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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M |
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管理番号 | 1325898 |
異議申立番号 | 異議2016-701115 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-12-02 |
確定日 | 2017-03-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5953083号発明「積層装置および積層方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5953083号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第5953083号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成24年3月23日(国内優先権主張 平成23年4月7日)の出願であって、平成28年6月17日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人平賀博により特許異議の申立てがなされたものである。 2 本件発明 特許第5953083号の請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明14」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層装置であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブルと、 前記第2電極が載置される第2テーブルと、 前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブルと、 前記第1テーブルを水平面内で移動および回転可能に構成され、前記第1テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整して、前記第1テーブル上の前記セパレータ-電極組立体の位置および姿勢を調整する第1調整部と、 前記第2テーブルを水平面内で移動および回転可能に構成され、前記第2テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整して、前記第2テーブル上の前記第2電極の位置および姿勢を調整する第2調整部と、 前記セパレータ-電極組立体を把持し、解放する第1把持部と、 前記第2電極を把持し、解放する第2把持部と、を有し、 前記第1把持部が前記第1テーブルと前記積層テーブルとの間を往復移動する一方で、前記第2把持部は前記積層テーブルと前記第2テーブルとの間を往復移動し、前記第1テーブル上で位置および姿勢が調整された前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は前記積層テーブル上で前記第2電極を解放し、前記第1把持部が前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、前記第2テーブル上で位置および姿勢が調整された前記第2電極を前記第2把持部が把持することを特徴とする積層装置。 【請求項2】 第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層装置であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブルと、 前記第2電極が載置される第2テーブルと、 前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブルと、 前記第1テーブルを水平面内の第1方向および当該第1方向とは異なる第2方向に移動可能に構成され、前記第1テーブルの水平方向の位置を調整して、前記第1テーブル上の前記セパレータ-電極組立体の位置を調整する第1調整部と、 前記第2テーブルを水平面内の第3方向および当該第3方向とは異なる第4方向に移動可能に構成され、前記第2テーブルの水平方向の位置を調整して、前記第2テーブル上の前記第2電極の位置を調整する第2調整部と、 前記セパレータ-電極組立体を把持し、解放する第1把持部と、 前記第2電極を把持し、解放する第2把持部と、を有し、 前記第1把持部が前記第1テーブルと前記積層テーブルとの間を往復移動する一方で、 前記第2把持部は前記積層テーブルと前記第2テーブルとの間を往復移動し、前記第1テーブル上で位置が調整された前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は前記積層テーブル上で前記第2電極を解放し、前記第1把持部が前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、前記第2テーブル上で位置が調整された前記第2電極を前記第2把持部が把持することを特徴とする積層装置。 【請求項3】 前記第1および第2把持部は、同一の回転軸を基準に互いに所定角度をなすように配置され前記所定角度揺動する第1および第2アーム部の先端にそれぞれ設けられており、 前記第1および第2テーブルは、前記回転軸の周りに前記積層テーブルと前記所定角度の間隔をおいてそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層装置。 【請求項4】 前記第1テーブル上に載置された前記セパレータ-電極組立体を撮像して、前記第1テーブル上の前記セパレータ-電極組立体の位置を認識する第1撮像部と、 前記第2テーブル上に載置された前記第2電極を撮像して、前記第2テーブル上の前記第2電極の位置を認識する第2撮像部と、をさらに有し、 前記第1および第2調整部は、前記第1および第2撮像部により認識された位置の情報に基づいて、前記セパレータ-電極組立体および前記第2電極の位置をそれぞれ調整することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の積層装置。 【請求項5】 前記第1撮像部は、前記セパレータ-電極組立体内部の前記第1電極の位置を認識し、 前記第1調整部は、前記セパレータ-電極組立体内部の前記第1電極の位置を調整することを特徴とする請求項4に記載の積層装置。 【請求項6】 前記積層テーブル上に積層される前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極との積層体の最上面の鉛直方向の位置が一定範囲内に維持されるように、前記セパレータ-電極組立体および前記第2電極の積層の進行に応じて、前記積層テーブルを降下させる高さ調整部をさらに有することを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の積層装置。 【請求項7】 前記積層テーブルに積層されている前記積層体を上部から押圧するクランパをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の積層装置。 【請求項8】 第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層方法であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブルと、前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブルとの間を第1把持部に往復移動させる一方で、前記積層テーブルと前記第2電極が載置される第2テーブルとの間を第2把持部に往復移動させ、水平面内で移動および回転可能な前記第1テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整することにより当該第1テーブル上で位置および姿勢が調整された前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部に把持させるときには、前記第2把持部に前記積層テーブル上で前記第2電極を解放させ、前記第1把持部に前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放させるときには、水平面内で移動および回転可能な前記第2テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整することにより当該第2テーブル上で位置および姿勢が調整された前記第2電極を前記第2把持部に把持させることを特徴とする積層方法。 【請求項9】 第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層方法であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブルと、前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブルとの間を第1把持部に往復移動させる一方で、前記積層テーブルと前記第2電極が載置される第2テーブルとの間を第2把持部に往復移動させ、水平面内の第1方向および当該第1方向とは異なる第2方向に移動可能な前記第1テーブルの水平方向の位置を調整することにより当該第1テーブル上で位置が調整された前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部に把持させるときには、前記第2把持部に前記積層テーブル上で前記第2電極を解放させ、前記第1把持部に前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放させるときには、水平面内の第3方向および当該第3方向とは異なる第4方向に移動可能な前記第2テーブルの水平方向の位置を調整することにより当該第2テーブル上で位置が調整された前記第2電極を前記第2把持部に把持させることを特徴とする積層方法。 【請求項10】 前記第1および第2把持部は、同一の回転軸を基準に互いに所定角度をなすように配置され前記所定角度揺動する第1および第2アーム部の先端にそれぞれ設けられており、 前記第1および第2テーブルは、前記回転軸の周りに前記積層テーブルと前記所定角度の間隔をおいてそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の積層方法。 