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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1326608
審判番号 不服2016-15495  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-17 
確定日 2017-04-24 
事件の表示 特願2013-256866「マルチタッチセンシングデバイスを持つハンドヘルド電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 44755、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年3月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年3月4日,米国 2005年4月26日,米国)を国際出願日とする特願2007-558262号の一部を平成25年12月12日に新たな特許出願としたものであって,平成27年1月29日付けで拒絶理由が通知され,平成27年7月2日に意見書と手続補正書が提出され,平成27年7月24日付けで拒絶理由(最後)が通知され,平成28年1月19日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成28年6月9日付けで平成28年1月19日に提出された手続補正書による手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年10月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年10月17日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,
「 ハンドヘルド電子装置であって
前記ハンドヘルド電子装置の第1面であって,該第1面は,第1画像を表示し,当該第1面への接触の複数のポイントを感知し,報告できるようになっている第1面と,
前記ハンドヘルド電子装置の第2面であって,前記第2面は,前記ハンドヘルド電子装置の前記第1面と連続的であり,かつ,前記第2面は,第2画像を表示し,接触の少なくとも一つのポイントを感知し,報告できるようになっている第2面と,
を備え,
前記第1面は,前記ハンドヘルド電子装置の前面に配置され,前記第2面は,前記ハンドヘルド電子装置の第1側部に配置され,前記前面は,前記第1側部に隣接して位置し, 前記第1面と前記第2面は同時に,画像の表示と1つ又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる,
ハンドヘルド電子装置。」
とする補正(以下,「補正事項1」という。)を含んでいる。

(2)請求項4について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項5を,
「 ハンドヘルド電子装置であって,
ハウジングと,
前記ハウジングの前面に位置するディスプレイと複数のセンシングノードを有するタッチセンサパネルを含むマルチポイントタッチスクリーンと,
前記ハウジングの第1側部に位置するタッチセンシングデバイスであって,前記第1側部は,前記前面と連続的である,タッチセンシングデバイスと,を備え,
前記タッチセンシングデバイスは,タッチスクリーンであり,
前記前面は,前記第1側部に隣接して位置し,
前記マルチポイントタッチスクリーンと前記タッチセンシングデバイスは同時に,画像の表示と1又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる,
ハンドヘルド電子装置。」
とする補正(以下,「補正事項2」という。)を含んでいる。

(3)請求項6について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項7を,
「ハウジングと,
該ハウジングの前面に位置するディスプレイと複数のセンシングノードを有するタッチセンサパネルとを含むマルチポイントタッチスクリーンと,
前記ハウジングの,前記前面に隣接する側面に配されたセンサ構成であって,前記ハウジングの前記側面の少なくとも一部上の物体の存在を検出するよう構成され,ディスプレイを含むセンサ構成と,
前記タッチスクリーンと前記センサ構成上のタッチ入力を追跡するように構成されたコントローラとを備え,
前記前面は,前記側面に隣接して位置し,
前記マルチポイントタッチスクリーンと前記センサ構成は同時に,画像の表示と1又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる,
ハンドヘルド装置。」
とする補正(以下,「補正事項3」という。)を含んでいる。

(4)請求項8について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項9を,
「 ハンドヘルド電子装置を作動させる方法であって,
前記ハンドヘルド電子装置の第1面に,第1画像を表示させ,
前記第1面で複数のポイントの接触を感知して報告させ,
第2画像を表示して,前記第1面とは異なる位置にある,前記ハンドヘルド電子装置の第2面に一つ以上のポイントの接触を感知して報告させ,
前記第2面が,前記第1面と連続的であり,
前記第1面及び前記第2面上のタッチ入力を追跡する段階と,を備え,
前記第1面は,前記ハンドヘルド電子装置の前面に配置され,前記第2面は,前記ハンドヘルド電子装置の第1側部に配置され,前記前面は,前記第1側部に隣接して位置し,
前記第1面及び第2面は同時に,画像の表示と1又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる,
方法。」
とする補正(以下,「補正事項4」という。)を含んでいる。

