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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1326232
審判番号 不服2015-20068  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-09 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2012-527226「燃焼システム、及び燃焼システムの排気ダクト内に設置された触媒コンバータを洗浄するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日国際公開、WO2011/026602、平成25年 2月 4日国内公表、特表2013-503996〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2010年8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年9月1日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成24年2月29日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成24年4月16日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成25年8月30日に手続補正書が提出され、平成26年9月4日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成26年12月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年6月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年11月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、その後、平成28年3月30日に上申書が提出されたものである。


第2 平成27年11月9日付けの手続補正
平成27年11月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」ともいう。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年12月9日に提出された手続補正書により補正された)下記のAに示す請求項1ないし5を、下記のBに示す請求項1ないし5と補正するものである。
A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5
「 【請求項1】
排気ガスを排出するための排気ダクトと、
触媒排気ガス浄化のために、前記排気ダクトの中に配置され、そこを通って前記排気ガスが流れることができる触媒コンバータであって、入口側に前記排気ガス用の入口開口部が形成されている前記触媒コンバータと、
前記入口側の堆積物を機械的に除去するための洗浄ブラシを有する、前記入口側に設けられた洗浄装置と、
を備え、
前記洗浄装置が洗浄流体用の噴射装置をさらに有し、前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上、または前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される、燃焼システム。
【請求項2】
前記洗浄ブラシが、ローラであり、ローラ長手方向軸線を中心に回転する、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項3】
前記洗浄装置が、前記洗浄ブラシのブラシ毛を洗浄するための剥ぎ取り要素を有し、前記剥ぎ取り要素が、ブラシ回転軸に対してほぼ半径方向に配向される剥ぎ取り用縁部を有し、それにより、前記ブラシ毛が剥ぎ取り工程中に最初に弾性的に応力を受け、次に応力が再び除去される、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項4】
燃焼システムの排気ダクトに設置される触媒コンバータを洗浄するための方法であって、洗浄ブラシを用いて前記触媒コンバータの入口側から堆積物を除去するステップを含む、方法。
【請求項5】
前記燃焼システムの運転中に前記除去するステップを実施することをさらに含む、請求項4に記載の方法。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5
「 【請求項1】
排気ガスを排出するための排気ダクトと、
触媒排気ガス浄化のために、前記排気ダクトの中に配置され、そこを通って前記排気ガスが流れることができる触媒コンバータであって、入口側に前記排気ガス用の入口開口部が形成されている前記触媒コンバータと、
前記入口側の堆積物を機械的に除去するための洗浄ブラシを有する、前記入口側に設けられた洗浄装置と、
を備え、
前記洗浄装置が洗浄流体用の噴射装置をさらに有し、前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上および前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される、燃焼システム。
【請求項2】
前記洗浄ブラシが、ローラであり、ローラ長手方向軸線を中心に回転する、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項3】
前記洗浄装置が、前記洗浄ブラシのブラシ毛を洗浄するための剥ぎ取り要素を有し、前記剥ぎ取り要素が、ブラシ回転軸に対してほぼ半径方向に配向される剥ぎ取り用縁部を有し、それにより、前記ブラシ毛が剥ぎ取り工程中に最初に弾性的に応力を受け、次に応力が再び除去される、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項4】
燃焼システムの排気ダクトに設置される触媒コンバータを洗浄するための方法であって、洗浄ブラシを用いて前記触媒コンバータの入口側から堆積物を除去するステップを含む、方法。
【請求項5】
前記燃焼システムの運転中に前記除去するステップを実施することをさらに含む、請求項4に記載の方法。」
(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)


第3 検討1
1 本願発明4
上記第2のAに示す請求項4の記載と上記第2のBに示す請求項4の記載とは同じであり、本件出願の請求項4については、本件補正により補正がされていない。
したがって、本件出願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明4」という。)は、平成27年11月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに平成24年4月16日に提出された翻訳文の明細書及び図面の記載によれば、上記第2のBに示す特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2 引用刊行物
(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本件出願の出願前に頒布された刊行物である実願平1-86999号(実開平3-26322号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「 産業上の利用分野
この考案は、触媒脱硝装置、例えば、ごみ焼却プラントから排出されるダーティガスに含まれた窒素酸化物を除去する装置において、触媒を清掃するためのスートブロワに関する。」(明細書1ページ11ないし15行)

イ 「 考案が解決しようとする課題
近年、窒素酸化物の低減は、ますます社会ニーズとして高まりつつある。窒素酸化物低減装置の1つである触媒脱硝装置は、その高除去率性が期待できるところろからニーズが高まっている。
ところで、ごみ焼却プラントから排出されるダーティガスに含まれた窒素酸化物を除去するために触媒脱硝装置を用いる場合、触媒へのダストの付着がとくに問題になるが、上記した2種類のスートブロワでは触媒を期待通りに清掃することが困難で、ごみ焼却プラントを長期連続運転することができなかった。その理由は、つぎのように考えられる。
ごみ焼却プラントでは、ガス通路の電気集塵器の下流に触媒脱硝装置が設置される。電気集塵器を通過する際にダストは帯電し、帯電したダストが触媒脱硝装置に送られて触媒に強く付着する。そのために、上記2種ののスートブロワのうち、圧送式のものでは帯電したダストを吹き払うのは困難であった。一方、機械式スートブロワではダストの帯電をきることができるが、機械式スートブロワは圧送式のものと比較して効率が悪かった。
この考案の目的は、触媒を期待通りに清掃することができ、ごみ焼却プラントの長期連続運転を可能とする触媒脱硝装置におけるスートブロワを提供することにある。
課題を解決するための手段
この考案による触媒脱硝装置におけるスートブロワでは、ガス通路内の触媒より上流に、触媒に蒸気または空気を吹き付けて触媒の付着物を吹き払うノズルと、同付着物を擦り取るブラシとが配置されているものである。
作 用
この考案による触媒脱硝装置におけるスートブロワでは、ガス通路内の触媒より上流に、触媒に蒸気または空気を吹き付けて触媒の付き物を吹き払うノズルと、同付着物を擦り取るブラシとが配置されているから、触媒の付着物はノズルから吹き付けられる蒸気またはガスにより吹き払われ、これと同時にブラシにより擦り取られる。」(明細書2ページ18行ないし4ページ末行)

ウ 「第3図を参照すると、矢印で示すように、垂直ダクト11内を上から下ヘガスが流れるようになっており、ガス通路12内には方形水平板状触媒Cが上下2段に配置されている。両触媒Cにはスートブロワ13がそれぞれ備えられている。
スートブロワ13は、第1図に示すように、ダクト11を貰通して触媒Cの上方をピストンロッド21が移動するように配置されている流体圧シリンダ22と、ピストンロッド21の先端に直交状に取付けられている可動パイプ23と、可動パイプ23の長さ方向に所定間隔で下向き設けられている複数のノズル24と、可動パイプ23の全長に渡って下向きに設けられているブラシ25とよりなる。
流体圧シリンダ22にはアース26が設けられている。可動パイプ23の長さは触媒Cの一方向の幅のそれに等しい。第3図を参照して、可動パイプ23には、詳しく図示しないが、供給源27よりのびてきた供給管28が分岐管29を介して接続さており、これにより、可動パイプ23には蒸気または加圧空気が供給される。分岐管29には開閉弁31が設けられている。ノズル24は、第2図に詳しく示すように、可動パイプ23の周壁に左斜め下向きに孔をあけることにより形成されたものである。ブラシ25は、同じく第2図に詳しく示すように、先端を触媒Cの上面に当接させるように可動パイプ23の周壁に右斜め下向きに植え込まれたものである。ブラシ25の材質としては、カーボン、ファイバのような弾性体、鋼製ワイヤのような剛性体があげられる。
流体圧シリンダ22の作動で可動バー23を移動させることにより、触媒Cの上面に体積した付着物Dはノズル24から吹き付けられる蒸気またはガスにより吹き払われ、これと同時にブラシ25により擦り取られる。
考案の効果
この考案によれば、触媒の付着物はノズルから吹き付けられる蒸気またはガスにより吹き払われ、これと同時にブラシにより擦り取られるから、冒頭で説明した従来の圧送式および機械式スートブロワのブロワ力を合せたブロワ力を発揮し、また、付着物の帯電はブラシによりきられるから、それ以上のブロワ力を発揮する。」(明細書5ページ5行ないし7ページ7行)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)アないしウ及び第1ないし3図の記載(特に、明細書1ページ12ないし15行、3ページ4ないし10行、4ページ2ないし20行及び5ページ5ないし9行並びに第1ないし3図の記載)によれば、引用刊行物には、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントの垂直ダクト11に設置される触媒Cを清掃するための方法が記載されていることが分かる。

