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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  F04D
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  F04D
審判 全部申し立て 2項進歩性  F04D
管理番号 1326990
異議申立番号 異議2016-700998  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-19 
確定日 2017-04-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第5906776号発明「ターボ分子ポンプ」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5906776号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5906776号の請求項1?5に係る特許についての出願は,平成24年2月3日に特許出願され,平成28年4月1日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許に対し,特許異議申立人プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハーにより特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件特許発明
特許第5906776号の請求項1?5の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下,特許請求の範囲の請求項1?5に記載された発明をそれぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明5」という。)。

第3.申立理由の概要
特許異議申立人は,証拠として甲第1号証ないし甲第13号証を提出し,本件特許発明1は,特許法第29条第1項第1号又は第2号に規定された発明に該当し,本件特許発明1に係る特許は,特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであるから,取り消すべきものである旨主張し,また,特許異議申立人は,主たる証拠として甲第1号証ないし甲第13号証及び従たる証拠として甲第14号証,甲第15号証を提出し,本件特許発明2ないし本件特許発明5に係る特許は,同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから,取り消すべきものである旨主張している。

証拠方法
(1)甲第1号証:ターボ分子ドラッグポンプTMH262(品番PM P02 990A)図面
(2)甲第2号証:ターボ分子ドラッグポンプTMH262(品番PM P02 990A)部品表
(3)甲第3号証:ローターアッセンブリー(品番PM 103 153 -X)図面
(4)甲第4号証:ローターアッセンブリー(品番PM 103 153 -X)部品表
(5)甲第5号証:炭素繊維スリーブ(品番PM 103 154)図面
(6)甲第6号証:炭素繊維スリーブ(品番PM 103 155)図面
(7)甲第7号証:技術仕様書(PM 083 542 -V)
(8)甲第8号証:ホルベックスリーブ(品番PM 063 826 A)図面
(9)甲第9号証:ホルベックインサート(品番PM 063 828)図面
(10)甲第10号証:ラビリンスハブ(品番PM 103 145)図面
(11)甲第11号証:接着規定書(PM 103 164-V)
(12)甲第12号証:納品書(231571-N)及び請求書(326763-N)
(13)甲第13号証:宣誓供述書
(14)甲第14号証:特開2001-83838号公報
(15)甲第15号証:特開平7-271241号公報

第4.判断
(1)特許法第29条第1項について
(1-1)当審の判断
甲第1号証乃至甲第13号証のいずれの証拠にも,
(ア)「リング部の装着部には,接着剤が充填され,回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている」点が記載されていない。

甲第3号証及び甲第4号証は,ローターアッセンブリー(品番PM 103 153 -X)の図面及び部品表である。図面(甲第3号証)により,符号13を付された炭素繊維スリーブが看て取れる。この炭素繊維スリーブ13の品番は,部品表(甲第4号証)よれば,PM 103 154であることが理解できる。
甲第3号証からみて,ラビリンスハブ7(品番PM 103 145)は炭素繊維スリーブ13とローター軸1とを接続していることが理解できる。
