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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1326706
審判番号 不服2015-20848  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-24 
確定日 2017-04-11 
事件の表示 特願2014-222855「トルク脈動レス発電機で発電した電力を発電機ユニット自体および外部に連続的に給電し続ける電力システム。」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月23日出願公開、特開2016- 92917〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年10月31日の出願であって、平成27年4月30日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年5月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成27年11月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成27年11月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容

1-1.本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
予め充電したDCモータ駆動用バッテリ(17)の直流電力をトルク脈動レス発電機主要部(1a)中の高速回転するDCモータ(2)に給電して、図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」によって発電した交流電力の内の一部である「(5)起電コイルA」の出力電力を回生電力として直流電力に変換し、フローティング充電方式でDCモータ駆動バッテリ用充電器(16)を介して当該発電機を駆動するDCモータ駆動用バッテリ(17)に充電し続けながら、当該発電機を駆動するDCモータ(2)に再給電して当該発電機を連続的に稼働させ続ける。さらに、(6)?(8)の起電コイルB?Dによって発電した電力が無駄にならないように「供給電力バッテリ用充電器」(18)を介して「供給電力用バッテリ」(19)に一旦充電してから連続的に「外部への供給電力Q」(20)として給電し続ける電力システム。」

1-2.本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成27年5月19日付けでされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
予め充電したDCモータ駆動用バッテリ(17)の直流電力をトルク脈動レス発電機主要部(1a)中の高速回転するDCモータ(2)に給電して、図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)によって発電した交流電力の内の一部である(5)起電コイルAの出力電力を回生電力として直流電力に変換し、フローティング充電方式でDCモータ駆動バッテリ用充電器(16)を介して当該発電機を駆動するDCモータ用バッテリ(17)に充電し続けながら、当該発電機を駆動するDCモータ(2)に再給電して当該発電機を連続的に稼働させ続ける。さらに、(6)?(8)の起電コイルB?Dによって発電した電力が無駄にならないように「供給電力バッテリ用充電器」(18)を介して「供給電力用バッテリ」(19)に一旦充電してから連続的に「外部への供給電力Q」(20)として給電し続ける電力システム。」

1-3.補正の内容についての小括
前記1-2.及び1-1.に摘記した本件補正前後の特許請求の範囲の記載を比較すると、本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」を「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」に変更し(以下、「補正事項1」という。)、本件補正前の請求項1に記載された「(5)起電コイルA」の前に「「」を加入するとともに同「(5)起電コイルA」の後に「」」を加入し(以下、「補正事項2」という。)、本件補正前の請求項1に記載された「DCモータ用バッテリ(17)」を「DCモータ駆動用バッテリ(17)」に変更する(以下、「補正事項3」という。)ものである。

2.補正の適否

2-1.目的要件について

2-1-1.特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるかについての検討
補正事項2及び3について検討すると、補正事項2は、「起電コイルA」の前に記載された「(5)」が当該起電コイルAに係る符号であることをより明確にするものであり、補正事項3は、平成27年5月19日付けでされた手続補正により補正された請求項1の「予め充電したDCモータ駆動用バッテリ(17)」の記載(前記1-2.参照)と用語を統一するために請求項1の他の記載を変更するものである。そうすると、補正事項2及び3は、いずれも、請求項1の記載をより明瞭にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
一方、補正事項1について検討すると、審判請求人は、平成27年11月24日付けの審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●明確性についての立証」において
「更に、拒絶理由(3)の摘記、「請求項1における「トルク脈動レス発電機図2の1によって」との特定のとおり、請求項1の記載が、図面の記載で代用されている結果、発明の範囲が不明確になっている。よって、請求項1に係わる発明は明確でない。」に対しては、
この審判請求書の提出と同時に提出する手続補正書において、「特許請求の範囲」、「請求項1」で「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」および「(5)起電コイルA」と補正します。手続補正書におけるこの太字の文章以外に下線を引いた文言は、意見書提出時の手続補正書での補正文です。」
と主張している。
しかしながら、本件補正後の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載は、特許請求の範囲の記載を図面の記載で代用するものである。図面は一般に多様な解釈が可能であるから、図面によって示唆される事項は、一般にその内容及び意味が曖昧である。そうすると、図面によって示唆される事項によって特定される事項も曖昧なものにならざるを得ないから、補正事項1に係る、本件補正後の特許請求の範囲の前記記載によって特定しようとする事項が明確に把握できない。
さらに、補正事項2、補正事項3をも考慮して、本件補正後の特許請求の範囲全体をみても、補正事項1に係る、本件補正後の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載は、当該記載によって特定しようとする事項が明確に把握できない。
してみれば、前記補正事項1は、本件補正前の明りょうでない記載の不明りょうさを正すものではなく、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するとは認められない。
したがって、特許請求の範囲についてする本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するとは認められない。

