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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1326643 |
審判番号 | 不服2016-12750 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-24 |
確定日 | 2017-04-18 |
事件の表示 | 特願2012-223541「電子機器、制御方法、及び制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月24日出願公開、特開2014- 75104、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は,平成24年10月5日の出願であって,平成27年4月24日付け拒絶理由通知に対して平成27年6月26日に意見書及び手続補正書が提出され,平成27年11月26日付け拒絶理由通知(最後)に対して平成28年1月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが平成28年5月18日付けで平成28年1月27日に提出された手続補正書による手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,これを不服として平成28年8月24日に審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年5月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2007-280179号公報(新たに引用された文献) 2.特開2011-49885号公報(新たに引用された文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,補正前の「一覧情報」を「一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーション」とする補正(以下,「本件補正」という。)であり,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとは認められない。 なお,審判請求人は審判請求書において, 「補正後の請求項1-3(補正前の請求項1-3)は,本願出願当初の明細書の段落番号0041,0054,0057,0067,0085に記載した事項,及び出願当初の図面の図4に記載した事項等に基づいて,補正を行ったものです。 本願発明の発明特定事項は,全て出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された範囲内に含まれております。したがって,新規事項の追加はなく,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていると思料します。 また,当該補正は,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものであるため,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていると思料します。」 と主張している。 この点について検討すると,「前記検出処理において,前記一覧情報から対応するアプリケーションを検出できなかった場合」の「前記一覧情報の表示処理」に関し,本願明細書には「実行画面50には,SMSアプリケーション9Bに対応するアイコンA1,Eメールアプリケーション9Cに対応するアイコンA2,メモ帳アプリケーション9Dに対応するアイコンA3,動画アプリケーション9Eに対応するアイコンA4,及びブラウザアプリケーション9Fに対応するアイコンA5が表示される。・・・(中略)・・・続いて,スマートフォン1は,タッチスクリーン2Bを介して,動画アプリケーション9Eに対応するアイコンA4に対する操作を検出すると(ステップS27),動画アプリケーション9Eを起動し,動画アプリケーション9Eの画面62をディスプレイ2Aに表示する(ステップS28)。動画アプリケーション9Eを起動する際,スマートフォン1は,音声の認識結果を動画アプリケーション9Eに受け渡し,例えば,画面62にある検索入力ボックス62aに,音声の認識結果に対応する文字が入力された状態で画面62を表示させてもよい。」(段落【0056】-【0057】)とあり,「SMSアプリケーション9Bに対応するアイコンA1,Eメールアプリケーション9Cに対応するアイコンA2,メモ帳アプリケーション9Dに対応するアイコンA3,動画アプリケーション9Eに対応するアイコンA4,及びブラウザアプリケーション9Fに対応するアイコンA5」という,いずれも「文字情報を入力することが可能なアプリケーション」の表示処理を行うことが記載されているから,本件補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でする補正であり,新規事項を追加するものではないと認められる。 また,本件補正は,「一覧情報」を「一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーション」とすることにより「一覧情報」を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,「第4 本願発明」から「第6 当審の判断」までに示すように,補正後の請求項1-3に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は,平成28年8月24日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 マイクと, アプリケーションの一覧情報を記憶したストレージと, 前記マイクにより入力された音声の認識結果に基づいて前記一覧情報から対応するアプリケーションの検出処理を行い,前記検出処理により対応するアプリケーションを検出できた場合に前記対応するアプリケーションの実行処理を行うコントローラとを有し, 前記コントローラは,前記検出処理において,前記一覧情報から対応するアプリケーションを検出できなかった場合に,前記一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーションの表示処理を行う電子機器。 