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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1326702
審判番号 不服2016-13400  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-07 
確定日 2017-04-18 
事件の表示 特願2011-228885「電気光学装置および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 88610、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年10月18日
拒絶査定: 平成28年5月30日(送達日:同年6月7日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年9月7日
手続補正: 平成28年9月7日 (以下、「本件補正」という。)


第2 本件補正の適否
1.補正の内容
(1)請求項1,7,8について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、補正前の
「前記駆動回路は、第1期間に、前記データ線と初期電位を給電する第1給電線とを電気的に接続し、・・・」
なる記載を、
「前記制御回路は、第1期間に、前記データ線と初期電位を給電する第1給電線とを電気的に接続し、・・・」(下線は補正箇所。以下同様。)
とする補正(以下、「補正事項1-1」という。)を含んでいる。
また同様に、特許請求の範囲の請求項7,8の「前記駆動回路は、・・・」なる記載をそれぞれ、「前記制御回路は、・・・」とする補正(以下、それぞれ「補正事項7」「補正事項8」という。)を含んでいる。

(2)請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、補正前の
「前記第2期間の後の第3期間に、
前記第3期間よりも前に供給された、階調レベルに応じたデータ信号を前記第3保持容量に保持し、
前記第3期間に、前記第3保持容量に保持された前記データ信号を前記第1保持容量の他端に供給し、
前記第3期間の後に、前記第2トランジスターをオフさせ、
前記制御回路は、
前記第3期間よりも前に、前記階調レベルに応じたデータ信号が前記第2スイッチの入力端に供給された状態で、前記第1スイッチをオフさせ、前記第2スイッチをオンさせ、 前記第3期間において、前記第2スイッチをオフとした状態で、前記第1スイッチをオンさせる
ことを特徴とする電気光学装置。」
なる記載を、
「前記第2期間の後の第3期間よりも前であって、前記第1保持容量の他端と第2給電線との接続を維持した状態のときに、
前記階調レベルに応じたデータ信号が前記第2スイッチの入力端に供給された状態で、前記第1スイッチをオフさせ、前記第2スイッチをオンさせ、
前記第3期間に、
前記第2スイッチをオフとした状態で、前記第1スイッチをオンさせ、
前記第3期間の後に、前記第2トランジスターをオフさせる
ことを特徴とする電気光学装置。」
とする補正(以下、「補正事項1-2」という。)を含んでいる。

(3)請求項10ないし15について
本件補正は、補正前の請求項10ないし14を削除し、またこれに対応して、補正前の請求項15を請求項10として、その「請求項1乃至14のいずれかに記載の・・・」なる記載を、「請求項1乃至9のいずれかに記載の・・・」とする補正(以下、「補正事項10」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
(1)補正事項1-1,7,8について
本件補正の補正事項1-1,7,8は、補正前に「駆動回路」とされていた誤記を、「制御回路」と正すものであって、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(2)補正事項1-2について
本件補正の補正事項1-2は、拒絶査定において、
「また、補正後の請求項1の「第3期間に・・・データ信号を前記第3保持容量に保持し・・・前記第3期間において、前記第2スイッチをオフとした状態」という記載は、第2スイッチがオフであるにもかかわらず、第3保持容量にデータ信号を保持するという矛盾する記載であることを、付記する。」
と指摘されたことに対応するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)補正事項10について
本件補正の補正事項10は、請求項の削除を目的とするものに該当する。

上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1,3,4号の請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1-10に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の走査線と、
複数のデータ線と、
前記複数の走査線うち1の走査線と前記複数のデータ線のうち1のデータ線との交差に対応して設けられた画素回路と、
制御回路と、
前記画素回路を駆動する駆動回路と、を有し、
前記画素回路は、
第1トランジスターと、
発光素子と、
前記データ線と前記第1トランジスターのゲートとの間に接続され、オンまたはオフする第2トランジスターと、
前記第1トランジスターにおけるゲートとドレインとの間に接続され、オンまたはオフする第3トランジスターと、
を含み、
前記第1トランジスターと前記発光素子とは、高位側の電源と低位側の電源との間で直列に接続され、
前記駆動回路は、
一端が前記1のデータ線に接続された第1保持容量と、
前記1のデータ線の電位を保持する第2保持容量と、
第3保持容量と、
第1スイッチおよび第2スイッチと、
を含み、
前記第1スイッチの入力端は、前記第3保持容量の一端と前記第2スイッチの出力端に接続され、
前記第1スイッチの出力端は、前記第1保持容量の他端に接続され、
前記制御回路は、
第1期間に、
前記データ線と初期電位を給電する第1給電線とを電気的に接続し、前記第1保持容量の他端と所定電位を給電する第2給電線とを電気的に接続し、
前記第1期間の後の第2期間内に、
前記データ線と前記第1給電線とを電気的に非接続とし、前記第1保持容量の他端と第2給電線との接続を維持した状態で前記第2トランジスターおよび前記第3トランジスターをオンさせ、
前記第2期間の後の第3期間よりも前であって、前記第1保持容量の他端と第2給電線との接続を維持した状態のときに、
前記階調レベルに応じたデータ信号が前記第2スイッチの入力端に供給された状態で、前記第1スイッチをオフさせ、前記第2スイッチをオンさせ、
前記第3期間に、
前記第2スイッチをオフとした状態で、前記第1スイッチをオンさせ、
前記第3期間の後に、前記第2トランジスターをオフさせる
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記制御回路は、少なくとも前記第1期間または前記第2期間の少なくとも一部において、階調レベルに応じた前記データ信号が前記第2スイッチの入力端に供給された状態で、第1スイッチをオフさせ、前記第2スイッチをオンさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記複数のデータ線は2本以上のデータ線毎にグループ化され、一のグループに属する2本以上のデータ線に対応した前記第2スイッチの入力端は共通接続され、
前記制御回路は、
前記一のグループに属する複数の第2スイッチを、前記データ信号の供給に合わせて所定の順番でオンさせる
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記画素回路は、
前記発光素子における2端子のうち、前記第1トランジスター側の端子と、所定のリセット電位を給電する第3給電線との間でオンまたはオフする第4トランジスターを有する ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第3給電線は、前記1のデータ線に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第2保持容量の一端は前記1のデータ線に接続され、前記第2保持容量の他端は前記第3給電線に接続される
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記第3期間内に、前記第3トランジスターをオフさせる
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記画素回路は、
前記第1トランジスターによって前記発光素子に供給される電流経路に設けられ、オンまたはオフする第5トランジスターを有し、
前記制御回路は、
前記第4トランジスターをオフさせて、前記第5トランジスターをオンさせる
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1保持容量の容量は、前記第2保持容量の容量よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電気光学装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の電気光学装置を備える
ことを特徴とする電子機器。」(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)


第4 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項1-3,7,9,10,15
・引用文献等1-2
・備考
引用例1、特に図2,6-7に関連する記載の発明に、引用例2、特に図4-5に関連する記載の技術事項を用いることは、当業者が容易に想到できたものである。

・請求項4-9,11-15
・引用文献等1-3
・備考
引用例1に記載された発明に、引用例3、特に図3-4に関連する記載の技術事項を用いることは、当業者が容易に想到できたものである。
その際に、リセット電位である接地電位の供給を、データ線に沿って行うこと、及び、引用例1に記載された発明における第2保持容量の他端に接続された接地電位(図6参照)の供給を、第3給電線から行うことは、いずれも、リセット電位の供給線の配置に関する設計事項にすぎない。

<引用文献等一覧>
1.特開2011-53635号公報
2.特開2005-316381号公報
3.特開2003-208127号公報


第5 当審の判断
1 刊行物の記載事項、引用発明
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-53635号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「有機電界発光表示装置及びその駆動方法」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(e)が図面とともに記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

(a)
「【0001】
本発明は、有機電界発光表示装置及びその駆動方法に関し、特に、駆動トランジスタの閾値電圧及び第1電源の電圧降下を補償できるようにした有機電界発光表示装置及びその駆動方法に関する。」

(b)
「【0020】
図2は、本実施形態による有機電界発光表示装置を示す図である。図2において、デマルチプレクサ(demultiplexer:以下「DEMUX」という)170は、j(jは2以上の自然数)本のデータ線に接続されるが、説明の便宜上、jを3と仮定する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態による有機電界発光表示装置は、第1走査線S11?S1n、第2走査線S21?S2n、及び第2データ線D21?D2mの交差部に位置する画素140を備える画素部130と、DEMUX170に接続される第1データ線D11?D1mと第2データ線D21?D2mとの間にそれぞれ接続される共通回路部160と、第1走査線S11?S1n、第2走査線S21?S2n、及び発光制御線E1?Enを駆動するための走査駆動部110と、水平期間において、出力線O1?Oiの各々にj(jは自然数)個のデータ信号を供給するためのデータ駆動部120と、走査駆動部110及びデータ駆動部120を制御するためのタイミング制御部150とを備える。
【0022】
また、本実施形態による有機電界発光表示装置は、出力線O1?Oiの各々に接続され、水平期間において、自身が接続した出力線(O1?Oiのいずれか1つ)に供給されるj個のデータ信号をj本の第1データ線に供給するためのDEMUX170と、DEMUX170及び共通回路部160を制御するためのスイッチ制御部180とを備える。」