2-1-2.特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるかについての検討
補正事項1について検討すると、本件補正後の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」の記載は、前記2-1-1.において検討したとおり、特許請求の範囲の記載を図面の記載で代用するものであるから、当該記載によって特定しようとする事項が明確に把握できない。そして、本件補正前の「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」の記載も、特許請求の範囲の記載を図面の記載で代用するものであるから、当該記載によって特定しようとする事項が明確に把握できない。
そして、明細書を参照すると、図1は、本願でいうところのトルク脈動レス発電機により連続的に稼働する発電・電力システムを構成する機器全体の状態を示すものであり(段落0034参照)、図2は、本願でいうところのトルク脈動レス発電機本体を構成する部品全体を分解図として作図した状態を示すものであり(段落0032参照)、本願でいうところのトルク脈動レス発電機についてみれば、図1の記載と図2の記載は、それを組み立てた状態で記載しているか又はそれを構成する部品に分解した状態で記載しているかという表現が異なるにすぎない。請求項1に記載された電力システムを構成するにあたり、本願でいうところのトルク脈動レス発電機が組み立てられた状態で用いられることは当然である。そうすると、図1及び2の記載により特許請求の範囲の記載を代用した、本件補正前の「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」の記載、本件補正後の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」」の記載及び本件補正後の「図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載は、その実質的な内容に差が生じるとは認められない。してみれば、本件補正前の「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」の記載と本件補正後の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載との間にも、その実質的な内容に差が生じるとは認められないから、前記補正事項1は、本件補正前の特許請求の範囲に記載された事項を限定するものではない。
さらに、補正事項2及び3は、前記2-1-1.で検討したとおり、いずれも本件補正前の記載を実質的に変更するものではなく、補正事項1?3を総合的にみても、特許請求の範囲についてする本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲に記載された事項を限定するものではない。
したがって、特許請求の範囲についてする本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとは認められない。

2-1-3.特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除又は同条同項第3号の誤記の訂正を目的とするものであるかについての検討
本願の特許請求の範囲の請求項の数は、本件補正の前後とも1であるから、特許請求の範囲についてする本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものではないことは明らかである。
そして、補正事項1に係る、本件補正前の「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」の記載について検討すると、明細書の「図2は、本発明のトルク脈動レス発電機本体を構成する部品全体を分解図として作図した状態を示している。」との記載(段落0032)及び本件補正前の明細書の「【図2】本発明のトルク脈動レス発電機の全体分解図」との記載(本件補正前の段落0034)を参照すると、補正事項1に係る、本件補正前の前記記載が誤記であるとは認められない。
したがって、特許請求の範囲についてする本件補正が、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当するとは認められない。

2-1-4.目的要件についての小括
したがって、特許請求の範囲についてする本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず,同条同項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2.独立特許要件について
前記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

2-2-1.特許法第29条第1項柱書きについて
本件補正後の明細書及び図面の記載をも考慮すると、本件補正後の請求項1に記載されたものは、「バッテリの直流電力をトルク脈動レス発電機のDCモータに給電し、当該発電機で発電した電力の一部を回生電力としてフローティング充電方式で当該発電機を駆動するDCモータ用バッテリに充電しながらDCモータに再給電して当該発電機を稼働させ、また発電した電力の大部分を外部へ連続的に供給し続ける」(明細書段落0001参照。下線は、当審で付加した。)というものである。そうすると、本件補正後の請求項1に記載されたものは、その構成の一部として、前記DCモータに給電される電力を入力エネルギーとし、該DCモータにより駆動される前記トルク脈動レス発電機により発電される電力を出力エネルギーとする装置を備えるものである。
モータ及び発電機の効率が100%よりも低いことは技術常識であり、当該技術常識を考慮すれば、前記トルク脈動レス発電機は、前記DCモータに供給される電力よりも少ない電力を発電するものである。そして、本件補正後の請求項1に記載されたものにおいて、本件補正後の請求項1に記載されているように前記DCモータ駆動用バッテリは予め充電されているから、具体的な期間の長さは前記DCモータを含む前記トルク脈動レス発電機の効率やその他の損失等に依存するものの、前記トルク脈動レス発電機は所定の期間駆動され得ると認められる。
一方、本件補正後の明細書には、例えば
「【0021】
上述したように、本発明のトルク脈動レス発電機は、直流電力で高速回転するDCモータを当該発電機の動力源として使用し、複数個の最大エネルギ積の大きいネオジム?鉄?硼素磁石の高速回転によって複数個の起電コイルがDCモータに印加した電力を大きく上回る電力を発電し、小分けした起電コイルの一部から取り出した交流電力を直流に変換してDCモータ駆動用に回生電力として給電することにより、休むことなく連続発電し続ける。それに、残りの起電コイルによる発電・電力を外部に連続して給電し続けることができる。正に、トルク脈動レス発電機による連続的に稼働する発電・電力システムの出現になる。
【0022】
従来から言われている「永久機関は不可能」とする見解は、上述したような事実を達成できなかったためであり、本出願のトルク脈動レス発電機による連続的に稼働する発電・電力システムの実験結果がそれを覆す。」
との記載がある。
これらの記載を考慮すると、本件補正後の請求項1に記載された「トルク脈動レス発電機」は、当該請求項の記載からはその構成を明確に把握することはできないが、外部から入力されるエネルギーであるDCモータに供給される電力を大きく上回る電力を発電する、すなわち外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する発電機であって、本件補正後の請求項1に記載された「連続的」は、そのような発電機を前提に、前記所定の期間を超える期間を意味するものと認められる。
そうすると、本件補正後の請求項1に記載されたものは、外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する装置を包含するものであるから、「エネルギー保存の法則」という自然法則に反するものということになる。
したがって、本件補正後の請求項1に記載されたものは、自然法則に反する特定事項を含むものと認められるから、特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しない。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●発明該当性1についての立証」において、
「しかし、本出願の発明は、この審判請求書に掲載の参考図「図1」に示す如く、「トルク脈動レス発電機」を主機とした当該電力システムを駆動する始動時に、当該電力システムを構成する「DCモータ」に当該電力システム構成要素の「バッテリ(出願の「書類名」図面における「図2」中の(17)相当)の他に市販の交流電力を使用する外部エネルギーの始動テスト用の「直流定電圧電源(コーセル製R50A-9)」をも備えてテスト機の実証試験に成功しています。むしろ、テスト機による性能実証が先であり、本願発明はそれに基づいて特許出願しています。
つまり、本書に掲載の「図1」における左上隅に2点鎖線で図示した始動テスト用の外部エネルギの「直流定電圧電源」は、当該発電・電力システム構成要素の「大容量バッテリ」と「等価」のエネルギ源とみなされますし、当該出願発明の電力システムの発明目的に鑑み、その外部エネルギの「直流定電圧電源」を必要としないで済みますので、本出願発明の明細書、特許請求の範囲および図面においては外部エネルギの「直流定電圧電源」を除外しています。同様の理由により、請求範囲1にも外部エネルギの「直流定電圧電源」の記載をしていません。」(以下、「主張1-1」という。)、
「しかも、当該電力システム構成要素の大容量バッテリには「トルク脈動レス発電機」による有り余る発電電力を供給できますので実用化した場合には、拒絶査定理由通知書に記載の技術常識に見る不可避の電力損失や機械的摩擦損失等によるエネルギ消費を補完・回復させ、大容量バッテリの寿命約10年間(リチウム-イオンバッテリにおいては充放電回数4000サイクル)は連続稼働させることができます。
しかし、連続稼働といえども「大容量バッテリの寿命の期間内」であり、未来永劫に渡って連続稼働させることができるものではありません。リチウム-イオンバッテリの場合、現行の製造物責任に関する法律に定める補修部品備蓄の期限が製品販売年から10年間ですので、バッテリ寿命の期間内の連続稼働は妥当な稼働期間と言えます。」(下線は、当審が付加した。以下、「主張1-2」という。)、
「担当審査官は、明細書に記載してある幾つかの文言の「言葉尻」を意図的にとらえて、予断を持って異常に枉げて解釈し、第一種永久機関にも第二種永久機関にもあてはまらない「正体不明の怪しい永久機関」を捏造して、執拗にそれを本願発明に結びつけています。
誤解を招かないために、この拒絶査定不服審判請求書と同時に提出する手続補正書で(段落0009、0010、0021、0022、0023、0024ならびに0034)文中の「永久」の語句を「連続的に」あるいは「連続的に稼働する」に補正します。」(以下、「主張1-3」という。)、及び
「因みに、「エネルギー保存の法則」は、ドイツの生理学者のヘルマン=ルトヴィッヒ=フェルデナント=フォン=ヘルムホルツ(1821-1894)等が唱えた「思い付きによる仮説」であり、実証されていず、確とした理論付けもされていません。むしろ「エネルギ非保存の自然現象」とすべきです。彼の死から121年を経た2015年の現在も多くの物理学者がそれを信じているのですから不思議です。・・・これら飛行機に関する歴史的事実および鳥・蝙蝠や昆虫が現に空を飛んでいる事実に照らせば、ヘルムホルツが本業の生理学以外の分野に首を突っ込む「□△の横好き」にしては自己才能過信・尊大・唯我独尊にして「もの知らず」だったと言えます。「エネルギー保存の法則」とても彼が思い付いた屁理屈なのです。