甲第10号証は,ラビリンスハブ(品番PM 103 145)の図面である。甲第10号証により,ラビリンスハブ7の材料は,AlZnMgCu1.5であって,アルミ合金といえ,また,ラビリンスハブ7は全体は円板状であって,ラビリンスハブ7に鍔のように形成された円環部が形成されていることが理解できる。
甲第3号証及び甲第10号証により,ラビリンスハブ7の外周部は,前記円環部及び該円環部の外周端に付設されて回転軸方向に突出する部分(以下,「突出部」という。)からなることが理解できる。
そして,前記円環部の外周面は,直径φ94.3であるA(後記参考図参照)と,該Aより半径方向外方に突出し,直径φ97±0.05(甲第10号証のラビリンスハブ7の全体図参照)であるBを有することが理解できる。
また,前記突出部は,前記Bに隣接し,外周面の直径がφ94.31-0.05であるCと,前記Cに隣接し,前記Cよりも突出しているDと,前記Dに隣接し,外周面の直径がφ94.52±0.02であるEと,前記Eに隣接し前記Eよりも半径方向に突出しているF(この部分は円環部と突出部がなす断面L字状部分の端部となる。)とからなることが理解できる。
また,前記AないしFを甲第10号証のZ部分拡大図を利用して参考図として図示する(別紙参照)。
甲第3号証の図示内容を考慮すると,炭素繊維スリーブ13が,ラビリンスハブ7に接続する箇所の形状が看取できる(甲第3号証のZ部拡大図を参照)。
炭素繊維スリーブ13が変形しにくい炭素繊維から構成されていることを考慮すると,甲第3号証と甲第10号証のZ部拡大図からみて,CとEにおいては,炭素繊維スリーブ13とラビリンスハブ7が直接接触しないことが理解できる。
さらに,ラビリンスハブに形成された断面L字状の部分の端部であるFと,Dは,炭素繊維スリーブ13とラビリンスハブ7との接触領域であることが理解できる。
部品表(甲第4号証)によれば参照符号218を付された「アラルダイト2014のための接着規定書」の品番がPM 103 164-Vであることが理解できる。
甲第11号証は,「アラルダイト2014のための接着規定書」(品番PM 103 164-V)であり,
「1.一般
この規定書は,CFKからなる同軸接合部材のアルミニウム又はチタンとの接着に関する。
2..使用される成分
成分A(AW139)及び成分B(XB5323)から成るアラルダイト2014は,エポキシ樹脂ベースのペースト状の二成分接着剤である。
・・・
4.4接着剤の塗布
接着剤は,適当な調量装置によってキャタピラ状に,アルミニウムワークピース又はチタンワークピースの接着チャネルの上の部分内に全面にわたって塗布されるべきである。接合遊びは,必ず該当するローター図面から得られるべきである。CFKの接合の後,これは運転正確性を該当するローター図面に従い確認される必要がある。過剰の接着剤は,必ず糸くずの出ない生地によって拭き取られる必要がある。CFKの整向は,接合過程の後に可能である。
・・・」との記載がある。
そうすると,甲第11号証の,アルミニウムワークピースと同軸接合部材であるCFK(炭素繊維強化プラスチック)の接着に関して,接着剤は,アルミニウムワークピースの接着チャネル(溝)の上の部分内に全面にわたって塗布されるべきである旨の記載や,接合遊びは必ず該当するローター図面から得られるべきである旨の記載と,前述したような,甲第10号証から理解されるラビリンスハブ7の材料はアルミ合金からなるとの事項から,接着剤はアルミ合金のラビリンスハブ7と炭素繊維スリーブ13,14の接着に用いられるものと推認され,接着チャネル(溝)としては,上記参考図のCやEの部分が考えられる。
甲第10号証から上記参考図のCやEは,ラビリンスハブ7の外周部に設けた突出部に周方向に1周することが理解でき,このC又はEの少なくとも1つが接着チャネル(溝)として利用されることが理解できる。
甲第3号証からみて,炭素繊維スリーブ13は,ラビリンスハブ7の突出部に接合されており,それぞれ径方向両端の炭素繊維スリーブ13を結ぼうとする線が図示されているから,炭素繊維スリーブ13は円筒形のローターを形成している,つまり本件特許発明1の「回転円筒部」に相当するといえる。
また,甲第3号証からみて,炭素繊維スリーブ13が前記突出部に対して接合されていることが理解でき,当該突出部が本件特許発明1の「リング部」に相当するといえる。
そして,上記参考図のC又はEは,アルミ合金製のラビリンスハブ7の突出部に設けられた周方向に1周する溝であって,本件特許発明1の「溝」に相当するといえるものの,当該「溝」に接着剤を塗布(充填)して,炭素繊維スリーブを接着すると,アルミ合金と炭素繊維強化プラスチックの熱収縮の違いから,低温時に,ラビリンスハブ7がより収縮して,炭素繊維スリーブ13が緩んだ場合(炭素繊維スリーブ側よりも接着力の弱いラビリンスハブ側の接着が外れた場合)には,溝内の接着剤は周方向にずれることが可能であるため,上記参考図のCやEの部分は「炭素繊維スリーブ13のずれを阻止するための溝」とはいえないから,本件特許発明1でいう「回転円筒部のずれを阻止するための溝」ではない。
したがって,甲第3号証,甲第4号証及び甲第10号証,甲第11号証には,上記(ア)の点が記載されていない。
また,甲第1号証,甲第2号証,甲第5号証ないし甲第9号証,甲第12号証にも上記(ア)の点は記載されていない。
よって,特許法第29条第1項についての取消理由は,いずれも成り立たない。
なお,甲第13号証の宣誓に代えて証言した宣誓供述書(抄訳文参照)には,「位置4におけるくぼみは,接着剤で満たされており,この接着剤は,ホルベックローターとラビリンスハブの間の固定接続を確実に行う。」ことが記載されており,ここで「ホルベックローター」は,「炭素繊維スリーブ13」のことを示し,「位置4におけるくぼみ」は参考図におけるEの部分を示すものである。
しかしながら,甲第13号証の内容が仮に真実だとしても,上記(ア)の点は,特許異議申立人の提示した甲第1号証ないし甲第13号証のいずれの証拠にも記載されていないから,特許法第29条第1項についての取消理由は,いずれも成り立たないことには変わりはない。
(1-2)異議申立人の主張
上記(ア)の点に関連して,異議申立人は,
「(e)甲第10号証
甲第10号証は,ラビリンスハブ7(品番PM 103 145)の図面である。
当該ラビリンスハブ7には,軸方向一端にリング部が形成されている(詳細Zなどを参照)。
甲第10号証の詳細Zなどを参照すると,リング部には,図中の左側から順番に,(a)最も小さい半径を有し自由空間を形成する部分,(b)炭素繊維スリーブのセンタリングを行うための第一の部分,(c)炭素繊維スリーブとホルペックローターの接着の為の所定の接着剤を充填するための空間(手書きにて赤色で印をつけた箇所),(d)炭素繊維スリーブのセンタリングを行うための第二の部分が形成されているのがわかる。
上記(c)の接着剤を充填するための空間は,ラビリンスハブのリング部を周回する溝として形成されており,当該溝及び充填された接着剤によって炭素繊維スリーブ13,14のずれを阻止している。
また,(b),(d)に記載の第一および第二の部分は,接着剤を充填する為の空間,すなわち溝を形成するための領域,溝形成領域の軸方向両端に接して設けられている。
そして,これら領域は,炭素繊維スリーブに当接し,ラビリンスハブ7に対する炭素繊維スリーブ13,14の位置関係を調整する(中心出し,センタリングを行う)機能を有している。
ラビリンスハブ7の材料は,金属(AlZnMgCu 1.5)である。
(f)甲第11号証
甲第11号証は,炭素繊維スリーブとホルペックローターの間の接着の為の接着規定書である。(ローターアッセンブリーの部品表,甲第4号証も参照のこと。当該接着規定書は,参照番号218を付されている。)
当該接着規定書に従うローターの加熱による接着剤の固定は,アルミニウム製のラビリンスハブが,炭素繊維強化材料からなる炭素繊維スリーブよりも半径方向においてより大きく膨張することを意味する。これによって炭素繊維スリーブは両方のセンタリング当接面に対して半径方向において整向される。
(g)引用発明
したがって,甲第1号証乃至甲第11号証には,以下の発明が記載されている。
・・・
e.前記リング部の接着剤を充填するための空間には,接着剤が充填され,
f.前記炭素繊維スリーブ13,14のずれを阻止するための溝が少なくとも一つ形成され,
i.溝は,前記リング部を一周するリング溝であり,
・・・
ターボ分子ポンプ。」(異議申立書第9頁13行?第11頁下から5行)
と主張する。
しかしながら,(1-1)で述べたように上記(ア)の点は,異議申立人の提出した甲第1号証ないし甲第13号証のいずれにも記載されていないから,異議申立人の上記主張は失当である。

(2)特許法第29条第2項について
(2-1)本件特許発明2ないし本件特許発明5について
ア.甲第14号証について
甲第14号証には,
「複写機,FAX,プリンタなどの電子写真応用装置に搭載する感光体ドラムユニットに関し,アルミ又はアルミ合金の感光体ドラム1のドラム基体の開口端に対して樹脂成形品であるフランジ2の外筒部2aを嵌合し接着剤3で接着するものにおいて,周方向に形成したリング状の周溝2eと外周溝に交差して軸方向に分散形成した軸溝2dを組み合わせた凹溝,又はドラム基体の軸方向及び周方向の双方に対して傾けた傾斜溝2f,2g(凹溝)を,フランジ2の外筒部2aの周面に形成した上で,ドラム基体の材質に適合した接着剤3を選定して,前記凹溝を埋めて接合面に塗布した接着剤3により感光体ドラム1とフランジ2を接着することにより,軸溝2d又は傾斜溝2f,2g内で硬化した接着剤がキー,軸溝2d又は傾斜溝2f,2gがキー溝としてスプライン軸と同様に機能し,感光体ドラム1とフランジ2の両者間を強固に結合した感光体ドラムユニット。」(以下,「甲第14号証に記載された事項」という。)が記載されている(特に,段落【0001】?【0023】,【0028】,図1,図2を参照のこと。)。
