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審決分類 審判 判定 利用 属さない(申立て不成立) B22D
審判 判定 対象物 属さない(申立て不成立) B22D
管理番号 1325910
判定請求番号 判定2016-600049  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 判定 
判定請求日 2016-10-06 
確定日 2017-03-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第3674786号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「連続鋳造用鋳型」は,特許第3674786号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は,イ号図面及びその説明書に示す連続鋳造用鋳型(以下,「イ号物件」という。)は,特許第3674786号(以下「本件特許」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

第2 手続の経緯

本件特許発明の請求項1に係る特許(以下,「本件特許発明」という。)についての出願は,平成15年10月1日に特許出願され,平成17年5月13日に特許権の設定登録がされ,平成23年12月19日に株式会社サトーセンから本件判定の請求人に移転登録がなされたものである。

その後,平成28年10月6日に本件判定が請求され,これに対し,同年11月2日に被請求人に判定請求書副本を発送したところ,同月24日付けで被請求人から判定請求答弁書が提出された。

そして,平成28年12月9日付けで請求人に対して審尋をしたところ,平成29年1月12日付けで請求人から回答書,補正されたイ号図面及びイ号説明書が提出された。また,同月25日に被請求人に対して回答書,補正されたイ号図面及びイ号説明書の副本を発送したところ,同年2月16日付けで被請求人から回答書が提出されたものである。

第3 本件特許発明について
(1)本件特許の特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲(請求項の数1)の記載によれば,本件特許発明は,以下のとおりである。(なお,便宜上,構成要件に分説し,記号AないしDを付した。以下「構成要件A」などという。)
「A 鋳型基体の少なくとも長辺側下端面の,
B 鋳型の廃板基準位置よりも鋳型の外部側に,
C 冷却水遮蔽体を具備していることを特徴とする
D 連続鋳造用鋳型。」

(2)本件特許の明細書の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件特許発明の課題,その解決手段,請求項1記載の「鋳型基体」及び「冷却水遮蔽体」の文言の意義に関連して,以下の記載がある。
「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、鋳型下端面の冷却水による腐食が防止される連続鋳造鋳型であって、損傷した場合にも補修が容易に実施できる鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題に鑑み種々実験検討を重ねた結果、以下の知見を得るに至った。
a)鋳型基体の少なくとも長辺側下端面に冷却水遮蔽体を設ければよいこと。
b)冷却水遮蔽体を鋳型の廃板基準位置よりも鋳型の外部側に設けることにより、冷却効果は損なわれず、また、冷却水遮蔽体は、鋳型の銅板厚さが廃板基準位置になるまでの間の鋳型補修の妨げにはならないこと。
【0010】
本発明は上記の知見に基づいてなされたもので、その要旨は下記のとおりである。
(1)鋳型基体の少なくとも長辺側下端面の、鋳型の廃板基準位置よりも鋳型の外部側に、冷却水遮蔽体を具備していることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
なお、後述するように、基体下端面に保護皮膜が設けられている場合は、冷却水遮蔽体は、保護皮膜の主成分となっている金属を含有する金属からなるものが望ましい。また、基体下端面に保護皮膜が設けられていない場合には、冷却水遮蔽体が鋳型基体の主成分となっている金属を含有する金属からなるものであることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の連続鋳造鋳型は、基体の少なくとも長辺側下端面に、冷却水遮蔽体を具備している連続鋳造用鋳型である。
【0012】
図2は、連続鋳造鋳型の冷却箱を省略した基体のみの斜視図である。基体の長辺側下端面とは、図2の5aおよび5bで示す面である。また、短辺側の基体下端面とは、5cおよび5dで示す面ある。なお、鋳型の短辺は、可動式になっていて、鋳片の幅変えが出来るようになっている。
・・・
【0014】
冷却水遮蔽体(以下「スプレーガード」という)は、基体の少なくとも長辺側下端面5aおよび5bに備えておればよいが、基体の短辺側下端面5cおよび5dにもそれを設けることが望ましい。図1からも理解できるように、基体の鋳型下端面に冷却水がかかるのは主に長辺側であるため、基体の長辺側下端面には必ずスプレーガードが必要である。しかし、短辺側にも冷却水が飛散するので、後述する図5に示すように、基体の短辺側下端面にもスプレーガードを設けておくのが好ましいのである。
・・・
【0017】
図3は、鋳型の下端面の拡大図で、スプレーガードが好適な位置に設置されている例を示す。スプレーガード11は、鋳型基体1の長辺側下端面5上における廃板基準位置10に接して鋳型の外部側(図3では右側)に設けられている。廃板基準位置とは、鋳型を構成している基板の内面が摩耗や修理により減肉して使用できなくなり、廃棄処分にせざるを得ない限界の肉厚になる位置である。
鋳型を構成している銅板は、廃板基準厚みになるまで繰り返し使用される。廃板基準位置とスプレーガードの前面とを合致させることにより、廃板となるまでスプレーガードによる影響なしに、補修時の表面処理皮膜の剥離除去、あるいは鋳型表面の切削加工が行うことができる。
・・・
【0020】
2)の場合:鋳型基体が銅および銅合金の場合は、銅を50%以上含有する合金が好ましい。
3.スプレーガードの形状
スプレーガードの形状は、スプレー水の流れの方向およびその遮断効果に影響する。スプレーガードの好ましい断面形状および高さは下記のとおりである。
1)断面形状:
鋳型下端面とスプレーガード前面(鋳片側)とにより形成される角度α(図3にαで示す角度)が小さいと右側から吹き付けられたスプレー水がスプレーガードの背面(左側)に渦になって巻き込まれる。一方、αが大きすぎると、スプレー水はスプレーガードの表面を伝って背面に達し、いずれの場合も基体底面へのスプレー水付着防止の効果が小さくなる。従って、角度αは、スプレーガードの高さによっても異なるが、概ね100度から130度の範囲が好ましい。
・・・
【0022】
スプレーガードは前述したように、鋳型下端面に取り付けるため、多くの要因によりその効果が異なってくる。上記のように、鋳型下端面とスプレーガード前面(鋳片側)とにより形成される角度(α)は100?130度、スプレーガード高さは14?16mmであるのが好ましいが、連続鋳造用設備はそれぞれ仕様が異なる上、鋳造機下部の空間は狭いためスプレーガードの形状および高さも他の設備との関係で制約を受ける。従って、上記の角度および高さは、実機においては可能な限り上記の範囲に近く設定するのがよい。
【0023】
スプレーガード後面、即ちスプレーノズル側の形状は、スプレー水を支障なく鋳片側に流す形状であればよい。このような作用を有する形状は、いわゆる流線型であるが、要するに、スプレーガードにより水滴化したスプレー水を速やか下方(鋳片の引抜き方向)に流すような形状であればよい。また、スプレーガードに付着した冷却水が大きな水滴を作ることなく、スプレー流により鋳片に向かって飛散させられる形状がよい。スプレーガード後面の形状も設備の状況に合わせ、上記の条件を作り出せる形状とすれば良く、特定の形状に限定されるものではない。」

(3)上記(2)より,以下のとおりと認められる。
ア 本件特許発明が解決しようとする課題について
鋳型下端面の冷却水による腐食が防止される連続鋳造鋳型であって,損傷した場合にも補修が容易に実施できる鋳型を提供する。

イ 本件特許発明における課題の解決手段について
(ア)鋳型基体の少なくとも長辺側下端面に冷却水遮蔽体を設けることで,鋳型下端面の冷却水による腐食を防止する。
(イ)冷却水遮蔽体を鋳型の廃板基準位置よりも鋳型の外部側に設けることにより,冷却効果は損なわれず,また,冷却水遮蔽体は,鋳型の銅板厚さが廃板基準位置になるまでの間の鋳型補修の妨げにはならないようにする。

ウ 本件特許発明における「鋳型基体」の意義について
「鋳型基体」とは,従来の連続鋳造鋳型に相当する部分であって,本件特許発明の連続鋳造鋳型から冷却水遮蔽体を除いた部分であると解するのが相当といえる。

エ 本件特許発明における「冷却水遮蔽体」の意義について
本件特許明細書の【0020】及び【0022】に記載されているように,「冷却水遮蔽体」(スプレーガード)の前面(鋳片側)と鋳型下端面とにより形成される角度によっては,スプレー水がスプレーガードの背面に渦になって巻き込まれたり,スプレーガードの表面を伝って背面に達したり,という基体底面へのスプレー水付着防止効果が小さくなる要因が生じる。このため,「冷却水遮蔽体」はスプレーノズル側のスプレーガード背面(後面)だけでなく,前面(鋳片側)も冷却水遮蔽のために不可欠な要素である,といえる。
また,本件特許発明では,本件特許明細書の【0009】及び【0017】に記載されるように冷却水遮蔽体が鋳型の銅板厚さが廃板基準位置になるまでの間の鋳型補修の妨げにはならないようにするという課題を解決し,効果を奏するために,廃板基準位置とスプレーガードの前面とを合致させて,冷却水遮蔽体を鋳型の廃板基準位置よりも鋳型の外部側に設けたものであるから,廃板基準位置よりも鋳型の外部側に,冷却水遮蔽体の全体があると解するのが相当といえる。
そうすると,「冷却水遮蔽体」とは,「鋳型基体」の下端面から突出する部分であって,スプレー水を遮蔽する機能を有し,鋳片側に前面,スプレーノズル側に後面を有する,突出する部分の全体を指すものと認められる。

第4 イ号物件について
(1)当審では,イ号物件を,以下のとおりのものであると認定する。
(a?dは,イ号物件を本件特許発明に対応するように分説し,各分説に付した符号であり,以下「構成a」などという。)

「a 鋳型基体(1z)の長辺(15z)側下端面(5z)であって,
b 鋳型の廃板基準位置(C)を含む部分に,
c 垂直面(17z)及び傾斜面(18z,19z)で画定される突出部(11z)を具備している
d 連続鋳造用鋳型(Rz)。」

(2)イ号物件の特定に係る請求人の主張について
ア 請求人は,平成29年1月12日付け回答書と同時に補正されたイ号図面の図3において,突出部11zの内部側Aは冷却水遮蔽機能を有さない補強部11bであって,突出部11zの外部側Bが冷却水遮蔽体11aである(平成29年1月12日付け回答書第5ページ第10ないし13行)とした上で,冷却水遮蔽体11aは,内部側Aから7mmの位置にある廃板基準位置Cよりも外部側Bにあって,イ号物件は以下のとおりであると主張している。
「a.鋳型基体1zの少なくとも鋳型長辺15zの長辺側下端面5zの、
b.鋳型の廃板基準位置Cよりも鋳型の外部側に、
c.冷却水遮蔽体11aを具備している
d.連続鋳造用鋳型Rz。」

イ しかしながら,被請求人が平成29年2月16日付け答弁書の6-2-2)で指摘しているように,本件特許における冷却水遮蔽体は前面(鋳片側)を有するものである。
そして,上記第3(3)エでも指摘したとおり,鋳型基体の下端から突出する部分の全体が本件特許発明における冷却水遮蔽体であると解されるところ,請求人の主張するようにイ号物件において突出部11zのうちの垂直面17zを含む内部側を補強部11bとして,本件特許発明の冷却水遮蔽体とは異なる解釈をしなければならない理由は存在しない。
加えて,補強部11bの存在によって鋳片7と突出部11zとの間隔が狭くなることから,補強部11bの存在によって突出部11zの内部側へ巻き込まれる冷却水を減少させる効果があることも明らかであって,補強部11bが冷却水遮蔽機能を有さないとする主張は採用できない。
よって,イ号物件は,(1)のとおりであると認定することとし,これと相容れない範囲で,請求人の主張を採用しない。

第5 本件特許発明の各構成要件の充足について
(1)構成要件A,C,Dについて
イ号物件の構成a,c,dは,本件特許発明の構成要件A,C,Dを充足すると認められる。

(2)構成要件Bについて
イ号物件の構成bにおける「鋳型の廃板基準位置(C)」は内部側から7mmの位置にあり,イ号物件の構成cにおける「垂直面(17z)」は内部側から5.46mmの位置にあることから,イ号物件の構成bにおける「鋳型の廃板基準位置(C)」は,イ号物件の構成cにおける「垂直面(17z)」よりも外側にあることは明らかである。
そして,イ号物件の構成cにおける「垂直面(17z)」は,イ号物件の構成cにおける「突出部(11z)」の一部であって,イ号物件の構成cの「突出部(11z)」は構成要件Cの「冷却水遮蔽体」に相当するものである。
そうすると,イ号物件は,「鋳型の廃板基準位置(C)」よりも鋳型の外部側に「冷却水遮蔽体」の全体がある,とは認められない。
したがって,イ号物件の構成bは,本件特許発明の構成要件Bを充足するとは認められない。

第6 むすび
以上のとおり,イ号物件は,本件特許発明の構成要件Bを充足しないから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。

よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2017-03-16 
出願番号 特願2003-342848(P2003-342848)
審決分類 P 1 2・ 2- ZB (B22D)
P 1 2・ 04- ZB (B22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 登  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 長清 吉範
平岩 正一
登録日 2005-05-13 
登録番号 特許第3674786号(P3674786)
発明の名称 連続鋳造用鋳型  
代理人 中前 富士男  
代理人 倉田 政彦  
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