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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1326226 |
審判番号 | 不服2015-16687 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-10 |
確定日 | 2017-03-15 |
事件の表示 | 特願2012-510423「悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとしてのホスホジエステラーゼ4D7」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月18日国際公開、WO2010/131194、平成24年11月 1日国内公表、特表2012-526544〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年5月11日(パリ条約による優先権主張 2009年5月12日、2009年9月8日、いずれも欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年5月21日付けで拒絶査定がされたところ、同年9月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年9月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成27年9月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、拒絶査定不服審判の請求と同時にしたものであって、本件補正前の請求項1と本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。 本件補正前: 「【請求項1】悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるためのホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)であって、悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を、正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、前記マーカーの発現が増加している、ホスホジエステラーゼ4D7。」 本件補正後: 「【請求項1】良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別するためのマーカーとして使用するホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)であって、試料において決定されたPDE4D7の発現レベルが、試料において決定された参照遺伝子の発現に基準化され、基準化された前記発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較され、前記カットオフ値を上回る基準化された発現レベルが、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、前記カットオフ値が-2から+2である、ホスホジエステラーゼ4D7。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の「悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるための」を本件補正後の「良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別するためのマーカーとして使用する」に変更し、本件補正前の「悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を、正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、前記マーカーの発現が増加している、」という事項を削除し、「試料において決定されたPDE4D7の発現レベルが、試料において決定された参照遺伝子の発現に基準化され、基準化された前記発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較され、前記カットオフ値を上回る基準化された発現レベルが、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、前記カットオフ値が-2から+2である、」という事項を追加する補正であるが、本件補正後の「試料において決定されたPDE4D7の発現レベルが、試料において決定された参照遺伝子の発現に基準化され、基準化された前記発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較され、前記カットオフ値を上回る基準化された発現レベルが、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、前記カットオフ値が-2から+2である、」という事項が、本件補正前の「悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を、正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、前記マーカーの発現が増加している、」という事項を限定したものでないことは明らかであるから、かかる補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正に該当しない。また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とする補正にも該当しない。 仮に、審判請求人が審判請求書において「この補正は、限定的減縮を目的としており、補正の要件を満たすものです。」と主張するように、本件補正が、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当すると仮定したとしても、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)は、以下で述べる理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1.に「本件補正後」として記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項 原査定の拒絶理由に引用文献1として引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第03/044170号(以下、「引用例」という)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する)。 ア.「本発明のPDE4D7は、ヌクレオチド一燐酸(cAMPを含む)の加水分解を触媒する各種ホスホジエステラーゼ(PDE)の一族に属する。」(第6頁第19行?第20行) イ.「ヒトPDE4D7の全長クローニング ・・・・・・・・・・・・ ヒトPDE4D7の全長cDNAおよびタンパク質配列が夫々、配列番号11および 配列番号12に示される。」(第57頁第1行?第24行) ウ.「組み換えヒトPDE4D7のCHO細胞での発現 ・・・・・・・・・・・・ 結果は、組み換えヒトPDE4D7はcAMPを分解することが出来、その酵素活性は、PDE4特異的阻害剤であるロリプラムにより阻害されることを示している。」(第58頁第23行?第59頁第27行) 上記ア.?ウ.の記載によれば、引用例には、「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」である点で一致し、本願補正発明は、「良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別するためのマーカーとして使用する」ものであって、「試料において決定されたPDE4D7の発現レベルが、試料において決定された参照遺伝子の発現に基準化され、基準化された前記発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較され、前記カットオフ値を上回る基準化された発現レベルが、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、前記カットオフ値が-2から+2である」のに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点で一応相違する。 (4)相違点についての判断 そこで、上記相違点について検討する。 本願補正発明は、「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」という化学物質に係る発明であるが、「良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別するためのマーカーとして使用する」という記載は、その化学物質の有用性を示しているに過ぎず、また、「試料において決定されたPDE4D7の発現レベルが、試料において決定された参照遺伝子の発現に基準化され、基準化された前記発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較され、前記カットオフ値を上回る基準化された発現レベルが、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、前記カットオフ値が-2から+2である」という記載は、「良性の前立腺腫瘍と悪性のホルモン感受性前立腺がんとを区別するためのマーカーとして使用する」際の指標を示しているに過ぎないから、本願補正発明は、用途限定のない「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」そのものであると解される。 よって、本願補正発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」は、引用発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」と物として区別できないので、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。 (5)審判請求人の主張 審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1?3のいずれも、補正後の請求項に係る発明の一特徴である「基準化された前記発現レベルが、良性の前立腺腫瘍を排除するように選択された所定のカットオフ値と比較され、前記カットオフ値を上回る基準化された発現レベルが、悪性のホルモン感受性前立腺がんを示し、前記カットオフ値が-2から+2である、」という構成を開示も示唆もしておりません。また、上記の特徴を含む本願発明は、PDE4D7の未知の属性によりPDE4D7が新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明であり、単にPDE4D7の有用性を示しているに過ぎないというわけではないと思料いたします。」と主張しているが、上記(4)で述べたように、本願補正発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」は、引用発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」と物として区別できないので、審判請求人の上記主張は採用できない。 (6)小括 以上検討したところによれば、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明についての新規性の判断 1.本願発明 平成27年9月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?18に係る発明は平成26年11月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2 1.に「本件補正前」として記載したとおりのものである。 2.引用例の記載事項 引用例に記載された発明(引用発明)は、上記第2 2.(2)に記載したとおりのものである。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」である点で一致し、本願発明は、「悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるための」ものであって、「悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を、正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、前記マーカーの発現が増加している」のに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点で一応相違する。 4.相違点についての判断 そこで、上記相違点について検討する。 本願発明は、「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」という化学物質に係る発明であるが、「悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるための」という記載は、その化学物質の有用性を示しているに過ぎず、また、「悪性のホルモン感受性前立腺がん組織における発現を、正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較すると、前記マーカーの発現が増加している」という記載は、「悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いる」際の指標を示しているに過ぎないから、本願発明は、用途限定のない「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」そのものであると解される。 よって、本願発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」は、引用発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」と物として区別できないので、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。 5.審判請求人の主張 審判請求人は、平成26年11月21日付けの意見書において、「引用文献はどれも、その悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとして用いるためのホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)において、組織試料における発現を正常な組織又は良性の前立腺腫瘍組織における発現と比較し、前記マーカーの発現における増加を見出すことによって悪性のホルモン感受性前立腺がんを同定する構成を開示も示唆もしておりません。」と主張しているが、上記4.で述べたように、本願発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」は、引用発明の「ホスホジエステラーゼ4D7(PDE4D7)」と物として区別できないので、審判請求人の上記主張は採用できない。 6.小括 以上検討したところによれば、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第4 まとめ 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないので、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-10-17 |
結審通知日 | 2016-10-18 |
審決日 | 2016-10-31 |
出願番号 | 特願2012-510423(P2012-510423) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N) P 1 8・ 575- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉門 沙央里 |
特許庁審判長 |
中島 庸子 |
特許庁審判官 |
松田 芳子 高堀 栄二 |
発明の名称 | 悪性のホルモン感受性前立腺がんのマーカーとしてのホスホジエステラーゼ4D7 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |