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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1327004
異議申立番号 異議2016-700891  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-20 
確定日 2017-04-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第5889491号発明「光硬化性組成物及び電子部品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5889491号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5889491号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)7月3日(優先権主張 平成26年7月4日、同年9月4日、平成27年5月25日)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年9月20日付け(受理日:同年9月21日)で特許異議申立人 佐藤文樹(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月25日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、平成29年2月2日付け(受理日:同年2月3日)で意見書及び証拠説明書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。

「【請求項1】
塗布対象部材の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に塗布して用いられ、
光の照射により硬化されて用いられ、かつ現像を行わずにレジスト膜を形成するために用いられ、
非現像型レジスト光硬化性組成物であり、
カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレートと、
2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレートではなく、2000以上の重量平均分子量を有さず、かつエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光硬化性化合物と、
白色顔料と、
光重合開始剤とを含み、
前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である、光硬化性組成物。
【請求項2】
前記白色顔料の含有量が20重量%以上、70重量%以下である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記光硬化性化合物が、2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレートではなく、2000以上の重量平均分子量を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する光硬化性化合物である、請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が10重量%以上、30重量%以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
チオール基を少なくとも1つ有するチオール基含有化合物を含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
光硬化性組成物に含まれる2000以上の重量平均分子量を有する光硬化性成分の全体の含有量の前記光硬化性化合物の含有量に対する比が、1.25以下である、請求項1?5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
25℃及び1rpmでの粘度η1の25℃及び10rpmでの粘度η2に対する比が、1.1以上、2.2以下である、請求項1?6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
熱硬化剤の作用により熱硬化させて用いられない、請求項1?7のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
熱硬化性化合物を含まないか、又は、熱硬化性化合物を5重量%以下で含む、請求項1?8のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
他の光硬化性組成物とともに多層のレジスト膜を形成するために用いられない、請求項1?9のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
電子部品本体の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に、請求項1?10のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を塗布して、レジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層に光を照射して、レジスト膜を形成する工程とを備え、
前記レジスト膜を形成するために、前記レジスト層を現像しない、電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記レジスト膜を形成するために、熱硬化剤の作用により前記レジスト層を熱硬化させない、請求項11に記載の電子部品の製造方法。」

第3 特許異議の申立てについて
1 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。

「(進歩性)特許5889491号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は取り消すべきものである。

第1 手続の経緯
・・・(略)・・・
第2 本件特許発明
・・・(略)・・・
第3 取消理由(進歩性)
1 本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた文献
甲第1号証:韓国公開特許第10-2014-0076483号
甲第2号証:特開2014-43523号公報
甲第3号証:特開2014-65855号公報
甲第4号証:国際公開第2014/041940号
甲第5号証:特開2011-158628号公報
甲第6号証:特開2009-24168号公報
甲第7号証:特開2014-65850号公報
甲第8号証:特表2009-536425号公報
甲第9号証:特開2004-149755号公報
甲第10号証:国際公開第2012/126695号
甲第11号証:国際公開第2010/073981号
甲第12号証:特開2008-108512号公報
(甲第1ないし12号証は、平成28年9月20日付け(受理日:同年9月21日)で特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、単に「特許異議申立書」という。)に添付されたものであり、甲第1及び10号証については、該当箇所の翻訳文も添付されている。以下、順に「甲1」ないし「甲12」という。)
・・・(略)・・・
したがって、本件特許発明1ないし12は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」

2 取消理由についての判断
取消理由について判断する。

(1)甲1ないし12の記載事項及び甲1ないし3発明
ア 甲1の記載事項及び甲1発明
(ア)甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある。なお、原文の摘記は省略し、訳文として、特許異議申立人が提出した甲1の翻訳文を援用して摘記する。

・「請求項1
(A)光硬化性樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、
(D)リン酸エステル構造を有さない(メタ)アクリレートモノマー、および、
(E)ルチル型酸化チタン、
を含むことを特徴とする光硬化性組成物。
請求項2
インクジェット印刷用であることを特徴とする請求項1記載の光硬化性組成物。
請求項3
請求項1または2記載の光硬化性組成物を硬化してなることを特徴とするソルダーレジスト。
請求項4
請求項3記載のソルダーレジストを備えることを特徴とするプリント配線板。」

・「[0012]
本発明により、低粘度であり、密着性および反射性に優れた白色硬化物を得ることができる光硬化性組成物、およびそれを用いたソルダーレジスト、プリント配線板を提供することが可能となる。」

・「[0016]
光硬化性樹脂は、カルボキシル基を有するものであることもあり、持たない可能性があります。カルボキシル基を有する光硬化性樹脂を使用した場合には、光硬化性組成物をアルカリ現像型とすることがありますが、本発明の光硬化性組成物はアルカリ現像型に限定されない。
[0017]
上記オリゴマーの例として、例えば、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマーなどを挙げることができる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。」