【請求項11】 前記第1テーブル上に載置された前記セパレータ-電極組立体を第1撮像部により撮像することによって、前記第1テーブル上の前記セパレータ-電極組立体の位置が認識され、前記第2テーブル上に載置された前記第2電極を第2撮像部により撮像することによって、前記第2テーブル上の前記第2電極の位置が認識され、 前記認識された位置の情報に基づいて、前記セパレータ-電極組立体および前記第2電極の位置がそれぞれ調整されることを特徴とする請求項8?10のいずれか1項に記載の積層方法。 【請求項12】 前記セパレータ-電極組立体内部の前記第1電極の位置が前記第1撮像部により認識され、 前記セパレータ-電極組立体内部の前記第1電極の位置が調整されることを特徴とする請求項11に記載の積層方法。 【請求項13】 前記積層テーブル上に積層される前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極との積層体の最上面の鉛直方向の位置が一定範囲内に維持されるように、前記セパレータ-電極組立体および前記第2電極の積層の進行に応じて、前記積層テーブルが降下されることを特徴とする請求項8?12のいずれか1項に記載の積層方法。 【請求項14】 前記積層テーブルに積層されている前記積層体が上部からクランパにより押圧されることを特徴とする請求項13に記載の積層方法。」 3 申立理由の概要 特許異議申立人平賀博は、主たる証拠として特開平4-101366号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び、従たる証拠として特開2003-272595号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開2010-257861公報(以下、「刊行物3」という。)、特公平5-46669号公報(以下、「刊行物4」という。)、特開2010-212018号公報(以下、「刊行物5」という。)を提出し、請求項1?14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1?14に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 4 刊行物の記載 (1)刊行物1の記載 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物1には、次の事項が記載されている。下線は当審で付した(以下、同じ)。 ア 「本発明は、陽極板・陰極板の一方をセパレータで包装された極板を多数枚積み重ねて極板群にする蓄電池極板群の製造装置に関するものである。」(第1頁右下欄第9行?第12行) イ 「発明が解決しようとする課題 従来の技術で述べた装置では、陽極板と陰極板を積み重ねた極板群が不揃いとなるため、人手による整列作業が必要となり、極板群を電槽へ挿入する次工程との連結が自動化できないという問題点を有していた。 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、陽極板と陰極板を自動的に整列して積み重ねる極板群製造装置を提供することにある。 課題を解決するための手段 上記目的を達成するために、本発明の蓄電池極板群の製造装置は、 第1のコンベア7と、第2のコンベア7’と、第3のコンベア12と、揺動装置10とを有し、 前記第1及び第2のコンベア7,7’は、皿状の治具6,6’が一定間隔で配置され、タクト駆動するものであり、 前記第3のコンベア12は、箱形のホルダー11多数個有し、タクト駆動するものであり、 前記揺動装置10は、一対の極板吸着装置9,9’が同時に揺動するものであり、 前記治具6,6’は、セパレータで包装された陽極板2または陰極板3を一枚ずつ収容するものであり、 前記極板吸着装置9,9’は、前記治具6,6’の陽極板2と陰極板3とを交互に吸着し、前記ホルダー11上へ移動するものであり、 前記ホルダー11は、上面が開口し、前記極板吸着装置9,9’により吸着されてきた陽極2と陰極板3とを交互に積み重ねた極板群4を収容することを特徴とするものである。 作用 ホルダー内で陽極板と陰極板を交互に積み重ねて極板群を形成するため、極板群が整列したものとなる。 実施例 実施例について図面を参照して説明する。 第1図(a)、(b)は、それぞれセパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3で、第1図(c)は、それらを交互に積み重ねた極板群4である。第2図は、チェーン5に一定ピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7と、同様にチェーン5’に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’と、90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10と、極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11を一定タクトで駆動させる第3のコンベア12とを示す平面図である。第3図は、極板群4を形成させる途中のホルダーの側断面図であり、ホルダー11の両側面に切欠部13と底面に切欠部14を有する。 次に本発明装置により極板群を製造する手順を説明する。 第2図において、第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入する。その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出す。次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダ-内に挿入する。向、この90°回転の間に第2のコンベア7’を一定タクト移動させることにより、次の治具6’を吸着位置に位置させておく。以上の動作を予め設定した回数繰り返し、所定の枚数の極板群4を構成すると、第3のコンベア12をタクト駆動させる。また次工程では、第3図のように、ホルダー11の切欠部13,14にロボットなどのハンドを挿入して極板群4を受け、ホルダー11から取り出して電槽へ挿入するなどの作業を行なう。」(第2頁左上欄第2行?右下欄第16行) ウ 「 」 エ 上記ア?ウの記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ねて極板群4にする蓄電池極板群の製造装置であって、 チェーン5に一定ピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7と、 同様にチェーン5’に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’と、 90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10と、 極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11を一定タクトで駆動させる第3のコンベア12と、を有し、 第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出し、次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダー11内に挿入し、この90°回転の間に第2のコンベア7’を一定タクト移動させることにより、次の治具6’を吸着位置に位置させておき、以上の動作を予め設定した回数繰り返す、蓄電池極板群の製造装置。」 オ また、上記ア?ウの記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用方法発明」という。)も記載されていると認められる。 「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ねて極板群4にする蓄電池極板群の製造方法であって、 チェーン5に一定ピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7と、 同様にチェーン5’に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’と、 90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10と、 極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11を一定タクトで駆動させる第3のコンベア12と、を有する蓄電池極板群の製造装置において、 第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された陽極板2を吸着し、取り出し、次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダー11内に挿入し、この90°回転の間に第2のコンベア7’を一定タクト移動させることにより、次の治具6’を吸着位置に位置させておき、以上の動作を予め設定した回数繰り返す、蓄電池極板群の製造方法。」 (2)刊行物2の記載 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物2には、次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は積層された電極対を有する電気化学デバイス、特にリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、およびその製造方法、製造装置に関する。」 イ 「【0025】図1は、本発明方法を実施するための製造装置の一例を示した概略斜視図である。図に置いて、溶融接着ユニット1は、所定の剛性を有する本体2と、この本体2を含めたユニット1全体を昇降させる加圧昇降エアシリンダー3と、ヒーターユニット5内の冷却プレートを昇降させる冷却プレート昇降シリンダー4と、セパレータを電極を収納した袋状に溶融接着するシールヒータユニット5とを有する。また、溶融接着ユニット1の下部には固定吸盤ユニット8が配置されていて、溶融接着するためのセパレータなどを吸着固定できるようになっている。 【0026】ヒーターユニット5は、例えば図2に示すように、セパレータを袋状に溶融接着できるように扁平なC字状に形成されているシール用ヒータ51と、このシール用ヒータを内側から保持する保持部材53と、この保持部材53に対してヒータ51を外側から固定するヒータ押さえ部材52とを有する。また、保持部材の中心部分には、セパレータの溶融接着部を除く中心部分を冷却するための冷却プレート54が保持部材53に対して上下方向に摺動自在に配置されている。さらに、ヒータ51の両端部には給電部55があって、これからパルス状の電流を供給してヒータを加熱し、溶融接着作業を行うようになっている。 【0027】このような装置を用いて、セパレータの溶融接着を行うには、例えば以下のような工程により行うとよい。 【0028】(1)先ず、高分子セパレータ11を所定寸法に切断し、例えば図示しない吸盤付1軸ロボットで固定吸盤ユニット8に搬送供給する。 (2)次いで、負極電極12を、例えば図示しない吸盤付1軸ロボットで1枚吸着し、電極位置合わせX-Y-θテーブル7に供給する。 (3)電極位置合わせX-Y-θテーブル7では、パルスモータ、サーボモータ等によりテーブルを駆動し、電極位置合わせカメラ6で電極位置を確認しつつ、X-Y-θ方向に電極位置の修正を行う。 (4)位置合わせが終了した負極電極12を、テーブル7から吸着盤付1軸ロボットで固定吸盤ユニット8上にある高分子セパレータ11の上に供給する。 (5)さらに、高分子セパレータ11を吸盤付1軸ロボットで固定吸盤ユニット8の負極電極12の上に供給する。これで、負極電極12は、2枚のセパレータに挟み込まれることになる。 (6)次に、加圧昇降用エアシリンダー3にて、シールヒータユニット5を下降させ、高分子セパレータ11に挟まれた電極12上で加圧する。なお、シールヒータユニット5内にある冷却プレート54は、シールヒーターユニット5内の冷却プレート昇降エアーシリンダーにて常時加圧状態にある。よって、ヒーター加圧シリンダーの加圧により電極厚み分だけ冷却プレート54はシールヒータユニット5内に後退し、高分子セパレータ11と電極12を圧着する。 (7)図示しない電源として、例えばインパルスシール機にてヒーター51にパルス状電流を供給し、セパレータ11同士を溶融接着する。 (8)接着が終了すると、ヒーターユニット昇降用エアーシリンダーを上昇させる。この時、冷却プレート54のストローク分だけ袋状電極を押し下げてヒーターから溶着した高分子セパレータを剥がす。」 ウ 「【図1】 」 エ 「【図2】 」 (3)刊行物3の記載 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物3には、次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、積層電池の製造過程において用いられる検査装置に関するものである。」 イ 「【0036】 図3に示すように、積層電池を構成する積層体4は、下から順に負極箔1、セパレータ2、及び、正極箔3、セパレータ2がこの順序で繰り返し積み上げられるようにして積層されている(勿論、正極箔3が最下層に位置し、その上にセパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3、・・・の順で積層されていてもよい)。正極箔3及び負極箔1は、いずれも平面矩形状の本体部及びその一部から突出する突出部からなるシート状の金属材と、前記本体部の表面に塗布された活物質とから構成されている。また、セパレータ2は、電気絶縁性のシート状の多孔質樹脂フィルムにより構成されており、前記本体部よりも一回り大きい矩形状をなしている。適正な積層状態においては、正極箔3及び負極箔1の本体部は、前記セパレータ2によって完全に覆われており(はみ出しておらず)、正極箔3及び負極箔1の各突出部のみが、それぞれ異なる位置においてセパレータ2からはみ出すようにして突出している。当該各凸部は、負極タブと正極タブに相当するものであり、積層電池の内部で電極端子の負極および正極にそれぞれ電気的に接続される領域である。 【0037】 図2は、積層電池の製造装置(積層体を得るための装置)10の概略構成図(平面図)である。同図に示すように、製造装置10は、セパレータ供給ステージ11、極箔供給ステージ12、及び積層ステージ13を備えている。セパレータ供給ステージ11上には、積層の都度、上記セパレータ2が1枚ずつ供給されるようになっている。また、極箔供給ステージ12には、積層の都度、負極箔1及び正極箔3が、交互に1枚ずつ供給されるようになっている。 【0038】 製造装置10はまた、これら各ステージ11?13の中心の上方を通るようにして設けられたガイドレール14を備えている。当該ガイドレール14は、図示しない支柱により支持されている。そして、ガイドレール14には搬送アーム15が垂下状態で支持され、当該搬送アーム15の下端には吸着パッド16が設けられている。 【0039】 搬送アーム15は、モータ等の駆動手段21(図4参照)により前記ガイドレール14に沿って移動可能に設けられているとともに、シリンダ等の別途の駆動手段22により、上下方向(図1の紙面奥行方向)に伸縮可能となっている。搬送アーム15がガイドレール14に沿って移動することにより、吸着パッド16もまた、ガイドレール14に沿って移動する。また、搬送アーム15が伸縮することにより、吸着パッド16が上下動するようになっている。 【0040】 さらに、吸着パッド16は、吸引手段23(図4参照)に接続されており、吸引手段23の吸引動作に基づき吸引パッド16の下端面から空気を吸引できるように構成されている。本実施形態では、かかる構成により、セパレータ2や、極箔1,3が吸着パッド16によって吸着させられるようになっている。 【0041】 上記の製造装置10を用いた積層体4の積層についてより具体的に説明すると、積層に際しては先ず、搬送アーム15がセパレータ供給ステージ11の上に案内され、その位置において搬送アーム15が伸張させられる。このとき、セパレータ供給ステージ11上には、図示しない供給手段によって既にセパレータ2が所定の位置に所定の角度で供給されている。そして、吸引手段23により吸着パッド16による吸引が開始させられる。すると、吸着パッド16の下面にセパレータ2が吸着させられる。 【0042】 次いで、その状態から一旦搬送アーム15が収縮させられた後、極箔供給ステージ12の上へと案内され、その位置において搬送アーム15が伸張させられる。このとき、極箔供給ステージ12上には、図示しない供給手段によって既に負極箔1が所定の位置に所定の角度で供給されている。すると、前記セパレータ2を介して負極箔1が吸着パッド16に吸着させられる。これは、セパレータ2が多孔質素材よりなっており、微細な孔を介して負極箔1が吸引されることによる。 【0043】 そして、吸着パッド16によりセパレータ2及び負極箔1が吸着させられた状態で、搬送アーム15が再度収縮させられ、今度は積層ステージ13上へと案内される。そこで、搬送アーム15が再度伸張させられるとともに、吸引が一旦停止させられる。これにより、セパレータ2及び負極箔1の吸着が解除させられ、積層ステージ13の所定位置へと載置させられる。当該載置に際しては、図示しない押さえ手段により、セパレータ2及び負極箔1が位置ズレを極力起こさないよう、押さえ付けられる。 【0044】 次に、上記と同様の要領で、搬送アーム15がセパレータ供給ステージ11の上に案内され、その位置において搬送アーム15が伸張させられる。このとき、セパレータ供給ステージ11上には、既に別のセパレータ2が供給されている。そして、吸引手段23により吸着パッド16による吸引が再開されることで、吸着パッド16の下面にセパレータ2が吸着される。 【0045】 続いて、その状態から一旦搬送アーム15が収縮させられた後、極箔供給ステージ12の上へと案内され、その位置において搬送アーム15が伸張させられる。このとき、極箔供給ステージ12上には、図示しない供給手段によって既に正極箔3が供給されているため、当該正極箔3は前記セパレータ2を介して吸着パッド16に吸着させられる。そして、吸着パッド16によりセパレータ2及び正極箔3が吸着させられた状態で、搬送アーム15が再度収縮させられ、積層ステージ13上へと案内される。その後、搬送アーム15が再度伸張させられるとともに、吸引が一旦停止させられる。これにより、セパレータ2及び正極箔3は、その吸着が解除させられ、積層ステージ13の前記セパレータ2の上へと載置させられる。当該載置に際しても、図示しない押さえ手段により、セパレータ2及び正極箔3が位置ズレを極力起こさないよう、押さえ付けられる。 【0046】 上記動作を所定回数繰り返すことで、下から順に負極箔1、セパレータ2、及び、正極箔3、セパレータ2が繰り返し積み上げられる。これにより、上述した積層体4が得られる。 【0047】 次に、上述の積層に際し、極箔1,3及びセパレータ2が位置ズレを起こしていないか否かを検査するために用いられる検査装置30について説明する。 【0048】 図1、図4に示すように、検査装置30は、第1照射手段を構成する可視光照射手段31と、照射手段、第2照射手段を構成する赤外光照射手段32と、第1撮像手段を構成する可視光用カメラ33と、撮像手段、第2撮像手段を構成する赤外光用カメラ34と、これらを適宜制御する制御装置35とを備えている。赤外光照射手段32は、積層ステージ13の上方位置に設けられており、極箔1,3及びセパレータ2の積層領域全域を上方から照射することができるよう四角枠状をなす赤外光ランプによって構成されている。これに対し、可視光照射手段31は、赤外光照射手段32よりも下方に設けられており、積層される極箔1,3及びセパレータ2の外周縁を側方から照射することができるよう四角枠状をなす可視光ランプによって構成されている。 【0049】 また、可視光用カメラ33及び赤外光用カメラ34は、前記赤外光照射手段32よりも上方に設けられている。そして、可視光用カメラ33及び赤外光用カメラ34には、共通のレンズ36及びダイクロイックミラー37を介して、可視光、赤外光がそれぞれ入射されるようになっている。尚、本実施形態におけるダイクロイックミラー37は、赤外光のみを通過し、可視光を反射可能に構成されている。 【0050】 かかる構成下、可視光照射手段31より可視光が極箔1,3及びセパレータ2の側方から照射されると、当該可視光は少なくとも最上部のセパレータ2のエッジ部分に当たることとなる。