(c)
「【0028】
共通回路部160は、第1データ線D11?D1mと第2データ線D21?D2mとの間に形成される。共通回路部160は、外部から初期電源Vint及び基準電源Vrefを受ける。初期電源Vint及び基準電源Vrefを受けた共通回路部160は、スイッチ制御部180の制御に対応して、自身と接続した第1データ線の電圧を制御する。
【0029】
スイッチ制御部180は、DEMUX170及び共通回路部160に制御信号CS1?CS5を供給しながら、DEMUX170及び共通回路部160に備えられたトランジスタのターンオン及びターンオフを制御する。実際に、スイッチ制御部180は、DEMUX170に備えられた3つのトランジスタを制御するために、第3制御信号ないし第5制御信号CS3?CS5を供給し、共通回路部160に備えられた2つのトランジスタを制御するために、第1制御信号CS1及び第2制御信号CS2を供給する。 一方、図2では、説明の便宜上、スイッチ制御部180が別途に示されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、スイッチ制御部180の構成は、タイミング制御部150に備えられ得る。この場合、タイミング制御部150で第1制御信号ないし第5制御信号CS1?CS5を生成し、DEMUX170及び共通回路部160の駆動を制御する。
【0030】
画素140の各々は、外部から第1電源ELVDD及び第2電源ELVSSを受ける。第1電源ELVDD及び第2電源ELVSSを受けた画素140は、データ信号に対応して、第1電源ELVDDから有機発光ダイオード(図示せず)を経由して第2電源ELVSSに流れる電流量を制御しながら、所定輝度の光を生成する。
【0031】
図3は、図2に示す画素の実施形態を示す図である。図3では、説明の便宜上、第2mデータ線D2m及び第1n走査線S1nに接続された画素を示すものとする。
【0032】
図3に示すように、本実施形態による画素140は、有機発光ダイオードOLEDと、有機発光ダイオードOLEDに電流を供給するための画素回路142とを備える。
【0033】
有機発光ダイオードOLEDのアノード電極は画素回路142に接続され、カソード電極は第2電源ELVSSに接続される。この有機発光ダイオードOLEDは、画素回路142から供給される電流量に対応して所定輝度の光を生成する。
【0034】
画素回路142は、データ信号に対応する所定の電圧を受け、前記電圧に対応する電流を有機発光ダイオードOLEDに供給する。このため、画素回路142は、第1ないし第4トランジスタM1?M4と、ストレージキャパシタCstとを備える。
【0035】
第1トランジスタM1の第1電極は、第2データ線D2mを経由して共通回路部160に接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続される。また、第1トランジスタM1のゲート電極は第2走査線S2nに接続される。この第1トランジスタM1は、第2走査線S2nに走査信号が供給されたときにターンオンされる。
【0036】
第2トランジスタM2の第1電極は第1電源ELVDDに接続され、第2電極は第4トランジスタM4の第1電極に接続される。また、第2トランジスタM2のゲート電極は第1トランジスタM1の第2電極に接続される。この第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に印加された電圧に対応する電流を、第4トランジスタM4を経由して有機発光ダイオードOLEDに供給する。
【0037】
第3トランジスタM3の第1電極は第2トランジスタM2の第2電極に接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続される。また、第3トランジスタM3のゲート電極は第1走査線S1nに接続される。この第3トランジスタM3は、第1走査線S1nに走査信号が供給されたときにターンオンされる。この場合、第3トランジスタM3は、第1トランジスタM1がターンオンされた後にターンオンされ、第1トランジスタM1がターンオフされる前にターンオフされる。一方、第3トランジスタM3がターンオンされると、第2トランジスタM2はダイオード形態で接続される。
【0038】
第4トランジスタM4の第1電極は第2トランジスタM2の第2電極に接続され、第2電極は有機発光ダイオードOLEDのアノード電極に接続される。また、第4トランジスタM4のゲート電極は発光制御線Enに接続される。この第4トランジスタM4は、発光制御信号が供給されたときにターンオフされ、発光制御信号が供給されないときにターンオンされる。
【0039】
ストレージキャパシタCstは、第2トランジスタM2のゲート電極と第1電極との間に接続される。このストレージキャパシタCstは、第2トランジスタM2のゲート電極に印加される電圧に対応して所定の電圧を充電する。
【0040】
図4は、図2に示す共通回路部の実施例を示す図である。図4では、説明の便宜上、第1mデータ線D1mに接続された共通回路部を示すものとする。また、共通回路部は、垂直ライン単位で複数の画素に接続されるが、説明の便宜上、1つの画素のみを示すものとする。
【0041】
図4に示すように、共通回路部160は、第1端子が第1データ線D1mに接続され、第2端子が第2データ線D2mに接続される第1キャパシタC1と、基準電源Vrefと第1キャパシタC1の第1端子との間に接続される第1共通トランジスタCM1と、初期電源Vintと第1キャパシタC1の第2端子との間に接続される第2共通トランジスタCM2とを備える。
【0042】
第1共通トランジスタCM1は、基準電源Vrefと第1キャパシタC1の第1端子との間に接続され、第1制御信号CS1が供給されたときにターンオンされる。第1共通トランジスタCM1がターンオンされると、第1キャパシタC1の第1端子に基準電源Vrefの電圧が供給される。
【0043】
第2共通トランジスタCM2は、初期電源Vintと第1キャパシタC1の第2端子との間に接続され、第2制御信号CS2が供給されたときにターンオンされる。第2共通トランジスタCM2がターンオンされると、第1キャパシタC1の第2端子に初期電源Vintの電圧が供給される。
【0044】
第1キャパシタC1は、第1データ線D1mと第2データ線D2mとの間に形成される。この第1キャパシタC1は、DEMUX170から供給されるデータ信号に対応して画素140に供給される電圧(すなわち、第2データ線D2mの電圧)を変化させる。
【0045】
図5は、図2に示すDEMUXの実施形態を示す図である。図5では、説明の便宜上、i番目の出力線Oiに接続されたDEMUXを示すものとする。
【0046】
図5に示すように、本発明の実施形態によるDEMUX170の各々は、第10トランジスタ10と、第11トランジスタM11と、第12トランジスタM12とを備える。」