・「[0032]
(A)光硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000から20000である。重量平均分子量が1000未満であれば、複数のエチレン性不飽和基を有する光硬化性樹脂によってもたらされる架橋密度が高くなり、樹脂の硬化収縮も大きくなり、硬化物の曲げが大きくなる恐れがある。一方、重量平均分子量が20000を超えると、組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が悪化するおそれがある。」

・「[0038]
本発明の光硬化性組成物は、(C)成分以外の(メタ)アクリレートモノマーを含んでいる。つまり、リン酸エステル構造を持たない(メタ)アクリレートモノマーである。(メタ)アクリレートモノマーは、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する光反応性単量体であり、反応性希釈剤として使用されるものである。(メタ)アクリレートモノマーとしては公知のものをすべて使用することができる。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシメチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリジノンなどの環状骨格を有する単官能光反応性の単量体類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;とメラミンアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、および/または上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などを挙げることができる。」

・「[0040]
(D)成分の配合量は、(C)成分1質量部に対して、2?50質量部が好ましく2?30質量部がより好ましい。この比率において、(C)成分の配合量は、(A)光硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1?20質量部、より好ましくは1?15質量部、さらにより好ましくは3?7質量部の割合で含まれる。また、(D)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して2?500質量部が好ましく、より好ましくは5?300質量部の割合で含まれている。」

・「[0042]
本発明の光硬化性組成物は、白色顔料として(E)ルチル型酸化チタンを含有する。酸化チタンにはルチル型、アナターゼ型が存在するが、高反射率の硬化物を得たり、樹脂の劣化への影響が少ないという点、組成物の粘度の上昇を抑制することができるという点からルチル型酸化チタンを使用している。酸化チタンは、塩素法、硫酸法などの製法によって限定されるものではない。また、アルミナ処理やシリカ処理などの表面処理が施されたものも、適切に使用することができる。」

・「[0044]
(E)ルチル型酸化チタンの配合量は、(A)光硬化性樹脂100質量部に対して、100?350質量部が好ましく、150?300質量部がより好ましい。(E)酸化チタンの配合量が350質量部を超えると粘度が過度に高くなり、印刷が困難となる。一方、配合量が100質量部未満の場合、高反射率の硬化物を得ることが困難になる場合がある。」

・「[0058]
塗布方法は、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の任意の方法を適用することができる。」

・「[0059]
本発明のソルダーレジストは、上記本発明の光硬化性組成物を基板上に塗布し、硬化してなることを特徴とするものである。」

・「[0061]
必要に応じて溶剤により希釈して塗布する方法に適した粘度に調整して、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の方法により塗布し、例えば、約60?100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、テクフリーの塗膜を形成できる。その後、レーザー光などの活性エネルギー線をパターンに直接照射したり、またはパターンを形成したフォトマスクを介して選択的に紫外線によって露光して硬化する。光硬化性組成物がアルカリ現像型の場合は、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる。また、必要であれば、紫外線の照射後、加熱硬化または最終硬化(本硬化)させることにより、硬化膜(硬化物)が形成される。」

・「[0062]
この中でも、光硬化性組成物を使用したインクジェット印刷法は、印刷後の乾燥により有機溶剤を除去する工程と、アルカリ水溶液によって現像する工程が不要で、パターンの形成工程を簡略化することができるので、好ましい。」

・「[0077]
表1

[0078]
表2



・「[0081] ※1:ダイセル・サイテック社製EBECRYL8402、2官能ウレタンアクリレート、光硬化性オリゴマー
[0082] ※2:東亞合成社製アロニックスM-6200、2官能ポリエステルアクリレート、光硬化性オリゴマー
[0083] ※3:2-エチルアントラキノン、光重合開始剤
[0084] ※4:BASF社製イルガキュア819、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、光重合開始剤
[0085] ※5:日本化薬社製カヤマーPM-2、ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、リン酸エステル構造を有するメタクリレートモノマー
[0086] ※6:共栄社化学社製ライトエステルP-1M、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、リン酸エステル構造を有するメタクリレートモノマー
[0087] ※7:共栄社化学社製HOA-MPL(N)、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、リン酸エステル構造を有さないアクリレートモノマー
[0088] ※8:日本化成社製4HBA、4-ヒドロキシブチルアクリレート、リン酸エステル構造を有さないアクリレートモノマー
[0089] ※9:共栄社化学社製ライトエステルHO-250(N)、2-ヒドロキシメチルメタクリレート、リン酸エステル構造を有さないメタクリレートモノマー
[0090] ※10:共栄社化学社製ライトエステル2EG、ジエチレングリコールジメタクリレート、リン酸エステル構造を有さないメタクリレートモノマー
[0091] ※11:石原産業社製タイペークCR-97-Super70、ルチル型酸化チタン
[0092] ※12:チタン工業社製KRONOS酸化チタンKA-15、アナターゼ型酸化チタン」

