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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1326698
審判番号 不服2016-7265  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-18 
確定日 2017-04-18 
事件の表示 特願2015-500270「バイポーラトランジスタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日国際公開、WO2014/126120、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月13日(国内優先権主張平成25年2月18日)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月5日付で審査請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年10月19日付で拒絶理由が通知され、同年12月18日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成28年2月26日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年5月18日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 補正の適否について
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成28年5月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
「【請求項1】
第1の導電型のサブコレクタ層と、
前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層と、
前記コレクタ層に積層され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のベース層と、
前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層とを備え、
前記コレクタ層は、
前記第1の導電型の複数の第1の半導体層と、
前記各第1の半導体層間にそれぞれ設けられた前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と
を備えることを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【請求項2】
第1の導電型のサブコレクタ層と、
前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層と、
前記コレクタ層に積層され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のベース層と、
前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層とを備え、
前記コレクタ層は、
前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層と、
前記少なくとも一つの第1の半導体層のうち、いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と
を備えることを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【請求項3】
前記第2の半導体層のキャリア濃度は第1の半導体層のキャリア濃度よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項4】
前記第2の半導体層のシートキャリア濃度の和が、10^(9)cm^(-2)以上であり、10^(11)cm^(-2)よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項5】
前記第1の半導体層および第2の半導体層は、同一の半導体により形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項6】
前記エミッタ層と前記ベース層とがヘテロ接合を成し、前記エミッタ層のバンドギャップが前記ベース層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバイポーラトランジスタ。」
(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
第1の導電型のサブコレクタ層と、
前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層と、
前記コレクタ層に積層され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のベース層と、
前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層とを備え、
前記コレクタ層は、
前記第1の導電型の複数の第1の半導体層と、
前記各第1の半導体層間にそれぞれ設けられた前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と
を備えることを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【請求項2】
第1の導電型のサブコレクタ層と、
前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層と、
前記コレクタ層に積層され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のベース層と、
前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層とを備え、
前記コレクタ層は、
前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層と、
前記少なくとも一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と
を備えることを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【請求項3】
前記第2の半導体層のキャリア濃度は第1の半導体層のキャリア濃度よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項4】
前記第2の半導体層のシートキャリア濃度の和が、10^(9)cm^(-2)以上であり、10^(11)cm^(-2)よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項5】
前記第1の半導体層および第2の半導体層は、同一の半導体により形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項6】
前記エミッタ層と前記ベース層とがヘテロ接合を成し、前記エミッタ層のバンドギャップが前記ベース層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバイポーラトランジスタ。」
2 補正の適否について
(1)補正の内容
補正後の請求項に係る発明は、補正前の請求項に係る発明に次の補正がなされたものである。
ア 補正前の請求項2の「前記少なくとも一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」を「前記少なくとも一つの第1の半導体層のうち、いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」とする補正。
(2)補正の適否
あ 補正事項アについて検討すると、補正事項アにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項アは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項アは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項アは、補正前の「前記少なくとも一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」について、前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」が「第1の半導体層」のうち、いすれか一つの「第1の半導体層」中に挿入されると限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項アは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項2に係る発明は、下記「第5」のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、同法第17条の2第3項、第4項及び第6項のそれぞれの規定に適合するから、適法にされたものである。

第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年5月18日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし6に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項2】
第1の導電型のサブコレクタ層と、
前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層と、
前記コレクタ層に積層され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のベース層と、
前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層とを備え、
前記コレクタ層は、
前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層と、
前記少なくとも一つの第1の半導体層のうち、いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と
を備えることを特徴とするバイポーラトランジスタ。」

第4 査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成27年10月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項2,3,5,6
・引用文献等1
出願人は意見書において、引用文献1のこの構成は、二つのn型のコレクタ層の間に二つのp型のコレクタ層が挿入されたものであり、本願の特徴である、「一つの半導体層」に複数の第2の導電型の第2の半導体層が挿入されたものではありませんと主張している。

しかしながら、請求項2には「前記少なくとも一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」と、
1以上の第1の半導体層中(二つの第1の半導体層中も含む)に挿入された複数の第2の半導体層が記載されているので、
請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された二つのn型のコレクタ層の間に二つのp型のコレクタ層が挿入されたものと相違しない。

したがって、出願人の主張は採用できず、請求項2,3,5,6に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものと認める。

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項4
・引用文献等1
第2の半導体層のシートキャリア濃度の和を、どのような値にするか、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認める。

