判定することができる。また、本実施形態の建物安全継承システム2は、施工誤差、経年劣化、什器など建物内部設置物の重量変動、構造躯体や非構造部材の剛性などの条件が変化しても対応し、建物100における各階の個別の損傷程度及び地盤の損傷程度を従来に比較して高い精度にて推定し、建物の安全性を判定することができる。すなわち、本実施形態によれば、各階の層間変形角及び固定周期による判定に対して傾斜角の判定を加えることにより、建物100における構造躯体の損傷、非構造躯体の損傷及び地盤の損傷(建物の傾斜角θにより推定)の切り分けが可能である。このため、本実施形態の建物安全継承システム2は、第1の実施形態に比較してより詳細な建物100の状態の判定を行うことができる。また、本実施形態の建物安全性検証システム2によれば、データベース24における判定結果テーブルに対して、各階の判定結果を書き込むことにより、その判定結果によってすでに述べたように、建物100における各階の地震後の避難の優先度などを判定することができる。
【0072】
なお、図1、図6における建物安全性検証システム1または建物安全性検証システム2を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより建物の耐震性の評価(地震による損壊の推定など)の処理動作を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0073】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0074】
1,2…建物安全性検証システム
11…層間変位計測部
12…固有周期計測部
13,23…建物安全性評価部
14,24…データベース
25…傾斜角計測部
S0,S1,S2,S3,S4,S5,S6…加速度センサ
100…建物
1001…1階
1002…2階
1003…3階
1004…4階
1005…5階
1006…6階
1000…基礎
100R…屋上
SB…微振動センサ
SJ…傾斜角センサ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項2】
前記評価部が、
前記建物の変形が予め設定された前記閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の建物安全性検証システム。
【請求項3】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項4】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する評価部と
を備え、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知し、
前記評価部は、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する
ことを特徴とする建物安全性検証システム。
【請求項5】
前記評価部は、
地震による前記建物の傾斜の変化を前記評価の条件に含めて、当該地震発生後の前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の建物安全性検証システム。
【請求項6】
前記計測部は、
前記最下層のセンサが検知した当該基礎部又は最下層部分の振動のデータと、前記最下層に隣接する層のセンサが検知した当該層の振動データとから、前記最下層に隣接する層の層間変位を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項7】
前記固有周期計測部は、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、地震発生後の当該建物の固有周期を求める
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項8】
前記固有周期計測部は、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の常時微動の固有周期を求め、
前記層の振動を層ごとに検知する前記センサから前記最下層のセンサを除いたセンサ
のうちの一つのセンサは、
前記微振動センサが微振動を計測する層と同じ層に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の建物安全性検証システム。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記評価部が、
前記層間変位が予め設定された層間変位閾値を超えるか否かを判定した第1の判定結果と、また前記固有周期が予め設定した固有周期閾値を超えるか否かを判定した第2の判定結果と、前記傾斜角が予め設定した傾斜角閾値を超えるか否かを判定した第3の判定結果から、前記傾斜角と前記固有周期とがともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これら2つの判定結果と前記層間変位の判定結果との組み合わせにより、前記建物の健全性を評価する
ことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項11】
前記評価部が、
前記計測部が求めた前記層間変位と、前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とを条件にした判定を前記層ごとにそれぞれ実施して、前記各層ごとの判定結果から定まる早急に調査が必要な層より上の層の対応についての判定を予め定められたルールに従って実施する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物安全性検証システム。
【請求項12】
前記センサは、前記地震による振動の加速度を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項8、請求項10,請求項11の何れか1項に記載の建物安全性検証システム。
【請求項13】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項14】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサは、前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられ、前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項15】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、
前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、
前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、
前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、
を備える建物安全性検証システムの建物安全性検証方法であって、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、最下層のセンサが前記基礎部又は最下層部分の振動を検知する過程と、
前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価する過程と、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を超えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定する過程と
を含むことを特徴とする建物安全性検証方法。
【請求項16】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記層間変位と前記層間変位から求めた層間変形角の何れかにより示される前記建物の変形と、測定して求めた前記建物の固有周期とを組み合わせて判定し、前記建物の変形が、前記建物の構造部材が損傷を受け得る大きさに応じて定めた閾値より大きいと判定された場合に、測定して求めた前記建物の固有周期の値に基づいて、前記建物を継続使用することが可能か否かを判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
複数の層からなる建物の複数の層に設けられ、当該層の振動を層ごとに検知するセンサと、前記センサが地震時に検知した当該層の振動のデータから、前記センサを設けた層間の層間変位を算出し、前記算出した層間変位から前記建物の変形を求める計測部と、前記建物の最上層あるいは当該最上層近傍の層の微振動を計測する微振動センサから、当該建物の固有周期を求める固有周期計測部と、前記建物の最上層あるいは最上層近傍に配置され、当該建物の傾斜角を計測する傾斜角計測部と、を備える建物安全性検証システムのコンピュータに、
前記センサのうち最下層のセンサが前記建物の基礎部又は最下層部分に設けられており、前記最下層のセンサに前記基礎部又は最下層部分の振動を検知させて、前記計測部が求めた前記建物の変形と前記固有周期計測部が求めた前記固有周期と前記建物の傾斜角とに基づいて、前記建物の健全性を評価するステップと、
前記固有周期の判定結果と前記傾斜角の判定結果がともにそれらの閾値を越えている場合に限り、これらの2つの判定結果と前記層間変位の判定結果とを論理的に組み合わせて判定し、当該判定の結果に応じて前記建物の健全性と前記建物の立っている地盤の損傷を含めて建物の健全性を判定するステップと
を実行させるためのプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-19 
出願番号 特願2015-10366(P2015-10366)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G01M)
P 1 651・ 113- YAA (G01M)
P 1 651・ 121- YAA (G01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 秀直  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 小川 亮
▲高▼見 重雄
登録日 2015-08-28 
登録番号 特許第5799183号(P5799183)
権利者 株式会社NTTファシリティーズ
発明の名称 建物安全性検証システム、建物安全性検証方法及びプログラム  
代理人 特許業務法人 志賀国際特許事務所  
代理人 特許業務法人志賀国際特許事務所  
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