イ 上記(2)アないしウ及び第1ないし3図の記載(特に、明細書4ページ13ないし20行、5ページ5ないし18行及び6ページ15行ないし7ページ7行並びに第1ないし3図の記載)によれば、上記アの方法は、ブラシ25を用いて触媒Cのガスが流入する上面(入口側)から付着物Dを擦り取るステップを含むことが分かる。
ここで、触媒Cの上面にガスが流入することは、引用刊行物の明細書5ページ5ないし8行の「第3図を参照すると、矢印で示すように、垂直ダクト11内を上から下ヘガスが流れるようになっており、ガス通路12内には方形水平板状触媒Cが上下2段に配置されている。」との記載及び第3図の矢印で示されたガスの流れと触媒Cの上面との関係の記載からみて明らかである。

ウ 引用発明A
上記ア及びイを総合して、本願発明4の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認める。
「触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントの垂直ダクト11に設置される触媒Cを清掃するための方法であって、ブラシ25を用いて前記触媒Cのガスが流入する上面から付着物Dを擦り取るステップを含む、方法。」

3 対比
本願発明4と引用発明Aとを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明Aにおける「触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラント」は、本願発明4における「燃焼システム」に相当し、以下同様に、「垂直ダクト11」は「排気ダクト」に、「清掃」は「洗浄」に、「ブラシ25」は「洗浄ブラシ」に、「付着物D」は「堆積物」に、「擦り取る」は「除去する」に、それぞれ相当する。

・引用発明Aにおける「触媒C」は、ガスに含まれる窒素酸化物の除去に用いられることから、本願発明4における「触媒コンバータ」に相当する。

・引用発明Aにおける「触媒C」の「ガスが流入する上面」は、ガスが流入する入口開口部が設けられることになるから、本願発明4における「触媒コンバータ」の「入口側」に相当する。

したがって、両者は、
「燃焼システムの排気ダクトに設置される触媒コンバータを洗浄するための方法であって、洗浄ブラシを用いて前記触媒コンバータの入口側から堆積物を除去するステップを含む、方法。」
の点で一致し、相違する点はない。

4 判断
上記3で検討したとおり、本願発明4と引用発明Aとは、発明特定事項に相違はない。
仮に相違が認められたとしても、本願発明4は、引用発明Aから予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明4は、引用刊行物に記載された引用発明Aと同一であり、又は、引用発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明4は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 検討2
1 平成27年11月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年11月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
平成27年11月9日付けの手続補正(本件補正)の内容については、上記第2に示したとおりである。

(2)本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1における「前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上、または前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される」という記載を、「前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上および前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される」とするものであるから、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「噴射装置」について、洗浄流体が噴霧される位置を限定するものといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(3)本願補正発明の独立特許要件について
ア 本願補正発明
本願補正発明は、平成27年11月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記第2のBの【請求項1】に示したとおりのものである。

イ 引用刊行物
(ア)引用刊行物の記載事項
引用刊行物(実願平1-86999号(実開平3-26322号)のマイクロフィルム)及びその記載事項は、上記第3の2(1)に記載したとおりである。

(イ)上記(ア)及び図面の記載から分かること
a 上記第3の2(1)アないしウ及び第3図の記載(特に、明細書5ページ5ないし8行及び第3図の記載)によれば、引用刊行物には、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントが記載されていることが分かる。

b 上記第3の2(1)アないしウ及び第3図の記載(特に、明細書1ページ12ないし15行、3ページ4ないし13行及び4ページ2ないし5行並びに第1ないし3図の記載)によれば、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントは、ガスを排出するための垂直ダクト11を備えることが分かる。

c 上記第3の2(1)アないし及びウ並びに第1ないし3図の記載(特に、明細書1ページ12ないし15行、3ページ4ないし10行及び5ページ5ないし9行並びに第3図の記載)によれば、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントは、ガスに含まれた窒素酸化物の除去のために、垂直ダクト11の中に配置され、そこを通ってガスが流れることができる触媒Cであって、ガスが流入する上面にガス用の入口開口部が形成されている触媒Cを備えることが分かる。
ここで、触媒Cの上面に、ガス用の入口開口部が形成され、ガスが流入することは、引用刊行物の明細書5ページ5ないし8行の「第3図を参照すると、矢印で示すように、垂直ダクト11内を上から下ヘガスが流れるようになっており、ガス通路12内には方形水平板状触媒Cが上下2段に配置されている。」との記載及び第3図の矢印で示されたガスの流れと触媒Cの上面との関係の記載からみて明らかである。

d 上記第3の2(1)アないしウ及び第1ないし3図の記載(特に、明細書5ページ5ないし18行及び6ページ9ないし19行並びに第1ないし3図の記載)によれば、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントは、触媒Cのガスが流入する上面の付着物Dを擦り取るためのブラシ25を有する、触媒Cのガスが流入する上面に設けられたスートブロア13を備えることが分かる。

e 上記第3の2(1)アないしウ及び第1ないし3図の記載(特に、明細書5ページ10ないし6ページ19行及び第1ないし3図の記載)によれば、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラントにおいて、スートブロア13が蒸気又は加圧空気用の可動パイプ23に設けられたノズル24をさらに有し、可動パイプ23に設けられたノズル24は蒸気又は加圧空気が触媒Cのガスが流入する上面の上に吹き付けられるように配置されることが分かる。