このため、可視光用カメラ33では、セパレータ2の外縁部分が明るく光り、当該エッジ部分が明瞭に撮像される。また、赤外光照射手段32より上方から赤外光が照射されると、当該赤外光はセパレータ2を透過してその直下層の極箔1,3にて反射する。そして、その反射した赤外光がセパレータ2を再度透過して上方の赤外光用カメラ34により撮像される。このようにして、セパレータ2及び当該セパレータ2の直下層の正極箔3又は負極箔1を、それぞれ可視光用カメラ33及び赤外光用カメラ34により撮像することができる。 【0051】 続いて、前記照射手段31、32およびカメラ33、34を制御するための制御装置35の電気的構成について説明する。図4に示すように、制御装置35は、検査装置30全体の制御を司る画像処理手段としてのCPU及び入出力インターフェース41、カメラ33、34による撮像に基づく画像データを記憶するための画像データ記憶手段42、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶手段43、各種情報を予め記憶しておく設定データ記憶手段44等を備えている。なお、これら各記憶手段42?44は、CPU及び入出力インターフェース41に対し電気的に接続されている。 【0052】 CPU及び入出力インターフェース41には、キーボードやマウス、あるいは、タッチパネルで構成される入力手段45、CRTや液晶などの表示画面を有する表示手段46も電気的に接続されている。また、上述した照射手段31、32およびカメラ33、34もまた、CPU及び入出力インターフェース41に対し電気的に接続されている。さらに、上記搬送アーム15を作動させるための駆動手段21、22及び、吸着パッド16の吸引を導出するための吸引手段23もCPU及び入出力インターフェース41に対し電気的に接続されている。 【0053】 さて、検査装置30の概略構成は上記のとおりであるが、以下には、当該検査装置30により行われる検査の内容を図5のフローチャートに基づいて説明する。当該検査処理は主として前記制御装置35によって実行される。 【0054】 図5に示すように、ステップS101において、極箔1,3及びセパレータ2が積層ステージ13上に2枚1組で一度に積み上げられると、ステップS102において、カメラ33、34による撮像が行われる。例えば、まず最初に積層ステージ13上に積み上げられるのは負極箔1及びセパレータ2である。また、次に積み上げられるのは正極箔3及びセパレータ2である。 【0055】 ステップS102においては、このように積み上げられる度に、可視光照射手段31より可視光が側方から照射された上で第1の検査対象たるセパレータ2が可視光用カメラ33により撮像され、それとは別に赤外光照射手段32より赤外光が上方から照射された上で第2の検査対象たる極箔1,3が赤外光用カメラ34により撮像される。上述のとおり、可視光用カメラ33では、セパレータ2の外縁部分が明瞭に撮像されることとなる。ま た、赤外光用カメラ34では、赤外光がセパレータ2を透過することに基づきその直下層の極箔1,3が撮像される。尚、本実施形態では、可視光用カメラ33による撮像と、赤外光用カメラ34による撮像とが同時に行われる。 【0056】 続くステップS103では、可視光用カメラ33により撮像された可視光画像に基づき、セパレータ2のエッジ(外周縁)が抽出される。また、ステップS104では、赤外光用カメラ34により撮像された赤外光画像に基づき、最上層のセパレータ2の直下層の極箔1,3のエッジ(外周縁)が抽出される。 【0057】 続くステップS105では、各種距離等の演算が行われる。つまり、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が演算される。より具体的に説明すると、本実施形態においては、最下層の負極箔1の位置が基準位置とされる。最初に負極箔1及びセパレータ2が搭載された場合には、その最下層の負極箔1に対し、セパレータ2がどの程度ずれているのかが計測、演算される。例えば、図6(a)に示すように、極箔(負極箔1)の各辺(エッジ)に対するセパレータ2の各辺(エッジ)の距離L1?L6が計測、演算されるといった計測が考えられる。また、次に正極箔3及びセパレータ2が積み上げられると、その下のセパレータ2のエッジに対する当該正極箔3のエッジの距離(上記L1?L6に準ずる)が計測され、正極箔3のエッジに対するその上のセパレータ2のエッジの距離(上記L1?L6に準ずる)が計測される。また、これとともに、前記基準位置に対するこの度積み上げられた正極箔3及びセパレータ2の位置ズレ量が演算される。 【0058】 さらに、ステップS106では、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が予め定められた許容位置ズレ量(事前に入力手段45により入力設定される値)を超えているか否かが判定される。そして、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が許容位置ズレ量を超えている場合(「NG」の場合)には、ステップS107において、当該位置ズレの修正が行われる。より具体的には、上述した吸着パッド16により一旦積み上げられたセパレータ2等が吸着され、再度の積み上げが行われる。再度の積み上げに際しては、極箔1,3やセパレータ2を一旦各供給ステージ11,12或いは別途のステージに戻すこととしてもよい。勿論、別途の修正用ロボット等による修正が行われてもよいし、人手による修正が行われる構成であってもよい。ステップS107の処理を経た後、再度ステップS102の撮像処理が行われる。 【0059】 一方、ステップS106において、この度積み上げられた極箔1,3及びセパレータ2の基準位置に対する位置ズレ量が許容位置ズレ量を超えていない場合(「OK」の場合)には、ステップS108において、予め定められた数の積み上げが終了したか否かが判定される。そして、未だ積み上げが終了していない場合には、ステップS101に戻り、極箔1,3及びセパレータ2の積み上げが行われる。これに対し、積み上げが終了した場合には、検査処理が一旦終了させられる。」 ウ 「【図1】 」 エ 「【図2】 」 オ 「【図3】 」 カ 「【図4】 」 キ 「【図5】 」 (4)刊行物4の記載 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物4には、次の事項が記載されている。 ア 「産業上の利用分野 本発明は蓄電池用極板をセパレータを介して交互に積み重ねる方法及びその装置に関するものである。」(第1頁右欄第26行?第2頁左欄第2行) イ 「 次に前記プリーツ部9の機能について第6-1図?第6-4図に基づき更に詳細に説明する。 (第6-1図から第6-2図の工程) 折り板6と補助折り板7を用いてセパレータ8に折りぐせをつけた後、折り板6が水平に倒れて陰極板2の上にセパレータ8が積み重ねられる。その後スライドユニツト1の上に載置されている陽極板3がピツクアンドプレース15を用いて前記セパレータ8の上に積み重ねられる。なお、ピツクアンドプレース15は先端に空気吸引部を備えており、陽極板3を吸着して運ぶことができる。 (第6-2図から第6-3図の工程) ピツクアンドプレース15で陽極板3を押えながら折り板6を引き抜いて後退させた後、押え板20を下降させて陽極板3を押えると共に補助折り板7が水平になる。また、テーブル13が積み重ねられたセパレータ8と陽極板3の厚さ分だけ下降することにより積み重ね高さを一定に保つている。 (第6-3図から第6-4図の工程) ピツクアンドプレース15が所定位置に移動すると共に押え板20で陽極板3を押えながら折り板6が前進して垂直に立ち上がる。 (第6-4図から第6-1図の工程) 押え板20が上昇すると共に補助折り板7が下がり、セパレータ8に折りぐせをつける。 以上の工程を繰り返すことにより所定枚数の陰、陽極板2,3とセパレータ8とを積み重ねて極板群18を完成する。なお、極板枚数は任意に設定可能である。」(第2頁右欄第36行?第3頁右欄第1行) ウ 「 」 (5)刊行物5の記載 本件特許に係る出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物5には、次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、シート部材積層装置およびシート部材積層方法に関する。 【背景技術】 【0002】 積層型電池は、カットされた負極シート、セパレータシート、および正極シートを順次に積層した構造を有する。 【0003】 この形態の積層型電池を製造する際の、従来の積層工程は次にように行われている。積層途中にある既に重ね合わされた各シート部材がずれないように爪部によって押さえられている。そして、次に積層するシート部材(負極シート、セパレータシート、および正極シートのいずれか)が吸着装置により吸着された状態で、既に積層されたシート部材の上から重ねられる。そして吸着装置により上から押さえ付けた状態で、爪部を上に上げていったん既に積層したシート部分を開放する。このとき、吸着装置により持ってきたシート部材は、その可とう性によってめくれ上がり、さらに爪部が上がることで爪部の下に回り込む。その後、爪部を下げて、今持ってきたシート部材の上から再び全てのシート部材を押さえる(特許文献1)。」 イ 「【0012】 図1はシート部材積層装置の全体構成を説明するための斜視図、図2はこのシート部材積層装置で用いられているクランプ装置の構成を説明するための説明図である。なお、図2はこのクランプ装置の動作説明の一部としても使用する図面である。 【0013】 まず、シート部材積層装置の構成は、シート部材100を載置するためのパレット1と、パレット1方向に、載置されたシート部材100を押さえ付ける加圧部21を持つクランプ装置2を有する。クランプ装置2は、パレット1の周囲に4個設けられている。 【0014】 クランプ装置2は、加圧部21、軸22、および駆動部23からなる。加圧部21は一つの軸22に3つ取り付けられている。各加圧部21は、後述するように、シート部材100の材質ごとにそれぞれ割り当てられている(図2において3つの加圧部は、それぞれ加圧部211?213とする)。 【0015】 軸22は、図2に示すように、固定された支持部3により上下動自在および回転自在に支持されている。なお、支持部3は床面や台座(不図示)に固定されていて移動しない。」 