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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1326795
審判番号 不服2015-22194  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-16 
確定日 2017-04-25 
事件の表示 特願2011-158337「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日出願公開、特開2012- 37881、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月19日(優先権主張平成22年7月16日)の出願であって、平成27年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年4月28日に手続補正がなされたが、同年9月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という)がなされ、これに対し、同年12月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成28年12月28日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という)が通知され、平成29年2月28日に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成29年2月28日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】
下偏光板を備える液晶表示パネルと、
液晶表示パネルを背面側から照明するエッジライト型の面光源装置と、を備え、
前記下偏光板は、偏光子と、前記偏光子の入光側から前記偏光子に接着した保護フィルムと、を備え、
前記保護フィルムは、樹脂材料からなる主部と、前記主部中に分散された拡散成分と、を備え、
前記保護フィルムの一側面に対向する他側面は、並べて配置された単位プリズムによって形成されたプリズム面となっており、
複数の単位プリズムが、前記保護フィルムのフィルム面と平行な配列方向に沿って並べられ、各単位プリズムは、前記フィルム面と平行であるとともに前記配列方向と交差する方向に延び、
各単位プリズムは、前記配列方向に沿って対向する一対の傾斜面を有し、
少なくとも前記偏光子に対面するようになる前記保護フィルムの前記一側面が平坦であり、
前記保護フィルムは、単位プリズムの一方の傾斜面を介して入射した光を単位プリズムの他方の傾斜面で全反射することで、入射光の進行方向を偏向するよう構成されている、
表示装置。
【請求項2】
前記保護フィルムは、前記拡散成分を含んだ光拡散部と、前記拡散成分が分散されていない樹脂部と、を含み、
前記単位プリズムは、前記樹脂部に含まれ、
前記光拡散部は、前記樹脂部よりも前記偏光子の側に配置されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記保護フィルムは、前記光拡散部よりも前記偏光子の側に配置され、前記拡散成分が分散されていない第2樹脂部を、さらに備える、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記保護フィルムは、押し出し加工によって押し出された押し出し材である、請求項1?3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記保護フィルムのヘイズ値が60%以上である、請求項1?4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
温度40℃、湿度90%RH、24時間での前記保護フィルムの透湿度が、10g/m^(2)・24hr以上である、請求項1?5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記下偏光板は、前記偏光子および前記保護フィルムに隣接して設けられ、前記偏光子および前記保護フィルムを互いに接着する接着層を、さらに備える、請求項1?6のいずれか一項に記載の表示装置。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、特許法第29条第2項の規定に基づくものであるところ、そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)に関する部分は、概略、次のとおりである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献3(特開2008-262133号公報)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献3には、保護フィルムの側面が並べて配列された単位プリズムによって形成されたプリズム面となっており、各単位プリズムは、配列方向に沿って対向する一対の傾斜面を有し、当該単位プリズムの長手方向に直交する断面において、一方の傾斜面が、保護フィルムのフィルム面に対して45°以上傾斜している構成が記載されているが、本願発明のように、各傾斜面が45°以上傾斜している構成についての記載はない。
しかしながら、本願発明の各傾斜面が保護フィルムのフィルム面に対して、45°以上傾斜している構成が、本願明細書の【0087】段落の、単位プリズムの断面形状が二等辺三角形状である場合には、頂角の角度は60°以上90°以下がさらに好ましいという記載から導かれたものであるとすると、引用文献3(【0007】、【0010】)にも、正面輝度を良好にすることや、頂点の角度は、50?85°が好ましい旨記載されており、引用文献3に記載された発明において、一対の傾斜面を45°以上とすることは、入出射光角度等に応じて当業者が適宜定め得る設計的事項に過ぎないから、本願発明は、当業者が引用文献3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである(以下、引用文献3を「引用例」という。)。

2.原査定の理由についての当審の判断
(1)引用例の記載事項及び引用発明
ア 本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の理由で引用された引用例(特開2008-262133号公報)には、次の(ア)ないし(オ)の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、PCモニタ等に用いられる液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源を備えた導光板を有する液晶表示装置では、通常、導光板からの出射光は斜め方向に向いているため、光路を正面方向に変更し、正面輝度を向上させる手段として、マイクロプリズムフィルム等を用いる方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋸歯構成を上面とする微細構造フィルム(マイクロプリズムレンズ)を鋸歯が直交するように2枚重ねたディスプレイ装置が提案されている。
【特許文献1】特表2005-509899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、1枚のマイクロプリズムレンズの厚みは通常50μm以上あり、特許文献1に記載のディスプレイ装置のように、マイクロプリズムフィルムを2枚重ねると、装置の薄型化が妨げられる。また、マイクロプリズムフィルムは、上に重ねる偏光板と、光路を調整する溝を有する面で接しており、フィルムを固定するために接着剤を使用して溝に接着剤が埋まると、光路の調整が困難となる。従って、マイクロプリズムフィルムと偏光板との界面に接着剤を使用できず、フィルムを固定することができないため、使用中にマイクロプリズムフィルムの位置がわずかにでもずれると光路の正確な制御が困難となる。
【0005】
本発明の課題は、装置の薄型化に対応可能であり、光路を正確に制御することができ、正面輝度が良好な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、光源を備えた導光板の上にマイクロレンズフィルム及びマイクロプリズムフィルムが順に積層されてなる液晶表示装置であって、前記マイクロプリズムフィルムの前記マイクロレンズフィルムと対面する側が、波型表面からなり、各波が頂点を光源側に位置する略直角三角形の二辺となる形状であることを特徴とする液晶表示装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液晶表示装置は、装置の薄型化に対応可能であり、光路を正確に制御することができ、良好な正面輝度が得られるという優れた効果を奏する。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の液晶表示装置は、光源を備えた導光板の上にマイクロレンズフィルム及びマイクロプリズムフィルムが順に積層されてなる液晶表示装置であって、マイクロプリズムフィルムのマイクロレンズフィルムと対面する側が、波型表面からなり、各波が頂点を光源側に位置する略直角三角形の二辺となる形状である点に大きな特徴を有する。これにより、導光板より出射した光線がマイクロレンズフィルムを透過した後、最高輝度方向が画面法線に対して10?20°の角度をもつという問題を解消することができる。
【0009】