2 補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ハンドヘルド電子装置」の「第1面」と「第2面」につき,「前記第1面は,前記ハンドヘルド電子装置の前面に配置され,前記第2面は,前記ハンドヘルド電子装置の第1側部に配置され,前記前面は,前記第1側部に隣接して位置し,前記第1面と前記第2面は同時に,画像の表示と1つ又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

ア 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-143606号公報(以下,「引用例」という。)には,「ユーザインターフェースサポートデバイス,情報入力方法及びデータ転送用タイリング可能な複数デバイス」(発明の名称)に関し,以下の記載がある。

a 「【0012】物理的に操作可能なユーザインターフェースは、更に、複数のデバイスがユーザフレンドリーな(誰でも使い易い)方法で対話する機会を提供する。例えば、ディスプレイを囲んでいる接触に感応する変形可能な部品を有する多数のディスプレイを持つタイリング(tileable: タイル状に並べること)可能なディスプレイシステムは、各ディスプレイの接点の相対位置に基づき文書を編成するために使用されることが可能である。例えば、異なるデータ構造(例えば、2つの異なる電子ブックからの2つの異なるページ)を初めに示している2つのディスプレイが接触して並べられると、表示された視覚情報は変化しうる(例えば、単一の電子ブックの隣接ページを表示することにより)。理解されるように、物理的に操作可能な制御要素に接続された複数のコンピュータを、データ構造を編成するための複雑なコマンドを作るためにも使用することが可能である。」(段落【0012】)

b 「【0041】物理的操作に基づく形態素に加えて、相対又は絶対空間位置決定の程度の変化に基づく様々な形態素が本発明の実施に役立つように考慮される。考えられる様々な空間形態素の理解を助けるために、図17は形態素の利用を可能にするために必要とされる空間位置の認識の増加する順、及び特定のクラスのデバイスに適用される形態素を形成するため又は解釈するために必要とされる利用可能なセンシームタプルの複雑さの増加する順に配置される選択された空間形態素を表す。可能な空間操作の定義及び図1に関連して説明されたのと同様のデバイス(但し当然、より複雑でありうる)の操作により呼び出される典型的な機能が、単純な空間センシームをサポートするための基本的な相対位置決め機能性のみを有するデバイスから始まり、地球上の如何なる場所でも数センチ範囲内に確実に位置決め可能なデバイスまで示される。
・・・(中略)・・・
【0049】向ける
定義:第一のセットの小領域が最早一番底ではなく、第二の別なセットの小領域が第一の小領域の前の位置を引き継ぐようにデバイスの1つ又は複数の小領域を操作すること。
例:図23に示されるように、文書を表示し、ユーザがそれらの文書を編集可能なデバイス310を考える。更に、そのデバイスがユーザに6つの異なる面上に6つの異なる文書が表示される立方体の形状で提示される例を考える。ユーザが特定の面を一番上にすることにより「向ける」ジェスチャーを実行すると、この時点で一番上の面の文書がユーザにより編集可能になり、最早一番上の面でない文書は編集可能でなくなる。」(段落【0041】-【0049】)

そうすると,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

『 文書を表示し,ユーザがそれらの文書を編集可能なデバイス310であって,
そのデバイスがユーザに6つの異なる面上に6つの異なる文書が表示される立方体の形状で提示され,ユーザが特定の面を一番上にすることにより「向ける」ジェスチャーを実行すると,この時点で一番上の面の文書がユーザにより編集可能になり,最早一番上の面でない文書は編集可能でなくなる,
デバイス310。』

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「特定の面」はデバイス310の前面に配置された面といえるから,後述する相違点を除き補正発明1の「第1面」に相当する。
b 引用発明の「最早一番上の面でない文書」が表示される面はデバイス310の側部に配置された面といえるから,後述する相違点を除き補正発明1の「第2面」に相当する。
c 引用発明の「デバイス310」は明らかに「電子装置」といい得るものである。

