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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  H01L
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01L
管理番号 1326947
異議申立番号 異議2016-700833  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-08 
確定日 2017-02-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5877593号発明「太陽電池封止材および太陽電池モジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5877593号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について、訂正することを認める。 特許第5877593号の請求項3ないし13に係る特許を維持する。 特許第5877593号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5877593号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2011年(平成23年)10月31日(パリ条約による優先権主張 22年11月2日、日本国)を国際出願日とする特願2012-541740号の一部を平成25年6月12日に新たな特許出願としたものであって、平成28年2月5日に特許の設定登録がされ、平成28年9月8日にその特許に対し、特許異議申立人日本ポリエチレン株式会社により特許異議の申立てがなされたものである。
その後、当審において、同年11月22日付け(同年同月28日発送)で取消理由を通知したところ、特許権者は、平成29年1月25日付けで、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書を提出したものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記エチレン・α-オレフィン共重合体が以下の要件a6)をさらに満たす請求項1に記載の太陽電池封止材。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」と記載されているのを、
「以下の要件a1)?a4)、a6)?a8)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。
a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、T_(αα)に対するT_(αβ)の強度比(T_(αβ)/T_(αα))が1.5以下である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記エチレン・α-オレフィン共重合体が以下の要件a6)をさらに満たす請求項2に記載の太陽電池封止材。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」と記載されているのを、
「以下の要件a1)?a8)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。
a5)JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定される体積固有抵抗が1.0×10^(13)?1.0×10^(18)Ω・cmである。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。
a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、T_(αα)に対するT_(αβ)の強度比(T_(αβ)/T_(αα))が1.5以下である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」と記載されているのを、「請求項3または4にいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」と記載されているのを、「請求項3?5のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」と記載されているのを、「請求項3?8のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」に訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」と記載されているのを、「請求項3?9のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1?10のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」と記載されているのを、「請求項3?10のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」に訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」と記載されているのを、「請求項3?11のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。」に訂正する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1?12のいずれか一項に記載の太陽電池封止材の架橋体であり、」と記載されているのを、「請求項3?12のいずれか一項に記載の太陽電池封止材の架橋体であり、」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無、及び一群の請求項の適否
(1)訂正事項1及び2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1及び2は、請求項1及び2をそれぞれ削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1及び2は、請求項1及び2をそれぞれ削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項追加の有無
訂正事項1及び2は、請求項1及び2をそれぞれ削除する訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係をそれぞれ解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係をそれぞれ解消し、請求項1を引用する請求項2を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項追加の有無
訂正事項4は、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項5ないし11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5ないし11は、訂正前の請求項5?6及び9?13が訂正前の請求項1及び2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係をそれぞれ解消し、請求項1及び2を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項5ないし11は、請求項1及び2の削除に伴い、請求項1及び2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 新規事項追加の有無
訂正事項5ないし11は、請求項1及び2の削除に伴い、請求項1及び2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)一群の請求項の適否
訂正事項1?11に係る訂正前の請求項1?13について、請求項2?13はすべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?13に対応する訂正後の請求項1?13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1?11による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?13〕について訂正を認める。

第3 本件訂正発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1?13に係る発明(削除された請求項を含む、以下「本件訂正発明1?13」という)は、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
以下の要件a1)?a4)、a6)?a8)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。
a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、T_(αα)に対するT_(αβ)の強度比(T_(αβ)/T_(αα))が1.5以下である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)
【請求項4】
以下の要件a1)?a8)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。
a5)JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定される体積固有抵抗が1.0×10^(13)?1.0×10^(18)Ω・cmである。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。
a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、T_(αα)に対するT_(αβ)の強度比(T_(αβ)/T_(αα))が1.5以下である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)
【請求項5】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、1分間半減期温度が100?170℃の範囲にある有機過酸化物を0.1?3重量部さらに含む請求項3または4に記載の太陽電池封止材。
【請求項6】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、シランカップリング剤0.1?5重量部を含むエチレン系樹脂組成物からなる請求項3?5のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項7】
前記エチレン系樹脂組成物は、前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005?5重量部さらに含む請求項6に記載の太陽電池封止材。
【請求項8】
前記エチレン系樹脂組成物は、前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、架橋助剤を0.05?5重量部さらに含む請求項6または7に記載の太陽電池封止材。
【請求項9】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の、
a9)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づく分子量分布Mw/Mnが1.2?3.5の範囲にある請求項3?8のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項10】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の、
a10)固相抽出処理後の抽出液からイオンクロマトグラフィーにより検出される塩素イオンの含有割合が2ppm以下である請求項3?9のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項11】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の、
a11)酢酸メチルへの抽出量が5.0重量%以下である請求項3?10のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項12】
シート状である請求項3?11のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項13】
表面側透明保護部材と、
裏面側保護部材と、
太陽電池素子と、
請求項3?12のいずれか一項に記載の太陽電池封止材の架橋体であり、かつ、前記太陽電池素子を前記表面側透明保護部材と前記裏面側保護部材との間に封止する封止層と、
を備えた太陽電池モジュール。」

第4 取消理由および申立て理由の概要
1 取消理由の概要
当審において平成28年11月22日付けで通知した取消理由は、概略以下のとおりである。
なお、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される発明を、以下、請求項の項番に従い「本件発明1」などといい、全体をまとめて「本件発明」という。

(1)理由1
(新規性)本件発明1、2、6、7、10?13は、甲2?4、6、10、13号証を参酌すると、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(進歩性)本件発明2、5?9、12、13は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲1号証に記載された発明及び甲2?6、10、13号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)理由2
(進歩性)本件発明1?13は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲2号証に記載された発明及び甲1、3、5、6、8、9、11、12号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲1号証:特表2010-504647号公報
甲2号証:国際公開第2010/114028号
甲3号証:ENGAGEカタログ(Dow社、2008年9月発行)
甲4号証:日本ポリケム株式会社作成の分析結果報告書(日本ポリエチレン株式会社 雨宮隆浩、増村千晶)
「実験・分析に関する宣誓証明書」(平成28年8月24日)、
添付書類1(分析結果報告書 依頼受付番:NMR09-60)(報告日2009年9月15日)、
添付書類2(分析結果報告書 依頼受付番:NMR13-67)(報告日2013年6月3日)
甲5号証:国際公開第2006/057361号
甲6号証:「プラスチック成形加工データブック」社団法人日本塑性加工学会編 昭和63年3月25日初版1刷発行p.23、奥付
甲8号証:コンバーテック 2002.10 株式会社加工技術研究会発行 p.36?p.44
甲9号証:特開2011-12243号公報(公開日:平成23年1月20日)
なお、甲9号証は、本件特許出願の最先の優先日:平成22年11月2日後に公知になった文献である。
甲10号証:三菱化学株式会社作成の分析結果報告書(作成日:2013年6月27日、作成者:三菱化学株式会社 四日市事業所 開発研究所 分析技術室 無機分析グループ 今村直幹ら)
甲11号証:特開昭62-121711号公報
甲12号証:「バックナンバー/検索」と題する株式会社加工技術研究会のウェブサイト(http://www.ctiweb.co.jp/jp/convertech/con-bk.html):平成28年8月26日(印刷日)
甲13号証:技術報告書「ENGAGE8200の酢酸メチル抽出量」(作成日:2013年6月12日、作成者:日本ポリエチレン株式会社 研究開発部 上野真寛)

甲1号証には、実施例4に関して以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(下記3(1)イ参照。)
「ENGAGE(商標)8200 エチレン/1-オクテンランダムコポリマー(The Dow Chemical Company製)を97.34重量パーセント含む光起電力(PV)セルの封入フィルムであって、
前記ENGAGE8200の密度は0.87g/cm3(ASTM D-792の手順で測定)であり、メルトインデックスは5g/10分(標準的なASTM D1238、条件190℃/2.16kgに基づき測定)であり、
添加剤として、UV吸収剤Cyasorb UV531が0.3重量パーセント、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)が2重量パーセント添加される、
光起電力(PV)セルの封入フィルム。」

甲2号証には、特許異議申立書第101頁第13行?第103頁第8行に記載された以下の発明(以下「異議申立書甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「(構成1A”)
以下の条件b1’?b3’を満たすエチレン・a-オレフィン共重合体が98重量%含まれる太陽電池封止材。
(構成1B”)
(b1’)エチレンに由来する構成単位の含有割合が90mo1%であるとともに、炭素数6のa-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10mo1%である。
(構成1C”)
(b2’)JIS-K6922-2:1997附属書に準拠し、
190℃、21.18N荷重の条件で測定されるメルトインデックスが8g/10分である。
(構成ID”)
(b3’)JIS-K6922-2:1997附属書に準拠して測定される密度が0.880g/cm^(3)である。
(構成5A”)
エチレン・a-オレフィン共重合体が100重量部に対し、
有機過酸化物としてt-ブチルパーオキシー2-エチルへキシルカーボネートを0.5?3重量部をさらに含む。
(構成6A”)
エチレン・a-オレフィン共重合体が100重量部に対し、
シランカップリング剤0.1?2重量部を含むエチレン系樹脂組成物からなる
(構成7A”)
エチレン樹脂組成物は、エチレン・a-オレフィン共重合体100重量部に対し、ヒンダートアミン型光安定剤を0.05重量部さらに含む
(構成8A”)
エチレン系樹脂組成物は、エチレン・α一オレフィン共重合体100重量部に対し、架橋助剤を0?5重量部さらに含む
(構成12A”)
太陽電池封止材はシート状である
(構成13A”)
上部透明保護材と、
(構成13B”)
下部保護材と、
(構成13C”)
太陽電池素子と、
(構成13D”)
前記太陽電池素子を上部透明保護材と下部保護材との間に封止するエチレン・a-オレフィン共重合体を含む封止材と、
(構成13E”)
を備えた太陽電池モジュール。」

2 取消理由以外の申立て理由の概要
特許異議申立人は、上記取消理由以外に、以下の理由を申立てていた。
なお、甲7号証は以下のとおりである。
甲7号証:三菱化学株式会社作成の分析結果報告書(作成日:2013年1月29日、作成者:三菱化学株式会社 四日市事業所 開発研究所 分析技術室 無機分析グループ 寺岡良幸)

(1)新規性
本件発明5,8は、甲2?4を参酌すると、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)進歩性
本件発明1,3,4,10,11に係る特許は、甲1発明及び甲6、7、10、13に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(3)実施可能要件
甲4号証、甲7号証、甲10号証、甲13号証の分析報告書は、本件特許明細書の記載に準拠して各パラメータ値を分析したものであるが、仮に上記分析報告書での分析内容が本件特許明細書に記載の分析条件を再現できていないと判断される場合、本件特許明細書に記載の分析条件が、当業者が再現可能な程度に記載されていないことを意味する。そして、この場合、各パラメータ値が記載されている請求項1,3,4,10,11に係る発明及びこれらに直接又は間接的に従属する請求項2,5?9、12,13に係る発明は、特許法36条4項1号の規定に違反し、取消事由を有することになる。

(4)明確性
仮に上記分析報告書での分析内容が本件特許明細書に記載の分析条件を再現できていないと判断される場合、本件特許明細書に記載の分析条件が、当業者が再現可能な程度に記載されていないことを意味する。そして、この場合、各パラメータ値が記載されている請求項1,3,4,10,11に係る発明及びこれらに直接又は間接的に従属する請求項2,5?9、12,13に係る発明は、特許法36条6項2号の規定に違反し、取消事由を有することになる。

3 甲号証の記載
(1)甲1号証:特表2010-504647号公報
ア 甲1号証には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下、同様。)
(ア)「【請求項1】
A.少なくとも1つの電子装置、および
B.電子装置の少なくとも1つの面に密接に接触しているポリマー材料を含む電子装置モジュールであって、前記ポリマー材料が、(1)(a)約0.90g/cc未満の密度、(b)ASTM D-882-02により測定して約150メガパスカル(mPa)未満の2%割線係数、(c)約95℃未満の融点、(d)ポリマーの重量に基づいて少なくとも約15および約50重量%未満のα-オレフィン含量、(e)約-35℃未満のTg、ならびに(f)少なくとも約50%のSCBDIのうちの少なくとも1つの特性をもつポリオレフィンコポリマー、(2)所望により、コポリマーの重量に基づいて少なくとも約0.05重量%の量のフリーラジカル開始剤または光開始剤、および(3)所望により、コポリマーの重量に基づいて少なくとも約0.05重量%の量の助剤(co-agent)を含む、電子装置モジュール。
【請求項2】
電子装置がソーラーセルである、請求項1に記載のモジュール。」

(イ)「【0002】
技術分野
本発明は、電子装置モジュールに関する。一態様では、本発明は電子装置、例えばソーラーセルあるいは光起電力(PV)セル、および保護ポリマー材料を含む電子装置モジュールに関し、一方、別の態様では、本発明は、保護ポリマー材料が、(a)1立方センチメートル当たり約0.90グラム(g/cc)未満の密度、(b)低い弾性率、(c)約95℃未満の融点、(d)コポリマーの重量に基づいて約15から50重量パーセント(重量%)の間のα-オレフィン含量、(e)約-35℃未満のガラス転移温度(Tg)、および(f)50またはそれ以上の短鎖分枝分布指数(SCBDIまたはCDBI)のうちの少なくとも1つをもつポリオレフィンポリマーである電子装置モジュールに関する。さらに別の態様では、本発明は電子装置モジュールを作成する方法に関する。」

(ウ)「【0016】
典型的に、ポリオレフィンコポリマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ポリマー材料は、電子装置を完全に封入することができるか、または、その一部のみに密接に接触していることができ、例えば、装置の1つのフェイス面へ積層される。所望により、ポリマー材料はスコーチ防止剤をさらに含んでよく、モジュールが目的とする用途、コポリマーの化学組成、およびその他の要素に依存して、コポリマーは、架橋されないままであっても架橋されてもよい。架橋される場合、それはASTM 2765-95で測定して約70%未満の抽出可能なキシレン可溶物を含有するように架橋される。」

(エ)「【0025】
好ましい態様の説明
本発明の実践に有用なポリオレフィンコポリマーは、約0.90g/cc未満、好ましくは約0.89g/cc未満、より好ましくは約0.885g/cc未満、さらにより好ましくは約0.88g/cc未満、そしてさらにより好ましくは約0.875g/cc未満の密度を有する。ポリオレフィンコポリマーは、典型的に約0.85より大きい、そしてより好ましくは約0.86g/ccより大きい密度を有する。密度は、ASTM D-792の手順で測定される。低密度ポリオレフィンコポリマーは、典型的非晶質で、軟質であり、かつ良好な光学的特性を有している(例えば、可視光とUV光の透過率が高く、曇りが少ない)として通常特徴づけられる。
・・・(途中省略)・・・
【0028】
本発明の実践に有用なポリオレフィンコポリマーとしては、インターポリマーの重量に基づいて、約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約25重量%の間のα-オレフィン含量を有するエチレン/α-オレフィンインターポリマーが挙げられる。これらのインターポリマーは、典型的に、インターポリマーの重量に基づいて約50重量%未満、好ましくは約45重量%未満、より好ましくは約40重量%未満、そしてさらにより好ましくは約35重量%未満のα-オレフィン含量を有する。α-オレフィン含量は、ランドール(Rev. Macromol Chem. Phys., C29 (2&3) )に記載される手順を用いて、13C核磁気共鳴(NMR)分光分析法により測定される。一般に、インターポリマーのα-オレフィン含量が大きくなるほど、密度は低くインターポリマーはより非晶質となり、これは、モジュールの保護ポリマー成分に望ましい物理的および化学的特性となる。
・・・(途中省略)・・・
【0033】
本発明の実践に有用なポリオレフィンコポリマーは、ASTM D-3418-03の手順を用いて示差走査熱量測定(DSC)により測定して約-35℃未満、好ましくは約-40℃未満、より好ましくは約-45℃未満、そしてさらにより好ましくは約-50℃未満のTgを有する。さらに、典型的に、本発明の実践に用いられるポリオレフィンコポリマーは、約100g/10分未満、好ましくは約75g/10分未満、より好ましくは約50g/10分未満、そしてさらにより好ましくは約35g/10分未満のメルトインデックス(ASTM D-1238(190℃/2.16kg)の手順により測定されるMI)も有する。典型的な最小MIは約1であり、より典型的にそれは約5である。
・・・(途中省略)・・・
【0036】
本発明の実践に用いられるポリオレフィンコポリマーの低い密度および弾性率に起因して、これらのコポリマーは、接触の時点で、もしくはモジュールが構築された後、通例は直後に、典型的に硬化または架橋される。架橋は、電子装置を環境から保護するためのその機能におけるコポリマーの性能にとって重要である。具体的には、架橋は、コポリマーの耐熱クリープ性、ならびに、熱、衝撃、および耐溶剤性に関してモジュールの耐久性を強化する。架橋は、多数の異なる方法の任意の一方法により、例えば、熱により開始される開始剤、例えば、過酸化物およびアゾ化合物;光開始剤、例えば、ベンゾフェノン;日光、紫外光、電子ビームおよびX線を含む放射線手法;ビニルシラン、例えば、ビニルトリエトキシまたはビニルトリメトキシシラン;ならびに湿気硬化の使用により、達成することができる。
【0037】
本発明の実践に用いられるフリーラジカル開始剤には、比較的不安定で少なくとも2つのラジカルに容易に割り込む、任意の熱により活性化される化合物が含まれる。このクラスの化合物の代表は、過酸化物、特に有機過酸化物、およびアゾ開始剤である。架橋剤として用いられるフリーラジカル開始剤の中では、ジアルキルペルオキシド開始剤およびジペルオキシケタール開始剤が好ましい。これらの化合物は、「Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd edition, Vol. 17, pp 27-90. (1982)」に記載されている。
・・・(途中省略)・・・
【0039】
ジペルオキシケタール開始剤の群の中で好ましい開始剤は、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンn-ブチル、4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)吉草酸、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチラート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-エトキシカルボニルメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)吉草酸、エチル-3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)-ブチラート、およびこれら開始剤の2又はそれ以上の混合物である。
【0040】
その他の過酸化物開始剤、例えば、00-t-ブチル-0-水素-モノペルオキシスクシナート;00-t-アミル-0-水素-モノペルオキシスクシナートおよび/またはアゾ開始剤、例えば、2,2’-アゾビス-(2-アセトキシプロパン)も、架橋されたポリマーマトリックスをもたらすために用いることができる。その他の適したアゾ化合物としては、米国特許第3,862,107号および第4,129,531号に記載のものが挙げられる。2又はそれ以上のフリーラジカル開始剤の混合物も、本発明の範囲内の開始剤として、共に使用してよい。その上、フリーラジカルは、剪断エネルギー、熱または放射線から形成され得る。
【0041】
本発明の架橋可能な組成物中に存在する過酸化物またはアゾ開始剤の量は、大きく変動する可能性があるが、その最少量は望まれる架橋の程度をもたらすために十分な量である。開始剤の最少量は、典型的に、架橋される1又は複数のポリマーの重量に基づいて、少なくとも約0.05重量%、好ましくは少なくとも約0.1重量%、およびより好ましくは少なくとも約0.25重量%である。これらの組成物中に用いられる開始剤の最大量は、大きく変動する可能性があるが、典型的に、コスト、効率、および所望する架橋の所望の程度などの要因により決定される。その最大量は、架橋される1又は複数のポリマーの重量に基づいて、約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、およびより好ましくは約3重量%未満である。
・・・(途中省略)・・・
【0045】
フリーラジカル架橋助剤、すなわち促進剤または共開始剤としては、多官能性ビニルモノマーおよびポリマー、トリアリルシアヌレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ポリオールのアクリレートおよびメタクリレート、アリルアルコール誘導体、および低分子量ポリブタジエンが挙げられる。硫黄架橋促進剤としては、ベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、銅ジメチルジチオカーバメート、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびテトラメチルチウラムモノスルフィドが挙げられる。
【0046】
これらの助剤は公知量および公知の方法で用いられる。助剤の最小量は、典型的に、架橋される1又は複数のポリマーの重量に基づいて、少なくとも約0.05重量%、好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%である。これらの組成物中に用いられる助剤の最大量は大きく変動する可能性があり、それは典型的に、コスト、効率および所望する架橋の所望の程度などの要因により決定される。最大量は、典型的に、架橋される1又は複数のポリマーの重量に基づいて、約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約3重量%未満である。
・・・(途中省略)・・・
【0064】
図1において、硬質PVモジュール10は、本発明の実践に用いられるポリオレフィンコポリマーを含む透明な保護層または封入剤12により包囲されているかまたは封入されている光起電力セル11を含む。ガラスカバーシート13は、PVセル11を覆って配置された透明な保護層の一部分のフロント面を覆う。バックスキンまたはバックシート14は、例えば、第2のガラスカバーシートまたは任意の種類の別の基材であり、PVセル11の裏面に配置された透明な保護層12の一部分の裏面を支持する。バックスキン層14は、その向かい合っているPVセルの面が日光に反応性でない場合、透明である必要はない。この実施形態では、保護層12はPVセル11を封入する。これらの層の厚さは絶対的状況および相互比較の両方において本発明にとって絶対不可欠ではなく、それ自体はモジュールの全体的な設計および目的に応じて大きく変動し得る。保護層12に対する典型的な厚さは、約0.125から約2ミリメートル(mm)の範囲内であり、ガラスカバーシートおよびバックスキン層に対しては約0.125から約1.25mmの範囲内である。電子装置の厚さも大きく変動し得る。」

(オ)「【実施例4】
【0084】
ランダムコポリマーポリエチレン系封入フィルム
ENGAGE(商標)8200 エチレン/1-オクテンランダムコポリマー(The Dow Chemical Company製)をこの実施例に使用する。その密度は0.87g/cm^(3)であり、メルトインデックスは5g/10分(標準的なASTM D1238、条件190℃/2.16kgに基づき測定)。この樹脂中には100ppmの抗酸化剤Irganox1076が存在する。官能価を加えるため、または樹脂の長期安定性を改良するために数種類の添加剤を選択する。それらはUV吸収剤Cyasorb UV531、UV安定剤Chimassorb 944 LD、抗酸化剤Tinuvin 622 LD、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、および過酸化物Luperox-101である。処方(重量%)は表3に記載される。
【表3】
フィルムの処方




イ 甲1発明
以上の記載事項から、甲1号証には、実施例4に関して以下の発明(「甲1発明」)が記載されていると認められる。

「ENGAGE(商標)8200 エチレン/1-オクテンランダムコポリマー(The Dow Chemical Company製)を97.34重量パーセント含む光起電力(PV)セルの封入フィルムであって、
前記ENGAGE8200の密度は0.87g/cm^(3)(ASTM D-792の手順で測定)であり、メルトインデックスは5g/10分(標準的なASTM D1238、条件190℃/2.16kgに基づき測定)であり、
添加剤として、UV吸収剤Cyasorb UV531が0.3重量パーセント、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)が2重量パーセント添加される、
光起電力(PV)セルの封入フィルム。」

(2)甲2号証:国際公開第2010/114028号
ア 甲2号証には次の事項が記載されている。
「[0001]本発明は、太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュールに関し、より詳しくは、エチレン・α-オレフィン共重合体と有機過酸化物又はシランカップリング剤などを含有し、耐熱性、透明性、柔軟性、及びガラス基板への接着性に優れ、剛性と架橋効率とのバランスもよい太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュールに関するものである。」
・・・(途中省略)・・・
[0001] 即ち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)及び、成分(B)及び/または成分(C)を含有することを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物が提供される。
・・・(途中省略)・・・
[0021] 本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体は、そのα-オレフィンの含有量が5?40重量%であり、好ましくは10?35重量%、より好ましくは15?30重量%である。この範囲であれば柔軟性と耐熱性が良好である。
ここでα-オレフィンの含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製
JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
[0022](ii)成分(A)の重合触媒及び重合法
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体は、チーグラー触媒、バナジウム触媒又はメタロセン触媒等、好ましくはバナジウム触媒又はメタロセン触媒、より好ましくはメタロセン触媒を使用して製造することができる。製造法としては、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等が挙げられる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。市販品としては、日本ポリエチレン社製のハーモレックス(登録商標)シリーズ、カーネル(登録商標)シリーズ、プライムポリマー社製のエボリュー(登録商標)シリーズ、住友化学社製のエクセレン(登録商標)GMHシリーズ、エクセレン(登録商標)FXシリーズが挙げられる。バナジウム触媒としては、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウムハライドとを触媒成分とする触媒が挙げられる。
[0023](iii)成分(A)の特性
(a1)密度
本発明で用いるエチレン・α-オレフィン共重合体は、密度が0.860?0.920g/cm^(3)であり、好ましくは0.870?0.915g/cm^(3) 、さらに好ましくは0.875?0.910g/cm^(3)である。エチレン・α-オレフィン共重合体の密度が0.860g/cm^(3)未満では、加工後のシートがブロッキングしてしまい、密度が0.920g/cm^(3) を超えると加工後のシートの剛性が高すぎて、取り扱い性に欠けるものとなる。
・・・(途中省略)・・・
[0034](2)成分(B)
本発明における成分(B)の有機過酸化物は、主に成分(A)を架橋するために用いられる。
[0035] 有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70?180℃、とくに90?160℃の有機過酸化物を用いることができる。このような有機過酸化物として、例えば、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ジパーオキシベンゾエート、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
[0036](3)成分(B)の配合割合
成分(B)の配合割合は、成分(A)を100重量部としたときに、好ましくは、0.2?5重量部であり、より好ましくは、0.5?3重量部、さらに好ましくは、1?2重量部である。成分(B)の配合割合が上記範囲よりも少ないと、架橋しないかまたは架橋に時間がかかる。また、上記範囲よりも大きいと、分散が不十分となり架橋度が不均一になりやすい。
[0037](4)成分(C)
本発明の樹脂組成物に用いる成分(C)は、シランカップリング剤であり、主に太陽電池の上部保護材や太陽電池素子との接着力を向上させる目的で用いられる。
本発明におけるシランカップリング剤としては、例えばγ-クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロルシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニル-トリス-(β-メトキシエトキシ)シラン;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
これらのシランカップリング剤は、エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対して0?5重量部使用し、好ましくは0.01?5重量部、より好ましくは0.01?2重量部、さらに好ましくは0.1?2重量部、特に好ましくは0.5?1重量部、最も好ましくは0.05?1重量部で使用される。
・・・(途中省略)・・・
[0043](6)架橋助剤
また、本発明の樹脂組成物には架橋助剤を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン・α-オレフィン共重合体の架橋度を高めるのに有効であり、その具体例としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物を例示することができる。
[0044] より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。架橋助剤は、成分(A)100重量部に対し、0?5重量部程度の割合で配合することができる。
・・・(途中省略)・・・
[0050] この太陽電池封止材を用いれば、太陽電池素子を上下の保護材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
・・・(途中省略)・・・
[0056] 一方、太陽電池モジュールを製造する際、有機過酸化物が実質的に分解せず、かつ本発明の封止材料が溶融するような温度で、太陽電池素子や保護材に該封止材を仮接着し、次いで昇温して充分な接着とエチレン・α-オレフィン共重合体の架橋を行うこともできる。この場合は、封止材層の融点(DSC法)が40℃以上、150℃の貯蔵弾性率が103 Pa以上の耐熱性が良好な太陽電池モジュールを得るために、封止材層におけるゲル分率(試料1gをキシレン100mlに浸漬し、110℃、24時間加熱した後、20メッシュ金網で濾過し未溶融分の質量分率を測定)が50?98%、好ましくは70?95%程度になるように架橋するのがよい。
・・・(途中省略)・・・
[0060]1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):エチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度:前述の通り、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
(3)Mz/Mn:前述の通り、GPCにより測定した。
(4)溶融粘度:JIS-K7199-1999に準拠して、東洋精機製作所製キャピログラフ1-Bを用い、設定温度:100℃、D=1mm、L/D=10のキャピラリーを用いて、せん断速度2.43×10sec^(-1) での溶融粘度(η^(*)_(1) )、せん断速度2.43×10^(2) sec^(-1) での溶融粘度(η^(*)_(2))の測定を行う。
・・・(途中省略)・・・
[0064](3)引張弾性率
厚み0.7mmのプレスシートを用いて、ISO1184-1983に準拠して測定した。尚、引張速度1mm/min、試験片幅10mm、つかみ具間を100mmとし、伸び率1%のときの引張弾性率を求めた。この値が小さい程、柔軟性に優れていることを示す。
(4)耐熱性
160℃で30分架橋したシート及び150℃で30分架橋したシートのゲル分率で評価した。ゲル分率が高いほど架橋が進行しており、耐熱性が高いと評価できる。ゲル分率が70wt%のものを、耐熱性評価「○」とした。尚、ゲル分率は、当該シートを、約1gを切り取り精秤して、キシレン100ccに浸漬し110℃で24時間処理し、ろ過後残渣を乾燥し精秤して、処理前の重量で割りゲル分率を算出する。
・・・(途中省略)・・・
[0069]<製造例3>
製造例1において、重合時の1-ヘキセンの組成を74重量%にし、重合温度を135℃に代えた以外は製造例1と同様の製法で重合を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約3.3kgであった。反応終了後、1-ヘキセン含有量=24重量%、MFR=8g/10分、密度=0.880g/cm^(3) 、Mz/Mn=3.7であるエチレン・1-ヘキセン共重合体(PE-3)を得た。製造例1と同様に引張弾性率測定を行った結果、17MPaであった。このエチレン・1-ヘキセン共重合体(PE-3)の特性を表1に示す。
・・・(途中省略)・・・
[0071][表1]

[0072](実施例1)
エチレンとヘキセン-1の共重合体(PE-1)100重量部に対して、有機過酸化物として、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富社製、ルペロックス101)を1.5重量部と、ヒンダードアミン系光安定化剤(a)として、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(チバ・ジャパン社製、CHIMASSORB 2020FDL)0.2重量部配合した。これを十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いて設定温度130℃、押出量(17kg/時)の条件でペレット化した。 得られたペレットを、160℃-0kg/cm^(2) の条件で、3分予熱後、160℃-100kg/cm^(2) の条件で、27分加圧(160℃で30分間プレス成形)、その後、30℃に設定された冷却プレスに100kg/cm^(2) の加圧の条件で、10分間冷却することで、厚み0.7mmのシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
・・・(途中省略)・・・
[0074](実施例3)
実施例1において、ヒンダードアミン系光安定化剤(b)として、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物を0.05重量部用いた以外は、実施例1と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。
・・・(途中省略)・・・
[0076](実施例5)
実施例3において、PE-1に替えて、PE-4を用いた以外は、実施例3と同様にシートを作製した。シートのHAZE、光線透過率、引張弾性率、耐熱性を測定、評価した。評価結果を表2に示す。」
なお、上記 [0069]の「(PE-3)」は、「(PE-4)」の誤記と認められる。

イ 甲2発明
以上の記載事項から、甲2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「エチレン・α-オレフィン共重合体と有機過酸化物又はシランカップリング剤などを含有する太陽電池封止材を用いた太陽電池モジュールであって、
太陽電池封止材用樹脂組成物は、下記の成分(A)及び、成分(B)及び/または成分(C)を含有し、
成分(A)エチレン・α-オレフィン共重合体、、
成分(B)分解温度(半減期が1時間である温度)が90?160℃の有機過酸化物、
成分(C) シランカップリング剤 、
上記成分(A)として、1-ヘキセン含有量が24重量%のエチレンとヘキセン-1の共重合体を用い、
上記成分(B)として、有機過酸化物をエチレンとヘキセン-1の共重合体100重量部に対して1.7(1.5+0.2)重量部配合し、
ヒンダードアミン系光安定化剤を0.05重量部用い、
JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定したMFRは、8g/10分であり、
JIS-K6922-2:1997附属書に準拠して測定した密度は、0.880g/cm^(3) であり、
上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材の構成とした太陽電池モジュール。」

(3)甲3号証:ENGAGEカタログ(Dow社、2008年9月発行)
甲3号証には、2頁目の「Typical Propert ies for Ethylene Octene Grades」(エチレン・オグデン・グレードの典型的特性)の表をみると、ENGAGE8200のASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が66である旨が記載されている。

(4)甲4号証:日本ポリケム株式会社作成の分析結果報告書(日本ポリエチレン株式会社 雨宮隆浩、増村千晶)
「実験・分析に関する宣誓証明書」(平成28年8月24日)、
添付書類1(分析結果報告書 依頼受付番:NMR09-60)(報告日2009年9月15日)、
添付書類2(分析結果報告書 依頼受付番:NMR13-67)(報告日2013年6月3日)
添付書類1には、以下の記載がある。
「件名:NMR依頼測定 カーネル及び他社エラストマー」
「【概要】カーネル及び他社エラストマーのH、C-NMR測定を行い、以下の結果を得た。」
また、表には、EG8200について、エチレンが87.8mol%、全コモノマーが12.3mol%と記載されている。

添付書類2には、以下の記載がある。
「件名:・・・、Engage、・・・Tafmerの分析(再解析)」
「【概要】・・・EG8200、P0180のB値、異種結合量(αβ/αα比)を計測した。」
また、表には、EG8200について、Tαβ/Tααが<0.01、B値が0.98と記載されている。

(5)甲5号証:国際公開第2006/057361号
甲5号証には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「[0351]エチレン・α -オレフィン共重合体(C7)は、X線回折法により測定される結晶化度 が通常40%以下、好ましくは10?30%である。
また、このエチレン・α -オレフィン共重合体(C7)は、ゲルパーミーシヨンクロマトグラフィー(GPC)により求めた分子量分布(Mw/Mn)の値が1.5?3.0、好ましくは1.7?2.5の範囲にあることが望ましい。分子量分布(Mw/Mn)の値が上記範囲 にあるエチレン・α -オレフィン共重合体(C7)を用いると、圧縮永久歪み性および賦形性に優れる発泡体を調製できる発泡体用材料 (X7)が得られる。上記のようなエチレン・α -オレフィン共重合体(C7)は、通常エラストマ一としての性質を示す。」

(6)甲6号証:「プラスチック成形加工データブック」社団法人日本塑性加工学会編 昭和63年3月25日初版1刷発行p.23、奥付
甲6号証には、以下のグラフが記載されている。




(7)甲7号証:三菱化学株式会社作成の分析結果報告書(作成日:2013年1月29日、作成者:三菱化学株式会社 四日市事業所 開発研究所 分析技術室 無機分析グループ 寺岡良幸)
甲7号証には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「ポリエチレン中のアルミ定量
・・・(途中省略)・・・
表1 Al定量分析結果
試料名称 Al(μg/g)
・・・(途中省略)・・・
(4)ENGAGE8200 2 」

(8)甲8号証:井野、杉本「太陽電池パネル材の開発動向(1)」コンバーテック 2002.10 株式会社加工技術研究会発行 p.36?p.44
甲8号証には次の事項が記載されている。
「チタンのような遷移金属触媒を用いる重合系では、反応の処理や触媒効率にもよるが、2?100ppmの金属がポリオレフィン中に残っている。これらの残留金属によって、ポリマーの光に対する安定性や熱安定性が影響を受けると考えられているが、その効果は比較的小さいという報告もある。」(第41頁左欄第23行?27行)

(9)甲9号証:特開2011-12243号公報(公開日:平成23年1月20日)
なお、甲9号証は、本件特許出願の最先の優先日:平成22年11月2日後に公知になった文献であり、以下の記載がある。
「【0035】
〔要件e)〕
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)の金属残渣が0.1?50ppmであり、好ましくは0.1?45ppm、さらに好ましくは0.1?40ppmである。金属残渣が0.1ppm未満であると、重合触媒の脱灰操作が必須となり、プラント固定費、用役費等が高くなり製品コストが高くなり、さらに、脱灰処理に用いる酸あるいはアルカリも多量必要となり、残存する可能性が高くなり、残存した酸またはアルカリにより電極等の腐食を起こす可能性がある。金属残渣が50ppm超過であると、金属残渣により体積固有抵抗、絶縁破壊抵抗の低下が起こる。」

(10)甲10号証:三菱化学株式会社作成の分析結果報告書(作成日:2013年6月27日、作成者:三菱化学株式会社 四日市事業所 開発研究所 分析技術室 無機分析グループ 今村直幹ら)
甲10号証には次の事項が記載されている。
「ポリエチレン中のアルミおよび塩化物イオン定量
・・・(途中省略)・・・
3.分析方法
3-1 Cl-定量
試料5gをバイアル瓶に採取し、超純水50mlを添加して密閉した後、超音波振抽出を30分間実施した。得られた抽出液中のCl-をイオンクロマトグラフで測定した。
(装置)イオンクロマトグラフ:Dionex社製 ICS-1600型
・・・(途中省略)・・・
4.結果
分析結果を表1,表2に示す。
表1 ポリエチレン中のCl-、全Cl定量分析結果
試料名 Cl-[μg/g] 全Cl[μg/g]
ENGAGE8200 <1 -」

(11)甲11号証:特開昭62-121711号公報
甲11号証には次の事項が記載されている。
「2 特許請求の範囲
1.エチレン、炭素原子数3?20のα-オレフィンおよび炭素原子数が5?20の非共役ポリエンからの低結晶性エチレン系ランダム共重合体であつて、・・・」(第1頁左下欄第5行?第9行)

「本発明の低結晶性エチレン系ランダム共重合体の沸騰酢酸メチル可溶分量は2重量%以下、好ましくは1.5?0.01重量%、とくに好ましくは1.0?0.03重量%、とりわけ好ましくは0.6?0.05重量%の範囲である。」(第9頁左下欄第1行?第5行)

(12)甲12号証:「バックナンバー/検索」と題する株式会社加工技術研究会のウェブサイト(http://www.ctiweb.co.jp/jp/convertech/con-bk.html):平成28年8月26日(印刷日)
甲12には、コンバーテックバックナンバー一覧が記載されている。

(13)甲13号証:技術報告書「ENGAGE8200の酢酸メチル抽出量」(作成日:2013年6月12日、作成者:日本ポリエチレン株式会社 研究開発部 上野真寛)
甲13号証には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)

「1.目的
Dow社製 ENGAGE8200の酢酸メチル抽出量を測定する。
2.内容
1)サンプル
Dow社製 ENGAGE8200ペレット
2)実験方法
・・・(途中省略)・・・
3.結果
・・・(途中省略)・・・
抽出量wt% 0.02%」

第5 当審の判断
1 取消理由についての検討
本件特許の請求項1、2は本件訂正請求により削除されたので、請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立ては却下する。
そして、本件訂正発明3?13について以下に検討する。

(1)理由1 (新規性)(進歩性)について
本件訂正発明3,4については理由1による取消理由は通知されていないので、本件訂正発明5?13について言及する。
ア 本件訂正発明5について
(ア)本件訂正発明5と甲1発明との対比

本件訂正発明5の「エチレン/1-オクテンランダムコポリマー」は、エチレン・α-オレフィン共重合体であるから、甲1発明の「ENGAGE(商標)8200 エチレン/1-オクテンランダムコポリマー(The Dow Chemical Company製)を97.34重量パーセント含むソーラーセルあるいは光起電力(PV)セルの封入フィルム」の材料は、本件訂正発明5の「エチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材」に相当する。

甲1発明の「メルトインデックスは5g/10分(標準的なASTM D1238、条件190℃/2.16kgに基づき測定)」は、本件訂正発明5の「a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。」に相当する。

甲1発明の密度の測定は、「ASTM D-792の手順で測定」されており、本件訂正発明5の「ASTM D1505に準拠して測定」することとは、手法が異なるが、密度としては、いずれの測定手法によっても同じ値が得られるので、甲1発明の「前記ENGAGE8200の密度は0.87g/cm3(ASTM D-792の手順で測定)」であることは、本件訂正発明5の「a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である」ことに相当するといえる。

したがって、本件訂正発明5と甲1発明は、
「以下の要件a2)およびa3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。」
の点で一致し(以下「一致点1」という。)、以下の点で相違する。

(相違点1)本件訂正発明5は、「a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。」のに対し、甲1発明は、由来成分の構成比について特定していない点。

(相違点2)本件訂正発明5は、「a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。」のに対し、甲1発明は、硬度について特定していない点。

(相違点3)本件訂正発明5は、「a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」のに対し、甲1発明は、エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量について特定していない点。

(相違点4)本件訂正発明5は、「a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)」のに対し、甲1発明は、B値について特定していない点。

(相違点5)本件訂正発明5は、「a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、T_(αα)に対するT_(α)βの強度比(T_(αβ)/T_(αα))が1.5以下である。」のに対し、甲1発明は、強度比(T_(αβ)/T_(αα))について特定していない点。

(相違点6)本件訂正発明5は、「1分間半減期温度が100?170℃の範囲にある有機過酸化物を0.1?3重量部さらに含む」のに対し、甲1発明は、「1分間半減期温度が100?170℃の範囲にある有機過酸化物」について特定していない点。

本件訂正発明5は本件訂正発明3または4を引用する発明であり、本件訂正発明5が本件訂正発明4を引用する場合、さらに以下の相違点がある。

(相違点7)本件訂正発明5は、「太陽電池封止剤」の「a5)JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定される体積固有抵抗が1.0×10^(13)?1.0×10^(18)Ω・cmである。」のに対し、甲1発明は、体積固有抵抗について特定していない点。

(イ)本件訂正発明5についての判断
事案に鑑み相違点3について検討する。
甲7号証の分析結果報告書には、ENGAGE8200のAl定量分析結果として2(μg/g)であることが、記載されている。なお、2(μg/g)は2ppmに相当する。
この結果は、相違点3に係る「a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」との構成と異なるものである。
そして、甲1発明の「ENGAGE(商標)8200 エチレン/1-オクテンランダムコポリマー(The Dow Chemical Company製)」のアルミニウム元素の含有量を2ppmから10?500ppmにすることについて、本件特許出願の優先日前のいずれの各号証に記載も示唆もない(なお、甲9号証は、本件特許出願の優先日である平成22年11月2日後に公知になった文献である。)
そして、本件訂正発明5は相違点3に係る構成を備えることにより、本件特許明細書段落0044?0047、段落0188の表1、段落0193の表2、段落200の表3に記載されるように、電気特性、電気腐食性、シートブロッキング性、カレンダー加工性を向上させるとの効果を奏するものであるから、アルミニウム元素の含有量を2ppmから10?500ppmにすることが設計変更程度のことであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明5は、相違点1,2、4?7について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件訂正発明6について
甲1発明において、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)は、シランカップリング剤であり、ENGAGE8200 100重量部に対し、2.05重量部(=2×100/97.34)であるから、甲1発明の「ビニルトリメトキシシラン(VTMS)2(重量パーセント)」は本件訂正発明6の「前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、シランカップリング剤0.1?5重量部」に相当する。
したがって、本件訂正発明6は、一致点1に加え、「前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、シランカップリング剤0.1?5重量部」である点で甲1発明と一致し、少なくとも相違点1?5で相違する。
してみると、本件訂正発明6は、甲1発明とは相違点3を有するから、甲1発明であるとはいえない。
そして、相違点3については、上記「ア」「(イ)本件訂正発明5についての判断」で検討したとおりであるから、本件訂正発明6は、相違点1、2、4、5について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 本件訂正発明7について
甲1発明において、UV吸収剤Cyasorb UV531は、紫外線吸収剤であり、ENGAGE8200 100重量部に対し、0.308重量部(=0.3×100/97.34)であるから、甲1発明の「UV吸収剤Cyasorb UV531 0.3(重量パーセント)」は、本件訂正発明7の「前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005?5重量部さらに含む」に相当する。
したがって、本件訂正発明7は、一致点1に加え、「前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005?5重量部さらに含む」点で甲1発明と一致し、少なくとも相違点1?5で相違する。
してみると、本件訂正発明7は、甲1発明とは相違点3を有するから、甲1発明であるとはいえない。
そして、相違点3については、上記「ア」「(イ)本件訂正発明5についての判断」で検討したとおりであるから、本件訂正発明7は、相違点1、2、4、5について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、甲1発明と少なくとも相違点1?5で相違し、さらに以下の相違点で相違する。
(相違点8)本件訂正発明8は、「架橋助剤を0.05?5重量部さらに含む」のに対し、甲1発明は、架橋助剤の含有量について特定していない点。
したがって、本件訂正発明8は、甲1発明と少なくとも相違点1?5及び8で相違する。
してみると、本件訂正発明8は、相違点3を有するものであり、相違点3については、上記「ア」「(イ)本件訂正発明5についての判断」で検討したとおりであるから、本件訂正発明8は、相違点1、2、4、5、8について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

オ 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、甲1発明と少なくとも相違点1?5で相違し、さらに以下の相違点で相違する。
(相違点9)本件訂正発明9は、「a9)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づく分子量分布Mw/Mnが1.2?3.5の範囲にある」のに対し、甲1発明のENGAGE8200を含有する樹脂組成物には、この点が特定されていない点。
したがって、本件訂正発明9は、甲1発明と少なくとも相違点1?5及び9で相違する。
してみると、本件訂正発明9は、相違点3を有するものであり、相違点3については、上記「ア」「(イ)本件訂正発明5についての判断」で検討したとおりであるから、本件訂正発明9は、相違点1、2、4、5、9について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

カ 本件訂正発明10について
甲10号証には、ENGAGE8200を試料とし、抽出液中のCl^(-)をイオンクロマトグラフで測定し、<1(Cl^(-)[μg/g](=[ppm]))の定量分析結果が得られたことが記載されている。
よって、甲1発明の「ENGAGE8200」の抽出液中のCl^(-)は、イオンクロマトグラフで<1ppmと測定されることは、本件発明10の「固相抽出処理後の抽出液からイオンクロマトグラフィーにより検出される塩素イオンの含有割合が2ppm以下である」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明10は、一致点1に加え、「a10)固相抽出処理後の抽出液からイオンクロマトグラフィーにより検出される塩素イオンの含有割合が2ppm以下である」点で甲1発明と一致し、少なくとも相違点1?5で相違する。
してみると、本件訂正発明10は、甲1発明とは相違点3を有するから、甲1発明であるとはいえない。

キ 本件訂正発明11について
甲13号証には、ENGAGE8200の酢酸メチル抽出量が0.02(wt%)であることが記載されている。
よって、甲1発明の「ENGAGE8200」の酢酸メチル抽出量が0.02(wt%)と測定されることは、本件発明11の「酢酸メチルへの抽出量が5.0重量%以下である」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明11は、一致点1に加え、「a11)酢酸メチルへの抽出量が5.0重量%以下である」点で甲1発明と一致し、少なくとも相違点1?5で相違する。
してみると、本件訂正発明11は、甲1発明とは相違点3を有するから、甲1発明であるとはいえない。

ク 本件訂正発明12について
甲1発明の「フィルム」であることは、本件発明12の「シート状」に相当する。
したがって、本件訂正発明12は、一致点1に加え、「シート状である」点で甲1発明と一致し、少なくとも相違点1?5で相違する。
してみると、本件訂正発明12は、甲1発明とは相違点3を有するから、甲1発明ではない。
そして、相違点3については、上記「ア」「(イ)本件訂正発明5についての判断」で検討したとおりであるから、本件訂正発明12は、相違点1、2、4、5について検討するまでもなく、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

ケ 本件訂正発明13について
甲1号証に「【0064】 図1において、硬質PVモジュール10は、本発明の実践に用いられるポリオレフィンコポリマーを含む透明な保護層または封入剤12により包囲されているかまたは封入されている光起電力セル11を含む。ガラスカバーシート13は、PVセル11を覆って配置された透明な保護層の一部分のフロント面を覆う。バックスキンまたはバックシート14は、例えば、第2のガラスカバーシートまたは任意の種類の別の基材であり、PVセル11の裏面に配置された透明な保護層12の一部分の裏面を支持する。」と記載されているように、甲1発明の封入フィルムは、光起電力セル11を封入し、ガラスカバーシート13で覆われ、バックスキンまたはバックシート14で裏面を支持される硬質PVモジュール10に用いられるものである。よって、甲1発明の封入フィルムは、光起電力セル11を包囲または封入しており、光起電力セル11とガラスカバーシート13との間及び光起電力セル11とバックスキンまたはバックシート14との間にあるものである。
また、甲1号証の「【0036】本発明の実践に用いられるポリオレフィンコポリマーの低い密度および弾性率に起因して、これらのコポリマーは、接触の時点で、もしくはモジュールが構築された後、通例は直後に、典型的に硬化または架橋される。」などの記載から、甲1発明の封入フィルムは、硬質PVモジュール10において架橋体である。
そして、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の「ガラスカバーシート13」、「バックスキンまたはバックシート14」及び「光起電力セル11」は、本件訂正発明13の「表面側透明保護部材」、「裏面側保護部材」及び「太陽電池素子」に相当し、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の「封入フィルム」(甲1発明)は、架橋体として用いられることは明らかであるから、本件訂正発明13の「太陽電池封止材の架橋体であり、かつ、前記太陽電池素子を前記表面側透明保護部材と前記裏面側保護部材との間に封止する封止層」に相当する。
したがって、本件訂正発明13と甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の発明とは、
「表面側透明保護部材と、
裏面側保護部材と、
太陽電池素子と、
太陽電池封止材の架橋体であり、かつ、前記太陽電池素子を前記表面側透明保護部材と前記裏面側保護部材との間に封止する封止層と、
を備えた太陽電池モジュール。」で一致し、
少なくとも相違点1?5で相違する。
してみると、本件訂正発明13は、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の発明とは相違点3を有するから、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の発明ではない。
そして、相違点3については、上記「ア」「(イ)本件訂正発明5についての判断」で検討したとおりであるから、本件訂正発明12は、相違点1、2、4、5について検討するまでもなく、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

コ 理由1 (新規性)(進歩性)についてのまとめ
上記ア?ケのとおり、本件訂正発明6、7、10?12は、甲1発明ではなく、本件訂正発明13は、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の発明ではない。
また、本件訂正発明5?9、12は、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、本件訂正発明13は、甲1号証に記載された「硬質PVモジュール10」の発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)理由2 (進歩性)について
ア 本件訂正発明3について
(ア)本件訂正発明3と甲2発明との対比
甲2発明において、「1-ヘキセン含有量が24重量%のエチレンとヘキセン-1の共重合体」、「有機過酸化物をエチレンとヘキセン-1の共重合体100重量部に対して1.7(1.5+0.2)重量部」、「ヒンダードアミン系光安定化剤を0.05重量部」の配合割合から、エチレン・α-オレフィン共重合体が98(={100/(100+1.7+0.05)}×100)重量%を占めることから、甲2発明の太陽電池封止材用樹脂組成物において、エチレン・α-オレフィン共重合体は主成分であるといえる。
よって、甲2発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体」「を含有する太陽電池封止材」は、本件訂正発明3の「エチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材」に相当する。

エチレン・α-オレフィン共重合体について、甲2発明の「1-ヘキセン」は、炭素数が6である。そして、「1-ヘキセン」の含有量(24重量%)とエチレンの含有量をmol%に換算すると、それぞれ9.5mol%(=100×24/84.2/(24/84.2+76/28.0))と90.5mol%であるから、甲2発明の「1-ヘキセン含有量が24重量%のエチレンとヘキセン-1の共重合体」と本件訂正発明3の「エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である」こととは、ともに「炭素数6のα-オレフィンに由来する構成単位」を「含有」する点で共通する。

甲2発明の「JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定したMFRは、8g/10分であ」ることと、本件訂正発明3の「ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である」こととは、測定条件は異なるものの「MFRが8g/10分」である点で共通する。

甲2発明の「JIS-K6922-2:1997附属書に準拠して測定した密度は、0.880g/cm^(3) であ」ることと、本件訂正発明3の「ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である」こととは、測定条件は異なるものの「密度が0.880g/cm^(3) である」点で共通する。

したがって、本件訂正発明3と甲2発明は、

「以下の要件を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
エチレン・α-オレフィン共重合体は、炭素数6のα-オレフィンに由来する構成単位を含有している。
MFRが8g/10分である。
密度が0.880g/cm^(3)である。」
の点で一致し(以下「一致点2」という。)、以下の点で相違する。

(相違点10)本件訂正発明3は、「a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、」「α-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。」のに対し、甲2発明の由来する構成単位は、エチレンが90.5mol%で、1-ヘキセンが9.5mol%である点。

(相違点11)MFRと密度の測定について、本件訂正発明3は、「ASTM D1238に準拠」、「ASTM D1505に準拠」の測定であるのに対し、甲2発明は、「JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠」「JIS-K6922-2:1997附属書に準拠」である点。

(相違点12)本件訂正発明3は、「a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。」のに対し、甲2発明は、硬度について特定していない点。

(相違点13)本件訂正発明3は、「a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」のに対し、甲2発明は、エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量について特定していない点。

(相違点14)本件訂正発明3は、「a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)」のに対し、甲2発明は、B値について特定していない点。

(相違点15)本件訂正発明3は、「a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、T_(αα)に対するT_(α)βの強度比(T_(αβ)/T_(αα))が1.5以下である。」のに対し、甲2発明は、強度比(T_(αβ)/T_(αα))について特定していない点。

(イ)本件訂正発明3についての判断
事案に鑑み相違点13について検討する。
相違点13に係る「a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」との構成について、本件特許出願の優先日前のいずれの各号証に記載も示唆もない(なお、甲9号証は、本件特許出願の優先日である平成22年11月2日後に公知になった文献である。)
そして、本件訂正発明3は相違点13に係る構成を備えることにより、本件特許明細書段落0044?0047、段落0188の表1、段落0193の表2、段落200の表3(Al含有量が7ppmである合成例2と5ppmである合成例8が配合された実施例2,7,9,11と、Al含有量が10?500ppmである合成例が配合された実施例との比較)に記載されているように、電気特性、電気腐食性、シートブロッキング性、カレンダー加工性を向上させるとの効果を奏するものであるから、アルミニウム元素の含有量を2ppmから10?500ppmにすることが設計変更程度のことであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明3は、相違点10?12、14、15について検討するまでもなく、甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件訂正発明4?13について
本件訂正発明4は、本件訂正発明3に「a5)JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定される体積固有抵抗が1.0×10^(13)?1.0×10^(18)Ω・cmである。」との限定を付した発明であり、本件訂正発明5?13は、本件訂正発明3を引用する発明であるから、本件訂正発明4?13は、本件訂正発明3の発明特定事項を全て含みさらに限定した発明である。
よって、本件訂正発明4?13は、本件訂正発明3と同様に、当業者が甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)小括
よって、当審が通知した取消理由はいずれも理由がない。

2 取消理由以外の申立て理由について
(1)新規性について
特許異議申立人は、上記取消理由以外に、本件発明5,8は、甲1発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであると申立てていた。
しかしながら、本件訂正により、本件発明5,8は、それぞれ本件訂正発明5,8に訂正された。
そして、上記1(1)ア「(イ)本件訂正発明5についての判断」における検討のとおり、本件訂正発明5は、甲1発明との対比において少なくとも相違点3を有するから、本件訂正発明5は、甲1発明ではない。
また、上記1(1)イ「(ケ)本件訂正発明6?13についての判断」における検討のとおり、本件訂正発明8は、甲1発明との対比において少なくとも相違点3を有するから、本件訂正発明8は、甲1発明ではない。
したがって、本件訂正発明5,8は、甲1発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとすることはできない。

(2)進歩性について
特許異議申立人は、上記取消理由以外に、本件発明1,3,4,10,11に係る特許は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであると申立てていた。
しかしながら、本件訂正により、本件発明1は削除された。また、本件発明3,4,10,11に係る特許は、それぞれ本件訂正発明3,4,10,11に訂正された。
本件訂正発明3は、「a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。」との構成、つまり本件訂正発明5と甲1発明との相違点3と同じ相違点を有するものである。
そして、上記1(1)ア「(イ)本件訂正発明5についての判断」における相違点3の検討と同様に、本件訂正発明3は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件訂正発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとすることはできない。
また、本件訂正発明4?13は、本件訂正発明3の発明特定事項を全て含みさらに限定した発明であるから、本件訂正発明4,10,11は、本件訂正発明3と同様に、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)実施可能要件明確性について
甲4号証、甲7号証、甲10号証、甲13号証の分析報告書は、本件特許明細書の記載に準拠して各パラメータ値を分析したものであり、上記分析報告書での分析内容が本件特許明細書に記載の分析条件を再現できていないとはいえない。
よって、各パラメータ値が記載されている請求項3,4,10,11に係る発明及びこれらに直接又は間接的に従属する請求項5?9、12,13に係る発明は、特許法36条4項1号の規定に違反し、取消事由を有するとはいえない。
また、各パラメータ値が記載されている請求項3,4,10,11に係る発明及びこれらに直接又は間接的に従属する請求項5?9、12,13に係る発明は、特許法36条6項2号の規定に違反し、取消事由を有するとはいえない。

(4)小括
よって、取消理由以外の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正発明3?13に係る特許を取り消すことはできない。

第6 結び
以上のとおりであるから、取消理由及び申立ての理由によっては、本件訂正発明3?13に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件訂正発明3?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件特許の請求項1、2は、本件訂正請求により削除されたので、請求項1、2に係る特許に対する申立てを却下する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
以下の要件a1)?a4)、a6)?a8)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。
a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、Tααに対するTαβの強度比(Tαβ/Tαα)が1.5以下である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)
【請求項4】
以下の要件a1)?a8)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含む太陽電池封止材。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80?90mol%であるとともに、炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10?20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが2g/10分以上、10g/10分未満である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865?0.884g/cm^(3)である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60?85である。
a5)JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定される体積固有抵抗が1.0×10^(13)?1.0×10^(18)Ω・cmである。
a6)前記エチレン・α-オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10?500ppmである。
a7)^(13)C-NMRスペクトルおよび下記式(1)から求められるB値が0.9?1.5である。
a8)^(13)C-NMRスペクトルにおける、Tααに対するTαβの強度比(Tαβ/Tαα)が1.5以下である。
B値=[P_(OE)]/(2×[P_(O)]×[P_(E)]) ・・・(1)
(式(1)中、
[P_(E)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(O)]はエチレン・α-オレフィン共重合体に含まれる炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位の割合(モル分率)を示し、
[P_(OE)]は全dyad連鎖に含まれるα-オレフィン・エチレン連鎖の割合(モル分率)を示す)
【請求項5】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、1分間半減期温度が100?170℃の範囲にある有機過酸化物を0.1?3重量部さらに含む請求項3または4に記載の太陽電池封止材。
【請求項6】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、シランカップリング剤0.1?5重量部を含むエチレン系樹脂組成物からなる請求項3?5のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項7】
前記エチレン系樹脂組成物は、前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、およびヒンダートアミン型光安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005?5重量部さらに含む請求項6に記載の太陽電池封止材。
【請求項8】
前記エチレン系樹脂組成物は、前記エチレン・α-オレフィン共重合体100重量部に対し、架橋助剤を0.05?5重量部さらに含む請求項6または7に記載の太陽電池封止材。
【請求項9】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の、
a9)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づく分子量分布Mw/Mnが1.2?3.5の範囲にある請求項3?8のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項10】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の、
a10)固相抽出処理後の抽出液からイオンクロマトグラフィーにより検出される塩素イオンの含有割合が2ppm以下である請求項3?9のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項11】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体の、
a11)酢酸メチルへの抽出量が5.0重量%以下である請求項3?10のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項12】
シート状である請求項3?11のいずれか一項に記載の太陽電池封止材。
【請求項13】
表面側透明保護部材と、
裏面側保護部材と、
太陽電池素子と、
請求項3?12のいずれか一項に記載の太陽電池封止材の架橋体であり、かつ、前記太陽電池素子を前記表面側透明保護部材と前記裏面側保護部材との間に封止する封止層と、を備えた太陽電池モジュール。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-13 
出願番号 特願2013-123796(P2013-123796)
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 536- YA (H01L)
P 1 651・ 857- YA (H01L)
P 1 651・ 537- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 851- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 元彦  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
森 竜介
登録日 2016-02-05 
登録番号 特許第5877593号(P5877593)
権利者 三井化学株式会社 三井化学東セロ株式会社
発明の名称 太陽電池封止材および太陽電池モジュール  
代理人 速水 進治  
代理人 柳下 彰彦  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  
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