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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F27B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F27B
審判 全部申し立て 2項進歩性  F27B
管理番号 1325887
異議申立番号 異議2016-700934  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-30 
確定日 2017-03-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5919874号発明「ロータリーキルンの炉端部構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5919874号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯

特許第5919874号(請求項の数3)に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願(特願2012- 35813号)は、平成24年 2月22日の出願であって、平成28年 4月22日にその特許権の設定の登録がなされ、その後、本件特許に対し、平成28年 9月30日に特許異議申立人 奥谷 宏邦 より特許異議の申立てがなされたものである。

第2.特許異議申立について

1 本件特許発明

特許第5919874号の請求項1?3に係る発明(以下「本件特許発明1?3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ロータリーキルンの炉端部構造であって、
中空円筒形状のシェル本体部の一端側に、交換可能な中空円筒形状のシェル先端部が、前記シェル本体部と前記シェル先端部を着脱可能に連接する固定部を介して、連接されていて、
前記固定部が、前記シェル本体部の一端側に形成される第1フランジ部と、前記シェル先端部の一端側に形成される第2フランジ部と、両フランジ部のフランジ面同士を固定する固定ボルトと、で構成されていて、
前記両フランジ部は、キルン本体の内周壁面側及び外周壁面側の両方に突出させる構成であって、前記両フランジ部の内周壁面側の突出部分の全体が、不定形耐火物によって被覆されていることを特徴とするロータリーキルンの炉端部構造。

【請求項2】
前記シェル先端部が、前記シェル本体部の排出口側に連接されている請求項1に記載のロータリーキルンの炉端部構造。

【請求項3】
前記ロータリーキルンが定置式のロータリーキルンであって、前記シェル本体部の直径が1.5m以上である請求項1又は2に記載のロータリーキルンの炉端部構造。」

2 申立理由の概要

特許異議申立人は、以下の申立理由1?3によって請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

申立理由1
本件特許発明1?3は、甲第1、2号証記載の考案及び甲第3号証記載事項に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

申立理由2
本件特許発明1?3は明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

申立理由3
発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:実願昭51-079226号(実開昭52-168904号)
のマイクロフィルム
甲第2号証:中国実用新案第201443476号明細書及び抄訳文
甲第3号証:特開2001-227870号公報

第3.当審の判断

第3-1.申立理由1(特許法第29条第2項)について

(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(下線部は当審にて付与した。以下同様)。

(1-1)
「…落口リングダム(1)を保持した鉄皮(6)と耐火煉瓦(2)を内張りしたキルン本体の鉄皮(7)との接合端面にフランジ(3)(4)を設け、上記耐火煉瓦(2)の接合面に充填用の耐火材(5)を付着して、上記フランジ(3)(4)間をボルト締結して設ける。
すなわち、落口リングダム(1)と耐火煉瓦(2)を内張りしたキルン本体とを分割し、落口リングダム部のみ着脱自在に取り替え可能となしたものである。」(明細書第2頁第10?19行)

(1-2)
「予備用の落口リングダムを設け、かつ分割可能な取り付けにしたことにより、ロータリキルンの停止時間を短縮して稼働率を向上し、取り替えを簡易化し、工事費を節減し得るのみならず設備の管理や保全をやりやすくした優れたロータリキルンを得ることができる。」(明細書第3頁第14?19行)

(1-3)


」(第1図)

(1-4)


」(第2図)

(当審註:上記(1-3)、(1-4)からは、上記(1-1)の記載を踏まえると、フランジ(3)とフランジ(4)とがそれぞれキルン本体の外周壁面側に突出していること、及び、フランジ(3)とフランジ(4)のある内周壁面側の全体が耐火物(5)によって被覆されていることが、それぞれ見て取れる。)

(2)甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の記載がある(ここにおいて、翻訳は当審が作成したものである。以下同様。)。

(2-1)



「【0001】
本実用新案は風力発電アセンブリの機械支持部材に関し、具体的には風力発電用タワーに関する。」

(2-2)



