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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部無効 判示事項別分類コード:857  H01L
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1326153
審判番号 無効2015-800121  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-04-30 
確定日 2017-01-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5014151号発明「チップ実装装置およびチップ実装方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第5014151号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,請求項2,請求項〔3-5〕,請求項6,請求項7,請求項8について訂正することを認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5014151号(以下「本件特許」という。)に係る出願は,平成18年11月30日(優先権主張:平成17年12月6日,優先権主張の基礎となる出願:特願2005-352270号)を国際出願日とする出願であって,本件特許の請求項1ないし8に係る発明についての手続の経緯は,以下のとおりである。
平成24年 5月22日 特許査定
平成24年 6月15日 特許の設定登録
平成27年 4月30日 無効審判請求(請求人)
平成27年 7月28日 答弁書提出(被請求人)
〃 訂正請求書提出(被請求人)
平成27年 9月14日 弁駁書提出(請求人)
平成27年12月 3日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
〃 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成27年12月17日 口頭審理
平成27年12月25日 上申書提出(被請求人)
平成28年 1月27日 上申書提出(請求人)
平成28年 2月 8日 無効理由通知・職権審理結果通知
平成28年 3月11日 意見書提出(被請求人)
〃 訂正請求書提出(被請求人)
平成28年 4月15日 手続補正書(訂正請求書)提出(被請求人)
平成28年 4月26日 訂正拒絶理由通知
平成28年 4月27日 職権審理結果通知
平成28年 5月19日 意見書提出(被請求人)
平成28年 6月 6日 意見書提出(請求人)
平成28年 7月 5日 審決の予告
平成28年 9月 9日 訂正請求書提出(被請求人)
平成28年 9月30日 訂正拒絶理由通知・職権審理結果通知
平成28年10月26日 意見書提出(被請求人)
平成28年11月 4日 上申書提出(請求人)

第2 当事者の主張及び無効理由通知の概要

1 請求人の主張
(1)無効理由1
特許第5014151号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明(以下,本件特許の特許請求の範囲の各請求項記載の発明を,請求項1ないし8の区分に応じて「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」といい,これらを併せて「本件特許発明」という。)は,甲第1号証に記載された発明であり,本件特許1及び2は,特許法第29条1項3号の規定に違反して特許されたものである。また,仮に本件特許発明1及び2と甲第1号証に記載された発明との間に相違点があるとしても,かかる相違点は,甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明1及び2は同法第29条2項の規定に違反して特許されたものである。したがって,その特許は同法第123条1項2号により無効とされるべきものである。

(2)無効理由2
本件特許発明3,5,6及び7は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許3,5,6及び7は特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものであり,その特許は同法第123条1項2号により無効とされるべきものである。

(3)無効理由3
本件特許発明4及び8は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,並びに,周知技術乃至技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許4及び8は特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものであり,その特許は同法第123条1項2号により無効とされるべきものである。

2 各甲号証
請求人の提出した各甲号証は,次のとおりである。
甲第1号証:特開2000-353725号公報
甲第2号証:特開2003-179100号公報
甲第3号証:特開平7-115109号公報
甲第4号証:特開平10-178071号公報
甲第5号証:特開平11-135563号公報
甲第6号証:特開平5-109840号公報
甲第7号証:特開昭61-289964号公報

3 被請求人の主張
本件特許発明は甲第1号証に記載された発明には当たらず,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて当業者が容易に想到し得る発明ではないから,本件特許に無効理由は存在しない。

4 無効理由通知
平成28年2月8日付け無効理由通知(以下,単に「無効理由通知」という。)の内容は,次のとおりである。
本件特許発明1及び3ないし6は,引用文献1記載の発明,引用文献2記載の発明,並びに引用文献3及び4にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものであるから,特許法第123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。

5 各引用文献
無効理由通知で引用された各引用文献は,次のとおりである。
引用文献1:特開2000-353725号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開平5-109840号公報(甲第6号証)
引用文献3:特開平7-115109号公報(甲第3号証)
引用文献4:特開平10-178071号公報(甲第4号証)


第3 訂正の適否

1 訂正の内容
本件審判の手続において,被請求人より平成28年9月9日付けで提出された訂正請求で,特許権者が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。(当審注.訂正箇所に下線を付した。)
(1)一群の請求項1及び2に係る訂正
本件訂正のうち,請求項1及び2からなる一群の請求項についての訂正事項1ないし4は,次のとおりである。
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する」とあるのを「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」に訂正する。
・訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えている,請求項1に記載のチップ実装装置」と記載されているのを,「チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において,前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段を備えたチップ実装装置であって,前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えていることを特徴とするチップ実装装置」に訂正する。
・訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0007】に「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する」と記載されているのを,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」に訂正する。
・訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0009】に「上記本発明に係るチップ実装装置においては,前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えていることが好ましい。」と記載されているのを,
「上記課題を解決するために,本発明に係る他のチップ実装装置は,チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において,前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段を備えたチップ実装装置であって,前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えていることを特徴とするものからなる。」に訂正する。

(2)一群の請求項3ないし8に係る訂正
本件訂正のうち,請求項3ないし8からなる一群の請求項についての訂正事項5ないし12は,次のとおりである。
・訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,」と記載されているのを,「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する)。
・訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させる,請求項3に記載のチップ実装方法。」と記載されているのを,「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させることを特徴とするチップ実装方法。」に訂正する。
・訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める,請求項6に記載のチップ実装方法」と記載されているのを,「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において,予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求めることを特徴とするチップ実装方法」に訂正する。
・訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる,請求項6に記載のチップ実装方法」と記載されているのを,「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において,ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させることを特徴とするチップ実装方法」
・訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0010】に「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,」と記載されているのを,「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,」に訂正する。
・訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0014】に「また,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるようにすることもできる。」と記載されているのを,「上記課題を解決するために,本発明に係る他のチップ実装方法は,基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させることを特徴とする方法からなる。」に訂正する。
・訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0015】に「また,予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求めるようにすることもできる。」と記載されているのを,「上記課題を解決するために,本発明に係る他のチップ実装方法は,基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において,予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求めることを特徴とする方法からなる。」に訂正する。
・訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0016】に「また,ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,この計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させるようにすることもできる。」と記載されているのを,「上記課題を解決するために,本発明に係る他のチップ実装方法は,基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において,ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させることを特徴とする方法からなる。」に訂正する。

2 新規事項の有無,拡張・変更の存否,訂正の目的の適否,及び一群の請求項
(1)一群の請求項1及び2に係る訂正
ア 訂正事項1について
(ア)新規事項の有無について
a 本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)には,以下の記載がある。(当審注.下線は当審で付したものである。)
・「【0020】
以下,図面を参照して本発明の実施例について説明する。
実施例1
・・・
【0021】
ツールホルダ支持手段15は,スライダー8に装着されているツールホルダブラケット16に装着されている。また,ツールホルダ17は,上下動可能にツールホルダ支持手段15の内部に装着されている。ツール2はヒータを備え,このツール2がツールホルダ17の下端に装着されて,両者が一体となっている。ツール2にはチップ吸着孔24が備えられており,チップ1を保持している。・・・
・・・
【0024】
本実施例においては,ツールホルダ17の上端位置を検出してZ軸送り装置3の駆動制御手段22に位置情報を与えるツールホルダ位置検出手段23(例えば,渦電流式センサ等)をツールホルダ支持手段15に装着している。ツールホルダ位置検出手段23は,本発明装置におけるツールホルダ位置検出手段に相当する。・・・
【0025】
上述したようなツールホルダ位置検出手段23を備えているので,Z軸送り装置が下降中にチップ1の半田からなるバンプ1aが基板5の電極5aに押しつけられた時,ツールホルダ17が押し上げられて浮上する(つまり,ツールホルダ支持手段15に対して相対的に上昇変移する)距離を検出できる。・・・
【0026】
以下,実施例1の装置の動作について説明する。
図2から図9に,チップ1の実装におけるツールホルダ支持手段15及びツールホルダ17の一連の昇降(上下動)制御態様が示されている。また,図10に,ツールホルダ支持手段15の高さ位置,ツールホルダ17の位置,ツール2のヒータの通電およびバンプ1aに掛かる荷重のそれぞれのタイミングが示されている。・・・
・・・
【0028】
次いで,Z軸送り装置3が作動することにより,ツールホルダ支持手段15が,チップ1を保持したツール2と一体となって下降する。図3は,ツールホルダ支持手段15の下降途中で,チップ1のバンプ1aが基板5の電極5aに接触した状態を示している(図10のタイミングt1)。このときのツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離をX0とする。X0は,本発明における第1の位置に相当する。また,このとき,チップ1のバンプ1aにかかる圧力を所定の圧力とするためにバランス圧ポート20の圧力P2を増圧或いは減圧させる。この場合加圧ポート19の圧力P1を増圧或いは減圧させてもよい。このように,ツールホルダ17が静圧空気軸受18で支持されるとともに,加圧ポート19の圧力P1とバランス圧ポート20の圧力P2の差圧により圧力が一定となっているので,このときにチップ1のバンプ1aに作用する荷重(加圧力)は所定値に保たれ,バンプ1aは殆ど変形しない。
・・・
【0030】
次いで,図5に示すように,Z軸送り装置3の送り量が予め設定した値d1(バンプ1aの押し込み量)になるとZ軸送り装置3を停止する(図10のタイミングt2)。そして,ツールホルダ位置検出手段23がツールホルダ17の位置を検出する(図5のX1で示す距離)。X1は,本発明における第2の位置に相当する。なお,図4の状態においては,バンプ高さのバラツキや基板の反り等の為に,基板5の電極5aに対して全てのバンプ1aが接触しておらず,その一部が接触しているにすぎない。そのため,チップ1のバンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接してからバンプ1aの押し込み量d1だけ押し込んだとき,Z軸送り装置3による送りが停止される。次に,ツール2のヒータに通電してチップ1のバンプ1aを半田融点以上の温度に加熱する。
【0031】
次いで,図6に示すように,ツール2の加熱にともない,ツール2が熱膨張しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX2となる。X2は,本発明における第3の位置に相当する。その際において,ツールホルダ17の自重を打ち消して数g(例えば1gから20g程度)の微小な加圧力で制御されているためにバンプ形状を損なわない。つまり,チップ1のバンプ1aが溶融する時にチップ1の荷重(加圧力)がバンプ1aのバンプ内部圧力(浮力)よりも低い圧力で加圧するようにできるので,半田の表層がチップ1の荷重(加圧力)で破壊されることがなく,バンプクラッシュを発生することがなくなる。
【0032】
その後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める(図10のタイミングt3)。バンプ1aがツール2で加熱されて溶融が進むと,バンプ形状に歪みが発生しツールホルダ17がツール2と一体に下方に移動する。その際,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離が前記X2から,さらに下方に移動したことを検出する。その検出値が所定値(図10のX3)になると,図7に示すように,バンプ1aが溶融したと判断している(図10のタイミングt4)。X3は,本発明における第4の位置に相当する。
【0033】
次いで,Z軸送り装置3による上方向への送りが開始されて,ツールホルダ位置検出手段23がX0を検出する。図8は,ツールホルダ17に対してツールホルダ支持手段15が最大に上昇された状態が示している(図10のタイミングt5)。ツールホルダ支持手段15の高さは,ツールホルダ支持手段15が図10のタイミングt1の時点の高さに比べ,ツール2の熱膨張によるZ軸方向の伸びH1から,t2のタイミングにおけるバンプ押し潰し量L1と,t4のタイミングにおけるバンプ溶融時の沈み込み量L2を引いた分だけ上方又は下方になるように駆動制御手段22によって制御されている(図10のd2。ツールホルダ17の引き上げ量)。この状態において,ツールホルダ支持手段15の内部のツールホルダ17の下端はツールホルダ支持手段15に接触しており,チップ1と基板5のギャップは,バンプ1aの高さと電極5aの高さを足した高さからバンプ押し潰し量L1とバンプ溶融時の沈み込み量L2を引いた高さだけとなり,ヒーターの熱膨張はキャンセルすることができる。
【0034】
次いで,チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われる(d3の値はバンプ1aの押し込み量d1と,ツールホルダ位置検出手段23により測定された各測定値と,後述するハンダバンプ高さの設定値G1と,ギャップ高さ設定値G2とにより計算される)。次いで,チップ1の吸着をOFFしてチップ吸着の真空圧を大気圧に戻すとともにツール2のヒーターへの通電がOFFする。次いで,Z軸送り装置3による送りが停止された状態で,ツール2に保持されたチップ1のバンプ1aが冷却される(図10のタイミングt6)。
【0035】
次いで,図9に示すように,Z軸送り装置3による上方向への送りが続行されると,ツールホルダ17が上昇する(図10のタイミングt7)。」
・「【0037】
次に,図10と図11を用いて駆動制御手段22の処理する制御パラメータについて説明する。
【0038】
図11に,チップ1と基板5の接合状態が示されている。図11において(A)に示す図は,図10のタイミングt1におけるチップ1と基板5の状態を示している。チップ1と基板5の接触時のギャップは制御パラメータG1(ハンダバンプ高さの設定値)として駆動制御手段22で処理されている。
【0039】
図11において(B)に示す図は,図10のタイミングt2におけるチップ1と基板5の状態を示している。チップ1の押し込み量は制御パラメータL1として駆動制御手段22で処理されている。L1は図10のバンプ1aの押し込み量d1,第1の位置X0,第2の位置X1からL1=d1-(X0-X1)の計算式で求められる。L1はチップ1のバンプ1aに作用する荷重(加圧力)の分だけ押し込まれることになる。
【0040】
図11において(C)に示す図は,図10のタイミングt5におけるチップ1と基板5の状態を示している。バンプ1aの溶融時の沈み込み量はパラメータL2として駆動制御手段22で処理されている。L2は図10の第3の位置X2,第4の位置X3からL2=X3-X2の計算式で求められる。また,ヒータの熱膨張によるZ軸方向の伸びをH1とすると,H1=X1-X2の計算式で求められる。図10において,バンプ1aの押し込み量d1とツールホルダ17の引き上げ量d2は,d1+d2=X0-X3の関係となっている。従って,ツールホルダの引き上げ量d2は,d2=H1-(L1+L2)となるように駆動制御手段22で計算されZ軸送り制御装置3を制御している。
【0041】
図11において(D)に示す図は,図10のタイミングt6におけるチップ1と基板5のバンプ1aの冷却時の状態を示している。チップ1と基板5のバンプ1aの冷却後のギャップは制御パラメータG2(ギャップ高さ設定値)として駆動制御手段22で処理されている。図11の(A)と(D)より,チップ沈み込み量L3は,L3=G1-G2の関係がある。また,Z軸送り装置3への指令値d3は,L3=L1+L2-d3の関係がある。この関係にL1=d1-(X0-X1)および,L2=X3-X2を代入すると,L3=d1-(X0-X1+X2-X3)-d3となる。従って,Z軸送り装置3への指令値d3は,d3=d1-(X0-X1+X2-X3)-(G1-G2)になるように制御されている。
【0042】
例えば,G1を30μm,G2を23μmに設定し,指令値d1を10μmで行ったところ,X0が2000μm,X1が1995μm,X2が1985μm,X3が1989μmで測定されると,指令値d3は2μmとなるように駆動制御手段22で処理されZ軸送り装置3へ指令される。G2の設定条件によっては,d3の値がd2よりも小さい値となる場合がある。この場合,チップ1に作用する荷重(加圧力)を保ちながらバンプ1aの冷却を行うことができる。また,d3の値がd2の値よりも大きい場合は,チップ1に作用する荷重(加圧力)がゼロの状態でバンプ1aの冷却を行うことができる。
【0043】
以上のように,予めチップ1と基板5を実装する際,接触時のギャップG1と冷却時のギャップG2とバンプ1aの押し込み量d1を設定し,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離の測定値X0,X1,X2,X3を測定することにより,冷却時のZ軸送り装置への指令値d3を求めることができ,事前に試行してギャップ量を決定する手間が省けて,バンプ1aの特性に合わせて,短時間で人手によるミスのない信頼性の高い条件設定を行うことができる。」
・「【0062】
また,実施例1および実施例2では,ヒータはツール2に備えられているが,基板保持ステージ4に備えてもよい。チップ1と基板5を効率よく加熱できる構成であればよく,加熱に伴うツール2の熱膨張によるZ軸方向の伸びはツールホルダ位置検出手段23で検出することができる。さらに,ツール2側および基板保持ステージ4側の両方にヒータを備えてもよい。これにより,チップ1と基板5の加温を短時間にでき,更にセラミックヒータを用いたパルスヒータで加熱を行うと応答性のよい昇温が可能となる。」
・図10には,タイミングt1でチップ1のバンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接したときのツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離をX0とし,チップ1のバンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接してからバンプ1aの押し込み量d1だけ押し込んで,タイミングt2でZ軸送り装置3によるツールホルダ支持手段15の下方向への送りが停止され,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX1となり,次いで,ツール2のヒータに通電してチップ1のバンプ1aを半田融点以上の温度に加熱することにともない,ツール2が熱膨張しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX2となり,その後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めるタイミングt3から,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融が進むと,バンプ形状に歪みが発生しツールホルダ17がツール2と一体に下方に移動し,タイミングt4でツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離が所定値X3になると,Z軸送り装置3によるツールホルダ支持手段15の上方向への送りが開始され,ツールホルダ17に対してツールホルダ支持手段15が最大に上昇されたタイミングt5までの間,バンプ1aに掛かる荷重が一定であることが記載されている。
b 訂正事項1による訂正が,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものか否かを検討するにあたり,まず,訂正事項1による訂正後の本件特許の請求項1における「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」との記載の意味について検討する。
訂正事項1による訂正前の本件特許の請求項1は,「チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において,前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段を備えたことを特徴とするチップ実装装置。」というものである。(当審注.下線は当審で付したものである。)
そして,上記aによれば,本件特許明細書等には,本件特許に係る発明における「ツールホルダ」の位置の検出について,「ツールホルダ17の上端位置を検出してZ軸送り装置3の駆動制御手段22に位置情報を与えるツールホルダ位置検出手段23(例えば,渦電流式センサ等)をツールホルダ支持手段15に装着している。ツールホルダ位置検出手段23は,本発明装置におけるツールホルダ位置検出手段に相当する。」(【0024】),及び「上述したようなツールホルダ位置検出手段23を備えているので,Z軸送り装置が下降中にチップ1の半田からなるバンプ1aが基板5の電極5aに押しつけられた時,ツールホルダ17が押し上げられて浮上する(つまり,ツールホルダ支持手段15に対して相対的に上昇変移する)距離を検出できる。」(【0025】)と記載されている。(当審注.下線は当審で付したものである。)
また,訂正事項1による訂正前の本件特許の請求項1の記載,及び本件特許明細書等の記載より,本件特許に係る発明において,「ツールホルダの位置」として,「ツールホルダ位置検出手段」により検出される「ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置」のほかに該当するものは認められない。
してみれば,訂正事項1による訂正前の本件特許の請求項1において,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,」なる記載の「前記ツールホルダの位置」は,同請求項における「前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段」なる記載の「前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置」と同一と解するのが相当と認められる。
そして,訂正事項1による訂正後の本件特許の請求項1において,「前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」との記載は,「前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し」との記載の内容を具体化したものと認められる。
そうすると,訂正事項1による訂正後の本件特許の請求項1に記載された,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」ことは,ツールとチップとが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段により検出した,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,ツールが加熱により熱膨張したときの上記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならばバンプが溶融したと判断し,その後,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御して,ツールの高さとチップに与える加圧力とを制御することと解される。
c 次に,本件特許明細書等に記載された事項について検討する。
(a)上記aより,本件特許明細書等には,基板5の電極5aに対して,チップ1の全てのバンプ1aが接触しているとき,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離に基づいて,当該距離が所定値X3になるとバンプ1aが溶融したと判断し,次いで,Z軸送り装置3による上方向への送りが開始されて,ツールホルダ支持手段15,及びツールホルダ17を上昇し,バンプ1aに掛かる荷重を一定にすることが記載されていると認められる。
そして,上記aの本件特許明細書等における「ツールホルダ17は,上下動可能にツールホルダ支持手段15の内部に装着されている。」(【0021】)との記載,「ツールホルダ17の上端位置を検出してZ軸送り装置3の駆動制御手段22に位置情報を与えるツールホルダ位置検出手段23(例えば,渦電流式センサ等)をツールホルダ支持手段15に装着している。」(【0024】)との記載より,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17との距離を検出することは,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置を検出することといえる。
してみれば,本件特許明細書等には,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,当該ツールホルダ17の相対的な位置が所定値に到達したならばバンプ1aが溶融したと判断し,その後,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御することが記載されていると認められる。
また,上記aによれば,本件特許明細書等には,「ツール2の加熱にともない,ツール2が熱膨張しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX2となる。」(【0031】),及び「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める(図10のタイミングt3)。・・・その際,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離が前記X2から,さらに下方に移動したことを検出する。その検出値が所定値(図10のX3)になると,図7に示すように,バンプ1aが溶融したと判断している(図10のタイミングt4)。」(【0032】)と記載されているから,本件特許明細書等には,ツール2の加熱にともない,ツール2が熱膨張したときのツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17との距離を検出し,そのときの両者の距離がX2となること,及びさらに,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始め,ツールホルダ17が下方に移動したときのツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17との距離を検出し,両者の距離が所定値X3になると,バンプ1aが溶融したと判断することが記載されていると認められる。
そうすると,本件特許明細書等に記載されていると認められる上記の「当該ツールホルダ17の相対的な位置が所定値に到達したならばバンプ1aが溶融したと判断し,」において,「当該ツールホルダ17の相対的な位置」は,ツール2の加熱後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めツールホルダ17が下方に移動する前から検出されている,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置,すなわちツール2が加熱により熱膨張したときのツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置ということができる。
以上から,本件特許明細書等には,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,ツール2が加熱により熱膨張したときの上記ツールホルダ17の相対的な位置が所定値に到達したならばバンプ1aが溶融したと判断し,その後,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御することが記載されていると認められる。
(b)上記aによれば,本件特許明細書等には,「チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われる(d3の値はバンプ1aの押し込み量d1と,ツールホルダ位置検出手段23により測定された各測定値と,後述するハンダバンプ高さの設定値G1と,ギャップ高さ設定値G2とにより計算される)」との記載(【0034】),及び「駆動制御手段22」が「接触時のギャップG1と冷却時のギャップG2とバンプ1aの押し込み量d1を設定し,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離の測定値X0,X1,X2,X3を測定することにより,冷却時のZ軸送り装置への指令値d3を求める」旨の記載(【0037】ないし【0043】)があり,そして,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われることで,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御していると認められる。
さらに,上記aより,バンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接したときのツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離をX0とし,チップ1のバンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接してからバンプ1aの押し込み量d1だけ押し込んで,Z軸送り装置3によるツールホルダ支持手段15の下方向への送りが停止され,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX1となり,次いで,ツール2のヒータに通電してチップ1のバンプ1aを半田融点以上の温度に加熱することにともない,ツール2が熱膨張しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX2となり,その後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融が進むと,バンプ形状に歪みが発生しツールホルダ17がツール2と一体に下方に移動しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離が所定値X3になると,Z軸送り装置3によるツールホルダ支持手段15の上方向への送りが開始される(【0026】ないし【0032】,図10)から,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離の測定値X0,X1,X2,X3は,いずれも,ツールとチップが重なって基板に接触しているときのツールホルダの位置と認められる。
そうすると,上記aより,本件特許明細書等には,ツールとチップが重なって基板に接触しているときのツールホルダの位置である,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離の測定値X0,X1,X2,X3に基づいて,チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われることが記載されていると認められ,言い換えれば,本件特許明細書等には,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われて,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御することが記載されていると認められる。
(c)上記(a)及び(b)より,本件特許明細書等には,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,ツール2が加熱により熱膨張したときの上記ツールホルダ17の相対的な位置が所定値に到達したならばバンプ1aが溶融したと判断し,その後,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われて,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御することが記載されていると認められる。
d 上記bのとおり,訂正事項1による訂正後の本件特許の請求項1に記載された,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」ことは,ツールとチップとが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段により検出した,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,ツールが加熱により熱膨張したときの上記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならばバンプが溶融したと判断し,その後,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御して,ツールの高さとチップに与える加圧力とを制御することと解される。
そして,上記cのとおり,本件特許明細書等には,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,ツール2が加熱により熱膨張したときの上記ツールホルダ17の相対的な位置が所定値に到達したならばバンプ1aが溶融したと判断し,その後,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように,Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され,Z軸送り装置3による送りが行われて,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御することが記載されていると認められる。
そうすると,訂正事項1による訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものということができる。
(イ)訂正の目的の適否,及び拡張・変更の存否について
a 本件特許の請求項1における「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する」との記載を,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」とする,訂正事項1による訂正は,「駆動制御手段」における「ツールの高さ」及び「加圧力」の制御について,当該制御の基礎となる「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置」の内容と,上記制御の具体的内容とを限定し,「駆動制御手段」による制御の内容を限定することを目的としたもので,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。
b 本件訂正前の本件特許明細書の記載によれば,訂正事項1による訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は,「プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装するチップ実装装置」に関するもので(【0001】),「プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装するチップ実装において,隣接する半田バンプ間でのショート不良の発生を防止でき,接合後のチップと基板の間隔を所定の一定間隔とすることができる,歩留まりおよび信頼性の高いチップ実装装置・・・を提供する」ことを課題とする(【0006】)ところ,本件訂正後の本件特許明細書の記載(【0001】及び【0006】)より,訂正事項1による訂正の前後で,請求項1に係る発明のカテゴリー及び解決しようとする課題に変更があるとはいえない。
そして,上記aのとおり,訂正事項1による訂正は,本件特許の請求項1に係る発明における「駆動制御手段」による制御の内容を限定することを目的としたものと認められることから,訂正事項1による訂正の前後で,本件特許の請求項1に係る発明の課題解決手段に拡張又は変更があるともいえない。
そうすると,訂正事項1による訂正は,実質上特許請求の範囲の記載を拡張し又は変更するものとはいえない。
(ウ)請求人の主張について
請求人は,訂正事項1の「前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,」における「所定値」の内容が明らかではないから,訂正事項1の構成要件は不明確である(平成28年6月6日付け意見書3ないし4頁)と主張する。
しかし,請求人の上記の主張は採用できない。その理由は,以下のとおりである。
当該技術分野における技術常識や本件特許明細書等の記載(【0031】及び【0032】)に照らせば,本件特許に係る発明において,ツールのヒータに通電してチップのバンプを半田融点以上の温度に加熱した際に,ツールの熱膨張による伸びは,バンプがツールで加熱されて溶融し始める前に発生すると認められるから,訂正事項1における「前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置」は,ツールのヒータに通電してチップのバンプを半田融点以上の温度に加熱した後,バンプがツールで加熱されて溶融し始めツールホルダが下方に移動する前から,ツールホルダ位置検出手段によって検出されるものと認められる。
そして,訂正事項1における「前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断」することは,ツールのヒータに通電してチップのバンプを半田融点以上の温度に加熱した後,バンプがツールで加熱されて溶融し始めツールホルダが下方に移動する前から,ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの相対的な位置が,バンプがツールで加熱されて溶融し始めてツールホルダが下方に移動することで,所定値(すなわち,本件特許公報の図7の距離X3(第4の位置))に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断するものと解することができる。
そうすると,訂正事項1の構成要件は明確ということができる。
(エ)小括
以上から,訂正事項1による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお,本件において,請求項1は,無効審判の請求の対象とされているので,訂正後の請求項1に係る発明について,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
イ 訂正事項2について
(ア)新規事項の有無について
上記ア(ア)bより,訂正事項2による訂正後の本件特許の請求項2に記載された,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する」(当審注.訂正箇所に下線を付した。)ことは,ツールとチップとが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段により検出した,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,当該ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならばバンプが溶融したと判断し,その後,ツールの高さとチップに与える加圧力とを制御することと解される。
そして,上記ア(ア)c(a)より,本件特許明細書等には,ツール2とチップ1とが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段23により検出した,ツールホルダ支持手段15に対するツールホルダ17の相対的な位置に基づいて,当該ツールホルダ17の相対的な位置が所定値に到達したならばバンプ1aが溶融したと判断し,その後,ツール2の高さとチップ1に与える加圧力とを制御することが記載されていると認められる。
そうすると,訂正後の本件特許の請求項2に記載された上記の事項は,本件特許明細書等に記載されていると認められる。
以上から,訂正事項2による訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものということができる。
(イ)訂正の目的の適否,及び拡張・変更の存否について
a 訂正事項2による訂正は,請求項1の記載を引用する請求項の記載を請求項1の記載を引用しないものとすることを目的としたものと認められ,また,訂正事項2による訂正は,「駆動制御手段」による「ツールの高さ」及び「加圧力」の制御の基礎となる,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置」の内容を限定することを目的としたもので,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。
b 上記ア(イ)bと同様の理由により,訂正事項2による訂正の前後で,請求項2に係る発明のカテゴリー及び解決しようとする課題に変更があるということはできず,また,上記aのとおり,訂正事項2による訂正は,本件特許の請求項2に係る発明について,「駆動制御手段」による「ツールの高さ」及び「加圧力」の制御の基礎となる,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置」の内容を限定することを目的としたものと認められるから,訂正事項2による訂正の前後で,本件特許の請求項2に係る発明の課題解決手段に拡張又は変更があるともいえない。
そうすると,訂正事項2による訂正は,実質上特許請求の範囲の記載を拡張し又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
以上から,訂正事項2による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお,本件において,請求項2は,無効審判の請求の対象とされているので,訂正後の請求項2に係る発明について,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は,訂正事項1による訂正に伴い,本件特許の明細書の対応する記載を訂正したものであって,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
以上から,上記アより,訂正事項3による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は,訂正事項2による訂正に伴い,本件特許の明細書の対応する記載を訂正したものであって,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
以上から,上記イより,訂正事項4による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
オ 一群の請求項について
訂正事項1ないし4による訂正は,一群の請求項1及び2に係るものであるから,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
カ 小括
以上から,本件訂正における一群の請求項1及び2に係る訂正(訂正事項1ないし4)は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