拒絶査定理由通知書および拒絶査定において、特許・実用新案 審査基準の「第2部 第1章 産業上利用することができる発明における1.1『発明』に該当しないものの類型の『自然法則に反するもの』」としている記述をせずに、「エネルギー保存の法則」との文言に読み違えて、それを持ちだして拒絶通知書の拒絶理由としていることは、特許法第49条(拒絶の査定)を遵守する審査官にしてはとんでもない大間違いです。」(以下、「主張1-4」という。)
と主張し、審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●発明該当性2についての立証」において、
「<本願発明が自然法則を利用している証左項目>
(1)予め充電してあるバッテリ(二次電池)の電力(DC9V)でトルク脈動レス発電機駆動用DCモータを始動させる。
(2) 高速回転するDCモータに直結したトルク脈動レス発電機の「最大エネルギー積」が大きい「ネオジム-鉄-硼素磁石」を高速回転させ、4個の鉄芯レスコイルの巻線近接を通過させて総発電交流電力AC70Vを発電させる。
(3)その複数の鉄芯レスコイルからの交流電力AC70Vは、整流器具備の充電器を介して直流電力に変換する。変換効率0.9として総発電直流電力はDC89.0Vになる。その総発電直流電力は始動時にDCモータに印加したバッテリ電力の約9.88倍の高出力になる。
(4)その発電電力の一部(鉄芯レスコイル1個の発生交流電力)を整流器具備の充電器を介して直流DC21.6Vに変換して一旦バッテリに充電する。
(5)そのバッテリに充電した直流電力をDCモータに回生・印加して再びDCモータを回転させる。以下上記1?4の繰り返しで連続発電電力システムが成立します。

