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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1325897
異議申立番号 異議2016-701060  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-16 
確定日 2017-03-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第5940854号発明「電極積層装置および電極積層方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5940854号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5940854号の請求項1?19に係る特許についての出願は、平成24年3月23日(国内優先権主張 平成23年4月7日)に特許出願され、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 平賀博(以下、「申立人」という)により特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明
特許第5940854号の請求項1?19に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明2」、・・・、「本件発明19」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
袋状に形成されたセパレータ内に第1電極が配置された袋詰電極と前記第1電極とは異なる極性の第2電極とを積層ステージ上で積層する電極積層装置であって、
電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極の前記第1電極の位置を検出する検出手段と、
検出した前記第1電極の位置に基づいて、前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点での前記第1電極の位置が所定の位置となるように前記電極供給テーブルの位置を調整して、前記セパレータの位置とは無関係に前記第1電極の位置を調整する位置調整手段と、
前記位置調整手段によって位置が調整された前記電極供給テーブルから前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する積層手段と、
を有する電極積層装置。
【請求項2】
前記位置調整手段は、検出した前記第1電極の位置および前記第2電極との積層に求められる基準位置に基づいて、前記電極供給テーブルの位置を調整する請求項1に記載の電極積層装置。
【請求項3】
前記位置調整手段は、前記電極供給テーブルを平面方向に移動および回転の少なくとも一方が可能なステージである請求項2に記載の電極積層装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記セパレータを透過し前記第1電極を透過しない第1光を、前記袋詰電極に投射する第1投光手段と、
前記セパレータを透過した前記第1光を受光する第1受光手段と、を含み、
前記第1受光手段による受光結果に基づいて、前記第1電極の位置を検出する請求項1?3のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項5】
前記第1投光手段によって投光される前記第1光は、前記セパレータの透過率が50%以上となる波長の光である請求項4に記載の電極積層装置。
【請求項6】
前記セパレータはセラミックセパレータであり、前記第1光は近赤外光である請求項4または請求項5に記載の電極積層装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記第1電極の辺を検出し、当該辺の位置に基づいて、前記第1電極の位置を検出する請求項1?6のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項8】
前記検出手段は、
前記セパレータに反射する第2光を投射する第2投光手段と、
前記セパレータに反射した前記第2光を受光する第2受光手段と、
前記第1受光手段および前記第2受光手段による受光結果に基づいて、前記セパレータおよび前記第1電極の位置を検出し、前記セパレータに対する前記第1電極の相対位置を検出する検出手段と、
を有する請求項4に記載の電極積層装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記セパレータに対する前記第1電極の相対位置の良否を判断する請求項8に記載の電極積層装置。
【請求項10】
前記セパレータはセラミックセパレータであり、前記第1光は近赤外光である請求項8または請求項9に記載の電極積層装置。
【請求項11】
前記第1投光手段および前記第2投光手段は、前記第1電極を介して、相互に反対側に配置されており、
前記第1受光手段および前記第2受光手段は、共通の受光装置により実現され、
前記第1電極の位置は、前記第1電極によって遮断された前記第1光の影に基づいて検出される請求項8?10のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項12】
前記検出手段は、前記セパレータおよび前記第1電極の辺を検出し、それぞれの辺の位置に基づいて、前記セパレータに対する前記第1電極の位置を検出する請求項8?11のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項13】
前記検出手段は、前記第2受光手段による受光結果に基づいて、袋状の前記セパレータにめくれが発生しているかを検査する請求項8?12のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項14】
袋状の前記セパレータは、2枚のセパレータの端辺を接合部により接合して形成されており、
前記検出手段は、前記第1受光手段による受光結果に基づいて、前記接合部を検出し、前記接合部に対する前記第1電極の相対位置に基づいて、電極位置の良否を判断する請求項8?13のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項15】
前記第1投光手段によって投光される前記第1光は、前記セパレータの透過率が50%以上となる波長の光である請求項8?14のいずれか一項に記載の電極積層装置。
【請求項16】
袋状に形成されたセパレータ内に第1電極が配置された袋詰電極と前記第1電極とは異なる極性の第2電極とを積層ステージ上で積層する電極積層方法であって、
電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極の前記第1電極の位置を検出する検出工程と、
検出した前記第1電極の位置に基づいて、前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点での前記第1電極の位置が所定の位置となるように前記電極供給テーブルの位置を調整して、前記セパレータの位置とは無関係に前記第1電極の位置を調整する位置調整工程と、
前記位置調整工程によって位置が調整された前記電極供給テーブルから前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する積層工程と、
を有する電極積層方法。
【請求項17】
前記位置調整工程は、検出した前記第1電極の位置および前記第2電極との積層に求められる基準位置に基づいて、前記電極供給テーブルの位置を調整する請求項16に記載の電極積層方法。
【請求項18】
前記検出工程は、
前記セパレータを透過し前記第1電極を透過しない第1光を、前記袋詰電極に投射する第1投光工程と、
前記セパレータを透過した前記第1光を受光する第1受光工程と、
前記第1受光工程による受光結果に基づいて、前記第1電極の位置を検出する工程と、
を含む請求項16または請求項17に記載の電極積層方法。
【請求項19】
前記検出工程は、
前記セパレータに反射する第2光を投射する第2投光工程と、
前記セパレータに反射した前記第2光を受光する第2受光工程と、
前記第1受光工程および前記第2受光工程における受光結果に基づいて、前記セパレータおよび前記第1電極の位置を検出し、前記セパレータに対する前記第1電極の相対位置を検出する請求項18に記載の電極積層方法。」