(ウ)引用発明B
上記(ア)及び(イ)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認める。
「ガスを排出するための垂直ダクト11と、
ガスに含まれた窒素酸化物の除去のために、前記垂直ダクト11の中に配置され、そこを通って前記ガスが流れることができる触媒Cであって、ガスが流入する上面に前記ガス用の入口開口部が形成されている前記触媒Cと、
前記ガスが流入する上面の付着物Dを擦り取るためのブラシ25を有する、前記ガスが流入する上面に設けられたスートブロア13と、
を備え、
前記スートブロア13が蒸気又は加圧空気用の可動パイプ23に設けられたノズル24をさらに有し、前記可動パイプ23に設けられたノズル24は前記蒸気又は加圧空気が前記ガスが流入する上面の上に吹き付けられるように配置される、触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラント。」

ウ 対比
本願補正発明と引用発明Bとを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明Bにおける「ガス」は、本願補正発明における「排気ガス」に相当し、以下同様に、「垂直ダクト11」は「排気ダクト」に、「入口開口部」は「入口開口部」に、「付着物D」は「堆積物」に、「擦り取る」は「機械的に除去する」に、「ブラシ25」は「洗浄ブラシ」に、「スートブロア13」は「洗浄装置」に、「蒸気又は加圧空気」は「洗浄流体」に、「可動パイプ23に設けられたノズル24」は「噴射装置」に、「吹き付けられる」は「噴霧される」に、「触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラント」は「燃焼システム」に、それぞれ相当する。

・引用発明Bにおける「ガスに含まれた窒素酸化物の除去」は、触媒Cによってガスの浄化が行われることを意味するから、本願補正発明における「触媒排気ガス浄化」に相当する。

・引用発明Bにおける「触媒C」は、ガスに含まれた窒素酸化物の除去に用いられることから、本願補正発明における「触媒コンバータ」に相当する。

・引用発明Bにおける「触媒C」の「ガスが流入する上面」は、ガスが流入する入口開口部が形成されることから、本願補正発明における「触媒コンバータ」の「入口側」に相当する。

・引用発明Bにおける「前記可動パイプ23に設けられたノズル24は前記蒸気又は加圧空気が前記ガスが流入する上面の上に吹き付けられるように配置される」は、本願補正発明における「前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上および前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される」に、「前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上に噴霧されるように配置される」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「排気ガスを排出するための排気ダクトと、
触媒排気ガス浄化のために、前記排気ダクトの中に配置され、そこを通って前記排気ガスが流れることができる触媒コンバータであって、入口側に前記排気ガス用の入口開口部が形成されている前記触媒コンバータと、
前記入口側の堆積物を機械的に除去するための洗浄ブラシを有する、前記入口側に設けられた洗浄装置と、
を備え、
前記洗浄装置が洗浄流体用の噴射装置をさらに有し、前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上に噴霧されるように配置される、燃焼システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
「前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上に噴霧されるように配置される」ことに関し、本願補正発明においては、「前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上および前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される」のに対して、引用発明Bにおいては、「前記可動パイプ23に設けられたノズル24は前記蒸気又は加圧空気が前記ガスが流入する上面の上に吹き付けられるように配置される」ところ、洗浄流体が洗浄ブラシの上に噴霧されるか否か明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