以上の如く、テスト機による史上初の実証結果ですら、上記(4)の鉄芯レスコイル1個からの発電した電力だけでもバッテリ充電に必要な電力を充分にカバーしていることが分かります。上記の(2)および(3)に述べた実験機によって「実証された事実」は、出願書類中の「図面」における発電電圧データ図の「図4」に示した通りです。
しかし、担当審査官は、この事実には目もくれていないことから、審査時において、従来の技術に関した固定観念・知識で判断しています。とりわけ、「大容量バッテリ」の必要性・重要性を見落としていること、それでは本願発明の「実証された事実」を理解できないと判断せざるを得ません。」(以下、「主張1-5」という。)
と主張し、審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●発明該当性3についての立証」において、
「それ故に、引用文献1に記載の「発電システム」は、DCモータを動力源として稼働する「鉄芯レスコイル」使用の「トルク脈動レス発電機」を特定した本願発明の「電力システム」には該当しない、全くの別ものです。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件(柱書1.特許出願前に日本国内において公然知られた発明)ではありません。
また、以下の「●実施可能要件についての立証」に記した「引用文献1に記載の電力システム」は、稼働不能であり、実用に供することができない故に公然実施されたとは類推できず、「柱書2.特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明」でもありません。」(以下、「主張1-6」という。)
と主張している。
審判請求人のこれらの主張について検討する。
前記主張1-1について、前記テスト機は、審判請求人が自認するように、明細書、特許請求の範囲及び図面には記載されていない直流定電圧電源を備えた装置であるから、本件補正後の請求項1に記載されたものを具現化した装置ということができず、更に前記実証実験がいかなる条件の下で行われたのが明らかではなく、かつその実証結果が公的機関において証明されたものでもない。
前記主張1-2は、前記下線を付した箇所からも明らかなように、前記トルク脈動レス発電機が発電する電力が前記DCモータに供給される電力を大きく上回るということを前提としたものであって、当該前提が「エネルギー保存の法則」という自然法則に反しているということは先に述べたとおりである。
前記主張1-3について、本件補正後の明細書を参照しても、本件補正後の請求項1に記載されたものが特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当するとはいえないということは、先に述べたとおりである。
前記主張1-4について、エネルギー保存の法則は、現在の科学技術の普遍的法則であり、常識であると認められる(例えば、マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会編,「マグローヒル科学技術用語大辞典」,改訂第3版,株式会社日刊工業新聞社,2001年5月31日2刷発行,p.166,社団法人実践教育訓練研究協会編,「機械用語大辞典」,初版,株式会社日刊工業新聞社,1997年11月28日発行,p.78-79参照)。
前記主張1-5について、前記主張1-1を併せ考慮すると、前記主張1-5の実証結果が得られたテスト機が本件補正後の請求項1に記載されたものを具現化した装置であるかは明らかではなく、更に前記実証結果がいかなる条件の下で得られたのかも明らかではない。しかも、審判請求人が予め充電してあるバッテリ(二次電池)の電力及びトルク脈動レス発電機の4個の鉄芯レスコイルの総発電交流電力と主張するものは、その単位から明らかなように電圧であって電力ではなく、この点は審判請求人が引用する図4も同様である。したがって、「テスト機による史上初の実証結果ですら、上記(4)の鉄芯レスコイル1個からの発電した電力だけでもバッテリ充電に必要な電力を充分にカバーしていることが分かります。」との審判請求人の主張は理由がない。
前記主張1-6は、本件補正後の請求項1に記載されたものと原審が引用した引用文献1(特開2008-220120号公報)に記載されたものとの対比に関する主張であり、本件補正後の請求項1に記載されたものが特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当するか否かということとは関係がない。
したがって、審判請求人の前記主張は、いずれも、これを採用することができない。

2-2-2.特許法第36条第6項第2号について
本件補正後の請求項1の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載は、特許請求の範囲の記載を図面の記載で代用するものである。
前記2-1-1.においても述べたとおり、図面は一般に多様な解釈が可能であるから、図面によって示唆される事項は、一般にその内容及び意味が曖昧である。そうすると、図面によって示唆される事項によって特定される事項も曖昧なものにならざるを得ず、本件補正後の請求項1に記載されたものが明確であるとはいえない。
したがって、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●明確性についての立証」において、
「更に、拒絶理由(3)の摘記、「請求項1における「トルク脈動レス発電機図2の1によって」との特定のとおり、請求項1の記載が、図面の記載で代用されている結果、発明の範囲が不明確になっている。よって、請求項1に係わる発明は明確でない。」に対しては、 この審判請求書の提出と同時に提出する手続補正書において、「特許請求の範囲」、「請求項1」で「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」および「(5)起電コイルA」と補正します。手続補正書におけるこの太字の文章以外に下線を引いた文言は、意見書提出時の手続補正書での補正文です。」と主張している。
しかしながら、本件補正後の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載によっても、当該記載により特定しようとする事項が明確に把握できないことは先に述べたとおりであるから、審判請求人の前記主張は、これを採用することができない。

2-2-3.特許法第36条第4項第1号について
前記2-2-1.においても検討したとおり、本件補正後の明細書の記載、特に段落0021及び0022の記載からみて、本件補正後の請求項1に記載されたものは、前記DCモータ駆動用バッテリに予め充電されている電力により駆動され得る期間よりも長い「連続的」な期間駆動され得るものであって、その前提となるのは、前記トルク脈動レス発電機が前記DCモータに供給されるエネルギーよりも大きいエネルギーを発電する発電機であることである。
そして、本件補正後の明細書及び図面には、前記トルク脈動レス発電機に関して、
「1)発電機に鉄芯を用いない起電コイルを複数個使用する。
2)発電機に「最大エネルギ積」の大きいネオジム?鉄?硼素磁石を使用する。
3)高速回転するDCモータで発電機を高速回転させる。」(明細書段落0011)
ことが記載されており、その具体的な態様として、前記起電コイルを4個使用すること(明細書段落0026)及び前記DCモータを7,300rpm又は7,900rpmで回転させること(図4)が記載されている。
しかしながら、これらを採用したとしても、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機の回転部を支承する回転支障部における摩擦損失や前記起電コイル及び前記DCモータのコイルの巻線における損失等が存在し、エネルギー保存の法則からして、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機の効率は100%よりも低くなるから、前記トルク脈動レス発電機が発電する電力は前記DCモータに供給される電力よりも低くなる。そうすると、本件補正後の明細書の記載では、前記トルク脈動レス発電機が外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する理由が不明である。
したがって、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●実施可能要件についての立証」において、
「当業者が本願発明の明細書の(段落0011)に明記した「トルク脈動レス発電機」を特定した「電力システム」を実用に供するためには、以下の<トルク脈動レス発電機による電力システム構築要件>を率直に履行することで、拒絶理由通知書(発送番号206354)ページ4/5における拒絶理由による「当業者は試行錯誤を強要されるとした記述」にはならず、したがって、試行錯誤することなく完成させることができます。