(d)
「【0054】
また、図6において、データキャパシタCdataは、寄生キャパシタを等価的に示したものである。ここで、第1キャパシタC1の第1端子とDEMUX170とは互いに隣接して位置するため、第1データ線によって形成された寄生キャパシタは駆動に影響を及ぼさない。しかし、第1キャパシタC1の第2端子と垂直ライン単位で形成された画素140とは一定の距離を持つため、第2データ線の寄生キャパシタは駆動に影響を及ぼす。特に、大型パネルであるほど、第2データ線の寄生キャパシタによる影響は大きくなる。したがって、本発明では、駆動に影響を及ぼす第2データ線の寄生キャパシタをデータキャパシタCdatatとして示すものとする。
【0055】
図7は、図6に示すDEMUX、共通回路部、及び画素の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【0056】
図7に示すように、1水平期間1Hは、第1期間ないし第5期間t1?t5に分割されて駆動される。
【0057】
まず、第1期間t1において、第1制御信号CS1及び第2制御信号CS2が供給される。ここで、第1制御信号CS1は、第1期間ないし第4期間t1?t4の間に供給され、第2制御信号CS2は第1期間t1に供給される。
【0058】
第1制御信号CS1が供給されると、図8aに示すように、第1共通トランジスタCM1がターンオンされる。第1共通トランジスタCM1がターンオンされると、第2ノードN2(すなわち、第1キャパシタC1の第1端子)に基準電源Vrefの電圧が供給される。ここで、基準電源Vrefの電圧は、ブラックデータ信号Vdata(black)の電圧より低い電圧に設定される。これに関する詳細な説明は後述する。
【0059】
第2制御信号CS2が供給されると、第2共通トランジスタCM2がターンオンされる。第2共通トランジスタCM2がターンオンされると、第3ノードN3(すなわち、第1キャパシタC1の第2端子)に初期電源Vintが供給される。ここで、初期電源Vintの電圧は、第1電源ELVDDの電圧から第2トランジスタM2の閾値電圧の絶対値を減じた電圧より十分に低い電圧に設定される。実際に、初期電源Vintは、第3ノードN3と第1ノードN1とに電気的に接続された場合、第1ノードN1の電圧が、第1電源ELVDDの電圧から第2トランジスタM2の閾値電圧の絶対値を減じた電圧より低い電圧に設定されるように、電圧値が設定される。
【0060】
一方、第1期間t1において、第1トランジスタM1は、ターンオフ状態を維持するため、第1ノードN1(すなわち、第2トランジスタM2のゲート電極)は、前のフレーム期間に充電された電圧を維持する。
【0061】
第2期間t2には、第2走査線S2nに第2走査信号が供給される。第2走査線S2nに走査信号が供給されると、図8bに示すように、第1トランジスタM1がターンオンされる。第1トランジスタM1がターンオンされると、第1ノードN1と第3ノードN3とが電気的に接続される。一方、第2走査信号は、第2期間ないし第5期間t2?t5の間に供給される。
【0062】
第3期間t3には、第1走査線S1nに第1走査信号が供給される。第1走査線S1nに第1走査信号が供給されると、図8cに示すように、第3トランジスタM3がターンオンされる。第3トランジスタM3がターンオンされると、第2トランジスタM2がダイオード形態で接続される。この場合、第1ノードN1及び第3ノードN3の電圧は、下記式1のように、第1電源ELVDDの電圧から第2トランジスタM2の閾値電圧の絶対値を減じた電圧に設定される。」

(e)
「【0074】
第5期間t5の後、第2走査線S2nへの第2走査信号の供給が中断され、第1トランジスタM1がターンオフされる。すると、ストレージキャパシタCstは、第5期間t5において、第1ノードN1に印加された電圧を充電し、充電された電圧を維持する。」

上記記載(a)ないし(e)及び図面の図2ないし図8の記載から、刊行物1には、

「第2走査線S21?S2nと、
第2データ線D21?D2mと、
第1走査線S11?S1n、第2走査線S21?S2n、及び第2データ線D21?D2mの交差部に位置する画素140と、(【0021】参照。)
スイッチ制御部180と、(【0022】参照。)
DEMUX170と、共通回路部160と(【0021】参照。)、データキャパシタCdata(【0054】参照。)と、を備え、
前記画素140は、
第2トランジスタM2と、(【0036】参照。)
有機発光ダイオードOLEDと、(【0033】参照。)
第1電極は、第2データ線D2mを経由して共通回路部160に接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続され、第2走査線S2nに走査信号が供給されたときにターンオンされる第1トランジスタM1と、(【0035】参照。)
第1電極は第2トランジスタM2の第2電極に接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続され、第1走査線S1nに走査信号が供給されたときにターンオンされる第3トランジスタM3と、(【0037】参照。)
を備え、
第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に印加された電圧に対応する電流を、第4トランジスタM4を経由して有機発光ダイオードOLEDに供給し、(【0036】参照。)
前記DEMUX170と、共通回路部160と、データキャパシタCdataとは、
第1端子が第1データ線D1mに接続され、第2端子が第2データ線D2mに接続される第1キャパシタC1(【0041】参照。)と、
データキャパシタCdataと、
DEMUX170の備える第12トランジスタM12(【0046】参照。)と、
を備え、
前記スイッチ制御部180は(【0029】参照。)、第1期間t1において、第1制御信号CS1及び第2制御信号CS2を供給し(【0057】参照。)、第1制御信号CS1が供給されると、第2ノードN2(すなわち、第1キャパシタC1の第1端子)に基準電源Vrefの電圧が供給され(【0058】参照。)、第2制御信号CS2が供給されると、第3ノードN3(すなわち、第1キャパシタC1の第2端子)に初期電源Vintが供給され(【0059】参照。)、
第1制御信号CS1は、第1期間ないし第4期間t1?t4の間に供給され、第2制御信号CS2は第1期間t1に供給され(【0057】参照。)、第2期間t2には、第2走査線S2nに第2走査信号が供給されて第1トランジスタM1がターンオンされ、第2走査信号は、第2期間ないし第5期間t2?t5の間に供給され(【0061】参照。)、第3期間t3には、第1走査線S1nに第1走査信号が供給されて第3トランジスタM3がターンオンされ(【0062】参照。)、
第5期間t5の後、第1トランジスタM1がターンオフされる(【0074】参照。)
有機電界発光表示装置(【0021】参照。)。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

イ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-316381号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「エレクトロルミネセンス表示装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0001】
本発明はエレクトロルミネセンス表示装置にし、特にデータドライバの出力チャンネル数を減少させることができるようにしたエレクトロルミネセンス表示装置に関する。」

(b)
「【0037】
図4を参照すると、本発明の第1実施態様に係るエレクトロルミネセンス表示装置はスキャン電極ライン(SL1乃至SLn)とデータ電極ライン(DL1乃至DLm)の交差で定義された領域ごとに配列された画素セル(PE)を含むEL表示パネル116と、スキャン電極ライン(SL1乃至SLn)を駆動するためのスキャンドライバ118と、データ電極ライン(DL1乃至DLm)を駆動するためのデータドライバ120と、データドライバ120の出力チャンネルの中から一つの出力チャンネルのそれぞれをK個(ただ、Kは2以上の陽の定数)のデータ電極ライン(DL1乃至DLK)に選択的に接続させるための多数のマルチフレクサー(MUX)を含むマルチフレクサー部150と、データドライバ120及びスキャンドライバ118のそれぞれの駆動タイミングを制御することと同時にマルチフレクサー部150を駆動させるためのタイミング制御部128とを具備する。」