マイクロプリズムフィルムの斜視図を図1(a)に、その波型表面の断面模式図を図1(b)に示す。αは、70?90°の略90°であり、各波はこの略直角αを含む略直角三角形状となる。
【0010】
波の頂点の角度βは、50?85°が好ましく、60?75°がより好ましい。
【0011】
プリズムの傾斜角度γは、5?40°が好ましく、15?30°がより好ましい。
【0012】
プリズムの傾斜角度γは、式(A):
sinγ=sin(γ+θ)÷n_(d) (A)
(式中、θはマイクロプリズムフィルムへの光の入射角、n_(d)はマイクロプリズムフィルムの屈折率を示す)
を満たす角度であることが好ましく、γのバラつき、即ち、γの最大値と最小値の差は5°以下が好ましい。
【0013】
また、マイクロプリズムフィルムへの光の入射角θは、5?30°が好ましい。
【0014】
溝の1ピッチPの大きさは、照度のムラを防止する観点から、液晶表示装置の画素ピッチの好ましくは1/3以下、より好ましくは1/5以下であることが望ましく、好ましくは5μm以上、より好ましくは10?30μmであることが望ましい。
【0015】
波間に形成される溝の形状は、直線であっても、曲線であってもよいが、生産性の観点から、図1(a)に示されているような直線であるのが好ましい。溝が直線である場合、液晶表示装置の画素配列方向に対して、光の干渉を防止する観点から、好ましくは5°以上、より好ましくは10?15°傾いていることが望ましい。
【0016】
マイクロプリズムフィルムの材質は、特に限定されないが、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレート樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0017】
マイクロプリズムフィルムの厚みTは、光透過率と薄型化、軽量化の観点から、5?200μmが好ましく、10?100μmがより好ましい。
【0018】
マイクロプリズムフィルムには、モアレ防止及び輝度平滑化の観点から、光拡散材が含有されていることが好ましい。
【0019】
光拡散材としては、アクリル、エポキシ、メラミン、スチレン等の樹脂粒子、ジルコニア、シリカ、ガラス、酸化チタン等の無機粒子等が挙げられ、これらの中では、分散性及び偏光特性の観点から、樹脂粒子が好ましい。
【0020】
光拡散材の平均粒子径は、0.5?100μmが好ましく、1?10μmがより好ましい。この平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0021】
光拡散材の含有量は、マイクロプリズムフィルム中、1?50重量%が好ましく、5?30重量%がより好ましい。」

(ウ)「【0033】
また、本発明の液晶表示装置が偏光板を備えている場合、偏光板を形成する透明保護フィルムが前記波型表面を有するマイクロプリズムフィルムであってもよい。即ち、偏光子が2枚の透明保護フィルムに挟まれた偏光板を備えている場合に、透明保護フィルムの一方がマイクロプリズムフィルムであってもよい。透明保護フィルムの材質としては、トリアセチルセルロース等が挙げられるが、例えば、透明保護フィルムの表面にエキシマレーザーによりエッチングしてプリズム形状を形成したフィルムをマイクロレンズフィルムとして用い、プリズム付き偏光板を作製することができる。マイクロプリズムと偏光板を一体化させることにより、マイクロプリズムフィルムを偏光板に接着させた場合と同様に、使用中にマイクロプリズムレンズがずれることがなく、光路をより正確に制御することができる。」

(エ)「【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
(1) マイクロプリズムフィルムの作製
紫外線硬化樹脂(旭電化社製アデカオプトマーKR400)を金型に塗布し、塗布面にポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステル社製ダイヤホイルMRX38)を貼り合わせ、ポリエステルフィルムを介して、紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた後、離型することにより、波型表面を有する紫外線硬化樹脂にポリエステルフィルムが積層されたマイクロプリズムフィルムを得た。フィルムの厚みは25μm、略直角の角度(α)は87°、頂点の角度(β)は73°、プリズムの傾斜角度(γ)は20°、屈折率(n_(d))は1.53、溝のピッチは30μmであった。
【0037】
(2) マイクロレンズフィルムの作製