【請求項2】 マイクを有する電子機器を制御する制御方法であって, 前記マイクにより入力された音声の認識処理を行い, 前記認識処理の結果に基づいてアプリケーションの一覧情報から対応するアプリケーションの検出処理を行い, 前記検出処理により対応するアプリケーションを検出できた場合に前記対応するアプリケーションの実行処理を行い, 前記検出処理により前記対応するアプリケーションを検出できなかった場合に,前記一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーションの表示処理を行う制御方法。 【請求項3】 マイクを有する電子機器に, 前記マイクにより入力される音声の認識処理を行い, 前記認識処理の結果に基づいてアプリケーションの一覧情報から対応するアプリケーションの検出処理を行い, 前記検出処理により対応するアプリケーションを検出できた場合に前記対応するアプリケーションの実行処理を行い, 前記検出処理により前記対応するアプリケーションを検出できなかった場合に,前記一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーションの表示処理を行う制御プログラム。」 第5 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は注目箇所に対して当審が付与した。以下同様。) 「【0013】 以下,本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明を携帯電話機に適用した実施の形態を示すブロック図である。 【0014】 図1において,1はアンテナであり,無線部2から出力される高周波信号を送信し,受信した高周波信号を無線部2へ出力する。無線部2はアンテナ1から受信した高周波信号を処理しやすい中間周波数帯にダウンコンバートして変復調部3へ出力し,変復調部3から入力した中間周波数帯の送信信号をアップコンバートしてアンテナ1へ出力する。4は装置全体の制御を司るCPUであり,ROM5に書き込まれたプログラムにしたがって動作する。6はCPU4によりデータを書き込み及び読み出しを行なうRAMである。7はテンキーや機能キーからなる入力部,8はLCD等からなる表示部,9は送信する音声信号等を音声?電気変換するマイク,10は受信した音声信号を電気?音声変換するスピーカである。 【0015】 本発明は,ROM5に格納された各種のアプリケーションプログラムの中からユーザが希望するアプリケーションプログラムをユーザの音声により選択して起動させるものであり,その概要を図2の操作フローにより説明する。 【0016】 図2は表示部8の画面表示が操作とともに遷移する様子を示したものであり,11は待受画面である。待受状態からユーザは希望とするアプリケーションを起動すべく入力部7における所定の機能キーを操作する。この機能キーは短押操作されると通常の入力画面12となってメニュー選択モードが起動され,また,長押操作されると本発明に係る音声入力画面13となって音声入力モードが起動される。ここで,メニュー選択モード及び音声入力モードの何れもが同一の機能キーを用いた操作により起動するようになっているのは,ユーザがアプリケーションを起動したいときに操作するキーを誤認するのを防止するためであり,操作性の向上を図っている。 【0017】 いま,待受画面11の状態において,機能キーが短押操作されたとすると,CPU4が入力部7からその情報を伝達され,メニュー選択モードを起動して表示部8に通常入力画面12を表示させる。次いで,ユーザが入力部7を操作して通常入力画面12上でのカーソル位置操作,若しくはテンキーの操作によって通常入力画面12の「GPSナビアプリ」を選択すると,CPU4がユーザの選択操作を認識してGPSナビアプリを起動して表示部8にGPSナビ画面14を表示させる。この結果,ユーザはGPSナビアプリのアプリケーション機能を操作することが可能になる。 【0018】 一方,待受画面11の状態において,機能キーが長押操作されたとすると,CPU4が入力部7からその情報を伝達され,音声入力モードを起動して表示部8に音声入力画面13を表示させる。音声入力画面13は図2に示すようにガイダンス表示領域13aと呼び出しワード表示領域13bからなっており,ガイダンス表示領域13aには発声を促す「音声で入力してね!」が表示され,呼び出しワード表示領域13bにはROM5に格納されている複数のアプリケーションに対応した呼び出しワードが表示される。 【0019】 ここで,図2の例ではアプリケーションとして「FMラジオ」,「ミュージックプーイヤー」,「動画再生」,「GSPナビアプリ」(当審注:「GSP」は「GPS」の誤記と認められる。以下,同様。)が設定されており,これらアプリケーションに対応する呼び出しワードとして「ラジオ」,「オンガク」,「ドウガ」,「ナビ」が対応付けられている。音声呼び出しするアプリケーションとしてはこれらに限らず,各種のアプリケーションを設定しても良いが,一般ユーザがよく使用するアプリケーションを選択して設定するようにしても良い。また,後述するように各アプリケーションに対応する呼び出しワードは,一つのアプリケーションに一つの呼び出しワードを対応付けしているが,一つのアプリケーションプに複数の呼び出しワードを対応付けするものとしても良い。 【0020】 さて,音声入力画面13の状態でユーザが「GSPナビアプリ」を起動すべく,これに対応付けした「ナビ」と発声したとすると,ユーザの発声した「ナビ」はマイク9を通してCPU4に伝達され,該CPUにより呼び出しワード「ナビ」に対応付けされたアプリケーションである「GSPナビアプリ」のアプリケーションプログラムが起動される。GSPナビアプリが起動完了するまで表示部8には起動中画面15が表示され,起動が完了するとGSPナビ画面14が表示される。この結果,ユーザはGPSナビアプリのアプリケーション機能を操作することが可能になる。 【0021】 次に,音声入力により発声されたユーザの呼び出しワードを分析し,対応するアプリケーションプログラムを起動するCPU4の具体的動作を図3のブロック図により説明する。 【0022】 図3は本発明の主要部を示すCPU4内の機能ブロック及びその周辺ブロック図であり,CPU4内の音響分析部41はユーザが発声した呼び出しワードをマイク9を通して入力し,その音声信号を音響分析して特徴パラメータを抽出する。音響分析部41が抽出した特徴パラメータは音響比較部42で音声パターン格納部51に格納した呼び出しワードの標準の音声パターンと比較され,ユーザが発声した呼び出しワードがどの標準の音声パターンに対応するのかを特定する。