(c)
「【0044】
マルチフレクサー部150のデータ電極ライン(DL)のそれぞれに接続されたM個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)と、M個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)のそれぞれに接続されたM個のバッファ(B1乃至Bm)と、M個のバッファ(B1乃至Bm)のそれぞれに接続されることと同時にK個の単位でデータドライバ120の出力チャンネルのそれぞれに共通に接続されるM個のマルチフレクサースイッチング素子(M1乃至Mm)と、マルチフレクサースイッチング素子(M)とバッファ(B)の間のノードと基底電圧ライン(GND)の間に接続されたM個のキャパシタ(C1乃至Cm)とを具備する。

・・・

【0048】
M個のバッファ(B1乃至Bm)のそれぞれはM個のキャパシタ(C1乃至Cm)のそれぞれに保存されたデータ電圧がM個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)を経由してデータ電極ライン(DL)に供給されるように信号緩衝する役目をするようになる。この時、M個のバッファ(B1乃至Bm)のそれぞれはCMOSトランジスタから構成される。」

上記記載(a)ないし(c)及び図4の記載から、刊行物2には、

「マルチフレクサー部150のデータ電極ライン(DL)のそれぞれに接続されたM個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)と、M個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)のそれぞれに接続されたM個のバッファ(B1乃至Bm)と、M個のバッファ(B1乃至Bm)のそれぞれに接続されることと同時にK個の単位でデータドライバ120の出力チャンネルのそれぞれに共通に接続されるM個のマルチフレクサースイッチング素子(M1乃至Mm)と、マルチフレクサースイッチング素子(M)とバッファ(B)の間のノードと基底電圧ライン(GND)の間に接続されたM個のキャパシタ(C1乃至Cm)とを具備し、
M個のバッファ(B1乃至Bm)のそれぞれはM個のキャパシタ(C1乃至Cm)のそれぞれに保存されたデータ電圧がM個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)を経由してデータ電極ライン(DL)に供給されるように信号緩衝する役目をする
エレクトロルミネセンス表示装置。」

の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

ウ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-208127号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「表示装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(b)が図面とともに記載されている。

(a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示装置に関し、特にアクティブマトリックス型表示装置の表示品位を改善する技術に関する。」

(b)
「【0032】実施の形態3:図3、図4は実施の形態3に係る表示装置の一画素の回路を示す。実施の形態1、2ではスイッチング素子として機能する第3のトランジスタTr3が電源供給線Vddと駆動回路10の間に設けられたが、実施の形態3では駆動回路10と有機発光ダイオードOLEDの間に設ける。従って、図3に示す回路は、実施の形態1の図1に示した回路の第3のトランジスタTr3と第2のトランジスタTr2の接続順序を入れ替えた回路であり、同様に図4に示す回路は、実施の形態2の図2に示した回路の第3のトランジスタTr3と第2のトランジスタTr2の接続順序を入れ替えた回路である。
【0033】これら回路の動作はそれぞれ実施の形態1および2の回路の動作と同様なので省略する。また、得られる効果も同様である。ただし、実施の形態1および2では、第3のトランジスタTr3をオフにした際に、輝度データにあたえる影響、つまり第2のトランジスタTr2のゲート電極に与える影響を抑えるために第1の保持容量SC1を設けた。実施の形態3では、第3のトランジスタTr3を第2のトランジスタTr2と有機発光ダイオードOLEDの間に設けたことで、第3のトランジスタTr3がオフとなった場合でも第2のトランジスタTr2のゲート電極にあたえる影響を取り除くことができる。
【0034】以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それら各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲であることは当業者に理解されるところである。そうした変形例を挙げる。」