<本願発明の明細書の(段落0011)に明記したトルク脈動レス発電機による電力システム構築要件>
1)発電機に鉄芯を用いない起電コイルを複数個使用する。
2)発電機に「最大エネルギー積」の大きいネオジム?鉄?硼素磁石を使用する。
3)高速回転するDCモータで発電機を高速回転(毎時81.6km以上)させる。
4)発電機を駆動するDCモータの直流電源に大容量のバッテリを使用する。
5) 起電コイル複数個の内の小分けした起電コイル1個の交流電力を直流に変換して、一旦DCモータ駆動用の大容量のバッテリに充電し、DCモータの駆動電力にする。
6)残り複数個の起電コイルの交流電力は、利用しなければ無駄になってしまうので直流に変換して、一旦バッテリに蓄電し外部へ給電する。」
と主張している。
しかしながら、先に検討したとおり、前記システム構築要件1)?3)を採用したとしても、技術常識からすれば、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機が発電する電力が前記DCモータに供給される電力よりも大きくなることはない。そして、前記システム構築要件4)?6)は、電力の充放電又は変換に関するものであり、当該システム構築要件によって電力が増加することがないことは明らかであるから、前記システム構築要件1)?3)に加えて前記システム構築要件4)?6)を採用したとしても、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機が発電する電力が前記DCモータに供給される電力より大きくなることはない。
したがって、審判請求人の前記主張は、これを採用することができない。

2-2-4.独立特許要件についての小括
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の明細書の記載は、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件補正後の請求項1に記載されたものは、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同条同項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであったとしても、「2-2.独立特許要件について」で指摘したとおり、本件補正後の請求項1に記載されたものは、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願の請求項1に記載されたものについて

1.本願の請求項1に記載されたもの
平成27年11月24日にされた手続補正は、前記のとおり、却下されたので、本願の請求項1に記載されたものは、前記「第2[理由]1-2.」に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
「(理由1)
この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

先の拒絶理由通知において摘記した本願明細書の段落0001、0010、0021、0022については、特段の補正がなされていない。
かかる明細書の記載は、請求項1に係る発明は、外部からエネルギーを追加することなく永続的にエネルギーを取り出すことができる永久機関であることを主張するものといえる。
また、上記段落以外にも、例えば、本願明細書の段落0018の「本出願のトルク脈動レス発電機は、DCモータの高速回転で駆動させると、起電コイル4個を直列につないだ発電電力がDCモータに供給した直流電力の7.77倍の交流電力になり、それを直流に変換すると約10倍もの直流電力になる。」なる記載があり、これは、入力を超える出力を得るという思想であるといえ、エネルギー保存の法則に反するものである。
以上から、請求項1に係る発明は、一般的なエネルギー保存の法則に反するものであって、特許法上の「発明」ということはできず、特許を受けることはできない。

なお、出願人は、意見書において、「本願発明の最重要事項ですので、敢えて別言しますと、本願請求項1に係わる発明は、図面1に図示のエネルギの元となる必須電源「DCモータ駆動用バッテリ(17)」を有していますので、エネルギー保存の法則に反するとされる「外部から何らのエネルギーを受け取っていないで仕事をする第一種永久機関および第二種永久機関」、つまり「無から有を得る」仮想の永久機関とは全く異なる別ものです。」と主張する。しかしながら、先の拒絶理由通知における理由1は、本願請求項1の記載のとおりに請求項1に係る発明をDCモータ駆動用バッテリ(17)も含めた「電力システム」として認定し、かかる電力システムの外部からエネルギーの追加がない旨説示したものである。よって、出願人の上記主張に首肯できない。

(理由2)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

先の拒絶理由通知における理由2(3)は、補正後の請求項1においても依然として解消していない。
すなわち、本願の請求項1における「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」なる記載は、請求項の記載が図面の記載で代用されている結果、請求項において特定される発明の範囲を不明確とするものである。
よって、請求項1に係る発明は明確ではない。

(理由3)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

先の拒絶理由通知において説示したとおりである。

(理由4)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1
・引用文献等 1-3
・備考
補正後の請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、
引用文献1(特に、図6及び段落0050の記載を参照)における「(DCモータ2への入力電源を供給するための)バッテリ5」、「DCモータ2」及び「(負荷200に接続される)バッテリ5」が、それぞれ本願発明の「DCモータ駆動用バッテリ(17)」、「DCモータ(2)」及び「供給電力用バッテリ(19)」に相当する。
してみると、本願発明と引用文献1に記載された発明は、本願発明では、発電機として「トルク脈動レス発電機」を用いる点(相違点1)、及び、本願発明では、供給電力バッテリ用充電器(18)を介して「供給電力用バッテリ」に一旦充電する点(相違点2)で相違し、その余の点では一致している。
かかる相違点について検討する。
相違点1については、先の拒絶理由通知で説示したとおり、本願発明で用いられる「トルク脈動レス発電機」、いわゆる空芯コイル型の発電機は、例えば、引用文献2及び引用文献3に記載されるように周知の技術である。そして、引用文献1に記載された発明において、一般的に知られている種々の形式の発電機から、如何なる形式の発電機を採用するかは、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎない。してみると、引用文献1に記載された発明において、周知であるトルク脈動レス発電機を採用し、本願発明となすことは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
また、相違点2については、引用文献1においても「供給電力用バッテリ」(「(負荷200に接続される)バッテリ5」)は、その構成上、充電するための機構が必要であることは明らかであり、引用文献1に記載された発明において充電器に相当する機構を採用することに何ら困難性はない。
したがって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得るものである。