そうすると,補正発明1と引用発明とは,以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 電子装置であって
前記電子装置の第1面であって,該第1面は,第1画像を表示する第1面と,
前記電子装置の第2面であって,前記第2面は,前記電子装置の前記第1面と連続的であり,かつ,前記第2面は,第2画像を表示する第2面と,
を備え,
前記第1面は,前記電子装置の前面に配置され,前記第2面は,前記電子装置の第1側部に配置され,前記前面は,前記第1側部に隣接して位置し,前記第1面と前記第2面は同時に,画像の表示を有効にすることができる,
電子装置。」

(相違点1)
「電子装置」が,
補正発明1では「ハンドヘルド電子装置」であるのに対し,
引用発明では「デバイス310」である点。

(相違点2)
一致点の「第1面」と「第2面」に関し,
補正発明1では,「第1面」は「当該第1面への接触の複数のポイントを感知し,報告できるようになって」おり,「第2面」は,「接触の少なくとも一つのポイントを感知し,報告できるようになって」おり,「前記第1面と前記第2面は同時に,画像の表示と1つ又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる」のに対し,
引用発明では,「一番上の面」には「文書が表示され」,「文書がユーザにより編集可能」になっており,「最早一番上の面でない文書」が表示される面には「異なる文書が表示され」るが「文書は編集可能でなくなる」点。

ウ 判断
事案に鑑み,上記(相違点2)について検討する。
引用例には,「物理的に操作可能なユーザインターフェースは,更に,複数のデバイスがユーザフレンドリーな(誰でも使い易い)方法で対話する機会を提供する。例えば,ディスプレイを囲んでいる接触に感応する変形可能な部品を有する多数のディスプレイを持つタイリング(tileable: タイル状に並べること)可能なディスプレイシステムは,各ディスプレイの接点の相対位置に基づき文書を編成するために使用されることが可能である。」(段落【0012】)とあるように,ディスプレイが接触のポイントを感知できるようにすることについての記載はあるが,【図23】に記載された引用発明に係る実施形態において,「第1面」は「当該第1面への接触の複数のポイントを感知し,報告できるようになって」おり,「第2面」は,「接触の少なくとも一つのポイントを感知し,報告できるようになって」おり,「前記第1面と前記第2面は同時に,画像の表示と1つ又は複数の接触のポイントの感知の機能を有効にすることができる」ようにすることまでも示唆するものではない。
また,上記(相違点2)に係る補正発明1の構成は,原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-242428号公報や前置報告書で引用された特開2003-271309号公報に記載されておらず,また,当該技術分野における周知技術ということはできない。
そうすると,上記(相違点2)に係る補正発明1の構成は当業者が容易に想到し得たものではなく,したがって,補正発明1は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,本件補正の補正事項1は,上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
補正後の請求の範囲4に係る発明(以下,「補正発明4」という。)についても補正発明1と同様に,上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,かつ,特許出願の際独立して特許を受けることができたものであって,補正事項2についても上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)補正事項3について
補正後の請求の範囲6に係る発明(以下,「補正発明6」という。)についても補正発明1と同様に,上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,かつ,特許出願の際独立して特許を受けることができたものであって,補正事項2についても上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)補正事項4について
補正後の請求の範囲8に係る発明(以下,「補正発明8」という。)についても補正発明1と同様に,上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,かつ,特許出願の際独立して特許を受けることができたものであって,補正事項2についても上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

3 むすび
本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから,本願の請求項1-9に係る発明は本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして,補正発明1,補正発明4,補正発明6,補正発明8は,上記第2の2のとおり,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また,補正発明1を直接又は間接的に引用する補正後の請求項2,3に係る発明は補正発明1をさらに限定したものであり,補正発明4を引用する補正後の請求項5に係る発明は補正発明4をさらに限定したものであり,補正発明6を引用する補正後の請求項7に係る発明は補正発明6をさらに限定したものであり,補正発明8を引用する補正後の請求項9に係る発明は補正発明8をさらに限定したものであるから,いずれも当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2013-256866(P2013-256866)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菊池 智紀  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 山澤 宏
新川 圭二
発明の名称 マルチタッチセンシングデバイスを持つハンドヘルド電子装置  
代理人 西島 孝喜  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 弟子丸 健  

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