2 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
まず、引用発明1における「第2走査線S21?S2n」、「第2データ線D21?D2m」、「第1走査線S11?S1n、第2走査線S21?S2n、及び第2データ線D21?D2mの交差部に位置する画素140」、及び「スイッチ制御部180」は、それぞれ本願発明1の「複数の走査線」、「複数のデータ線」、「前記複数の走査線うち1の走査線と前記複数のデータ線のうち1のデータ線との交差に対応して設けられた画素回路」、及び「制御回路」に相当し、同様に、引用発明1の「DEMUX170と、共通回路部160と、データキャパシタCdataと」を含む回路構成が、本願発明1の「前記画素回路を駆動する駆動回路」に相当する。
また、引用発明1の画素140が備える、「第2トランジスタM2」、「有機発光ダイオードOLED」、「第1電極は、第2データ線D2mを経由して共通回路部160に接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続され、第2走査線S2nに走査信号が供給されたときにターンオンされる第1トランジスタM1」、及び「第1電極は第2トランジスタM2の第2電極に接続され、第2電極は第2トランジスタM2のゲート電極に接続され、第1走査線S1nに走査信号が供給されたときにターンオンされる第3トランジスタM3」は、それぞれ本願発明1の「第1トランジスター」、「発光素子」、「前記データ線と前記第1トランジスターのゲートとの間に接続され、オンまたはオフする第2トランジスター」、及び「前記第1トランジスターにおけるゲートとドレインとの間に接続され、オンまたはオフする第3トランジスター」に相当する。
次に、引用発明1において「第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に印加された電圧に対応する電流を、第4トランジスタM4を経由して有機発光ダイオードOLEDに供給」するとされており、また図3の記載から見ても、「第2トランジスタM2」と「有機発光ダイオードOLED」とが、高位側の電源と低位側の電源との間で直列に接続されていることは明らかといえる。したがって、引用発明1において「第2トランジスタM2は、自身のゲート電極に印加された電圧に対応する電流を、第4トランジスタM4を経由して有機発光ダイオードOLEDに供給」することは、本願発明1において「前記第1トランジスターと前記発光素子とは、高位側の電源と低位側の電源との間で直列に接続され」ていることに相当する。
さらに、引用発明1の「第1端子が第1データ線D1mに接続され、第2端子が第2データ線D2mに接続される第1キャパシタC1」、「データキャパシタCdata」、及び「DEMUX170の備える第12トランジスタM12」は、それぞれ本願発明1の「一端が前記1のデータ線に接続された第1保持容量」、「前記1のデータ線の電位を保持する第2保持容量」、及び「第2スイッチ」に相当するものであるから、引用発明1の「DEMUX170と、共通回路部160と、データキャパシタCdataと」を含む回路構成が、「第1端子が第1データ線D1mに接続され、第2端子が第2データ線D2mに接続される第1キャパシタC1と、データキャパシタCdataと、DEMUX170の備える第12トランジスタM12と」を備えることと、本願発明1において「前記駆動回路は、一端が前記1のデータ線に接続された第1保持容量と、前記1のデータ線の電位を保持する第2保持容量と、第3保持容量と、第1スイッチおよび第2スイッチと、を含」むこととは、「前記駆動回路は、一端が前記1のデータ線に接続された第1保持容量と、前記1のデータ線の電位を保持する第2保持容量と、第2スイッチと、を含」む点で共通する。
また、引用発明1において「前記スイッチ制御部180は、第1期間t1において、第1制御信号CS1及び第2制御信号CS2を供給し、第1制御信号CS1が供給されると、第2ノードN2(すなわち、第1キャパシタC1の第1端子)に基準電源Vrefの電圧が供給され、第2制御信号CS2が供給されると、第3ノードN3(すなわち、第1キャパシタC1の第2端子)に初期電源Vintが供給され、第1制御信号CS1は、第1期間ないし第4期間t1?t4の間に供給され、第2制御信号CS2は第1期間t1に供給され、第2期間t2には、第2走査線S2nに第2走査信号が供給されて第1トランジスタM1がターンオンされ、第2走査信号は、第2期間ないし第5期間t2?t5の間に供給され、第3期間t3には、第1走査線S1nに第1走査信号が供給されて第3トランジスタM3がターンオンされ」ることは、本願発明1において「前記制御回路は、第1期間に、前記データ線と初期電位を給電する第1給電線とを電気的に接続し、前記第1保持容量の他端と所定電位を給電する第2給電線とを電気的に接続し、前記第1期間の後の第2期間内に、前記データ線と前記第1給電線とを電気的に非接続とし、前記第1保持容量の他端と第2給電線との接続を維持した状態で前記第2トランジスターおよび前記第3トランジスターをオンさせ」ることに相当する。
そして、引用発明1において「第5期間t5の後、第1トランジスタM1がターンオフされる」ことは、本願発明1において「前記第3期間の後に、前記第2トランジスターをオフさせる」ことに相当し、また引用発明1の「有機電界発光表示装置」は下記相違点を除いて本願発明1の「電気光学装置」に相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「複数の走査線と、
複数のデータ線と、
前記複数の走査線うち1の走査線と前記複数のデータ線のうち1のデータ線との交差に対応して設けられた画素回路と、
制御回路と、
前記画素回路を駆動する駆動回路と、を有し、
前記画素回路は、
第1トランジスターと、
発光素子と、
前記データ線と前記第1トランジスターのゲートとの間に接続され、オンまたはオフする第2トランジスターと、
前記第1トランジスターにおけるゲートとドレインとの間に接続され、オンまたはオフする第3トランジスターと、
を含み、
前記第1トランジスターと前記発光素子とは、高位側の電源と低位側の電源との間で直列に接続され、
前記駆動回路は、
一端が前記1のデータ線に接続された第1保持容量と、
前記1のデータ線の電位を保持する第2保持容量と、
第2スイッチと、
を含み、
前記制御回路は、
第1期間に、
前記データ線と初期電位を給電する第1給電線とを電気的に接続し、前記第1保持容量の他端と所定電位を給電する第2給電線とを電気的に接続し、
前記第1期間の後の第2期間内に、
前記データ線と前記第1給電線とを電気的に非接続とし、前記第1保持容量の他端と第2給電線との接続を維持した状態で前記第2トランジスターおよび前記第3トランジスターをオンさせ、
前記第3期間の後に、前記第2トランジスターをオフさせる
ことを特徴とする電気光学装置。」