(2)一群の請求項3ないし8に係る訂正
ア 訂正事項5について
(ア)新規事項の有無について
a はじめに,訂正事項5による訂正後の本件特許の請求項3,並びに請求項3を引用する本件特許の請求項4及び5における,「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,」(当審注.訂正箇所に下線を付した。)との発明特定事項が本件特許明細書等に記載されているか否かについて検討する。
上記(1)ア(ア)aによれば,本件特許明細書等には,「ツール2のヒータに通電してチップ1のバンプ1aを半田融点以上の温度に加熱する」(【0030】)こと,「次いで,図6に示すように,ツール2の加熱にともない,ツール2が熱膨張しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX2となる」(【0031】)こと,及び「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める(図10のタイミングt3)。・・・その際,ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離が前記X2から,さらに下方に移動したことを検出する。その検出値が所定値(図10のX3)になると,図7に示すように,バンプ1aが溶融したと判断している」(【0032】)ことが記載されている。
そして,上記(1)ア(ア)aによれば,本件特許明細書等には, 「ヒータの熱膨張によるZ軸方向の伸びをH1とすると,H1=X1-X2の計算式で求められる」(【0040】)ことが記載され,また,「加熱に伴うツール2の熱膨張によるZ軸方向の伸びはツールホルダ位置検出手段23で検出することができる」(【0062】)ことも記載されている。
そうすると,本件特許明細書等における上記の記載より,訂正事項5による訂正後の本件特許の請求項3における上記の発明特定事項は,本件特許明細書等に記載されていると認められる。
b 次に,訂正事項5による訂正後の本件特許の請求項3,並びに請求項3を引用する本件特許の請求項4及び5における,「前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,」(当審注.訂正箇所に下線を付した。)との発明特定事項が本件特許明細書等に記載されているか否かについて検討すると,上記(1)上記ア(ア)c(b)のとおり,本件特許明細書等の記載(【0037】ないし【0043】,【0026】ないし【0032】,図10)より,本件特許明細書等における上記の記載より,訂正事項5による訂正後の本件特許の請求項3における上記の発明特定事項は,本件特許明細書等に記載されていると認められる。
c 以上から,訂正事項5による訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものということができる。
(イ)訂正の目的の適否,及び拡張・変更の存否について
a 本件特許の請求項3,並びに請求項3を引用する本件特許の請求項4及び5における「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」との記載を,「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」(当審注.訂正箇所に下線を付した。)とする,訂正事項5による訂正は,「ツールホルダ位置検出手段」による検出対象,及び「ツールホルダ支持手段を上昇させる」ための制御の内容を限定したもので,特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。
b 本件訂正前の本件特許明細書の記載によれば,訂正事項5による訂正前の本件特許の請求項3に係る発明は,「プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装する・・・チップ実装方法」に関するもので(【0001】),「プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装するチップ実装において,隣接する半田バンプ間でのショート不良の発生を防止でき,接合後のチップと基板の間隔を所定の一定間隔とすることができる,歩留まりおよび信頼性の高い・・・チップ実装方法を提供する」ことを課題とする(【0006】)ところ,本件訂正後の本件特許明細書の記載(【0001】及び【0006】)より,訂正事項5による訂正の前後で,請求項3に係る発明のカテゴリー及び解決しようとする課題に変更があるとはいえない。
そして,上記aのとおり,訂正事項5による訂正は,本件特許の請求項3に係る発明における「ツールホルダ位置検出手段」による検出対象,及び「ツールホルダ支持手段を上昇させる」ための制御の内容を限定したものと認められることから,訂正事項5による訂正の前後で,本件特許の請求項3に係る発明の課題解決手段に拡張又は変更があるともいえない。
そうすると,訂正事項5による訂正は,実質上特許請求の範囲の記載を拡張し又は変更するものとはいえない。
(ウ)小括
以上から,訂正事項5による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお,本件において,請求項3ないし5は,いずれも無効審判の請求の対象とされているので,訂正後の請求項3ないし5の各請求項に係る発明について,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
イ 訂正事項6について
訂正事項6は,訂正前の請求項6が訂正前の請求項3を引用する記載であったものを,請求項3を引用しないものとすることを目的としたものと認められる。
そして,訂正事項6による訂正は,訂正前の請求項6に,訂正事項5による訂正後の本件特許の請求項3の記載を発明特定事項として付加したものであるから,上記アより,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり,また,実質上特許請求の範囲の記載を拡張し又は変更するものでもない。
以上から,訂正事項6による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお,本件において,請求項6は,無効審判の請求の対象とされているので,訂正後の請求項6に係る発明について,特許法134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
ウ 訂正事項7について
訂正事項7は,訂正前の請求項7が訂正前の請求項6を引用し,訂正前の請求項6がさらに訂正前の請求項3を引用する記載であったものを,請求項3及び6を引用しないものとすることを目的としたものと認められる。
そして,訂正事項7による訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,また,実質上特許請求の範囲の記載を拡張し又は変更するものでもない。
以上から,訂正事項7による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項8について
訂正事項8は,訂正前の請求項8が訂正前の請求項6を引用し,訂正前の請求項6がさらに訂正前の請求項3を引用する記載であったものを,請求項3及び6を引用しないものとすることを目的としたものと認められる。
そして,訂正事項8による訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり,また,実質上特許請求の範囲の記載を拡張し又は変更するものでもない。
以上から,訂正事項8による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
オ 訂正事項9について
訂正事項9は,訂正事項5による訂正に伴い,本件特許の明細書の対応する記載を訂正したものであって,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
以上から,上記アより,訂正事項9による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
カ 訂正事項10について
訂正事項10は,訂正事項6による訂正に伴い,本件特許の明細書の対応する記載を訂正したものであって,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
以上から,上記イより,訂正事項10による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
キ 訂正事項11について
訂正事項11は,訂正事項7による訂正に伴い,本件特許の明細書の対応する記載を訂正したものであって,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
以上から,上記ウより,訂正事項11による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ク 訂正事項12
訂正事項12は,訂正事項8による訂正に伴い,本件特許の明細書の対応する記載を訂正したものであって,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
以上から,上記エより,訂正事項12による訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ケ 一群の請求項について
訂正事項5ないし12による訂正は,一群の請求項3ないし8に係るものであるから,特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
コ 小括
以上から,一群の請求項3ないし8に係る訂正(訂正事項5ないし12)は,いずれも,特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し,また,同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

(3)むすび
したがって,本件訂正,すなわち,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし8についての訂正(訂正事項1,2,及び5ないし8),並びに本件特許の願書に添付した明細書の段落【0007】,【0009】,【0010】,【0014】ないし【0016】についての訂正(訂正事項3,4,及び9ないし12)を認める。


第4 本件特許発明

前記第3より,本件特許発明1ないし8は,それぞれ,本件訂正により訂正された,特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された,以下のとおりのものと認める。
・本件特許発明1
「【請求項1】
チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において,前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段を備えたことを特徴とするチップ実装装置。」
・本件特許発明2
「【請求項2】
チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において,前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段を備えたチップ実装装置であって,前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えていることを特徴とするチップ実装装置。」
・本件特許発明3
「【請求項3】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法。」
・本件特許発明4
「【請求項4】
前記チップのバンプが溶融した後,前記チップのバンプと前記基板の電極との間に相対的な摩擦を発生させ,該摩擦により半田の表層の酸化膜を破壊して除去する,請求項3に記載のチップ実装方法。」
・本件特許発明5
「【請求項5】
前記チップのバンプが溶融する時の前記チップの加圧力を,流動化した半田の内部の圧力よりも低い圧力として,前記チップのバンプを前記基板上の電極に接合する,請求項3に記載のチップ実装方法。」
・本件特許発明6
「【請求項6】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させることを特徴とするチップ実装方法。」
・本件特許発明7
「【請求項7】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において,予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求めることを特徴とするチップ実装方法。」
・本件特許発明8
「【請求項8】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって,前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し,次いで,前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において,ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させることを特徴とするチップ実装方法。」


第5 各甲号証の記載と引用発明及び周知技術等

1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載内容
請求人により提出された,本件特許に係る出願の優先権主張日(以下「本件特許出願の優先日」という。)前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には,図1ないし14とともに,以下の記載がある。(当審注.下線は当審で付したものである。以下同じ。)
ア 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし,送り機構7が環境温度の影響を受けて熱膨張していると,ツール2が所定高さ位置と異なる位置に位置決めされてしまう為に,目標とする接地後のチップ高さ位置(チップが基板に接触せしめられた後のチップ高さ位置)が得られず,これではバンプの形状を所定に保つことができない。
・・・
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち,本発明に係るチップ実装装置は,請求項1に記載するように,ホルダー支持手段を上下動せしめるZ軸送り装置と,前記ホルダー支持手段に上下動し得るように装着されたツールホルダーと,前記ツールホルダーに装着されたツールとを備えたチップ実装装置において,前記ツールホルダーの高さ位置を検出して前記Z軸送り装置の駆動制御手段にフィードバックする高さ検出手段を前記ホルダー支持手段に装着したことを特徴とするものである。
【0009】また,本発明に係るチップ実装方法は,請求項6に記載するように,基板保持ステージに支持されている基板の上方からチップを保持しているツールを降下させて前記チップを熱圧着するチップ実装方法において,前記基板に接地せしめられた前記チップの接地高さ位置を検出すると共にそれに基づく前記ツールの上昇制御によって前記基板のハンダバンプの形状矯正を行うことを特徴とするものである。」
イ 「【0010】
【発明の実施の形態】図1において,Z軸送り装置3は,上述の従来のそれと略同一に設けられている(図15参照)。従って,これの詳述は省略するが,ホルダー支持手段15は,スライダー8に装着されているホルダーブラッケット16に装着されている。また,ツールホルダー17は,上下動し得るようにホルダー支持手段15に装着されている。また,ツール2は,ツールホルダー17の下端に装着されている。
・・・
【0015】しかし,本発明においては,ホルダー支持手段15に対して,ツールホルダー17の上端位置を検出してZ軸送り装置3の駆動制御手段22(例えば,サーボモータ)にフィードバックする高さ検出手段23(例えば,渦電流式センサ等)を装着している。
【0016】その為,Z軸送り装置3の送り機構7の熱膨張に影響されずにツール2の高さ位置制御を常時,高精度に行うことができ,しかも,基板保持ステージ4に保持されている基板5に対するチップ1の接地時に,ホルダー支持手段15に対してツール2が浮上(相対的に上方へ移動)せしめられたストローク分を高さ検出手段23で測定し,それに基づく制御信号をZ軸送り装置3の駆動制御手段22にフィードバックして所定に駆動制御することができ,従って,送り機構7が熱膨張していても接地高さ位置を正確に検出することができる。
【0017】また,加熱時,チップ1と基板5が熱膨張するが,ツールホルダー17はその分,浮上されている為,チップ1のバンプ潰れよるショートが発生しない。更に,その浮上分を高さ検出手段23で測定してZ軸送りにフィードバックする為,冷却させてハンダを固着させるときに正確な高さ位置制御を行うことができ,従って,良好なバンプ形状に実装することができる。
【0018】すなわち,周知のように,バンプの実装においては,チップ1を基板5に接地せしめた後,ツール2を加熱し,かつ,冷却してハンダを固着させるが,その時,熱膨張によってバンプが押し潰される為,バンプ形状の矯正(チップ1を引き上げての矯正)が余儀なくされている。
【0019】ところが,その引き上げ制御に数μmの精度が要求される為,上述のような従来技術では,送り機構7の熱膨張の影響を受けて,そのような精度が得られなかったが,本発明によると,高精度にチップ高さを制御することができるので,チップ1のバンプを過度に押し潰すことなく良好に実装することができる。」
ウ 「【0020】図2から図13において,バンプの実装におけるホルダー支持手段15及びツールホルダー17の一連の昇降(上下動)制御態様が示されているが,図2においては,実装を開始しようとする状態が示されていると共に図3においては,その時のバンプ1aの形状が示されている。
【0021】次いで,図4においては,チップ1のハンダバンプ1aが基板5のパッドに接地された状態が示されていると共に図5においては,その時のバンプ姿(点接触された姿)が示されている。
【0022】次いで,図示矢印方向への送り機構による送りが続行されてツールホルダー17が浮上,すなわち,ホルダー支持手段15に対してツールホルダー17が離別され始めた状態が示されている。
【0023】次いで,図7においては,高さ検出手段23が設定高さを検出し,ツールホルダー17がホルダー支持手段15と図示Xだけ離別せしめられて送り機構による送りが停止された状態が示されている。なお,この状態においては,バンプ高さのバラツキや基板の反り等の為に,基板5のパッドに対して全てのバンプ1aが接触しておらず,その一部が接触しているにすぎない。
【0024】次いで,図8においては,バランス圧ポート20からのエアー供給が停止される一方において加圧ポート19からのエアー供給が行われてツールホルダー17が下方へ移動せしめられた状態が示されている。なお,その際,少し高めに加圧することにより,全てのバンプ1aを図9において示されているように基板5のパッドに対して面接触せしめることができ,そして,その後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める。
【0025】そこで,図10において示されているように,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われるが,その際において,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御される為にバンプ形状を損わない。
【0026】次いで,図11においては,図示矢印方向への送り機構による送りが開始されて高さ検出手段23が高さゼロを検出,すなわち,ツールホルダー17に対してホルダー支持手段15が最大に上昇せしめられた状態が示されている。
【0027】更に,図12においては,図示矢印方向への送り機構による送りが続行され,従って,チップ1が上方へ移動せしめられて(引き上げられて)バンプ1aの形状が矯正される姿が示されているが,かかる引き上げストロークは必要に応じて適宜に選択され,かつ,その後,送り機構による送りが停止された状態においてバンプ1aが冷却せしめられる。図13においては,その時のバンプ1aの形状が示されている。」
エ 「【0038】また,チップ1に設けられたバンプ1aとは,例えば,ハンダバンプ,スタッドバンプなど,基板5に設けられたパッド(例えば,電極,ダミー電極など)と接合せしめられる方の対象物であると共に基板に設けられたパッドとは,例えば,配線を伴った電極,配線につながっていないダミー電極など,チップ1に設けられているバンプ1a(例えば,ハンダバンプ,スタッドバンプなど)と接合せしめられる方の対象物をいう。
・・・
【0041】また,ツール2は,チップ1を保持し得るものに限定されず,保持し得ないものであってもよい。また,ヒータを備えた所謂,ヒートツールに限定されず,ヒータを備えていないものであってもよく,かつ,チップ1を保持し得るものにおけるその保持手段は,真空吸着保持する為の吸気孔を加圧面(ツール先端面)に開口せしめたもの,或いは,他の形態の保持手段であってもよい。」

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)より,甲第1号証には,下記ア及びイの発明が記載されていると認められる。
ア 「チップ1に加圧力を与えるツール2と,
ツール2が装着されたツールホルダー17と,
加圧ポート19及びバランス圧ポート20を備え,ツールホルダー17を上下動し得るように支持するホルダー支持手段15と,
ホルダー支持手段15を上下動させるZ軸送り装置3と,
ホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置を検出する高さ検出手段23とを備えたチップ実装装置において,
チップ1の全てのバンプ1aを基板5の電極に対して面接触せしめた後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,ホルダー支持手段15の加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし,次いで,Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始されて高さ検出手段23が高さゼロを検出し,更に,送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが続行され,チップ1が上方へ引き上げられてバンプ1aの形状が矯正され,かつ,その後,送り機構7による上方向への送りが停止された状態においてバンプ1aが冷却せしめられる,
チップ実装装置。」(以下「引用発明1A」という。)
イ 「基板保持ステージ4に保持されている基板5の上方から,加圧ポート19及びバランス圧ポート20を備えたホルダー支持手段15により上下動し得るように支持されたツールホルダー17を下降させ,ツールホルダー17に装着されたツール2を介してチップ1に加圧力を与えることにより,チップ1のバンプ1aを基板5上の電極に熱圧着し,接合するチップ実装方法において,
ツール2を下降させてチップ1のバンプ1aを基板5の電極に押圧し,
高さ検出手段23によってツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置を検出し,
ヒータを備えたツール2を加熱することによってチップ1のハンダからなるバンプ1aの溶融を開始させ,
バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし,次いで,Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始されて高さ検出手段23が高さゼロを検出し,更に,送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが続行され,チップ1が上方へ引き上げられてバンプ1aの形状が矯正され,かつ,その後,送り機構7による上方向への送りが停止された状態においてバンプ1aが冷却せしめられる,
チップ実装方法。」(以下「引用発明1B」という。)

2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載内容
請求人により提出された,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証には,図1及び2とともに,以下の記載がある。
ア「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は,電子素子を実装基板にバンプを介して実装してなる電子部品の製造装置および電子部品の製造方法に関し,特にフリップチップ等の電子素子をプリント回路基板等の実装基板上にバンプを介して実装してなる電子部品の製造装置および電子部品の製造方法に関する。」
イ「【0021】図1は,本発明に係る電子部品の製造装置を示す模式図,図2は,本発明に係る電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0022】図1に示すように,電子部品の製造装置1は,例えばICチップ等の電子素子2を実装基板3上に搭載するための搭載するための搭載ノズル5と,実装基板3が載置されて保持されるヒータテーブル6と,ヒータテーブル6に対して搭載ノズル5を近接離間させる図1中矢印a1およびa2方向に移動するためのアクチュエータ7と,電子素子2に対して実装基板3を実装面3aに平行な方向の位置を位置決めするための位置決めステージ8とを備えている。
【0023】また,電子部品の製造装置1は,ヒータテーブル6に対する搭載ノズル5の距離を検出するための距離検出部材11と,実装基板3に対して加圧された電子素子2の加圧荷重を検出するための荷重測定部材12と,荷重測定部材12および距離検出部材11からの信号に基づいてアクチュエータ7および位置決めステージ8を駆動制御する制御部13とを備えている。
・・・
【0031】制御部13は,荷重測定部材12が,電子素子2の半田バンプ4と実装基板3の電極とが接触した後の押圧荷重を検出した際,荷重測定部材12から荷重信号を受け,押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重になるようアクチュエータ7をフィードバック制御する。あらかじめ設定された設定荷重としては,一定荷重の他,時間とともに変化するプロファイル荷重も含まれる。また,制御部13は,電子素子2の半田バンプ4と実装基板3の電極とが接触した後の押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重になるよう制御している状態において,ヒータテーブル6と搭載ノズル5との距離(相対位置)を距離検出部材11によって常時検出する。」
ウ「【0032】次に,本実施形態の電子部品の製造装置1について,実装基板3上に電子素子2を実装するための各工程を,図面を参照して説明する。
【0033】まず,図2に示すように,ステップ51から開始して,搭載ノズル5によって電子素子2を吸着保持する(ステップ52)。一方,実装基板3をヒータテーブル6によって保持する(ステップ53)。次に,位置決めステージ8を二軸方向に移動させて,実装基板3上の電極の位置を電子素子2の半田バンプ4に対向させるように位置決めする(ステップ54)。・・・
【0034】実装基板3に対して電子素子2が位置決めされた後,搭載ノズル5を矢印a1方向に下降させて,電子素子2の半田バンプ4を実装基板3の電極に接触させる(ステップ55)。・・・
【0035】距離検出部材11からの検出信号に基づいて,アクチュエータ7によってヒータテーブル6に対する搭載ノズル5の位置を制御している状態で,電子素子2と実装基板3をそれぞれ加熱する(ステップ56)。しかし,このときヒータテーブル6および搭載ノズル5の熱膨張に伴って,電子素子2と実装基板3との間隔が狭められるため,実装基板3に押圧される電子素子2の押圧荷重が増大し,その結果,電子素子2と実装基板3が衝突してしまうことも起こりうる。
【0036】この問題を回避するために,本発明では,制御部13が,加熱中の電子素子2が実装基板3に押圧される押圧荷重を計測し,この押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重よりも小さい場合には,搭載ノズル5を実装基板3に近接させる矢印a1方向に移動させ,あらかじめ設定された設定荷重よりも大きい場合には,搭載ノズル5を実装基板3から離間させる矢印a2方向に移動させることによって,押圧荷重があらかじめ設定された一定の設定荷重になるように制御する(ステップ57)。なお,例えばシリンダやVCM(Voice Coil Motor)等の加圧機構で電子素子2を実装基板3に押圧することで,押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重になるように制御するように構成されてもよい。この構成の場合には,ヒータテーブル6および搭載ノズル5が熱膨張したときに,搭載ノズル5が上昇され,押圧荷重が設定された設定荷重に保たれる。
【0037】しかしながら,上述したように,押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重になるように制御するだけでは,制御部13は,半田バンプ4の溶融時に押圧荷重が激減したときにおいても,押圧荷重をあらかじめ設定された設定荷重にさせるために搭載ノズル5を実装基板3に近接させる方向に移動させるが,押圧荷重が設定値まで上昇しないため,最終的に,電子素子2が実装基板3に衝突してしまう。
【0038】この問題を回避するために,本発明において,制御部13は,あらかじめ設定された設定荷重になるように制御されている搭載ノズル5の位置を距離検出部材11によって検出し,搭載ノズル5がヒータテーブル6から最も離間された最大上昇位置を記憶する(ステップ59)。そして,制御部13は,最大上昇位置またはその位置近傍から,あらかじめ設定されたバンプ押しつぶし距離以上に搭載ノズル5が実装基板3に近接する方向に移動されたときに,搭載ノズル5の移動を停止させるように制御する(ステップ60)。
【0039】すなわち,制御部13は,電子素子2および実装基板3の加熱中,ヒータテーブル6および搭載ノズル5の熱膨張に応じて,押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重になるよう制御を行いながら,搭載ノズル5が徐々に上昇され(ステップ58),搭載ノズル5が最も上昇された最大上昇位置あるいはその位置近傍を常時更新する(ステップ59)。
【0040】半田バンプ4が融点に達したとき,半田バンプ4は溶融し,押圧荷重が激減する。このとき,制御部13は,押圧荷重を設定値に戻すために搭載ノズル5を実装基板3に近接させる矢印a1方向に移動させるが,制御部13に記憶されている搭載ノズル5の最大上昇位置またはその位置近傍から,あらかじめ設定されているバンプ押しつぶし距離までしか搭載ノズル5を実装基板3側に移動できない。そして,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ矢印a1方向に移動された位置に到達したときに,制御部13は搭載ノズル5の移動を停止させるようアクチュエータ7を制御する(ステップ60)。また,押圧荷重の制御中に,すでに半田バンプ4がつぶされていることもあり,すでにつぶれた距離だけバンプ押しつぶし距離を補正するように構成されてもよい。
【0041】最後に,ステップ61で,搭載ノズル5をあらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ矢印a2方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させて,ステップ62で終了する。」

(2)甲第2号証記載の発明
上記(1)より,甲第2号証には,以下の発明が記載されていると認められる。
「電子素子を実装基板にバンプを介して実装してなる電子部品の製造装置であって,
ICチップ等の電子素子2を実装基板3上に搭載するための搭載するための搭載ノズル5と,実装基板3が載置されて保持されるヒータテーブル6と,ヒータテーブル6に対して搭載ノズル5を近接及び離間させる方向に移動するためのアクチュエータ7と,ヒータテーブル6に対する搭載ノズル5の距離を検出するための距離検出部材11と,実装基板3に対して加圧された電子素子2の加圧荷重を検出するための荷重測定部材12と,荷重測定部材12および距離検出部材11からの信号に基づいてアクチュエータ7を駆動制御する制御部13とを備えた,電子部品の製造装置1において,
搭載ノズル5を下降させて,電子素子2の半田バンプ4を実装基板3の電極に接触させ,電子素子2と実装基板3をそれぞれ加熱し,
制御部13は,加熱中の電子素子2が実装基板3に押圧される押圧荷重を計測し,この押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重よりも小さい場合には,搭載ノズル5を実装基板3に近接させる方向に移動させ,あらかじめ設定された設定荷重よりも大きい場合には,搭載ノズル5を実装基板3から離間させる方向に移動させることによって,押圧荷重があらかじめ設定された一定の設定荷重になるように制御するとともに,搭載ノズル5がヒータテーブル6から最も離間された最大上昇位置またはその位置近傍から,あらかじめ設定されたバンプ押しつぶし距離以上に搭載ノズル5が実装基板3に近接する方向に移動されたときに,搭載ノズル5の移動を停止させるように制御することにより,
半田バンプ4が融点に達したとき,半田バンプ4は溶融し,押圧荷重が激減して,押圧荷重を設定値に戻すために搭載ノズル5を実装基板3に近接させる方向に移動させるが,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぎ,
搭載ノズル5を,あらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ,ヒータテーブル6に対して離間させる方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させること。」

3 甲第3号証及び甲第4号証
(1)甲第3号証及び甲第4号証の記載内容
ア 甲第3号証
請求人により提出された,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証には,図1とともに,以下の記載がある。
「【0015】図1は本発明のフリップチップボンディング装置の概略構成を示す断面図である。
【0016】半導体集積回路を形成したチップ1上のアルミニウムまたは金等でできたパッドメタル2に金属バンプ3を形成し接続用搭載機のボンディングツール6に固定する。同様に,金属パッドメタル5を形成した回路基板4を接続用搭載機のボンディングステージ7に固定する。その後,位置合わせを実施し,加圧装置10で加圧する。接続用搭載機のボンディングツール6およびボンディングステージ7にそれぞれ設けられた加熱・冷却温度プロファイル制御装置11,12および超音波振動装置13,14により接続作業を実施する。この作業を繰り返してマルチチップの実装が完了する。
・・・
【0019】本発明のフリップチップボンディング方法
Pb/Snが37/63wt%と95/5wt%の半田のそれぞれに対して,接続温度プロファイルとして図3と図4に示す加熱・冷却カーブを使用して接続作業を実施する。すなわち,予熱時間を2?3分長くし,溶融時間を15秒程度の短時間実施してから急冷する。これにより低い熱ストレスで結晶粒子を細かくして強い接続強度で信頼性を向上した接続ができる。また,この時図2に示すように金属バンプの酸化物8と基板パッドメタルの酸化物9はボンディングツール6及びボンディングステージ7の超音波振動機能により破壊され,新生面どうしの接続部分(図2にAで示す)が得られる。超音波はボンディングツール6及びボンディングステージ7に超音波出力5ワット,出力振幅1?30マイクロインチと低い値で作用する。その結果100%の良好な接続が得られた。」
イ 甲第4号証
請求人により提出された,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証には,図1ないし3とともに,以下の記載がある。
「【0018】続いて,本第1実施形態のチップボンディング装置の動作について説明する。なお,ここでは回路基板3の導体パターン上にバンプが形成され,このバンプ付きの回路基板3に半導体チップ1を接続する場合について説明する。先ず,図1に示したように,ボンディングツール2の先端部に電極形成面側を下向きにして半導体チップ1を吸着させる一方,ボンディングステージ4上にチップ実装面側を上向きにして回路基板3を吸着させる。次に,サーボモータ10を駆動しつつ,半導体チップ1の電極パッド(不図示)と回路基板3のバンプ(不図示)との位置合わせを行ったのち,サーボモータ7の駆動によりボンディングツール2を下降させて半導体チップ1と回路基板3とを接触させる。
【0019】このとき,先にも述べたとおり回路基板3上にバンプが形成されていることから,このバンプを介して半導体チップ1と回路基板3とが接触し,その接触圧(ボンディング荷重)が所定のレベルに達した時点でボンディングツール2の下降動作が停止し,この状態で半導体チップ1が図示せぬヒータにより所定の温度に加熱される。なお,半導体チップ1を加熱するタイミングは,回路基板3との接触前に設定してもよいが,本出願人による実験では,上述のように接触後に半導体チップ1を加熱した方が良好な結果が得られた。
【0020】この加熱・加圧状態の下で,スクラブ機能部7がボンディングステージ4をXY方向に微動させる。そうすると図2に示すように,半導体チップ1の電極パッド13が固定の状態で,回路基板3上のバンプ14がボンディングステージ4と一体に水平微動するため,電極パッド13表面の酸化膜15にバンプ14が擦り付けられる。このスクラブ作用がボンディングツール2とボンディングステージ4の加熱・加圧作用に付加されることで,電極パッド13表面の強固な酸化膜15が破壊される。その結果,図3に示すように,酸化膜15の内層のアルミニウム新生面13aとバンプ金属14aとが十分に接触した状態となるため,両者間での合金形成が促進されて確実な金属接合が実現される。」

(2)周知技術
甲第3号証及び甲第4号証より,本件特許に係る出願の出願前,次の技術は,当該技術分野では周知の技術と認められる。
「半導体チップ上の電極と基板上の電極とを,金属バンプを介して加熱加圧することにより接合するチップ実装方法において,電極と金属バンプとの接合を良好にするために,電極と金属バンプとの間に相対的な摩擦を発生させることによって,電極及び金属バンプそれぞれの表層に形成された酸化膜を破壊して除去すること。」

4 甲第5号証
(1)甲第5号証の記載内容
請求人により提出された,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証には,図1とともに,以下の記載がある。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】・・・
【請求項2】電子部品を熱圧着ツールを介してヒータにより加熱し,熱圧着ツールを昇降させて電子部品を基板に押圧することにより電子部品を熱圧着する電子部品の熱圧着方法であって,熱圧着動作を複数のステップに分割し,これらの各ステップ毎に制御目標値,すなわちステップの目標時間,前記ヒータの加熱目標温度および昇降手段の制御目標値を表示手段により同一画面上に表示させて設定し,設定結果を目標値記憶部に記憶させておき,これらの制御目標値に従って前記昇降手段および前記ヒータを制御することを特徴とする電子部品の熱圧着方法。」
・「【0021】この電子部品の熱圧着装置は上記のような構成より成り,次に動作を説明する。まず,熱圧着動作を開始する前の作業として,制御目標値の設定を行う。キーボード25を操作してモニタ24上に表示画面30を表示させる。そして,対象となる電子部品3の種類に応じて熱圧着過程を所要のステップ[0],[1],[2],・・・に分割する。この分割は図2に示すように,ステップ番号32およびENDマーク40を入力することにより行われる。
【0022】次いで各ステップ毎の目標時間33を設定し,t[0],t[1],t[2],・・・を入力する。すると,表示画面30のグラフ枠B内に上記目標時間33に応じて各ステップに分割されたグラフの仕切枠が表示される。次に各ステップ([0],[1],[2],・・)毎に,目標温度34(T[0],T[1],T[2],・・・),目標高さ35(または目標荷重36)(Z[0],Z[1],Z[2],・・・)を設定する。このとき,各制御目標値を入力すると即座にグラフ枠B内にグラフ表示されるので,各ステップ相互の関連や,同一ステップ内での各制御目標値相互の関連を視覚的に把握でき,適切な制御目標値の設定を効率よく行うことができる。
【0023】制御目標値の設定を終えると,熱圧着動作に移る。まず図1にて位置決めテーブル1上に基板2が載置され,位置決めされる。次いでZ軸テーブル8を駆動して,電子部品3を保持した熱圧着ツール4を基板2に対し下降させる。電子部品3のバンプ3aが基板2の電極2aに当接することにより熱圧着が開始される。この後,前述の各ステップごとに選択された実行モードおよび設定された制御目標値に従って圧着時間,加熱温度,圧着荷重が制御され,最終ステップの目標時間がタイムアップすることにより電子部品3の熱圧着が完了する。」

(2)甲第5号証記載の技術的事項
上記(1)より,甲第5号証には,「電子部品を熱圧着ツールを介してヒータにより加熱し,熱圧着ツールを昇降させて電子部品を基板に押圧することにより電子部品を熱圧着する電子部品の熱圧着方法において,熱圧着動作を複数のステップに分割し,各ステップの目標時間,上記ヒータの加熱目標温度,及び昇降手段それぞれの制御目標値を予め設定し,設定された制御目標値に従って圧着時間,加熱温度,及び圧着荷重がそれぞれ制御されること」が記載されていると認められる。

5 甲第6号証
(1)甲第6号証の記載内容
請求人により提出された,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第6号証には,図1ないし3とともに,以下の記載がある。
ア 「【0016】この発明は,上述のような事情に鑑みてなされたもので,ボンディングツールの制御が容易で,かつ,バンプを押し潰し過ぎることがないインナリードボンディング装置を提供することを目的とするものである。」
イ 「【0021】
【実施例】以下,この発明の一実施例の要部を図1?図3に基づいて説明する。なお,従来の技術の項で説明したものと重複するものについては同一番号を付し,その説明は省略する。図1はこの発明の一実施例を示すもので,図中1はTAB(Tape AutomatedBonding)を採用したインナリードボンディング装置を示している。
【0022】このインナリードボンディング装置1は,X-Y駆動部12にツール保持部10´を介してボンディング部材7を昇降自在に保持している。また,このボンディング部材7は,半導体チップ3を載置した載置台2の略真上に配置されている。
【0023】さらに,このボンディング部材7の上端部は,上記X-Y駆動部12の上方に設けられた基台13の自由端部に取り付けられたブラケット32によってスライド自在に保持されている。
【0024】上記ブラケット32には,駆動手段としてのボールねじ機構33が設けられている。このボールねじ機構33は,このブラケット32の上部に軸線を垂直にして固定されたサーボモータ31と,このサーボモータ31に軸線を一致させた状態で接続されかつ上記ブラケット32内に延出されたねじ軸35と,このねじ軸35に回転自在に螺着され,上記サーボモータ31が作動し,上記ねじ軸35が回転駆動されることによって上下方向に変位するナット34とから構成される。
【0025】上記ナット34は,上記ボンディング部材7の上部に固定されている。すなわち,このボンディング部材7は上記ボールねじ機構33が作動することで,上下方向に変位し,このボンディング部材7の下端部に同軸的に配置されたボンディングツール8を上下方向に変位させる。
【0026】ここで,図中に11で示すのは,その両端部をツール保持部10´とボンディング部材7とにそれぞれ接続した引張ばねである。この引張ばね11は,上記ボンディング部材7(ボンディングツール8)を常に上方に付勢した状態で保持している。
【0027】また,上記ツール保持部10´と上記ボンディング部材7には互いの進退量を検出する第1のボンディングツール位置検出手段としての例えばリニアエンコーダ51が設けられている。さらに,上記ツール保持部10´には,駆動軸52aの端面で上記ボンディング部材7を水平方向に加圧することで上記ボンディング部材7を所定の位置で固定する固定手段としてのエアシリンダ52が設けられている。
【0028】上記ボンディング部材7はボールねじ機構33に駆動されて下降することによりボンディングツール8の下端面8aを,載置台2の上方に供給されて停止したインナリード6…に接し,更にこのインナリード6…をキャリアテープ5とともに押し下げて上記半導体チップ3の対応する電極用バンプ(以下,バンプと称する)4…に熱伝的に当接させる。そして,加熱されて高温になったボンディングツール8の加圧力と熱とにより,インナリード6…とバンプ4…とを一括接続し,半導体チップ3をキャリアテープ4に装着する。
【0029】また,ボンディング部材7は,サーボモータ31に取付けられボールねじ35の回転量等を利用してボンディングツール8の位置を知る第2のボンディングツール位置検出手段としての位置検出器37によりボンディングツール8の位置が検出されるようになっている。
【0030】また,ボンディング部材7は,押圧棒20の外周面に,ボンディングツール状態検出手段としてのひずみゲ-ジ38を取付けられており,このひずみゲ-ジ38によってボンディングツール8がインナリード5…をバンプ3…に当接させているか否かが検出されるようになっている。
【0031】さらに,上記サーボモータ31,ひずみゲ-ジ38,リニアエンコーダ51,エアシリンダ52は,それぞれ,このインナーリードボンディング装置1を制御する制御手段53に接続されている。次に,この制御手段53を図2を参照して説明する。この制御手段53は,互いに接続された制御部40,位置速度変換器41,コンパレ-タ42,増幅器46とを有する。」
ウ 「【0035】図3中の(a)は,略1サイクルのボンディング作業におけるボンディングツール8の昇降動作(上記位置検出器37で検出された上記ボンディング部材7の変位)を表している。すなわち,ボンディングツール8は載置台2の上方で停止した状態から,サーボモータ31により駆動されインナリード6…に向かって下降を開始し,さらに,下降を開始した当初はAで示すように高速で移動する。
【0036】そして,ボンディングツール8は,インナリード6…をバンプ4…に当接させたときに下端面8aが位置する平面,即ちボンディング面の幾分手前の部位から上記ボンディング面に達するまでの間においては,Bで示すようにそれ以前よりも低い値の等速運動を行いながら下降する。そして,ボンディングツール8はボンディング面に達すると,インナリード6…とバンプ3…とが当接することによって,押圧棒20とともに軸方向に圧縮される。ここで,図3中の一点鎖線Cは上記ボンディング面の位置を示している。
【0037】押圧棒20が圧縮されると,図3中の(b)にDで示すように,ひずみゲ-ジ38の出力信号48が変化する。そして,ひずみゲ-ジ38の出力信号48を入力される制御部40は,この出力信号48の変化によってボンディングツール8がボンディング面Cに達したことを感知し,所定の加圧指令信号を出力する。
【0038】これと同時に,上記リニアエンコーダ51は,図3(e)に示すように,上記ツール保持部10´と上記ボンディング部材7の相対位置関係の検知を開始する。
【0039】上記制御部40から発せられた加圧指令信号は,前記速度指令信号43と同様に増幅器46によって増幅され,図3中の(C)に示すように,増幅された加圧指令信号に応じた値の電流がサーボモータ31に流れる。そして,サーボモータ31は,入力された電流に応じたトルクを発生させ,ボールねじ35,ナット34,及び押圧棒20を介してボンディングツール8を,インナリード6…を加圧するよう動作させる。
【0040】さらに,半導体チップ3のバンプ4…にハンダを採用した場合には,ハンダバンプ4…がインナリード5…を介してボンディングツール8に接すると,ボンディングツール8の加圧力と熱とにより,ハンダバンプ4…が溶ける。そして,ハンダバンプ4…が溶け始めると,ボンディングツール8が,ハンダバンプ4…の溶融に伴って徐々に下降する。
【0041】そして,上記制御部40は,常時位置フィードバック信号39およびリニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けてボンディングツール8の位置を監視しており,ボンディングツール8がボンディング面Cから所定距離fだけ下降した時に,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31の側へ出力する。これと同時に,上記エアシリンダ52に駆動信号を出力し,上記駆動軸52aを突出方向に作動させ,上記ボンディング部材7をその位置で固定する。
【0042】そして,制御部40は,ボンディングツ-ル8がボンディング面Cから所定距離fだけ下降した時点から所定時間tが経過するまでボンディングツ-ル8をその位置で保持した後,上記エアシリンダ52に信号を出力し,上記駆動軸52aを後退させて上記ボンディング部材7の固定状態を解除する。
【0043】ついで,上記制御部40は図3(a)中にEで示すように,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を高速で下降当初と同等の速度で上昇させる。」
エ 「【0045】また,ボンディングツール8がボンディング面Cに達した後もボンディングツール8の位置を監視し,ボンディングツール8の,ボンディング面Cに達してからの変位量を規制しているので,融点が比較的低いハンダバンプ4…を採用した場合に,ボンディングツール8がハンダバンプ4…の溶融に伴って過度に下降すること,及び,ハンダバンプ4…が潰れ過ぎることを防ぐことができる。」