なお、出願人は、意見書において、「拒絶理由4(進歩性)については、・・・本出願発明の電力システムに「空芯コイル発電機」を選択しただけでは不十分であり、起電コイルを横切る「ネオジム?鉄?硼素磁石」の移動速度、つまり回転数をアップさせることが必須条件であることは言うにおよばず、起電コイルの形状が出力電力の多寡に関係することを知って最大出力を得るにはどうするかの方策も必要です(図8)。 前出の図6右の「長穴あき小判形」の起電コイルが、「穴あきドーナツ形」の起電コイルよりも大きい電力を発生する理由を次の図8に示します。
・・・
つまり、当業者が容易に想到し得ない事項として、以下のことがあります。起電コイルの導線を磁石が直交して横切ると最大の電力を発電しますが、磁石が導線と平行して移動したのでは発電電力はゼロです。したがって、ドーナツ状の起電コイルは中心近傍でほぼE volt(100%)の起電力発生とすれば、磁石移動の最左右端では起電力ゼロ、磁石の移動線と45°の角度では約0.7E volt(約70%)になることがあります。これらのことを知れば、「長穴あき小判形」の起電コイルの「直線部分」をそれと同等幅の「矩形磁石」が直交して横切ると最大電力を発電することになります。 これらの技術思想は、当業者が周知とは言えず、しかも不周知と思われる技術はまだまだあります。これらは、出願書類の「明細書」や「特許請求範囲」に敢えて含める必要がない技術・ノウハウですので載せていませんが、前出の著作「トルク脈動レス永久発電機電力システムを考える」のオリジナル原稿のCD版オールカラー著作(B5版、全226頁)には詳しく紹介してあります。 本発明の特許出願は、以上の如くの研究・実験による実証を踏まえた技術思想が根底にあってのことであり、貴官ご指摘の解釈、つまり当業者がトルク脈動レス発電機を採用し、本出願の電力システムの構築に「空芯コイル発電機」を選択するか、または「鉄芯型コイル発電機」を選択するか、は適宜選択する設計事項であり、当業者が容易に想到し得る、との解釈レベルで済むことではありません。」と主張している。
しかしながら、上記出願人の主張は、請求項の記載にされていない事項に基づくもの、又は、明細書に開示していない事項に基づくものであることは、その主張内容から明らかである。請求項の記載に基づかない主張である上記出願人の主張には首肯できない。


<引用文献等一覧>
1.特開2008-220120号公報
2.特開2013-55789号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2011-4576号公報(周知技術を示す文献)」

3.当審の判断

3-1.特許法第29条第1項柱書きについて
本願の明細書及び図面の記載をも考慮すると、本願の請求項1に記載されたものは、「バッテリの直流電力をトルク脈動レス発電機のDCモータに給電し、当該発電機で発電した電力の一部を回生電力としてフローティング充電方式で当該発電機を駆動するDCモータ用バッテリに充電しながらDCモータに再給電して当該発電機を稼働させ、また発電した電力の大部分を外部へ連続的に供給し続ける」(明細書段落0001参照。下線は、当審で付加した。)というものである。そうすると、本願の請求項1に記載されたものは、その構成の一部として、前記DCモータに給電される電力を入力エネルギーとし、該DCモータにより駆動される前記トルク脈動レス発電機により発電される電力を出力エネルギーとする装置を備えるものである。
そして、前記「第2[理由]2-2-1.」において検討したのと同様、モータ及び発電機の効率が100%よりも低いことは技術常識であり、当該技術常識を考慮すれば、前記トルク脈動レス発電機は、前記DCモータに供給される電力よりも少ない電力を発電するものである。そして、本願の請求項1に記載されたものにおいて、本願の請求項1に記載されているように前記DCモータ駆動用バッテリは予め充電されているから、具体的な期間の長さは前記DCモータを含む前記トルク脈動レス発電機の効率やその他の損失等に依存するものの、前記トルク脈動レス発電機は所定の期間駆動され得ると認められる。
一方、本願明細書には、例えば「【0021】
上述したように、本発明のトルク脈動レス発電機は、直流電力で高速回転するDCモータを当該発電機の動力源として使用し、複数個の最大エネルギ積の大きいネオジム?鉄?硼素磁石の高速回転によって複数個の起電コイルがDCモータに印加した電力を大きく上回る電力を発電し、小分けした起電コイルの一部から取り出した交流電力を直流に変換してDCモータ駆動用に回生電力として給電することにより、休むことなく連続発電し続ける。それに、残りの起電コイルによる発電・電力を外部に連続して給電し続けることができる。正に、トルク脈動レス発電機による永久発電・電力システムの出現になる。
【0022】
従来から言われている「永久機関は不可能」とする見解は、上述したような事実を達成できなかったためであり、本出願のトルク脈動レス発電機による永久発電・電力システムの実験結果がそれを覆す。」との記載がある。
これらの記載を考慮すると、本願の請求項1に記載された「トルク脈動レス発電機」は、当該請求項の記載からはその構成を明確に把握することはできないが、外部から入力されるエネルギーであるDCモータに供給される電力を大きく上回る電力を発電する、すなわち外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する発電機であって、本願の請求項1に記載された「連続的」は、そのような発電機を前提に、前記所定の期間を超える「永久」の期間を意味するものと認められる。
そうすると、本願の請求項1に記載されたものは、外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する装置を包含し、前記DCモータ駆動用バッテリに予め充電された電力以外に外部からエネルギーを入力されることなく永久に稼働するものであるから、「エネルギー保存の法則」という自然法則に反するものということになる。
したがって、本願の請求項1に記載されたものは、自然法則に反する特定事項を含むものと認められるから、特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しない。

なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●発明該当性1についての立証」、「●発明該当性2についての立証」及び「●発明該当性3についての立証」においてした主張(前記「第2[理由]2-2-1.」参照)について検討すると、前記主張1-1、1-2及び1-4?6は、前記「第2[理由]2-2-1.」において検討したのと同様の理由により、これを採用することができない。
そして、前記主張1-3は、本件補正後の明細書の記載に基づいた主張である。しかしながら、本件補正は、前記のとおり、却下されたから、審判請求人の前記主張は、その前提を欠き、これを採用することができない。
また、本件補正前の明細書を参照しても、本願の請求項1に記載されたものが特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しないことは先に述べたとおりである。

3-2.特許法第36条第6項第2号について
本願の請求項1の「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」の記載は、特許請求の範囲の記載を図面の記載で代用するものである。
前記「第2[理由]2-1-1.及び2-2-2.」においても述べたとおり、図面は一般に多様な解釈が可能であるから、図面によって示唆される事項は、一般にその内容及び意味が曖昧である。そうすると、図面によって示唆される事項によって特定される事項も曖昧なものにならざるを得ず、本願の請求項1に記載されたものが明確であるとはいえない。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●明確性についての立証」においてした主張(前記「第2[理由]2-2-2.」参照)は、本件補正後の請求項の記載に基づいた主張である。しかしながら、本件補正は、前記のとおり、却下されたから、審判請求人の前記主張は、その前提を欠き、これを採用することができない。
また、本件補正前の「図2において全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機」(1)」の記載によっても、当該記載により特定しようとする事項が明確に把握できないことは先に述べたとおりである。

3-3.特許法第36条第4項第1号について
前記3-1.においても検討したとおり、本願明細書の記載、特に段落0021及び0022の記載からみて、本願の請求項1に記載されたものは、前記DCモータ駆動用バッテリに予め充電されている電力により駆動され得る期間よりも長い、永久である「連続的」な期間駆動され得るものであって、その前提となるのは、前記トルク脈動レス発電機」が前記DCモータに供給されるエネルギーよりも大きいエネルギーを発電する発電機であることである。
そして、本願の明細書及び図面には、前記トルク脈動レス発電機に関して、
「1)発電機に鉄芯を用いない起電コイルを複数個使用する。
2)発電機に「最大エネルギ積」の大きいネオジム?鉄?硼素磁石を使用する。
3)高速回転するDCモータで発電機を高速回転させる。」(明細書段落0011)
ことが記載されており、その具体的な態様として、前記起動コイルを4個使用すること(明細書段落0026)及び前記DCモータを7,300rpm又は7,900rpmで回転させること(図4)が記載されている。
しかしながら、前記「第2[理由]2-2-3.」において検討したのと同様、これらを採用したとしても、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機の回転部を支承する回転支障部における摩擦損失や前記起電コイル及び前記DCモータのコイルの巻線における損失等が存在し、エネルギー保存の法則からして、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機の効率は100%よりも低くなるから、前記トルク脈動レス発電機が発電する電力は前記DCモータに供給される電力よりも低くなる。そうすると、本願明細書の記載では、前記トルク脈動レス発電機が外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する理由が不明である。
したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●実施可能要件についての立証」においてした主張については、前記「第2[理由]2-2-3.」において検討したのと同様の理由により、これを採用することができない。

4.むすび

以上のとおり,本願の請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、本願の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
したがって、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。

第4 仮に特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものであった場合の検討

本審決の結論は、前記「第3 4.」に記載したとおりであるが、仮に、特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するとして、本件補正後の本願の請求項1に記載されたもの(前記「第2[理由]1-1.参照。以下、単に「本願の請求項1に記載されたもの」という。)が特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

