• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1326922
異議申立番号 異議2016-700462  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-23 
確定日 2017-02-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5821860号発明「偏光光照射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5821860号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5821860号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5821860号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成25年1月21日に特許出願され、平成27年10月16日に特許の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人関 豊美子により特許異議の申立てがなされ、平成28年8月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月28日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年12月5日に特許異議申立人関 豊美子から意見書が提出され、同年12月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月16日に意見書の提出及び訂正請求があったものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年1月16日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲について、請求項1?2からなる一群の請求項に関して以下のとおりに訂正することを求めるものである。
なお、平成28年10月28日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項に規定により、取り下げられたものとみなす。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「上記偏光素子は透明基板上にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって、」とあるのを、「上記偏光素子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって、」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過するフィルタを、上記外壁の外側に設け、」とあるのを、「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過し上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け、」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記フィルタとの間にエアーを流すエアー供給機構」とあるのを、「上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記石英板との間にエアーを流すエアー供給機構」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「上記フィルタ」とあるのを、「上記石英板」に訂正する。

オ 訂正事項5
明細書、発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段】【0012】を、次のとおり訂正する。
「上記課題を解決するため、ワイヤーグリッド偏光素子を備えた偏光光照射装置において、ワイヤーグリッド偏光素子に対して光源とは反対側(被照射物側)に、石英板を設ける。
さらに、ワイヤーグリッド偏光素子と石英板との間に、ワイヤーグリッド偏光素子の白濁を防止するとともにワイヤーグリッド偏光素子やフィルタを冷却するエアーを流す。
すなわち、本発明のある態様によれば、線状の光源と、該光源からの光を偏光する偏光素子と、上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において、上記偏光素子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって、上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過し上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け、上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記石英板との間にエアーを流すエアー供給機構を備えることを特徴とする偏光光照射装置が提供される。」

カ 訂正事項6
明細書、発明の詳細な説明の【発明の効果】【0013】を、次のとおり訂正する。
「ワイヤーグリッド偏光素子の光源とは反対側(被照射物側)に石英板を設けたので、偏光光照射装置の外からでは、ワイヤーグリッド偏光素子に指などが触れにくくなり、グリッドの破損を防ぐことができる。
また、ワイヤーグリッド偏光素子に対して被照射物(ワーク)が配置される側に石英板を設けるので、ワイヤーグリッド偏光素子の表面にシロキサン化合物が付着しにくくなり、ワイヤーグリッド偏光素子に白濁が生じにくくなる。さらに、ワイヤーグリッド偏光素子と石英板との間にエアーを流すことにより、ワイヤーグリッド偏光素子の表面にシロキサン化合物がより付着しにくくなり、ワイヤーグリッド偏光素子に白濁が生じにくくなる。」

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1について
(ア)上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ワイヤーグリッド偏光素子」について、「上記外壁の上記光出射口に設けられ」ることを限定し、「ワイヤーグリッド」について、透明基板上の「上記光源に対して反対側の表面」に形成したことを限定するものであるから、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)上記訂正事項1に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0028】には、「図4は、本発明の偏光光照射装置のランプハウス(灯具)の概略構成を示す図である。・・・図1の例の構成との違いは、偏光素子ユニット80をランプハウス1の光出射口70の位置に配置し、フィルタユニット90をランプハウス1の外壁60の外側に配置したことである。」と記載されており、【0017】には、「偏光素子ユニット80のワイヤーグリッド偏光素子81は、光配向処理を行うための波長の光を透過する透明基板(ガラス基板)の一方の表面に、ワイヤーグリッド(以下グリッドともいう)Gを形成したものである。ここでグリッドGの形成面をランプ11とは反対側(ワーク側)に向けて配置する。」と記載され、さらに図4には、上記訂正事項1に係る構成が図示されていることから、「ワイヤーグリッド偏光素子」が、「上記外壁の上記光出射口に設けられ」ること、「ワイヤーグリッド」を、透明基板上の「上記光源に対して反対側の表面」に形成することは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
よって、上記訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

イ 訂正事項2について
(ア)上記訂正事項2は、訂正前の請求項1の「フィルタ」について、「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板」であることに限定し、上記外壁の外側に、「上記外壁の上記光出射口から離隔して」設けることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)上記訂正事項2に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0020】には、「・・・フィルタ板91としては、偏光する紫外線の波長を透過する石英板を使用することができる。」と記載され、【0021】には、「・・・偏光板81とフィルタ板91を接触させて重ねると、偏光板81のグリッドGが傷む可能性があるので、通風路形成部材93により、両者を5mmから100mm程度の間隔をあけて配置する。」と記載されている。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0010】には、「また、このような偏光光照射装置が配置される、半導体や液晶表示素子の工場のクリーンルームの雰囲気には、シロキサン化合物と呼ばれる物質が含まれており、製造上のトラブルや収率の悪化の原因になることが知られている・・・ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス基板等の表面に微細なグリッドを形成したものであり、この面にシロキサン化合物が付着すると簡単にクリーニングすることができない。」と記載され、【0023】には、「偏光板81とフィルタ板91との間隔は、狭いとその間を冷却風が流れにくくなり、偏光板81やフィルタ板91がランプ11からの熱で加熱される可能性があり、十分な冷却風が流れる間隔を設ける。しかし、グリッドGの保護のためには、偏光板81のグリッドG形成面に指が届かないような間隔にすることが望ましい。」と記載され、【0025】には、「また、ワイヤーグリッド偏光素子81に対してワークW(被照射物)が配置される側にフィルタ板91を設けているので、ワイヤーグリッド偏光素子81の表面にシロキサン化合物が直接触れて付着することが少なくなる。これによりワイヤーグリッド偏光素子81に白濁が生じにくくなる。」と記載され、【0029】には、「・・・また、偏光素子ユニット80のワーク側(光出射側)にフィルタユニット90が設けられているので、指などが直接偏光板81に触れることはなくグリッドGの破損を防ぐことができる。」と記載されていることから、「フィルタ」を、「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板」とすること、「フィルタ」である「石英板」を、上記外壁の外側に、「上記外壁の上記光出射口から離隔して」設けることは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
よって、上記訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

ウ 訂正事項3について
(ア)上記訂正事項3は、「フィルタ」を「石英板」とした上記訂正事項2に係る訂正に伴って、「エアー供給機構」が備えられる位置が、「上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記フィルタとの間」であるものから「上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記石英板との間」であるものへと用語を整合させるものであるから、上記訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

エ 訂正事項4について
(ア)上記訂正事項4は、請求項1において「フィルタ」を「石英板」と訂正した上記訂正事項2、3に係る訂正に伴って、請求項1を引用する請求項2においても「フィルタ」を「石英板」へと用語を整合させるものであるから、上記訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

オ 訂正事項5、6について
(ア)上記訂正事項5、6は、請求項1及び2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段】【0012】、【発明の効果】【0013】の記載との整合を図るためのものであって、上記訂正事項5、6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項5、6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項5、6は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当しない。

カ 訂正における一群の請求項の存否
訂正前の請求項1及び2は、請求項2が請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、本件特許の請求項1及び2に係る訂正の請求は一群の請求項として請求された訂正である。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて

(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

請求項1
「線状の光源と、該光源からの光を偏光する偏光素子と、上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において、
上記偏光素子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって、
上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過し上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け、
上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記石英板との間にエアーを流すエアー供給機構を備えることを特徴とする偏光光照射装置。

請求項2
「上記線状の光源の長さ方向に対して垂直で光照射面に対して平行な方向である幅方向で見た際、上記ワイヤーグリッド偏光素子は上記石英板よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の偏光光照射装置。」

(2)取消理由の概要
請求項1及び2に係る特許に対して、平成28年8月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨、同年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、それぞれ次の通りである。