(2)甲第6号証記載の発明
ア 上記(1)より,甲第6号証には,バンプを押し潰し過ぎることがないインナリードボンディング装置を提供することを目的とし,以下の構成を備えた,インナリードボンディング装置が記載されていると認められる。
「サーボモータ31により駆動されてボンディング部材7が下降することにより,ボンディング部材7の下端部に同軸的に配置されたボンディングツール8の下端面8aを,半導体チップ3を載置した載置台2の上方に供給されて停止したインナリード6…に接し,更にこのインナリード6…をキャリアテープ5とともに押し下げて半導体チップ3の対応するハンダバンプ4…に熱伝的に当接させ,ボンディングツール8の加圧力と熱とにより,インナリード6…とハンダバンプ4…とを一括接続し,半導体チップ3をキャリアテープ5に装着する,インナリードボンディング装置において,
ボンディング部材7を昇降自在に保持するツール保持部10´と,ボンディング部材7には,互いの進退量を検出するリニアエンコーダ51が設けられ,
リニアエンコーダ51が接続され,インナーリードボンディング装置1を制御する制御手段53を備え,
ボンディングツール8はインナリード6…に向かって下降を開始し,ボンディングツール8がボンディング面に達し,インナリード6…とハンダバンプ4…とが当接すると,制御手段53は,サーボモータ31に加圧指令信号を出力し,ボンディングツール8を,インナリード6…を加圧するよう動作させ,また,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させる,
インナリードボンディング装置。 」
そして,上記(1)より,甲第6号証には,インナリードボンディング装置において,「ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で固定する」ことによって,融点が比較的低いハンダバンプ4…を採用した場合に,ボンディングツール8がハンダバンプ4…の溶融に伴って過度に下降すること,及び,ハンダバンプ4…が潰れ過ぎることを防ぐことができるとの作用効果を奏することが記載されていると認められる。
イ ところで,甲第6号証記載の上記インナリードボンディング装置において,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降している時に,ハンダバンプ4…が溶融した状態になると,ボンディングツール8が過度に下降し,ハンダバンプ4…が潰れ過ぎるという現象が生じ得ることは,当業者には自明といえる。
この点に鑑みれば,甲第6号証記載のインナリードボンディング装置において,「ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時」,「制御手段53」は,ボンディングツール8がハンダバンプ4…が過度に下降し,ハンダバンプ4…が潰れ過ぎるという現象が生じ得る,ハンダバンプ4…が溶融した状態と判断して,「加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し」ていると認められる。
そして,甲第6号証記載の上記インナリードボンディング装置は,「ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時」,「制御手段53」は,「加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させる」ことで,ボンディングツール8の高さとボンディングツール8による加圧力とを制御していると認められる。
ウ 以上から,甲第6号証には,以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「サーボモータ31により駆動されてボンディング部材7が下降することにより,ボンディング部材7の下端部に同軸的に配置されたボンディングツール8の下端面8aを,半導体チップ3を載置した載置台2の上方に供給されて停止したインナリード6…に接し,更にこのインナリード6…をキャリアテープ5とともに押し下げて半導体チップ3の対応するハンダバンプ4…に熱伝的に当接させ,ボンディングツール8の加圧力と熱とにより,インナリード6…とハンダバンプ4…とを一括接続し,半導体チップ3をキャリアテープ5に装着する,インナリードボンディング装置において,
ボンディング部材7を昇降自在に保持するツール保持部10´と,ボンディング部材7には,互いの進退量を検出するリニアエンコーダ51が設けられ,
リニアエンコーダ51が接続され,インナーリードボンディング装置1を制御する制御手段53を備え,
ボンディングツール8はインナリード6…に向かって下降を開始し,ボンディングツール8がボンディング面に達し,インナリード6…とハンダバンプ4…とが当接すると,制御手段53は,サーボモータ31に加圧指令信号を出力し,ボンディングツール8を,インナリード6…を加圧するよう動作させ,また,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,ハンダバンプ4…が溶融したと判断し,ボンディングツール8の高さとボンディングツール8による加圧力とを制御する,
インナリードボンディング装置。 」

6 甲第7号証
(1)甲第7号証の記載内容
請求人により提出された,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である甲第7号証には,第1図及び第3図とともに,以下の記載がある。
「以下第1図を引用して本発明の一実施例について説明する。先ず例えばSlウェハのような平板状の被接着物1を第2図の場合のようにはんだ板2を介して積み重ねる。この上に加圧体5を載せて加圧する。加圧体5は重錘でもあるいは空気圧もしくは液圧によって作用する加圧シリンダでもよい。この加圧体5は支持部6に可撓性支持部材7を介して支持されている。加圧体の上面には図示しない方法で固定して支持されたダイヤルゲージ8が接触している。このようにセットしたのち,はんだ板2の加熱を行う。加熱はこのセットを炉内に挿入するか,ヒータを近接させるかあるいは高周波電界を加える等種々の方法で行うことができる。加熱雰囲気は不活性ガスまたは還元性ガスが望ましい。
加熱を行うと積み重ね体の熱膨張が始まる。この際はんだ板2のみならず被接着物lも厚さ方向に膨張するが,特に被接着物がシリコンであれば膨張量はほとんどはんだ板2によって支配される。
この結果,加圧体5は上方に向けて変位し,その変位量は第3図に示すように次第に大きくなるが,はんだの融点近くの温度になるとはんだの軟化と共に変位量の増加の割合が減少する。さらにはんだが溶融する点Aに達すると加圧体5ははんだの溶けた分だけ沈み込み,図示のように変位が逆になる。ダイヤルゲージ8によってこの沈み込み量を計測して一定の沈み込み置3に達した時点で加熱を停止し,全体を急激に冷却する。この様にして1回のはんだ付けの過程を終了させる。
このように加圧体5の変位によって実際にはんだの溶け具合を計測しながらはんだ付けを制御するので,沈み込み置8を最適の値に設定しさえすれば,はんだの溶けすぎ,溶け不足を皆無とし,かつ接着後のはんだ層の厚さを一定とする事ができる。」(2頁左上欄13行ないし左下欄7行)

(2)甲第7号証記載の技術的事項
上記(1)より,甲第7号証には,「平板状の被接着物1をはんだ板2を介して積み重ねた上に加圧体5を載せて加圧すようにセットした後,はんだ板2の加熱を行う際に,はんだの溶融による加圧体5の沈み込み量を計測して一定の沈み込み置3に達した時点で加熱を停止し,全体を急激に冷却すること」が記載されていると認められる。


第6 本件特許発明の特許性の有無について
以下,無効理由通知の内容に基づき,本件特許発明1ないし8の特許性の有無について検討する。
1 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と引用発明1A(前記第5の1(2)ア参照。)とを比較する。
引用発明1Aにおける「チップ1」,「ツール2」,「ツールホルダー17」,「ホルダー支持手段15」,「Z軸送り装置3」,及び「高さ検出手段23」は,それぞれ,本件特許発明1の「チップ」,「ツール」,「ツールホルダ」,「ツールホルダ支持手段」,「駆動手段」,及び「ツールホルダ位置検出手段」に相当するといえる。
そうすると,本件特許発明1と引用発明1Aとの一致点,及び相違点は,以下のとおりであると認める。
ア 一致点
「チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置。」
イ 相違点
・相違点1
本件特許発明1は,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段」を備えるのに対し,引用発明1Aは,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める前にツール2が加熱により熱膨張したときのホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置が,高さ検出手段23により検出されることは明示されておらず,また,引用発明1Aは,「チップ1の全てのバンプ1aを基板5の電極に対して面接触せしめた後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,ホルダー支持手段15の加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態から,何に基づいて,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るかについて明示されておらず,本件特許発明1の「駆動制御手段」に相当する構成を備えているとは認められない点。

(2)相違点の判断
ア 甲第6号証には,バンプを押し潰し過ぎることがないインナリードボンディング装置を提供することを目的とする,前記第5の5(2)ウのとおりの引用発明2が記載されていると認められる。
また,前記第5の5(1)より,甲第6号証には,引用発明2によって,融点が比較的低いハンダバンプ4…を採用した場合に,ボンディングツール8がハンダバンプ4…の溶融に伴って過度に下降すること,及びハンダバンプ4…が潰れ過ぎることを防ぐことができるとの作用効果を奏することが記載されていると認められる。
他方,前記第5の1(1)より,引用発明1Aは,従来技術における「目標とする接地後のチップ高さ位置(チップが基板に接触せしめられた後のチップ高さ位置)が得られず,これではバンプの形状を所定に保つことができない」(【0006】)との課題に鑑み,「高精度にチップ高さを制御することができるので,チップ1のバンプを過度に押し潰すことなく良好に実装することができる」(【0019】)との作用効果を得るようにしたものと認められる。
そして,引用発明1Aは,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,ホルダー支持手段15の加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」たものであるが,この状態でも,溶融に伴いツール2が下降し,バンプ1aが溶融した状態になると,ツール2が過度に下降し,バンプ1aが潰れ過ぎるという現象が生じ得ることは,当業者には自明といえる。
イ 引用発明1Aと引用発明2は,いずれも,ツールによる加熱加圧でチップのバンプと上記チップとは別部材における電極とを接合するチップ実装装置であるということができ,上記アより,両者は,チップのバンプを過度に押し潰すことなく良好に実装することを目的効果とした点で共通するといえるから,引用発明1Aに引用発明2を適用する動機付けは存在すると認められる。
そうすると,引用発明1Aにおいて,「チップ1の全てのバンプ1aを基板5の電極に対して面接触せしめた後,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,ホルダー支持手段15の加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態で,バンプ1aの溶融に伴いツール2が所定距離だけ下降した時に,バンプ1aが溶融したと判断し,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るようにすること,すなわち,ツール2の高さとツール2の加圧力を制御することは,ツール2が過度に下降し,バンプ1aが潰れ過ぎないようにすることを目的として,引用発明2を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして,引用発明1Aに引用発明2を適用する際に,バンプ1aの溶融に伴いツール2が所定距離だけ下降したことの検出を,ツール2とチップ1が重なって基板5に接触しているときの,高さ検出手段23により検出した,ホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置に基づいて,当該ツールホルダー17の相対的な位置が所定値に到達したことを検出して行うようにすることは,当業者が当然に行い得るものといえる。
ウ 引用発明1Aに引用発明2を適用し,ツール2とチップ1が重なって基板5に接触しているときのホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置を,高さ検出手段23により検出する際に,当該高さ検出手段23による検出を,ツール2が加熱されバンプ1aが溶融し始める前から行うことは,ツール2が過度に下降し,バンプ1aが潰れ過ぎないようにするために,当業者が当然に行い得るものである。
そして,前記第5の1(1)における引用文献1の「Z軸送り装置3の送り機構7の熱膨張に影響されずにツール2の高さ位置制御を常時,高精度に行うことができ,」(【0016】)との記載や,「加熱時,チップ1と基板5が熱膨張するが,ツールホルダー17はその分,浮上されている為,チップ1のバンプ潰れよるショートが発生しない。」(【0017】)との記載のとおり,引用発明1Aにおいてツール2の加熱時に,Z軸送り装置3の送り機構7や,ツール2によって加圧力が与えられるチップ1が熱膨張することに鑑みれば,引用文献1に明示されていなくても,チップ1に加圧力を与え,チップ1のバンプ1aを加熱するツール2もまた熱膨張することは明らかである。
そうすると,引用発明1Aに引用発明2を適用し,ツール2とチップ1が重なって基板5に接触しているときのホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置を,高さ検出手段23により検出する際に,当該高さ検出手段23による検出を,ツール2が加熱されバンプ1aが溶融し始める前から行うことは,当業者が当然に行い得るものであり,それによって,バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める前にツール2が加熱により熱膨張したときのホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置が,高さ検出手段23により検出されることは明らかである。
エ しかし,前記第5の5より,甲第6号証には,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させることが記載されているにとどまり,本件特許発明1の「駆動制御手段」における,「前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」こと,すなわち,「ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御して,ツールの高さとチップに与える加圧力とを制御すること」(前記第3の2(1)ア(ア)b参照。)は,記載も示唆もされていない。
また,前記第5の2より,請求人が提出した甲第2号証にも,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぎ,搭載ノズル5を,あらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ,ヒータテーブル6に対して離間させる方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させることが記載されているにとどまり,本件特許発明1の「駆動制御手段」における上記の構成を備えることは,記載も示唆もされていない。
さらに,前記第5の3,4及び6より,請求人が提出した他の甲号証にも,本件特許発明1の「駆動制御手段」における上記の構成を備えることは,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Aにおいて,相違点1に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(3)小括
以上より,本件特許発明1は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

2 本件特許発明2について
(1)対比
本件特許発明2と引用発明1A(前記第5の1(2)ア参照。)とを比較する。
引用発明1Aにおける「チップ1」,「ツール2」,「ツールホルダー17」,「ホルダー支持手段15」,「Z軸送り装置3」,及び「高さ検出手段23」は,それぞれ,本件特許発明2の「チップ」,「ツール」,「ツールホルダ」,「ツールホルダ支持手段」,「駆動手段」,及び「ツールホルダ位置検出手段」に相当するといえる。
そうすると,本件特許発明2と引用発明1Aとの一致点,及び相違点は,以下のとおりであると認める。
ア 一致点
「チップに加圧力を与えるツールと,前記ツールが装着されたツールホルダと,前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と,前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と,前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置。」
イ 相違点
・相違点1
本件特許発明2は,「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段」を備えているのに対し,引用発明1Aは,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,ホルダー支持手段15の加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態から,何に基づいて,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るかは明示されておらず,本件特許発明2の「駆動制御手段」に相当する構成を備えているとは認められない点。
・相違点2
本件特許発明2は,「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えている」のに対し,引用発明1Aは,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始されて高さ検出手段23が高さゼロを検出し,更に,送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが続行され,チップ1が上方へ引き上げられてバンプ1aの形状が矯正され,かつ,その後,送り機構7による上方向への送りが停止された状態においてバンプ1aが冷却せしめられる」もので,本件特許発明2の「ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」に相当する構成を備えていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
甲第6号証には,前記第5の5(2)ウのとおりの引用発明2が記載されていると認められる。
そして,上記1(2)ア及びイより,相違点1に係る構成は,引用発明1Aにおいて,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
イ 相違点2について
前記第5の5より,甲第6号証には,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させることが記載されているにとどまり,本件特許発明2における「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」を備えることは,記載も示唆もされていない。
また,前記第5の2より,請求人が提出した甲第2号証にも,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぎ,搭載ノズル5を,あらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ,ヒータテーブル6に対して離間させる方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させることが記載されているにとどまり,本件特許発明2における上記の「ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」を備えることは,記載も示唆もされていない。
さらに,前記第5の3,4及び6より,請求人が提出した他の甲号証にも,本件特許発明2における上記の「ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」を備えることは,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Aにおいて,相違点2に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(3)小括
以上より,本件特許発明2は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

3 本件特許発明3について
(1)対比
本件特許発明3と引用発明1B(前記第5の1(2)イ参照。)とを比較する。
引用発明1Bにおける「基板保持ステージ4」,「基板5」,「ホルダー支持手段15」,「ツールホルダー17」,「ツール2」,「チップ1」,「バンプ1a」,及び「高さ検出手段23」は,それぞれ,本件特許発明3の「基板保持ステージ」,「基板」,「ツールホルダ支持手段」,「ツールホルダ」,「ツール」,「チップ」,「バンプ」,及び「ツールホルダ位置検出手段」に相当するといえる。
そして,引用発明1Bにおける「ヒータを備えたツール2を加熱することによってチップ1のハンダからなるバンプ1aの溶融を開始させ,」は,本件特許発明3の「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,」に相当するといえる。
そうすると,本件特許発明3と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,以下のとおりであると認める。
ア 一致点
「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱する,チップ実装方法。」
イ 相違点
・相違点1
本件特許発明3は,「前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」のに対し,引用発明1Bは,このような構成を備えているとは認められない点。

(2)相違点の判断
ア 甲第6号証には,前記第5の5(2)ウのとおりの引用発明2が記載されていると認められる。
そして,上記1(2)ア及びイと同様の理由により,引用発明1Bと引用発明2とは,技術分野,及び達成しようとする目的効果の点で共通するということができ,引用発明1Bに引用発明2を適用する動機付けは存在すると認められる。
そうすると,引用発明1Bにおいて,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態で,バンプ1aの溶融に伴いツール2が所定距離だけ下降した時に,バンプ1aが溶融したと判断し,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るようにすることは,ツール2が過度に下降し,バンプ1aが潰れ過ぎないようにすることを目的として,引用発明2を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして,引用発明1Bに引用発明2を適用する際に,バンプ1aの溶融に伴いツール2が所定距離だけ下降したことの検出を,ツール2とチップ1が重なって基板5に接触しているときの,高さ検出手段23により検出した,ホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置に基づいて,当該ツールホルダー17の相対的な位置が所定値に到達したことを検出して行うようにすることは,当業者が当然に行い得るものといえる。
さらに,上記1(2)ウより,引用発明1Bに引用発明2を適用し,ツール2とチップ1が重なって基板5に接触しているときのホルダー支持手段15に対するツールホルダー17の相対的な位置を,高さ検出手段23により検出する際に,当該高さ検出手段23による検出を,ツール2が加熱されバンプ1aが溶融し始める前から行うことは,ツール2が過度に下降し,バンプ1aが潰れ過ぎないようにするために,当業者が当然に行い得るものであり,それによって,ツール2の熱膨張による伸びが高さ検出手段23で検出されることは明らかである。
イ しかし,前記第5の5より,甲第6号証には,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させることが記載されているにとどまり,本件特許発明3における,,「前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」にあたり,「前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御」することは,記載も示唆もされていない。
また,前記第5の2より,請求人が提出した甲第2号証にも,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぎ,搭載ノズル5を,あらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ,ヒータテーブル6に対して離間させる方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させることが記載されているにとどまり,本件特許発明3における上記の構成を備えることは,記載も示唆もされていない。
さらに,前記第5の3,4及び6より,請求人が提出した他の甲号証にも,本件特許発明3における上記の構成を備えることは,記載も示唆もされていない。
ウ そうすると,引用発明1Bにおいて,相違点1に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(3)小括
以上より,本件特許発明3は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

4 本件特許発明4
(1)対比
本件特許発明4は,本件特許発明3に「前記チップのバンプが溶融した後,前記チップのバンプと前記基板の電極との間に相対的な摩擦を発生させ,該摩擦により半田の表層の酸化膜を破壊して除去する」との構成を追加したものであるから,本件特許発明4と引用発明1Bを対比すると,両者の一致点は,上記3(1)アで認定したとおりであり,両者は,上記3(1)イで認定した相違点1に加えて,さらに以下の相違点2で相違する。
・相違点2
本件特許発明4は,「前記チップのバンプが溶融した後,前記チップのバンプと前記基板の電極との間に相対的な摩擦を発生させ,該摩擦により半田の表層の酸化膜を破壊して除去する」のに対し,引用発明1Bは,このような構成を備えていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1(上記3(1)イ参照。)について
上記3(2)のとおり,引用発明1Bにおいて,相違点2に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
イ 相違点2について
前記第5の3(2)のとおり,半導体チップ上の電極と基板上の電極とを,金属バンプを介して加熱加圧することにより接合するチップ実装方法において,電極と金属バンプとの接合を良好にするために,電極と金属バンプとの間に相対的な摩擦を発生させることによって,電極及び金属バンプそれぞれの表層に形成された酸化膜を破壊して除去することは,本件特許に係る出願の出願前,当該技術分野では周知の技術と認められる。
そして,引用発明1Bにおいて,チップ1のバンプ1aを基板5上の電極に熱圧着し,接合する際に,バンプ1aと電極との接合を良好にすることは,当業者が当然に考慮するものである。
そうすると,引用発明1Bにおいて,チップ1のバンプ1aが溶融した後,チップ1のバンプ1aと基板5の電極との間に相対的な摩擦を発生させ,該摩擦により半田の表層の酸化膜を破壊して除去するようにすること(相違点3に係る構成とすること)は,バンプ1aと電極との接合を良好にするために,当業者が普通に行い得るものといえる。

(3)小括
したがって,本件特許発明4は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

5 本件特許発明5
(1)対比
本件特許発明5は,本件特許発明3に「前記チップのバンプが溶融する時の前記チップの加圧力を,流動化した半田の内部の圧力よりも低い圧力として,前記チップのバンプを前記基板上の電極に接合する」との構成を追加したものであるから,本件特許発明5と引用発明1Bを対比すると,両者の一致点は,上記3(1)アで認定したとおりであり,両者は,上記3(1)イで認定した相違点1に加えて,さらに以下の相違点2で相違する。
・相違点2
本件特許発明5は,「前記チップのバンプが溶融する時の前記チップの加圧力を,流動化した半田の内部の圧力よりも低い圧力として,前記チップのバンプを前記基板上の電極に接合する」のに対し,引用発明1Bは,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」たものであるが,その際のチップ1の加圧力と,バンプ1aにおける流動化したハンダの内部の圧力との関係は特定されていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1(上記3(1)イ参照。)について
上記3(2)のとおり,引用発明1Bにおいて,相違点1に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
イ 相違点2について
引用発明1Bにおいて,「ツール2を下降させてチップ1のバンプ1aを基板5の電極に押圧し」,「ヒータを備えたツール2を加熱することによってチップ1のハンダからなるバンプ1aの溶融を開始させ」,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないように」する場合に,チップ1のバンプ1aが溶融する時のチップ1の加圧力を,流動化したハンダの内部の圧力よりも低い圧力とすることは,バンプ形状を損わないようにするために,当然に行われるものと認められ,引用発明1Bが実質的に備えているということができる。
仮にそうでないとしても,引用発明1Bにおいて,チップ1のバンプ1aが溶融する時のチップ1の加圧力を,流動化したハンダの内部の圧力よりも低い圧力とすることは,引用文献1の記載に接した当業者が,バンプ形状を損わないようにするために,普通に行い得るものといえる。
そうすると,相違点2に係る構成は,実質的な相違点ということはできず,また,仮にそうでないとしても,甲第1号証の記載に接した当業者が,普通に行い得るものといえる。