甲第14号証に記載された事項の「感光体ドラム1」は回転駆動されるもの(段落【0002】参照。)であって,図5からみて円筒形であるので,本件特許発明1の「回転円筒部」に相当する。甲第14号証に記載された事項の「フランジ2における外筒部2a」は感光体ドラム1を接着する部分であるから本件特許発明1の「リング部」に相当する。
そして,図1からみて甲第14号証に記載された事項の「アルミ又はアルミ合金の感光体ドラム1のドラム基体の開口端に対して樹脂成形品であるフランジ2の外筒部2aを嵌合し接着剤3で接着するもの」における「感光体ドラム1」は,本件特許発明1の「リング部に外挿されるように接着された回転円筒部」に相当し,甲第14号証に記載された事項の「周方向に形成したリング状の周溝2eと外周溝に交差して軸方向に分散形成した軸溝2dを組み合わせた凹溝,又はドラム基体の軸方向及び周方向の双方に対して傾けた傾斜溝2f,2g(凹溝)を,フランジ2の外筒部2aの周面に形成した上で,ドラム基体の材質に適合した接着剤3を選定して,前記凹溝を埋めて接合面に塗布した接着剤3により感光体ドラム1とフランジ2を接着することにより,軸溝2d又は傾斜溝2f,2g内で硬化した接着剤がキー,軸溝2d又は傾斜溝2f,2gがキー溝としてスプライン軸と同様に機能し,感光体ドラム1とフランジ2の両者間を強固に結合した」ことは,本件特許発明1の「リング部の接着部には接着剤が充填され,回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている」こと,特許特許発明2の「軸方向に対して角度の異なる2種類の前記溝が形成されていること」,,本件特許発明3の「2種類の溝の一方は,リング部を一周するリング溝であること」,及び本件特許発明4の「溝は軸方向に対して傾いた斜め溝であ」ること,「リング部は,斜め溝が形成された溝形成領域」を有することに相当する。
そうすると,甲第14号証に記載された事項には,
「リング部に外挿されるように接着された回転円筒部と,前記リング部の接着部には接着剤が充填され,前記回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている感光体ドラムユニット。」,
「前記軸方向に対して角度の異なる2種類の前記溝が形成されていること」,
「前記2種類の溝の一方は,前記リング部を一周するリング溝であること」,
「前記溝は軸方向に対して傾いた斜め溝であ」ること,及び「前記リング部は,前記斜め溝が形成された溝形成領域を有すること」
が開示されていると認められる。
イ.甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明に,甲第14号証に記載された事項を適用する動機付けについて
(イ-1)技術分野の関連性
甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明の技術分野は,ターボ分子ドラッグポンプであるのに対して,甲第14号証に記載された事項の技術分野は,複写機,FAX,プリンタなどの電子写真応用装置に搭載する感光体ドラムユニットに関するものであるから,技術分野の関連性はない。
(イー2)課題の共通性
甲第1号証ないし甲第13号証の記載からは甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明がいかなる課題を有するのか明らかではないのに対して,甲第14号証に記載された事項の解決すべき課題は,製造コストの増加を招くことなく,かつ過酷な環境変化にも殆ど影響を受けずに感光体ドラムとフランジとの間で所要の回転トルク,および,引き抜き強度が確保できるように改良した信頼性の高い感光体ドラムユニットの組立構造の提供であるため,甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明と甲第14号証に記載された事項との間に課題の共通性があるとはいえない。
(イー3)機能・作用の共通性
アルミ等の金属製の部材と樹脂部材との接着という上位概念において両者は共通するものの,両者ではアルミ等の部材と樹脂部材の位置関係が逆であるため,低温になった場合の熱収縮の違いによって接着部分にかかるストレスも異なることになるから,その両者を単純に組み合わせられるものではない。
ウ.結論
まず,アで示したように,甲第14号証には,
「リング部に外挿されるように接着された回転円筒部と,前記リング部の接着部には接着剤が充填され,前記回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている感光体ドラムユニット。」,
「前記軸方向に対して角度の異なる2種類の前記溝が形成されていること」,
「前記2種類の溝の一方は,前記リング部を一周するリング溝であること」,
「前記溝は軸方向に対して傾いた斜め溝であ」ること,及び「前記リング部は,前記斜め溝が形成された溝形成領域を有すること」が開示されていると認められる。
しかしながら,甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明と,甲第14号証に記載された事項とは,アルミ等の金属製の部材と樹脂部材との接着という共通性はあるものの,両者ではアルミ等の部材と樹脂部材の位置関係が逆であるため,低温になった場合の熱収縮の違いによって接着部分にかかるストレスも異なることになるから,密接な機能・作用の共通性があるとも言い難く,技術分野としては,異なるものといわざるを得ないから,課題についての記載がない甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明に技術分野や機能・作用が相違する上記甲第14号証に記載された事項を適用して,上記相違点(ア)に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得たということはできない。
そして,本件特許発明1は,低温時にFRP製の回転円筒部が緩むことがあっても,回転円筒部はロータのリング部に対してずれることがないという格別の作用効果を奏するものである。
そうすると,上記のように本件特許発明1(請求項1に係る発明)が取消理由を有するものでない以上,本件特許発明1の発明特定事項をすべて含有する本件特許発明2ないし本件特許発明5も取消理由を有するものではない。
なお,下記甲第15号証に記載された事項を考慮してもこの結論が変わるものではない。

(2-2)本件特許発明5について
ア.甲第15号証について
甲第15号証には,
「接着剤を用いて電子写真感光ドラムの中空円筒基材解放端に嵌合するための電子写真感光ドラム用フランジに関し,アルミニウム製の中空円筒基材4の解放端に合成樹脂からなるフランジ1を挿入して嵌合し,接着剤を用いて接着するものにおいて,中空円筒基材4の解放端に嵌合する該フランジ1の嵌合面に,深さおよび幅が徐々に変化している凹溝5が電子写真感光ドラムの軸方向に2箇所以上設けられ,それぞれ深さの異なる2つの凹溝31,32が電子写真感光ドラムの円周方向に設けた,電子写真感光ドラム用フランジ。」(以下,「甲第15証に記載された事項」という。)が記載されている(特に,請求項2,段落【0001】,【0005】?【0009】,【0011】,【0012】を参照のこと。)。
甲第15号証に記載された事項の「中空円筒基材4」はフランジを回転中心として使用されるもの(段落【0002】参照。)であるから,本件特許発明1の「回転円筒部」に相当する。甲第15号証に記載された事項の「フランジ1の嵌合面」は中空円筒基材4を接着する部分であるから本件特許発明1の「リング部」に相当する。
甲第15号証に記載された事項の「アルミニウム製の中空円筒基材4の解放端に合成樹脂からなるフランジ1を挿入して嵌合し,接着剤を用いて接着するもの」における「中空円筒基体4」は,本件特許発明1の「リング部に外挿されるように接着された回転円筒部」に相当し,甲第15号に記載された事項の「中空円筒基材4の解放端に嵌合する該フランジ1の嵌合面に,深さおよび幅が徐々に変化している凹溝5が電子写真感光ドラムの軸方向に2箇所以上設けられ,それぞれ深さの異なる2つの凹溝31,32が電子写真感光ドラムの円周方向に設けた」ことは,本件特許発明1の「リング部の接着部には接着剤が充填され,回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている」こと,及び本件特許発明5の「溝の延在方向の一端から他端にかけて溝深さが減少するように構成された溝であ」ることに相当する。
そうすると,甲第15号証に記載された事項には,
「リング部に外挿されるように接着された回転円筒部と,前記リング部の接着部には接着剤が充填され,前記回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている電子写真感光ドラム用フランジ。」及び
「溝の延在方向の一端から他端にかけて溝深さが減少するように構成された溝であ」ることが開示されていると認められる。
イ.甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明に,甲第15号証に記載された事項を適用する動機付けについて