アプリケーションプログラム起動部43は音響比較部42が特定した音声パターンを伝達され,複数のアプリケーションプログラムが格納されたアプリケーションプログラム格納部52から上記特定した音声パターンに対応するアプリケーションプログラムを呼び出して起動するものである。 【0023】 以下,図3の各部の動作を図4のフローチャートにより具体的に説明する。 【0024】 いま,ユーザが所定のアプリケーションを起動すべく,入力部7の機能キーを長押操作し,マイク9に向かって呼び出しワードを発声すると(ST1),マイク9で音声?電気変換された呼び出しワードの音声信号が音響分析部41に伝達される。音響分析部41は,伝達された音声信号を分析して音声信号の特徴パラメータを抽出する(ST2)。音響分析部41の抽出した特徴パラメータは音響比較部42へ入力され,該音響比較部42で音声パターン格納部51に格納された標準の音声パターンと比較される(ST3)。音響比較部42はユーザが発声した音声信号の特徴パラメータと標準の音声パターンとの類似性を対比しており(ST4),類似する標準の音声パターンがない場合はNG(ST5)とする。一方,標準の音声パターンに類似するものがあれば,その音声パターンの呼び出しワードをアプリケーションプログラム起動部43へ伝達する。」 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 『4は装置全体の制御を司るCPUであり,ROM5に書き込まれたプログラムにしたがって動作し,9は送信する音声信号等を音声?電気変換するマイクであり, ROM5に格納された各種のアプリケーションプログラムの中からユーザが希望するアプリケーションプログラムをユーザの音声により選択して起動させ, 音声入力画面13の状態でユーザが「GPSナビアプリ」を起動すべく,これに対応付けした「ナビ」と発声したとすると,ユーザの発声した「ナビ」はマイク9を通してCPU4に伝達され,該CPUにより呼び出しワード「ナビ」に対応付けされたアプリケーションである「GPSナビアプリ」のアプリケーションプログラムが起動され,GPSナビアプリが起動完了するまで表示部8には起動中画面15が表示され,起動が完了するとGPSナビ画面14が表示され,この結果,ユーザはGPSナビアプリのアプリケーション機能を操作することが可能になり, ユーザが発声した音声信号の特徴パラメータと標準の音声パターンとの類似性を対比しており,類似する標準の音声パターンがない場合はNGとする,携帯電話機。』 2.引用文献2について また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0001】,【0051】等の記載からみて,当該引用文献2には, 音声認識機能を有する携帯電子機器において,「制御部30は,音声認識処理部40により決定されたカテゴリ,または,このカテゴリに対応するアプリケーションを起動候補として表示し,起動すべきアプリケーションの決定入力を操作部11または音声部70を介して受け付け,また,カテゴリが決定されなかった場合にも同様に,重複していた複数のカテゴリ,または,このカテゴリに対応するアプリケーションを起動候補として表示し,決定入力を受け付けること」 という技術的事項が記載されていると認める。 第6 当審の判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 引用発明における「マイク」,「ROM」,「CPU」は,本願発明1における「マイク」,「ストレージ」,「コントローラ」に相当する。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「マイクと, アプリケーションの一覧情報を記憶したストレージと, 前記マイクにより入力された音声の認識結果に基づいて前記一覧情報から対応するアプリケーションの検出処理を行い,前記検出処理により対応するアプリケーションを検出できた場合に前記対応するアプリケーションの実行処理を行うコントローラとを有した電子機器。」 (相違点) 本願発明1では「前記検出処理において,前記一覧情報から対応するアプリケーションを検出できなかった場合に,前記一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーションの表示処理を行う」のに対し, 引用発明では「類似する標準の音声パターンがない場合はNGとする」点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討すると,「音声の認識結果に基づいて一覧情報から対応するアプリケーションの検出ができなかった場合」に表示するアプリケーションを,本願発明1のように「一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーション」とすることは引用文献1,2に記載も示唆も無く,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.請求項2,3について 本願発明2,3も,本願発明1の「前記一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーションの表示処理を行う」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとは認められない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により,補正後の本願発明1-3は「前記一覧情報のうち文字情報を入力することが可能なアプリケーションの表示処理を行う」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1,2に基づいて,容易に発明できたものとは認められない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-04-03 |
出願番号 | 特願2012-223541(P2012-223541) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 征矢 崇 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 山田 正文 |
発明の名称 | 電子機器、制御方法、及び制御プログラム |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |