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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1326317
審判番号 不服2015-18412  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-08 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2014- 35487「プラズマエッチング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 99659、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月27日の出願である特願2009-246096号の一部を、平成23年12月14日に新たな出願とした特願2011-273076号の一部を、平成26年2月26日に新たな出願としたものであって、同年3月4日付で審査請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年12月3日付で拒絶理由が通知され、平成27年2月6日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年7月7日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成27年10月8日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、当審において平成28年8月29日付で拒絶理由が通知され、同年11月28日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年11月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし4に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「閉塞空間を有する処理チャンバと、炭化珪素基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備えたエッチング装置を用いて、前記基台上の炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、
前記基台上に、エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板を載置した後、
前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能なプラズマエッチング方法。」

第3 査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成26年12月3日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由1(特許法第29条第2項)について

・請求項 1
・引用文献等 1-5,7-8
請求項1に係る発明は、平成27年2月6日付け手続補正書において、「前記ガス供給装置によって」供給するガスに「O_(2)ガス」を付加して「SF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガス」とし、「供給した前記混合ガス」を「前記プラズマ生成装置によってプラズマ化」することを、特定したものである。

先に通知した引用文献1には、プラズマエッチングに供給するガスがSF_(6)ガスとO_(2)ガスの混合ガスであることが記載されている(特に段落[0026],[0030]を参照されたい。)。
平成27年2月6日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置を用いて、炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板に、減圧化でSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスをプラズマ化し、且つ、前記炭化珪素基板側にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするプラズマエッチング方法。

[相違点]
(1)本願請求項1に係る発明においては、炭化珪素基板のエッチング装置における構成要素(部品及び組込まれた個別機能の装置)および当該構成要素の機能・作用が記載されているのに対し、引用文献1に記載された発明においては、ICPドライエッチング装置の記載のみで、当該装置の構成要素及び該構成要素の機能・作用に係る記載がない点で相違する(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願請求項1に係る発明においては、「前記炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱した状態でエッチングする」のに対し、引用文献1に記載された発明においては、当該温度範囲に基板を加熱した状態でエッチングすることが記載されていない点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点について検討すると、相違点1に係る本願請求項1の発明特定事項については、平成26年12月3日付け拒絶理由で通知したとおり、先に通知した引用文献3-5より、周知技術にすぎない。
また、相違点2について、先に通知した引用文献2に記載された発明には、「ICPドライエッチング装置を用いて、炭化珪素基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするプラズマエッチング方法」が記載されている。そして、エッチング速度を速めるためには、「250℃以上」の温度が好ましいことが記載されている(特に段落[0024]を参照されたい。)。エッチング速度の向上は、スループットの向上の観点からエッチング装置において自明な課題である。

してみると、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用して、炭化珪素基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

出願人は、平成27年2月6日付け意見書において、「引用文献1のエッチング温度を、特殊なエッチング温度である250℃以上にする動機付けが引用文献1及び2にはない」旨、及び、「一般的には炭化珪素基板のエッチング温度の上限は100℃と考えられており、引用文献1に記載されたエッチング温度を250℃以上にすることはあり得ない」旨、主張している。
当該出願人の主張について検討すると、炭化珪素基板を100℃よりも高い温度でエッチングすることは周知技術である(例えば、引用文献2の段落[0024]等の記載、引用文献7の段落[0022]等の記載、引用文献8の第2ページ、右上欄、第10-18行等の記載を参照されたい。)。また、引用文献1では二酸化珪素をエッチングマスクとしており、当該二酸化珪素の耐熱温度は少なくとも1000℃はあるので(引用文献8の第2ページ、右上欄、第10-18行等の記載を参照されたい。)、引用文献2の段落[0024]の「エッチング速度を速くするためには250℃以上の温度でエッチングすることが好ましい。」との記載は、引用文献1のエッチング温度を250℃以上にする動機付けになると認める。
したがって、出願人の主張は、採用できない。

また、出願人は、平成27年2月6日付け意見書において、「本願発明特有の特徴」として、「炭化珪素基板の加熱温度の下限を200℃として、化学エッチングを物理エッチングよりも強めることで溝H’の形成を抑制しつつ、加熱温度の上限を400℃として、化学エッチングが過度に進行するのを抑制すると共に、O_(2)ガスにより穴H及び溝Hの側壁に形成される保護膜が過剰に削られるのを抑制して、穴H及び溝Hの側壁が全くエッチングされないか、エッチングされたとしてもごく僅かなものとする(段落[0014]参照)。」旨、主張している。
当該出願人の主張について検討すると、上記段落[0014]にはO_(2)ガスにより形成される保護膜の記載はなく、段落[0042]にはエッチングガスにSF_(6)ガスのみの場合、すなわちO_(2)ガスがなく保護膜が形成されない場合でも、図2(c)に示すような「精度の良いエッチング形状が得られる」ことが記載されていることから、出願人が主張するO_(2)ガスにより形成される保護膜に係る特徴を認めることはできない。
したがって、出願人の主張は、採用できない。

よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明、及び、引用文献3-5,7-8の周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 2-4
・引用文献等 1-8
平成26年12月3日付け拒絶理由で通知したとおりである。
よって、請求項2-4に係る発明は、引用文献1-8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


<参考>
審判請求を行う際には、以下の点にも留意されたい。

(1)請求項1に係る発明について
引用文献7には、「ICPドライエッチング装置を用いて、炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、エッチングマスクであるNi層が形成された前記炭化珪素基板に、減圧化でSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスをプラズマ化し、且つ、前記炭化珪素基板側にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、前記炭化珪素基板を50℃?200℃に加熱した状態でエッチングするプラズマエッチング方法。」の発明が記載されている(特に段落[0012],[0022]を参照されたい。)。当該炭化珪素基板の加熱温度範囲が、本願請求項1に係る発明の炭化珪素基板の加熱温度範囲と一部が重複している。
炭化珪素基板のプラズマエッチングにおいて、二酸化珪素をエッチングマスクとして用いることは、周知技術にすぎない(例えば、引用文献1の段落[0019]等の記載、引用文献8の第2ページ、右上欄、第2-18行等の記載を参照されたい。)。
引用文献7にも、上記した引用文献1における相違点1と同様の相違点があるが、当該相違点の判断は引用文献1での相違点1の判断と同様に、先に通知した引用文献3-5より、周知技術にすぎない。
よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献7に記載された発明、及び、引用文献1,3-5,8の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

更に、引用文献7には、高温でエッチングすることで、エッチング速度の高速化、及び、バイアホールの側壁の垂直性を改善できること、エッチング温度は特に限定されないこと、エッチング温度は100℃以上が好ましいが上限は接着剤の軟化温度で制限されることが記載されている(特に、段落[0016]-[0017],[0022]を参照されたい。)。
引用文献2に記載された発明には、「ICPドライエッチング装置を用いて、炭化珪素基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするプラズマエッチング方法」が記載されている。そして、エッチング速度を速めるためには、「250℃以上」の温度が好ましいことが記載されている(段落[0024]を参照)。エッチング速度の向上は、スループットの向上の観点からエッチング装置において自明な課題である。
してみると、引用文献7に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用して、炭化珪素基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献2,7に記載された発明、及び、引用文献1,3-5,8の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)請求項2-4に係る発明について
平成26年12月3日付け拒絶理由で通知したとおりである。
よって、請求項2-4に係る発明は、引用文献1-8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


<引用文献等一覧>
1.特開2007-324503号公報
2.特開2007-234912号公報
3.特表2007-502547号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平10-303185号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平06-169018号公報(周知技術を示す文献)
6.特開平08-008232号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2007-109758号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
8.特開昭63-152125号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)」

2 拒絶理由通知の概要
平成26年12月3日付拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項:1
・理由:1
・引用文献等:1?5
・備考:
引用文献1には、「誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置を用いて、炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、エッチングマスクであるSiO_(2)が形成された前記炭化珪素基板を、減圧化でSF_(6)ガスを供給してプラズマ化し、且つ前記炭化珪素基板側にバイアス電力を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、前記炭化珪素基板を80℃に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とするプラズマエッチング方法。」の発明が記載されている(段落【0022】,【0026】等の記載を参照)。
一方、引用文献2には、「誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置を用いて、炭化シリコン基板をプラズマエッチングする方法であって、前記炭化シリコン基板を、減圧化でSF_(6)ガスを供給してプラズマ化し、前記炭化シリコン基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とするプラズマエッチング方法。」の発明が記載されている(段落【0020】,【0024】等の記載を参照)。