ア 平成28年8月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨

(ア)請求項1、2に係る特許は、下記の点で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。



a.請求項1に係る発明は、(1)「ワイヤーグリッド偏光素子」を外壁の光出射口に設けると共に、「フィルタ」を外壁の外側に設けたもの、(2)「ワイヤーグリッド偏光素子」を外壁の外側に設けると共に、「フィルタ」を外壁の外側に設けたもの、あるいは(3)「ワイヤーグリッド偏光素子」を外壁の内側に設けると共に、「フィルタ」を外壁の外側に設けたものを包含している。
しかしながら、技術常識を参酌したとしても、発明の詳細な説明において、課題を解決するものとして開示されているものは、「フィルタを外壁の外側に設けると共に、ワイヤーグリッド偏光素子を外壁の光出射口に設けた」ものに限られるべきというべきであって、上記(2)のものや、上記(3)のものまでもが開示されているとは認められず、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。
よって、請求項1,2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

b.請求項1の記載において、「フィルタを、上記外壁の外側に設け」るということには、フィルタを、光出射口を覆うように、外壁の外面に取り付けたものを包含するのか否か不明であるので、請求項1,2に係る発明は明確でない。

(イ)請求項1、2に係る特許は、下記引用例1?4に記載された発明に基づき、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、取り消されるべきものである。

(引用例一覧)
引用例1:特許第5056991号公報
(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
引用例2:特開2007-226097号公報
(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
引用例3:特開2004-144884号公報
(特許異議申立人が提出した甲第4号証)
引用例4:特表2001-512850号公報
(特許異議申立人が提出した甲第3号証)

イ 平成28年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨

(ア)請求項2に係る特許は、下記の点で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。



a.請求項2の「上記フィルタ」に関し、請求項2において引用する請求項1には、「フィルタ」が記載されておらず、「(上記)フィルタ」が何を指すのか不明である。

(3)引用例の記載

ア 引用例1に記載された事項
引用例1には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などに所定の波長の偏光光を照射して配向を行う偏光光照射装置に関する。 」

(イ)「【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを始めとする液晶表示素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などの配向処理に関し、紫外線領域の波長の偏光光を照射し配向を行なう、光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきた。以下、光により配向を行う配向膜や、配向層を設けたフィルムなど、光により配向特性が生じる膜や層を総称して光配向膜と呼ぶ。
光配向膜は、液晶パネルの大型化と共に、例えば一辺が2000mm以上の四角形というように大面積化している。
上記のような大面積の光配向膜に対して光配向を行うために、棒状のランプとワイヤーグリッド状のグリッドを有する偏光素子(以下ワイヤーグリッド偏光素子という)を組み合わせた偏光光照射装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
光配向膜用の偏光光照射装置において棒状ランプは、発光長が比較的長いものを作ることができる。そのため、配向膜の幅に応じた発光長を備えた棒状ランプを使用し、該ランプからの光を照射しながら、配向膜をランプの長手方向に直交する方向に移動させれば、広い面積の配向膜を比較的短時間で光配向処理を行なうことができる。
【0003】
図5に、線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド偏光素子を組み合わせた偏光光照射装置の構成例を示す。
同図において、光配向膜であるワーク4は、例えば視野角補償フィルムのような帯状の長尺ワークであり、送り出しロールR1から送り出され、図中矢印方向に搬送され、後述するように偏光光照射により光配向処理され、巻き取りロールR2により巻き取られる。
偏光光照射装置の光出射部2は、光配向処理に必要な波長の光(紫外線)を放射する棒状ランプ21、例えば高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプと、棒状ランプ21からの紫外線をワーク4に向けて反射する樋状の反射ミラー22備える。上記のように、棒状ランプ21の長さは、発光部が、ワーク4の搬送方向に直交する方向の幅に対応する長さを備えたものを使用する。光出射部2は、ランプ21の長手方向がワーク4の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置する。
【0004】
光出射部2の光出射側には、偏光素子であるワイヤーグリッド偏光素子1が設けられる。光出射部2からの光はワイヤーグリッド偏光素子1により偏光され、偏光光照射領域が形成される。ワーク4は光出射部2の下の偏光光照射領域を通過することにより、光配向処理が行われる。
光路中にワイヤーグリッド偏光素子を挿入すると、グリッドの長手方向に平行な偏光成分は大部分反射または吸収され、直交する偏光成分は通過する。したがって、ワイヤーグリッド偏光素子を通過した光は、偏光素子のグリッドの長手方向に直交する方向の偏光軸を有する偏光光となる。
【0005】
光配向に使用される紫外線を偏光するワイヤーグリッド偏光素子は、微細な加工技術が必要であり、半導体製造に使われるリソグラフィ技術やエッチング技術を利用して作られる。そのため、大型のものができず、現状製作できる大きさはφ300mm程度までである。
そこで、発光長の長い棒状の光源、例えば長さ1mから3mといった棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプに応じた、大きな(長い)偏光素子が必要な場合は、ガラス基板から切り出した矩形のワイヤーグリッド偏光素子を複数、グリッドの方向をそろえ、フレームの中にランプの長手方向に沿って並べ、一つの偏光素子として使用することが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-145381号公報
【特許文献2】特許第4506412号公報
【特許文献3】特許第4424296号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】竹田、野中、藤本「クリーンルーム環境問題 シロキサン化合物」クリーンテクノロジー 1998年4月号34ページ 」

(ウ)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6は、図5に示した偏光光照射装置の灯具(ランプハウス)の構成例を示す図であり、同図はランプの長手方向に対して直交する方向の断面図を示す。
ランプハウス10には、棒状のランプ21と、断面が放物線状である樋状の反射ミラー22から構成される光出射部2を有する光源部11が設けられ、その上部に、ランプ点灯時にランプや反射ミラーを冷却する冷却風の温度を下げる水冷式の冷却機(ラジエータ)20と、冷却風を発生させる送風機(ブロア)30とが配置される。
光源部11は隔壁40により囲まれており、その外側をランプハウス10の外壁(筐体)60が覆っている。ランプハウス10の外壁60と上記の隔壁40との間には隙間が設けられている。この隙間は、冷却風が通過する通風路50となる。また、ランプハウス10の外壁60には、光源部11からワーク4に向かって照射される光が通過する光出射窓70が形成されている。この光出射窓70には、通過する光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子1を有する偏光素子ユニット80が取り付けられる。
【0009】
図7に偏光素子ユニットの構造を示す。
偏光素子ユニット80は、複数のワイヤーグリッド偏光素子(以下偏光板ともいう)1を、棒状ランプ21の長手方向に沿ってフレーム(保持枠)81内に並べて保持したものである。偏光板と偏光板の間には、1mmから2mm程度の隙間を持たせる必要がある。それは、偏光板どうしのグリッドの方向が平行になるように、各偏光板をその平面内で回転させて位置調整を行わなければならないからである。偏光板と偏光板の間の隙間は、偏光板が回転移動するための調整しろとなる。そして、この隙間は、ここから非偏光光が漏れないように、隙間の幅と偏光板の辺の長さに合わせた遮光板82により覆われている。
【0010】
図6に戻り、ランプ点灯時のランプ冷却風の流れについて説明する。
ブロア30から送り出された冷却風は、隔壁40と外壁60との間の通風路50を通り、偏光素子ユニット80と反射ミラー22との間から取り込まれてランプ21と反射ミラー22を冷却する。
ランプ21および反射ミラー22を冷却し温度が高くなった冷却風は、反射ミラー22の上部に形成された冷却風通風孔41を介してラジエータ20に流れ込んで冷却され、ブロア30により再びランプ21と反射ミラー22を冷却するように送り出される。即ち冷却風はランプハウス内を循環している。
【0011】
図8は、冷却風を循環させる偏光光照射装置の他の構成例を示す図である。なお、同図(a)は、棒状ランプの長手方向に対して直交する方向の断面図であり、同図(b)は、同図(a)の装置を上から見た図である。
偏光光照射装置は、棒状ランプ21や樋状の反射ミラー22から構成される光源部11と、送風機30や冷却機20を内蔵する補機90から構成され、光源部11と補機90は、ダクト91,92で接続されている。また、補機90の送風機(ブロア)30と冷却機(ラジエータ)20はダクト93により接続されている。
光源部11の光出射部には、光出射窓70が形成され、この光出射窓70には、ワイヤーグリッド偏光素子1を有する偏光素子ユニット80が取り付けられる。
【0012】
ブロア30から送り出された冷却風は、補機90からダクト91を通って光源部11に送り込まれ、ランプ21と反射ミラー22および光源部11全体を冷却し、光源部11から排気される。光源部11から排気された冷却風は、ダクト92を通って、補機90に送られ、冷却機20に入って冷却される。冷却された冷却風は送風機30に入り、再びダクト91を通って光源部11に送られる。このように、冷却風は光源部11と補機90との間を循環する。
上記ランプハウス内で冷却風を循環させる光照射器については、例えば特許文献3に記載されている。
【0013】
このような、閉じた空間であるランプハウス内で冷却風を循環させる光照射器においては、基本的にはランプハウスの内と外とでは、エアー(空気)のやり取りは生じないはずである。しかし、このような冷却風をブロアによりランプとミラー側から引き込むような構造のランプハウスにおいては、ランプハウス内の圧力は均一ではない。図6、図8に示す装置においては、ブロアの吹き出し口付近の圧力は高く、ランプハウス外の周辺雰囲気に対して陽圧になる。
一方、冷却風が引き込まれる付近、例えばランプ21と偏光素子ユニット80との間は圧力が低く、ランプハウス外の周辺雰囲気に対して負圧になる。そのため、図6、図8に示したランプハウスにおいては、上記した偏光素子ユニット80に並べた偏光素子1どうしの隙間から、外気がランプハウス内に引き込まれることとなる。
【0014】
このような偏光光照射装置が配置される、半導体や液晶表示素子の工場のクリーンルームの雰囲気には、シロキサン化合物と呼ばれる物質が含まれており、製造上のトラブルや収率の悪化の原因になることが知られている(例えば非特許文献1参照)。
シロキサン化合物は例えばレジストの現像液などに多く含まれている。シロキサン化合物は、紫外線が照射されると光化学反応により白い粉を生じ、紫外線照射装置内部の光学素子の表面を白濁させる。
そのため、図6、図8に示す偏光光照射装置のランプハウスにおいて、シロキサン化合物が外気とともに偏光板どうしの隙間から引き込まれ、ランプから放射された紫外線と反応して、ワイヤーグリッド偏光素子のランプ側の表面を白濁させるという問題が生じた。偏光板の表面が白濁すると、紫外線の透過率が低下し、ワークに照射する偏光光の照度が低下する。
ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス基板等の表面に微細なグリッドを形成したものであり、この面にシロキサン化合物が付着すると簡単にクリーニングすることができない。
【0015】
この問題を防ぐ方法の一つとして、偏光素子ユニットに並べた偏光板の境界部分の隙間を樹脂などで埋めて密閉構造にすることが考えられる。しかし、上記したように、この隙間は、偏光板の互いのグリッドの方向をそろえる調整をするために必要であり、密閉構造にすることができない。
本発明は、上記問題を解決するものであって、本発明の目的は、複数の偏光板を並べて配置した偏光素子ユニットを用いた偏光光照射装置において、複数の偏光板の境界に隙間を持たせた状態であっても、この隙間から外気がランプハウス内に引き込まれないようにすることである。」

(エ)「【発明の効果】
【0017】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
樋状ミラーと上記偏光素子の間の空間にガス(エアー)を供給するガス供給手段を設けたので、ランプハウスの内部、特に偏光素子ユニットのランプ側の空間が陽圧となるため、偏光素子ユニットに並べた複数の偏光素子の間に隙間を設けていても、そこから外気がランプハウス内に引き込まれない。したがって、シロキサン化合物が原因となる偏光素子表面の白濁がなくなり、偏光光の照度の低下を防ぐことができる。特に、樋状ミラーと偏光素子との間に光透過部材を配置し、ガス供給手段からこの光透過部材と偏光素子の間の空間にガスを供給することにより、ガスの流量を少なくしても、光透過部材と偏光素子の間の圧力を均一に高くすることができ、これにより用力の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が対象とする偏光光照射装置の構成を示す図である。
【図2】エアー吹き出し口を複数形成したノズルの構成例を示す図である。
【図3】図1に示した偏光光照射装置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す図である。
【図5】線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド偏光素子を組み合わせた偏光光照射装置の構成例を示す図である。
【図6】図5に示した偏光光照射装置のランプハウスの構成例を示す図である。
【図7】偏光素子ユニットの構造を示す図である。
【図8】冷却風を循環させる偏光光照射装置のランプハウスの他の構成例を示す図である。」

(オ)「【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明が対象とする偏光光照射装置の構成例を示す図である。同図は、ランプの長手方向に対して直交する方向の断面図である。なお、以下の実施例では、前記図6に示した構成の偏光光照射装置について説明するが、本発明は前記図8に示した構成の偏光光照射装置にも同様に適用することができる。
図1において、図6の従来の装置と異なる部分は、反射ミラー22と上記偏光素子ユニット80との間の空間にガス(クリーンドライエアー)を供給するノズル3(ガス供給手段)を設けた点である。それ以外の構成は図6に記載の装置と基本的に同じである。
すなわち、ランプハウス10には、ランプ21と、樋状の反射ミラー22から構成される光出射部2を有する光源部11が設けられ、その上部に、ランプ点灯時にランプ21や反射ミラー22を冷却する冷却風の温度を下げる水冷式の冷却機(ラジエータ)20と、冷却風を発生させる送風機(ブロア)30とが配置される。
【0020】
光源部11は隔壁40により囲まれており、その外側をランプハウス10の外壁(筐体)60が覆っている。外壁60と上記隔壁40との間の隙間は、冷却風が通過する通風路50となる。
樋状の反射ミラー22には、該ミラー22の光出射側から導入されて上記ランプと樋状のミラーを冷却する冷却風が通過する開口(冷却風通風孔41)が設けられ、冷却風通風孔41を通過した冷却風は、冷却機20により冷却され、送風機30により、上記通風路50を経て、上記反射ミラー22の光出射側に送られる。
また、ランプハウスの外壁60には、光源部11からワーク4に向かって照射される光が通過する光出射窓(光出射部)70が形成されている。この光出射窓70には、光出射窓70から出射する光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子1を有する偏光素子ユニット80が取り付けられる。
偏光素子ユニット80は、前記図7に示したように、複数のワイヤーグリッド偏光素子1を、ランプ21の長手方向に沿ってフレーム(保持枠81)内に並べて保持したものであり、偏光板は、1mmから2mm程度の隙間を持たせて配置され、この隙間は遮光板により覆われている。
【0021】
上記反射ミラー22と偏光素子ユニット80の間の空間にガスを供給するノズル3には、ガスとしてクリーンドライエアーが供給される。クリーンドライエアー(以下エアー)は、フィルタにより、露点が-50°C?-90°C以下程度になるように除湿するとともに微粒子を除去した低露点高清浄度空気のことである。なお、同等の低露点高清浄度であり、紫外線を透過すれば、エアー以外のガス例えば窒素などの不活性ガスを使用しても良い。
【0022】
ノズル3に供給するエアーは、装置を設置する工場の用力(ユーティリティ)から供給するようにしても良いし、別途準備したボンベから供給するようにしても良い。
ノズル3は、ランプ21の長手方向に沿ったランプハウス10の側面の外壁60からランプハウス10の内部に差し込まれており、エアーの吹き出し口31は1ヶ所である。ノズル3に供給されたエアーは、ランプ21(反射ミラー22の光出射側)と偏光素子ユニット80の偏光板1との間を、ランプの長手方向に対して直交するように流れる。この供給されたエアーにより、ランプと偏光素子との間の圧力が高くなる。
供給されたエアーは、ランプ冷却風とともに冷却風通風孔41とラジエータ20を介して、ブロア30に引き込まれる。
【0023】
表1は、ノズル3に供給するエアーの供給量(リットル/min)と、ランプ21と偏光素子1との間の静圧(Pa)、偏光素子の隙間からの吸い込みの有無の関係を調べた実験結果である。なお、ノズル3はランプハウス10の側面に1ヶ所のみに設けた。また、ランプ21と偏光素子1との間の静圧を測定した場所は、図1のA部として示しているように、ランプ21に対してノズル3を設けた側とは反対側の、反射ミラー21の光出射側と偏光素子ユニット80の間である。
【0024】
【表1】

【0025】
同表に示すように、エアーを供給しない場合、A部の静圧は-30Paの負圧で、偏光素子ユニット80の並べた偏光素子1の隙間から、外気がランプハウス10内に引き込まれていた。しかし、ノズル3に350リットル/minのエアーを供給したところ、A部の静圧は25Paの陽圧になり、偏光素子1の隙間からのランプハウス10内への外気の引き込みはなくなった。さらにノズル3に供給するエアーを400リットル/minに増やしたところ、A部の静圧は32Paに上昇し、やはり偏光素子1の隙間からのランプハウス10内への外気の引き込みはない。
【0026】
上記の結果より、ランプ21と偏光素子1との間の静圧が約25Pa以上になるように、ランプ1と偏光素子2との間にエアーを供給すれば、偏光素子1の隙間からのランプハウス10内への外気の引き込みを防ぐことができると考えられる。即ち、ランプ21と偏光素子1との間の静圧が約25Pa以上になるようにランプハウス10内にエアーを供給すれば、ランプハウス10内全体が陽圧になり、ランプハウス10内への外気の引き込みがなくなるものと考えられる。
【0027】
上記図1に示したものにおいては、ノズル3のエアー吹き出し口は1ヶ所である。しかし、図2に示すように、ノズル3をランプ21の長手方向に沿って伸ばし、エアー吹き出し口31を複数形成しても良い。ノズル3をこのような形状にすることで、エアーをランプ長手方向に対して均一に供給することができる。そのため、ランプ21と偏光素子1との間を陽圧にするのに、エアーの流量を少なくでき、これにより用力の負担を軽減できる。」

(カ)「【0029】
図4は、本発明の実施例を示す図である。同図は、ランプの長手方向に対して直交する方向の断面図である。
本実施例においては、ランプ21と偏光素子ユニット80との間に、光透過部材保持ユニット5を設け、この光透過部材保持ユニット5と偏光素子ユニット80との間に、エアーを供給するようにしている。
光透過部材保持ユニット5は、例えば、前記偏光素子ユニット80と同様に、複数の光透過部材51をランプの長手方向に並べて配置したものである。この光透過部材51としては、例えば、フィルタ特性を持たない(特定波長の光を遮断する特性を持たない)石英板や、光配向処理に不要な波長の光(例えば可視光や赤外光)を遮断する蒸着膜をガラス板に形成した干渉膜フィルタなどのフィルタ等を用いることができる。
ノズル3に供給されたエアーは、光透過部材保持ユニット5と偏光素子ユニット80との間を、ランプ21の長手方向に対して直交するように流れ、光透過部材保持ユニット5と偏光素子ユニット80との間の圧力を陽圧にする。その後、ノズル3がある側とは反対側からランプ冷却風とともに冷却風通風孔41とラジエータ20を介して、ブロア30に引き込まれる。
【0030】
図1に示した構成では、ノズル3から供給されたエアーが、ノズル3がある側とは反対側のランプハウス側面に達するまでに、ランプ冷却風とともにブロア30に吸引されてしまう。
しかし、本実施例のように構成することで、光透過部材保持ユニット5と偏光素子ユニット80により通風路が形成される。そのため、ランプハウス10に供給したエアーは、途中でブロア30に吸引されることなく、ノズル3がある側とは反対側のランプハウス10の側面に達する。
このことにより、エアーの流量を少なくしても、エアーはノズル3が設けられている側とは反対側にまで届き、光透過部材51と偏光素子1の間の圧力を、エアーが流れる方向に対して、均一に高くすることができる。これにより用力の負担を軽減できる。
・・・(中略)・・・
【符号の説明】
【0032】
1 ワイヤーグリッド偏光素子
2 光出射部
3 ノズル
4 ワーク
5 光透過部材保持ユニット
10 ランプハウス
11 光源部
20 冷却機(ラジエータ)
21 棒状ランプ
22 反射ミラー
30 送風機(ブロア)
31 エアー吹き出し口
40 隔壁
41 冷却風通風孔
50 通風路
51 光透過部材
60 外壁(筐体)
70 光出射窓
80 偏光素子ユニット
81 フレーム(保持枠)
82 遮光板」

(キ) 「【図1】



(ク) 「【図4】


(ケ)「【図5】



(コ)「【図6】



(サ)「【図7】



イ 引用例1に記載された発明

(ア)上記ア(イ)の【0003】の「図5に、線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド偏光素子を組み合わせた偏光光照射装置の構成例を示す。 ・・・偏光光照射装置の光出射部2は、光配向処理に必要な波長の光(紫外線)を放射する棒状ランプ21、例えば高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプと、棒状ランプ21からの紫外線をワーク4に向けて反射する樋状の反射ミラー22備える。」から、図4に示された実施例における「ランプ21」は、「線状の光源である棒状ランプ」であることが把握できる。

(イ)上記ア(ウ)の【0014】の「シロキサン化合物が外気とともに偏光板どうしの隙間から引き込まれ、ランプから放射された紫外線と反応して、ワイヤーグリッド偏光素子のランプ側の表面を白濁させるという問題が生じた。偏光板の表面が白濁すると、紫外線の透過率が低下し、ワークに照射する偏光光の照度が低下する。ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス基板等の表面に微細なグリッドを形成したものであり、この面にシロキサン化合物が付着すると簡単にクリーニングすることができない。」という記載や図5より、図4に示された実施例における「ワイヤーグリッド偏光素子1」は、ガラス基板等の表面に微細なグリッドを形成したものであること、ワイヤーグリッド偏光素子1のワイヤーグリッド状のグリッドを、ワイヤーグリッド偏光素子1の棒状ランプ21側の表面に有していることが把握される。

(ウ)上記ア(ア)?(サ)及び上記(ア),(イ)より、図1の偏光光照射装置の構成例を前提とする、図4に記載された実施例から把握される発明として、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ランプハウスには、線状の光源である棒状ランプと、樋状の反射ミラーから構成される光出射部を有する光源部が設けられ、その上部に、ランプ点灯時にランプや反射ミラーを冷却する冷却風の温度を下げる水冷式の冷却機(ラジエータ)と、冷却風を発生させる送風機(ブロア)とが配置され、
光源部は隔壁により囲まれており、その外側をランプハウスの外壁(筐体)が覆っており、
外壁と上記隔壁との間の隙間を、冷却風が通過する通風路とし、
ランプハウスの外壁には、光源部からワークに向かって照射される光が通過する光出射窓(光出射部)が形成されており、
光出射窓には、光出射窓から出射する光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子を有する偏光素子ユニットが取り付けられ、
偏光素子ユニットは、複数のワイヤーグリッド偏光素子を、ランプの長手方向に沿ってフレーム(保持枠)内に並べて保持したものであり、
ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス基板の表面に微細なグリッドを形成したものであり、
ワイヤーグリッド偏光素子は、ワイヤーグリッド状のグリッドを、ワイヤーグリッド偏光素子の線状の光源である棒状ランプ側の表面に有しており、
反射ミラーと上記偏光素子ユニットとの間の空間にガス(クリーンドライエアー)を供給するノズル(ガス供給手段)を設け、
上記反射ミラーと偏光素子ユニットの間の空間にガスを供給するノズルは、ガスとしてクリーンドライエアーが供給され、
ランプと偏光素子ユニットとの間に、光透過部材保持ユニットを設け、この光透過部材保持ユニットと偏光素子ユニットとの間に、エアーを供給するようにし、
光透過部材保持ユニットは、上記偏光素子ユニットと同様に、複数の光透過部材をランプの長手方向に並べて配置したものであり、
光透過部材として、石英板を用いる、
偏光光照射装置。」

(4)判断
ア 特許法第36条第6項第1号及び第2号(上記(2)ア(ア))について

本件訂正請求により、請求項1において、「上記偏光素子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ」、「石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け」ることに訂正されたため、請求項1,2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
また、本件訂正請求により、請求項1において、「石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け」ることが明瞭となった。
よって、特許法第36条第6項第1号及び第2号(上記(2)ア(ア))についての取消理由は解消した。

イ 特許法第36条第6項第2号(上記(2)イ(ア))について

本件訂正請求により、請求項2の「上記石英板」が、請求項1の「石英板」と対応・整合するように請求項1,2が訂正されたため、特許法第36条第6項第2号(上記(2)イ(ア))についての取消理由は解消した。

ウ 特許法第29条第2項(上記(2)ア(イ))について
(対比・判断)

(ア)本件発明1と、引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

(相違点)
本件発明1においては、
上記外壁の上記光出射口に設けた、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子と、
上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設けた、上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板との間にエアーを流すエアー供給機構を備えているのに対して、
引用発明においては、
上記外壁の上記光出射口に設けた、透明基板上の上記光源側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子と、
上記外壁の内側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設けた、石英板との間にエアーを流すエアー供給機構を備えている点。

(イ)上記相違点について検討する。
引用発明は、冷却風をブロアによりランプとミラー側から引き込むような構造のランプハウスにおいては、ランプハウス内の圧力は均一ではなく、ブロアの吹き出し口付近の圧力は高く、ランプハウス外の周辺雰囲気に対して陽圧になる一方、冷却風が引き込まれる付近、例えばランプ21と偏光素子ユニット80との間は圧力が低く、ランプハウス外の周辺雰囲気に対して負圧になるため、偏光素子ユニット80に並べた偏光素子1どうしの隙間から、外気がランプハウス内に引き込まれることとなり、ランプから放射された紫外線と反応して、ワイヤーグリッド偏光素子のランプ側の表面を白濁させること、偏光板の表面が白濁すると、紫外線の透過率が低下し、ワークに照射する偏光光の照度が低下すること、ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス基板等の表面に微細なグリッドを形成したものであり、この面にシロキサン化合物が付着すると簡単にクリーニングすることができないという問題・課題(上記(3)ア(ウ)【0011】?【0015】等)を解決するために、樋状ミラーと上記偏光素子の間の空間にガス(エアー)を供給するガス供給手段を設けたので、ランプハウスの内部、特に偏光素子ユニットのランプ側の空間が陽圧となるため、偏光素子ユニットに並べた複数の偏光素子の間に隙間を設けていても、そこから外気がランプハウス内に引き込まれないようにする(上記(3)ア(エ)及び(オ)【0017】,【0025】等)とともに、さらに、ノズル3から供給されたエアーが、ノズル3がある側とは反対側のランプハウス側面に達するまでに、ランプ冷却風とともにブロア30に吸引されてしまうことを防ぐために、「ランプ21」と「ワイヤーグリッド偏光素子1」との間に「石英板」(「光透過部材51」)を設け、この「石英板」と「ワイヤーグリッド偏光素子1」との間にエアーを供給するようにして、ランプハウス10に供給したエアーを、途中でブロア30に吸引されることなく、ノズル3がある側とは反対側のランプハウス10の側面に達するようにして、エアーの流量を少なくしても、エアーはノズル3が設けられている側とは反対側にまで届き、石英板と偏光素子1の間の圧力を、エアーが流れる方向に対して、均一に高くすることができ、これにより用力の負担を軽減できるようにする(上記(3)ア(カ)【0030】等)という技術思想に基づいたものである。
してみると、引用発明は、ランプハウス(外壁)「内」において、「ランプ(線状の光源)」と「ワイヤーグリッド偏光素子」との空間がランプハウス(外壁)「外」の周辺雰囲気に対して「負圧」になることを考慮して、「ランプ(線状の光源)」と「ワイヤーグリッド偏光素子」との空間を「陽圧」にするために、ランプハウス(外壁)「内」に「エアーを供給するガス供給手段(エアー供給機構)」と「石英板」を設けることをその技術的な特徴・前提とするものであるから、たとえ「偏光光照明装置において、偏光素子の光源に対して反対側に偏光光を透過するフィルタを配置すること」が本件特許の出願日前に周知の技術であったとしても、引用発明において、「偏光光を透過するフィルタ」である「石英板」を、外壁の「外側」に設け、上記外壁の「外側」に設けた「石英板」と、外壁の光出射口に設けた「ワイヤーグリッド偏光素子」との間にエアー供給機構によりエアーを流す構成とすることには、阻害要因がある。
加えて、引用発明は、ワイヤーグリッド偏光素子の微細なグリッドを形成した表面にシロキサン化合物が付着すると簡単にクリーニングすることができないということを問題としているものであるから、引用発明において、外壁の光出射口に設けられたワイヤーグリッド偏光素子において、透明基板上の光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成する構成とすると、ランプハウス(外壁)の外側に形成されることによってシロキサン化合物が付着しやすくなることは明らかであるから、この点からも、当該構成の変更には、阻害要因がある。
してみると、引用発明において、引用例2?4に例示された上記周知の技術に基づき、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。

エ 異議申立人の主張について
(ア)異議申立人は、特許異議申立書において、 上記の甲第1号証ないし甲第4号証として、上記の引用例1ないし4の提出する他に、甲第5号証ないし甲第12号証として、特開平10-90684号公報、特開2000-147506号公報、特開2000-206525号公報、特開2001-350144号、特開2002-189301号公報、特開2004-152842号公報、特開2006-185656号公報、特開2011-247648号公報をそれぞれ提出し、(a)請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証ないし甲第12号証に例示された周知技術から、請求項1に係る発明は容易に想到されたものである旨、(b)請求項2に係る発明は、設計的事項にすぎないものある旨主張している。
しかしながら、たとえ異議申立書において異議申立人が主張するような、「光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁」、「外壁の光出射口に偏光素子を設けること」、「偏光素子の光源に対して反対側に偏光光を透過する板状体(マスクM)を、外壁の外側に設けること」、「生成物が紫外線の出射部に付着するのを抑制するためにエアーを供給すること」、「照射窓と板状体との間にエアーを流すエアー供給機構」が周知技術であったとしても、「上記ウ(イ)」において検討したように、引用発明において、「偏光光を透過するフィルタ」である「石英板」を、上記外壁の「外側」に設け、上記外壁の「外側」に設けた「石英板」と、上記外壁の上記光出射口に設けた「ワイヤーグリッド偏光素子」との間にエアー供給機構によりエアーを流す構成とすることや、外壁の光出射口に設けたワイヤーグリッド偏光素子において、透明基板上の光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成する構成とすることには、阻害要因があるのであるから、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
してみると、請求項1に係る発明が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証ないし甲第12号証に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
同様に、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、請求項2に係る発明が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証ないし甲第12号証に例示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(イ)異議申立人は特許異議申立書において、(c)発明の詳細な説明において、外壁の外部、外壁面、内部に偏光素子を設けた場合に偏光素子の白濁をどのように防止するのか何ら記載されておらず、周知のことでもないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない、また、(d)発明の詳細な説明において、偏光素子の幅を広くした場合に、どのようにして光出射口の周縁により光が蹴られなくするのかが何ら記載されておらず、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明において、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張している。
しかしながら、本件訂正請求により、請求項1に係る発明は、偏光素子が、上記外壁の上記光出射口に設けられ、石英板が、上記外壁の外側に上記外壁の上記光出射口から離隔して設けられるものに訂正されており、請求項1,2に係る発明は、発明の詳細な説明において、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものである。
また、本件発明2は、「上記線状の光源の長さ方向に対して垂直で光照射面に対して平行な方向である幅方向で見た際、上記ワイヤーグリッド偏光素子は上記石英板よりも大きい」構成を備えることにより、本件特許明細書の【0026】に記載された「光源側に近いワイヤーグリッド偏光素子81の幅(ここで、幅とは、線状の光源の長さ方向に対して垂直で、光照射面に対して平行な方向のことをいう)を、光源側から遠いフィルタ板91の幅より広くしておけば、光源からフィルタ板91に入射する光が、偏光板81の保持枠82により蹴られることがないので、光源から放射される光を有効に利用することができる」という作用・効果を奏するものであり、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明において、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものである。

(ウ)異議申立人は特許異議申立書において、(e)請求項1に記載された、外壁の外部、外壁の面、内部に偏光子が設けられ、かつ、偏光子の白濁を防ぐことができる偏光光照射装置は、発明の詳細な説明に記載されていない旨主張している。
しかしながら、本件訂正請求により、請求項1に係る発明は、偏光素子が、上記外壁の上記光出射口に設けられ、石英板が、上記外壁の外側に上記外壁の上記光出射口から離隔して設けられるものに訂正されており、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(エ)異議申立人は特許異議申立書において、請求項1に記載の偏光素子は、位置関係が不明確である旨主張している。
しかしながら、本件訂正請求により、請求項1に係る発明は、偏光素子が、上記外壁の上記光出射口に設けられるものに訂正されており、偏光素子の位置関係は明確である。

(オ)異議申立人は、平成28年10月28日に提出された訂正請求及び意見書に対する意見書(以下、「異議申立人意見書」という。)において、参考資料1ないし3として、特開2006-184747号公報、特開2012-181420号公報、特開平9-61627号公報をあげて、「上記偏光子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子」、あるいは、「ワイヤーグリッド偏光素子のワイヤーグリッドが形成された面とは反対側の面から光を入射させる」ことは周知の技術であり、請求項1に係る発明は、引用例1ないし4に記載された発明により、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかしながら、「上記ウ(イ)」において検討したように、引用発明において、外壁の光出射口に設けたワイヤーグリッド偏光素子において、透明基板上の光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成する構成とすることや、「石英板」を上記外壁の「外側」に設けた構成とすることには、阻害要因があるのであるから、たとえ異議申立人が主張するような技術が周知技術であったとしても、請求項1に係る発明は、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(カ)異議申立人は、異議申立人意見書において、「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過し上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け、」は、発明の構成が不明確であり、また、発明の詳細な説明に記載したものでない旨主張している。
しかしながら、「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け」ることにより、本件特許明細書の【0009】に記載されているように、「偏光光照射装置の保守点検の際などに、装置に取り付けられている偏光素子のグリッド形成面にあやまって触れてしまったり、偏光素子の上に何か物を落としてしまったりして、微細なグリッドを壊してしまう」ことがないものであり、「上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け」という記載は明確である。また、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(キ)異議申立人は、異議申立人意見書において、保護対象であるワイヤーグリッド偏光素子が石英板よりも大きければ、幅方向において石英板の周囲からワイヤグリッド偏光素子ははみ出すことになり、このような場合には、石英板によるワイヤーグリッド素子の保護ができないことは明らかであり、どのように保護するのかかが発明の詳細な説明に記載されていない旨主張している。
しかしながら、ワイヤグリッド偏光素子においては、ワイヤーグリッドそのものは透明基板の表面に形成されたものであることや、本件特許明細書の【0026】に記載された「光源側に近いワイヤーグリッド偏光素子81の幅(ここで、幅とは、線状の光源の長さ方向に対して垂直で、光照射面に対して平行な方向のことをいう)を、光源側から遠いフィルタ板91の幅より広くしておけば、光源からフィルタ板91に入射する光が、偏光板81の保持枠82により蹴られることがないので、光源から放射される光を有効に利用することができる」という記載によれば、「上記線状の光源の長さ方向に対して垂直で光照射面に対して平行な方向である幅方向で見た際、上記ワイヤーグリッド偏光素子は上記石英板よりも大きい」ものでも、ワイヤーグリッドを外壁の外側から保護できるものであり、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(ク)以上のとおりであるから、異議申立人の主張はいずれも採用することはできない。

(ケ)異議申立書において異議申立人は意見書の提出を希望しているところ、平成28年10月28日に提出された訂正請求及び意見書に対して、意見書の提出が既になされており、平成29年1月16日に提出された訂正請求は、請求項2の「前記フィルタ」を「前記石英板」とする訂正事項4、発明の詳細な説明の【発明の効果】【0013】の記載を訂正する訂正事項6以外は、平成28年10月28日に提出された訂正請求の内容と同じであり、また、平成28年12月5日提出の意見書において、異議申立人が「フィルタ」を「石英板」と解して反論をしていることから、平成29年1月16日に提出された訂正請求及び意見書に対して、異議申立人に改めて意見を聞く必要はないと合議体は判断した。