第3.申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1?6号証を提出し、本件発明1?19は、本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨主張している。

[証拠方法]
甲第1号証:特開平4-101366号公報
甲第2号証:特開2010-232145号公報
甲第3号証:特開2003-272595号公報
甲第4号証:特開2010-257861号公報
甲第5号証:特開2003-344020号公報
甲第6号証:特開2000-182610号公報

第4.甲号証の記載
1.甲第1号証
甲第1号証には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当合議体が付加した)。

(1)「産業上の利用分野
本発明は、陽極板・陰極板の一方をセパレータで包装された極板を多数枚積み重ねて極板群にする蓄電池極板群の製造装置に関するものである。」(第1頁右欄第8行-第12行)

(2)「作用
ホルダー内で陽極板と陰極板を交互に積み重ねて極板群を形成するため、極板群が整列したものとなる。」(第2頁右上欄第14行-第17行)

(3)「実施例
実施例について図面を参照して説明する。
第1図(a),(b)は、それぞれセパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3で、第1図(c)は、それらを交互に積み重ねた極板群4である。第2図は、チェーン5に一定ピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7と、同様にチェーン5に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’と、90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10と、極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11を一定タクトで駆動させる第3のコンベア12とを示す平面図である。第3図は、極板群4を形成させる途中のホルダーの側断面図であり、ホルダー11の両側面に切欠部13と底面に切欠部14を有する。
次に本発明装置により極板群を製造する手順を説明する。
第2図において、第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入する。その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出す。次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダー内に挿入する。向、この90°回転の間に第2のコンベア7’を一定タクト移動させることにより、次の治具6’を吸着位置に位置させておく。以上の動作を予め設定した回数繰り返し、所定の枚数の極板群4を構成すると、第3のコンベア12をタクト駆動させる。」(第2頁右上欄第18行-右下欄第12行)

(4)「



(5)「



以上、特に下線部の記載から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という)が記載されているものと認められる。

[甲1発明]
「一定タクトで駆動させる第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、その際、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、セパレータ1で包装され第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出し、次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダー11内に挿入し、この90°回転の間に第2のコンベア7’を一定タクト移動させることにより、次の治具6’を吸着位置に位置させておき、以上の動作を予め設定した回数繰り返し、陽極板2と陰極板3を交互に積み重ねた極板群4を構成する蓄電池極板群の製造装置。」

2.甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

「【0040】
(実施例2)
前記本発明電池A1において、積層電極体10を作製する工程で、正極板1および負極板2の貫通部31、32の位置を画像処理装置により確認しながら、負極板2、袋状セパレータ3およびポリプロピレンシート3bを位置合せして積層する以外は全て同様にして、積層式電池を作製した。」

3.甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

「【0090】袋状電極の作成
今回は負極を袋状にした。大きさ65×30mm(端子部は除く)の電極を用い、高分子からなるセパレータ(東燃(株)E16M MS)を所定の寸法に切断し、その上に負極電極をのせ、更に所定の寸法に切断されたセパレータ(東燃(株)E16MMS)を乗せ、図1の装置を用い、以下に示す手順で袋状電極を作成した。なお、セパレータはE16MMSに限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して使用できる。
【0091】(1)先ず、高分子セパレータ11を所定寸法に切断し、図示しない吸盤付1軸ロボットで固定吸盤ユニット8に搬送供給した。
(2)次いで、負極電極12を、図示しない吸盤付1軸ロボットで1枚吸着し、電極位置合わせX-Y-θテーブル7に供給した。
(3)電極位置合わせX-Y-θテーブル7では、パルスモータ、サーボモータ等によりテーブルを駆動し、画像処理機能を有する電極位置合わせカメラ6で電極位置を確認しつつ、X-Y-θ方向に電極位置の修正を行った。
(4)位置合わせが終了した負極電極12を、テーブル7から吸着盤付1軸ロボットで固定吸盤ユニット8上にある高分子セパレータ11の上に供給した。
(5)さらに、高分子セパレータ11を吸盤付1軸ロボットで固定吸盤ユニット8の負極電極12の上に供給した。これで、負極電極12は、2枚のセパレータに挟み込まれることになる。」

「【図1】



4.甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

「【0054】
図5に示すように、ステップS101において、極箔1,3及びセパレータ2が積層ステージ13上に2枚1組で一度に積み上げられると、ステップS102において、カメラ33、34による撮像が行われる。例えば、まず最初に積層ステージ13上に積み上げられるのは負極箔1及びセパレータ2である。また、次に積み上げられるのは正極箔3及びセパレータ2である。
【0055】
ステップS102においては、このように積み上げられる度に、可視光照射手段31より可視光が側方から照射された上で第1の検査対象たるセパレータ2が可視光用カメラ33により撮像され、それとは別に赤外光照射手段32より赤外光が上方から照射された上で第2の検査対象たる極箔1,3が赤外光用カメラ34により撮像される。…」

「【0056】
続くステップS103では、可視光用カメラ33により撮像された可視光画像に基づき、セパレータ2のエッジ(外周縁)が抽出される。また、ステップS104では、赤外光用カメラ34により撮像された赤外光画像に基づき、最上層のセパレータ2の直下層の極箔1,3のエッジ(外周縁)が抽出される。
【0057】
続くステップS105では、各種距離等の演算が行われる。つまり、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が演算される。…」

「【0058】
さらに、ステップS106では、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が予め定められた許容位置ズレ量(事前に入力手段45により入力設定される値)を超えているか否かが判定される。そして、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が許容位置ズレ量を超えている場合(「NG」の場合)には、ステップS107において、当該位置ズレの修正が行われる。…」

「【0059】
一方、ステップS106において、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が許容位置ズレ量を超えていない場合(「OK」の場合)には、ステップS108において、予め定められた数の積み上げが終了したか否かが判定される。そして、未だ積み上げが終了していない場合には、ステップS101に戻り、極箔1,3及びセパレータ2の積み上げが行われる。これに対し、積み上げが終了した場合には、検査処理が一旦終了させられる。」

「【0066】
(a)上記実施形態に加え、セパレータ2及び極箔1,3が2枚一組で一度に搬送されて積み上げられるに際し、前記搬送されている途中において、吸引されている前記セパレータ2に対する極箔1,3の相対位置情報を求め、当該相対位置情報に基づき積み上げ前における両者間の位置ズレを判定する事前検査手段60を備えることとしてもよい(図1の2点鎖線参照)。…」

5.甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

「【解決手段】 電池の極板を長方形の2つ折れシート状セパレータで挟み、両側部をギアシールで接合してなる袋状セパレータを光学的に撮影して画像処理し、該画像処理画面から袋状セパレータの4つの角部近傍にウインドウを設け、該ウインドウ内の画像により袋状セパレータの4つの角を捕捉検出し、該4つの検出した捕捉点間の距離を計測することで袋状セパレータの上下左右の距離(幅)を測定し、また、ギアシールの接合部の内側の捕捉点と角の捕捉点間の距離(接合部の幅)を測定し、各測定値の各々を予め記憶させてある規格値と対比して袋状セパレータの合否を判定することを特徴とする袋状セパレータの検査方法である。」(第1頁【要約】)