(対比)
本願の請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比する。

(1)本願の請求項1に係る発明においては、炭化珪素基板のエッチング装置における構成要素(部品及び組込まれた個別機能の装置)および当該構成要素の機能・作用等が記載されているのに対し、引用文献1に記載された発明においては、「誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置」の記載のみで、当該装置の構成要素に係る記載がない点で相違する(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願請求項1に係る発明においては、「前記炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱した状態でエッチングする」のに対し、引用文献1に記載された発明においては、当該温度範囲に基板を加熱した状態でエッチングすることが記載されていない点(以下、「相違点2」という。)。

なお、上記以外の点では一致している。

(相違点の判断)
上記相違点1,2について検討する。

(1)まず、相違点1について検討する。
引用文献1に記載された発明における「誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置」は、本願の請求項1に係る発明の「閉塞空間を有する処理チャンバ」、「基板が載置される基台」、「前記処理チャンバ内を減圧する排気装置」、「前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置」、「コイル」を有し、「このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置」と「前記基台に高周波電力を供給する高周波電源」を備えたエッチング装置とすることは周知技術である(例えば、引用文献3の段落【0012】,【0014】,【0023】,【図5】等の記載、引用文献4の段落【0003】,【0004】,【0006】,【図4】等の記載、引用文献5の段落【0022】?【0024】,【図4】等の記載を参照の事。)。
引用文献1に記載された発明における「減圧下」、「SF_(6)ガスを供給」、「プラズマ化」、「バイアス電力を与えて」を、上記周知技術である各装置により実現して、それぞれ本願の請求項1に係る発明の「排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内」、「ガス供給装置によってSF_(6)ガスを供給」、「プラズマ生成装置によってプラズマ化」、「高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて」とした構成とすることに、格別な困難性は認められない。

(2)次に、相違点2について検討する。
引用文献2に記載された発明には、「誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置を用いて、炭化珪素基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするプラズマエッチング方法」が開示されている。そして、エッチング速度を速めるためには、「250℃以上」の温度が好ましいことが記載されている(段落【0024】を参照)。エッチング速度の向上は、スループットの向上の観点からエッチング装置において自明な課題である。

してみると、引用文献1に記載された発明において、炭化珪素基板を250℃以上に加熱した状態でエッチングするようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
また、本願の請求項1に係る発明の効果は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

(結論)
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項:2,3
・理由:1
・引用文献等:1?6
・備考:
本願の請求項2に係る発明は、本願の請求項1に記載の発明のプラズマエッチング方法において、「前記炭化珪素基板を200℃?400℃の温度に予め加熱した後、この温度を維持しながら前記炭化珪素基板をエッチングするようにしたこと」を特定したものである。
また、本願の請求項3に係る発明は、本願の請求項2に記載の発明のプラズマエッチング方法において、「前記炭化珪素基板を予め加熱する際に、前記ガス供給装置により不活性ガスを前記処理チャンバ内に供給し、供給した不活性ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与え、前記不活性ガスのプラズマ化により生成されたイオンを前記炭化珪素基板に入射させて該炭化珪素基板を加熱するようにしたこと」を特定したものである。
しかしながら、誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチング装置等のプラズマエッチング方法において、基台にバイアス電位を与え、不活性ガスのプラズマ化により生成されたイオンを前記基板に入射させて該基板を予め加熱する方法は周知技術である(例えば、引用文献3の段落【0030】?【0033】,【図8】等の記載、引用文献6の段落【0006】,【0019】,【0020】,【0038】,【0039】,【図1】等の記載を参照のこと。)。
よって、本願の請求項2,3に係る発明は、引用文献1?6に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項:4
・理由:1
・引用文献等:1?6
・備考:
本願の請求項4に係る発明は、本願の請求項1?3に記載の発明のプラズマエッチング方法において、「前記炭化珪素基板の加熱温度を、300℃?400℃の範囲内に設定したこと」を特定したものである。
しかしながら、上記「請求項1」の備考で示したとおり、引用文献2には、炭化珪素基板の加熱温度を「250℃以上」に設定して、プラズマエッチングする方法が開示されている。また、本願請求項4に係る発明の加熱温度の数値限定には臨界的な意義は認められない。
よって、本願の請求項4に係る発明は、引用文献1?6に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2007-324503号公報
2.特開2007-234912号公報
3.特表2007-502547号公報
4.特開平10-303185号公報
5.特開平06-169018号公報
6.特開平08-008232号公報」

第4 原査定の理由についての当審の判断
1 引用文献
(1)引用例1について
ア 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-324503号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(ア)「【0005】
一方、エッチングレートを稼ぐためには、ICP(Inductive Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式などによる高密度プラズマを用いたドライエッチングが有効であることも知られているが、それでも前述の深い(数μm)トレンチを形成するには長時間を要する。さらに、エッチング選択性を有するアルミニウム(Al)膜またはニッケル膜をマスクとしてCF_(4)およびO_(2)との混合ガスを用いたICP方式によるエッチングレートは100nm/分以上にすることができるが、マスク金属による汚染やエッチング表面に付着したマイクロマスクによるエッチング面の非平滑性が問題となる。
【0006】
前述のICPドライエッチングでは、エッチングマスクとしてSiO_(2)膜を用いれば、金属マスクの場合のような問題は生じないが、化学的および物理的にも、半導体SiC基板とのエッチング選択比が十分高くないと、半導体SiC基板に形成されるトレンチが目標とするエッチング深さに到達する前にマスクがエッチングされて無くなるという問題が発生する。現在知られているICPドライエッチングでは、具体的には、厚さが2μmのSiO_(2)膜をマスクとして半導体SiC基板をエッチングすると選択比は3程度であるので、SiC基板が6μm程度エッチングされたところでマスクのSiO_(2)膜が消失し、それ以上のトレンチ形成ができなくなる。また、マスクの膜厚を2μmより厚くしようとしても、SiO_(2)膜の成膜に時間がかかる上に、厚くなったマスク材に対する良好な精度のパターニングが難しくなるという問題が新たに生じるので、SiO_(2)膜の膜厚を厚くすれば前記問題点の解消は容易と単純には断定できない。従って、現在のSiC基板に対するICPドライエッチングでは、可能なトレンチの深さの実用的なレベルは約3μm程度である。」
(イ)「【0020】
本発明にかかるトレンチゲート構造を備えるMOS半導体装置の製造方法では、特にトレンチエッチングに特徴があるので、この点について以下特に詳しく説明する。図1は、SiC積層基板10にSiO_(2)膜44とフォトレジスト14が積層されたSiC積層基板10の断面を示す。
まず、SiC積層基板10上に2.2μm厚のSiO_(2)膜44をCVD法などにより堆積形成した後、フォトレジスト14をSiO_(2)膜44上にスピンコート法により全面塗布する。その後、クリーンオーブンに85℃で30分投入し、フォトレジスト14をベークする。ベーク後、紫外線を用いた露光装置で所定のパターンを有するフォトマスクを用いて初期露光を行う。初期露光後、115℃で15分のベークを行い、その後、マスクを用いないで基板全体を全面露光する。全面露光後、現像処理により、所望のトレンチマスクパターン以外の不要なフォトレジストを除去し、図1のような断面を有するフォトレジスト14のパターンを形成する。
【0021】
フォトレジスト14のパターン形成後、図示しないICP-ドライエッチング装置でフォトレジスト14をマスクとしてSiO_(2)膜44をドライエッチングする。エッチングの条件はCHF_(3)ガスを15sccm導入し、1Paの圧力でICP電力135W、SiC基板側へのバイアス電力15Wでエッチングする。パターニングされた線幅は本実施例では2μm幅である。図2に、以上のフォトプロセスで得られたSiO_(2)膜マスク4の構成を示す。図2のSiO_(2)膜のドライエッチング後に、70℃のレジスト剥離液に浸し、残ったフォトレジスト14を剥離して図3のようにSiC基板上にSiO_(2)膜4がパターニングされたSiC積層基板10を作成する。
【0022】
次にSiC基板(またはSiC膜)1の表面からICPドライエッチングを行う。本発明ではSiC基板10のドライエッチングは2段階に条件を変化させて行うことを特徴とする。第一のドライエッチングにおけるエッチング条件では目標の深さの4/5程度のエッチングが好ましい。深さ3μmを超える深いエッチングを行う場合は、SiO_(2)膜マスクとSiC基板のエッチング選択比(以下選択比)ができるだけ大きいことが望ましい。」
(ウ)「【0026】
前記図4に示す結果を踏まえ、本実施例では第一ドライエッチングのエッチング条件はSF_(6)ガスとO_(2)ガスとArガスの混合ガスでSF_(6)流量5sccm、O_(2)流量8sccm、Ar流量30sccmを導入して1Paの圧力でICP電力500W、SiC基板側に印加するバイアス電力を15W、さらにSiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件で目標深さの4/5程度まで(約10μm)エッチングを行った。図5に前記第一のエッチング条件でのエッチング深さ10μmとしたときの実際のエッチング形状を観察したSiC積層基板10の断面図を示す。前記第一の条件でエッチングするとエッチング速度0.6μm/min程度である。従来の0.05μm/minに比べて高速にエッチングできるが、そのトレンチ5の断面形状はエッチング底部が少し細くなり、底部にマイクロトレンチ13が発生している。この第一のエッチング条件で目標深さの4/5程度(この実施例では10μm)をエッチングした後に、エッチング装置からサンプル(SiC基板)10を取り出さずに真空(減圧状態)を維持し続けて第二の条件でのエッチングを行った。本実施例1では減圧状態を維持したが、大気開放しても問題がないことも別途確認した。この第二のエッチング条件はSF_(6)、O_(2)、Arの混合ガスを用い、SF_(6)流量2sccm、O_(2)流量2sccm、Ar流量8sccmを導入して1Paの圧力でICP電力200W、SiC基板側に印加するバイアス電力を20W、さらにSiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件で、先に形成したトレンチ5深さ10μmにさらに深さ2.5μmエッチングを加えた(第一のエッチング条件と合わせた深さ12.5μmエッチング)。第一のエッチング条件後、第二のエッチング条件で続けてエッチングを行った場合のトレンチ5を示すSiC積層基板の断面図を図6に示す。第二のエッチング条件ではエッチング速度は0.2μm/min程度に低下するが、第二のエッチングを追加することでマイクロトレンチ13がほとんどなくなるのがわかる。トータルのエッチング深さは12.6μmであった。このトレンチエッチング工程により形成したトレンチMOS半導体装置ではトレンチの底部での電界集中による耐圧低下が極めて小さいことが分かった。
【0027】
以上の結果、実施例1によれば、SiC半導体基板に3μmを超える深いトレンチエッチング、さらには10μm以上の深いトレンチが実用性の高いプロセスで可能になるだけでなく、トレンチ底部を、電界集中を引き起こして耐圧特性に影響を及ぼす程度の鋭角を有する凹凸形状を形成することなく、平坦にエッチングできることが分かった。」
イ 引用例1発明および引用例1記載事項について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「SiC基板1上にSiO_(2)膜4がパターニングされ、SiO_(2)膜マスクとされたSiC積層基板10を作成し、
SiC基板(またはSiC膜)1の表面からICPドライエッチングを行う際に、
第一ドライエッチングのエッチング条件として、SF_(6)ガスとO_(2)ガスとArガスの混合ガスでSF_(6)流量5sccm、O_(2)流量8sccm、Ar流量30sccmを導入して1Paの圧力でICP電力500W、SiC基板側に印加するバイアス電力を15W、さらにSiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件で目標深さの4/5程度まで(約10μm)エッチングを行い、
第二のエッチング条件として、SF_(6)、O_(2)、Arの混合ガスでSF_(6)流量2sccm、O_(2)流量2sccm、Ar流量8sccmを導入して1Paの圧力でICP電力200W、SiC基板側に印加するバイアス電力を20W、さらにSiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件で、先に形成したトレンチ5深さ10μmにさらに深さ2.5μmエッチングを加え(第一のエッチング条件と合わせた深さ12.5μmエッチング)、
トレンチ底部を、電界集中を引き起こして耐圧特性に影響を及ぼす程度の鋭角を有する凹凸形状を形成することなく、平坦にエッチングできる
エッチング方法。」
また、上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の事項(以下、「引用例1記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「SiC基板にICP(Inductive Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式などによる高密度プラズマを用いたドライエッチングを行う際に、マスク金属による汚染やエッチング表面に付着したマイクロマスクによるエッチング面の非平滑性の問題を解決するために、エッチングマスクとしてSiO_(2)膜をもちいること。」
(2)引用例2について
ア 引用例2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-234912号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0019】
図2(a)を参照に、フォトレジスト20を除去する。これにより、Ni膜に開口部22が形成される。図2(b)を参照に、Ni膜16aをマスクにAu膜14およびNiCr膜12を例えばドライエッチング法を用いエッチングする。これにより、開口部22を有し、基板10側からNiCr膜12、Au膜14およびNi膜16aからなるマスク層18が形成される。図2(c)を参照に、マスク層18をマスクに基板10を例えば150μmドライエッチングする。
【0020】
図2(c)における基板10のエッチングは、SiCまたは酸化シリコン(石英)からなる被エッチング層をエッチングする場合は、例えばSF_(6)またはNF_(3)などの弗素系ガスを用いる。窒化ガリウム(GaN)、サファイア、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)および窒化アルミニウム(AlN)からなる被エッチング層をエッチングする場合は、例えばCl2、BCl3またはSiCl4等の塩素系のガスを用いる。これらの被エッチング層のエッチングとしては、例えばRIE(反応性イオンエッチング)装置、ICP(誘導結合プラズマ)型エッチング装置またはECR(電子サイクロトロン共鳴)型エッチング装置を用い実行することができる。」
(イ)「【0024】
通常、プラズマエッチングは100℃以下の温度で行うが、特に、炭化シリコン、酸化シリコン、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化インジウムガリウムおよび窒化アルミニウの少なくとも1つを含む被エッチング層のエッチング速度を速くするためには250℃以上の温度でエッチングすることが好ましい。しかしながら、このような高温でエッチングを行うと、NiCr膜とNi膜との間が剥がれてしまう。そこで、このような高温でエッチングする際は、特にNiCr/Au/Ni膜をマスク層とすることが有効である。」
イ 引用例2の記載事項
上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「ICP(誘導結合プラズマ)型エッチング装置を用いて、SiCからなる被エッチング層をエッチングする場合、基板10側からNiCr膜12、Au膜14およびNi膜16aからなるマスク層18を形成し、SF_(6)またはNF_(3)などの弗素系ガスを用いて、被エッチング層のエッチング速度を速くするために250℃以上の温度でエッチングすること。」
(3)引用例3について
ア 引用例3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特表2007-502547号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0012】
図2において記載された実施形態によれば、プラズマ処理システム1aは、プラズマ処理チャンバ10と、被処理基板25が固定される基板ホルダ20と、真空排気システム30とを備えることができる。基板25は、例えば、半導体基板、ウェーハ、または液晶ディスプレイであり得る。プラズマ処理チャンバ10は、例えば、基板25の表面に隣接する処理領域15に、プラズマの生成を容易にするように構成され得る。イオン化可能ガスまたはガスの混合物は、ガスインジェクションシステム(図示せず)を介して導入され、そして処理圧力は、調整される。例えば、制御機構(図示せず)は、真空排気システム30をスロットル調整(絞り調整)するように使用されることができる。プラズマは、所定の材料処理に特有の材料を生成し、および/または基板25のさらされた表面から材料の除去を補助するように使用されることができる。プラズマ処理システム1aは、200mm基板、300mmの基板、または、より大きい基板を処理するように構成され得る。」
(イ)「【0014】
図2で示された実施形態において、基板ホルダ20は、電極を含むことができ、この電極を通してRF電力が処理空間15の処理プラズマに結合される。例えば、基板ホルダ20は、RF発振器40からインピーダンスマッチングネットワーク50を通過し、基板ホルダ20へのRF電力の伝送によるRF電圧で電気的にバイアスをかけられることができる。RFバイアスは、プラズマを形成し、そして維持するために電子を加熱するのに役に立つことができる。この構成において、システムは、チャンバおよび上部ガス注入電極が接地面(ground surfaces)として働く反応性イオンエッチング(reactive ion etch:RIE)リアクタとして、作動することができる。RFバイアスのための典型的な周波数は、0.1MHzから100MHzの範囲にあり得る。プラズマ処理のためのRFシステムは、当業者にとって周知である。」
(ウ)「【0023】
図5に示された実施形態において、プラズマ処理システム1dは、例えば、図1および2の実施形態と類似していることがあり得て、RF電力がインピーダンスマッチングネットワーク84を通ってRF発振器82により接続される誘導コイル80を更に備えることができる。RF電力は、プラズマ処理領域15に誘電体窓(図示せず)を介して誘導コイル80から誘導的に結合される。誘導コイル80へのRF電力の供給に対する典型的周波数は、10MHzから100MHzまでの範囲とすることができる。同様に、チャック電極への電源の供給に対する典型的周波数は、0.1MHzから100MHzまでの範囲とすることができる。加えて、スロット付きファラデーシールド(slotted Faraday shield)(図示せず)は、誘導コイル80と、プラズマとの間の容量結合を減らすように使用されることができる。さらに、コントローラ14は、誘導コイル80への電力供給を制御するために、RF発振器82およびインピーダンスマッチングネットワーク84に接続される。代わりの実施形態では、誘導コイル80は、上記記載から、変成器結合型プラズマ(transformer coupled plasma:TCP)リアクタにおいては、プラズマ処理領域15と連通する「スパイラル」コイルまたは「パンケーキ」コイルであり得る。誘導結合型プラズマ(inductively coupled plasma:ICP)ソースまたは変成器結合型プラズマ(TCP)ソースの設計および実装は、当業者にとって周知である。」
(エ)「【0030】
プラズマプレヒート(plasma pre-heating:PPH)の間、基板温度は、ポリシリコンのエッチングに適している温度(例えば80℃)から、HfO2の選択エッチングにより適している温度(例えば400℃)に上昇される。基板が単に基板ホルダ上に載置されるとき(すなわち、(ESCを介した)クランピングおよび裏面ガスなしで)、基板は、基板ホルダおよび周囲の処理チャンバから実質的に熱的に分離される。例えば、図6は、より低い温度に維持された基板ホルダの上に載置されるときの、3つの異なる条件に対する基板温度の典型的な反応を示す。基板が基板ホルダに固定されず、従って裏面ガス圧を受けられない場合、時間内の基板温度の変化は非常に遅い(図6の100として記載される実線)。他方、基板が基板ホルダに固定されるが、裏面ガス圧を受けられない場合、時間内の温度変化のわずかに増加した速度は観察される(図6の102として記載される長い破線)。さらに、基板が基板ホルダに固定され、かつ裏面ガス圧を受けられる場合、基板温度が基板ホルダの温度に近づくように、基板温度は、まず最初に速く、その後段階的に低下する(図6の104として記載される短い破線)。
【0031】
基板が熱的に分離されるときに(すなわちクランプ力が取り除かれ、裏面ガス圧が取り除かれる)、基板のプラズマプレヒート(PPH)が行われる。一般に、イオン衝撃および伝達性の熱中和(convective hot-neutrals)は基板の加熱に貢献し、より少ない度合いで、電子(熱および衝撃(ballistic)の両方で)加熱は、加熱プロセスに貢献する。非常にイオン化されたプラズマ(誘導結合型プラズマ(ICP)、wave加熱される(wave-heated)など)において、イオン衝撃加熱は、伝達性の熱中和に対して優位になり得る。
【0032】
容量結合型プラズマ(capacitively coupled plasmas:CCP)において、伝達性の熱中和は、イオン衝撃加熱と同様に重要となり得て、場合によっては、熱中和は、優位な加熱プロセスとなり得る。1つの実施形態において、プラズマプレヒートプロセスは、He、Ar、Kr、およびXeのような不活性ガスを導入することと、この不活性ガスからプラズマを点火することと、基板からクランプ力を取り除き、基板から裏面ガス圧を取り除くこととを具備する。例えば、図7は、下部電極に供給されるRF電力、不活性ガスのチャンバ圧力、不活性ガスの流量、および不活性ガスの原子質量の変化する影響が、基板加熱パワーにかかることを示す。(a)加熱パワーは、下部電極に供給されたRF電力の増加とともに増加し(110の線)、(b)加熱パワーは、不活性ガス流量の増加とともにわずかに増加し(114の線)、(c)加熱パワーは、不活性ガス圧力の増加とともにわずかに増加し(112の線)、(d)加熱パワーは、不活性ガスの原子質量の増加によって減少する(116の線)ことが(すなわち、ヘリウムの使用は、アルゴンより効果的である)観察された。
【0033】
実施例において、図8は、プラズマプレヒート(PPH)法を使用して選択的なHfO2/Siゲート誘電体エッチングの説明を示す。大部分のデバイスは、厚さ20?50オングストロームの範囲のHfO2ゲート誘電層を有する。従って、エッチング時間は、一般的に非常に短い(例えば、ほぼ5秒)。特定のPPHプロセス下でのピークの基板温度は、PPH時間に依存する。一旦所望のピークの基板温度が到達されると(例えば400℃)(期間120の間)、選択的なHfO2エッチングプロセスレシピは、始められる。一般的に、HfO2エッチングプラズマは、PPHより低いパワーであり;従って、基板加熱速度は、大幅に減少する。理想的な熱のアイソレーションのために、基板温度は、HfO2エッチングの間(期間122の間)、ほとんど一定のままであり得る。クールダウンは、期間124の間に起こる。」
イ 引用例3の記載事項
上記アの記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項-1」という。)が記載されているものと認められる。
「誘導結合型プラズマ(inductively coupled plasma:ICP)ソースのプラズマ処理システム1dであって、
プラズマ処理チャンバ10、半導体基板である被処理基板25が固定される基板ホルダ20、真空排気システム30、RF発振器82により接続される誘導コイル80を備え、
イオン化可能ガスまたはガスの混合物をガスインジェクションシステムを介して導入し、
さらに、基板ホルダ20へのRF電力の伝送によるRF電圧で電気的にバイアスをかけること。」
また、同じく上記アの記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項-2」という。)が記載されているものと認められる。
「プラズマプレヒートプロセスは、基板が単に基板ホルダ上に載置され、He、Ar、Kr、およびXeのような不活性ガスを導入し、この不活性ガスからプラズマを点火し、基板からクランプ力を取り除き、基板から裏面ガス圧を取り除き、下部電極にRF電力供給することによりおこなわれること。」
(4)引用例4について
ア 引用例4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-303185号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0003】図4は、従来のエッチング装置の構成について説明する正面概略図である。図4に示すエッチング装置は、基板10が内部に配置される処理容器1と、基板10を臨む空間にプラズマを形成するプラズマ形成手段2と、プラズマによって生成された所定の化学種が到達する位置に基板10を配置する基板ホルダー3とから主に構成されている。
【0004】処理容器1は、排気系11を備えた気密な容器であり、不図示のゲートバルブを通して基板10を搬入搬出する。プラズマ形成手段2としては、各種の方式のものが知られているが、図4の装置には、高周波コイル22を使用した誘導結合方式のものが採用されている。即ち、プラズマ形成手段2は、所定の周波数の高周波を発生させる高周波発生器21と、高周波発生器21で発生した高周波が伝送されて励振される高周波コイル22と、高周波コイル22の内側に設けられた誘電体容器23と、誘電体容器23内にプラズマ形成用のガスを導入するガス導入系24とから主に構成されている。」
(イ)「【0006】図4に示す従来のエッチング装置において、プラズマ中のイオンを積極的に利用するため、プラズマと基板10との間に電界を印加し、電界によって多くのイオンを引き出して基板10に到達させる場合がある。この場合は、図4に示すように、基板ホルダー3に基板バイアス用電源31を接続する。基板バイアス用電源31は、多くの場合高周波を発生させるものであり、ブロッキング用コンデンサ32を介して基板ホルダー3に高周波を印加するよう構成される。印加された高周波とプラズマとの相互作用により、基板10の表面は負の電位にバイアスされ、プラズマから正のイオンを引き出して基板10に衝突させる。イオンの化学的作用又はこれに加えてイオン衝突の際の物理的作用を利用して、基板10の表面をエッチングする。」
イ 引用例4の記載事項
上記アの記載から、引用例4には、実質的に次の事項(以下、「引用例4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「エッチング装置において、基板10が内部に配置される処理容器1と、プラズマによって生成された所定の化学種が到達する位置に基板10を配置する基板ホルダー3と、排気系11と、を備え、基板ホルダー3に基板バイアス用電源31を接続し、高周波コイル22を使用した誘導結合方式であること。」
(5)引用例5について
ア 引用例5の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-169018号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0022】低エネルギー、高密度イオンを発生させる為には、例えばリフローチャンバーとして図4に示すようなチャンバー13Bが利用できる。
【0023】リフローチャンバー13Bには、高温加熱機構付き支持台15Bとガス導入管17Bと排気管18Cの他、周囲にプラズマ発生用RFコイル21を備えている。そしてこのリフローチャンバー13Bは、図示していないがRFコイル21をさけた部分で図2におけるゲートバルブ16を介して搬送チャンバー12に接続された構造になっている。
【0024】このリフローチャンバー13Bを用いる場合、圧力を1mTorrとし、チャンバー周囲のプラズマ発生用RFコイル21に400kVの高周波を与えてプラズマを発生させ、これとは別に高温加熱機構付支持台15Bにバイアス用13.56MHzの高周波を与え、この電圧によりArイオンを基板に衝突させる。プラズマ発生用とバイアス用の高周波が別なので、イオンエネルギーを低く抑えたままイオン密度を高くすることができる。」
イ 引用例5の記載事項
上記アの記載から、引用例5には、実質的に次の事項(以下、「引用例5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「リフローチャンバーにおいて、高温加熱機構付き支持台15Bとガス導入管17Bと排気管18Cと周囲にプラズマ発生用RFコイル21とを備え、高温加熱機構付支持台15Bにバイアス用13.56MHzの高周波を与えること。」
(6)引用例6について
ア 引用例6の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-8232号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0014】
【作用】本発明のポイントは、プラズマエッチングやプラズマCVD等の実際のプラズマ処理を施す前段階として、in-situで予備プラズマ処理を行う点にある。この予備プラズマ処理を行った場合の被処理基板1と基板ステージ2の温度差T2-T1の時間変化を図1に示す。同図に見られるように、予備プラズマ処理を例えば30秒行うことにより、この場合は被処理基板温度T2は約50℃上昇し、平衡温度に達する。この時点でプロセスガスを切り替え、実際のプラズマ処理を施すことにより、被処理基板の温度変化が極めて少ないプラズマ処理を達成することができる。
【0015】この予備プラズマ処理は、被処理基板の表面形状を実質的に変更しない不活性ガスにより行うので、被処理基板の表面に何ら悪影響を与えることはない。また、予備プラズマ処理から実際のプラズマ処理への切り替えは、プラズマからの輻射熱H1が大きく変化したり、放電が不安定になることが無いように、プラズマ生成用電力や基板バイアス、ガス圧力等、ガス種以外ののプロセス条件を同一とすることが好ましい。予備プラズマ処理の採用により、所望のプロセス温度に正確に制御され、均一性と再現性に優れたプラズマエッチングやプラズマCVD等のプラズマ処理が可能となるのである。」
(イ)「【0038】例えば、プラズマ処理としてプラズマエッチングおよびプラズマCVDを例示したが、スパッタリングによるデポジションやエッチングに適用してもい。プラズマ処理装置として、基板バイアス印加型ECRプラズマ処理装置を例示したが、平行平板型プラズマ処理装置、バレル型プラズマ処理装置、ヘリコン波プラズマ処理装置、ICP(Inductively Coupled plasma)装置、そしてTCP(Transformer Coupled Plasma)装置等各種プラズマ処理装置に適用して安定な被処理基板温度制御を達成することができる。」
イ 引用例6の記載事項
上記アの記載から、引用例6には、実質的に次の事項(以下、「引用例6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「ICP(Inductively Coupled plasma)装置をもちいたプラズマエッチングにおいて、
プラズマ処理を施す前に、プラズマ生成用電力や基板バイアス、ガス圧力等、ガス種以外のプロセス条件を同一とし、不活性ガスによる予備プラズマ処理をin-siteで行い、
所望のプロセス温度に正確に制御すること。」
(7)引用例7について
ア 引用例7の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-109758号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「【0001】
この発明は、特に化合物半導体による高周波用トランジスタまたはIC(MMIC;Microwave Monolithic Integrated Circuit)などの製造に好ましく用いることができる化合物半導体素子の製造方法に関し、さらに詳細には放熱特性を大きく左右するバイアホール形成方法の改良に関する。」
(イ)「【0012】
次に、SiCウエハ1の裏面に公知のイメージリバースレジストを塗布し、リソグラフィーによってパターン形成した後、Ti/Pdを蒸着しリフトオフする。Pdを触媒とし無電解メッキによって所定の形状にパターニングされた3?4μm厚のNi層5を形成する。次に、このNi層5をマスクとし、公知の例えばECR(Electron Cyclotron Resonance)方式のプラズマエッチング装置(図示省略)によって弗素を含むエッチングガスを用いてドライエッチングによりバイアホール加工を行う。該バイアホール加工時のステージ温度は、接着材3が200℃でも全く軟化しない性質のものであることにより、従来よりも高く設定することができ、例えば150?180℃の範囲内に設定される。
【0013】
具体的には、この実施の形態1ではエッチングガスとしてSF6/O2を用い、流量SF6/O2=190sccm/10sccm、APC(エッチングチャンバ内の圧力)=1.5Pa、Antenna RF/Bias RF=2000W/150W、ステージ温度150℃の条件でバイアホールを加工した。上記のようにして加工された各バイアホール6の断面は何れも図1(c)に示すように側壁6aが垂直な断面矩形状に形成されたものであった。なお、上記のようにドライエッチング時のステージ温度を高温にしたことで、プラズマ中の弗素ラジカルとSiCウエハ1とが反応するための活性化エネルギーを超えるエネルギーがステージ温度によって供給され、化学的反応が促進され、ラジカルによる等方的なエッチングが促進された結果、エッチングレートとしては、従来に比べて6.5倍から7.5倍に高められた。」
(ウ)「【0021】
また、上記実施の形態1ではECR方式のプラズマエッチング装置を用いたが、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)方式のエッチング装置など他のドライエッチング装置を用いても良い。さらに、エッチングガスとしては、例示したSF_(6)以外に、SiC系のエッチングで用いられる、例えばNF_(3)、BF_(3)、PF_(3)、CHF_(3)、CF_(4)などの弗素を含むガスは、何れも単独もしくは複数混合して好ましく用いることができる。なお、エッチングの際には、これらの弗素を含むガスに、例えばO_(2)、Arなどを加えて用いられる。
【0022】
さらに、ドライエッチング時におけるプラズマエッチング装置のステージ温度は特に限定されるものではないが、200℃の高温でも軟化しない接着材3を用いたことにより、軟化温度の制限をほとんど考慮する必要がなくなるため、従来よりも高温の例えば50?200℃の任意の温度とすることができる。なお、上記ステージ温度を低温にすると弗素を含むエッチングガスと基板のSiCウエハ1の化学反応が促進されず、エッチングレートが低下してバイアホールの形状が漏斗形になるので、該ステージ温度は50℃以上が好ましく、さらに好ましくは100℃以上とすることで、バイアホールの形状及び加工時間ともに満足できる加工を行うことができる。」
イ 引用例7発明および引用例7の記載事項について
上記アの記載から、引用例7には、実質的に次の発明(以下、「引用例7発明」という。)が記載されているものと認められる。
「SiCウエハ1の裏面に所定の形状にパターニングされた3?4μm厚のNi層5を形成し、
Ni層5をマスクとし、ICP(Inductively Coupled Plasma)方式のエッチング装置によって、エッチングガスとしてSF_(6)/O_(2)を用い、プラズマエッチング装置のステージ温度を50?200℃の任意の温度とするドライエッチングによりバイアホール加工を行う
バイアホール形成方法。」
また、上記アの記載から、引用例7には、実質的に次の事項(以下、「引用例7記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「プラズマエッチング装置のステージ温度を50?200℃の任意の温度とするドライエッチングによりバイアホール加工を行うこと。」
(8)引用例8について
ア 引用例8の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭63-152125号公報(以下、「引用例8」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
(ア)「第1図は第1工程を示し、p型Si基板(1)上に周知のエピタキシャル成長法を用いて層厚5μmのp型SiC単結晶層(以下、単にp層と称す)(2)と、層厚3μmのn型SiC単結晶層(以下、単にn層と称す)(3)とを順次積層してなるウェハ(4)を準備する。
第2図は第2工程を示し、基板(1)、p層〈2)及びn層(3)の露出表面に熱酸化膜(5)を形成する。具体的にはウェハ(4)を1000℃の酸素雰囲気中に約8時間保持することにより行なう。
斯る熱処理により得られる熱酸化膜(5)はSiO_(2)からなり、またn層(3)表面に形成された熱酸化膜(5)の膜厚は約2000Åである。
第3図は第3工程を示し、n層(3)上の熱酸化膜(5a)に紙面垂直方向に延在する開口(6)を所定間隔毎に形成する。具体的には斯る開口(6)はレジストとして富士ハントネガティブレジストシステム社販売のWaycoat IC43P-3を用い、またエッチング液としてHF:NH_(4)F=1:8の溶液を用いて周知のホトリソグラフィ技術により形成できる。
第4図は第4工程を示し、上記開口(6)により露出したn層(3)表面より基板(1〉に達する深さの溝(7)をエッチングにより形成する。具体的には、ウェハ(4)を1000℃に保持し、Arガス、Cl_(2)ガス及びO_(2)ガスを夫々945cc/min,50cc/min及び5cc/minの割合で上記ウェハ(4〉上に12分間流すことにより約12μm深さの溝(7)が形成できる。尚、上記Ar-C1_(2)-O_(2)エッチングガスはSiO_(2)に対しては非エツチング性である。」(第2頁左上欄9行乃至右上欄18行)」
イ 引用例8の記載事項
上記アの記載から、引用例8には、実質的に次の事項(以下、「引用例8記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「p型Si基板(1)上に、p型SiC単結晶層(2)と、n型SiC単結晶層(3)とを順次積層してなるウェハ(4)を準備し、基板(1)、p層〈2)及びn層(3)の露出表面にSiO_(2)からなり熱酸化膜(5)を形成し、熱酸化膜(5a)に開口(6)を所定間隔毎に形成し、ウェハ(4)を1000℃に保持し、Arガス、Cl_(2)ガス及びO_(2)ガスを夫々945cc/min,50cc/min及び5cc/minの割合で上記ウェハ(4〉上に流し、上記開口(6)により露出したn層(3)表面より基板(1〉に達する深さの溝(7)をエッチングにより形成すること。」

2 対比・判断
(1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明の「SiC基板」、「SiO_(2)膜4」および「SiC基板上にSiO_(2)膜4がパターニングされ、SiO_(2)膜マスクとされたSiC積層基板10」は、それぞれ本願発明の「炭化珪素基板」、「二酸化珪素」および「エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板」に相当する。
イ 引用例1発明の「ICPドライエッチング」は、高密度プラズマを用いたドライエッチング方式であるから、本願発明の「プラズマエッチングする方法」に相当する。
そして、引用例1発明の「エッチング方法」は、「SiC基板」をエッチングしているから、引用例1発明の「エッチング方法」は、本願発明の「炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法」に相当する。
ウ 引用例1発明は「第一ドライエッチングのエッチング条件として、SF_(6)ガスとO_(2)ガスとArガスの混合ガスでSF_(6)流量5sccm、O_(2)流量8sccm、Ar流量30sccmを導入して1Paの圧力でICP電力500W、SiC基板側に印加するバイアス電力を15W、さらにSiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件で目標深さの4/5程度まで(約10μm)エッチングを行い、
第二のエッチング条件として、SF_(6)、O_(2)、Arの混合ガスでSF_(6)流量2sccm、O_(2)流量2sccm、Ar流量8sccmを導入して1Paの圧力でICP電力200W、SiC基板側に印加するバイアス電力を20W、さらにSiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件で、先に形成したトレンチ5深さ10μmにさらに深さ2.5μmエッチングを加え(第一のエッチング条件と合わせた深さ12.5μmエッチング)、」ているから、本願発明の「前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたこと」と、「SF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスをプラズマ化し、且つ、バイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を加熱した状態でエッチングするようにした」点で共通する。
エ 引用例1発明は「トレンチ底部を、電界集中を引き起こして耐圧特性に影響を及ぼす程度の鋭角を有する凹凸形状を形成することなく、平坦にエッチングできる」ことと、本願発明の「前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすること」は、「前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、炭化珪素基板を高精度にエッチングする」点で共通する。

そうすると、本願発明1と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、
エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板を、
SF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスをプラズマ化し、且つ、バイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能なプラズマエッチング方法。」
[相違点1]
本願発明は「閉塞空間を有する処理チャンバと、炭化珪素基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備えたエッチング装置を用いて、前記基台上の炭化珪素基板をプラズマエッチングする」のに対して、引用例1発明は、エッチング装置装置の具体的な構成について記載されていない点。
そのため、本願発明は「前記基台上に、エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板を載置し」、「前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し」、「供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し」、また、「前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて」いるのに対して、引用例1発明は、その点について記載されていない点。
[相違点2]
本願発明は、「前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能」としているのに対して、引用例1発明は、炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱していない点。

(2)当審の判断
[相違点2]について検討する。
引用例1発明は、「SiC基板をヒーターで80℃に加熱した条件」でエッチングをしているから、引用例1の記載から、本願発明の「前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチング」することを、当業者が容易に想起することができたとは認められない。
また、引用例2ないし8には、プラズマエッチング方法において「前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能」とすることについて記載されていない。
そうすると、引用例2ないし8の記載から、引用例1発明において、上記[相違点2]について、本願発明と同様の方法を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明は、特に[相違点2]を有することによって、
「【0014】
そして、このような点を踏まえ、炭化珪素基板の加熱温度とエッチング形状との関係について調べたところ、炭化珪素基板の加熱温度が200℃?400℃であれば、プラズマエッチングを行った際に、穴Hや溝Hの底面に溝H’が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さなものであり、また、穴Hや溝Hの側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされたとしてもごく僅かであることが確認された。したがって、炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱すれば、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることができる。尚、炭化珪素基板の加熱温度は300℃?400℃の範囲であれば、更に好ましい。
【0015】
斯くして、本発明に係るプラズマエッチング方法によれば、炭化珪素基板をプラズマエッチングする際に、この炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱しているので、精度良く炭化珪素基板をエッチングすることができる。」
という格別の効果を有するものであるから、[相違点2]に係る方法は、引用例1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明は、引用例1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、本願発明は、他の相違点については検討するまでもなく、引用例1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願の請求項2ないし4に係る発明の進歩性について
本願の請求項2ないし4は、請求項1を引用しており、本願の請求項2ないし4に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願発明が引用例1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項2ないし4に係る発明も、引用例1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 原査定の理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 当審の拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成28年8月29日付で当審より通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「A.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



1.請求項1に記載された発明は、
「閉塞空間を有する処理チャンバと、炭化珪素基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備えたエッチング装置を用いて、前記基台上の炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、
前記基台上に、エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板を載置した後、
前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とするプラズマエッチング方法。」
であるが、発明の詳細な説明には、「前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングする」際に、SF_(6)ガスとO_(2)ガスの供給量をいくらにするのか、処理チャンバ内の圧力や、コイルに供給する高周波電力および基台に供給する高周波電力をいくらにするのか記載されておらず、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載したものであるとは言えず、また、当該技術分野における技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明の記載から自明であるとは言えない。
つまり、炭化珪素基板の温度が同じであっても、エッチングガスの供給量や、処理チャンバ内の圧力やコイルに供給する高周波電力および基台に供給する高周波電力が異なる場合、エッチング形状は異なる形状となることは、当業者に知られていることである(特開2007-109758号公報【0026】【図5】【図6】参照。)から、発明の詳細な説明に、「前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングする」際の、SF_(6)ガスとO_(2)ガスの供給量や、処理チャンバ内の圧力やコイルに供給する高周波電力および基台に供給する高周波電力について記載されていない、本願明細書は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているとは言えない。
なお、本願明細書【0042】には、エッチングガスの供給量や、処理チャンバ内の圧力やコイルに供給する高周波電力および基台に供給する高周波電力について記載されているが、この記載は、エッチングガスとしてSF_(6)ガスをもちいた場合の記載であって、エッチングガスとしてSF_(6)ガスとO_(2)ガスをもちいた場合のものではない。
そして、請求項1に記載された発明を引用する、請求項2-4に記載された発明も、同様の理由により、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているとは言えない。