ウ 「【図1】 」 エ 「【図2】 」 オ 「【図2】 」 5 対比・判断 (1)本件特許発明1について 本件特許発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「陽極板2」、「陰極板3」、「他方の極板吸着装置9’」、「極板吸着装置9」は、本件特許発明1の「第1電極」、「第1電極とは極性の異なる第2電極」、「第1把持部」、「第2把持部」にそれぞれ相当する。 イ 引用発明の「セパレータ1で包装された陽極板2」は、本件特許発明1の「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体」に相当する。 また、引用発明の「治具6’に収納された陽極板2」及び「ホルダー11内に挿入」する「陽極板2」は、いずれも「セパレータ1で包装された陽極板2」であることは明らかである。 ウ 引用発明の「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ね」る事項は、技術常識に照らせば、本件特許発明1の「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層する」事項に相当する。 エ 引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ね」る装置であるから、本件特許発明1の「積層装置」に相当する。 オ 引用発明の「第2のコンベア7’に設けた治具6’」と本件特許発明1の「第1テーブル」とは、「第1載置部材」である点で共通するから、引用発明の「セパレータ1で包装された」「陽極板2」が「収納され」る「第2のコンベア7’に設けた治具6’」と、本件特許発明1の「セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブル」とは、「セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材」で共通する。 カ 引用発明の「第1のコンベア7に設けた治具6」と本件特許発明1の「第2テーブル」とは、「第2載置部材」である点で共通するから、引用発明の「陰極板3」が「収納され」る「第1のコンベア7に設けた治具6」と、本件特許発明1の「第2電極が載置される第2テーブル」とは、「第2電極が載置される第2載置部材」で共通する。 キ 引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、」「次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、」「セパレータ1で包装された」「陽極板2をホルダー11内に挿入」するものであるから、引用発明の「極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11」と、本件特許発明1の「セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブル」とは、「セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材」で共通する。 ク 引用発明の「他方の極板吸着装置9’」は、「第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出し、」「ホルダー11内に挿入」するものであるから、本件特許発明1の「セパレータ-電極組立体を把持し、解放する第1把持部」に相当する。 ケ 引用発明の「極板吸着装置9」は、「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3」を「治具6から取り出し、」「ホルダー11内に陰極板3を挿入」するものであるから、本件特許発明1の「第2電極を把持し、解放する第2把持部」に相当する。 コ 引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10」「を有し、」「揺動装置10」を「90°回転させて、」「揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出し、次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、」「セパレータ1で包装された」「陽極板2をホルダー11内に挿入」するものである。 そうすると、引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、本件特許発明1の「第1把持部が前記第1テーブルと前記積層テーブルとの間を往復移動する」事項と、「第1把持部が第1載置部材と積層部材との間を往復移動する」事項で共通する構成を含むものである。 サ 引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10」「を有し、」「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、」「次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ」るものである。 そうすると、引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、本件特許発明1の「第2把持部は前記積層テーブルと前記第2テーブルとの間を往復移動」する事項と、本件特許発明1の「第2把持部は積層部材と第2載置部材との間を往復移動」する事項で共通する構成を含むものである。 シ 引用発明の「第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出」す事項と、本件特許発明1の「第1テーブル上で位置および姿勢が調整された前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は前記積層テーブル上で前記第2電極を解放」する事項とは、「第1載置部材上で前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は積層部材上で前記第2電極を解放」する事項で共通する。 ス 引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、」「次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ」るものであって、「以上の動作を予め設定した回数繰り返す」ものであるから、「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出」すのは、「揺動装置10で90°回転させ」る前であって、「揺動装置10を逆方向に90°回転させ」た後であるといえる。 また、引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「他方の極板吸着装置9’」は、「揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダー11内に挿入」するものである。 すると、引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、「揺動装置10を逆方向に90°回転させ」た後に、「陽極板2をホルダー11内に挿入し、」「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出」すものであるといえる。 したがって、引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」は、本件特許発明1の「第1把持部が前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、前記第2テーブル上で位置および姿勢が調整された前記第2電極を前記第2把持部が把持する」事項と、「第1把持部が積層部材上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、第2載置部材上で前記第2電極を前記第2把持部が把持する」事項で共通する構成を含むものである。 上記ア?スによれば、本件特許発明1と引用発明とは、 「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層装置であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材と、 前記第2電極が載置される第2載置部材、 前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材と、 前記セパレータ-電極組立体を把持し、解放する第1把持部と、 前記第2電極を把持し、解放する第2把持部と、を有し、 前記第1把持部が前記第1載置部材と前記積層部材との間を往復移動する一方で、前記第2把持部は前記積層部材と前記第2載置部材との間を往復移動し、前記第1載置部材上で前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は前記積層部材上で前記第2電極を解放し、前記第1把持部が前記積層部材上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、前記第2載置部材上で前記第2電極を前記第2把持部が把持することを特徴とする積層装置。」で一致し、以下a?eの点で相違する。 (相違点) a 第1載置部材が、本件特許発明1では、「第1テーブル」であるのに対し、引用発明では、「第2のコンベア7’に設けた治具6’」である点。 b 第2載置部材が、本件特許発明1では、「第2テーブル」であるのに対し、引用発明では、「第1のコンベア7に設けた治具6」である点。 c セパレータ-電極組立体と第2電極とが交互に積層される積層部材が、本件特許発明1では、「積層テーブル」であるのに対し、引用発明では、「極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11」である点。 d 本件特許発明1は、「第1テーブルを水平面内で移動および回転可能に構成され、前記第1テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整して、前記第1テーブル上の前記セパレータ-電極組立体の位置および姿勢を調整する第1調整部」「を有」するのに対し、引用発明は、「セパレータ1で包装された陽極板2」が「収納された」「複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’」を有するものの、「治具6’」の位置および姿勢を調整する調整部が存在しない点。 