「【0012】
図2のように、タワー基礎1と第1のタワーセクション2との間は外フランジを介して均一に配置されたボルトにより接続される。タワー基礎1の上端にタワー基礎フランジ11が溶接され、第1のタワーセクション2の下端に第1のタワーセクションの下端のフランジ21が溶接され、タワー基礎フランジ11と第1のタワーセクションの下端のフランジ21は、いずれも外フランジであり、それに複数のボルトホールが対応付けられて均一に配置され、複数のボルト3がボルトホールを対応的に貫通した後にナット31により固定される。
【0013】
図3のように、タワーセクションとタワーセクションとの間は内フランジを介して均一に配置されたボルトにより接続される。第1のタワーセクション2の上端と第2のタワーセクション4の両端はいずれにも予め相応的な内フランジが溶接される。第1のタワーセクションの上端のフランジ22と第2のタワーセクションの下端のフランジ41の内二つの内フランジに複数のボルトホールが対応付けられて均一に配置され、複数のボルト3がボルトホールを対応的に貫通した後にナット31により固定される。その他のタワーセクションとタワーセクションとの間の接続は、第1のタワーセクションの上端のフランジと第2のフランジの下端のフランジ41との接続の方式と同じである。」

(2-3)



(当審註:上記(2-3)からは、上記(2-2)の記載を踏まえると、「第1のタワーセクションの上端のフランジ22」と「第2のタワーセクションの下端のフランジ41」とがそれぞれタワーセクションの内周壁面側に突出していること、及び、「第1のタワーセクションの上端のフランジ22」と「第2のタワーセクションの下端のフランジ41」を、複数の「ボルト3」及び「ナット31」により固定していることが、それぞれ見て取れる。)

(3)甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の記載がある。

(3-1)
「また炉体出口21bの端部に装着された出口金物31は、図1,図2に示すように、周方向に複数に分割された端部金物32と、周方向に複数に分割された連通金物33と、端部金物32および連通金物33を炉体21に装着する取付け具である固定ボルト(ナット)34とで構成されている。」(【0013】)

(3-2)
「【図1】

」(【図1】)

(4)判断

(ア)本件特許発明1についての検討
記載事項(1-1)?(1-4)の内容を本件特許発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1考案」という。)が記載されていると認める。

「ロータリーキルンの落口リングダム部であって、
キルン本体の鉄皮(6)に、落口リングダム(1)を保持した鉄皮(7)が、着脱可能に接合端面を介して、接合されていて、
前記接合端面が、前記キルン本体の鉄皮(6)の一端側に形成されるフランジ(3)と、前記落口リングダム(1)を保持した鉄皮(7)に形成されるフランジ(4)と、両フランジのフランジ面同士を締結するボルトと、で構成されていて、
前記両フランジは、キルン本体の外周壁面側に突出させる構成であって、前記両フランジの内周壁面側の全体が、耐火物によって被覆されている、ロータリーキルンの落口リングダム部。」

(イ)
本件特許発明1と甲1考案とを対比する。

甲1考案の「落口リングダム部」は、本件特許発明1の「炉端部構造」に相当し、甲1考案の「キルン本体の鉄皮(6)」は本件特許発明1の「中空円筒形状のシェル本体部」に相当し、甲1考案の「落口リングダム(1)を保持した鉄皮(7)」は本件特許発明1の「中空円筒形状のシェル先端部」に相当し、甲1考案の「フランジ(3)」は本件特許発明1の「第1フランジ部」に相当し、甲1考案の「フランジ(4)」は本件特許発明1の「第2フランジ部」に相当し、甲1考案の「ボルト」は本件特許発明1の「固定ボルト」に相当する。

してみると、両者は、
「ロータリーキルンの炉端部構造であって、
中空円筒形状のシェル本体部に、中空円筒形状のシェル先端部が、着脱可能に接合端面を介して、接合されていて、
前記接合端面が、前記中空円筒形状のシェル本体部の一端側に形成される第1フランジ部と、前記中空円筒形状のシェル先端部に形成される第2フランジ部と、両フランジのフランジ面同士を締結する固定ボルトと、で構成されていて、
前記両フランジは、キルン本体の外周壁面側に突出させる構成であって、前記両フランジの内周壁面側の全体が、耐火物によって被覆されている、ロータリーキルンの落口リングダム部。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:
本件特許発明1においては、「第1フランジ部」及び「第2フランジ部」がキルン本体の内周壁面側及び外周壁面側の両方に突出させる構成であるのに対して、甲1考案においては、「フランジ(3)」及び「フランジ(4)」がキルン本体の外周壁面側にのみ突出させる構成である点。