B.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



1.発明の詳細な説明に
「【0009】
本発明は、本願発明者らが、精度の良いプラズマエッチングを実施可能な炭化珪素基板の加熱温度について実験を重ねた結果なされたものであり、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることができるプラズマエッチング方法の提供をその目的とする。」
「【0012】
即ち、本願発明者らの研究によると、炭化珪素基板Kの加熱温度が低いときには、図2(a)に示すように、エッチングにより形成された穴Hや溝Hの底面の側壁側に溝H’が更に形成され、精度の良いエッチング形状を得ることができない。ところが、炭化珪素基板Kの加熱温度を徐々に高くしていくと、図2(b)に示すように、形成される溝H’の大きさが徐々に小さくなり、最終的には、図2(c)に示すように、溝H’が形成されなくなる。
【0013】
また、溝H’が形成されなくなった加熱温度から炭化珪素基板Kの加熱温度を徐々に高くしていくと、エッチングが等方的に進み易くなり、図2(d)及び図2(e)に示すように、穴Hや溝Hの側壁までエッチングされてしまう。炭化珪素基板Kを構成する原子は、その結合が切れてからでないと、エッチングガスのプラズマ化により生成されたラジカルやイオンと反応しないのであるが、当該炭化珪素基板Kの温度が高いほど、原子間の結合が切れ易く、エッチングガスのプラズマ化により生成されたラジカルやイオンと、炭化珪素基板Kを構成する原子とが反応し易いため、この反応によるエッチングが効率的に進む。尚、炭化珪素基板Kについては、シリコン(Si)と炭素(C)との結合が強固である一方、その温度が高くなることによって両者の結合が切れ易く、エッチングされ易い。したがって、炭化珪素基板Kの加熱温度が高いほど、炭化珪素基板Kのエッチングが等方的に進み、穴Hや溝Hの側壁がエッチングされ易くなる。尚、図2(d)と図2(e)では、図2(e)の方が炭化珪素基板Kの加熱温度が高いときのエッチング形状を図示している。また、図2において、符号Mはマスクを示している。
【0014】
そして、このような点を踏まえ、炭化珪素基板の加熱温度とエッチング形状との関係について調べたところ、炭化珪素基板の加熱温度が200℃?400℃であれば、プラズマエッチングを行った際に、穴Hや溝Hの底面に溝H’が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さなものであり、また、穴Hや溝Hの側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされたとしてもごく僅かであることが確認された。したがって、炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱すれば、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることができる。尚、炭化珪素基板の加熱温度は300℃?400℃の範囲であれば、更に好ましい。
【0015】
斯くして、本発明に係るプラズマエッチング方法によれば、炭化珪素基板をプラズマエッチングする際に、この炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱しているので、精度良く炭化珪素基板をエッチングすることができる。」
と記載されているように、本願発明は、炭化珪素基板の加熱温度が200℃?400℃でプラズマエッチングを行った際に、穴Hや溝Hの底面に溝H’が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さなものであり、また、穴Hや溝Hの側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされたとしてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングするプラズマエッチング方法であることを特徴としている。
しかしながら、請求項1-4に記載された発明は、例えば、請求項1に、
「前記基台上に、エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板を載置した後、
前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたこと」
との記載しかないために、炭化珪素基板のエッチング速度を速めるために、エッチング中の炭化珪素基板の温度を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)とするものを含んでおり、発明の詳細な説明に記載された発明以外を含むものとなっている。
従って、請求項1-4に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。


C.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
引用例1:特開2007-109758号公報
引用例2:特表2007-502547号公報
引用例3:特開平10-303185号公報
引用例4:特開平6-169018号公報
引用例5:特開2007-324503号公報
引用例6:特開平8-8232号公報


・請求項1
・引用例 1-5
・備考

引用例1に記載された発明と請求項1に記載された発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。

<相違点1>
請求項1に記載された発明は、「エッチング装置」が、「閉塞空間を有する処理チャンバと、炭化珪素基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備え」ているのに対して、引用例1に記載された発明は、プラズマエッチング装置がICP(Inductively Coupled Plasma)方式をもちいても良いとの記載(引用例1【0021】)はあるものの、具体的なプラズマエッチング装置の構成が明示されていない点。

<相違点2>
請求項1に記載された発明は、「エッチングマスク」として「二酸化珪素」がもちいられているのに対して、引用例1に記載された発明は、「エッチングマスク」として「Ni層」がもちいられている点。

<相違点3>
請求項1に記載された発明が、「前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチング」しているのに対して、引用例1に記載された発明は50?200℃の任意の温度でエッチングを行っている(引用例1【0022】)点。

以下、各相違点について検討する。

<相違点1>について
ICP方式のプラズマエッチング装置が、「閉塞空間を有する処理チャンバと、」「基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備え」ることは、引用例2【0012】,【0014】,【0023】,【図5】や、引用例3【0003】,【0004】,【0006】,【図4】、及び引用例4【0022】?【0024】,【図4】に記載されているように周知の構成であり、引用例1に記載された発明において、「エッチング装置」が、請求項1に記載された発明と同様の構成を有することは、当業者であれば適宜為し得る事項である。

<相違点2>について
炭化珪素基板をエッチングする際に、Ni等の金属マスクを用いた際の金属汚染を避けるために、マスクとして二酸化珪素をもちいることは、引用例5【0009】【0018】に記載されているように公知の技術である。
そして、引用例1に記載された発明において、マスク材料による金属汚染を避けるために、エッチングマスクを二酸化珪素で構成するようにすることは、当業者が適宜為し得る事項である。

<相違点3>について
引用例1に記載された発明において、エッチング速度を速くするために、エッチングの際の基板の温度を高くすることは当業者が適宜考慮する事項であり、また、エッチングの温度を決めるのは、接着剤が軟化する温度より低い温度とすることであるから、200℃より高い温度でエッチングを行うことは、接着剤の軟化する温度がより高い材料を選択することにより、当業者が適宜為し得る事項である。そして、その際に、200℃?400℃(ただし、200℃を除く)とすることに、格別の困難性認められない。


・請求項2,3
・引用例 1-6
・備考
ICP方式のプラズマエッチング装置において、「炭化珪素基板を予め加熱する際に、前記ガス供給装置により不活性ガスを前記処理チャンバ内に供給し、供給した不活性ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与え、前記不活性ガスのプラズマ化により生成されたイオンを前記炭化珪素基板に入射させて該炭化珪素基板を加熱するよう」することは引用例2【0030】?【0033】,【図8】や、引用例6【0006】,【0019】,【0020】,【0038】,【0039】,【図1】に記載されているように公知の技術であるから、引用例1に記載された発明において、該公知技術を採用し、請求項2および3に記載された発明と同様の発明とすることに、格別の困難性は認められない。

・請求項4
・引用例 1-6
・備考
請求項1で検討したように、引用例1に記載された発明において、エッチング速度を速くするために、エッチングの際の基板の温度を高くすることは当業者が適宜考慮する事項であり、また、エッチングの温度を決めるのは、接着剤が軟化する温度より低い温度とすることであるから、接着剤をエッチングの際の基板の温度を300℃?400℃とした際に、それに耐えるものを選択することにより、適宜為し得る事項である。」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)理由Bについて
平成28年11月28日付の手続補正書により、本願発明は
「閉塞空間を有する処理チャンバと、炭化珪素基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備えたエッチング装置を用いて、前記基台上の炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、
前記基台上に、エッチングマスクである二酸化珪素が形成された前記炭化珪素基板を載置した後、
前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し、供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し、且つ、前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能なプラズマエッチング方法。」
となったから、炭化珪素基板のエッチング速度を速めるために、エッチング中の炭化珪素基板の温度を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)とするものを含むものでなくなった。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、補正後の請求項2ないし4に記載された発明は、請求項1に記載された発明を引用しているから、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、当審拒絶理由のBに示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(2)理由Aについて
本願は、上記理由Bを解消することにより、「前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能なプラズマエッチング方法。」となり、炭化珪素基板の温度を200℃?400℃の範囲内とすれば、他のエッチング条件が周知の範囲内で、種々のエッチング形状を形成した場合であっても、目的としたエッチング形状において、穴H及び溝Hの底面の側壁側での溝H’形成や側壁の過度のエッチング形成を抑制できる点が明確になったから、発明の詳細な説明が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることが明確かつ十分に記載したものとなった。
したがって、当審拒絶理由のAに示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。