<引用文献等一覧>
1.特開平6-326120号公報」
2 拒絶理由通知の概要
平成27年10月19日付拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について

・請求項2、3、5、6
・引用文献等1
・備考
引用文献1には「p型の不純物を含んだInGaAs用いてコレクタ層7を形成しても良い。」[0023]、「コレクタ層7とベース層8との間に、n型不純物を高濃度に含むInGaAsからなる層を挿入して」[0023]等と記載されていることから、
引用文献1(図1)には、第1の半導体層(コレクタ層4と、コレクタ層7とベース層8との間のn型不純物を高濃度に含むInGaAsからなる層)の半導体中に挿入された第2の導電型の複数の第2の半導体層(コレクタ層6とコレクタ層7)とを備えるバイポーラトランジスタが記載されている。

●理由2(進歩性)について

・請求項4
・引用文献等1
・備考
第2の半導体層のシートキャリア濃度の和を、どのような値にするか、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認める。

<拒絶の理由を発見しない請求項>
請求項( 1 )に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

<引用文献等一覧>
1.特開平6-326120号公報」

第5 原査定の理由についての当審の判断
1 引用文献
(1)引用例1について
ア 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-326120号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
(ア)「【0018】
【実施例】以下この発明の1実施例を図を参照して説明する。
実施例1.図1は、この発明の1実施例であるヘテロ接合バイポーラトランジスタのエネルギーバンド構造と層構成とを示す構成図である。同図において、2は半絶縁性InP基板上のn型不純物を高濃度に含むInGaAsからなるコレクタコンタクト層、3はn型不純物を含むInPからなるコレクタ層(第4の半導体層)、4はn型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなる薄いコレクタ層、5は導電性不純物を含まないInGaAsからなる薄いコレクタ層、6はp型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなる薄いコレクタ層(第3の半導体層)、7は導電性不純物を含まないInGaAsからなるコレクタ層(第2の半導体層)である。
【0019】また、8はp型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなるベース層、9はn型の不純物を含むInPからなるエミッタ層、10はn型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなるエミッタコンタクト層である。なお、11は伝導帯の不連続、12は価電子帯の不連続である。
【0020】ここで、InGaAsからなる薄いコレクタ層4,5はInGaAsとInPのヘテロ接合界面に形成される伝導帯の不連続11の影響を低減させる。すなわち、不連続11がコレクタ層7から連続して存在した場合、ベース層8からコレクタコンタクト層2側を望んだときの電子に対する障壁となる。ここに、薄いコレクタ層4,5を挿入することで、不連続11のエネルギー準位を下げることができ、電子に対する障壁を低くする効果がある。さらに、薄いコレクタ層5は、薄いコレクタ層6と薄いコレクタ層4との不純物原子が、結晶成長中あるいは素子製作工程中に互いに拡散して、このpn接合が崩れてしまうのを抑制する効果がある。
【0021】図1(a)に示すように、この構造では、コレクタ中の急峻なポテンシャル変化を、バンドギャップエネルギーの大きいInP(コレクタ層3)に設定してあり、これによりコレクタ耐圧が確保できる。また、コレクタの多層構造をBCT構造となるようにして、コレクタ層7の中の電圧降下を、InGaAsの伝導帯の一つであるΓ帯と他の伝導帯の一つであるL帯とのエネルギー差である0.55eV以下としている。これによりコレクタ中のほとんどの領域において、電子はΓ帯を走行するので、コレクタ中の電子の走行時間が短縮される。
【0022】以上示したように、この実施例1のヘテロ接合バイポーラトランジスタは、コレクタがBCT構造となり、コレクタにおけるキャリアの移動時間が短縮される。そして、強電界がかかるコレクタ/コレクタコンタクト層境界近傍が、バンドギャップエネルギーの大きい半導体層で構成されるため、コレクタ耐圧が大幅に増大される。
【0023】なお上記実施例1では、コレクタ層7に導電性不純物を含まないInGaAsを用いたが、これに限るものではない。ベース層8のp型InGaAsよりも低濃度のn型もしくはp型の不純物を含んだInGaAs用いてコレクタ層7を形成しても良い。また、コレクタ層7とベース層8との間に、n型不純物を高濃度に含むInGaAsからなる層を挿入して、トランジスタの高電流密度動作における空間電荷によるベースの広がり効果を制御するようにしても良い。そして、コレクタコンタクト層2をInPから形成するなど本発明の趣旨を損なわない範囲で層の構成を変更しても良いことはいうまでもない。」
(イ)図3


イ 引用例1発明について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「n型不純物を高濃度に含むInGaAsからなるコレクタコンタクト層2と、
コレクタコンタクト層2に積層された、n型不純物を含むInPからなるコレクタ層3と、
コレクタ層3に積層された、n型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなる薄いコレクタ層4と、
薄いコレクタ層4に積層された、導電性不純物を含まないInGaAsからなる薄いコレクタ層5と、
薄いコレクタ層5に積層された、p型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなる薄いコレクタ層6と、
薄いコレクタ層6に積層された、ベース層8のp型InGaAsよりも低濃度のn型もしくはp型の不純物を含んだInGaAsからなるコレクタ層7と、
コレクタ層7に積層された、n型不純物を高濃度に含むInGaAsからなる層と、
InGaAsからなる層に積層された、p型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなるベース層8と、
ベース層8に積層された、n型の不純物を含むInPからなるエミッタ層9と、
エミッタ層9に積層された、n型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなるエミッタコンタクト層10と
を備えるヘテロ接合バイポーラトランジスタ。」
2 対比・判断
(1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明の「n型」、「p型」、「コレクタコンタクト層2」および「ベース層8」は、それぞれ本願発明の「第1の導電型」、「第2の導電型」、「第1の導電型のサブコレクタ層」および「第2の導電型のベース層」に相当する。
イ 引用例1発明は、「コレクタコンタクト層2に積層された、n型不純物を含むInPからなるコレクタ層3と、コレクタ層3に積層された、n型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなる薄いコレクタ層4と、薄いコレクタ層4に積層された、導電性不純物を含まないInGaAsからなる薄いコレクタ層5と、薄いコレクタ層5に積層された、p型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなる薄いコレクタ層6と、薄いコレクタ層6に積層された、ベース層8のp型InGaAsよりも低濃度のn型もしくはp型の不純物を含んだInGaAsからなるコレクタ層7と、コレクタ層7に積層された、n型不純物を高濃度に含むInGaAsからなる層と」を備えており、これらは積層されているから、これらの層は、本願発明の「前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層」に相当する。
また、引用例1発明の上記層は、「n型不純物を含む」層を備えているから、本願発明の「前記コレクタ層は、前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層と、前記少なくとも一つの第1の半導体層のうち、いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と」を備えることと、「前記コレクタ層は、前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層」を備える点で共通する。
ウ 引用例1発明は「ベース層8に積層された、n型の不純物を含むInPからなるエミッタ層9と、エミッタ層9に積層された、n型の不純物を高濃度に含むInGaAsからなるエミッタコンタクト層10と」を備えており、これらの層は、本願発明の「前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層」に相当する。

そうすると、本願発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「第1の導電型のサブコレクタ層と、
前記サブコレクタ層に積層されたコレクタ層と、
前記コレクタ層に積層され、前記第1の導電型と反対の導電型である第2の導電型のベース層と、
前記ベース層に積層された前記第1の導電型のエミッタ層とを備え、
前記コレクタ層は、
前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層と、
を備えることを特徴とするバイポーラトランジスタ。

[相違点]
本願発明は、「前記コレクタ層は、前記第1の導電型の少なくとも一つの第1の半導体層と、前記少なくとも一つの第1の半導体層のうち、いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層と」を備えているのに対して、引用例1発明は「いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」を備えていない点。
(2)当審の判断
[相違点]について検討する。
引用例1には、「前記少なくとも一つの第1の半導体層のうち、いずれか一つの第1の半導体層中に挿入された前記第2の導電型の複数の第2の半導体層」を備えることについて記載されておらず、また、引用例1の記載から、当業者が容易に想起することができたとは認められない。
そして、本願発明は、[相違点]を有することによって、「量産性を十分確保するとともに、容量特性の線形性を改善することができ、さらには、ベース・コレクタ間容量の低減を図ることができる」([0010])という格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点]に係る構成は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。

したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明ではなく、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明を引用する本願の請求項3ないし6に係る発明も同様に、引用例1に記載された発明ではなく、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 原査定の理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 結語
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由は発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-05 
出願番号 特願2015-500270(P2015-500270)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須原 宏光小川 将之  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 飯田 清司
小田 浩
発明の名称 バイポーラトランジスタ  
代理人 梁瀬 右司  
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