相違点2:
本件特許発明1においては、両フランジ部の内周壁面側の突出部分の全体が、不定形耐火物によって被覆されているのに対して、甲1考案においては、「フランジ(3)」及び「フランジ(4)」がキルン本体の内周壁面側に突出した構成となっておらず、内周壁面側の突出部分が存在しないことから全体を不定形耐火物によって被覆する構成とはなっていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(ウ)相違点1について
甲第2号証には、風力発電用のタワーにおいて、「第1のタワーセクション2の上端のフランジ22」及び「第2のタワーセクションの下端のフランジ41」を、それぞれタワーセクションの内周壁面側に突出させ、複数の「ボルト3」及び「ナット31」により固定していること(上記(2-1)?(2-3))が記載されている。

しかしながら、甲第1号証には、「フランジ(3)」及び「フランジ(4)」をキルン本体の内周壁面側に突出させるという技術思想が記載も示唆もされておらず、甲第2号証に記載される上記技術思想を適用しようとする動機付けがない。

(エ)
また、仮に、甲第1号証において甲第2号証に記載される上記技術思想を適用しようとする動機付けがあったとしても、特許異議申立人が「そして、ロータリーキルンは一方側の端部側に設けた投入口から投入された原料を回転するキルン炉内で加熱処理し、加熱処理物を反対側の端部に設けられた排出口から排出するものであることから、キルン炉の内側に本件特許発明1のような内周壁面側に突出するフランジが剥き出しで存在すると内フランジ及び固定ボルトが熱による損傷を受けると共に、加熱処理物の排出口からの排出が阻害されることになる」(特許異議申立書第8頁第3?9行)と開示するように、甲1考案に係るロータリーキルンにおいて、キルン炉の内側に、内周壁面側に突出するフランジを設けることには「内フランジ及び固定ボルトが熱による損傷を受けると共に、加熱処理物の排出口からの排出が阻害される」という阻害要因があるといえる。

そうすると、甲1考案において、甲第2号証に記載された技術的事項を勘案したとしても、キルン炉の内側に、内周壁面側に突出するフランジを設けることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
また、さらに甲第3号証に記載された技術的事項を勘案しても、同様である。

(オ)相違点2について
甲第3号証には、ロータリーキルンの端部において、「端部金物32および連通金物33を炉体21に装着する取付け具」である「固定ボルト(ナット)34」の炉内側が耐火物23によって覆われた構造であること(上記(3-1)、(3-2))が記載されている。

しかし、甲第3号証の上記記載は、ロータリーキルンの出口側に空冷通路24を形成するための構成であるところ、甲第1号証においてロータリーキルンの出口側に空冷通路を形成することは記載されておらず、甲1考案において、甲第3号証に記載される上記技術思想を適用しようとする動機付けがない。

また、甲第1号証においてキルン本体の内周壁面側に突出部分を設けることは記載されておらず、甲1考案において、当該突出部分をキルン本体の内周壁面側に設けた上で、さらに耐火物によって覆われた構造とすることの動機付けがあるとは到底いえない。

そうすると、甲1考案において、甲第3号証に記載された技術的事項を勘案したとしても、キルン本体の内周壁面側に突出部分を設けた上で、さらに耐火物によって覆われた構造を設けることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
また、さらに甲第2号証に記載された技術的事項を勘案しても、同様である。

(カ)
したがって、本件特許発明1は、甲1考案及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明2?3についても、同様である。

第3-2.申立理由2(特許法第36条第6項第2号)について

(ア)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明1?3が明確でない理由について以下のとおり主張する。

「(c)しかしながら、本件特許明細書[0035]には…(中略)…シェル本体部とシェル先端部とを固定する固定部のボルトを外すためにキルン炉の内周壁の全面を被覆している耐火物をどのようにして取り外し、特には、固定ボルトで固定された第1フランジ部と第2フランジ部とからなる複雑な形状をした内周壁面側の固定部をどの程度の範囲で、どのようにして、耐火物を取り外すのか、また、損傷したシェル先端部を交換用のシェル先端部と付け替える場合にシェル本体側には、修繕前の耐火物が被覆されたまま残っている部位と再施工される不定形耐火物の被覆部分が存在することになるが、この部分をどのようにして連接し、内周壁面の全面を平滑に保持するのかについて一切記載されていない。加えて、シェル先端部の内周壁面には耐火物を設けず、シェル本体に取り付けた後でシェル先端部の内周壁面全体に耐火物を施工する手順も考えられることから本件特許明細書の記載から当業者が出願人の主張するような『シェル先端部は、その内周壁面に設けられた耐火物ごと、シェル本体部に対して着脱可能である』ことを明確に理解し得るとは到底考えられない。」(第11頁第18行?第12頁第9行)