(3)理由Cについて
ア 引用例7(当審の拒絶理由において引用例1として引用した文献)について
(ア)当審の拒絶の理由に引用された、特開2007-109758号公報(「引用例7」)には、図面とともに、上記「第4 1 (1) ア」に記載されたことが記載されている。
(イ) 引用例7発明について
上記「第4 1 (1) ア」の記載から、引用例7には、実質的に上記「第4 1 (1) イ」の「引用例7発明」が記載されているものと認められる。
イ 引用例3(当審の拒絶理由において引用例2として引用した文献)について
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、特表2007-502547号公報(「引用例2」)には、図面とともに、上記「第4 1 (3) ア」に記載されたことが記載されている。
(イ)引用例3の記載事項について
上記「第4 1 (3) ア」の記載から、引用例3には、実質的に上記「第4 1 (3) イ」の「引用例3記載事項-1」および「引用例3記載事項-2」が記載されているものと認められる。
ウ 引用例4(当審の拒絶理由において引用例3として引用した文献)について
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、特開平10-303185号公報(「引用例4」)には、図面とともに、上記「第4 1 (4) ア」に記載されたことが記載されている。
(イ)引用例3の記載事項について
上記「第4 1 (4) ア」の記載から、引用例4には、実質的に上記「第4 1 (4) イ」の「引用例4記載事項」が記載されているものと認められる。
エ 引用例5(当審の拒絶理由において引用例4として引用した文献)について
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、特開平6-169018号公報(「引用例5」)には、図面とともに、上記「第4 1 (5) ア」に記載されたことが記載されている。
(イ)引用例5の記載事項について
上記「第4 1 (5) ア」の記載から、引用例5には、実質的に上記「第4 1 (5) イ」の「引用例5記載事項」が記載されているものと認められる。
オ 引用例1(当審の拒絶理由において引用例5として引用した文献)について
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、特開2007-324503号公報(「引用例1」)には、図面とともに、上記「第4 1 (1) ア」に記載されたことが記載されている。
(イ)引用例1の記載事項について
上記「第4 1 (1) ア」の記載から、引用例1には、実質的に上記「第4 1 (1) イ」の「引用例1記載事項」が記載されているものと認められる。
カ 引用例6(当審の拒絶理由において引用例6として引用した文献)について
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、特開平8-8232号公報(「引用例6」)には、図面とともに、上記「第4 1 (6) ア」に記載されたことが記載されている。
(イ)引用例6の記載事項について
上記「第4 1 (6) ア」の記載から、引用例6には、実質的に上記「第4 1 (6) イ」の「引用例6記載事項」が記載されているものと認められる。
キ 対比
(ア)本願発明と引用例7発明とを対比する。
a 引用例7発明の「SiCウエハ1」、「プラズマエッチング装置のステージ」、SF6/O2を用いた「エッチングガス」、および、「エッチング装置」は、それぞれ本願発明の「炭化珪素基板」、「炭化珪素基板が載置される基台」、「SF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガス」、および、「エッチング装置」に相当する。
b 引用例7発明の「バイアホール形成方法」は、「SiCウエハ1」をエッチングするものであり、また、「ICP(Inductively Coupled Plasma)方式のエッチング装置によって」エッチングする方法であるから、本願発明の「炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法」に相当する。
c 引用例7発明は「Ni層5をマスクとし」てエッチングを行っており、このことは、本願発明の「エッチングマスクである二酸化珪素」と、マスクを利用してエッチングする点で共通する。
d 引用例7発明は「プラズマエッチング装置のステージ温度を50?200℃の任意の温度と」し、「プラズマエッチング」しているから、「プラズマエッチング装置のステージ」の上の「SiCウエハ1」も「50?200℃の任意の温度」となるから、このことは、本願発明の「前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングする」ことと、「前記炭化珪素基板を加熱した状態でエッチングする」点で共通する。

そうすると、本願発明と引用例7発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「炭化珪素基板が載置される基台を備えたエッチング装置を用いて、前記基台上の炭化珪素基板をプラズマエッチングする方法であって、
エッチングマスクが形成された前記炭化珪素基板と、
SF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスをもちいて、前記炭化珪素基板をエッチングするとともに、
前記炭化珪素基板を加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、
プラズマエッチング方法。」
[相違点1]
本願発明は「閉塞空間を有する処理チャンバと、炭化珪素基板が載置される基台と、前記処理チャンバ内を減圧する排気装置と、前記処理チャンバ内にガスを供給するガス供給装置と、コイルを有し、このコイルに高周波電力を供給して、前記処理チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するプラズマ生成装置と、前記基台に高周波電力を供給する高周波電源とを備えたエッチング装置を用いて、前記基台上の炭化珪素基板をプラズマエッチングする」のに対して、引用例1発明は、エッチング装置装置の具体的な構成について「プラズマエッチング装置のステージ」しか記載されていない点。
そのため、本願発明は「前記排気装置によって減圧された前記処理チャンバ内に、前記ガス供給装置によってSF_(6)ガスとO_(2)ガスとの混合ガスを供給し」、「供給した前記混合ガスを前記プラズマ生成装置によってプラズマ化し」、また、「前記高周波電源によって前記基台にバイアス電位を与えて」いるのに対して、引用例1発明は、その点について記載されていない点。
[相違点2]
本願発明は「エッチングマスクである二酸化珪素が形成さ」ているのに対して、引用例7発明は、エッチングマスクとして「Ni層」が用いられている点。
[相違点3]
本願発明は「前記炭化珪素基板を200℃?400℃(ただし、200℃を除く)に加熱した状態でエッチングするようにしたことを特徴とする、前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく、前記穴及び溝の前記側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされてもごく僅かである、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることが可能」としているのに対して、引用例7発明はそのようにしていない点。

ク 当審の判断
[相違点3]について検討する。
引用例7発明は、「ドライエッチングによりバイアホール加工を行うバイアホール形成方法」であるから、形成された「バイアホール」は、「前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面」を有しておらず、そのため形成された「バイアホール」は、「前記エッチングにより形成された穴及び溝の底面の側壁側の溝が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さく」する構成を備えることは出来ない。
そうすると、引用例1および3ないし6に[相違点3]に関する事項が記載されていたとしても、引用例7発明において、上記[相違点3]について、本願発明と同様の方法を採用することが容易であるとは言えない。
そして、本願発明は、特に[相違点3]を有することによって、
「【0014】
そして、このような点を踏まえ、炭化珪素基板の加熱温度とエッチング形状との関係について調べたところ、炭化珪素基板の加熱温度が200℃?400℃であれば、プラズマエッチングを行った際に、穴Hや溝Hの底面に溝H’が全く形成されないか、形成されたとしても非常に小さなものであり、また、穴Hや溝Hの側壁についても、全くエッチングされないか、エッチングされたとしてもごく僅かであることが確認された。したがって、炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱すれば、炭化珪素基板を高精度にエッチングすることができる。尚、炭化珪素基板の加熱温度は300℃?400℃の範囲であれば、更に好ましい。
【0015】
斯くして、本発明に係るプラズマエッチング方法によれば、炭化珪素基板をプラズマエッチングする際に、この炭化珪素基板を200℃?400℃に加熱しているので、精度良く炭化珪素基板をエッチングすることができる。」
という格別の効果を有するものであるから、[相違点3]に係る方法は、引用例7,1および3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明は、引用例7,1および3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、本願発明は、他の相違点については検討するまでもなく、引用例7,1および3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ケ 本願の請求項2ないし4に係る発明の進歩性について
本願の請求項2ないし4は、請求項1を引用しており、本願の請求項2ないし4に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願発明が引用例7,1および3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項2ないし4に係る発明も、引用例7,1および3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) 当審拒絶理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由のAないしCに示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。
そすると、もはや、当審の拒絶理由によっては本願を拒絶することはできない。

第6 結語
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2014-35487(P2014-35487)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 聖和田邊 顕人小山 満  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 プラズマエッチング方法  
代理人 アセンド特許業務法人  
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