オ むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
偏光光照射装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などに所定の波長の偏光光を照射して配向を行う偏光光照射装置に関し、特にワイヤーグリッド偏光素子を使用する偏光光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを始めとする液晶表示素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などの配向処理に関し、紫外線領域の波長の偏光光を照射し配向を行なう、光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきた。以下、光により配向を行う配向膜や、配向層を設けたフィルムなど、光により配向特性が生じる膜や層を総称して光配向膜と呼ぶ。
光配向膜は、液晶パネルの大型化と共に、例えば一辺が2000mm以上の四角形というように大面積化している。
【0003】
上記のような大面積の光配向膜に対して光配向を行うために、線状の光源である棒状のランプとワイヤーグリッド状のグリッドを有する偏光素子(以下ワイヤーグリッド偏光素子)を組み合わせた偏光光照射装置が、例えば特許文献1などで提案されている。
棒状ランプは、発光長が比較的長いものを作ることができる。そのため、光配向膜の幅に応じた発光長を備えた棒状ランプを使用し、該ランプからの光を偏光して照射しながら、配向膜または光源をランプの長手方向に直交する方向に移動させれば、広い面積の配向膜を比較的短時間で光配向処理を行なうことができる。
【0004】
図6に、線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド偏光素子を組み合わせた従来の偏光光照射装置の構成例を示す。
同図において、光配向膜であるワークWは、例えば視野角補償フィルムのような帯状の長尺ワークであり、送り出しロールR1から送り出され、図中矢印方向に搬送されながら偏光光照射により光配向処理され、巻き取りロールR2により巻き取られる。
偏光光照射装置の光照射部10は、光配向処理に必要な波長の光(紫外線)を放射する棒状ランプ11、例えば高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプと、この棒状ランプ11からの紫外線をワークWに向けて反射する樋状の反射鏡12を備える。上記のように、棒状ランプ11の長さは、発光部が、ワークWの搬送方向に直交する方向の幅に対応する長さを備えたものを使用する。
【0005】
光照射部10は、ランプ11の長手方向がワークWの幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置する。
光照射部10の光出射側には、偏光素子であるワイヤーグリッド偏光素子81が設けられる。光照射部10からの光はワイヤーグリッド偏光素子81により偏光され、光照射部10の下を搬送されるワークWに照射され、光配向処理が行われる。
ワイヤーグリッド偏光素子は、偏光したい波長の光を透過する透明基板(例えばガラス基板)上にグリッド(ライン・アンド・スペース)を形成したものであり、例えば特許文献2や特許文献3にその詳細が示されている。
【0006】
光路中にワイヤーグリッド偏光素子を挿入すると、入射する光のうち、グリッドの長手方向に平行な偏光成分は大部分が反射もしくは吸収され、グリッドの長手方向に直交する偏光成分は通過する。したがって、ワイヤーグリッド偏光素子を通過した光は、偏光素子のグリッドの長手方向に直交する方向の偏光軸を有する偏光光となる。
光配向処理には紫外線領域の偏光光が使用される。ワイヤーグリッド偏光素子に入射する光を偏光光にするためには、透明基板に形成するグリッドの幅や間隔は、偏光する光の波長よりも短くする(例えば100nm)必要がある。
そのため、グリッドの形成には微細な加工技術が必要であり、半導体集積回路製造に使われるリソグラフィ技術やエッチング技術が利用されるが、そこで使用されるリソグラフィ装置やエッチング装置が加工できるワークの大きさには限界がある。そのため、ワイヤーグリッド偏光素子は大型のものができず、現状製作できる大きさは直径300mm程度までである。
【0007】
そこで、例えば特許文献4には、発光長の長い棒状の光源、例えば長さ1mから3mといった棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプに応じた、大きな(長い)偏光素子が必要な場合は、矩形のワイヤーグリッド偏光素子を複数、グリッドの方向をそろえ、フレームの中にランプの長手方向に沿って並べ、一つの偏光素子ユニットとして使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-145381号公報
【特許文献2】特開2002-328234号公報
【特許文献3】特表2003-508813号公報
【特許文献4】特許第4506412号公報
【非特許文献1】竹田、野中、藤本「クリーンルーム環境問題 シロキサン化合物」
クリーンテクノロジー 1998年4月号34ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、ワイヤーグリッド偏光素子のグリッドは微細な加工により製造され、グリッドの幅や間隔は例えば100nmであるため、誤って指で触れたり、その上に物を落としたりすると、グリッド構造が壊れてしまい、偏光素子としての役目を果たさなくなる。しかし、微細であるため、透明基板(ガラス)の表面にグリッドが形成されていることが、肉眼ではわかりにくい。
そのため、偏光光照射装置の保守点検の際などに、装置に取り付けられている偏光素子のグリッド形成面にあやまって触れてしまったり、偏光素子の上に何か物を落としてしまったりして、微細なグリッドを壊してしまうことが考えられる。
【0010】
また、このような偏光光照射装置が配置される、半導体や液晶表示素子の工場のクリーンルームの雰囲気には、シロキサン化合物と呼ばれる物質が含まれており、製造上のトラブルや収率の悪化の原因になることが知られている(例えば非特許文献1参照)。
シロキサン化合物は例えばレジストの現像液などに多く含まれている。シロキサン化合物は、紫外線が照射されると光化学反応により白い粉を生じ、紫外線照射装置内部の光学素子の表面を白濁させる。
ワイヤーグリッド偏光素子は、ガラス基板等の表面に微細なグリッドを形成したものであり、この面にシロキサン化合物が付着すると簡単にクリーニングすることができない。
【0011】
本発明は上記した問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、線状の光源と、この光源からの光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子とを備えた偏光光照射装置において、装置のメンテナンスの際などに、装置に取り付けられているワイヤーグリッド偏光素子のグリッド形成面に指を触れたり、物を落としたりしてグリッドを壊すといったことがないようにするとともに、ワイヤーグリッド偏光素子の表面にシロキサン化合物による白濁が生じないようにすることである。
装置を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、ワイヤーグリッド偏光素子を備えた偏光光照射装置において、ワイヤーグリッド偏光素子に対して光源とは反対側(被照射物側)に、石英板を設ける。
さらに、ワイヤーグリッド偏光素子と石英板との間に、ワイヤーグリッド偏光素子の白濁を防止するとともにワイヤーグリッド偏光素子やフィルタを冷却するエアーを流す。
すなわち、本発明のある態様によれば、線状の光源と、該光源からの光を偏光する偏光素子と、上記光源を覆い光源からの光が透過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において、上記偏光素子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって、上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過し上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け、上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記石英板との間にエアーを流すエアー供給機構を備えることを特徴とする偏光光照射装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
ワイヤーグリッド偏光素子の光源とは反対側(被照射物側)に石英板を設けたので、偏光光照射装置の外からでは、ワイヤーグリッド偏光素子に指などが触れにくくなり、グリッドの破損を防ぐことができる。
また、ワイヤーグリッド偏光素子に対して被照射物(ワーク)が配置される側に石英板を設けるので、ワイヤーグリッド偏光素子の表面にシロキサン化合物が付着しにくくなり、ワイヤーグリッド偏光素子に白濁が生じにくくなる。さらに、ワイヤーグリッド偏光素子と石英板との間にエアーを流すことにより、ワイヤーグリッド偏光素子の表面にシロキサン化合物がより付着しにくくなり、ワイヤーグリッド偏光素子に白濁が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の前提となる偏光光照射装置のランプハウス(灯具)の概略構成を示す図である。
【図2】偏光素子ユニットの構造を示す図である。
【図3】本発明の前提となる偏光光照射装置のランプハウス(灯具)の変形例を示す図である。
【図4】本発明の偏光光照射装置のランプハウス(灯具)の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の変形例を示す図である。
【図6】従来の偏光光照射装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の前提となる偏光光照射装置のランプハウス(灯具)の概略構成を示す図である。同図は、ランプハウスの長手方向に対して直交する方向の断面図である。なお、同図においては、ランプの点灯装置などの構成については省略して示している。
ランプハウス1は、光照射部10と、その上部に水冷式の冷却機(ラジエータ)20と送風機(ブロア)30とを備える。光照射部10は、ランプ11とランプ11からの光を反射する反射ミラー12とを有している。図中実線の矢印で示すように、ランプ11からの光は、直接または反射ミラー12により反射されて、ワイヤーグリッド偏光素子81と、偏光素子81に対して間隔を設けて配置したフィルタ板91とを介してワークWに照射される。
ブロア30は、ランプ11点灯時にランプ11や反射ミラー12、またワイヤーグリッド偏光素子81やフィルタ板91などを冷却する冷却風を発生させ、ラジエータ20は、ランプ11や反射ミラー12などを冷却した冷却風の温度を下げるはたらきをする。
【0016】
光照射部10は隔壁40により囲まれており、その外側をランプハウス1の外壁60が覆っている。隔壁40と外壁60との間には隙間が形成されている。この隙間は、冷却風が通過する通風路50となる。
冷却風は、ブロア30から送り出されて通風路50を通り、反射ミラー12の光出射側から、ランプ11や反射ミラー12を冷却する。また、冷却風の一部はワイヤーグリッド偏光素子81とフィルタ板91との間の通風路100を通過し、ワイヤーグリッド偏光素子81とフィルタ板91を冷却する。ランプ11や反射ミラー12、ワイヤーグリッド偏光素子81やフィルタ板91などを冷却し、高い温度になった冷却風は、光照射部10の内側に引き込まれ、ラジエータ20を通過して冷却され、再びブロア30により送り出される。ここで、ブロア30は偏光板81とフィルタ板91との間にエアーを流すエアー供給機構の役割を果たす。
【0017】
また、ランプハウス1の外壁60には、光照射部10からワークWに向かって照射される光が通過する光出射口70が形成されている。
この光出射口70には、ここを通過する光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子81を有する偏光素子ユニット80とフィルタ板91を有するフィルタ枠92が取り付けられる。
偏光素子ユニット80のワイヤーグリッド偏光素子81は、光配向処理を行うための波長の光を透過する透明基板(ガラス基板)の一方の表面に、ワイヤーグリッド(以下グリッドともいう)Gを形成したものである。ここでグリッドGの形成面をランプ11とは反対側(ワーク側)に向けて配置する。
図1においてワイヤーグリッド偏光素子81のグリッドGは、図面左右方向に延びている。
【0018】
図2は、偏光素子ユニット80の構造を示す図である。図2(a)は偏光素子ユニット80の平面図、図2(b)は偏光素子ユニット80の側断面図、図2(c)は偏光素子ユニット80の斜視図である。
偏光素子ユニット80は、複数のワイヤーグリッド偏光素子(以下偏光板ともいう)81を、棒状ランプ12の長手方向(図2の左右方向)に沿ってフレーム(保持枠)82内に並べて保持したものである。保持枠82は上下から各偏光板81を挟み込むようにして保持する。
【0019】
隣り合う偏光板と偏光板の間には、1mmから2mm程度の隙間が設けられる。偏光板どうしのグリッドGの方向が平行になるように合せるために、この隙間を使って偏光板81を回転移動させて位置調整する。そして、この隙間は、ここから無偏光光が漏れないように、偏光素子ユニット80において遮光板83により覆われている。
上記したように、各ワイヤーグリッド偏光素子(偏光板)81は、図2(b)に示すように、グリッドGの形成面がランプ(光源)側(ランプハウスの内側)になるように配置される。
【0020】
そして、偏光板81の光源(ランプ11と反射ミラー12)とは反対側(偏光素子ユニット80のワークW側)の、外壁60に形成された光出射口70の位置にフィルタユニット90を配置する。フィルタユニット90は、偏光板81と同様に、複数のフィルタ板91を保持枠92内に、ランプ12の長手方向に沿って並べて配置したものである。フィルタ板91としては、偏光する紫外線の波長を透過する石英板を使用することができる。また、光配向処理には必要がない可視光や赤外線を遮断する干渉を形成した干渉フィルタを使用しても良い。
【0021】
このように構成することで、偏光板81はランプハウス1の外壁60の内部に設けられることになり、また外壁60に形成された開口である光出射口70にはフィルタユニット90が取り付けられている。そのため、指などが直接偏光板81に触れることはなくグリッドGの破損を防ぐことができる。
偏光板81とフィルタ板91を接触させて重ねると、偏光板81のグリッドGが傷む可能性があるので、通風路形成部材93により、両者を5mmから100mm程度の間隔をあけて配置する。この間隔は、偏光板81とフィルタ板91を冷却する冷却風が流れる通風路100を形成する。
【0022】
なお、本例においては、通風路形成部材93は、フィルタ板91の保持枠92の上に立て、その上に偏光素子ユニット80の保持枠82を取り付けている。しかし、通風路形成部材93は、外壁60の上に立て、その上に偏光素子ユニット80の保持枠82を設けても良い。
また、通風路形成部材93を光照射部10に取り付け、偏光素子ユニット80の保持枠82を吊下げるようにして設けても良い。要は光照射部10と偏光素子ユニット80との間、また偏光素子ユニット80とフィルタ板91の保持枠92との間に冷却風の流れる通風路が形成されれば良い。
【0023】
偏光板81とフィルタ板91との間隔は、狭いとその間を冷却風が流れにくくなり、偏光板81やフィルタ板91がランプ11からの熱で加熱される可能性があり、十分な冷却風が流れる間隔を設ける。しかし、グリッドGの保護のためには、偏光板81のグリッドG形成面に指が届かないような間隔にすることが望ましい。
指が入らない間隔の一例としてIP(International Protection)規格があげられる。これは、IEC60529(1989年)で制定され、JISでもC0920(1993年)に定められているもので、人体に対する保護内容として、指の場合、機器に対する保護内容は直径12.5mm以下にすることが示されている。したがって、偏光板81とフィルタ板91との間隔は5mmから12.5mmにすることが望ましい。
【0024】
通風路形成部材93は、偏光素子ユニット80とフィルタ90の長手方向に沿って両側(図1の左右方向)に複数、冷却風が通過できる間隔をあけて設ける。なお、通風路形成部材93は棒状のものでも良いし矩形のブロック状のものでも良い。また、冷却風が通過できる貫通孔(直径5mm以上が望ましい)を形成した板状もしくは壁状のものでも良いし、偏光素子ユニット80とフィルタ90の間隔を保持できるものであれば網状のものでも良い。
なお、貫通孔を形成した板状の部材や網状の部材にした場合、通風口となる孔や網の径の大きさを、上記した指の入らない大きさである直径12.5mm以下(即ち通風が確保できる直径5mm?12.5mmの孔)にしておけば、偏光素子ユニット80とフィルタ90との間の間隔を、十分な冷却風が流れるように広げても、偏光板81のグリッドG形成面に指が届かず、グリッドGを保護することができる。
【0025】
また、ワイヤーグリッド偏光素子81に対してワークW(被照射物)が配置される側にフィルタ板91を設けているので、ワイヤーグリッド偏光素子81の表面にシロキサン化合物が直接触れて付着することが少なくなる。これによりワイヤーグリッド偏光素子81に白濁が生じにくくなる。さらに、ワイヤーグリッド偏光素子81とフィルタ板91との間に冷却風(エアー)が流れるので、これによりワイヤーグリッド偏光素子81の表面にシロキサン化合物がより付着しにくくなる。そのためワイヤーグリッド偏光素子91により白濁が生じにくくなる。
【0026】
なお、図1に示すように、光源側に近いワイヤーグリッド偏光素子81の幅(ここで、幅とは、線状の光源の長さ方向に対して垂直で、光照射面に対して平行な方向のことをいう)を、光源側から遠いフィルタ板91の幅より広くしておけば、光源からフィルタ板91に入射する光が、偏光板81の保持枠82により蹴られることがないので、光源から放射される光を有効に利用することができる。
【0027】
図3は、本発明の前提となる偏光光照射装置の変形例を示す図である。図1に示した偏光光照射装置との構成の違いは、偏光板81のグリッドG形成面がフィルタ板91側ではなく、光源側に向けられている点である。それ以外の構成は基本的に図1に示したものと同様である。
本実施例においては、偏光板81のグリッドG形成面は光源側を向いているが、偏光板81自身は、ランプハウス1の外壁60の内部に設けられており、また外壁60に形成された光出射口70にはフィルタユニット90が取り付けられている。そのため、指などが直接偏光板81に触れることはなくグリッドGの破損を防ぐことができる。
また、上記の例と同様に、フィルタ板91の存在と、フィルタ板91と偏光板81との間に流れる冷却風(エアー)により、偏光板81へのシロキサン化合物の付着を防ぎ、偏光板81の白濁を防ぐことができる。
【0028】
図4は、本発明の偏光光照射装置のランプハウス(灯具)の概略構成を示す図である。同図は図1と同様にランプハウスの長手方向に対して直交する方向の断面図である。
図1の例の構成との違いは、偏光素子ユニット80をランプハウス1の光出射口70の位置に配置し、フィルタユニット90をランプハウス1の外壁60の外側に配置したことである。
【0029】
フィルタユニット90のフィルタ枠92は、外壁60に立てた通風路形成部材93により支持され、偏光板81とフィルタ板91との間には通風路100が形成される。
そして、ランプハウス1の外には、上記通風路にエアーを供給する送風ノズル110が設けられる。送風ノズル110からのエアーは偏光板81とフィルタ板91の間の通風路100を通過し、偏光板81にシロキサン化合物が付着することを防ぎ、これにより偏光板81の白濁を防ぐことができる。
また、偏光素子ユニット80のワーク側(光出射側)にフィルタユニット90が設けられているので、指などが直接偏光板81に触れることはなくグリッドGの破損を防ぐことができる。
【0030】
図5は、本発明の実施例の変形例を示す図である。図4に示した偏光光照射装置との構成の違いは、偏光板81のグリッドG形成面がフィルタ板91側ではなく、光源側に向けられている点である。それ以外の構成は基本的に図4に示したものと同様である。
このように配置しても、偏光素子ユニット80のワーク側(光出射側)にフィルタユニット90が設けられているので、指などが直接偏光板81に触れることはなくグリッドGの破損を防ぐことができる。
【0031】
なお、上記実施例においては、光源として棒状のランプを例にして説明したが、紫外線を出射するLEDを複数線状に並べて構成したものでも、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 ランプハウス(灯具)
10 光照射部
11 棒状ランプ
12 反射ミラー
20 ラジエータ(冷却機)
30 ブロア(送風機)
40 隔壁
50 通風路
60 外壁
70 光出射口
80 偏光素子ユニット
81 ワイヤーグリッド偏光素子(偏光板)
82 偏光板の保持枠
83 遮光板
90 フィルタユニット
91 フィルタ板
92 フィルタ板の保持枠
93 通風路形成部材
100 通風路
110 送風ノズル
G ワイヤーグリッド
W ワーク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の光源と、該光源からの光を偏光する偏光素子と、上記光源を覆い光源からの光が通過する光出射口を形成した外壁とを備えた偏光光照射装置において、
上記偏光素子は、上記外壁の上記光出射口に設けられ、透明基板上の上記光源に対して反対側の表面にワイヤーグリッドを形成したワイヤーグリッド偏光素子であって、
上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記光源に対して反対側に偏光光を透過し上記ワイヤーグリッド偏光素子の上記ワイヤーグリッドを上記外壁の外側から保護する石英板を、上記外壁の外側に、上記外壁の上記光出射口から離隔して設け、
上記ワイヤーグリッド偏光素子と上記石英板との間にエアーを流すエアー供給機構を備えることを特徴とする偏光光照射装置。
【請求項2】
上記線状の光源の長さ方向に対して垂直で光照射面に対して平行な方向である幅方向で見た際、上記ワイヤーグリッド偏光素子は上記石英板よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の偏光光照射装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-02 
出願番号 特願2013-8040(P2013-8040)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G02B)
P 1 651・ 537- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 博一  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 清水 康司
河原 正
登録日 2015-10-16 
登録番号 特許第5821860号(P5821860)
権利者 ウシオ電機株式会社
発明の名称 偏光光照射装置  
代理人 小西 恵  
代理人 永岡 重幸  
代理人 小西 恵  
代理人 永岡 重幸  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