(イ-1)技術分野の関連性
甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明の技術分野は,ターボ分子ドラッグポンプであるのに対して,甲第15号証に記載された事項の技術分野は,接着剤を用いて電子写真感光ドラムの中空円筒基材解放端に嵌合するための電子写真感光ドラム用フランジに関するものであるから,技術分野の関連性はない。
(イー2)課題の共通性
甲第1号証ないし甲第13号証の記載からは甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明がいかなる課題を有するのか明らかではないのに対して,甲第15号証に記載された事項の解決すべき課題は,種々の接着剤に対して対応することが可能なフランジを提供することであるから,甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明と甲第15号証に記載された事項との間に課題の共通性があるとはいえない。
(イー3)機能・作用の共通性
アルミ等の金属製の部材と樹脂部材との接着という上位概念において両者は共通するものの,両者ではアルミ等の部材と樹脂部材の位置関係が逆であるため,低温になった場合の熱収縮の違いによって接着部分にかかるストレスも異なることになるから,その両者を単純に組み合わせられるものではない。
ウ.結論
まず,アで示したように,甲第15号証には,
「リング部に外挿されるように接着された回転円筒部と,前記リング部の接着部には接着剤が充填され,前記回転円筒部のずれを阻止するための溝が少なくとも1つ形成されている電子写真感光ドラム用フランジ。」及び
「溝の延在方向の一端から他端にかけて溝深さが減少するように構成された溝であ」ることが開示されていると認められる。
しかしながら,甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明と,甲第15号証に記載された事項とは,アルミ等の金属製の部材と樹脂部材との接着という共通性はあるものの,両者ではアルミ等の部材と樹脂部材の位置関係が逆であるため,低温になった場合の熱収縮の違いによって接着部分にかかるストレスも異なることになるから,密接な機能・作用の共通性があるとも言い難く,技術分野としては,異なるものといわざるを得ないから,課題についての記載がない甲第1号証ないし甲第13号証に示された公然知られた発明又は公然実施された発明に技術分野や機能・作用が相違する上記甲第15号証に記載された事項を適用して,上記相違点(ア)に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得たということはできない。
そして,本件特許発明1は,低温時にFRP製の回転円筒部が緩むことがあっても,回転円筒部はロータのリング部に対してずれることがないという格別の作用効果を奏するものである。
そうすると,上記のように本件特許発明1(請求項1に係る発明)が取消理由を有するものでない以上,本件特許発明1の発明特定事項をすべて含有する本件特許発明5も取消理由を有するものではない。
なお,甲第14号証に記載された事項を考慮してもこの結論が変わるものではない。

第5.むすび
以上のとおりであるから,特許異議申立書に記載した異議申立ての理由によっては,本件特許発明1ないし本件特許発明5に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許発明1ないし本件特許発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2017-03-28 
出願番号 特願2012-21789(P2012-21789)
審決分類 P 1 651・ 112- Y (F04D)
P 1 651・ 111- Y (F04D)
P 1 651・ 121- Y (F04D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 秀之  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 藤井 昇
松永 謙一
登録日 2016-04-01 
登録番号 特許第5906776号(P5906776)
権利者 株式会社島津製作所
発明の名称 ターボ分子ポンプ  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 篠原 淳司  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  
代理人 中村 真介  
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