1.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、前記「第3 2.」に記載のとおりである。

2.当審の判断

2-1.特許法第29条第1項柱書きについて
本願の明細書及び図面の記載をも考慮すると、本願の請求項1に記載されたものは、「バッテリの直流電力をトルク脈動レス発電機のDCモータに給電し、当該発電機で発電した電力の一部を回生電力としてフローティング充電方式で当該発電機を駆動するDCモータ用バッテリに充電しながらDCモータに再給電して当該発電機を稼働させ、また発電した電力の大部分を外部へ連続的に供給し続ける」(明細書段落0001参照。下線は、当審で付加した。)というものである。そうすると、本願の請求項1に記載されたものは、その構成の一部として、前記DCモータに給電される電力を入力エネルギーとし、該DCモータにより駆動される前記トルク脈動レス発電機により発電される電力を出力エネルギーとする装置を備えるものである。
モータ及び発電機の効率が100%よりも低いことは技術常識であり、当該技術常識を考慮すれば、前記トルク脈動レス発電機は、前記DCモータに供給される電力よりも少ない電力を発電するものである。そして、本願の請求項1に記載されたものにおいて、本願の請求項1に記載されているように前記DCモータ駆動用バッテリは予め充電されているから、具体的な期間の長さは前記DCモータを含む前記トルク脈動レス発電機の効率やその他の損失等に依存するものの、前記トルク脈動レス発電機は所定の期間駆動され得ると認められる。
一方、本願の明細書には、例えば
「【0021】
上述したように、本発明のトルク脈動レス発電機は、直流電力で高速回転するDCモータを当該発電機の動力源として使用し、複数個の最大エネルギ積の大きいネオジム?鉄?硼素磁石の高速回転によって複数個の起電コイルがDCモータに印加した電力を大きく上回る電力を発電し、小分けした起電コイルの一部から取り出した交流電力を直流に変換してDCモータ駆動用に回生電力として給電することにより、休むことなく連続発電し続ける。それに、残りの起電コイルによる発電・電力を外部に連続して給電し続けることができる。正に、トルク脈動レス発電機による連続的に稼働する発電・電力システムの出現になる。
【0022】
従来から言われている「永久機関は不可能」とする見解は、上述したような事実を達成できなかったためであり、本出願のトルク脈動レス発電機による連続的に稼働する発電・電力システムの実験結果がそれを覆す。」
との記載がある。
これらの記載を考慮すると、本願の請求項1に記載された「トルク脈動レス発電機」は、当該請求項の記載からはその構成を明確に把握することはできないが、外部から入力されるエネルギーであるDCモータに供給される電力を大きく上回る電力を発電する、すなわち外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する発電機であって、本願の請求項1に記載された「連続的」は、そのような発電機を前提に、前記所定の期間を超える期間を意味するものと認められる。
そうすると、本願の請求項1に記載されたものは、外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する装置を包含するものであるから、「エネルギー保存の法則」という自然法則に反するものということになる。
したがって、本願の請求項1に記載されたものは、自然法則に反する特定事項を含むものと認められるから、特許法第29条第1項柱書きに規定する「発明」に該当しない。

なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●発明該当性1についての立証」、「●発明該当性2についての立証」及び「●発明該当性3についての立証」においてした主張(前記「第2[理由]2-2-1.」参照)については、前記「第2[理由]2-2-1.」において検討したのと同様の理由により、これを採用することができない。

2-2.特許法第36条第6項第2号について
本願の請求項1の「図1中において、全体分解図として全構成部品をビジュアルに表現した「トルク脈動レス発電機主要部(1a)」あるいは図2中の「トルク脈動レス発電機の全体分解図(1)」」の記載は、特許請求の範囲の記載を図面の記載で代用するものである。
前記「第2[理由]2-1-1.及び2-2-2.」並びに前記「第3 3-2.」においても述べたとおり、図面は一般に多様な解釈が可能であるから、図面によって示唆される事項は、一般にその内容及び意味が曖昧である。そうすると、図面によって示唆される事項によって特定される事項も曖昧なものにならざるを得ず、本願の請求項1に記載されたものが明確であるとはいえない。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●明確性についての立証」においてした主張(前記「第2[理由]2-2-2.」参照)については、前記「第2[理由]2-2-2.」において検討したのと同様の理由により、これを採用することができない。

2-3.特許法第36条第4項第1号について
前記「第2[理由]2-2-1.」及び前記「第4 2-1.」においても検討したとおり、本願の明細書の記載、特に段落0021及び0022の記載からみて、本願の請求項1に記載されたものは、前記DCモータ駆動用バッテリに予め充電されている電力により駆動され得る期間よりも長い「連続的」な期間駆動され得るものであって、その前提となるのは、前記トルク脈動レス発電機が前記DCモータに供給されるエネルギーよりも大きいエネルギーを発電する発電機であることである。
そして、本願の明細書及び図面には、前記トルク脈動レス発電機に関して、
「1)発電機に鉄芯を用いない起電コイルを複数個使用する。
2)発電機に「最大エネルギ積」の大きいネオジム?鉄?硼素磁石を使用する。
3)高速回転するDCモータで発電機を高速回転させる。」(明細書段落0011)
ことが記載されており、その具体的な態様として、前記起動コイルを4個使用すること(明細書段落0026)及び前記DCモータを7,300rpm又は7,900rpmで回転させること(図4)が記載されている。
しかしながら、これらを採用したとしても、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機の回転部を支承する回転支障部における摩擦損失や前記起電コイル及び前記DCモータのコイルの巻線における損失等が存在し、エネルギー保存の法則からして、前記DCモータを含めた前記トルク脈動レス発電機の効率は100%よりも低くなるから、前記トルク脈動レス発電機が発電する電力は前記DCモータに供給される電力よりも低くなる。そうすると、本願の明細書の記載では、前記トルク脈動レス発電機が外部から入力されるエネルギーよりも大きいエネルギーを外部に出力する理由が不明である。
したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、審判請求人が審判請求書の請求の理由の「3.立証の主旨」の「●実施可能要件についての立証」においてした主張(前記「第2[理由]2-2-3.」参照)については、前記「第2[理由]2-2-3.」において検討したのと同様の理由により、これを採用することができない。

3.仮に特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものであった場合のむすび

以上のとおり、本願の請求項1に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、本願の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、仮に特許請求の範囲についてする本件補正が特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものであったとしても、本願は拒絶されるべきものであるから、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
 
審理終結日 2016-09-12 
結審通知日 2016-09-27 
審決日 2016-10-12 
出願番号 特願2014-222855(P2014-222855)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H02K)
P 1 8・ 1- Z (H02K)
P 1 8・ 537- Z (H02K)
P 1 8・ 574- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲村 靖森藤 淳志  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 久保 竜一
中川 真一
発明の名称 トルク脈動レス発電機で発電した電力を発電機ユニット自体および外部に連続的に給電し続ける電力システム。  
代理人 松本 修身  

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