(イ)
しかし、特許法第36条第6項第2号の規定は、特許請求の範囲が、特許を受けようとする発明が明確であるよう記載されていることを求める規定であるところ、「本件特許明細書」の記載に基づく上記(ア)の主張は、「特許請求の範囲」の記載に基づくものではないため、採用できない。

(ウ)
そして、請求項1が、本件特許発明1が明確であるよう記載されていないとする、他の理由も見受けられない。

(エ)
そうすると、特許異議申立人の上記主張にかかわらず、本件特許発明1は明確であるといえる。
また、本件特許発明2?3のそれぞれについても、同様である。

第3-3.申立理由3(特許法第36条第4項第1号)について

(ア)
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のとおり主張する。

「本件特許明細書はシェル先端部がその内周壁面に設けられた耐火物ごとシェル本体部に対して着脱可能であるか否かを含むシェル先端部の交換に関する発明の詳細な説明の記載が明らかに不足しているため出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明が、当業者が本件特許発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。」(第12頁第15?20行)。

(イ)
ここで、上記「第3-2.」で述べたように、本件特許発明1は「ロータリーキルンの炉端部構造」という、物の発明である。

(ウ)
また、発明の詳細な説明の記載が、物の発明について実施可能要件を充足するためには,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば、上記の実施可能要件を満たす(知財高判平25.1.31、平成24年(行ケ)10020号、知財高判平23.4.14、平成22年(行ケ)10247号、知財高判平18.2.16、平成17年(行ケ)10205号)ということができる。

(エ)
そして、発明の詳細な説明においては、本件特許発明1に係る「ロータリーキルンの炉端部構造」について、その作り方が【0034】に概略的に記載されるのみで、具体的に記載されてはいないものの、当該「ロータリーキルンの炉端部構造」の有する構造が明確に特定されていれば、当業者であれば例えば本件明細書【0005】に記載された従来の修理方法や技術常識を勘案して、「中空円筒形状のシェル本体部の一端側に、交換可能な中空円筒形状のシェル先端部が、前記シェル本体部と前記シェル先端部を着脱可能に連接する固定部を介して、連接」させた「ロータリーキルンの炉端部構造」を作ることはできると解される(例えば、平成27年 9月 9日付け提出の本件に係る意見書における項目「3-4」の記載や、特許異議申立書の第11頁第10?17行の記載からも、上記「ロータリーキルンの炉端部構造」を作ることはできることが伺える。)。

また、上記「シェル本体部の一端側」に連接された「シェル先端部」を取り外すことは、【0035】に記載される修理方法において、例えば本件明細書【0005】に記載された従来の修理方法に準じて、当該「シェル先端部」の取り外しが可能となる程度に「両フランジ部の内周壁面側の突出部分」を被覆する「不定形耐火物」を除去することにより、当該「不定形耐火物」の除去の程度も含めて当業者が適宜なし得る程度のことに過ぎない。

(オ)
そうすると、「本件特許明細書はシェル先端部がその内周壁面に設けられた耐火物ごとシェル本体部に対して着脱可能であるか否かを含むシェル先端部の交換に関する発明の詳細な説明の記載が明らかに不足している」という特許異議申立人の主張を採用したとしても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができないとまではいえないから、発明の詳細な説明が、本件特許発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない、とまではいえない。
また、本件特許発明2?3のそれぞれについても、同様である。

第3-4.付言(特許法第36条第6項第1号)

(ア)
特許異議申立書においては、特許法第36条第6項第1号に規定する要件についての主張は明記されていないが、上記第3-2.において示した特許異議申立人の主張が、「中空円筒形状のシェル本体部の一端側に、交換可能な中空円筒形状のシェル先端部が、前記シェル本体部と前記シェル先端部を着脱可能に連接する固定部を介して、連接」されていることを発明特定事項に備える、本件特許発明1?3が発明の詳細な説明に記載したものではなく、請求項1?3の記載が特許法第36条第6項第1号の規定(以下、「サポート要件」という。)に適合しない旨を主張しようとの意図があった、と仮定して、当該主張の妥当性につき、以下、検討する。

(イ)
ここで、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高判平27. 9. 3、平成26年(行ケ)10201号)。

(ウ)特許請求の範囲の記載

上記「第2.特許異議申立について」の「1 本件特許発明」で述べたとおりである。

(エ)発明の詳細な説明の記載

本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

(a)
「【背景技術】
【0002】

【0005】
…例えばロータリキルンの炉端部が損傷した場合には、損傷部分を含む先端部を切断し、切断した損傷部分と同型同サイズの先端部分を再製造し、これをキルン本体部に溶接する等、長期の工期と多額の修理費用をかけて、キルン本体を修理する必要がある。修理期間中の長期間の操業停止はロータリーキルンの生産性を著しく低下させる要因となっており、また多額の修理費用もかかることから、これらを短縮し、低減する解決手段が求められていた。」

(b)
「【発明が解決しようとする課題】

本発明は、上記問題点を解決して、ロータリーキルンの炉端部について、損傷時の修理、或いはそのような損傷を未然に防ぐための補修を、短期間、低コストで行うことのできるロータリーキルンの炉端部構造を提供することを目的とする。」(【0008】?【0009】)

(c)
「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ロータリーキルンの炉端部構造を、例えばフランジ式の、着脱可能な固定部を備えるものとし、容易に交換可能な構造とすることにより、炉端部の熱負荷による損傷時の修理、或いはそのような損傷を未然に防ぐための補修を、短期間、低コストで行うことのできることを見出し、本発明を完成するに至った。より、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) ロータリーキルンの炉端部構造であって、中空円筒形状のシェル本体部の一端側に、交換可能な中空円筒形状のシェル先端部が、前記シェル本体部と前記シェル先端部を着脱可能に連接する固定部を介して、連接されていることを特徴とするロータリーキルンの炉端部構造。
…」(【0010】?【0011】)

(d)
「…部品を定型化することにより、製造コストの低減が可能であり、そのような部品を予め備えておくことにより、修理時間を短縮することができる。…」(【0032】)


(オ)判断
(a)発明の課題
上記(エ)の(a)、及び(b)の記載からみて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の解決するべき課題(以下、単に「課題」という。)が、本件明細書【0005】に記載された従来の修理方法と比較して、「ロータリーキルンの炉端部について、損傷時の修理、或いはそのような損傷を未然に防ぐための補修を、短期間、低コストで行うことのできるロータリーキルンの炉端部構造を提供する」ことにある、と認められる。

(b)発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲

上記「第3-3.申立理由3(特許法第36条第4項第1号)について」の(エ)において示したとおり、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載を基に、従来の修理方法や技術常識を勘案して、「中空円筒形状のシェル本体部の一端側に、交換可能な中空円筒形状のシェル先端部が、前記シェル本体部と前記シェル先端部を着脱可能に連接する固定部を介して、連接」されているという発明特定事項(以下「本件発明特定事項」という。)を備えた「ロータリーキルンの炉端部構造」を作り、また取り外すことができ、また上記(エ)の(d)の記載からみて、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載を基に、部品の定型化による製造コストの削減や修理時間の短縮を行うことができ、それらにより課題を解決できるものと理解することができると解される。

(c)特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内であるか否かについての検討

本件特許発明1は、本件発明特定事項を備えている。

そして、上記(b)で示したとおり、当業者であれば従来の修理方法や技術常識を勘案して、本件発明特定事項を備えた「ロータリーキルンの炉端部構造」を作り、また取り外すことができると解される。

そうすると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものである、といえる。

(カ)
したがって、本件特許発明1は、サポート要件を充足するというべきである。
また、本件特許発明2?3のそれぞれについても、同様である。

(キ)
してみれば、本件特許発明1?3がそれぞれ発明の詳細な説明に記載したものではない、とはいえない。

第4.むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-03-01 
出願番号 特願2012-35813(P2012-35813)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F27B)
P 1 651・ 536- Y (F27B)
P 1 651・ 121- Y (F27B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山中 春奈蛭田 敦佐藤 陽一  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 河野 一夫
小川 進
登録日 2016-04-22 
登録番号 特許第5919874号(P5919874)
権利者 住友金属鉱山株式会社
発明の名称 ロータリーキルンの炉端部構造  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
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