e 本件特許発明1は、「第2テーブルを水平面内で移動および回転可能に構成され、前記第2テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整して、前記第2テーブル上の前記第2電極の位置および姿勢を調整する第2調整部」「を有」するのに対し、引用発明は、「陰極板3」が「収納された」「治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7」を有するものの、「治具6」の位置および姿勢を調整する調整部が存在しない点。 まず、上記dの相違点について検討する。 引用発明は、「陽極板と陰極板を積み重ねた極板群が不揃いとなるため、」(上記4(1)イの記載事項参照。)「極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11」を設け、「ホルダー内で陽極板と陰極板を交互に積み重ねて極板群を形成」することにより、「極板群が整列したものとなる」(上記4(1)イの記載事項参照。)ものである。また、引用発明は、「チェーン5’に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’」を有するものであるが、この「第2のコンベア7’」は、「治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2」を「一定タクトで駆動させ」、「他方の極板吸着装置9’」で「治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出」す位置に移動させるものであって、本件特許発明1の「第1調整部」のように、陰極板3の水平方向の位置および姿勢を調整するものとはいえない。 一方、刊行物2には、リチウム二次電池の袋状電極(本件特許発明1の「セパレータ-電極組立体」に相当。)の製造装置において、固定吸盤ユニット8に搬送供給された高分子セパレータ11上に負極電極12を供給するにあたり、負極電極12を電極位置合わせX-Y-θテーブル7に供給し、電極位置合わせX-Y-θテーブル7において、電極位置合わせカメラ6で電極位置を確認しつつ、X-Y-θ方向に電極位置の修正を行って(この「X-Y-θ方向」の「位置の修正」は、本件特許発明1の「水平方向の位置および姿勢」の「調整」に相当。)から、高分子セパレータ11上に負極電極12を供給する技術事項が記載(刊行物2の【0001】、【0028】参照。)されている。 しかしながら、引用発明は、ホルダー11を設けることにより、極板群の不揃いを解消したものであるから、あえて同様の目的で設けられた、刊行物2に記載された「電極位置合わせX-Y-θテーブル7」を重ねて採用する動機付けが存在しないし、また、刊行物2に記載された技術事項は、袋状電極を製造するために高分子セパレータ11と負極電極12とを重ねるものであって、「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ねて極板群4にする」引用発明とは積み重ねる対象が異なるから、引用発明の「蓄電池極板群の製造装置」において、刊行物2に記載された技術事項を適用することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 また、刊行物3には、積層電池の製造過程において、吸着パッド16により、セパレータ2及び負極箔1を2枚1組で積層ステージ13(本件特許発明1の「積層テーブル」に相当。)に載置し、次に、同様の要領で、吸着パッド16により、セパレータ2及び正極箔3を2枚1組で積層ステージ13に載置し、これを所定回数繰り返すことにより、積層体4を得るにあたり、セパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3が2枚1組で積層ステージ13に積み上げられると、セパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3の基準位置に対し、許容位置ズレ量を超えている場合に、一旦積み上げられたセパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3を吸着パッド16が吸着し、再度の積み上げを行う技術事項が記載(刊行物3の【0001】、【0041】?【0046】、【0054】?【0058】参照。)されている。 しかしながら、刊行物3に記載された技術事項は、一旦積層ステージ13に積み上げられたセパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3を、再度積み上げるものであって、本件特許発明1のように、セパレータ-電極組立体または第2電極を積層テーブルに積層する前に、第1テーブルまたは第2テーブルで、位置及び姿勢を調整するものではないから、仮に、引用発明において、刊行物3に記載された技術事項を適用できたとしても、上記dの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることはできない。 また、引用発明において、刊行物4または5に記載された技術事項を適用したとしても、上記dの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることはできないことは明らかである。 以上から、上記dの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることは、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (2)本件特許発明2について 上記(1)での対比を踏まえて、本件特許発明2と引用発明とを対比すると、本件特許発明2と引用発明とは、 「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層装置であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材と、 前記第2電極が載置される第2載置部材、 前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材と、 前記セパレータ-電極組立体を把持し、解放する第1把持部と、 前記第2電極を把持し、解放する第2把持部と、を有し、 前記第1把持部が前記第1載置部材と前記積層部材との間を往復移動する一方で、前記第2把持部は前記積層部材と前記第2載置部材との間を往復移動し、前記第1載置部材上で前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は前記積層部材上で前記第2電極を解放し、前記第1把持部が前記積層部材上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、前記第2載置部材上で前記第2電極を前記第2把持部が把持することを特徴とする積層装置。」で一致し、上記(1)で検討したa?cの相違点に加え、次のd’及びe’の点で相違する。 (相違点) d’ 本件特許発明2は、「第1テーブルを水平面内の第1方向および当該第1方向とは異なる第2方向に移動可能に構成され、前記第1テーブルの水平方向の位置を調整して、前記第1テーブル上の前記セパレータ-電極組立体の位置を調整する第1調整部」「を有」するのに対し、引用発明は、「セパレータ1で包装された陽極板2」が「収納された」「複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’」を有するものの、「治具6’」の位置を調整する調整部が存在しない点。 e’ 本件特許発明2は、「第2テーブルを水平面内の第3方向および当該第3方向とは異なる第4方向に移動可能に構成され、前記第2テーブルの水平方向の位置を調整して、前記第2テーブル上の前記第2電極の位置を調整する第2調整部」「を有」するのに対し、引用発明は、「陰極板3」が「収納された」「治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7」を有するものの、「治具6」の位置および姿勢を調整する調整部が存在しない点。 上記d’の相違点について検討するに、上記(1)で述べたとおり、上記dの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることは、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできないから、同様の理由により、上記d’の相違点に係る本件特許発明2の発明特定事項を得ることは、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明3は、本件特許発明1または2を更に減縮したものであるから、上記(1)または(2)で述べた理由と同様の理由により、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4は、本件特許発明1?3のいずれかを更に減縮したものであるから、上記(1)、(2)または(3)で述べた理由と同様の理由により、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (5)本件特許発明5について 本件特許発明5は、本件特許発明4を更に減縮したものであるから、上記(4)で述べた理由と同様の理由により、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (6)本件特許発明6について 本件特許発明6は、本件特許発明1?5のいずれかを更に減縮したものであるから、上記(1)?(5)で述べた理由と同様の理由により、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (7)本件特許発明7について 本件特許発明7は、本件特許発明6を更に減縮したものであるから、上記(6)で述べた理由と同様の理由により、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (8)本件特許発明8について 本件特許発明8と引用方法発明とを対比する。 ア 引用方法発明の「陽極板2」、「陰極板3」、「他方の極板吸着装置9’」、「極板吸着装置9」は、本件特許発明8の「第1電極」、「第1電極とは極性の異なる第2電極」、「第1把持部」、「第2把持部」にそれぞれ相当する。 イ 引用方法発明の「セパレータ1で包装された陽極板2」は、本件特許発明8の「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体」に相当する。 ウ 引用方法発明の「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ね」る事項は、技術常識に照らせば、本件特許発明8の「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層する」事項に相当する。 エ 引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ね」る方法であるから、本件特許発明8の「積層方法」に相当する。 オ 引用方法発明の「第2のコンベア7’に設けた治具6’」と本件特許発明8の「第1テーブル」とは、「第1載置部材」である点で共通するから、引用方法発明の「セパレータ1で包装された」「陽極板2」が「収納され」る「第2のコンベア7’に設けた治具6’」と、本件特許発明8の「セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブル」は、「セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材」で共通する。 カ 引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、」「次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、」「セパレータ1で包装された」「陽極板2をホルダー11内に挿入」するものであるから、引用方法発明の「極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11」と、本件特許発明8の「セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブル」とは、「セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材」で共通する。 キ 引用方法発明の「第1のコンベア7に設けた治具6」と本件特許発明1の「第2テーブル」とは、「第2載置部材」である点で共通するから、引用方法発明の「陰極板3」が「収納され」る「治具6」と、本件特許発明8の「第2電極が載置される第2テーブル」とは、「第2電極が載置される第2載置部材」で共通する。 ク 引用方法発明の「他方の極板吸着装置9’」は、「第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出し、」「ホルダー11内に挿入」するものであるから、本件特許発明8の「セパレータ-電極組立体」を「把持」し、「解放」する「」第1把持部」に相当する。 ケ 引用方法発明の「極板吸着装置9」は、「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3」を「治具6から取り出し、」「ホルダー11内に陰極板3を挿入」するものであるから、本件特許発明8の「第2電極」を「把持」し、「解放」する第2把持部」に相当する。 コ 引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10」「を有する蓄電池極板群の製造装置において、」「揺動装置10」を「90°回転させて、」「揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出し、次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ、」「セパレータ1で包装された」「陽極板2をホルダー11内に挿入」するものである。 そうすると、引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、本件特許発明8の「セパレータ-電極組立体が載置される第1テーブルと、前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層テーブルとの間を第1把持部に往復移動させる」事項と、「セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材と、前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材との間を第1把持部に往復移動させる」事項で共通する構成を含むものである。 サ 引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10」「を有する蓄電池極板群の製造装置において、」「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、」「次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ」るものである。 そうすると、引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、本件特許発明8の「積層テーブルと前記第2電極が載置される第2テーブルとの間を第2把持部に往復移動させ」る事項と、「積層部材と前記第2電極が載置される第2部材との間を第2把持部に往復移動させ」る事項で共通する構成を含むものである。 シ 引用方法発明の「第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、その際、揺動装置10に取り付けた他方の極板吸着装置9’は、第2のコンベア7’に設けた治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出」す事項と、本件特許発明8の「水平面内で移動および回転可能な前記第1テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整することにより当該第1テーブル上で位置および姿勢が調整された前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部に把持させるときには、前記第2把持部に前記積層テーブル上で前記第2電極を解放させ」る事項とは、「セパレータ-電極組立体を前記第1把持部に把持させるときには、前記第2把持部に前記積層テーブル上で前記第2電極を解放させ」る事項で共通する。 ス 引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出し、揺動装置10で90°回転させて、第3のコンベア12のホルダー11内に陰極板3を挿入し、」「次いで、揺動装置10を逆方向に90°回転させ」るものであって、「以上の動作を予め設定した回数繰り返す」ものであるから、「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出」すのは、「揺動装置10で90°回転させ」る前であって、「揺動装置10を逆方向に90°回転させ」た後であるといえる。 また、引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「他方の極板吸着装置9’は」、「揺動装置10を逆方向に90°回転させ、陽極板2をホルダー11内に挿入」するものである。 すると、引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、「揺動装置10を逆方向に90°回転させ」た後に、「陽極板2をホルダー11内に挿入し、」「第1のコンベア7に設けた治具6に収納された陰極板3を極板吸着装置9で治具6から取り出」すものであるといえる。 したがって、引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」は、本件特許発明8の「第1把持部に前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放させるときには、水平面内で移動および回転可能な前記第2テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整することにより当該第2テーブル上で位置および姿勢が調整された前記第2電極を前記第2把持部に把持させる」事項と、「第1把持部に前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放させるときには、前記第2電極を前記第2把持部に把持させる」事項で共通する構成を含むものである。 上記ア?スによれば、本件特許発明8と引用方法発明とは、 「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層方法であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材と、前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材との間を第1把持部に往復移動させる一方で、前記積層部材と前記第2電極が載置される第2載置部材との間を第2把持部に往復移動させ、 前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部に把持させるときには、前記第2把持部に前記積層テーブル上で前記第2電極を解放させ、前記第1把持部に前記積層テーブル上で前記セパレータ-電極組立体を解放させるときには、前記第2電極を前記第2把持部に把持させることを特徴とする積層方法。」で一致し、上記(1)で述べたa?cの相違点に加え、次のd’’及びe’’の点で相違する。 (相違点) d’’ 「第1把持部に把持させる」「セパレータ-電極組立体」が、本件特許発明8では、「水平面内で移動および回転可能な前記第1テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整することにより当該第1テーブル上で位置および姿勢が調整された」ものであるのに対し、引用方法発明では、そのような位置及び姿勢の調整を行っていない点。 