(相違点)
本願発明1は、「第3保持容量」及び「第1スイッチ」を備え、また「前記第1スイッチの入力端は、前記第3保持容量の一端と前記第2スイッチの出力端に接続され、前記第1スイッチの出力端は、前記第1保持容量の他端に接続され」ており、さらに「前記第2期間の後の第3期間よりも前であって、前記第1保持容量の他端と第2給電線との接続を維持した状態のときに、前記階調レベルに応じたデータ信号が前記第2スイッチの入力端に供給された状態で、前記第1スイッチをオフさせ、前記第2スイッチをオンさせ、前記第3期間に、前記第2スイッチをオフとした状態で、前記第1スイッチをオンさせ」るのに対し、引用発明1においては そのような構成を有さない点。

3 判断
上記相違点について検討する。
引用発明2(上記「1 刊行物の記載事項、引用発明」イ)は、
「マルチフレクサー部150のデータ電極ライン(DL)のそれぞれに接続されたM個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)と、M個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)のそれぞれに接続されたM個のバッファ(B1乃至Bm)と、M個のバッファ(B1乃至Bm)のそれぞれに接続されることと同時にK個の単位でデータドライバ120の出力チャンネルのそれぞれに共通に接続されるM個のマルチフレクサースイッチング素子(M1乃至Mm)と、マルチフレクサースイッチング素子(M)とバッファ(B)の間のノードと基底電圧ライン(GND)の間に接続されたM個のキャパシタ(C1乃至Cm)とを具備」
する構成を有しており、これは上記相違点における、「第3保持容量」及び「第1スイッチ」を備え、また「前記第1スイッチの入力端は、前記第3保持容量の一端と前記第2スイッチの出力端に接続され、前記第1スイッチの出力端は、前記第1保持容量の他端に接続され」た構成に相当するものを含んでいる。また、引用発明2は「エレクトロルミネセンス表示装置」であるから、「有機電界発光表示装置」である引用発明1と産業上の利用分野を共通するものといえる。
しかしながら、引用発明2はその構成として、「M個のキャパシタ(C1乃至Cm)のそれぞれに保存されたデータ電圧がM個のライティングスイッチング素子(W1乃至Wm)を経由してデータ電極ライン(DL)に供給されるように信号緩衝する役目をする」ための「M個のバッファ(B1乃至Bm)」を有しており、データ電極ラインに対してデータ電圧を供給するものとされている。一方、引用発明1は、その構成から見て、データ線へ電荷を供給することを前提とするものであり、そのような引用発明1に対して引用発明2を適用する動機を見いだすことはできない。なお、刊行物3にも上記相違点の構成に相当する技術事項の記載はない。

したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明1を直接又は間接的に引用する本願発明2ないし10は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、同様の理由により、当業者が引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-10に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-03 
出願番号 特願2011-228885(P2011-228885)
審決分類 P 1 8・ 574- WY (G09G)
P 1 8・ 571- WY (G09G)
P 1 8・ 573- WY (G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
中塚 直樹
発明の名称 電気光学装置および電子機器  
代理人 高田 聖一  
代理人 高橋 太朗  
代理人 大林 章  

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