(3)小括
したがって,本件特許発明5は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

6 本件特許発明6
(1)対比
本件特許発明6と引用発明1B(前記第5の1(2)イ参照。)とを比較する。
引用発明1Bにおける「基板保持ステージ4」,「基板5」,「ホルダー支持手段15」,「ツールホルダー17」,「ツール2」,「チップ1」,「バンプ1a」,及び「高さ検出手段23」は,それぞれ,本件特許発明6の「基板保持ステージ」,「基板」,「ツールホルダ支持手段」,「ツールホルダ」,「ツール」,「チップ」,「バンプ」,及び「ツールホルダ位置検出手段」に相当するといえる。
そして,引用発明1Bにおける「ヒータを備えたツール2を加熱することによってチップ1のハンダからなるバンプ1aの溶融を開始させ,」は,本件特許発明6の「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,」に相当するといえる。
そうすると,本件特許発明6と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,以下のとおりであると認める。
ア 一致点
「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱する,チップ実装方法。」
イ 相違点
・相違点1
本件特許発明6は,「前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」のに対し,引用発明1Bは,このような構成を備えているとは認められない点。
・相違点2
本件特許発明6は,「前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出」するのに対し,引用発明1Bは,このような構成を備えているとは認められない点。
・相違点3
本件特許発明6は,「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」の検出に次いで,「前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させる」のに対し,引用発明1Bは,本件特許発明6における,「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」の検出に次いで,「前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,」に相当する構成,及び「ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,」に相当する構成を備えておらず,また,バンプ1aを冷却せしめる際,チップ1と基板5との間隔を一定間隔に保持することまでは特定されていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
甲第6号証には,前記第5の5(2)ウのとおりの引用発明2が記載されていると認められる。
そして,相違点1に係る構成は,本件特許発明3と引用発明1Bとの相違点1に係る構成と同一であるから,上記3(2)のとおり,引用発明1Bにおいて,相違点1に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。
イ 相違点2について
前記第5の1(1)より,引用発明1Bは,従来技術における「目標とする接地後のチップ高さ位置(チップが基板に接触せしめられた後のチップ高さ位置)が得られず,これではバンプの形状を所定に保つことができない」(【0006】)との課題に鑑み,「高精度にチップ高さを制御することができるので,チップ1のバンプを過度に押し潰すことなく良好に実装することができる」(【0019】)との作用効果を奏するようにしたものと認められる。
そして,引用発明1Bは,「高さ検出手段23によってツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置を検出し,」との構成を備えているから,引用発明1Bにおいて,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置を,高さ検出手段23によって検出することは,上記の作用効果を奏するために,当業者が,当然に行い得るものと認められ,また,高さ検出手段23による,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置の検出を,ツールホルダー17を下降させ,ツールホルダー17に装着されたツール2を介してチップ1に加圧力を与えることにより,チップ1のバンプ1aを基板5上の電極に熱圧着し,接合する過程のどの状態において行うかは,当業者が適宜選択し得るものと認められる。
そうすると,引用発明1Bにおいて,高さ検出手段23によるツールホルダー17の相対的な位置の検出を,ホルダー支持手段15の下方向への送りにより,チップ1のハンダバンプ1aが基板5のパッドに接地された状態(以下「第1の状態」という。【0021】),ホルダー支持手段15の下方向への送りが停止され,基板5のパッドに対して全てのバンプ1aが接触しておらず,その一部が接触しているにすぎない状態(以下「第2の状態」という。【0023】),及びバンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始め,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにした状態(以下「第3の状態」という。【0025】)で,それぞれ行うことは,引用発明1Bにおいて,上記の作用効果を奏するために,当業者が適宜なし得たものと認められる。
そして,第1の状態,第2の状態,及び第3の状態で検出される,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置は,それぞれ,本件特許発明6の「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」に相当すると認められる。
以上から,相違点2に係る構成は,引用発明1Bにおいて,当業者が適宜なし得たものである。
ウ 相違点3について
上記3(2)アで検討したとおり,引用発明1Bにおいて,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態で,バンプ1aの溶融に伴いツール2が所定距離だけ下降した時に,バンプ1aが溶融したと判断し,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るようにすることは,ツール2が過度に下降し,バンプ1aが潰れ過ぎないようにすることを目的として,引用発明2を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものと認められ,その際に,バンプ1aの溶融に伴いツール2が所定距離だけ下降したことの検出を,ツール2とチップ1が重なって基板5に接触しているときの,高さ検出手段23により検出した,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置に基づいて,当該ツールホルダー17の相対的な位置が所定値に到達したことを検出して行うようにすることは,当業者が当然に行い得るものといえる。
そして,上記イで検討したとおり,引用発明1Bにおいて,相違点3に係る構成とすること,すなわち,高さ検出手段23による,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置の検出を,第1ないし第3の状態で行うことは,当業者が適宜なし得たものと認められるところ,その場合に,バンプ1aが溶融したと判断する,高さ検出手段23による,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置の検出が,上記第1ないし第3の状態における検出に次いで行われることは明らかであるから,上記第1ないし第3の状態における,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置を,それぞれ,「第1の位置」,「第2の位置」及び「第3の位置」と称するならば,バンプ1aが溶融したと判断する,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置は,「第4の位置」と称することができる。
さらに,引用発明1Bにおいて,ホルダー支持手段15の上方向への送りとその停止により,バンプ1aの形状を矯正し,バンプ1aを冷却せしめる際に,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置をどのように設定するかは,冷却時におけるバンプ1aの形状をどのように設定するかに応じて,当業者が適宜選択し得るものと認められ,ツールホルダー17のホルダー支持手段15に対する相対的な位置を,第1の状態における位置に設定することは,当業者が適宜なし得たものと認められる。
また,ホルダー支持手段15の上方向への送りを停止し,バンプ1aを冷却せしめる際,チップ1と基板5との間隔を一定間隔に保持することは,当業者が当然に行い得るものといえる。
以上から,相違点3に係る構成は,引用発明1Bにおいて,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(3)小括
したがって,本件特許発明6は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

7 本件特許発明7
(1)対比
本件特許発明7と引用発明1B(前記第5の1(2)イ参照。)とを比較する。
引用発明1Bにおける「基板保持ステージ4」,「基板5」,「ホルダー支持手段15」,「ツールホルダー17」,「ツール2」,「チップ1」,「バンプ1a」,及び「高さ検出手段23」は,それぞれ,本件特許発明7の「基板保持ステージ」,「基板」,「ツールホルダ支持手段」,「ツールホルダ」,「ツール」,「チップ」,「バンプ」,及び「ツールホルダ位置検出手段」に相当するといえる。
そして,引用発明1Bにおける「ヒータを備えたツール2を加熱することによってチップ1のハンダからなるバンプ1aの溶融を開始させ,」は,本件特許発明7の「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,」に相当するといえる。
そうすると,本件特許発明7と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,以下のとおりであると認める。
ア 一致点
「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱する,チップ実装方法。」
イ 相違点
・相違点1
本件特許発明7は,「前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」のに対し,引用発明1Bは,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態から,何に基づいて,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るかは明示されていないため,本件特許発明7の上記構成に相当する構成を備えているとは認められない点。
・相違点2
本件特許発明7は,「前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出」するのに対し,引用発明1Bは,本件特許発明7の上記構成に相当する構成を備えていない点。
・相違点3
本件特許発明7は,「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」の検出に次いで,「前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させる」のに対し,引用発明1Bは,本件特許発明7における,「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」の検出に次いで,「前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,」に相当する構成,及び「ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,」に相当する構成を備えておらず,また,バンプ1aを冷却せしめる際,チップ1と基板5との間隔を一定間隔に保持することまでは特定されていない点。
・相違点4
本件特許発明7は,「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」のに対し,引用発明1Bは,本件特許発明7の上記構成に相当する構成を備えていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
甲第6号証には,前記第5の5(2)ウのとおりの引用発明2が記載されていると認められる。
そして,相違点1に係る構成は,本件特許発明3と引用発明1Bとの相違点1に関する判断の中で述べた理由(上記3(2)ア)により,引用発明1Bにおいて,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
イ 相違点2について
相違点2に係る構成は,本件特許発明6と引用発明1Bとの相違点2に係る構成と同一であるから,上記6(2)イのとおり,引用発明1Bにおいて,当業者が適宜なし得たものである。
ウ 相違点3について
相違点3に係る構成は,本件特許発明6と引用発明1Bとの相違点3に係る構成と同一であるから,上記6(2)ウのとおり,引用発明1Bにおいて,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
エ 相違点4について
前記第5の5より,甲第6号証には,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させることが記載されているにとどまり,本件特許発明7における「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」ことは,記載も示唆もされていない。
また,前記第5の2より,請求人が提出した甲第2号証にも,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぎ,搭載ノズル5を,あらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ,ヒータテーブル6に対して離間させる方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させることが記載されているにとどまり,本件特許発明7における上記の「半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」ことは,記載も示唆もされていない。
さらに,前記第5の3,4及び6より,請求人が提出した他の甲号証にも,本件特許発明7における上記の「半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」ことは,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Bにおいて,相違点4に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(4)小括
以上より,本件特許発明7は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

8 本件特許発明8
(1)対比
本件特許発明8と引用発明1B(前記第5の1(2)イ参照。)とを比較する。
引用発明1Bにおける「基板保持ステージ4」,「基板5」,「ホルダー支持手段15」,「ツールホルダー17」,「ツール2」,「チップ1」,「バンプ1a」,及び「高さ検出手段23」は,それぞれ,本件特許発明8の「基板保持ステージ」,「基板」,「ツールホルダ支持手段」,「ツールホルダ」,「ツール」,「チップ」,「バンプ」,及び「ツールホルダ位置検出手段」に相当するといえる。
そして,引用発明1Bにおける「ヒータを備えたツール2を加熱することによってチップ1のハンダからなるバンプ1aの溶融を開始させ,」は,本件特許発明8の「前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し,」に相当するといえる。
そうすると,本件特許発明8と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,以下のとおりであると認める。
ア 一致点
「基板保持ステージに保持されている基板の上方から,ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ,前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより,前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し,接合するチップ実装方法において,前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し,ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し,前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱する,チップ実装方法。」
イ 相違点
・相違点1
本件特許発明8は,「前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」のに対し,引用発明1Bは,「バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始めると,加圧ポート19からのエアー供給が停止される一方においてバランス圧ポート20からのエアー供給が行われ,ツールホルダー2の自重を打ち消して数gの微小な加圧力で制御してバンプ形状を損わないようにし」た状態から,何に基づいて,「Z軸送り装置3の送り機構7による,ホルダー支持手段15の上方向への送りが開始され」るかは明示されていないため,本件特許発明8の上記構成に相当する構成を備えているとは認められない点。
・相違点2
本件特許発明8は,「前記ツールホルダ位置検出手段により,チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し,次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し,次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出」するのに対し,引用発明1Bは,本件特許発明8の上記の構成に相当する構成を備えていない点。
・相違点3
本件特許発明8は,「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」の検出に次いで,「前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させる」ものであるのに対し,引用発明1Bは,本件特許発明8における,「第1の位置」,「第2の位置」,及び「第3の位置」の検出に次いで,「前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し,」に相当する構成,及び「ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ,」に相当する構成を備えておらず,また,バンプ1aを冷却せしめる際,チップ1と基板5との間隔を一定間隔に保持することまでは特定されていない点。
・相違点4
本件特許発明8は,「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」のに対し,引用発明1Bは,本件特許発明8の上記の構成に相当する構成を備えていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
相違点1に係る構成は,本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点1に係る構成と同一であるから,上記7(2)アのとおり,引用発明1Bにおいて,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
イ 相違点2について
相違点2に係る構成は,本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点2に係る構成と同一であるから,上記7(2)イのとおり,引用発明1Bにおいて,当業者が適宜なし得たものである。
ウ 相違点3について
相違点3に係る構成は,本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点3に係る構成と同一であるから,上記7(2)ウのとおり,引用発明1Bにおいて,引用発明2に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
エ 相違点4について
前記第5の5より,甲第6号証には,ハンダバンプ4…が溶け始め,ハンダバンプ4…の溶融に伴いボンディングツール8が下降し,リニアエンコーダ51からの位置検出信号を受けて,ボンディングツール8がボンディング面から所定距離fだけ下降した時に,制御手段53は,加圧指令信号に代えて加圧停止信号をサーボモータ31に出力し,ボンディング部材7をその位置で所定時間tが経過するまで固定し,ついで,上記ボンディング部材7(ボンディングツ-ル8)を上昇させることが記載されているにとどまり,本件特許発明8における「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」ことは,記載も示唆もされていない。
また,前記第5の2より,請求人が提出した甲第2号証にも,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぎ, 搭載ノズル5を,あらかじめ設定されたバンプ引き伸ばし距離だけ,ヒータテーブル6に対して離間させる方向に移動させることによって,半田バンプ4を高さ方向に所定量だけ引き伸ばし,引き伸ばされた半田バンプ4を放熱させることが記載されているにとどまり,本件特許発明8における「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」ことは,記載も示唆もされていない。
さらに,前記第5の3,4及び6より,請求人が提出した他の甲号証にも,本件特許発明8における「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」ことは,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Bにおいて,相違点4に係る構成とすることは,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれに基づいても,当業者が容易に想到し得たものということはできない。

(4)小括
以上より,本件特許発明8は,甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

9 むすび
したがって,本件特許の請求項1,請求項2,請求項3ないし5,請求項6,請求項7及び請求項8の各請求項に係る発明は,いずれも,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。


第7 無効理由1について
請求人は,本件特許発明1及び2は,いずれも,甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条1項3号の規定に違反して特許されたものであり,また,仮に本件特許発明1及び2と甲第1号証に記載された発明との間に相違点があるとしても,かかる相違点は,甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明1及び2は同法第29条2項の規定に違反して特許されたものであると主張する。
しかし,前記第6の1(1)イのとおり,本件特許発明1と引用発明1Aとの間には,相違点(相違点1)があると認められるから,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明であるとは認められず,また,相違点1に係る構成は,甲第1号証には記載も示唆もされておらず,甲第1号証の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たとは認められない。
また,前記第6の2(1)イのとおり,本件特許発明2と引用発明1Aとの間には,相違点(相違点1及び2)があると認められるから,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明であるとは認められず,また,相違点1及び2に係る構成は,いずれも,甲第1号証には記載も示唆もされておらず,甲第1号証の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たとは認められない。
したがって,請求人の上記主張を採用することはできず,無効理由1に理由はない。


第8 無効理由2について
請求人は,本件特許発明3,5,6及び7は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明3,5,6及び7は特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものであると主張するので,この点について検討する。

1 本件特許発明3について
(1)対比
本件特許発明3と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,それぞれ,前記第6の3(1)ア及びイのとおりと認める。

(2)相違点の判断
前記第5の2(2)のとおり,甲第2号証記載の発明は,電子部品の製造装置1において,実装基板3に対して加圧された電子素子2の加圧荷重を検出するための荷重測定部材12と,荷重測定部材12からの信号に基づいて,ヒータテーブル6に対して搭載ノズル5を近接及び離間させる方向に移動するためのアクチュエータ7を駆動制御する制御部13とを備えるものと認められる。
また,甲第2号証記載の発明において,制御部13は,加熱中の電子素子2が実装基板3に押圧される押圧荷重を計測し,この押圧荷重があらかじめ設定された設定荷重よりも小さい場合には,搭載ノズル5を実装基板3に近接させる方向に移動させ,あらかじめ設定された設定荷重よりも大きい場合には,搭載ノズル5を実装基板3から離間させる方向に移動させることによって,押圧荷重があらかじめ設定された一定の設定荷重になるように制御するとともに,搭載ノズル5がヒータテーブル6から最も離間された最大上昇位置またはその位置近傍から,あらかじめ設定されたバンプ押しつぶし距離以上に搭載ノズル5が実装基板3に近接する方向に移動されたときに,搭載ノズル5の移動を停止させるように制御するようにしたものと認められる。
そして,甲第2号証記載の発明は,上記の構成により,半田バンプ4が融点に達した時,半田バンプ4は溶融し,押圧荷重が激減して,押圧荷重を設定値に戻すために搭載ノズル5を実装基板3に近接させる方向に移動させるが,搭載ノズル5が,最大上昇位置またはその位置近傍からバンプ押しつぶし距離だけ移動された位置に到達したときに,搭載ノズル5の移動を停止させ,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぐようにしたものと認められる。
してみれば,甲第2号証記載の発明は,「実装基板3に対して加圧された電子素子2の加圧荷重を検出するための荷重測定部材12」と,「加熱中の電子素子2が実装基板3に押圧される押圧荷重」「があらかじめ設定された設定荷重よりも小さい場合には,搭載ノズル5を実装基板3に近接させる方向に移動させ,あらかじめ設定された設定荷重よりも大きい場合には,搭載ノズル5を実装基板3から離間させる方向に移動させる」「制御部13」とを備えたことを前提とし,半田バンプ4が溶融した時の両者の動作を考慮して,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぐようにしたものといえる。
他方,引用発明1Bは,甲第2号証記載の発明における「荷重測定部材12」及び「制御部13」に相当する構成を備えているとは認められない。
そうすると,「荷重測定部材12」及び「制御部13」を備えたことを前提とし,半田バンプ4が溶融した時のこれらの動作を考慮して,電子素子2が実装基板3に衝突することを防ぐようにした甲第2号証記載の発明を,引用発明1Bに適用する動機付けがあるとは認められない。
さらに付け加えれば,本件特許発明3における,「前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」にあたり,「前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御」することは,甲第2号証には記載も示唆もされていない。
以上から,相違点1は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(3)小括
したがって,本件特許発明3は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められないから,無効理由2における,本件特許発明3に関する請求人の主張は採用できない。

2 本件特許発明5について
(1)対比
前記第6の5(1)より,本件特許発明5と引用発明1Bを対比すると,両者の一致点は,前記第6の3(1)アで認定したとおりであり,両者は,前記第6の3(1)イで認定した相違点1に加えて,さらに前記第6の5(1)で認定した相違点2で相違すると認める。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
上記1(2)のとおり,相違点1は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
イ 相違点2について
前記第6の5(2)ウのとおり,相違点2に係る構成は,本件特許発明5と引用発明1Bとの実質的な相違点ということはできず,また,仮にそうでないとしても,甲第1号証の記載に接した当業者が,普通に行い得るものといえる。

(3)小括
したがって,本件特許発明5は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められないから,無効理由2における,本件特許発明5に関する請求人の主張は採用できない。

3 本件特許発明6について
(1)対比
本件特許発明6と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,それぞれ,前記第6の6(1)ア及びイのとおりと認める。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
相違点1に係る構成は,本件特許発明3と引用発明1Bとの相違点1に係る構成と同一であるから,上記1(2)のとおり,相違点1は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
イ 相違点2について
前記第6の6(2)イのとおり,相違点2に係る構成は,引用発明1Bにおいて,当業者が適宜なし得たものである。
ウ 相違点3について
相違点3に係る構成は,本件特許発明6における,「前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」にあたり,「前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断」する構成を前提とするものであるところ,本件特許発明6における上記の構成は相違点1に係る構成の一部であり,上記アのとおり,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,相違点3に係る構成も,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(3)小括
したがって,本件特許発明6は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められないから,無効理由2における,本件特許発明6に関する請求人の主張は採用できない。

4 本件特許発明7について
(1)対比
本件特許発明7と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,それぞれ,前記第6の7(1)ア及びイのとおりと認める。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
上記1(2)のとおり,甲第2号証記載の発明を,引用発明1Bに適用する動機付けがあるとは認められないから,相違点1は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
イ 相違点2について
相違点2に係る構成は,本件特許発明6と引用発明1Bとの相違点2に係る構成と同一であるから,上記3(2)イのとおり,相違点2に係る構成は,引用発明1Bにおいて,当業者が適宜なし得たものである。
ウ 相違点3について
相違点3に係る構成は,本件特許発明6と引用発明1Bとの相違点3に係る構成と同一であるから,上記3(2)ウのとおり,相違点3は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
エ 相違点4について
前記第6の7(2)エより,相違点4は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(3)小括
したがって,本件特許発明7は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められないから,無効理由2における,本件特許発明7に関する請求人の主張は採用できない。

5 むすび
よって,無効理由2に理由はない。


第9 無効理由3について
請求人は,本件特許発明4及び8は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,並びに,周知技術乃至技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明4及び8は特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものであると主張するので,この点について検討する。

1 本件特許発明4について
(1)対比
前記第6の4(1)より,本件特許発明4と引用発明1Bを対比すると,両者の一致点は,前記第6の3(1)アで認定したとおりであり,両者は,前記第6の3(1)イで認定した相違点1に加えて,さらに前記第6の4(1)で認定した相違点2で相違すると認める。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
相違点1に係る構成は,本件特許発明3と引用発明1Bとの相違点1に係る構成と同一であるから,前記第8の1(2)アのとおり,相違点1は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
イ 相違点2について
前記第6の4(2)イのとおり,引用発明1Bにおいて相違点3に係る構成とすることは,当業者が普通に行い得るものといえる。

(3)小括
したがって,本件特許発明4は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,並びに,周知技術乃至技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められないから,無効理由3における,本件特許発明4に関する請求人の主張は採用できない。

2 本件特許発明8について
(1)対比
本件特許発明8と引用発明1Bとの一致点,及び相違点は,前記第6の8(1)のとおりと認める。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
相違点1に係る構成は,本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点1に係る構成と同一であるから,前記第8の4(2)アのとおり,相違点1は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
イ 相違点2について
相違点2に係る構成は,本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点2に係る構成と同一であるから,前記第8の4(2)イのとおり,相違点2に係る構成は,引用発明1Bにおいて,当業者が適宜なし得たものである。
ウ 相違点3について
相違点3に係る構成は,本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点3に係る構成と同一であるから,前記第8の4(2)ウのとおり,相違点3は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
エ 相違点4について
前記第6の8(2)エより,相違点4は,引用発明1Bに甲第2号証記載の発明を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(3)小括
したがって,本件特許発明8は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,並びに,周知技術乃至技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得るものとは認められないから,無効理由3における,本件特許発明8に関する請求人の主張は採用できない。

3 むすび
よって,無効理由3に理由はない。


第10 請求人の上申書における主張について

請求人は,平成28年11月4日に提出した上申書(以下,単に「上申書」という。)で,本件特許発明1ないし8ついての特許は無効とすべきものであると主張するので,以下,当該主張について検討する。
1 本件特許発明1について
(1)主張の概要
本件訂正のうち請求項1の訂正(訂正事項1)は,平成28年9月30日付け訂正拒絶理由通知の理由により認められないから,本件特許発明1は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の記載のとおりのものと解される。
そして,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1を減縮した,平成28年3月11日付け訂正の請求に係る訂正後の請求項1に係る発明は,平成28年7月5日付け審決の予告に記載されたとおり,甲第1号証及び甲第6号証にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,同様の理由により,本件特許発明1が当業者にとって容易に想到し得たものであることは明らかである。