e’’ 「第2把持部に把持させる」「第2電極」が、本件特許発明8では、「水平面内で移動および回転可能な前記第2テーブルの水平方向の位置および姿勢を調整することにより当該第2テーブル上で位置および姿勢が調整された」ものであるのに対し、引用方法発明では、そのような位置及び姿勢の調整を行っていない点。 まず、上記d’’の相違点について検討する。 引用方法発明は、「陽極板と陰極板を積み重ねた極板群が不揃いとなるため、」(上記4(1)イの記載事項参照。)「極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11」を用いて、「ホルダー内で陽極板と陰極板を交互に積み重ねて極板群を形成」することにより、「極板群が整列したものとなる」(上記4(1)イの記載事項参照。)ものである。また、引用方法発明は、「チェーン5’に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’」を用いるものであるが、この「第2のコンベア7’」は、「治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2」を「一定タクトで駆動させ」、「他方の極板吸着装置9’」で「治具6’に収納された」「セパレータ1で包装された」「陽極板2を吸着し、取り出」す位置に移動させるものであって、本件特許発明1のように載置部材の水平方向の位置および姿勢を調整するものではない。 一方、刊行物2には、リチウム二次電池の袋状電極(本件特許発明1の「セパレータ-電極組立体」に相当。)の製造装置において、固定吸盤ユニット8に搬送供給された高分子セパレータ11上に負極電極12を供給するにあたり、負極電極12を電極位置合わせX-Y-θテーブル7に供給し、電極位置合わせX-Y-θテーブル7において、電極位置合わせカメラ6で電極位置を確認しつつ、X-Y-θ方向に電極位置の修正を行って(この「X-Y-θ方向」の「位置の修正」は、本件特許発明1の「水平方向の位置および姿勢」の「調整」に相当。)から、高分子セパレータ11上に負極電極12を供給する技術事項が記載(刊行物2の【0001】、【0028】参照)されている。 しかしながら、引用方法発明は、ホルダー11を用いることにより、極板群の不揃いを解消したものであるから、あえて同様の目的で用いる、刊行物2に記載された「電極位置の修正」方法を重ねて採用する動機付けが存在しないし、また、刊行物2に記載された技術事項は、袋状電極を製造するために高分子セパレータ11と負極電極12とを重ねるものであって、「セパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3を多数枚積み重ねて極板群4にする」引用方法発明とは積み重ねる対象が異なるから、引用方法発明の「蓄電池極板群の製造方法」において、刊行物2に記載された技術事項を適用することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 また、刊行物3には、積層電池の製造過程において、吸着パッド16により、セパレータ2及び負極箔1を2枚1組で積層ステージ13(本件特許発明1の「積層テーブル」に相当。)に載置し、次に、同様の要領で、吸着パッド16により、セパレータ2及び正極箔3を2枚1組で積層ステージ13に載置し、これを所定回数繰り返すことにより、積層体4を得るにあたり、セパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3が2枚1組で積層ステージ13に積み上げられると、セパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3の基準位置に対し、許容位置ズレ量を超えている場合に、一旦積み上げられたセパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3を吸着パッド16が吸着し、再度の積み上げを行う技術事項が記載(刊行物3の【0001】、【0041】?【0046】、【0054】?【0058】参照。)されている。 しかしながら、刊行物3に記載された技術事項は、一旦積層ステージ13に積み上げられたセパレータ2、及び、負極箔1または正極箔3を、再度の積み上げるものであって、本件特許発明1のように、セパレータ-電極組立体または、第2電極を積層テーブルに積層する前に、第1テーブルまたは第2テーブルで、位置及び姿勢を調整するものではないから、仮に、引用方法発明において、刊行物3に記載された技術事項を適用できたとしても、上記d’’の相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることはできない。 また、引用方法発明において、刊行物4または5に記載された技術事項を適用したとしても、上記d’’の相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることはできないことは明らかである。 以上から、上記d’’の相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることは、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (9)本件特許発明9について 上記(8)での対比を踏まえて、本件特許発明9と引用方法発明とを対比すると、本件特許発明9と引用方法発明とは、 「第1電極がセパレータに挟み込まれてなるセパレータ-電極組立体と前記第1電極とは極性の異なる第2電極とを交互に積層するための積層装置であって、 前記セパレータ-電極組立体が載置される第1載置部材と、 前記第2電極が載置される第2載置部材、 前記セパレータ-電極組立体と前記第2電極とが交互に積層される積層部材と、 前記セパレータ-電極組立体を把持し、解放する第1把持部と、 前記第2電極を把持し、解放する第2把持部と、を有し、 前記第1把持部が前記第1載置部材と前記積層部材との間を往復移動する一方で、前記第2把持部は前記積層部材と前記第2載置部材との間を往復移動し、前記第1載置部材上で前記セパレータ-電極組立体を前記第1把持部が把持するときには、前記第2把持部は前記積層部材上で前記第2電極を解放し、前記第1把持部が前記積層部材上で前記セパレータ-電極組立体を解放するときには、前記第2載置部材上で前記第2電極を前記第2把持部が把持することを特徴とする積層装置。」で一致し、上記(1)で検討したa?cの相違点に加え、次のd’’’、e’’’の点で相違する。 (相違点) d’’’ 「第1把持部に把持させる」「セパレータ-電極組立体」が、本件特許発明8では、「水平面内の第1方向および当該第1方向とは異なる第2方向に移動可能な前記第1テーブルの水平方向の位置を調整することにより当該第1テーブル上で位置が調整された」ものであるのに対し、引用方法発明では、そのような位置の調整を行っていない点。 e’’’ 「第2把持部に把持させる」「第2電極」が、本件特許発明8では、「水平面内の第3方向および当該第3方向とは異なる第4方向に移動可能な前記第2テーブルの水平方向の位置を調整することにより当該第2テーブル上で位置が調整された」ものであるのに対し、引用方法発明では、そのような位置の調整を行っていない点。 上記d’’’の相違点について検討するに、上記(8)で述べたとおり、上記d’’の相違点に係る本件特許発明8の発明特定事項を得ることは、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできないから、同様の理由により、上記d’’’の相違点に係る本件特許発明9の発明特定事項を得ることは、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (10)本件特許発明10について 本件特許発明10は、本件特許発明8または9を更に減縮したものであるから、上記(8)または(9)で述べた理由と同様の理由により、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (11)本件特許発明11について 本件特許発明11は、本件特許発明8?10のいずれかを更に減縮したものであるから、上記(8)、(9)または(10)で述べた理由と同様の理由により、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (12)本件特許発明12について 本件特許発明12は、本件特許発明11を更に減縮したものであるから、上記(11)で述べた理由と同様の理由により、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (13)本件特許発明13について 本件特許発明13は、本件特許発明8?12のいずれかを更に減縮したものであるから、上記(8)?(12)で述べた理由と同様の理由により、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (14)本件特許発明14について 本件特許発明14は、本件特許発明13を更に減縮したものであるから、上記(13)で述べた理由と同様の理由により、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。 (15)小結 以上のとおり、本件特許発明1?7は、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではなく、本件特許発明8?14は、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではない。 6 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-03-07 |
出願番号 | 特願2012-67848(P2012-67848) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01M)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 市川 篤 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 千葉 輝久 |
登録日 | 2016-06-17 |
登録番号 | 特許第5953083号(P5953083) |
権利者 | 株式会社京都製作所 日産自動車株式会社 |
発明の名称 | 積層装置および積層方法 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |