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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 H04M 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H04M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H04M 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H04M 審判 全部申し立て 2項進歩性 H04M |
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管理番号 | 1326952 |
異議申立番号 | 異議2015-700218 |
総通号数 | 209 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-05-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-11-26 |
確定日 | 2017-02-28 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5723052号発明「位置情報サービスシステム,電子タグを用いた位置情報サービス方法,携帯情報端末,および端末プログラム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5723052号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1,2],3,4及び5について訂正することを認める。 特許第5723052号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5723052号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は,平成25年12月12日(優先権主張 平成24年12月21日)に出願した特願2014-528783号の一部を平成26年11月13日に新たな特許出願としたものであって,平成27年4月3日に設定登録がされ,その後,特許異議申立人 アプリックスIPホールディングス株式会社(以下,「特許異議申立人A」という。),特許異議申立人 浅野典子(以下,「特許異議申立人B」という。)及び特許異議申立人 久門享(以下,「特許異議申立人C」という。)より特許異議の申立てがなされ,平成28年2月5日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である同年4月11日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ,同年5月19日付けで訂正拒絶理由が通知され,同年7月22日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ,同年9月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され,その指定期間内である同年12月2日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。なお,平成28年12月12日付けで,各特許異議申立人に対して,訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がなされたが,これに対して,いずれの特許異議申立人からも意見書等の提出はなされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 平成28年12月2日付けでなされた訂正請求による訂正(以下,「本件訂正」という。)の内容は,次のとおりである。(なお,平成28年4月11日付けでなされた訂正請求は,特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。また,下線は,訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記第1の識別情報を受信して前記第1の識別情報により端末プログラムを実行し,前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,」を,「前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,前記第1の識別情報を受信して前記第1の識別情報により端末プログラムを実行し,」に訂正する。 (2)訂正事項2 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「第1のサービス」及び「第2のサービス」のそれぞれを,「前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス」及び「前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービス」に,それぞれ訂正する。 (3)訂正事項3 本件特許の特許請求の範囲の請求項2に記載された「前記携帯情報端末の位置情報を管理する管理装置」を,「前記携帯情報端末とネットワーク経由で接続され,位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」に訂正する。 (4)訂正事項4 本件特許の特許請求の範囲の請求項3に記載された「位置情報を管理する管理装置」,「第1の画面」,「第2の画面」及び「表示することを特徴とする」のそれぞれを,「位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」,「第1のサービスに係る第1の画面」,「第2のサービスに係る第2の画面」,「表示し,前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり,前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする」に訂正する。 (5)訂正事項5 本件特許の特許請求の範囲の請求項4に記載された「管理装置」,「端末プログラムを実行する前記第1の識別情報」,「第1の画面」,「第2の画面」,「表示させることを特徴とする」のそれぞれを,「位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」,「端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報」,「第1のサービスに係る第1の画面」,「第2のサービスに係る第2の画面」,「表示させ,前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり,前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする」に訂正する。 (6)訂正事項6 本件特許の特許請求の範囲の請求項5に記載された「管理装置」,「端末プログラムを実行する前記第1の識別情報」,「第1の画面」,「第2の画面」,「表示させることを特徴とする」のそれぞれを,「位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」,「端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報」,「第1のサービスに係る第1の画面」,「第2のサービスに係る第2の画面」,「表示させ,前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり,前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする」に訂正する。 2.訂正の目的の適否,一群の請求項,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に関連する記載として,明細書の段落【0034】に「携帯情報端末20は,電源が投入されると,近距離無線通信部250が,電子タグ発信装置10から発信される電波の監視を開始する(ステップS101)。近距離無線通信部250は,電波の受信を検知すると(…中略…),この電波に重畳され,図2(b)に示すデータフォーマットからなる第1の識別情報を制御部200に引き渡す。」,段落【0036】に「なお,電波強度測定部203では,ステップ101で受信した電波のRSSIを常に測定しており,その結果をアプリケーション実行制御部202に引き渡す。」と記載されていることから,明細書には,「第1の識別情報を受信」する前に「前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定」することが記載されているといえる。 よって,訂正事項1は,請求項1の記載を,発明の詳細な説明に合致させるものといえるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 そして,訂正事項1は,一群の請求項[1,2]に対して請求されたものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に関連する記載として,明細書の段落【0002】に「従来,事業者が提供する位置情報サービスを利用し,近くにある商業施設の情報を得ることができるチェックインサービスが知られている。このチェックインサービスで得られる情報の中には,単なる店舗情報の他にクーポン等の割引や特典アイテムも含まれる」,段落【0043】に「本発明におけるチェックインとは,施設内に顧客が来店することを意味する。」,段落【0037】ないし【0039】,図6(a)及び(b)には,受信した電波のRSSI(受信強度)が設定した閾値未満の場合,図6(b)に示す画面情報,すなわち,施設情報詳細(606b)を含む店舗情報ページを表示し,前記RSSIが設定した閾値以上の場合,図6(a)に示す画面情報,すなわち,クーポン(606a)を含むクーポン付き店舗情報ページを表示することが記載されている。よって,明細書には,施設情報詳細を含む店舗情報ページを表示することにより,「携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス」を提供し,クーポンを含むクーポン付き店舗情報ページを表示することにより,「施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービス」を提供することが記載されているといえる。 よって,訂正事項2は,明細書に記載された事項の範囲内において,「第1のサービス」及び「第2のサービス」を限定したものといえるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 なお,平成28年12月2日に提出された意見書において,特許権者は,「『チェックイン』とは,ホテルなどの入館手続き,空港での搭乗手続などに使用される用語であり,『サービス』は,役務の提供に使用される用語ですから,『チェックインサービス』とは,施設側が提供するものであり,例えば,ユーザのもつ携帯情報端末に『チェックイン』するか(否か)を,表示して問いかけることができるものです。」と主張している。しかしながら,特許権者が主張する「チェックイン」及び「チェックインサービス」の定義は,明細書の段落【0002】及び【0043】の定義とは異なるものであり,また,明細書又は図面には,「携帯情報端末」に表示される「第2のサービス」についての「第2の画面」が,「ユーザのもつ携帯情報端末に『チェックイン』するか(否か)を,表示して問いかけることができるもの」であることは記載も示唆もされていない。なお,「チェックイン」に関し,図6(a)及び図6(b)の605a及び605bの領域には,「チェックイン」との記載があるが,明細書の段落【0038】には,「ユーザと施設との相対位置関係を示すエレベータアイコン605a(605b)」と記載されていることから,図6(a)及び図6(b)の605a及び605bに対応する「エレベータアイコン」は,特許権者が主張する,「『チェックイン』するか(否か)を,表示して問いかける」ものとはいえない。また,明細書の段落【0043】には,顧客が来店したと判断すると,「施設管理サーバの端末は,例えば,図8(b)に示す,『ID:012345,山田花子様,12時30分に来店,チェックイン』と表示する。」と記載されているが,当該表示は,施設管理サーバの端末になされるものであり,顧客の携帯情報端末になされるものではないから,特許権者が主張する,「『チェックイン』するか(否か)を,表示して問いかける」ものとはいえない。 よって,上記意見書における特許権者の上記主張に基づいた「チェックインサービス」の解釈は,明細書又は図面の記載に基づくものではないから採用しない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に関連する記載として,明細書の段落【0016】には,「図1に示すように,第1の本実施形態に係る位置情報サービスシステム1000は,(…中略…)電子タグ発信装置10と,位置情報サービス提供事業者(以下,単に事業者という)が管理運営する管理装置(事業者管理サーバ50)と,当該事業者管理サーバ50とはネットワーク(モバイルネットワーク30)経由で接続されるスマートフォン等の1以上の携帯情報端末20と,によって構成される。」と記載されているから,明細書には,「前記携帯情報端末とネットワーク経由で接続され,位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」が記載されているといえる。 よって,訂正事項3は,明細書に記載された事項の範囲内において「管理装置」を限定したものといえるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 そして,訂正事項3は,請求項2に対して請求されたものである。 (4)訂正事項4,訂正事項5及び訂正事項6について 訂正事項4,訂正事項5及び訂正事項6のそれぞれは,実質的に,前記訂正事項2に訂正事項3を加えた訂正事項と,明細書の記載に合致するように,「端末プログラムを実行する第1の識別情報」を「端末プログラムを実行可能とする第1の識別情報」とする訂正事項とからなるものである。 よって,訂正事項4,訂正事項5及び訂正事項6は,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 そして,訂正事項4は,請求項3に対して,また,訂正事項5は,請求項4に対して,また,訂正事項6は,請求項5に対して,請求されたものである。 3.小括 以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第120条の5第2項第1号(特許請求の範囲の減縮)及び第3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項[1,2],3,4及び5について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし5に係る発明(以下,それぞれ,「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 [本件発明1] 「 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置と, 前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,前記第1の識別情報を受信して前記第1の識別情報により端末プログラムを実行し,当該電波強度により第1の画面と第2の画面を切り替えて表示する携帯情報端末と,を備え, 前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ,前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス,及び前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービスについて表示されることを特徴とする位置情報サービスシステム。」 [本件発明2] 「 さらに,前記携帯情報端末とネットワーク経由で接続され,位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置を備え, 前記携帯情報端末が,前記電子タグ発信装置から受信した前記第1の識別情報に基づく問い合わせを前記管理装置に行い,前記管理装置にて変換された第2の識別情報を前記管理装置から取得することを特徴とする請求項1に記載の位置情報サービスシステム。」 [本件発明3] 「 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置と, 位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置とはネットワーク経由で接続され,前記第1の識別情報を受信し,前記第1の識別情報により端末プログラムを実行する携帯情報端末と,を含む位置情報サービスシステムにおける電子タグを用いた位置情報サービス方法であって, 前記管理装置が,前記携帯情報端末が受信した前記第1の識別情報に基づく問い合わせを受信し,前記第1の識別情報を前記携帯情報端末が管理する第2の識別情報に変換して問い合わせがあった前記携帯情報端末に送信するステップと, 前記携帯情報端末が,前記第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行するステップと,を含み, 前記携帯情報端末が,前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,当該電波強度により第1のサービスに係る第1の画面と第2のサービスに係る第2の画面を切り替えて表示し, 前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり,前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする位置情報サービス方法。」 [本件発明4] 「 位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置とはネットワーク経由で接続される携帯情報端末であって, 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置から端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報を受信して認識する識別情報認識部と, 認識した前記第1の識別情報に基づき前記管理装置に問い合わせを行い,前記管理装置によって変換されて送信される第2の識別情報を取得し,当該取得した第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行する制御部と,を備え, 前記制御部が,前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,当該電波強度により第1のサービスに係る第1の画面と第2のサービスに係る第2の画面を切り替えて表示させ, 前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり,前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする携帯情報端末。」 [本件発明5] 「 位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置とはネットワーク経由で接続される携帯情報端末のコンピュータに, 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置から端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報を受信して認識する処理と, 認識した前記第1の識別情報に基づき前記管理装置に問い合わせを行い,前記管理装置によって変換されて送信される第2の識別情報を受信し,当該受信した第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行する処理と, 前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,当該電波強度により第1のサービスに係る第1の画面と第2のサービスに係る第2の画面を切り替えて表示する処理と,を実行させ, 前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり,前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする端末プログラム。」 2.取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して平成28年9月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。 (1)請求項1ないし5に係る特許は,その特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。 (2)請求項1に係る発明は,引用例(特開2006-165886号公報:特許異議申立人Aが提示した甲第3号証),引用例2(特開2005-301804号公報)及び引用例3(特開2009-141933号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項1,4及び5に係る発明は,引用例1(特開2005-92469号公報),引用例2,引用例3,引用例5(特開2009-294114号公報)及び引用例6(特開2010-180008号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,請求項2及び3に係る発明は,引用例1,引用例2,引用例3,引用例4(特開2004-23435号公報),引用例5及び引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,請求項1ないし5に係る特許は,取り消されるべきものである。 3.引用例の記載 (1)引用例(特開2006-165886号公報)には,「情報取得システムと,それに用いるユーザー端末および通信装置」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 この発明は,携帯電話機や,モバイルコンピュータなどの,ユーザー端末を用いて,ユーザーが情報を取得するためのシステムに関する。」(第4-5ページ) イ 「【0032】 上記第2通信部8は,サーバーSに接続可能な,この発明の通信手段にあたり,例えば,インターネットに接続し,インターネットを介して上記サーバーSにアクセスするようにしている。 また,処理部7は,第1通信部6を介して,超近距離通信装置1からアドレスを受信して,それを上記アドレス記憶部9に記憶させる機能と,そのアドレスに基づいてサーバーSにアクセスし,目的のアプリケーションソフトをアプリケーションソフト記憶部10に記憶させ,ユーザー端末2にインストールさせる機能とを備えている。 (…中略…) 【0036】 なお,上記アプリケーションソフトは,ユーザー端末に様々な情報を表示させるためのソフトであって,情報を表示させるためのプログラムであってもよいし,表示する情報そのものであってもよい。例えば,ユーザー端末2には,情報を表示させるための特別なプログラムだけをインストールし,その後,インストールしたプログラムを起動すると,通信手段を用いて他のデータベースから情報を取得できるようにすることもできるし,プログラムと,表示させる情報とを,一緒にユーザー端末にインストールするようにしてもよい。 また,上記の手順によって,サーバーSからは,情報だけを取得し,ユーザー端末2が予め備えているプログラムによって,取得した情報を表示させるようにしてもかまわない。」(第10-11ページ) ウ 「【0038】 図2,図3に示す第2実施形態は,図2に示すように,特定の場所,例えば店舗A内に,超近距離通信装置1と,この発明の近距離通信手段である近距離通信装置12とを備えている。また,第3通信部11を備えたユーザー端末20を用いる。そして,この第2実施形態のシステムは,店舗Aに入ったときに,自動的に特定のアプリケーションソフトを起動させて,ユーザーが情報を取得するためのシステムである。 上記超近距離通信装置1は,図1に示す第1実施形態の超近距離通信装置と同じ装置である。従って,以下の説明には,図1を用いる。 (…中略…) 【0043】 上記アプリケーションソフトをインストールした状態で,ユーザー端末20が,近距離通信装置12の近距離通信部13の通信エリアE2内に位置すれば,近距離通信装置12から発信されるアプリケーションソフトIDを受信する。 ユーザー端末20は,アプリケーションソフトIDを受信したら,受信したアプリケーションソフトIDに対応するアプリケーションソフトを,自身のアプリケーションソフト記憶部10が記憶しているアプリケーションソフトを特定し,それを起動させる。 【0044】 なお,近距離通信装置12が発信するアプリケーションソフトIDは,近距離通信装置12が設置されている店舗Aにおいて有用な情報を取得するためのアプリケーションソフトに対応するIDである。 ここでは,ユーザー端末20が,店舗A内で,アプリケーションソフトをインストールし,続けて,店舗A内で上記アプリケーションソフトを起動させる例を説明したが,アプリケーションソフトをインストールしてから,それを起動させるタイミングが,連続している必要はない。ユーザー端末20にアプリケーションソフトをインストールさせておけば,再入店時に起動させることもできる。」(第11-12ページ) エ 「【0055】 さらに,図7に示すように,複数の通信装置15をサーバーSに接続し,各通信装置15から発信するアドレスおよびアプリケーションソフトIDを変えれば,各近距離通信部13の通信エリアE3,E4,E5によって,提供する情報を変えることもできる。 ただし,アドレスを受信するためには,ユーザー端末20を通信装置15にほぼ接触させなければならない。」(第14ページ) 以下,前記アないしエの記載並びに本願の優先日における技術常識を参酌して,引用例に記載した事項について検討する。 (ア)前記アより,引用例には,携帯電話機であるユーザー端末を用いて,ユーザーが情報を取得するためのシステムが記載されている。 (イ)前記イ及びウより,引用例には,ユーザー端末が,店舗Aに接地された超近距離通信装置からサーバーSのアドレスを取得して,当該アドレスを用いてサーバーSにアクセスしてアプリケーションソフトをインストールすることが記載されている。 そして,前記イより,引用例には,前記アプリケーションソフトは,ユーザー端末に様々な情報を表示させるためのソフトであって,情報を表示させるためのプログラム又は表示する情報そのものであることが記載されている。 (ウ)前記ウの【0038】及び【0043】より,引用例には,ユーザー端末は,店舗Aに設置された近距離通信装置の通信エリアE2に位置すると,近距離通信装置から発信されるアプリケーションソフトIDを受信し,記憶しているアプリケーションソフトを特定し,それを起動することが記載されている。 (エ)前記ウの【0044】より,引用例には,起動されるアプリケーションソフトは,店舗Aにおいて有用な情報を取得するためのものであることが記載されている。 (オ)前記エ及び引用例の図7より,複数の近距離通信部を設け,異なる通信エリアによって,提供する情報を変えることもできることが記載されている。 (カ)前記(イ),(ウ)及び(オ)より,引用例には,「アプリケーションソフトIDを発信する,店舗内に設置される1以上の近距離通信装置と,サーバーのアドレスを発信する店舗内に設置される超近距離通信装置」が記載されているといえる。 (キ)前記(ア),(イ),(ウ)及び(エ)より,引用例には,「前記サーバーのアドレスを受信して,前記アドレスを用いてサーバーにアクセスしてアプリケーションソフトをインストールし,前記アプリケーションソフトIDを受信して前記アプリケーションソフトIDにより特定されるアプリケーションソフトを実行し,店舗において有用な情報を表示する携帯電話機」が記載されているといえる。 (ク)前記(ア),(カ)及び(キ)より,「近距離通信装置」と「携帯電話機」とを備える「システム」が記載されているといえる。 前記アないしエ並びに(ア)ないし(ク)の検討から,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「 アプリケーションソフトIDを発信する,店舗内に設置される1以上の近距離通信装置と, サーバーのアドレスを発信する店舗内に設置される超近距離通信装置と, 前記サーバーのアドレスを受信して,前記アドレスを用いてサーバーにアクセスしてアプリケーションソフトをインストールし,前記アプリケーションソフトIDを受信して前記アプリケーションソフトIDにより特定されるアプリケーションソフトを実行し, 店舗において有用な情報を表示する携帯電話機と,を備えることを特徴とするシステム。」 (2)引用例1 引用例1(特開2005-92469号公報)には,「アプリケーション取得/起動システム,携帯情報端末及びそれらに用いるアプリケーション取得/起動方法」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 ア 「【0007】 そこで,本発明の目的は上記の問題点を解消し,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを自動的に取得して起動することができるアプリケーション取得/起動システム,携帯端末装置及びそれらに用いるアプリケーション取得/起動方法を提供することにある。」(第3ページ) イ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 次に,本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態によるアプリケーション取得/起動システムの構成を示すブロック図である。図1において,本発明の実施の形態によるアプリケーション取得/起動システムは端末1と,データベースサーバ2と,アプリケーション取得先に対応するサーバ4-1?4-Mとから構成されており,端末1はデータベースサーバ2とサーバ4-1?4-Mとにそれぞれ無線接続されている。 【0019】 データベースサーバ2はデータベース3を備えており,データベース3には位置情報,アプリケーションプログラム(以下,アプリケーションとする)識別子,アプリケーション取得先の組(位置情報1,アプリケーション識別子1,アプリケーション取得先1)?(位置情報N,アプリケーション識別子N,アプリケーション取得先N)が蓄積されている。 【0020】 端末1は位置情報取得装置11と,アプリケーション格納領域12と,通信手段13とから構成され,アプリケーション格納領域12にはアプリケーションAQ(A1≦AQ≦AL)と,それに関連付けられたアプリケーション識別子AQと,アプリケーション取得先AQとが保存されている。 【0021】 端末1は位置情報取得装置11によって位置情報P(1≦P≦N)を取得した場合,通信手段13を用いてデータベースサーバ2にアクセスし,データベースサーバ2を介して位置情報Pをキーとするデータベース3の検索を行う。端末1はこのデータベース3の検索の結果を基に,アプリケーション識別子Pとアプリケーション取得先Pとをデータベース3から取得する。 【0022】 アプリケーション識別子Pとアプリケーション識別子AQとが同じで,かつアプリケーション取得先Pとアプリケーション取得先AQとが同じとなるアプリケーションAQ(この場合,アプリケーションPと同一アプリケーション)がアプリケーション格納領域12に存在する場合,端末1はアプリケーション格納領域12内のアプリケーションAQを起動する。 【0023】 アプリケーションAQがアプリケーション格納領域12に存在しない場合,端末1はアプリケーション取得先Pと通信手段13とを用いてアプリケーション取得先Pに対応するサーバP’(1≦P’≦M)からアプリケーションPをダウンロードしてアプリケーション格納領域12に保存する。 【0024】 アプリケーションPを保存する際,端末1はアプリケーションPに関連付けてアプリケーション識別子P及びアプリケーション取得先Pをアプリケーション格納領域12に保存する。その後,端末1はアプリケーションPを起動する。 【0025】 このように,本発明の実施の形態は,端末1の位置情報に応じたアプリケーションを,データベース3と端末1のアプリケーション格納領域とに保存されているアプリケーションとその関連属性とから導き出し,導き出したアプリケーションを端末1内で起動することによって,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを自動的に起動することができる。 【0026】 また,本発明の実施の形態は,データベース3内にアプリケーション取得先を保持しておくことによって,端末1を持つユーザが起動するアプリケーションを探索する必要がなくなる。 【0027】 さらに,本発明の実施の形態は,起動するアプリケーションが端末1内に存在しない場合,データベース3が保持しているアプリケーション取得先の情報を基にアプリケーションを取得し,端末1内にインストールすることによって,ユーザによるアプリケーションの事前インストールが不要になる。」(第5-6ページ) ウ 「【実施例2】 【0038】 図3は本発明の他の実施例によるアプリケーション取得/起動システムの構成例を示すブロック図である。図3において,本発明の他の実施例によるアプリケーション取得/起動システムは携帯電話端末5と,データベースサーバ2とから構成されており,携帯電話端末5はデータベースサーバ2に無線接続されている。 【0039】 データベースサーバ2はデータベース3を備えており,データベース3には位置情報,アプリケーション識別子,アプリケーション取得先の組(「XX遊園地の緯度・経度」,「遊園地案内アプリケーション」,「URL(Uniform Resource Locator)」)が蓄積されている。 【0040】 携帯電話端末5のアプリケーション格納領域12には「遊園地案内プログラム」が格納されており,「遊園地案内プログラム」は「遊園地案内アプリケーション」と「URL」とに関連付けられている。 【0041】 携帯電話端末5は位置情報取得装置11がGPS(Global Positioning System)によってXX遊園地入り口の緯度・経度を取得した場合,XX遊園地の入り口の緯度・経度をキーとしてデータベース3を検索する。その結果,携帯電話端末5は「遊園地案内アプリケーション」と「URL」とを取得する。 【0042】 次に,携帯電話端末5はアプリケーション格納領域12に保存されているアプリケーションの中で,「遊園地案内アプリケーション」,「URL」に関連付けられているアプリケーションを探す。携帯電話端末5は「遊園地案内プログラム」を発見すると,その「遊園地案内プログラム」を起動する。 【0043】 これによって,本実施例では,携帯電話端末5を持つユーザが遊園地にいった時でも,携帯電話端末5内に保存された「遊園地案内プログラム」を手動で起動しなくともよくなるので,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを自動的に起動することができる。」(第7ページ) エ 「【実施例3】 【0044】 図4は本発明の別の実施例によるアプリケーション取得/起動システムの構成例を示すブロック図である。図4において,本発明の別の実施例によるアプリケーション取得/起動システムは携帯電話端末5と,データベースサーバ2と,URL指定サーバ6とから構成されており,携帯電話端末5はデータベースサーバ2及びURL指定サーバ6に無線接続されている。 【0045】 データベースサーバ2はデータベース3を備えており,データベース3には位置情報,アプリケーション識別子,アプリケーション取得先の組(「XX遊園地の緯度・経度」,「遊園地案内アプリケーション」,「URL1」の組,「△△居酒屋の緯度・経度」,「メニューアプリケーション」,「URL2」の組)が蓄積されている。 【0046】 携帯電話端末5のアプリケーション格納領域12には「遊園地案内プログラム」が格納されており,「遊園地案内プログラム」は「遊園地案内アプリケーション」と「URL1」とに関連付けられている。 【0047】 携帯電話端末5は位置情報取得装置11がGPSによって「△△居酒屋の緯度・経度」を取得した場合,「△△居酒屋の緯度・経度」をキーとしてデータベース3を検索する。その結果,携帯電話端末5は「メニューアプリケーション」と「URL2」とを取得する。 【0048】 次に,携帯電話端末5はアプリケーション格納領域12に保存されているアプリケーションの中で,「メニューアプリケーション」,「URL2」に関連付けられているアプリケーションを探す。携帯電話端末5は「メニューアプリケーション」,「URL2」に関連付けられているアプリケーションが存在しないので,「URL2」で指定されるURL指定サーバ6から「注文プログラム」をダウンロードする。 【0049】 携帯電話端末5は「注文プログラム」のダウンロード後,「注文プログラム」を「メニューアプリケーション」,「URL2」に関連付けてアプリケーション格納領域12に保存した後,「注文プログラム」を起動する。 【0050】 これによって,本実施例では,携帯電話端末5を持つユーザが居酒屋にいった時でも,居酒屋のホームページから手動で「注文プログラム」をダウンロードし,そのダウンロードした「注文プログラム」を手動で起動しなくともよくなるので,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを自動的にダウンロードして起動することができる。」(第7-8ページ) オ 「【実施例4】 【0051】 図5は本発明のさらに別の実施例によるアプリケーション取得/起動システムの構成例を示すブロック図である。図5において,本発明のさらに別の実施例によるアプリケーション取得/起動システムは携帯電話端末5と,データベースサーバ2と,IC(集積回路)タグ7とから構成されており,携帯電話端末5はデータベースサーバ2に無線接続されている。 【0052】 データベースサーバ2はデータベース3を備えており,データベース3には位置情報,アプリケーション識別子,アプリケーション取得先の組(「◇◇ストアの位置情報」,「◇◇ストアアプリケーション」,「URL3」の組)が蓄積されている。 【0053】 携帯電話端末5のアプリケーション格納領域12には「宣伝プログラム」が格納されており,「宣伝プログラム」は「遊園地案内アプリケーション」と「URL1」とに関連付けられている。 【0054】 携帯電話端末5は位置情報取得装置11が「◇◇ストアの位置情報」をICタグ7から読込んだ場合,「◇◇ストアの位置情報」をキーとしてデータベース3を検索する。その結果,携帯電話端末5は「◇◇ストアアプリケーション」と「URL3」とを取得する。 【0055】 次に,携帯電話端末5はアプリケーション格納領域12に保存されているアプリケーションの中で,「◇◇ストアアプリケーション」と「URL3」とに関連付けられているアプリケーションを探す。携帯電話端末5は「宣伝プログラム」を発見するので,その「宣伝プログラム」を起動する。 【0056】 これによって,本実施例では,携帯電話端末5の位置情報取得装置11がICタグ7から情報を読込むことができれば,GPSを備えていなくとも位置情報を取得することができ,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを自動的に起動することができる。」(第8-9ページ) 以下,前記アないしオの記載並びに本願の優先日における技術常識を参酌して,引用例1に記載した事項について検討する。 (ア)前記ア,ウの【0043】,エの【0050】及びオの【0056】より,引用例1には,ユーザ(携帯電話端末)の位置に応じたアプリケーションを自動的に起動するシステムが記載されている。 (イ)前記イ及び図1より,引用例1に記載のシステムは,GPS等の位置情報取得装置と,通信装置と,アプリケーション格納領域とを備える端末(携帯電話端末)と,当該端末と無線接続されている,データベースを備えるデータベースサーバとを備えることを基本構成としている。 (ウ)前記ウより,引用例1の実施例2には,携帯電話端末が,GPSによって「XX遊園地入り口の緯度・経度」を取得して,「XX遊園地入り口の緯度・経度」をキーとしてデータベースを検索して,「遊園地案内アプリケーション」及び「URL」を取得し,アプリケーション格納領域に保存されているアプリケーションの中で,「遊園地案内アプリケーション」及び「URL」に関連付けられているアプリケーションを探し,関連付けられている「遊園地案内プログラム」を発見するとこれを起動することが記載されている。 当該実施例2においては,携帯電話端末が,「XX遊園地入り口」に位置していることを前提に,当該位置に対応するアプリケーションとして,「遊園地案内プログラム」を起動するものと解される。 (エ)前記エより,引用例1の実施例3には,携帯電話端末が,GPSによって「△△居酒屋の緯度・経度」を取得して,「△△居酒屋の緯度・経度」をキーとしてデータベースを検索し,その結果,「メニューアプリケーション」及び「URL2」を取得し,アプリケーション格納領域に保存されているアプリケーションの中で,「メニューアプリケーション」及び「URL2」に関連付けられているアプリケーションを探し,存在しない場合は,URL指定サーバから「URL2」で指定される「注文プログラム」をダウンロードして,「注文プログラム」を「メニューアプリケーション」及び「URL2」に関連付けてアプリケーション格納領域に保存した後,「注文プログラム」を起動することが記載されている。 当該実施例3においては,携帯電話端末が,「△△居酒屋」に位置していることを前提に,当該位置に対応するアプリケーションとして,「注文プログラム」をダウンロードして起動するものと解される。 (オ)そして,前記(ウ)において,「遊園地案内プログラム」は,携帯情報端末の位置「XX遊園地入り口」に対応し,「XX遊園地」によって提供される,ユーザに「遊園地」を「案内」するサービスを提供するためのアプリケーションといえるものである。 同様に,前記(エ)において,「注文プログラム」は,携帯情報端末の位置「△△居酒屋」に対応し,「△△居酒屋」によって提供される,ユーザから「注文」を受け付けるサービスをユーザに提供するためのアプリケーションといえるものである。 (カ)前記オより,引用例1の実施例4には,携帯情報端末の位置情報取得装置が,ICタグから「◇◇ストアの位置情報」を読み込み,「◇◇ストアの位置情報」をキーとしてデータベースを検索し,その結果,「◇◇ストアアプリケーション」及び「URL3」を取得し,アプリケーション格納領域に保存されているアプリケーションの中で,「◇◇ストアアプリケーション」及び「URL3」に関連付けられているアプリケーションを探し,関連付けられている「宣伝プログラム」を発見するとこれを起動することが記載されている。 そして,当該実施例4においては,前記(ア)を参酌すれば,携帯情報端末の位置「◇◇ストアの位置情報」に対応し,「◇◇ストア」によって提供される,ユーザに「宣伝」に係る情報の提供を行うサービスを提供するためのアプリケーションといえるものである。 そうすると,前記(エ)及び(オ)の検討も参酌すれば,当該実施例4において,「ICタグ」は,ユーザにサービスを提供する場所に設けられていることは自明である。また,当該「ICタグ」が,1以上設けられることも当然のことである。 (キ)前記(エ)ないし(カ)において,データベースからアプリケーションを探すときのキーとなる,「遊園地案内アプリケーション」,「メニューアプリケーション」及び「◇◇ストアアプリケーション」は,アプリケーションを識別するための情報であるから,「アプリケーション識別子」といい得るものである。 前記アないしオ並びに(ア)ないし(キ)の検討から,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 「 ユーザにサービスを提供する場所に設けられ,位置情報を含む1以上のICタグと, 前記位置情報を読み込んで前記位置情報によりアプリケーションを起動し,前記位置情報に応じたサービスをユーザに提供する携帯端末装置と,を備え, さらに, データベースサーバを備え, 前記携帯端末装置が,前記ICタグから読み込んだ前記位置情報を前記データベースサーバに送信し,前記データベースサーバにて検索されたアプリケーション識別子を前記データベースサーバから受信することを特徴とする,位置に応じた適切なアプリケーションを自動的に起動するシステム。」 (3)引用例2 引用例2(特開2005-301804号公報)には,「コンテンツ提供システム,受信装置および方法,記録媒体,並びにプログラム」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 ア 「【0031】 コンテンツ提供システム1は,コンテンツ提供側としてのPDA(Personal Digital Assistants)2と,コンテンツ受信側としての携帯電話機3とが,例えば,IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.11a,IEEE802.11b,ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))通信,あるいは,UWB(Ultra Wide Band)などの無線通信規格に準拠した無線通信により接続されることで構成される。」(第6ページ) イ 「【0059】 次に,PDA2と携帯電話機3との間の距離の測定方法について説明する。なお,本実施の形態では,距離の測定方法は特に問わないので,ここでは,あくまで一例として説明する。 【0060】 第1の方法は,受信する電波の強度に基づいて距離を測定するものである。すなわち,通信相手の機器から送信される電波の受信強度は,通常,距離に反比例するものであるから,電波強度が強いほど距離は近く,電波強度が弱いほど遠いものとされる。」(第8ページ) ウ 「【0081】 図8は,携帯電話機3の構成例を示すブロック図である。 【0082】 制御部71は,通信部73,記憶部74,表示部11,およびスピーカ12を制御する。例えば,制御部71は,PDA2との間の距離を測定し,その測定結果に応じて,出力するコンテンツの質を決定する処理や,PDA2から送信されてきたコンテンツを,決定した質のものに調整し,出力する処理などを行う。」(第10ページ) エ 「【0088】 距離測定部81は,上述した各種の方法によりPDA2との間の距離を測定する。例えば,電波強度に基づいて距離が測定される場合,距離測定部81には,アンテナ72における電波の受信強度を表すデータが供給される。距離測定部81による測定結果は質調整部82に出力される。」(第10ページ) オ 「【0100】 ステップS2において,距離測定部81は,PDA2との間の距離を測定し,その測定結果を質調整部82に出力する。このステップS2以降の処理は,所定の周期で繰り返し行われる。」(第11ページ) カ 「【0194】 この例においては,コンテンツの送信側のPDA2と,受信側の携帯電話機3の間の距離に応じて,出力されるコンテンツの内容そのものが切り替えられる。 【0195】 すなわち,図15の例においては,PDA2と携帯電話機3の間の距離が「遠い」で表される距離(10m)の場合,「ショップ名」が出力され,「普通」で表される距離(5m)の場合,ショップの「内観写真」の画像が出力される。また,PDA2と携帯電話機3の間の距離が「近い」で表される距離(1m)の場合,「SALE」情報が出力され,「とても近い」で表される距離(0.3m)の場合,SALE商品の「価格」が出力される。 【0196】 なお,このような対応テーブルに従ってコンテンツを提供するPDA2は,例えば,ある店舗内に置かれているものである。また,「ショップ名」を出力させるための画像,「内観写真」を出力させるための画像,「SALE」情報を出力させるためのテキスト,および,SALE商品の「価格」を出力させるためのテキストのデータは,上述したようにまとめてPDA2から携帯電話機3に提供され,実際に出力するものが携帯電話機3において選択される。 【0197】 このように,出力されるコンテンツの内容が切り替えられるようにすることで,例えば,一番離れているときに出力される「ショップ名」を見てその提供元の店舗に興味を持った携帯電話機3のユーザは,その店舗に近づき,ある程度近づいたときに出力される「内観写真」を見て,その店舗にさらに興味を持ったときにはもう少し近づくなどのように,実世界における距離による情報のフィルタリングがコンテンツの送受信においても再現されることになる。」(第19-20ページ) キ 「【0198】 上述した一連の処理は,ハードウェアにより実行させることもできるが,ソフトウェアにより実行させることもできる。この場合,そのソフトウェアを実行させる情報送信装置は,例えば,図16に示されるようなパーソナルコンピュータ100により構成される。」(第20ページ) 以下,前記アないしキの記載並びに本願の優先日における技術常識を参酌して,引用例2に記載した事項について検討する。 (ア)前記ア,ウ,カの【0195】及び【0196】並びに引用例2の図4より,引用例2には,携帯電話機が,店舗に設置されるPDAからコンテンツを受信して,その位置に応じて表示部に表示するシステムが記載されている。 (イ)前記イないしオ並びにカの【0195】及び【0196】より,引用例2には,携帯電話機が,店舗内に置かれるPDAとの距離をPDAより受信した電波の受信強度に基づいて測定し,当該距離に応じて,表示するコンテンツを切り替えることが記載されている。コンテンツを含む表示内容を「画面」と称することは任意である。 そして,前記カの【0195】には,PDAとの距離が,「遠い」場合には,「ショップ名」又は店舗の「内観写真」を表示し,「近い」場合には,「SALE」情報またはSALE商品の「価格」を出力されることが記載されており,「遠い」場合の表示内容は,店舗に関する情報を提供するものであり,「近い」場合の表示内容は,店舗のSALE(セール)に関する情報を提供するものである。そして,ユーザに情報を提供することは,ユーザに情報提供というサービスを提供しているに他ならず,店舗に関する情報を提供することを「第1のサービス」,そして,店舗のセールに関する情報を提供することを「第2のサービス」と称することは任意である。 また,システムは,全体としてみれば,位置に応じて表示するコンテンツを変化させるサービスを提供しているといえる。 (ウ)前記キより,少なくともコンテンツ(画面)の切替え表示は,ソフトウェアを実行することにより実現されている。 前記アないしキ並びに(ア)ないし(ウ)の検討から,引用例2には,以下の事項(以下,「技術事項1」という。)が記載されていると認める。 「 店舗内に設置されるPDAと, ソフトウェアを実行することにより,前記PDAより受信した電波の受信強度により第1の画面と第2の画面を切り替えて表示する携帯電話機とを備え, 前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ店舗に関する情報を提供する第1のサービス及び店舗のセールに関する情報を提供する第2のサービスについて表示されることを特徴とする, 位置に応じて表示するコンテンツを変化させるサービスを提供するシステム。」 (4)引用例3 引用例3(特開2009-141933号公報)には,「通信装置,通信システム,プログラム,及びデータ選択方法」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 ア 「【0002】 近日,無線通信機能を備える通信装置を用いたサービスの一形態として,データ交換サービス,またはコンテンツ配信サービスが実用化されている。例えば,携帯ゲーム端末を用いた通信型ゲームにおいて,ある携帯ゲーム端末で取得したアイテムを無線通信により他の携帯ゲーム端末へ受け渡すことが行われている。また,例えば販売促進のための広告を目的として,特定の店舗等に設置した無線基地局から近傍に位置する通信端末へ広告コンテンツが配信されるといったサービスもある。」(第3ページ) イ 「【0023】 次に,図2は,後述する第4の実施形態に係る通信システム2の構成を示した説明図である。図2に示した通信システム2は,無線通信装置30,中継装置32,及び通信装置34の3種類の通信装置を含む。」(第6ページ) ウ 「【0033】 CPU201は,演算処理装置及び制御装置として機能し,各種プログラムに従って無線通信装置20内の動作全般を制御する。また,CPU201は,マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は,CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は,CPU201の実行において使用するプログラムや,その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。」(第7ページ エ 「【0050】 電界強度測定部220は,通信部216により受信された測距パケットの電界強度(受信強度)を測定する測定部としての機能を有する。電界強度測定部220は,API(Application Program Interface),関数,無線ハードウェアに対応するドライバなどから電界強度を取得してもよい。 【0051】 ノイズフロア測定部224は,通信部216により受信された測距パケットに含まれるノイズレベルを示すノイズフロアを測定する。一般的に,ノイズフロアは,SN比と異なり,値が大きいほど電波環境が悪化し(雑音成分が大きい),値が小さいほど電波環境が良好(雑音成分が小さい)であることを示す。ノイズフロア測定部224は,API(Application Program Interface),関数,無線ハードウェアに対応するドライバなどからノイズフロアを取得してもよい。 (…中略…) 【0054】 推定部232は,記憶部228に記憶されている電界強度及びノイズフロア値のうちで,判断部236により所定条件を満たすと判断された電界強度及びノイズフロア値を利用して無線通信装置20’との距離を推定する。以下,具体的に推定部232の機能を説明した後に,判断部236による判断について説明する。 (…中略…) 【0067】 このように,推定部232が利用する電界強度を判断部236がノイズフロア値に基づいてフィルタリングすることにより,推定部232が信頼性の高い電界強度に基づいて無線通信装置20及び20’間の距離を推定することができる。その結果,推定部232による距離推定の精度の向上が期待される。以下,図12を参照して推定部232による距離推定の具体例を説明する。」(第9-11ページ) オ 「【0154】 〔3-4〕第4の実施形態 次に,第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係る通信システム2は,図2に示したような無線通信装置30,中継装置32,及び通信装置34により構成される。本実施形態では,中継装置32からの無線信号を受信した無線通信装置30が中継装置32との間の距離を推定し,当該距離情報を通信装置34へと送信する。通信装置34は,無線通信装置30から受信した距離情報に基づいてデータを選択し,さらに選択したデータを無線通信装置30へと送信する。 (…中略…) 【0158】 無線通信装置30の距離推定部252は,本実施形態では,中継装置32から送信される無線信号を用いて,通信装置34ではなく中継装置32との間の距離を推定する。距離推定部252における距離の推定は,図3?図16に関連して説明した手法により行われる。なお,距離推定部252の構成は,図24に示した構成に限定されない。距離推定部252は,図3?図16に関連して説明した手法とは異なる手法により中継装置32との間の距離情報を推定してもよい。」(第22ページ) カ 「【0165】 中継装置32から送信された測距データは,無線通信装置30の通信部216によって受信される(S804)。その後,無線通信装置20の距離推定部252が,無線通信装置20’から受信した測距データを用いて,中継装置34との間の距離情報を推定する(S808)。距離推定部252にて推定された距離情報は,通信部216を介して通信装置34へ送信される(S812)。 【0166】 無線通信装置30から送信された距離情報は,通信装置34の通信部216’により受信され,距離情報取得部250’により取得される(S858)。距離情報取得部250’は,取得した距離情報をデータ選択部260’に受け渡す。そして,通信装置34のデータ選択部260’は,図25に関連して説明したように,受け渡された距離情報に基づいて記憶部228’が記憶している複数のデータからデータを選択する(S862)。例えば,無線通信装置30と中継装置32との間の距離が近距離の場合には,データ選択部260’は,商品に関する詳細説明,動画広告,及び特典情報を選択する。 【0167】 データ選択部260’によって距離情報に基づいて選択されたデータは,通信部216’から無線通信装置30へと送信される(S866)。その後,選択済みデータは,無線通信装置30の通信部216を介してデータ受信部280に受信される(S816)。そして,データ受信部280から表示部240または記憶部228へ,選択済みデータは出力される(S820)。」(第23ページ) キ 「【0171】 また,図2に示した第4の実施形態に係る通信システム2において,例えば中継装置32を店舗に設置した固定の無線アクセスポイント,通信装置34をデータを集中的に管理する管理サーバなどとして実装することができる。また,利用者の保持する携帯端末を無線通信装置30として用いることができる。このとき,無線通信装置30が推定し通信装置34へ送信する距離情報は,携帯端末を保持する利用者と店舗に設置した無線アクセスポイントとの間の距離を意味する。そうした場合には,例えば遠距離に位置する利用者の端末へ商品名及び商品画像を広告情報として配信し,興味を持って近づいてきた利用者にはより詳細な広告を,さらに近距離まで近づいてきた利用者には商品購入を促す特典情報などを配信することが可能となる。」(第24ページ) 以下,前記アないしキの記載並びに本願の優先日における技術常識を参酌して,引用例3に記載した事項について検討する。 (ア)前記ア,イ,オの【0154】,カ及びキより,引用例3には,店舗に設置された無線アクセスポイントとしての中継装置と,無線アクセスポイント(中継装置)との距離を測定し,距離に応じて表示する広告コンテンツを切り替える携帯端末とからなるシステムが記載されている。 ここで,広告コンテンツの表示内容を「画面」と称することは任意である。 (イ)前記エ及びオの【0158】より,引用例3には,携帯端末が,無線アクセスポイント(中継装置)から送信された測距データの受信強度を測定し,当該受信強度に基づいて,無線アクセスポイント(中継装置)との間の距離を推定することが記載されている。 (ウ)前記カの【0166】及びキより,無線アクセスポイント(中継装置)との間の距離が,遠距離である場合には,商品名,商品画像等といった商品の概要を広告コンテンツとして表示し,近距離である場合には,商品購入を促す特典情報等を表示することが記載されている。そして,情報を表示することは,ユーザに情報の提供というサービスを提供しているに他ならず,商品の概要の情報を提供することを「第1のサービス」,そして,特典情報を提供することを「第2のサービス」と称することは任意である。 また,システムは,全体としてみれば,位置に応じて表示する広告コンテンツを変化させるサービスを提供しているといえる。 前記アないしオ並びに(ア)ないし(ウ)の検討から,引用例3には,以下の事項(以下,「技術事項2」という。)が記載されていると認める。 「 店舗に設置される無線アクセスポイントと, プログラムを実行することにより,前記無線アクセスポイントより受信した電波の受信強度により第1の画面と第2の画面を切り替えて表示する携帯端末とを備え, 前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ商品の概要を提供する第1のサービス及び店舗情報を提供する第2のサービスについて表示されることを特徴とする, 位置に応じて表示する広告コンテンツを変化させるサービスを提供するシステム。」 (5)引用例4 引用例4(特開2004-23435号公報)には,「情報端末の制御方法および制御情報発信装置」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 ア 「【0002】 【従来の技術】 従来,パーソナルコンピュータ,PDA(Personal Digital Assistant),携帯電話等といった情報端末が各方面で種々な目的のために広く使用されている。」(第3ページ) イ 「【0059】 また,図5には,フロア毎の通信システム同士が接続された構成例が示されている。 【0060】 この例では,フロア毎に座席の管理を行うサーバ4a,4b,…が設けられる。サーバ4a,4b,…は,互いに基幹ネットワークを通じて連絡できるようになっており,各フロアの座席掲示情報などを交換できるようになっている。サーバ4aは有線ネットワーク5aに接続された情報端末を管理し,サーバ4bは有線ネットワーク5bに接続された情報端末を管理している。フロア毎の通信システムについては,基本的に図3に示した例と同様である。但し,送受される制御情報の中の位置情報としては,机の番号のみならず階数を示す情報を加える。これにより,各座席掲示情報からは,現在どの情報端末利用者がどの階のどの机の場所に居るのかが把握できるようになる。 (…中略…) 【0068】 通信コネクションの確立後,Bluetoothコントローラ31が制御情報発信装置1から制御情報を受信すると,主メモリ23に常駐する制御情報受信プログラム(所定のアプリケーション)は,受信した制御情報に基づいて,サーバ装置4にネットワーク接続し,位置情報などを通知する(ステップB3,B4)。 【0069】 これによりサーバ装置4側では位置情報が座席掲示ソフトウェアに反映されるため,情報端末2は,そのソフトウェアから生成される情報をネットワークを介して閲覧できるようになる(ステップB5)。」(第8-9ページ) ウ 「【0071】 図8に,本発明の第2の実施形態における制御情報発信装置1および情報端末2の使用例を示す。これらの通信システムでは,前述の制御情報発信装置1と同じものが複数採用され,前述の情報端末2と同じものが一つ採用されている。 【0072】 制御情報発信装置1a?1dは,情報端末制御用の制御情報としてその設置されている場所に対応した属性情報データ(職場など)を有している。 【0073】 情報端末2には,用途に応じて4つのソフトウェアA?Dが予めインストールされている。例えばソフトウェアAは属性情報「職場」で立ち上げるべきソフトウェアであり,ソフトウェアBは属性情報「自宅」で立ち上げるべきソフトウェアであり,ソフトウェアCは属性情報「学校」で立ち上げるべきソフトウェアであり,ソフトウェアDは特定の属性情報「レストラン」で立ち上げるべきソフトウェアであるものとする。 【0074】 また,立ち上げるべきソフトウェアと対応する制御情報との対応関係を示すテーブル(情報)が情報端末2側の所定の記憶エリアに記憶され。前述の制御情報受信プログラムは,情報端末2が制御情報を受信したときに上記テーブルを参照することにより対応するソフトウェアを選択して起動できるようになっている。 (…中略…) 【0079】 ここで通信コネクションが確立できたならば,主メモリ12に常駐する制御情報発信プログラム(所定のアプリケーション)は,当該制御情報発信装置が設置された場所に関連する情報として予め登録された制御情報(情報端末2側で起動されるべきソフトウェアを特定する位置情報もしくは属性情報)を,Bluetoothコントローラ13を通じて情報端末2へ無線送信する(ステップC4,C5)。 (…中略…) 【0084】 このように,第2の実施形態によれば,情報端末を置いた場所からネットワーク接続を行うに際し,ユーザは立ち上げるべきソフトウェアが何であるかを意識する必要がなく,適切なソフトウェアを自動的に情報端末に選択・起動させることができる。また,ユーザは立ち上げるべきソフトウェアを手動で選択・起動する必要がないため,ユーザにとって使い勝手が良いものとなる。」(第9-10ページ) 以下,前記アないしウの記載並びに本願の優先日における技術常識を参酌して,引用例4に記載した事項について検討する。 (ア)前記ア,ウの【0071】,図4及び図8より,引用例4には,場所を示す属性情報を無線送信する1以上の制御情報発信装置と,携帯電話からなる通信システムが記載されている。 (イ)前記ア,ウの【0073】及び【0074】より,引用例4には,携帯電話が,場所を示す属性情報を受信して,前記属性情報によりソフトウェアを実行することが記載されている。 (ウ)前記イより,引用例4には,さらに,携帯電話の位置情報を管理するサーバ装置を備えることが記載されている。 (エ)前記ウの【0084】より,引用例4に記載の通信システムは,携帯電話の位置に応じて適切なソフトウェアを自動的に起動・選択するものといえる。 前記アないしオ並びに(ア)ないし(エ)の検討から,引用例4には,以下の事項(以下,「技術事項3」という。)が記載されていると認める。 「 場所を示す属性情報(「職場」「レストラン」など)を無線送信する1以上の制御情報発信装置と, 前記属性情報を受信して前記属性情報によりソフトウェアを実行する携帯電話と,を備え, さらに,携帯電話の位置情報を管理するサーバ装置を備えることを特徴とする, 携帯電話の位置に応じて適切なソフトウェアを自動的に選択・起動するシステム。」 (6)引用例5及び引用例6 引用例5(特開2009-294114号公報)には,「物体検知装置,物体検知システム及び物体検知方法」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 ア 「【0043】 また距離rの測定方法としては,ICタグ12から受信された電界の強度Eを電波強度制御部26で測定する方法がある。この電界強度Eの測定結果より,管理サーバ30において,距離rと電界強度Eの関係がr=α/E(αは周波数,出力電界強度によって決まる任意の値)であることから距離rを求める。」(第7ページ) また,引用例6(特開2010-180008号公報)には,「倉庫管理システム」(発明の名称)に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。 イ 「【0001】 本発明は,ICタグを利用してフロア上に積み上げたパレタイズ(パレット積み)物品(ワーク)の3次元位置情報(XYZ座標)をコンピュータ管理する倉庫管理システムに関する。」(第2ページ) ウ 「【0015】 図3に,本発明を実施した倉庫管理システムのデータ関連図を示す。 倉庫管理システムは,第1のタグリーダ(子機)7が倉庫内を移動して第1のタグ(ワークタグ)5からIDを読み取り,それを第1のタグリーダ(子機)7に内蔵した第2のタグ(内蔵タグ)6を介して第2のタグリーダ(親機)8に転送する。 同時に,第2のタグ(内蔵タグ)6を介して直下に設置した第2のタグ(フロアタグ)6に向けてプローブ信号を発射する。第2のタグ(内蔵タグ)6はメモリ等を介して第1のタグリーダ(子機)7に接続する。 プローブ信号を受信した第2のタグ(フロアタグ)6は,プローブ信号の距離変数を測定して自身のIDとともにそれを第2のタグリーダ(親機)8に送信する。 図では第2のタグ(内蔵タグ)6からプローブ信号を発射して第2のタグ(フロアタグ)6が受信しているが,逆に第2のタグ(フロアタグ)6からプローブ信号を発射して第2のタグ(内蔵タグ)6が受信してもよい。」(第4-5ページ) エ 「【0019】 準静電界の場合,受信点での電界強度が距離の3乗に反比例するので,プローブ信号の距離変数を受信強度に設定し,これより受信強度を測定して2点間の距離を算定する。 超音波の場合,受信点での到達時間が距離に比例するので,プローブ信号の距離変数を到達時間に設定し,これより到達時間を測定して2点間の距離を算定する。」(第5ページ) 前記ア及びイないしエより,引用例5及び引用例6には,以下の技術(以下,「周知技術」という。)が記載されていると認める。 「ICタグから受信した信号の受信強度に基づいてICタグとの間の距離を測定すること。」 4.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 特許法第36条第6項第1号について (ア)「第1の画面」と「第2の画面」とを「切り替えて表示する」ことについて 平成29年9月29日付けで通知された取消理由においては,明細書の段落【0036】及び図5のフローチャートの記載を主たる根拠として,画面の表示には,「アプリケーションの起動操作」を要するから,本件発明1ないし5において,「第1の画面」と「第2の画面」とを「切り替えて表示する」ことは,発明の詳細な説明には記載されていない旨通知している。 しかしながら,前記明細書の段落【0036】の記載「電波強度測定部203では,ステップS101で受信した電波のRSSIを常に測定しており,その結果をアプリケーション実行制御部202に引き渡す。」,「アプリケーション識別情報に基づく操作部230の操作選択,所謂,アプリケーションの起動操作を検出すると(ステップS107”Yes”),アプリケーション実行制御部202は,電波強度測定部203が測定した電波のRSSIと閾値として予め設定されたRSSIとを比較する(ステップS108)」と記載されており,「アプリケーション実行制御部」は,常に測定されている電波のRSSIを「電波強度測定部」から引き渡されている。そうすると,「アプリケーション」が起動されている状態においては,常に,電波のRSSIを比較し,表示すべき画面を判断できることになるから,必要に応じて「第1の画面」と「第2の画面」とを「切り替えて表示する」ものと解することができる。 よって,本件発明1ないし5において,「第1の画面」と「第2の画面」とを「切り替えて表示する」ことは,発明の詳細な説明に記載したものといえる。 (イ)「端末プログラム」を実行し,「電波強度を測定する」ことについて 前記取消理由においては,訂正前の本件発明1及び2は,「端末プログラム」を実行することにより「電波強度」の「測定」を行う態様を含み,そのような態様は,発明の詳細な説明に記載したものではない旨通知している。 これに対し,前記訂正事項2により,「前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,前記第1の識別情報を受信して前記第1の識別情報により端末プログラムを実行し,」と記載順序を入れ替える訂正をすることにより,「端末プログラム」の実行に先んじて,「電波」の受信及びその「電波強度」の「測定」を行うことが明確となり,訂正後の本件発明1及び2は,発明の詳細な説明に記載したものとなった。 (ウ)「管理装置」が,「位置情報を管理する」機能と「第1の識別情報」を「第2の識別情報」に変換する機能を備えることについて 前記取消理由においては,訂正前の本件発明2及び3は,「位置情報を管理する管理装置」が「第1の識別情報」を「第2の識別情報」に変換する機能を備えることは,発明の詳細な説明に記載したものではない旨通知している。 これに対し,前記訂正事項3及び訂正事項4により,「位置情報を管理する管理装置」が,「位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」に訂正され,訂正後の本件発明2及び3は,発明の詳細な説明に記載したものとなった。 イ 特許法第29条第2項について (ア)引用例を主たる引用刊行物とした場合の判断 本件発明1と引用発明とを対比すると,引用発明は,本件発明1の「前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,…当該電波強度により第1の画面と第2の画面を切り替えて表示する」,及び,「前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ,前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス,及び前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービスについて表示されること」の事項を有していない。 そして,引用発明は,店舗内に設置される超近距離通信装置からサーバーのアドレスを受信して,アプリケーションソフトをインストールしており,携帯電話機のユーザが,当該店舗にいることを前提としているから,当該店舗を案内する情報を当該店舗から離れたところから取得し表示する必要がない。 一方,引用例2に記載した技術事項1又は引用例3に記載した技術事項2は,いずれも,店舗に設置される発信機から受信した電波の電波強度,言い替えると,携帯電話機すなわちユーザと店舗との距離に応じて,異なるサービスについて表示するものであるから,その前提が引用発明とは異なっている。 よって,引用発明に,引用例2に記載した技術事項1又は引用例3に記載した技術事項2を適用する動機付けが存在しない。 したがって,本件発明1は,引用例,引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 (イ)引用例1を主たる引用刊行物とした場合の判断 本件発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1は,本件発明1の「前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,…当該電波強度により第1の画面と第2の画面を切り替えて表示する」,及び,「前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ,前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス,及び前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービスについて表示されること」の事項(以下,「相違事項」という。)を有していない。 そして,引用発明1は,引用例1の【0007】に「そこで,本発明の目的は上記の問題点を解消し,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを自動的に取得して起動することができるアプリケーション取得/起動システム,携帯端末装置及びそれらに用いるアプリケーション取得/起動方法を提供することにある。」と記載されているように,ユーザの位置に応じて適切なアプリケーションを取得して起動するものである。さらに,当該アプリケーションの例として,引用例1の【0045】には,「遊園地」の位置に対応する「遊園地案内アプリケーション」,「居酒屋」の位置に対応する「メニューアプリケーション」が記載されているように,引用発明1は,施設(遊園地,居酒屋)の位置毎のアプリケーションを実行し,施設毎に対応するサービスを提供することを目的としており,施設と携帯電話端末との距離に応じたサービスを提供することを前提とするものではない。 一方,引用例2に記載した技術事項1又は引用例3に記載した技術事項2は,いずれも,店舗に設置される発信機から受信した電波の電波強度,言い替えると,携帯電話機すなわちユーザと店舗との距離に応じて,異なるサービスについて表示するものであるから,その前提が引用発明1とは異なっている。 よって,引用発明1に,引用例2に記載した技術事項1又は引用例3に記載した技術事項2を適用する動機付けが存在しない。 また,引用例5及び引用例6には,相違事項について記載されていない。 したがって,本件発明1は,引用例1ないし3,引用例5及び引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 本件発明2ないし5は,その構成に,相違事項を含むものであるから,本件発明1と同様に,引用例1ないし3,引用例5及び引用例6又は引用例1ないし引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 甲号証について 各特許異議申立人が証拠として提出した各甲号証をまとめ,便宜的に以下のように示す。 甲A号証: 特開2007-215661号公報 甲B号証: 特開2007-109144号公報 甲C号証: 特開2008-139181号公報 甲D号証: 特開2008-282255号公報 甲E号証: 特開2007-129472号公報 甲F号証: 特開2006-165886号公報 (上記引用例と同じ。) 甲G号証: 特開2007-52513号公報 甲H号証: 特開平2008-225706号公報 甲J号証: ニュース-Bluetoothを使って屋内でもスマホに位置情報配信,ボクシーズが開発:ITPro(2012/12/11)(URLは省略) 甲K号証: 日経NETWORK,2007年09月号,第069頁「Place Engine 無線LANのビーコン信号で現在位置を推定するインターネットのサービス」 甲L号証: 国際公開第2014/097968号 以降では,「甲A号証」等を単に,「甲A」等と省略して記載する。 イ 特許異議申立人Aの主張について (ア)特許法第36条第6項第1号についての主張 特許異議申立人Aは,請求項1の記載において,「第1のサービス」及び「第2のサービス」がどのようなサービスであるか,発明の詳細な説明には記載されていない旨主張するが,本件訂正後の請求項1の記載は,「前記携帯端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス」及び「前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービス」と訂正され,かつ,明細書(特に,【0037】ないし【0039】)並びに図6(a)及び図6(b)には,施設情報詳細を含む店舗情報ページを表示することにより,「携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス」を提供し,クーポンを含むクーポン付き店舗情報ページを表示することにより,「施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービス」を提供することが記載されているといえる。 よって,本件訂正後の請求項1の記載における「第1のサービス」及び「第2のサービス」は,発明の詳細な説明に記載したものである。 (イ)特許法第36条第6項第2号についての主張 a.特許異議申立人Aは,請求項1ないし3の記載において,「位置情報サービス」がどのようなサービスであるのか明確でない旨主張するが,本件訂正後の請求項1には,「位置情報サービス」は記載がなく,また,本件訂正後の請求項2及び3には,「位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」と訂正され,「位置情報サービス」は,「管理装置」が提供するサービスではなく,その管理運営者たる主体(位置情報サービス提供事業者)により提供されるものであることが明らかとなり,「管理装置」の技術的な構成又は機能を特定するものではなくなった。また,当該「位置情報サービス」は,位置情報に関するサービスであることは明確であり,それ以上にサービスの内容を明らかにしなければその技術的意味が明確でないとする理由がない。 b.特許異議申立人Aは,請求項2の記載において,「第2の識別情報」をどのように用いるのか明確でない旨主張しているが,本件訂正後の請求項2には,「第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行する」と記載されているように,「第2の識別情報」は,「端末プログラム」を実行するための情報であることが明確である。 c.特許異議申立人Aは,請求項3ないし5の記載において,「端末プログラム」を実行するのが「第1の識別情報」であるのか「第2の識別情報」であるのか明確でない旨主張するが,本件訂正後の請求項4及び5には,「端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報」及び「第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行する」と訂正され,「端末プログラム」は,直接的には「第2の識別情報」に基づいて実行されるものであることが明確となった。また,本件訂正後の請求項3には,依然として「前記第1の識別情報により端末プログラムを実行する」及び「前記第2の識別情報に基づき端末プログラムを実行する」と記載されているものの,「第2の識別情報」は,「第1の識別情報」から変換されるものであることから,その文脈から,「第1の識別情報」は,「端末プログラム」を実行可能とするものであり,「端末プログラム」は,直接的には「第2の識別情報」に基づいて実行されるものであることは明確である。 d.特許異議申立人Aは,請求項5の記載において,「端末プログラムを実行可能とする」と「前記端末プログラムを実行する」とが同一か否か明確でない旨主張しているが,後者が「前記端末プログラム」となっている以上,両者は同じものであることは明確である。 (ウ)特許法第29条第1項についての主張 a.特許異議申立人Aは,請求項1に係る発明は,甲A又は甲Dに記載の発明と同一であり,請求項2ないし5に係る発明は,甲Aに記載の発明と同一である旨主張する。 ここで,甲Aには,病院等の施設に設置される情報提示端末が,ユーザが身につけるタグから受信した電波の強度に基づいてタグとの距離を検出し,距離に応じた表示を行う発明(甲A発明)が記載されている。 また,甲Dには,ビル等の施設に設置される案内表示システムが,来訪者が所持するID入館証から受信した電波の強度に基づいて表示モードを切り替えて表示する発明(甲D発明)が記載されている。 甲A発明及び甲D発明のいずれも,施設に設置される装置における表示を切り替えるものであるのに対し,本件発明1ないし5は,ユーザが所持する携帯情報端末において第1の画面と第2の画面とを切り替えるものであるから,その前提となる機能及び構造が異なることが明らかである。 よって,本件発明1ないし5は,甲A又は甲Dに記載された発明と同一ではない。 (エ)特許法第29条第2項についての主張 a.特許異議申立人Aは,請求項1ないし5に係る発明は,甲A,甲D,甲F,甲H及び甲Jに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。 しかしながら,前記(ウ)で述べたように,甲A発明及び甲D発明のいずれも,本件発明1ないし5とは,その前提となる機能及び構造が異なるものであるから,本件発明1ないし5は,当業者といえども,甲F,甲H又は甲Jに記載された発明を参酌して,容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。 b.特許異議申立人Aは,請求項2に係る発明の「携帯情報端末の位置情報を管理する管理装置」は,分割の原出願である国際出願PCT/JP2013/083395の国際出願時における明細書等に記載したものではないから,本件特許に係る出願は,分割要件を満たしておらず,出願日の遡及は認められず,その出願日は,現実の出願日である平成26年11月13日となり,その結果,請求項1ないし5に係る発明は,その出願前に公知となった甲L(原出願の国際公開公報)に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 しかしながら,請求項2の「携帯情報端末の位置情報を管理する管理装置」は,本件訂正により「位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置」と訂正され,原出願の国際出願時における明細書等に記載した範囲のものであることが明らかとなった。 よって,本件特許に係る出願は,分割要件を満たしており,出願日の遡及は認められ,甲Lは,出願日の後に公知となったものであるから,甲Lによって本件発明1ないし5の進歩性を否定することはできない。 以上のとおり,特許異議申立人Aの主張は,いずれも理由がない。 ウ 特許異議申立人Bの主張について (ア)特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号についての主張 特許異議申立人Bは,請求項1及び2に記載の「前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ第1のサービス及び第2のサービスについて表示される」に関して,特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない旨主張している。 しかしながら,請求項1及び2に係る前記記載は,本件訂正により,「前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス,及び前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービスについて表示される」に訂正され,請求項1及び2に係る発明は,明確となり,発明の詳細な説明に記載したものとなり,また,発明の詳細な説明は,請求項1及び2に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであることが明らかとなった。 (イ)特許法第29条第2項についての主張 特許異議申立人Bは,請求項1ないし5に係る発明は,甲A,甲C及び甲Eに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張している。 しかしながら,前記イの(ウ)及び(エ)で述べたように,甲A発明は,本件発明1ないし5とは,その前提となる機能及び構造が異なるものである。よって,本件発明1ないし5は,当業者といえども,甲A発明に基づいて,甲C及び甲Eに記載された発明を参酌して,容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。 以上のとおり,特許異議申立人Bの主張は,いずれも理由がない。 エ 特許異議申立人Cの主張について (ア)特許法第17条の2第3項についての主張 特許異議申立人Cは,請求項1に係る発明において,電波強度により切り替えて表示する第1の画面と第2の画面にそれぞれ対応する第1のサービス及び第2のサービスに対応する事項が,分割出願前の明細書に記載も示唆もされていない旨主張する。 しかしながら,請求項に記載の事項が分割出願前の明細書に記載されていることは,特許法第17条の2第3項の要件ではない。(なお,特許出願が特許法第44条に規定する特許出願の分割に係る要件を満たしていないこと自体は,特許法第113条に掲げる特許異議の申立ての理由には該当しない。) 仮に,この主張が,請求項1に係る特許は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「出願当初の明細書等」という。)に記載した範囲内ではない補正をした特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきであるとの趣旨であると善解したとしても,前記「4.判断」の(1)のアの(ア)の項で,請求項1に係る発明において,「第1の画面」と「第2の画面」とを「切り替えて表示する」ことの根拠となった,明細書の段落【0036】及び図5のフローチャートは,本件特許に係る出願の審査の過程において手続補正がされていない。よって,前記「4.判断」の(1)のアの(ア)の項でした判断を参酌すれば,請求項1に係る発明において,電波強度により切り替えて表示する第1の画面と第2の画面にそれぞれ対応する第1のサービス及び第2のサービスに対応する事項は,出願当初の明細書等に記載した範囲内のものであることは明らかである。 (イ)特許法第36条第6項第1号についての主張 特許異議申立人Cは,請求項1の記載において,電波強度により切り替えて表示する第1の画面と第2の画面にそれぞれ対応する第1のサービス及び第2のサービスに対応する事項と,発明の詳細な説明に記載した事項との対応関係が不明りょうであるから,請求項1は,発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張している。 しかしながら,請求項1に係る前記記載は,本件訂正により,「前記第1の画面及び前記第2の画面が,それぞれ,前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス,及び前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービスについて表示される」に訂正され,請求項1及び2に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものであることが明らかとなった。 (ウ)特許法第29条第1項第3号についての主張 特許異議申立人Cは,請求項1に係る発明は,甲Bに記載の発明と同一である旨主張している。 ここで,甲Bには,コンテンツインデックスデータを発信する,店舗からの位置がそれぞれ異なる複数のコンテンツインデックス発信装置と,携帯端末装置とを備え,前記携帯端末装置は,前記コンテンツインデックス発信装置の通信エリア内に入ると,当該コンテンツインデックス発信装置から,前記店舗からの位置に応じたコンテンツインデックスデータを受信し,受信したコンテンツインデックスデータを表示する発明(甲C発明)が記載されている。 甲C発明は,本件発明1に係る「前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して,前記第1の識別情報を受信して前記第1の識別情報により端末プログラムを実行し,当該電波強度により第1の画面と第2の画面とを切り替えて表示する」との構成を有していない。 よって,本件発明1は,甲Cに記載の発明と同一ではない。 (エ)特許法第29条第2項についての主張 a.特許異議申立人Cは,請求項2ないし5に係る発明は,甲Cに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 しかしながら,甲C発明は,店舗から異なる位置にコンテンツインデックス発信装置が設置され,各コンテンツインデックス発信装置から,店舗からの位置に応じたコンテンツインデックスデータを受信して表示することを前提としているから,各コンテンツインデックス発信装置が発信した電波の電波強度を測定して,その電波強度により第1の画面と第2の画面とを切り替えるように構成する動機付けが存在しない。 したがって,本件発明2ないし5は,当業者が甲Cに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 b.特許異議申立人Cは,請求項1ないし5に係る発明は,甲K及び甲Gに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張している。 ここで,甲Gには,複数のユーザにより共用される対象機器が,無線UIMから受信した電波の受信レベル(対象器機から無線UIMまでの距離)に応じて,当該対象器機が提供するサービスを変更し,例えば,距離が遠い場合は,現在の対象器機の状態を無線UIMに通知し,距離が近い場合には,無線UIMの所有者が対象器機を利用できるようにする発明(甲G発明)が記載されている。 甲G発明は,電波強度を測定する対象機器が,電波強度に応じて第1の画面と第2の画面とを切り替えるものではないから,本件発明1ないし5の,電波強度を測定する「携帯情報端末」が電波強度に応じて第1の画面と第2の画面とを切り替えるという構成とは,前提となる構成が異なっている。また,甲G発明において提供するサービスも,「前記携帯端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス」及び「前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービス」ではなく,サービスを提供する対象機器は,ユーザによって所持され,移動することを前提としないものであるから,本件発明1ないし5の「サービス」を提供するように構成することの動機付けが存在しない。 したがって,本件発明2ないし5は,当業者といえども,甲Gに記載の発明に基づいて甲Kに記載の発明を参酌しても容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおり,特許異議申立人Cの主張は,いずれも理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立理由書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置と、 前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して、前記第1の識別情報を受信して前記第1の識別情報により端末プログラムを実行し、当該電波強度により第1の画面と第2の画面を切り替えて表示する携帯情報端末と、を備え、 前記第1の画面及び前記第2の画面が、それぞれ、前記携帯情報端末を所持したユーザを所望の施設へ案内するサービスを含む第1のサービス、及び前記施設へ来店した時のチェックインサービスを含む第2のサービスについて表示されることを特徴とする位置情報サービスシステム。 【請求項2】 さらに、前記携帯情報端末とネットワーク経由で接続され、位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置を備え、 前記携帯情報端末が、前記電子タグ発信装置から受信した前記第1の識別情報に基づく問い合わせを前記管理装置に行い、前記管理装置にて変換された第2の識別情報を前記管理装置から取得することを特徴とする請求項1に記載の位置情報サービスシステム。 【請求項3】 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置と、 位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置とはネットワーク経由で接続され、前記第1の識別情報を受信し、前記第1の識別情報により端末プログラムを実行する携帯情報端末と、を含む位置情報サービスシステムにおける電子タグを用いた位置情報サービス方法であって、 前記管理装置が、前記携帯情報端末が受信した前記第1の識別情報に基づく問い合わせを受信し、前記第1の識別情報を前記携帯情報端末が管理する第2の識別情報に変換して問い合わせがあった前記携帯情報端末に送信するステップと、 前記携帯情報端末が、前記第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行するステップと、を含み、 前記携帯情報端末が、前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して、当該電波強度により第1のサービスに係る第1の画面と第2のサービスに係る第2の画面を切り替えて表示し、 前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり、前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする位置情報サービス方法。 【請求項4】 位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置とはネットワーク経由で接続される携帯情報端末であって、 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置から端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報を受信して認識する識別情報認識部と、 認識した前記第1の識別情報に基づき前記管理装置に問い合わせを行い、前記管理装置によって変換されて送信される第2の識別情報を取得し、当該取得した第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行する制御部と、を備え、 前記制御部が、前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して、当該電波強度により第1のサービスに係る第1の画面と第2のサービスに係る第2の画面を切り替えて表させ、 前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり、前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする携帯情報端末。 【請求項5】 位置情報サービス提供事業者が管理運営する管理装置とはネットワーク経由で接続される携帯情報端末のコンピュータに、 第1の識別情報を含む電波を発信する1以上の電子タグ発信装置から端末プログラムを実行可能とする前記第1の識別情報を受信して認識する処理と、 認識した前記第1の識別情報に基づき前記管理装置に問い合わせを行い、前記管理装置によって変換されて送信される第2の識別情報を受信し、当該受信した第2の識別情報に基づき前記端末プログラムを実行する処理と、 前記電子タグ発信装置が発信した前記電波の電波強度を測定して、当該電波強度により第1のサービスに係る第1の画面と第2のサービスに係る第2の画面を切り替えて表示する処理と、を実行させ、 前記第1のサービスが前記携帯情報端末を所持したユーザを特定の施設へ案内するサービスであり、前記第2のサービスが前記施設へ来店した時のチェックインサービスであることを特徴とする端末プログラム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-02-16 |
出願番号 | 特願2014-231095(P2014-231095) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(H04M)
P 1 651・ 536- YAA (H04M) P 1 651・ 55- YAA (H04M) P 1 651・ 121- YAA (H04M) P 1 651・ 537- YAA (H04M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
林 毅 中野 浩昌 |
登録日 | 2015-04-03 |
登録番号 | 特許第5723052号(P5723052) |
権利者 | 株式会社タグキャスト |
発明の名称 | 位置情報サービスシステム、電子タグを用いた位置情報サービス方法、携帯情報端末、および端末プログラム |
代理人 | 宮本 陽子 |
代理人 | 特許業務法人信友国際特許事務所 |
代理人 | 大石 敏弘 |
代理人 | 渡辺 浩司 |
代理人 | 渡辺 浩司 |
代理人 | 大石 敏弘 |
代理人 | 坂本 智弘 |
代理人 | 宮本 陽子 |
代理人 | 矢田 歩 |
代理人 | 矢田 歩 |
代理人 | 土井 伸次 |
代理人 | 土井 伸次 |
代理人 | 坂本 智弘 |