6.甲第6号証
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

「【解決手段】 エッジ検出器5を、ニッケル電極材1のエッジ部に平行光を照射する光源5aと、上記エッジ部を横切る方向に走査されて該ニッケル電極材により遮られなかった平行光を受光するイメージセンサ(CCDラインセンサ)5cとを用いて実現し、メッシュ状の繊維質からなるニッケル電極材が有する多数の微細孔1aに影響されることなくそのエッジ位置を高精度に検出する。」(第1頁【要約】)

第5.本件発明の特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか否かの判断
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明は、「ホルダー11内に陰極板3を挿入し、…セパレータ1で包装され…た陽極板2を…ホルダー11内に挿入し、…以上の動作を予め設定した回数繰り返し、陽極板2と陰極板3を交互に積み重ねた極板群4を構成する…蓄電池極板群の製造装置」であるから、「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3とをホルダー11内に挿入して陽極板2と陰極板3を交互に積み重ねた極板群4を構成する蓄電池極板群の製造装置」といえる。
ここで、甲1発明の「セパレータ1で包装された陽極板2」、「陰極板3」、「ホルダー11」、「積み重ねた極板群4を構成する蓄電池極板群の製造装置」は、それぞれ、本件発明1の「袋状に形成されたセパレータ内に第1電極が配置された袋詰電極」、「前記第1電極とは異なる極性の第2電極」、「積層ステージ」、「電極積層装置」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「袋状に形成されたセパレータ内に第1電極が配置された袋詰電極と前記第1電極とは異なる極性の第2電極とを積層ステージ上で積層する電極積層装置」である点で一致する。

また、甲1発明は、「ホルダー11内に陰極板3を挿入し、その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、セパレータ1で包装され第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出し、次いで、…陽極板2をホルダー11内に挿入」するものであるから、「第2のコンベア7’に設けた治具6’から陽極板2を吸着し、取り出し、陰極板3が挿入されているホルダー11内に挿入」する手段を有するといえる。
ここで、甲1発明の「第2のコンベア7’に設けた治具6’」は、収納された陽極板2を吸着し、取り出す部分であるから、本件発明1の「電極供給テーブル」と、「電極供給部」といえる点で共通する。また、甲1発明の「吸着し、取り出(すこと)」、「陰極板3が挿入されているホルダー11内に挿入(すること)」は、それぞれ、本件発明1の「ピックアップ(すること)」、「積層ステージに載置された第2電極に積層する(こと)」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「電極供給部から前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する積層手段」を有する点で共通する。

以上をまとめると、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は次のとおりである。

《一致点》
「袋状に形成されたセパレータ内に第1電極が配置された袋詰電極と前記第1電極とは異なる極性の第2電極とを積層ステージ上で積層する電極積層装置であって、
電極供給部から前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する積層手段、
を有する電極積層装置。」である点。

《相違点》
相違点1
「電極供給部」が、本件発明1では、「電極供給テーブル」であるのに対し、甲1発明では、「第2のコンベア7’に設けた治具6’」である点。

相違点2
本件発明1は、
「電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極の前記第1電極の位置を検出する検出手段と、
検出した前記第1電極の位置に基づいて、前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点での前記第1電極の位置が所定の位置となるように前記電極供給テーブルの位置を調整して、前記セパレータの位置とは無関係に前記第1電極の位置を調整する位置調整手段と、」を有し、
「積層手段」は、「前記位置調整手段によって位置が調整された前記電極供給テーブルから前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する」のに対し、
甲1発明は、
「電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極の前記第1電極の位置を検出する検出手段と、
検出した前記第1電極の位置に基づいて、前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点での前記第1電極の位置が所定の位置となるように前記電極供給テーブルの位置を調整して、前記セパレータの位置とは無関係に前記第1電極の位置を調整する位置調整手段」を有さず、
「積層手段」は、「電極供給テーブルから前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する」ものではあるものの、「前記位置調整手段によって位置が調整された前記電極供給テーブルから前記袋詰電極をピックアップして、前記積層ステージに載置された第2電極に積層する」ものではない点。