エポキシ樹脂1(ジャパンエポキシレジン社製1010)、エポキシ樹脂2(日産化学社製TEPICの混合物)及びメチルエチルケトンを、93/7/100の重量比で混合した溶液を、ポリエステルフィルム(東レ社製ルミラー)上に塗布乾燥し、Bステージの熱硬化型エポキシ樹脂層を形成した。そして、金型でBステージの熱硬化型エポキシ樹脂層を、160℃で5分間熱プレスして、半球形状のマイクロレンズを表面に有するエポキシ樹脂にポリエステルフィルムが積層されたマイクロレンズフィルムを得た。フィルムの厚みは25μmであった。
【0038】
(3) 液晶表示装置の作製
以下の方法により、図2に示す構成の液晶表示装置を作製した。
エッジライト型の光源1を備えた導光板2上に、(2)で作製したマイクロレンズフィルム3を設置し、その上に(1)で作製したマイクロプリズムフィルム4をプリズム面をマイクロレンズフィルム3側に向け、各波の頂点が光源側に位置するように設置した。さらに、マイクロプリズムフィルム4の上に、偏光板5、液晶セル6、偏光板7を順じ重ね、マイクロプリズムフィルムは粘着剤(日東電工社製No.7)8で偏光板5に貼り合わせた。マイクロプリズムフィルムの溝と液晶表示装置の画素配列方向がなす角度は10°とした。また、導光板上にマイクロレンズフィルムを配置した時のマイクロプリズムフィルムへの光の入射角θは、約10°であった。
・・・(中略)・・・
【0041】
実施例3
(1) マイクロプリズムフィルムの作製
紫外線硬化樹脂(旭電化社製アデカオプトマーKR400)を金型に塗布し、塗布面にトリアセチルアセテートフィルム(富士フィルム社製)を貼り合わせ、トリアセチルアセテートフィルムを介して、紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化後、離型することにより、実施例1と同じ波型表面を有するマイクロプリズムフィルムを得た。
【0042】
(2) 液晶表示装置の作製
(1)で作製したマイクロプリズムフィルムと、別に用意したトリアセチルアセテートフィルムを用いて、偏光子を挟み、プリズム付き偏光板を作製した。マイクロレンズフィルム3と液晶セル6の間に、マイクロプリズムフィルム4と偏光板5の代わりに、上記プリズム付き偏光板10を用いた以外は、実施例1と同様にして、図4に示す構成の液晶表示装置を作製した。
【0043】
以上のようにして作製した、実施例1?3の液晶表示装置は従来より薄く、実施例1、2ではマイクロプリズムフィルムが粘着剤で固定されているため、またマイクロプリズムフィルムが偏光板と一体化しているため、使用中に正面輝度が変化することがなかった。」

(オ)図1及び図4は、それぞれ次のとおりのものであり、特に、図1(b)からは、マイクロプリズムフィルムにおける単位プリズムの断面が、頂角がβ、底角の一つが略直角であるα、底角の他の一つがγである略直角三角形であることがみてとれる。
【図1】


【図4】


イ 段落【0036】(上記ア(エ)参照。)の「波形表面」と段落【0038】(上記ア(エ)参照。)の「プリズム面」とが同じ面であることは当業者には明らかであるところ、上記ア(ア)ないし(オ)に摘記した事項に鑑みて、引用例には、「実施例3」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「液晶表示装置であって、
(1) 紫外線硬化樹脂(旭電化社製アデカオプトマーKR400)を金型に塗布し、塗布面にトリアセチルアセテートフィルム(富士フィルム社製)を貼り合わせ、トリアセチルアセテートフィルムを介して、紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化後、離型することにより、屈折率(n_(d))が1.53であり、単位プリズムの断面が、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の略直角三角形からなり、溝のピッチが30μmの波型表面を有するマイクロプリズムフィルムを作製し、
(2) エポキシ樹脂1(ジャパンエポキシレジン社製1010)、エポキシ樹脂2(日産化学社製TEPICの混合物)及びメチルエチルケトンを、93/7/100の重量比で混合した溶液を、ポリエステルフィルム(東レ社製ルミラー)上に塗布乾燥し、Bステージの熱硬化型エポキシ樹脂層を形成し、金型でBステージの熱硬化型エポキシ樹脂層を、160℃で5分間熱プレスして、半球形状のマイクロレンズを表面に有するエポキシ樹脂にポリエステルフィルムが積層された、厚み25μmのマイクロレンズフィルム3を作成し、
(3) 上記工程(1)で作製したマイクロプリズムフィルムと、別に用意したトリアセチルアセテートフィルムを用いて、偏光子を挟み、プリズム付き偏光板10を作製し、
エッジライト型の光源1を備えた導光板2上に、上記工程(2)で作製したマイクロレンズフィルム3を設置し、当該マイクロレンズフィルム3の上に、上記プリズム付き偏光板10を波型表面、すなわちプリズム面をマイクロレンズフィルム3側に向け、各波の頂点、すなわち各単位プリズムの頂点が光源側に位置するように設置し、さらに、上記プリズム付き偏光板10の上に、液晶セル6、偏光板7を順次重ね、その際、マイクロプリズムフィルムの溝と液晶表示装置の画素配列方向がなす角度を10°とし、
上記プリズム付き偏光板10への光の入射角θが約10°である、
液晶表示装置。」

(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 一致点及び相違点
(ア)引用発明の「『エッジライト型の光源1』及び『導光板2』」、「偏光子」、「『単位プリズムの断面が、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の略直角三角形からなり、溝のピッチが30μmの波型表面』、『プリズム面』」及び「液晶表示装置」は、それぞれ、本願発明の「エッジライト型の面光源装置」、「偏光子」、「プリズム面」及び「表示装置」に相当する。
また、引用発明の「プリズム付き偏光板10」は、その上に、「液晶セル6、偏光板7を順次重ね」たものであるから、本願発明の「下偏光板」に相当するとともに、引用発明の「『プリズム付き偏光板10』、『液晶セル6、偏光板7を順次重ね』たもの」は、本願発明の「下偏光板を備える液晶表示パネル」に相当する。
(イ)引用発明の「液晶表示装置」(本願発明の「表示装置」に相当。以下、「」の後に()が続くときは、「」内に引用発明の構成が、()内にそれと相当関係にある本願発明の構成が、各々記される。)は、「エッジライト型の光源1を備えた導光板2」(エッジライト型の面光源装置)上に、マイクロレンズフィルム3を設置し、当該マイクロレンズフィルム3の上に、「プリズム付き偏光板10」(下偏光板)をプリズム面をマイクロレンズフィルム3側に向け、各波の頂点が光源側に位置するように設置し、さらに、上記「プリズム付き偏光板10」(下偏光板)の上に、「液晶セル6、偏光板7を順次重ね」たものであるから、上記「プリズム付き偏光板10、液晶セル6、偏光板7を順次重ねたもの」(下偏光板を備える液晶表示パネル)が背面側から「エッジライト型の光源1及び導光板2」(エッジライト型の面光源装置)により照明されていることは明らかである。
以上のことからみて、本願発明の「表示装置」と引用発明の「液晶表示装置」とは、「下偏光板を備える液晶表示パネルと、液晶表示パネルを背面側から照明するエッジライト型の面光源装置と、を備え」る点において一致する。
(ウ)引用発明の「プリズム付き偏光板10」は、マイクロプリズムフィルムと、別に用意したトリアセチルアセテートフィルムを用いて、「偏光子」(偏光子)を挟み、プリズム付き偏光板10を作製したものである。
ここで、引用例の段落【0033】(上記(1)ア(ウ)参照。)の「偏光板を形成する透明保護フィルムが前記波型表面を有するマイクロプリズムフィルムであってもよい。即ち、偏光子が2枚の透明保護フィルムに挟まれた偏光板を備えている場合に、透明保護フィルムの一方がマイクロプリズムフィルムであってもよい。」との記載からみて、引用発明のマイクロプリズムフィルムが透明保護フィルムの役割を果たしていることは明らかである。そうすると、引用発明の「マイクロプリズムフィルム」は、本願発明の「保護フィルム」に相当するといえる。
また、当該マイクロプリズムフィルムは、その「プリズム面」(プリズム面)がマイクロレンズフィルム3側に向いているから、偏光子の入光側の透明保護フィルムに代わるものであることも明らかである。
以上のことからみて、引用発明の「プリズム付き偏光板10」と、本願発明の「下偏光板」とは、「偏光子と、前記偏光子の入光側から前記偏光子に接着した保護フィルムと、を備」える点で一致する。
(エ)また、引用発明の「プリズム付き偏光板10」は、「マイクロプリズムフィルム」(保護フィルム)と、別に用意したトリアセチルアセテートフィルムを用いて、「偏光子」(偏光子)を挟むことにより作製したものであり、上記「マイクロプリズムフィルム」(保護フィルム)は、その「プリズム面」(プリズム面)がマイクロレンズフィルム3側に向いている。ここで、引用発明の「プリズム面」は、「単位プリズムの断面が、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の略直角三角形からなり、溝のピッチが30μmの波型表面」であるから、「単位プリズム」が並べて配置されたものであることは明らかである(これは、引用例の図1(上記(1)ア(オ)参照。)からも見てとれることである。)。また、引用発明の「単位プリズム」は、本願発明の「単位プリズム」に相当するといえる。
以上のことからみて、引用発明の「マイクロプリズムフィルム」と、本願発明の「保護フィルム」とは、「一側面に対向する他側面」が、「並べて配置された単位プリズムによって形成されたプリズム面となって」いる点において一致する。
(オ)また、引用発明の「単位プリズム」(単位プリズム)は、その「断面が、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の略直角三角形」からなり、当該「単位プリズム」が並んで「溝のピッチが30μmの波型表面」となったものが引用発明の「プリズム面」であり、また、引用発明の「マイクロプリズムフィルム」(保護フィルム)の「一側面に対向する他側面」は、「並べて配置された単位プリズムによって形成されたプリズム面となって」いる。
以上のことからみて、引用発明の複数の「単位プリズム」と、本願発明の複数の「単位プリズム」とは、「保護フィルムのフィルム面と平行な配列方向に沿って並べられ」る点で一致するとともに、引用発明の各「単位プリズム」と、本願発明の各「単位プリズム」とは、「前記フィルム面と平行であるとともに前記配列方向と交差する方向に延」びる点で一致する。
(カ)引用発明の「単位プリズム」(単位プリズム)は、その「断面が、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の略直角三角形」からなり、これは、引用例の段落【0008】(上記(1)ア(イ)参照。)の「各波が頂点を光源側に位置する略直角三角形の二辺となる形状」に相当する。そして、上記「略直角三角形の二辺」は、頂角(β)(=73°)を挟む二辺であるから、本願発明の「一対の傾斜面」に相当する。
以上のことからみて、引用発明の各「単位プリズム」と、本願発明の各「単位プリズム」とは、「配列方向に沿って対向する一対の傾斜面を有」する点で一致する。
(キ)引用発明の「マイクロプリズムフィルム」(保護フィルム)は、紫外線硬化樹脂を金型に塗布し、塗布面にトリアセチルアセテートフィルムを貼り合わせ、トリアセチルアセテートフィルムを介して、紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化後、離型することにより、屈折率(n_(d))が1.53であり、単位プリズムの断面が、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の略直角三角形からなり、溝のピッチが30μmの波型表面を有するフィルムとして作製したものであるから、「波型表面」(プリズム面)、すなわち「一側面に対向する他側面」がトリアセチルアセテートフィルムに貼り合わせた紫外線硬化樹脂の表面であり、当該トリアセチルアセテートフィルムにおける紫外線硬化樹脂を貼り合わせた面とは反対側の面が「一側面」である。そうすると、当該「一側面」は、トリアセチルアセテートフィルムの一面であるから、平坦面であることは明らかである。また、当該「一側面」が偏光子の側を向いた面であることも明らかである。
以上のことからみて、引用発明の「マイクロプリズムフィルム」と、本願発明の「保護フィルム」とは、「少なくとも偏光子に対面するようになる一側面」が「平坦であ」る点で一致する。
(ク)上記(ア)ないし(キ)からみて、本願発明と引用発明とは、
「下偏光板を備える液晶表示パネルと、
液晶表示パネルを背面側から照明するエッジライト型の面光源装置と、を備え、
前記下偏光板は、偏光子と、前記偏光子の入光側から前記偏光子に接着した保護フィルムと、を備え、
前記保護フィルムの一側面に対向する他側面は、並べて配置された単位プリズムによって形成されたプリズム面となっており、
複数の単位プリズムが、前記保護フィルムのフィルム面と平行な配列方向に沿って並べられ、各単位プリズムは、前記フィルム面と平行であるとともに前記配列方向と交差する方向に延び、
各単位プリズムは、前記配列方向に沿って対向する一対の傾斜面を有し、
少なくとも前記偏光子に対面するようになる前記保護フィルムの前記一側面が平坦である、
表示装置。」である点で一致し、次の点において相違する。

相違点1:
前記「保護フィルム」が、
本願発明では、「樹脂材料からなる主部と、前記主部中に分散された拡散成分と、を備え」るのに対し、
引用発明では、トリアセチルアセテートフィルムと紫外線硬化樹脂とからなるが、トリアセチルセルロースフィルムも、紫外線硬化樹脂も、その中に分散された拡散成分を備えていない点。

相違点2:
前記「保護フィルム」が、
本願発明では、「単位プリズムの一方の傾斜面を介して入射した光を単位プリズムの他方の傾斜面で全反射することで、入射光の進行方向を偏向するよう構成されている」のに対し、
引用発明では、そのような特定がなされていない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、相違点2について判断する。
(ア)引用発明では、プリズム付き偏光板10の波型表面の各波が、頂点を光源側に位置する略直角三角形の二辺となる形状となっており、当該略直角三角形は、頂角(β)が73°、底角の一つ(α)が87°、底角の他の一つ(γ)が20°の三角形である。また、プリズム付き偏光板10への光の入射角θが約10°である。このとき、図4(上記(1)ア(オ)参照。)に示された光源1、導光板2及びプリズム付き偏光板10の配置関係からみて、光(導光板2からの出射光)の入射角θは、図1(b)(上記(1)ア(オ)参照。)に示されているように、画面法線に対して時計回り方向の角度であることが明らかである。
そうすると、引用発明において、プリズム付き偏光板10へ約10°の入射角θで上記略直角三角形の二辺のいずれか一辺へ入射した光が、屈折して他の一辺に到達することが幾何光学的にあり得ないことは当業者には明らかである。
また、引用例の段落【0009】ないし【0012】の記載(上記(1)ア(イ)参照。)に基づいて、引用発明のプリズム付き偏光板10の略直角三角形の角度α、β及びγ並びに入射角θを、それぞれ、70?90°、50?85°及び5?40°並びに5?30°の範囲内で適宜変更したとしても、やはり、上記略直角三角形の二辺のいずれか一辺へ入射した光が、屈折して他の一辺に到達することが幾何光学的にあり得ないことは当業者には明らかである。
さらに、引用発明は、光源を備えた導光板を有する液晶表示装置(通常、導光板からの出射光は斜め方向に向いている)において、光路を正確に制御して、良好な正面輝度を得ることを課題としている(上記(1)ア(ア)に摘記した引用例の段落【0002】、【0005】及び【0007】を参照。)から、プリズム付き偏光板10の略直角三角形の角度α、β及びγ並びに入射角θを、引用例の段落【0009】ないし【0012】に記載された好ましいとされる範囲外の値とすることには動機付けがないというべきである。
(イ)上記(ア)からみて、当業者が、引用発明において、プリズム付き偏光板10の「マイクロプリズムフィルム」(保護フィルム)を、「単位プリズムの一方の傾斜面を介して入射した光を単位プリズムの他方の傾斜面で全反射することで、入射光の進行方向を偏向するよう構成」すること、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成となすことは、動機付けがないのだから、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

ウ 小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明が、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないのであるから、本願発明の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付した本願の請求項2ないし7に係る発明も、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、次のとおりである。

理由1の(1)
本件補正前の請求項1の「各傾斜面は、保護フィルムのフィルム面に対して、45°以上傾斜し」という事項は、当初明細書等に記載されていない事項(新規事項)を含んでおり、したがって、平成27年12月16日に提出した手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由1の(2)
本件補正前の請求項1に係る発明(下偏光板用の保護フィルムの発明)において、「単位プリズムの一方の傾斜面を介して入射した光を単位プリズムの他方の傾斜面で全反射することで、入射光の進行方向を偏向する」という事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲内でないことは明らかであるから、平成27年12月16日に提出した手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由2の(1)
本件補正前の請求項1において、「偏光子と接着されて液晶表示パネル用の下偏光板をなすようになる下偏光板用の保護フィルム」という事項が、「保護」フィルムと称される光学フィルムのいかなる物としての構造・特性等を規定しているのかが不明であり、請求項1ないし12に係る発明は、いずれも明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2の(2)
本件補正前の請求項4は、「前記一側面に対する他側面」(プリズム面)に、「前記拡散成分の存在に起因して形成された凹凸が設けられている」、「請求項1?3のいずれか一項」に記載の「保護フィルム」であるが、本件補正前の請求項2の保護フィルムにおいて、プリズム面に拡散成分の存在に起因して形成された凹凸が設けられているものは、本願の明細書、特許請求の範囲及び図面のどこにも記載されていない。また、本件補正前の請求項1の保護フィルムについても、プリズム面に凹凸があってもよい旨の記載は本願の明細書、特許請求の範囲及び図面のどこにもない。したがって、本件補正前の請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件補正前の請求項4の記載を直接又は間接的に引用する本件補正前の請求項5ないし12に係る発明も、発明の詳細な説明に記載したものでないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2の(3)
本件補正前の請求項5の「賦型により形成された凹凸」との記載が、「凹凸」という物のいかなる構造・特性等を規定しているのか不明である。したがって、本件補正前の請求項5に係る発明は、明確でなく、本件補正前の請求項5の記載を直接又は間接的に引用する本件補正前の請求項6ないし12に係る発明も、明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.当審拒絶理由についての当審の判断
(1)本件補正
平成29年2月28日になされた手続補正(本件補正)は、明細書の発明の名称及び特許請求の範囲を対象とし、次のアないしオの補正事項からなるものである。
ア 本件補正前の請求項9、11及び12に特定されていた事項を本件補正前の請求項1に加え、発明の対象を「下偏光板用の保護フィルム」から「表示装置」に変更するとともに、この補正に伴った補正をその他の請求項に対して行い、また、明細書の発明の名称を「保護フィルム、下偏光板、液晶表示パネル及び表示装置」から「表示装置」に変更する補正
イ 願書に最初に添付した明細書の段落【0086】等の記載に基づき、本件補正後の請求項1において、面光源装置がエッジライト型であることを特定する補正
ウ 本件補正前の請求項1における「当該単位プリズムの長手方向に直交する断面において、各傾斜面は、保護フィルムのフィルム面に対して、45°以上傾斜し」という事項を削除する補正
エ 本件補正前の請求項4及び5を削除する補正
オ 本件補正前の請求項9、11及び12を削除する補正

(2)当審拒絶理由についての判断
上記(1)ウの補正により、本件補正前の請求項1における「当該単位プリズムの長手方向に直交する断面において、各傾斜面は、保護フィルムのフィルム面に対して、45°以上傾斜し」という事項が削除されたので、当審拒絶理由1の(1)が対象とする新規事項が存在しなくなった。
また、上記ア、イ及びオの補正により、本件補正後の請求項1に係る発明が「表示装置」の発明となり、また、面光源装置がエッジライト型であることが特定されたことにより、当審拒絶理由1の(2)が対象とする「単位プリズムの一方の傾斜面を介して入射した光を単位プリズムの他方の傾斜面で全反射することで、入射光の進行方向を偏向する」という事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとなり、また、本件補正前の請求項1の「偏光子と接着されて液晶表示パネル用の下偏光板をなすようになる下偏光板用の保護フィルム」が「下偏光板は、偏光子と、前記偏光子の入光側から前記偏光子に接着した保護フィルムと、を備え」となったことにより、当審拒絶理由2の(1)で指摘した「保護」フィルムと称される光学フィルムのいかなる物としての構造・特性等が規定されているのかが不明であるという不備が解消した。
さらに、上記エの補正により、当審拒絶理由の2(2)及び(3)で記載不備があると指摘した本件補正前の請求項4及び5が削除された。

(3)小括
したがって、本件補正後の請求項1には、新規事項は存在せず、また、本件補正後の請求項1に係る発明は明確である。また、本件補正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件補正後の請求項2ないし7にも、新規事項は存在せず、これら請求項に係る発明も明確である。
さらに、記載不備のあった本件補正前の請求項4及び5は削除された。
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-12 
出願番号 特願2011-158337(P2011-158337)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 55- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 西村 仁志
清水 康司
発明の名称 表示装置  
代理人 永井 浩之  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 佐藤 泰和  

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