(2)当審の判断
ア 請求人の主張について
前記第3の2(1)アのとおり,訂正事項1は適法なものと認められ,前記第6の1のとおり,本件特許発明1は,甲第1号証及び甲第6号証にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
以上から,上申書における,本件特許発明1に対する請求人の上記の主張は採用できない。
イ 予備的判断
上記アの理由により,本件特許発明1に対する請求人の上記の主張を採用することはできないが,請求人が上申書とともに提出した,本件特許出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-153522号公報(甲第8号証)に記載の技術的事項を考慮した場合に,甲第1号証記載の引用発明1A(前記第5の1(2)ア)において,本件特許発明1の「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段」(本件特許発明1と引用発明1Aとの相違点1に係る構成(前記第6の1(1)イ))を備えることを,当業者が容易に想到し得たといえるか否かについて,以下,予備的に検討する。
(ア)甲第8号証について
a 甲第8号証の記載内容
甲第8号証には,図1ないし3とともに,以下の記載がある。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,例えば,半導体チップ(半導体部品)をはんだバンプ(はんだ製の突起電極)を介して実装基板の表面に実装(ボンディング)するボンディング装置およびボンディング方法に関するものである。」
・「【0026】
【発明の実施の形態】以下,この発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は,フリップチップボンディングを行うボンディング装置を示した概略構成図である。
【0027】図1に1で示すのは,このフリップチップボンディングに用いる半導体チップ(半導体部品)である。この半導体チップ1の能動端子面1aには,はんだ材からなる多数個の突起電極2(以下「はんだバンプ」という)が形成されている。
・・・
【0029】また,同図に4で示すのは,このボンディング装置のボンディングツールである。このボンディングツール4は,通電加熱式(パルスヒート式)のものであり,図に示すように上方に開放する断面略コの字形状をなし,細幅に形成された一対の垂直壁部4aと,この垂直壁部4aの下端間に架設された押圧壁部4bとからなる。
・・・
【0032】したがって,図1に示すように,このボンディングツール4は,上記真空発生装置6を作動させることで,上記半導体チップ1を,能動端子面1a(はんだバンプ2が形成された面)を下方に向けた状態(フェースダウン状態)で吸着保持できるようになっている。
【0033】また,このボンディングツール4は,図に7で示す給電部を介してツールホルダ8に取着されている。このツールホルダ8は,その外面に多数の放熱フィン8aを有するものであり,図示しないボンディング装置本体に上下移動自在に保持されている。そして,このツールホルダ8は,この上端部に接続された上下駆動機構9によって上下駆動されるようになっている。なお,この上下駆動機構9には,ボンディングツール4の加圧力を検出するための加圧力検出センサ10(例えばロードセル)が取着されている。
【0034】一方,上記ボンディングツール4の下方には,ボンディングステージ12が設けられている。このボンディングステージ12の上面には,上記半導体チップ1がフェースダウンボンディングされるプリント基板13(実装基板)が保持されている。このプリント基板13には,上記半導体チップ1に設けられた各はんだバンプ2に対応する電極パッド13a(配線回路)が形成されている。
【0035】次に,このボンディング装置の制御系統について説明する。上記ツールホルダ8を駆動する上下駆動機構9は,上下駆動ドライバ15を介して図に16で示す制御部に接続されている。
【0036】この制御部16内には,上記半導体チップ1の保持高さを,後述するように時間に応じて適当な高さに設定する目標高さ設定部17と,この目標高さ設定部17に設定された目標高さに応じた駆動指令を上記上下駆動ドライバ15に発する駆動指令部18とが設けられている。
【0037】また,上記給電部7は,温度制御ドライバ19を介して上記制御部16に接続され,この制御部16からの温度指令に基づいて,上記ボンディングツール4に対する給電を行うようになっている。なお,上記ボンディングツール4の押圧壁部4bの中央部には,ボンディング温度測定用の熱電対20が埋設されており,この熱電対20は上記温度制御ドライバ19にボンディング温度をフィードバックするようになっている。
【0038】また,この装置には,ボンディングツール4およびツールホルダ8が熱伸縮した場合でも,上記半導体チップ1の高さを所望の高さに保持するために,上記ボンディングツール4およびツールホルダ8の熱伸縮量を測定し,これをツールホルダ8の上下駆動量に反映させる手段が設けられている。
【0039】ツールホルダ8の熱伸縮を測定する手段は,このツールホルダ8の下端部から水平に突設された突起部21と,上記ツールホルダ8の上端部に固定され,上記突起部21に反射したレーザ光Lを検出することで,このツールホルダ8の伸縮量を測定するレーザ変位計22とからなる。
【0040】ツールホルダ8の熱伸縮を測定する手段は,上記ボンディングツール4の垂直壁部4aに埋設され,この垂直壁部4aの温度を測定する伸縮量測定用の熱電対23と,この熱電対23の検出値を上記垂直壁部4aの膨張量に変換する変換部24とからなる。この変換部24は,あらかじめ測定されたこの垂直壁部4aの熱伸縮係数(上記熱電対23の測定温度と伸長量の関係を示す係数)を用いて上記垂直壁部4aの伸長量を算出するようになっている。
【0041】なお,上記レーザ変位計22及び上記変換部24により検知された上記ツールホルダ8及びボンディングツール4の伸長量は,上記駆動指令部18に入力されるようになっており,この駆動指令部18は,上記目標高さ設定部17により設定された目標高さから上記ツールホルダ8及びボンディングツール4の伸長量を減算し,これに基づいて駆動指令を発するようになっている。」
・「【0042】次に,この装置によるボンディング動作を図2に示すタイミングチャート及び図3に示す工程図に基づいて説明する。なお,図2に示すタイミングチャートは,上記目標高さ設定部17で設定される目標高さ(半導体チップ1の保持高さ)と時間との関係を示したものである。
・・・
【0045】この位置決めがなされたならば,上記ボンディングツール4は,上記上下駆動機構9を作動することにより下降駆動される(図2に示す点A?B)。ボンディングツール4が下降駆動されると,上記半導体チップ1のはんだバンプ2はプリント基板13の電極パッド13aに当接し,図3(b)に示すように押し潰される。このことで,上記半導体チップ1に形成された略すべてのはんだバンプ2が上記電極パッド13aに押し付けられる。
【0046】上記制御部16は,上記上下加圧力検出センサ10の検出値よりこの状態を知り,上記上下駆動機構9による下降駆動を停止させる。このような作業を面検出といい,この面検出時の上記半導体チップ1の保持高さを面検出高さという(図2点B)。そして,上記制御部16に設けられた目標高さ設定部17は,この面検出高さを基準にして以後の目標高さを設定する。なお,この実施形態においては,図2に点B?Cで示すように,面検出後しばらく上記半導体チップ1をこの面検出高さに保持するようになっている。
【0047】面検出が終了したならば,上記制御部16は,上記ボンディングツール4に給電を行い,このボンディングツール4の押圧壁部4bを抵抗発熱させる。このことで,上記半導体チップ1のはんだバンプ2は瞬時に溶融温度に達し,溶融を開始する。
【0048】このようにして,上記ボンディングツール4を昇温させると,このボンディングツール4の垂直壁部4a及びツールホルダ8にこの温度が伝導し,熱膨張によってこれらに上下方向に伸長が生じることになる。それぞれの伸長量は,上記熱伸縮測定用熱電対23及びレーザ変位計22によって検出され,上記制御部16の駆動指令部18に入力される。
【0049】このようにして伸長量が入力されたならば,この駆動指令部18は,上記目標高さ設定部17によって設定された目標高さから上記ボンディングツール4及びツールホルダ8の伸長量を差し引いた値に基づいて上記上下駆動ドライバ15に駆動指令を発し,上記半導体チップ1の保持高さを補正するようにする。なお,上記レーザ変位計22及び熱電対23による検出は所定のサンプリングタイム毎に行われ,上記補正は略リアルタイムでなされるようになっている。
・・・
【0053】上記半導体チップ1の加熱を所定の時間行ったならば,図2に点C?Dで示すように一旦上記ボンディングツール4を下降駆動し,上記半導体チップ1を上記面検出高さ以下に下降させる。これは,溶融したはんだバンプ2のすべてを上記プリント基板13の電極パッド13aに接触させるためである。
・・・
【0055】ついで,上記制御部16は上記半導体チップ1を上昇駆動し,図2の点E?Fに示すように,上記半導体チップ1の高さが上記面検出高さよりも高くなるように保持する。このことで,上記溶融したはんだバンプ2は上方へ引き伸ばされ,図3(e)に示すような形状となる。
【0056】ついで,上記制御部16は上記ボンディングツール4への給電を停止する。このことで,上記はんだバンプ2は図3(e)に示す状態で冷却され,凝固する(図2点F?G)。なお,このときボンディングツール4の温度が低下することからこのボンディングツール4の垂直壁部4a及びツールホルダ8が高さ方向に熱収縮する。この場合にも上記半導体チップ1の保持高さが目標高さからずれるから,上記加熱時と同様に,上記制御部16の駆動指令部18は,上記レーザ変位計22及び熱伸縮測定用熱電対23により検出される上記ボンディングツール4及びツールホルダ8の収縮量に基づいて,この収縮量を是正する方向に上記駆動機構9を作動させる。
・・・
【0059】上記はんだバンプ2が完全に凝固したならば上記真空発生装置6を停止させ,上記半導体チップ1の吸着を解除する。そして最後に,図2の点G?Hに示すように,上記ボンディングツール4を上昇駆動する。このことで一連のボンディング工程が終了する。」
b 甲第8号証記載の技術的事項
上記aより,甲第8号証には,以下の事項が記載されていると認められる。
「半導体チップ(半導体部品)をはんだバンプ(はんだ製の突起電極)を介して実装基板の表面に実装(ボンディング)するボンディング装置及びボンディング方法において,
半導体チップ1を,能動端はんだバンプ2が形成された面を下方に向けた状態で吸着保持するボンディングツール4と,ボンディングツール4が給電部を介して取着され,上下駆動機構9によって上下駆動されるツールホルダ8と,上下駆動機構9に取着された,ボンディングツール4の加圧力を検出するための加圧力検出センサ10と,上下駆動機構9が接続され,半導体チップ1の保持高さを,時間に応じて適当な高さに設定するとともに,設定された目標高さに応じた駆動指令を発する制御部16と,ボンディングツール4及びツールホルダ8が熱伸縮した場合でも,半導体チップ1の高さを所望の高さに保持するために,ボンディングツール4及びツールホルダ8の熱伸縮量を測定し,これをツールホルダ8の上下駆動量に反映させる手段とを備え,
上下駆動機構9を作動することによりボンディングツール4が下降駆動され,半導体チップ1に形成された略すべてのはんだバンプ2がプリント基板13の電極パッド13aに押し付けられた状態を,上下加圧力検出センサ10の検出値より知り,上下駆動機構9による下降駆動を停止させ,この時の半導体チップ1の高さを,面検出高さとして検出し,制御部16は,この面検出高さを基準にして以後の目標高さを設定し,
ボンディングツール4に給電を行いボンディングツール4を発熱させると,半導体チップ1のはんだバンプ2は溶融を開始し,ボンディングツール4及びツールホルダ8の熱膨張による伸長量を検出し,制御部16は,設定された目標高さからボンディングツール4及びツールホルダ8の伸長量を差し引いた値に基づいて上下駆動ドライバ15に駆動指令を発して,半導体チップ1の保持高さを補正し,
半導体チップ1の加熱を所定の時間行ったならば,一旦ボンディングツール4を下降駆動し,半導体チップ1を面検出高さ以下に下降させ,溶融したはんだバンプ2のすべてをプリント基板13の電極パッド13aに接触させ,
ついで,制御部16は半導体チップ1を上昇駆動し,半導体チップ1の高さが面検出高さよりも高くなるように保持して,溶融したはんだバンプ2を上方へ引き伸ばし,ボンディングツール4への給電を停止してはんだバンプ2を冷却,凝固し,検出される上記ボンディングツール4及びツールホルダ8の収縮量に基づいて,この収縮量を是正する方向に上下駆動機構9を作動させ,
はんだバンプ2が完全に凝固したならば半導体チップ1の吸着を解除して,ボンディングツール4を上昇駆動すること。」
(イ)本件特許発明1の容易想到性について
a 前記第3の2(1)ア(ア)bのとおり,本件特許発明1の「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する」ことは,ツールとチップとが重なって基板に接触しているときのツールホルダ位置検出手段により検出した,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,ツールが加熱により熱膨張したときの上記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならばバンプが溶融したと判断し,その後,ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御して,ツールの高さとチップに与える加圧力とを制御することと解される。
他方,上記(ア)bより,甲第8号証記載の技術的事項は,半導体チップをはんだバンプを介して実装基板の表面にボンディングするボンディング装置及びボンディング方法において,上下駆動機構9によりボンディングツール4が下降駆動され,半導体チップ1に形成された略すべてのはんだバンプ2がプリント基板13の電極パッド13aに押し付けられた状態での半導体チップ1の高さを,面検出高さとして検出し,ボンディングツール4を発熱させ,半導体チップ1のはんだバンプ2は溶融を開始すると,一旦ボンディングツール4を下降駆動し,溶融した半導体チップ1のはんだバンプ2のすべてをプリント基板13の電極パッド13aに接触させた後,半導体チップ1を上昇駆動し,溶融したはんだバンプ2を上方へ引き伸ばし,はんだバンプ2を冷却,凝固する際に,半導体チップ1の上昇駆動について,半導体チップ1の高さが面検出高さよりも高くなるように保持するものと認められる。
しかし,甲第8号証記載の技術的事項は,半導体チップ1のはんだバンプ2が溶融を開始すると,一旦ボンディングツール4を下降駆動して,溶融した半導体チップ1のはんだバンプ2のすべてをプリント基板13の電極パッド13aに接触させるものであり,また,その後,何を契機として,半導体チップ1を上昇駆動するかについて記載も示唆もされていないから,甲第8号証記載の技術的事項は,ボンディングツール4及びツールホルダ8が加熱により熱膨張したときの半導体チップ1の高さが所定値に到達したことを検出してはんだバンプ2が溶融したと判断し,その後,半導体チップ1を上昇駆動し,溶融したはんだバンプ2を上方へ引き伸ばし,はんだバンプ2を冷却,凝固するものとは認められない。
そうすると,引用発明1Aにおいて,本件特許発明1における「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段」に相当する構成を備えることは,甲第8号証記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
b また,前記第6の1(2)アのとおり,本件特許発明1における「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御」することは,引用発明1Aにおいて,甲第6号証記載の引用発明2(前記第5の5(2)ウ)に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められるところ,上記aのとおり,甲第8号証記載の技術的事項は,ボンディングツール4及びツールホルダ8が加熱により熱膨張したときの半導体チップ1の高さが所定値に到達したことを検出してはんだバンプ2が溶融したと判断し,その後,半導体チップ1を上昇駆動するものではなく,引用発明2とは前提が異なるから,引用発明1Aに引用発明2を適用する際に,引用発明2とは前提の異なる甲第8号証記載の技術的事項を採用することについて,その動機付けがあるとはいえず,当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そうすると,引用発明1Aにおいて,本件特許発明1の「前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段」を備えることは,引用発明2及び甲第8号証記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
(ウ)小括
以上から,甲第8号証に記載の技術的事項を考慮しても,引用発明1Aにおいて,本件特許発明1との相違点1に係る構成を備えることは,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

2 本件特許発明2について
(1)主張の概要
本件特許発明2における「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」に相当する構成が,甲第8号証に開示されており,本件特許発明2における上記の構成は,甲第1号証記載の発明に甲第8号証記載の技術事項を適用することにより,当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明2は,甲第1号証記載の発明,甲第6号証記載の発明及び甲第8号証記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(2)当審の判断
ア 請求人の主張について
本件特許発明2における「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備える」との構成は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載されていたものである。
そして,請求人は,審判請求書で,上記の構成を有する本件特許発明2について,甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条1項3号の規定に違反して特許されたものであり,また,仮に甲第1号証に記載された発明との間に相違点があるとしても,かかる相違点は,甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,同法第29条2項の規定に違反して特許されたものである(無効理由1)と主張した。
そうすると,本件特許発明2に対する請求人の上記の主張は,新たな証拠(甲第8号証)に基づく新たな無効理由であって,審判請求書における請求の理由の要旨を変更するものと認められ,上記の主張を審判請求書の請求の理由に記載しなかったことにつき合理的な理由があるとも認められず,また,審決をするのに機が熟したとして審決の予告をした後で上記の主張をすることには,審理を不当に遅延させるおそれがあるといわざるを得ない。
以上から,上申書における,本件特許発明2に対する請求人の上記の主張は採用できない。
イ 予備的判断
上記アの理由により,本件特許発明2に対する請求人の上記の主張を採用することはできないが,甲第1号証記載の引用発明1A(前記第5の1(2)ア)において,本件特許発明2の「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」を備えること(本件特許発明2と引用発明1Aとの相違点2に係る構成(前記第6の2(1)イ))が,甲第8号証に記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たといえるか否かについて,以下,予備的に検討する。
上記1(2)イ(ア)bより,甲第8号証には,半導体チップをはんだバンプを介して実装基板の表面にボンディングするボンディング装置及びボンディング方法において,上下駆動機構9によりボンディングツール4が下降駆動され,半導体チップ1に形成された略すべてのはんだバンプ2がプリント基板13の電極パッド13aに押し付けられた状態での半導体チップ1の高さを,面検出高さとして検出し,ボンディングツール4を発熱させ,半導体チップ1のはんだバンプ2は溶融を開始すると,一旦ボンディングツール4を下降駆動し,溶融した半導体チップ1のはんだバンプ2のすべてをプリント基板13の電極パッド13aに接触させた後,半導体チップ1を上昇駆動し,溶融したはんだバンプ2を上方へ引き伸ばし,はんだバンプ2を冷却,凝固する際に,半導体チップ1の上昇駆動について,半導体チップ1の高さが面検出高さよりも高くなるように保持することが記載されていると認められる。
しかし,甲第8号証には,半導体チップ1の上昇駆動について,半導体チップ1の高さが面検出高さよりも高くなるように保持する旨の記載があるだけで,本件特許発明2の「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」に相当する構成については,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Aにおいて,本件特許発明2の「前記駆動制御手段は,チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと,前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと,前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段」を備えることは,甲第8号証記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得るとは認められない。
以上から,上申書における,本件特許発明2に対する請求人の上記の主張は採用できない。

3 本件特許発明3ないし5について
(1)主張の概要
本件特許発明3における「前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,」に相当する構成が,甲第8号証に開示されており,本件特許発明3ないし5における上記の構成は,甲第1号証記載の発明に甲第8号証記載の技術事項を適用することにより,当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明3は,甲第1号証記載の発明,甲第6号証記載の発明及び甲第8号証記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。
そして,同様の理由により,本件特許発明4は,甲第1号証記載の発明,甲第6号証記載の発明,甲第8号証記載の技術事項,並びに甲第3号証及び甲第4号証にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,また,本件特許発明5は,甲第1号証記載の発明,甲第6号証記載の発明及び甲第8号証記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(2)当審の判断
甲第1号証記載の引用発明1B(前記第5の1(2)イ)において,本件特許発明3ないし5の「前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」との構成(本件特許発明3ないし5と引用発明1Bとの相違点1に係る構成(前記第6の3(1)イ))を,甲第6号証記載の発明及び甲第8号証に記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たといえるか否かについて,以下,検討する。
前記第6の3(2)アのとおり,本件特許発明3ないし5における「前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断」することは,引用発明1Bにおいて,甲第6号証記載の引用発明2(前記第5の5(2)ウ)に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められるところ,上記1(2)イ(イ)bのとおり,甲第8号証記載の技術的事項は,ボンディングツール4及びツールホルダ8が加熱により熱膨張したときの半導体チップ1の高さが所定値に到達したことを検出してはんだバンプ2が溶融したと判断し,その後,半導体チップ1を上昇駆動するものではなく,引用発明2とは前提が異なるから,引用発明1Aに引用発明2を適用する際に,引用発明2とは前提の異なる甲第8号証記載の技術的事項を採用することについて,その動機付けがあるとはいえず,当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そうすると,引用発明1Bにおいて,本件特許発明3ないし5の「前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し,前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し,前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させる」との構成を備えることは,引用発明2及び甲第8号証記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
以上から,上申書における,本件特許発明3ないし5に対する請求人の上記の主張は採用できない。

4 本件特許発明6について
(1)主張の概要
本件特許発明6における「前記ツールとチップが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて,前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し,」に相当する構成が,甲第8号証に開示されており,本件特許発明6における上記の構成は,甲第1号証記載の発明に甲第8号証記載の技術事項を適用することにより,当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明6は,甲第1号証記載の発明,甲第6号証記載の発明及び甲第8号証記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(2)当審の判断
上申書における,本件特許発明6に対する請求人の上記の主張は,本件特許発明3ないし5に対する主張(上記3(1))と同じ内容であるから,上記3(2)の理由により採用できない。

5 本件特許発明7について
(1)主張の概要
本件特許発明7における「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」に相当する構成が,甲第8号証に開示されており,本件特許発明7における上記の構成は,甲第1号証記載の発明に甲第8号証記載の技術事項を適用することにより,当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明7は,甲第1号証記載の発明,甲第6号証記載の発明及び甲第8号証記載の技術事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

(2)当審の判断
ア 請求人の主張について
本件特許発明7における「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」との構成は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項7に記載されていたものである。
そして,請求人は,審判請求書で,上記の構成を有する本件特許発明7について,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明7は特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものである(無効理由2)と主張した。
そうすると,本件特許発明2に対する請求人の上記の主張は,新たな証拠(甲第8号証)に基づく新たな無効理由であって,審判請求書における請求の理由の要旨を変更するものと認められ,上記の主張を審判請求書の請求の理由に記載しなかったことにつき合理的な理由があるとも認められず,また,審決をするのに機が熟したとして審決の予告をした後で上記の主張をすることには,審理を不当に遅延させるおそれがあるといわざるを得ない。
以上から,本件特許発明7に対する請求人の上記の主張を採用することはできない。
イ 予備的判断
上記アの理由により,本件特許発明7に対する請求人の上記の主張を採用することはできないが,甲第1号証記載の引用発明1B(前記第5の1(2)イ)において,本件特許発明7の「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」との構成(本件特許発明7と引用発明1Bとの相違点4に係る構成(前記第6の7(1)イ))を備えることが,甲第8号証に記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たといえるか否かについて,以下,予備的に検討する。
上記1(2)イ(ア)bより,甲第8号証には,半導体チップをはんだバンプを介して実装基板の表面にボンディングするボンディング装置及びボンディング方法において,上下駆動機構9によりボンディングツール4が下降駆動され,半導体チップ1に形成された略すべてのはんだバンプ2がプリント基板13の電極パッド13aに押し付けられた状態での半導体チップ1の高さを,面検出高さとして検出し,ボンディングツール4を発熱させ,半導体チップ1のはんだバンプ2は溶融を開始すると,一旦ボンディングツール4を下降駆動し,溶融した半導体チップ1のはんだバンプ2のすべてをプリント基板13の電極パッド13aに接触させた後,半導体チップ1を上昇駆動し,溶融したはんだバンプ2を上方へ引き伸ばし,はんだバンプ2を冷却,凝固する際に,半導体チップ1の上昇駆動について,半導体チップ1の高さが面検出高さよりも高くなるように保持することが記載されていると認められる。
しかし,甲第8号証には,半導体チップ1の上昇駆動について,半導体チップ1の高さが面検出高さよりも高くなるように保持する旨の記載があるだけで,本件特許発明7の「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」ことに相当する構成について,記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Bにおいて,本件特許発明7の「予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と,チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と,ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と,前記ツールホルダの第1の位置と,前記ツールホルダの第2の位置と,前記ツールホルダの第3の位置と,前記ツールホルダの第4の位置とから,半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求める」との構成を備えることは,甲第8号証記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得るとは認められない。
以上から,上申書における,本件特許発明7に対する請求人の上記の主張は採用できない。

5 本件特許発明8について
(1)主張の概要
本件特許発明8における「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」との構成は,本件特許に係る出願の優先権主張の基礎出願であると特願2005-352270号の出願書類一式(甲第9号証)には何ら記載されていないから,本件特許発明8は,本件特許に係る出願の国際出願日(平成18年11月30日)を基準として特許要件が判断されるべきものである。
そして,本件特許に係る出願の国際出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-26683号公報(甲第10号証)には,電子部品の半田付けにおいて,ヒータチップ25の温度を電圧検出増幅器26で電圧として検出し,ヒータチップ25からの検出温度がPWM制御部28に入力される低い場合(当審注.原文ママ)ゲート信号101の出力を続行してヒータチップ25への通電を続行し,ヒータチップ25の温度をさらに上昇させる技術事項が記載されており(【0002】,【0036】等),また,審判請求書の7-4(10)で述べたとおり,電子部品を基板に熱圧着する技術分野において,予め設定した目標時間に基づいてヒータの加熱温度を制御する構成は,甲第5号証などに開示されているように,本件特許出願の優先日当時の技術常識である。
したがって,本件特許発明8における上記の構成は,甲第1号証記載の発明に甲第10号証記載の技術事項及び甲第5号証などの技術常識を適用することにより,当業者が容易に想到し得るものである。

(2)当審の判断
ア 請求人の主張について
本件特許発明8における「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」との構成は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項8に記載されていたものである。
そして,請求人は,審判請求書で,上記の構成を有する本件特許発明8について,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,並びに,周知技術乃至技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるから,本件特許発明8は特許法第29条2項の規定に違反して特許されたものである(無効理由3)と主張した。
そうすると,本件特許発明8に対する請求人の上記の主張は,新たな証拠(甲第9号証及び甲第10号証)に基づく新たな無効理由であって,審判請求書における請求の理由の要旨を変更するものと認められ,上記の主張を審判請求書の請求の理由に記載しなかったことにつき合理的な理由があるとも認められず,また,審決をするのに機が熟したとして審決の予告をした後で上記の主張をすることには,審理を不当に遅延させるおそれがあるといわざるを得ない。
以上から,上申書における,本件特許発明8に対する請求人の上記の主張は採用できない。
イ 予備的判断
上記アの理由により,本件特許発明8に対する請求人の上記の主張を採用することはできないが,本件特許発明8の「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」との構成(本件特許発明8と引用発明1Bとの相違点4に係る構成(前記第6の8(1)イ))が,本件特許に係る出願の優先権主張の基礎出願の明細書,特許請求の範囲及び図面に記載されていないと仮定して,甲第1号証記載の引用発明1B(前記第5の1(2)イ)において,本件特許発明8の上記の構成を備えることが,甲第10号証及び甲第5号証にそれぞれ記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たといえるか否かについて,以下,予備的に検討する。
(ア)甲第10号証について
a 甲第10号証の記載内容
甲第10号証には,図1及び2とともに,以下の記載がある。
「【0026】
図1において,21は入力される商用3相の交流電圧を整流し,平滑化する整流平滑部,22は整流平滑部21で得られた直流電圧を商用電力の周波数より充分に高い周波数でスイッチングし,交流の電流を得るインバータ部,23はインバータ部22で得られた交流の電圧を所定の大電流で低電圧の電圧に降圧する溶接トランス,24は溶接トランス23で得られた所定の交流電圧を整流する整流部,25は対象物を半田付けするための加熱部となるヒータチップである。
【0027】
また,26はヒータチップ25の給電部の両端に接続され,その間の電圧を検出し,所定の増幅度で増幅する電圧検出増幅部,27は所定のパラメータを設定するパラメータ設定部,28はパラメータ設定部27からの各種のパラメータと電圧検出増幅部26からの増幅されたヒータチップ25の給電端子間の電圧および半田付け開始信号102を受けてインバータ部22を直接制御するゲート信号101を生成するPWM制御部である。
【0028】
ここで,各種パラメータは次の通りである。
・・・
ホ.所定の半田付け温度に対応する電圧であり,前記ヒータチップ25の温度がこの温度に達したとき,または前記通電停止時間T2内にこのヒータチップ25の温度がこの電圧に到達しないときにヒータチップ25への通電を停止するしきい値となる通電停止電圧V11。この通電停止電圧V11の設定範囲は,0.1V?10.0Vであり,デフォルト値は,例えば0.1Vである。
・・・
【0032】
次に,このようなインバータ制御方式パルスヒート電源の動作を説明する。
最初に前述した所定のパラメータを所望の値に設定する。なお,この時デフォルト値でよい場合はそのままでよいことは勿論である。
・・・
【0034】
このような状態で半田付け開始信号102が動作条件設定部28に入力されると前述のゲート信号101がインバータ部22に出力される。このゲート信号101は通常商用電源周波数より充分高い周波数である,例えば2kHzの周波数の信号である。そして,前述したようにこのゲート信号101のパルス幅はパラメータとして設定したゲート開度幅のままで拡張したり,縮小したりしない。
【0035】
このゲート信号101により,インバータ部22に入力された整流平滑部21からの直流電圧はゲート信号101に応じた高周波の交流電圧に変換され,この交流電圧は溶接トランス23で所定の低電圧,大電流の交流電圧に変換され,その後整流部24で整流され,低電圧,大電流の直流電圧となりヒータチップ25に印加される。なお,このゲート信号101は前述したように定められた間隔で通電/休止の通電サイクルで出力される。
【0036】
こうすることにより,ヒータチップ25に電流が流れ,ヒータチップ25の温度が上昇していく。このヒータチップ25の温度は電圧検出増幅部26で電圧として検出される。そして,PWM制御部28に入力される。一方,PWM制御部28には通電停止電圧V11も入力されている。そして,前述したようにヒータチップ25からの検出電圧の方が低い場合は,ゲート信号101の出力を続行し,ヒータチップ25への通電を続行し,ヒータチップ25の温度をさらに上昇させる。」
b 甲第10号証記載の技術的事項
上記aより,甲第10号証には,以下の事項が記載されていると認められる。
「入力される商用3相の交流電圧を整流し,平滑化する整流平滑部21と,整流平滑部21で得られた直流電圧を商用電力の周波数より充分に高い周波数でスイッチングし,交流の電流を得るインバータ部22と,インバータ部22で得られた交流の電圧を所定の大電流で低電圧の電圧に降圧する溶接トランス23と,溶接トランス23で得られた所定の交流電圧を整流する整流部24と,整流部24で得られた低電圧,大電流の直流電圧が印加される,対象物を半田付けするための加熱部となるヒータチップ25と,ヒータチップ25の給電端子間の電圧からヒータチップ25の温度を電圧として検出される電圧検出増幅部26と,ヒータチップ25への通電を停止するしきい値となる通電停止電圧V11を設定するパラメータ設定部27と,パラメータ設定部27からの通電停止電圧V11,電圧検出増幅部26からの増幅されたヒータチップ25の給電端子間の電圧,及び半田付け開始信号102を受けてインバータ部22を直接制御するゲート信号101を生成するPWM制御部28とを備えたインバータ制御方式パルスヒート電源において,
PWM制御部28が半田付け開始信号102に入力されて,ヒータチップ25に電流が流れ,ヒータチップ25の温度が上昇すると,このヒータチップ25の温度は電圧検出増幅部26で電圧として検出されてPWM制御部28に入力され,PWM制御部28に入力される通電停止電圧V11と比較され,ヒータチップ25からの検出電圧の方が低い場合は,ヒータチップ25への通電を続行し,ヒータチップ25の温度をさらに上昇させること。」
(イ)甲第5号証について
前記第5の4(2)のとおり,甲第5号証には,「電子部品を熱圧着ツールを介してヒータにより加熱し,熱圧着ツールを昇降させて電子部品を基板に押圧することにより電子部品を熱圧着する電子部品の熱圧着方法において,熱圧着動作を複数のステップに分割し,各ステップの目標時間,上記ヒータの加熱目標温度,及び昇降手段それぞれの制御目標値を予め設定し,設定された制御目標値に従って圧着時間,加熱温度,及び圧着荷重がそれぞれ制御されること」が記載されていると認められる。
(ウ)本件特許発明8の容易想到性について
上記(ア)bより,甲第10号証には,対象物を半田付けするための加熱部となるヒータチップ25の温度が電圧として検出され,通電停止電圧V11と比較され,ヒータチップ25からの検出電圧の方が低い場合は,ヒータチップ25の温度をさらに上昇させることが記載されていると認められるにとどまり,ヒータチップ25に通電してヒータチップ25を加熱してから半田が溶融するまでの時間を予め計測し,この時間内で半田が溶融したか否かによって,ヒータチップ25の温度をさらに上昇させることは記載も示唆もされていない。
また,上記(イ)より,甲第5号証には,電子部品を熱圧着する動作を複数のステップに分割し,各ステップの時間,加熱温度,及び昇降手段それぞれの制御目標値を予め設定し,設定された制御目標値に従って圧着時間,加熱温度及び圧着荷重をそれぞれ制御することが記載されていると認められるにとどまり,各ステップにおいて予め設定された時間内での熱圧着動作の状態に応じて,加熱温度を制御目標値よりも高くする制御を行うことは記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明1Bにおいて,本件特許発明8における「ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し,前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合,上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させる」ことに相当する構成を備えることは,甲第10号証及び甲第5号証それぞれに記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に想到し得るとは認められない。
(エ)小括
以上から,上申書における,本件特許発明8に対する請求人の上記の主張は採用できない。


第11 結言

平成28年9月9日付け訂正請求による訂正,すなわち,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし8についての訂正(訂正事項1,2,及び5ないし8),並びに本件特許の願書に添付した明細書の段落【0007】,【0009】,【0010】,【0014】ないし【0016】についての訂正(訂正事項3,4,及び9ないし12)を認める。
そして,本件特許の請求項1ないし8の各請求項に係る発明は,いずれも,甲第1号証ないし甲第8号証に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとは認められないから,無効理由通知の理由により,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
さらに,請求人が審判請求書で主張する無効理由1ないし3にも理由はなく,また,上申書における,本件特許発明1ないし8に対する請求人の主張も採用できない。
したがって,本件特許の請求項1ないし8の各請求項に係る発明は,特許法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすべきものではない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
チップ実装装置およびチップ実装方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装するチップ実装装置およびチップ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装する方法として、熱圧着による方法が知られている。この方法は、熱圧着ツールによりチップを基板に押圧するとともに、チップを加熱してチップの半田バンプを溶融させ、基板の電極にチップのバンプを半田接合するものである。この熱圧着過程においては、半田バンプが基板の電極に当接した時点では半田バンプは半田の融点以下の温度であり、半田バンプの当接からある時間経過後に半田バンプは溶融する。そして、半田バンプの溶融時点に関して、荷重検出手段による荷重検出値が所定値以下に減少したならば半田バンプが溶融したと判断し、熱圧着ツールを上昇させ所定高さで保持してヒータをOFFし、溶融した半田を冷却・固化させるチップ実装方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、半田バンプの接合強度を高めるために、半田融点温度よりも低い温度でチップと基板を予熱し、チップと基板を接触させて擦り合わせ、次いで、半田バンプを接触させた状態でチップと基板を半田融点温度以上に加熱し、半田バンプを所定量だけ押し込み、チップと基板の垂直方向に微振動を付与するチップ実装方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平11-145197号公報
【特許文献2】特開2005-209833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、半田バンプの溶融した時点を、チップの荷重検出手段の荷重検出値の変化で判断する方法の場合には、次の様な問題があった。まず、半田バンプを融点以上の温度になるように圧着ツールを加熱した時に、圧着ツールの下端部の高さが一定に保持されているために、半田が溶融するまでの間に、圧着ツールが熱膨張により高さ方向に伸びる。この圧着ツールの伸びにより、半田バンプには圧着ツールを含めた昇降ブロックの自重が応力としてかかる。そして、荷重検出値が所定値に達する前に半田が溶融し、圧着ツールの伸びも加わり、半田バンプを押し潰してしまうことがある。押し潰された半田バンプは連接した半田バンプの間でショート不良を発生し、製品の歩留まりおよび信頼性の低下を招くという問題が発生していた。特に、半田バンプのピッチがファインピッチ(例えば30μmピッチ)の半導体パッケージの場合においては、バンプ高さが低いために、わずかな熱膨張による圧着ツールの伸びでも、半田バンプを押し潰してしまい、隣接した半田バンプ間でショート不良が発生していた。また、半田バンプを押し潰さない荷重値を設定することが非常に困難であり、時間もかかるという問題があった。
【0005】
また、特許文献2のように、半田融点温度以上に加熱するときチップと基板の垂直方向に微振動を付与する方法の場合には、ボンディングヘッドの加圧力の設定によっては半田バンプが破壊するバンプクラッシュが発生してしまい、安定したチップの接合ができないという問題があった。
【0006】
そこで本発明の課題は、プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装するチップ実装において、隣接する半田バンプ間でのショート不良の発生を防止でき、接合後のチップと基板の間隔を所定の一定間隔とすることができる、歩留まりおよび信頼性の高いチップ実装装置およびチップ実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るチップ実装装置は、チップに加圧力を与えるツールと、前記ツールが装着されたツールホルダと、前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と、前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と、前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段を備えたことを特徴とするものからなる。
【0008】
このチップ実装装置においては、ツールホルダ位置検出手段が、ツールとチップが重なって基板に接触しているときのツールホルダの位置を検出し、この検出した位置に基づいて、ツールの高さと加圧力とを制御するので、ツールの位置を高精度に検出することができ、隣接するバンプ間でショート不良を発生させることがなく、信頼性の高いチップ実装装置を提供することができる。また、ツールの高さを高精度に制御可能であるので、チップと基板の間隔を所定の一定間隔とすることが可能になる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る他のチップ実装装置は、チップに加圧力を与えるツールと、前記ツールが装着されたツールホルダと、前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と、前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と、前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段を備えたチップ実装装置であって、前記駆動制御手段は、チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと、前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと、前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えていることを特徴とするものからなる。このような演算制御手段を設けてツールホルダの引き上げ量の演算制御することにより、チップと基板の間隔を各パラメータにより自動で制御できるようになり、安定したチップと基板の接合ができるようになる。
【0010】
また、本発明に係るチップ実装方法は、基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とする方法からなる。
【0011】
このチップ実装方法においては、ツールを下降させてチップのバンプを所定の荷重で基板に押圧した後、チップの加熱開始後にツールホルダの位置が所定値以下に到達したならばバンプが溶融したと瞬時に判断し、ツールを上昇させることにより、隣接した半田バンプ間でのショート不良の発生を確実に防止でき、短時間で所望の実装を行うことができるようになる。
【0012】
上記本発明に係るチップ実装方法においては、前記チップのバンプが溶融した後、前記チップのバンプと前記基板の電極との間に相対的な摩擦を発生させ、該摩擦により半田の表層の酸化膜を破壊して除去することが好ましい。このようにすれば、半田の表層の酸化膜が所定の範囲にわたって確実に除去されることになり、それによって濡れ性が大幅に改善され、半田溶融による優れたチップ実装方法を提供することができる。
【0013】
また、前記チップのバンプが溶融する時の前記チップの加圧力を、流動化した半田の内部の圧力よりも低い圧力として、前記チップのバンプを前記基板上の電極に接合することが好ましい。チップのバンプが溶融する時のチップの加圧力として、バンプの流動化した半田の内部圧力(浮力)よりも低い圧力で加圧することにより、半田の表層がチップの加圧力で破壊されることがなく、バンプクラッシュを発生することがなくなり、それによって半田バンプ間のショート不良が大幅に改善され、歩留まりおよび信頼性の高いチップ実装方法を提供することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る他のチップ実装方法は、基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって、前記ツールホルダ位置検出手段により、チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し、次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し、次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し、次いで、前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し、ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ、チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるようにすることを特徴とする方法からなる。この方法においては、ツールホルダ位置検出手段によってチップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出する。次に、ツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出する。次に、ツールのヒータに通電してツールが加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出する。次に、ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断する。次に、ツールホルダが第1の位置になるまでツールホルダ支持手段を引き上げる。次に、チップと基板の間を一定間隔に保持して半田を固化させる。このように、ツールのヒータに通電してツールが加熱したときの、ツールの熱膨張によるツール高さ位置の変化を検出して、チップのバンプと基板上の電極の接合を行うので、半田バンプの溶融したときのツールホルダの第3の位置をツールの熱膨張の変化を補正して正確に検出することができる。そして、チップと基板が一定間隔に保持されて固化されるので、実装工程後に行うアンダーフィルのチップと基板間への充填作業において、アンダーフィルの充填にばらつきが生じない。したがって、高速の信号処理を要求される半導体パッケージにおいては、各電極間の特性が均一となり、製品の信頼性が向上する。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るさらに他のチップ実装方法は、基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって、前記ツールホルダ位置検出手段により、チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し、次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し、次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し、次いで、前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し、ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ、チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において、予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と、チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と、ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と、前記ツールホルダの第1の位置と、前記ツールホルダの第2の位置と、前記ツールホルダの第3の位置と、前記ツールホルダの第4の位置とから、半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求めるようにすることを特徴とする方法からなる。このようにすれば、ツールホルダ位置検出手段によって、バンプ、基板、電極の高さのバラツキ及び、バンプの変形量をヒータの熱膨張を考慮して実装毎に計測することが可能になり、チップと基板の間隔を設定した所定の値通りになるように、ツールの位置をフィードバックして自動で制御することが可能となる。そのため、事前に試行して上記間隔を決定する手間が省けて、短時間で、人手によるミス等のない信頼性の高い条件設定にて基板へのチップの実装を行なうことができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るさらに他のチップ実装方法は、基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって、前記ツールホルダ位置検出手段により、チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し、次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し、次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し、次いで、前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し、ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ、チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において、ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し、この計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合、上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させるようにすることを特徴とする方法からなる。このようにすれば、計測された溶融時間を記憶しておくことにより、以後のチップ実装生産において溶融監視タイマーとして動作させることが可能となり、溶融監視タイマーを設けることにより、半田バンプの溶融にばらつきがあっても、安定した時間で基板へのチップの実装を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明に係るチップ実装装置およびチップ実装方法によれば、プリント基板等の基板に集積回路素子などのチップを実装するチップ実装において、とくに、高速の信号処理を要求される半導体パッケージにおいても、隣接する半田バンプ間でのショート不良の発生を確実に防止できるようになり、接合後のチップと基板の間隔を確実にかつ安定して望ましい所定の一定間隔にすることができるようになる。その結果、歩留まりおよび信頼性の高いチップ実装を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係るチップ実装装置の概略縦断面図である。
【図2】図1の装置における実装開始時の状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図3】図1の装置におけるバンプが基板に接触した状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図4】図1の装置におけるツールホルダ支持手段に対してツールホルダが離れ始めた状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図5】図1の装置におけるZ軸送りが停止された状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図6】図1の装置におけるツールの加熱によりツールホルダの位置が変化した状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図7】図1の装置におけるバンプの溶融によりツールホルダが降下した状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図8】図1の装置におけるツールホルダ支持手段を上方へ引き上げる状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図9】図1の装置におけるツールホルダを上方へ引き上げる状態を示す拡大部分縦断面図である。
【図10】実施例1に係るチップ実装方法のタイミングチャートである。
【図11】実施例1に係るチップ実装方法におけるチップと基板の位置関係を示す説明図である。
【図12】本発明の実施例2に係るチップ実装装置の概略縦断面図である。
【図13】図12の装置の基板保持ステージの概略平面図である。
【図14】実施例2に係るチップ実装方法のタイミングチャートである。
【図15】実施例3に係るチップ実装方法のタイミングチャートである。
【図16】他の変形例に係るチップ実装方法のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0019】
1:チップ
1a:バンプ
2:ツール
3:Z軸送り装置
4:基板保持ステージ
5:基板
5a:電極
6:サーボモータ
7:送り機構
8:スライダー
9:装置フレーム
10:ガイドレール
13:エンコーダ
15:ツールホルダ支持手段
16:ホルダブラケット
17:ツールホルダ
18:静圧空気軸受
19:加圧ポート
20:バランス圧ポート
22:駆動制御手段
23:ツールホルダ位置検出手段
24:チップ吸着孔
25:基板吸着孔
26a,26b:加振器
27a,27b:圧力調整手段
28:加圧ポート圧力制御手段
29:バランス圧ポート圧力制御手段
30:ポンプ
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
実施例1
図1は、本実施例に係るチップ実装装置を示している。チップ実装装置に備えられたZ軸送り装置3は、装置フレーム9に装着されたサーボモータ6で送り機構(例えば、ボールネジ)を回転させ、これを螺合させたスライダー8を、装置フレーム9に装着されたガイドレール10で案内して昇降させている。Z軸送り装置3は、本発明装置における駆動手段に相当する。
【0021】
ツールホルダ支持手段15は、スライダー8に装着されているツールホルダブラケット16に装着されている。また、ツールホルダ17は、上下動可能にツールホルダ支持手段15の内部に装着されている。ツール2はヒータを備え、このツール2がツールホルダ17の下端に装着されて、両者が一体となっている。ツール2にはチップ吸着孔24が備えられており、チップ1を保持している。基板5は、基板吸着孔25を備えた基板保持ステージ4に保持されている。なお、ツールホルダ支持手段15は、エアシリンダのシリンダチューブで構成されている。また、ツールホルダ17は、前記エアシリンダのピストンで構成されている。ツールホルダ17は、一般にエアベアリングと呼ばれている静圧空気軸受18を介してツールホルダ支持手段15に装着されている。
【0022】
そのため、ツールホルダ支持手段15には、上下に2つのエア供給ポートがある。上側のエア供給ポートが加圧ポート19であり、下側のエア供給ポートがバランス圧ポート20である。加圧ポート19にはポンプ30からのエアが圧力調整手段27aを介して接続されている。圧力調整手段27aは加圧ポート圧力制御手段28の信号に基づいて、加圧ポート19の圧力を制御する。また、バランス圧ポート20にはポンプ30からのエアが圧力調整手段27bを介して接続されている。圧力調整手段27bはバランス圧ポート圧力制御手段29の信号に基づいて、バランス圧ポート20の圧力を制御する。これら加圧ポート19及びバランス圧ポート20からそれぞれ圧力制御可能な圧力調整手段27a、27bによって調整された圧力P1、圧力P2が供給され、加圧エア同士の差圧でツールホルダ17の上下動を所定に制御することができ、ツール2を所定レベルに位置決めすることができる。また、その際、ツールホルダ17の自重を打ち消すように微小な差圧でチップ1に作用する荷重(加圧力)を制御することもできる。なお、圧力調整手段27a,27bとしては、電空レギュレータなどが用いられる。
【0023】
静圧空気軸受18は、ツールホルダ支持手段15に設けられている孔21から供給される加圧エアを多孔質体で均一に分散させてツールホルダ17の下部を非接触状態に支持できるので、その支持箇所の摩擦抵抗は無視することができる程度に極めて小さい。しかも、ツールホルダ17のヘッド部分もツールホルダ支持手段15に対して遊嵌されているので、同様にその箇所の摩擦抵抗も無視することができる程度に極めて小さい為に、ツールホルダ17を微小圧で制御することができる。なお、静圧空気軸受18は、ツールホルダ17の上下動を許容するが回転させないように非接触状態に支持できる為に静圧空気直進軸受とも呼ばれている。
【0024】
本実施例においては、ツールホルダ17の上端位置を検出してZ軸送り装置3の駆動制御手段22に位置情報を与えるツールホルダ位置検出手段23(例えば、渦電流式センサ等)をツールホルダ支持手段15に装着している。ツールホルダ位置検出手段23は、本発明装置におけるツールホルダ位置検出手段に相当する。また、加圧ポート圧力制御手段28と、バランス圧ポート圧力制御手段29は駆動制御手段22に接続されている。なお、駆動制御手段22には、サーボモータ6に取り付けられたエンコーダ13の検出信号も与えられている。
【0025】
上述したようなツールホルダ位置検出手段23を備えているので、Z軸送り装置が下降中にチップ1の半田からなるバンプ1aが基板5の電極5aに押しつけられた時、ツールホルダ17が押し上げられて浮上する(つまり、ツールホルダ支持手段15に対して相対的に上昇変移する)距離を検出できる。そのためバンプ1aや、基板5、電極5aの高さ方向の寸法バラツキがあった場合や、ツール2が熱膨張で伸びた場合にあっても、その浮上分をZ軸送り装置3の駆動制御手段22にフィードバックできるため、冷却させてハンダ(バンプ材料)を固着させるときに、ツール2に対して正確な高さ位置制御を行うことができ、したがって、良好なバンプ形状に実装することができる。なお、ここに言う良好なバンプ形状とは、バンプ潰れによりショートが発生したりせず、また、熱応力などに対して力学的に安定な形状である。
【0026】
以下、実施例1の装置の動作について説明する。
図2から図9に、チップ1の実装におけるツールホルダ支持手段15及びツールホルダ17の一連の昇降(上下動)制御態様が示されている。また、図10に、ツールホルダ支持手段15の高さ位置、ツールホルダ17の位置、ツール2のヒータの通電およびバンプ1aに掛かる荷重のそれぞれのタイミングが示されている。図10において(A)に示すグラフはチップ1の実装におけるホルダ支持手段15の高さ位置を示したものであり、チップ1のバンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接した位置を基準高さ(図10のh0)としている。図10において(B)に示すグラフは、ツールホルダ支持手段15の内部のツールホルダ17の位置を示したものであり、ツールホルダ17の下端がツールホルダ支持手段15に接触した位置を下端としている。図10において(C)に示すグラフは、ツール2のヒータ通電のON-OFFのタイミングを示している。図10において(D)に示すグラフは、チップ1のバンプ1aおよび基板の電極5aにかかる荷重(加圧力)を示している。
【0027】
実装を開始しようとする初期状態において、ツールホルダ支持手段15は図2に示すように上昇位置にある(図10のタイミングt0、高さh1)。この時Z軸送り装置3が高速で作動した時に、ツールホルダ17が慣性力で振動しないように、加圧ポート19の圧力P1とバランス圧ポート20の圧力P2の差圧でツールホルダ支持手段15の下部にツールホルダ17が接触するようにバランス圧ポート20の圧力P2を減圧させる。この場合の差圧はツールホルダ支持手段15の下部にツールホルダ17が接触するのであれば、加圧ポート19の圧力P1を増圧させてもよい。
【0028】
次いで、Z軸送り装置3が作動することにより、ツールホルダ支持手段15が、チップ1を保持したツール2と一体となって下降する。図3は、ツールホルダ支持手段15の下降途中で、チップ1のバンプ1aが基板5の電極5aに接触した状態を示している(図10のタイミングt1)。このときのツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離をX0とする。X0は、本発明における第1の位置に相当する。また、このとき、チップ1のバンプ1aにかかる圧力を所定の圧力とするためにバランス圧ポート20の圧力P2を増圧或いは減圧させる。この場合加圧ポート19の圧力P1を増圧或いは減圧させてもよい。このように、ツールホルダ17が静圧空気軸受18で支持されるとともに、加圧ポート19の圧力P1とバランス圧ポート20の圧力P2の差圧により圧力が一定となっているので、このときにチップ1のバンプ1aに作用する荷重(加圧力)は所定値に保たれ、バンプ1aは殆ど変形しない。
【0029】
さらに、Z軸送り装置3によるツールホルダ支持手段15の送りが続行されると、チップ1のバンプ1aが基板5の電極5aに接触している関係で、ツールホルダ17がツールホルダ支持手段15に対して相対的に浮上(上昇)する。図4は、ツールホルダ支持手段15に対してツールホルダ17が離れ始めた状態を示している(図10のタイミングt1からt2の状態)。浮上の際も、ツールホルダ17がバランス圧ポート20および加圧ポート19からエア供給されているのでチップ1のバンプ1aに作用する荷重(加圧力)は所定値に保たれ、バンプ1aは殆ど変形しない。
【0030】
次いで、図5に示すように、Z軸送り装置3の送り量が予め設定した値d1(バンプ1aの押し込み量)になるとZ軸送り装置3を停止する(図10のタイミングt2)。そして、ツールホルダ位置検出手段23がツールホルダ17の位置を検出する(図5のX1で示す距離)。X1は、本発明における第2の位置に相当する。なお、図4の状態においては、バンプ高さのバラツキや基板の反り等の為に、基板5の電極5aに対して全てのバンプ1aが接触しておらず、その一部が接触しているにすぎない。そのため、チップ1のバンプ1aの下端部が基板5の電極5aに当接してからバンプ1aの押し込み量d1だけ押し込んだとき、Z軸送り装置3による送りが停止される。次に、ツール2のヒータに通電してチップ1のバンプ1aを半田融点以上の温度に加熱する。
【0031】
次いで、図6に示すように、ツール2の加熱にともない、ツール2が熱膨張しツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離がX2となる。X2は、本発明における第3の位置に相当する。その際において、ツールホルダ17の自重を打ち消して数g(例えば1gから20g程度)の微小な加圧力で制御されているためにバンプ形状を損なわない。つまり、チップ1のバンプ1aが溶融する時にチップ1の荷重(加圧力)がバンプ1aのバンプ内部圧力(浮力)よりも低い圧力で加圧するようにできるので、半田の表層がチップ1の荷重(加圧力)で破壊されることがなく、バンプクラッシュを発生することがなくなる。
【0032】
その後、バンプ1aがツール2で加熱されて溶融し始める(図10のタイミングt3)。バンプ1aがツール2で加熱されて溶融が進むと、バンプ形状に歪みが発生しツールホルダ17がツール2と一体に下方に移動する。その際、ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離が前記X2から、さらに下方に移動したことを検出する。その検出値が所定値(図10のX3)になると、図7に示すように、バンプ1aが溶融したと判断している(図10のタイミングt4)。X3は、本発明における第4の位置に相当する。
【0033】
次いで、Z軸送り装置3による上方向への送りが開始されて、ツールホルダ位置検出手段23がX0を検出する。図8は、ツールホルダ17に対してツールホルダ支持手段15が最大に上昇された状態が示している(図10のタイミングt5)。ツールホルダ支持手段15の高さは、ツールホルダ支持手段15が図10のタイミングt1の時点の高さに比べ、ツール2の熱膨張によるZ軸方向の伸びH1から、t2のタイミングにおけるバンプ押し潰し量L1と、t4のタイミングにおけるバンプ溶融時の沈み込み量L2を引いた分だけ上方又は下方になるように駆動制御手段22によって制御されている(図10のd2。ツールホルダ17の引き上げ量)。この状態において、ツールホルダ支持手段15の内部のツールホルダ17の下端はツールホルダ支持手段15に接触しており、チップ1と基板5のギャップは、バンプ1aの高さと電極5aの高さを足した高さからバンプ押し潰し量L1とバンプ溶融時の沈み込み量L2を引いた高さだけとなり、ヒーターの熱膨張はキャンセルすることができる。
【0034】
次いで、チップ1と基板5の冷却時の間隔(ギャップ量)が所定の値になるように、Z軸送り装置3への指令値d3が駆動制御手段22によって計算され、Z軸送り装置3による送りが行われる(d3の値はバンプ1aの押し込み量d1と、ツールホルダ位置検出手段23により測定された各測定値と、後述するハンダバンプ高さの設定値G1と、ギャップ高さ設定値G2とにより計算される)。次いで、チップ1の吸着をOFFしてチップ吸着の真空圧を大気圧に戻すとともにツール2のヒーターへの通電がOFFする。次いで、Z軸送り装置3による送りが停止された状態で、ツール2に保持されたチップ1のバンプ1aが冷却される(図10のタイミングt6)。
【0035】
次いで、図9に示すように、Z軸送り装置3による上方向への送りが続行されると、ツールホルダ17が上昇する(図10のタイミングt7)。
【0036】
なお、図10のタイミングt5とt6は同じタイミングで実施してもよい。
【0037】
次に、図10と図11を用いて駆動制御手段22の処理する制御パラメータについて説明する。
【0038】
図11に、チップ1と基板5の接合状態が示されている。図11において(A)に示す図は、図10のタイミングt1におけるチップ1と基板5の状態を示している。チップ1と基板5の接触時のギャップは制御パラメータG1(ハンダバンプ高さの設定値)として駆動制御手段22で処理されている。
【0039】
図11において(B)に示す図は、図10のタイミングt2におけるチップ1と基板5の状態を示している。チップ1の押し込み量は制御パラメータL1として駆動制御手段22で処理されている。L1は図10のバンプ1aの押し込み量d1,第1の位置X0、第2の位置X1からL1=d1-(X0-X1)の計算式で求められる。L1はチップ1のバンプ1aに作用する荷重(加圧力)の分だけ押し込まれることになる。
【0040】
図11において(C)に示す図は、図10のタイミングt5におけるチップ1と基板5の状態を示している。バンプ1aの溶融時の沈み込み量はパラメータL2として駆動制御手段22で処理されている。L2は図10の第3の位置X2、第4の位置X3からL2=X3-X2の計算式で求められる。また、ヒータの熱膨張によるZ軸方向の伸びをH1とすると、H1=X1-X2の計算式で求められる。図10において、バンプ1aの押し込み量d1とツールホルダ17の引き上げ量d2は、d1+d2=X0-X3の関係となっている。従って、ツールホルダの引き上げ量d2は、d2=H1-(L1+L2)となるように駆動制御手段22で計算されZ軸送り制御装置3を制御している。
【0041】
図11において(D)に示す図は、図10のタイミングt6におけるチップ1と基板5のバンプ1aの冷却時の状態を示している。チップ1と基板5のバンプ1aの冷却後のギャップは制御パラメータG2(ギャップ高さ設定値)として駆動制御手段22で処理されている。図11の(A)と(D)より、チップ沈み込み量L3は、L3=G1-G2の関係がある。また、Z軸送り装置3への指令値d3は、L3=L1+L2-d3の関係がある。この関係にL1=d1-(X0-X1)および、L2=X3-X2を代入すると、L3=d1-(X0-X1+X2-X3)-d3となる。従って、Z軸送り装置3への指令値d3は、d3=d1-(X0-X1+X2-X3)-(G1-G2)になるように制御されている。
【0042】
例えば、G1を30μm、G2を23μmに設定し、指令値d1を10μmで行ったところ、X0が2000μm、X1が1995μm、X2が1985μm、X3が1989μmで測定されると、指令値d3は2μmとなるように駆動制御手段22で処理されZ軸送り装置3へ指令される。G2の設定条件によっては、d3の値がd2よりも小さい値となる場合がある。この場合、チップ1に作用する荷重(加圧力)を保ちながらバンプ1aの冷却を行うことができる。また、d3の値がd2の値よりも大きい場合は、チップ1に作用する荷重(加圧力)がゼロの状態でバンプ1aの冷却を行うことができる。
【0043】
以上のように、予めチップ1と基板5を実装する際、接触時のギャップG1と冷却時のギャップG2とバンプ1aの押し込み量d1を設定し、ツールホルダ位置検出手段23とツールホルダ17の距離の測定値X0,X1,X2,X3を測定することにより、冷却時のZ軸送り装置への指令値d3を求めることができ、事前に試行してギャップ量を決定する手間が省けて、バンプ1aの特性に合わせて、短時間で人手によるミスのない信頼性の高い条件設定を行うことができる。
【0044】
実施例2
本実施例では、基板保持ステージ4の構成が上記実施例1と異なるので、同じ構成部分には同一符号を付すことにより説明を省略し、異なる部分について具体的に説明する。
【0045】
図12は実施例2に係るチップ実装装置を示しており、図13は実施例2に係るチップ実装装置の基板保持ステージ4の概略平面図、図14は実施例2に係るチップ実装方法のタイミングチャートを示している。
【0046】
このチップ実装装置においては、図13に示すように、基板保持ステージ4に加振器26a、26bが付設されており、基板保持ステージ4に、互いに直交するする方向(X、Y方向)の振動が与えられ、それを介して基板保持ステージ4に保持されている基板5に2方向の振動が与えられる。このX、Y方向の複合振動により、チップ1のバンプ1aと基板5の電極5aの間には、微小な相対的複合振動が生じ、この相対的複合振動により摩擦が発生する。この摩擦により、バンプ1aや電極5aの表層に存在していた酸化膜が効率よくかつ確実に破壊され、除去される。
【0047】
図14の(E)に、加振器26a、26bのON・OFFのタイミングを示している(図14の(A)、(B)、(C)、(D)は図10と同様のタイミングチャートである)。このチップ実装方法においては、チップ1のバンプ1aが溶融し始める時点(図14のタイミングt4)より、所定時間(図14のtxの時間)、基板保持ステージ4に付設されている加振器26a、26bが動作し、チップ1のバンプ1aと基板5の電極5aの間に微小な相対的複合振動を生じさせる。
【0048】
実施例3
本実施例は、実施例1のバンプ1aの溶融時間を計測した後に実装するようにしたものである。まず、実施例1の図10のタイミングチャートに示されるバンプ1aの溶融時間(t2からt4までの時間)を生産開始時に測定する。バンプ1aの溶融時間は、バンプ1aの生産ロット等により半田バンプの融点温度が変化するため微妙に違っている。そのため、実装対象となるチップ1の型式変更時など初めての生産(実装作業の初めの生産)時に、半田バンプ溶融時間を計測する。計測された溶融時間(図15のタイミングチャートに示すTmelt)は、駆動制御手段22に記憶され、以後のチップ実装生産において溶融監視タイマーとして動作する。
【0049】
実施例3では、図15に示すように、ヒータON後、Tmelt経過後のツールホルダ17の位置がX3に達していなかった場合(半田が溶融していなかった場合)、ヒータの温度設定を上昇させ、バンプ1aを確実に溶融できるようにすることができる。
【0050】
このように、溶融監視タイマーを設けることにより、半田バンプの溶融にばらつきがあっても、安定した時間で基板へのチップの実装を行うことができる。なお、半田バンプを溶融させるために、温度上昇させるヒータは下部側からの加熱であってもよい。
【0051】
以上、代表的な3つの実施例について述べたが、本発明においていうチップ1とは、例えば、ICチップ、半導体チップ、光素子、表面実装部品、ウエハなど、その種類や大きさに関係なく、基板5に対して接合される対象物をいう。また、基板5とは、その種類や大きさに関係なく、チップ1に接合させる相手方の対象物をいう。
【0052】
また、基板保持ステージ4の上面に基板5を保持(又は支持)する手段は、基板吸気孔25による吸着保持手段、静電気による静電保持手段、磁石や磁気などによる磁気保持手段、複数の可動爪によって基板を掴む機械的手段、単数又は複数の可動爪によって基板を押さえる機械的手段など、いかなる形態の保持手段であってもよい。
【0053】
また、基板保持ステージ4についても、必要に応じて、固定型、可動型のいずれに設けてもよく、かつ、可動型に設ける場合においては、平行移動制御、回転制御、昇降制御、平行移動制御と回転制御、平行移動制御と昇降制御、回転制御と昇降制御、平行移動制御と回転制御と昇降制御、等のように各種態様に制御し得るように設けてもよい。
【0054】
また、チップ1に設けられたバンプ1aとは、例えば、通常形態の半田バンプ、スタッドバンプなど、基板5に設けられた電極5a(例えば、電極、ダミー電極など)と接合される対象物である。また、基板5に設けられた電極5aとは、例えば、配線を伴った電極、配線につながっていないダミー電極など、チップ1に設けられているバンプ1aと接合される相手方の対象物をいう。
【0055】
また、送り機構7及びZ軸送り装置3についても、例えば、ボールネジ型やリニアモータ型等、スライダー8を移動させ得る限りにおいては、いかなる型式のものであってもよい。
【0056】
また、本発明においていうチップ実装装置とは、チップを搭載するマウント装置やチップを接合するボンディング装置に加えて、例えば、基板とチップ、基板と接着材(ACF(Anisotropic Conductive Film)、NCF(Non Conductive Film)など)等、予め対象物同士が接触(搭載または仮圧着など)されたものを加圧、加熱及び/又は振動手段(超音波、ピエゾ素子、磁歪素子、ボイスコイルなど)によって固着又は転写させる装置を包含する広い概念の装置をいう。
【0057】
また、上述した実施例では、ツール2にチップ1を保持させた状態でツール2を下降させて、チップ1を基板5に加圧するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、チップを接着材などを使って基板上に予め搭載しておき、チップを保持してないツールを下降させて、基板上のチップを加圧するようにしてもよい。この場合、基板上に予め搭載されたチップにツールが接触することにより、ツールとチップが重なって基板に接触することになる。
【0058】
また、ツールホルダ17の下端に直接、ツール2を装着することに限定されず、必要ならば、ロードセルを介在させてもよい。
【0059】
また、ツールホルダ位置検出手段23は、渦電流式センサのみに限定されず、他のセンサー(レーザや光センサー等)であってもよい。
【0060】
また、加圧力が高い場合には、バランス圧ポートを使用しないで、加圧ポートのみで加圧力を制御してもよい。また、高さ検出手段は、ツールホルダ17の高さ位置を検出することによってツール2の高さ位置を測定するものに限らず、ツール2の高さ位置を直接、検出し得るように装着してもよい。
【0061】
更に、ツール2のヒータへの通電のOFFのタイミングは図16に示すように、ツールホルダ17が引き上げられたタイミングt7から所定時間経過した後OFFしてもよい。このようにヒータへの通電のOFFのタイミングを遅らせることにより、チップ1のバンプ1aの溶融を確実にすることができる(図16のタイミングt8)。
【0062】
また、実施例1および実施例2では、ヒータはツール2に備えられているが、基板保持ステージ4に備えてもよい。チップ1と基板5を効率よく加熱できる構成であればよく、加熱に伴うツール2の熱膨張によるZ軸方向の伸びはツールホルダ位置検出手段23で検出することができる。さらに、ツール2側および基板保持ステージ4側の両方にヒータを備えてもよい。これにより、チップ1と基板5の加温を短時間にでき、更にセラミックヒータを用いたパルスヒータで加熱を行うと応答性のよい昇温が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るチップ実装装置およびチップ実装方法は、上下動可能なツールを用いてチップを基板に実装するようにしたあらゆるチップ実装に適用可能である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップに加圧力を与えるツールと、前記ツールが装着されたツールホルダと、前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と、前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と、前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールが加熱により熱膨張したときの前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールの高さと前記加圧力とを制御し、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する駆動制御手段を備えたことを特徴とするチップ実装装置。
【請求項2】
チップに加圧力を与えるツールと、前記ツールが装着されたツールホルダと、前記ツールホルダを上下動可能に支持するツールホルダ支持手段と、前記ツールホルダ支持手段を上下動させる駆動手段と、前記ツールホルダ支持手段に対するツールホルダの相対的な位置を検出するツールホルダ位置検出手段とを備えたチップ実装装置において、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールの高さと前記加圧力とを制御する駆動制御手段を備えたチップ実装装置であって、前記駆動制御手段は、チップと基板が当接したときの前記チップと前記基板との間隔のパラメータと、前記チップを前記基板に押し込む際の押し込み量のパラメータと、前記ツールホルダ位置検出手段により検出された前記ツールホルダの相対的な位置のパラメータとから、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御する手段を備えていることを特徴とするチップ実装装置。
【請求項3】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法。
【請求項4】
前記チップのバンプが溶融した後、前記チップのバンプと前記基板の電極との間に相対的な摩擦を発生させ、該摩擦により半田の表層の酸化膜を破壊して除去する、請求項3に記載のチップ実装方法。
【請求項5】
前記チップのバンプが溶融する時の前記チップの加圧力を、流動化した半田の内部の圧力よりも低い圧力として、前記チップのバンプを前記基板上の電極に接合する、請求項3に記載のチップ実装方法。
【請求項6】
基板支持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールの熱膨張による伸びを前記ツールホルダ位置検出手段で検出し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、前記ツールとチップとが重なって基板に接触しているときの前記ツールホルダの位置に基づいて、前記ツールホルダの引き上げ量を演算し制御し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって、前記ツールホルダ位置検出手段により、チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し、次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し、次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し、次いで、前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し、ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ、チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させることを特徴とするチップ実装方法。
【請求項7】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダに降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって、前記ツールホルダ位置検出手段により、チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し、次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し、次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し、次いで、前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し、ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ、チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において、予め設定したチップのバンプが固化したときのチップと基板との間隔と、チップのバンプと基板の電極が当接したときのチップと基板との間隔と、ツールを基板側に押し込んだときの押し込み量と、前記ツールホルダの第1の位置と、前記ツールホルダの第2の位置と、前記ツールホルダの第3の位置と、前記ツールホルダの第4の位置とから、半田固化時のツールホルダの引き上げ量を求めることを特徴とするチップ実装方法。
【請求項8】
基板保持ステージに保持されている基板の上方から、ツールホルダ支持手段により上下動可能に支持されたツールホルダを降下させ、前記ツールホルダに装着されたツールを介してチップに加圧力を与えることにより、前記チップのバンプを前記基板上の電極に圧着し、接合するチップ実装方法において、前記ツールを降下させて前記チップのバンプを所定の加圧力で前記基板の電極に押圧し、ツールホルダのツールホルダ支持手段に対する相対的な位置をツールホルダ位置検出手段によって検出し、前記ツールのヒータに通電して半田からなる前記チップのバンプを半田の融点以上の温度に加熱し、前記ツールホルダ位置検出手段により検出した前記ツールホルダの相対的な位置が所定値に到達したならば前記チップのバンプが溶融したと判断し、しかる後に前記ツールホルダ支持手段を上昇させることを特徴とするチップ実装方法であって、前記ツールホルダ位置検出手段により、チップのバンプと基板の電極が当接したときのツールホルダの第1の位置を検出し、次にツールを基板に押し込んだときのツールホルダの第2の位置を検出し、次にツールのヒータに通電してツールを加熱したときのツールホルダの第3の位置を検出し、次いで、前記ツールホルダ位置検出手段によって検出されるツールホルダの位置が第4の位置に到達したならばチップのバンプが溶融したと判断し、ツールホルダが前記第1の位置になるまで前記ツールホルダ支持手段を引き上げ、チップと基板との間隔を一定間隔に保持して半田を固化させるチップ実装方法において、ツールのヒータに通電してツールを加熱してからチップのバンプが溶融するまでの時間を予め計測し、前記計測した時間内でバンプの溶融時のツールの高さに到達しない場合、上部ヒータ又は下部ヒータの温度設定を上昇させ半田を溶融させることを特徴とするチップ実装方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-11-22 
結審通知日 2016-12-01 
審決日 2016-12-13 
出願番号 特願2007-549089(P2007-549089)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (H01L)
P 1 113・ 113- YAA (H01L)
P 1 113・ 851- YAA (H01L)
P 1 113・ 857- YAA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 飯田 清司
河口 雅英
登録日 2012-06-15 
登録番号 特許第5014151号(P5014151)
発明の名称 チップ実装装置およびチップ実装方法  
代理人 細田 浩一  
代理人 澤井 光一  
代理人 伴 俊光  
代理人 大貫 敏史  
代理人 伴 俊光  
代理人 細田 浩一  
代理人 稲葉 良幸  
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