(2)判断
上記相違点2について検討する。

甲1発明は、「ホルダー内で陽極板と陰極板を交互に積み重ねて極板群を形成するため、極板群が整列したものとなる」(上記第4.1.(2))ものであり、治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出し、90°回転させた後の、ホルダー11に挿入した時点で、ホルダーの作用により極板群の整列がなされるものである。
したがって、甲1発明では、ホルダーに挿入される前の、セパレータ1で包装され治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出す時点(本願発明でいう「前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点」)で陽極板の位置の調整をしなくても、極板群はホルダーにより整列したものとなるのであるから、甲1発明は、セパレータ1で包装され治具6’に収納された陽極板2の位置を検出し、検出した位置に基づいて該位置を調整する必要はないものである。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の特定事項である「電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極の前記第1電極の位置を検出する検出手段と、
検出した前記第1電極の位置に基づいて、前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点での前記第1電極の位置が所定の位置となるように前記電極供給テーブルの位置を調整して、前記セパレータの位置とは無関係に前記第1電極の位置を調整する位置調整手段と」を採用する動機付けはない。
また、甲第2?6号証にも、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の特定事項を採用する動機付けとなる技術事項は記載されていない。

また、甲第2号証に記載されているものは、積層電極体を作成するときに、正極板および負極板の貫通部の位置を画像処理装置により確認しながら位置合わせして積層するものであり、甲第3号証に記載されているものは、位置合わせが終了した負極電極を2枚のセパレータに挟み込んで袋状とするものであり、甲第4号証に記載されているものは、積み上げられた極板、セパレータの位置ずれを検出して修正するものであり、何れも、電極の位置を検出するものではあるが、本件発明1のような、電極供給テーブルに載置された袋詰電極の位置を検出し、電極供給テーブルからピックアップされる時点での袋詰電極の位置を調整するものではないから、たとえ、甲1発明に甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載の技術を組み合わせたとしても、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項には至らない。

申立人は、積層前の電極の位置を検出する「検出手段」は、甲第2号証、甲第3号証、および甲第4号証に記載されているとおり周知であるから、甲1発明において、上記周知の技術を採用することは当業者が容易に想到し得る旨主張している。
しかしながら、上述したとおり、甲1発明は、そもそも、治具6’(本件発明1でいう「電極供給テーブル」に対応する。)に収納された陽極板2の位置を検出し、検出した位置に基づいて該位置を調整する必要はないものである。
したがって、たとえ、申立人の主張するような周知の技術が存在したとしても、電極供給テーブルに載置された電極の位置を調整する必要がない甲1発明における電極供給テーブルに載置された電極に、該周知の技術の位置検出を適用する動機付けはなく、甲1発明において、上記周知の技術を採用して、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることが当業者に容易に想到し得ることであるとはいえない。

よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

2.本件発明2?19について
本件発明16は、“装置”の発明である本件発明1のカテゴリーを、“方法”の発明としたものであり、上記相違点2に係る本件発明1の特定事項と同様の「電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極の前記第1電極の位置を検出する検出工程と、
検出した前記第1電極の位置に基づいて、前記電極供給テーブルに載置された前記袋詰電極がピックアップされる時点での前記第1電極の位置が所定の位置となるように前記電極供給テーブルの位置を調整して、前記セパレータの位置とは無関係に前記第1電極の位置を調整する位置調整工程と」の特定事項を有しているから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本件発明2?15は、いずれも、本件発明1を更に減縮したものであって、本件発明1の上記相違点2に係る発明特定事項を有しているから、本件発明1と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
さらに、本件発明17?19は、いずれも、本件発明16を更に減縮したものであって、本件発明16の上記特定事項を有しているから、本件発明16と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、本件発明2?19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

第6.むすび
以上のとおり、本件発明1?19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-03-08 
出願番号 特願2012-67842(P2012-67842)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 充司  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 土屋 知久
千葉 輝久
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5940854号(P5940854)
権利者 日産自動車株式会社 株式会社京都製作所
発明の名称 電極積層装置および電極積層方法  
代理人 八田国際特許業務法人  
代理人 八田国際特許業務法人  

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