エ 判断
上記相違点について検討する。
洗浄流体及び洗浄ブラシを用いて被洗浄面の洗浄を行う洗浄装置において、洗浄流体を被洗浄面に加え、洗浄ブラシにも噴霧する手段を設けることは、本件出願の出願前において周知の技術(以下、「周知技術」という。必要であれば、特開平7-6987号公報(特に、段落【0019】及び図1)及び特開2001-54765号公報(特に、段落【0035】ないし【0038】及び図2)を参照。)である。
上記周知技術は、洗浄面の洗浄を連続的に行うのに好適であり(特開2001-54765号公報の段落【0038】を参照。)、洗浄面の洗浄を中断することなく効率的に行えるところ、引用発明Bにおいて、触媒Cのガスが流入する上面の清掃をより効率的に行うことは、当業者であれば当然に考慮することである。
ところで、本願明細書の段落【0024】には、「図2に示した例示的な実施態様では、洗浄ブラシ22の洗浄が噴射装置34によって補助されるが、その理由は、洗浄流体がブラシ毛26にも加えられるからである。例えば、このことは、埃がブラシ毛26から吹き飛ばされることを可能にする。原則として、2つの別々の噴射装置34を設けることが可能であり、この場合、これらの噴射装置34は、異なる洗浄流体を有した状態で及び異なる配向で配置することができる。」と記載されており、本願補正発明において、複数の噴射装置を設けた態様も含むものである。
そうすると、引用発明Bにおいて、上記周知技術を採用することにより、可動パイプ23に設けられたノズル24(本願補正発明の「噴射装置」に相当。以下、括弧内は同様。)は蒸気又は加圧空気(洗浄流体)がガスが流入する上面(入口側)の上に吹き付けられる(噴霧される)ように配置されるのに加えて、別のノズル(噴射装置)から蒸気又は加圧空気(洗浄流体)がブラシ25(洗浄ブラシ)の上にも吹き付けられる(噴霧される)ようにし、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

2 本願発明1について
(1)本願発明1
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明1」という。)は、平成26年12月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記第2のAの【請求項1】に示したとおりのものである。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物(実願平1-86999号(実開平3-26322号)のマイクロフィルム)及びその記載事項は、上記第3の2(1)に記載したとおりである。
また、引用刊行物に記載された引用発明Bは、上記1[理由](3)イ(ウ)に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明1と引用発明Bとを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明Bにおける「ガス」は、本願発明1における「排気ガス」に相当し、以下同様に、「垂直ダクト11」は「排気ダクト」に、「入口開口部」は「入口開口部」に、「付着物D」は「堆積物」に、「擦り取る」は「機械的に除去する」に、「ブラシ25」は「洗浄ブラシ」に、「スートブロア13」は「洗浄装置」に、「蒸気又は加圧空気」は「洗浄流体」に、「可動パイプ23に設けられたノズル24」は「噴射装置」に、「吹き付けられる」は「噴霧される」に、「触媒脱硝装置が設置されたごみ焼却プラント」は「燃焼システム」に、それぞれ相当する。

・引用発明Bにおける「ガスに含まれた窒素酸化物の除去」は、触媒Cによってガスの浄化が行われることを意味するから、本願発明1における「触媒排気ガス浄化」に相当する。

・引用発明Bにおける「触媒C」は、ガスに含まれた窒素酸化物の除去に用いられることから、本願発明1における「触媒コンバータ」に相当する。

・引用発明Bにおける「触媒C」の「ガスが流入する上面」は、ガスが流入する入口開口部が形成されることから、本願発明1における「触媒コンバータ」の「入口側」に相当する。

・引用発明Bにおける「前記可動パイプ23に設けられたノズル24は前記蒸気又は加圧空気が前記ガスが流入する上面の上に吹き付けられるように配置される」は、本願発明1における「前記洗浄装置が洗浄流体用の噴射装置をさらに有し、前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上、または前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される」に相当する。

したがって、両者は、
「排気ガスを排出するための排気ダクトと、
触媒排気ガス浄化のために、前記排気ダクトの中に配置され、そこを通って前記排気ガスが流れることができる触媒コンバータであって、入口側に前記排気ガス用の入口開口部が形成されている前記触媒コンバータと、
前記入口側の堆積物を機械的に除去するための洗浄ブラシを有する、前記入口側に設けられた洗浄装置と、
を備え、
前記洗浄装置が洗浄流体用の噴射装置をさらに有し、前記噴射装置は前記洗浄流体が前記入口側の上、または前記洗浄ブラシの上に噴霧されるように配置される、燃焼システム。」
の点で一致し、相違する点はない。

(4)判断
上記(3)で検討したとおり、本願発明1と引用発明Bとは、発明特定事項に相違はない。
仮に相違が認められるとしても、本願発明1は、引用発明Bから予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願発明1は、引用刊行物に記載された引用発明Bと同一であり、又は、引用発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
上記第3の「検討1」又は上記第4の「検討2」により、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-11 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2012-527226(P2012-527226)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 113- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
発明の名称 燃焼システム、及び燃焼システムの排気ダクト内に設置された触媒コンバータを洗浄するための方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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