(イ)甲1発明
甲1の記載事項を整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「基板上に、インクジェット印刷法・スクリーン印刷法等によって、光硬化性組成物を塗布し、光を照射して硬化させて、ソルダーレジストのパターンを形成することができ、アルカリ水溶液によって現像する工程が不要な、光硬化性組成物であって、
カルボキシル基を有さず、重量平均分子量が1000?20000であるエポキシ(メタ)アクリレート等の光硬化性樹脂、
リン酸エステル構造を有さない(メタ)アクリレートモノマー、
ルチル型酸化チタン、及び
光重合開始剤とを含み、
光硬化性樹脂を20質量%?30質量%の範囲内で含有する、光硬化性組成物。」

イ 甲2の記載事項及び甲2発明
(ア)甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。

・「【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)アシルフォスフィン系光重合開始剤、(C)ベンゾイルオキシム系光重合開始剤、(D)酸化チタン、(E)反応性希釈剤を含むことを特徴とする白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項の白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、光硬化して得られる硬化被膜を有するプリント配線板。」

・「【0006】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、光硬化工程の後に、さらに、熱硬化工程を行なわなくとも、はんだ耐熱性、密着性、塗膜硬度等の基本特性を備えた硬化物を形成できる白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することにある。」

・「【0018】
(A1)多官能のエポキシ(メタ)アクリレートは、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物に対し、該エポキシ基の開環反応を利用して(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上導入して得られる化合物であり、ポリエステル、ポリエーテル又はアミンにより変性されていてもよい。上記化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート)、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート)、アミン変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートなどがあげられる。(A1)樹脂は、単独で使用してもよく、(A1)樹脂を2種以上混合して使用してもよい。」

・「【0033】
ルチル型酸化チタンの配合量は、特に限定されないが、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、硬化物の白色度と強度のバランスの点から30?200質量部が好ましく、特に好ましくは50?150質量部である。
【0034】
(E)反応性希釈剤
反応性希釈剤には、例えば、光重合性モノマーを挙げることができ、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂の光硬化を十分にして、はんだ耐熱性等の機械的諸特性を有する硬化物を得るために使用する。光重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシプロピル、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。反応性希釈剤としては、1分子中に二重結合を2個以上有する化合物が好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
上記反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、20?300質量部が好ましく、特に好ましくは50?100質量部である。」

・「【0043】
上記のようにして得られた本発明の白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷、スプレーコータ、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等、公知の塗工方法を用いて所望の厚さに塗布する。なお、塗布後、必要に応じて、白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために60?80℃程度の温度で15?60分間程度加熱する予備乾燥を行ってタックフリーの塗膜を形成してもよい。公知の塗工方法を用いて塗布した白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射して塗膜を光硬化させる。次に、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜を現像させることで、プリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。上記現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては、特に限定されず、例えば、0.5?5%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。なお、塗膜を現像する必要がない場合には、ネガフィルムを使用せずに白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を光硬化させてよい。
・・・(略)・・・
【0046】
実施例1?12、比較例1?11
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1?12、比較例1?11にて使用する白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りの無い限り質量部を示す。
【0047】
【表1】



(イ)甲2発明
甲2の記載事項を整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「プリント配線板上に、スクリーン印刷等の塗工方法によって、白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を現像する必要がない場合にはネガフィルムを使用せずに、活性エネルギー線を照射して塗膜を光硬化させ、ソルダーレジスト膜を形成する、白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物に対し、該エポキシ基の開環反応を利用して(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上導入して得られる化合物である多官能エポキシ(メタ)アクリレート、
反応性希釈剤、
酸化チタン、及び
光重合開始剤とを含む、白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」

ウ 甲3の記載事項及び甲3発明
(ア)甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。

・「【請求項1】
(A)シリル基を有さず、分子中に(メタ)アクリル基を1つ以上有する化合物、
(B)光重合開始剤、
(C)(A)成分100質量部に対して20?40質量部の、エチレン性不飽和結合を有するシランカップリング剤、および
(D)酸化チタンを含有し、
上記(A)成分が、分子中に2以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を50重量%以上含むことを特徴とする硬化性白色絶縁樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項4】
請求項1?3いずれかに記載の硬化性白色絶縁樹脂組成物による硬化膜を有する配線板。」

・「【0011】
(A)シリル基を有さず、分子中に(メタ)アクリル基を1つ以上有する化合物としては、分子中に2以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を50重量%以上含むものであれば特に制限はない。」

・「【0013】
分子中に(メタ)アクリル基を2つ以上有する化合物としては、特に制限はないが、(メタ)アクリル基を1分子あたり2?6個有する化合物が好ましく、2?4個有する化合物がより好ましい。
【0014】
このような化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートにおけるオキシアルキレン基としては、例えば、炭素数2?10(好ましくは2?4)のオキシアルキレン基があげられる。この様なものとしては、例えばエチレンオキサイド変性トリメチロールプリパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0015】
各(A)成分の粘度(25℃)としては、塗工時の作業性を考慮すると、好ましくは3?1000Pa・s、より好ましくは3?500Pa・s、さらに好ましくは3?300Pa・sの範囲である。言うまでもなく、25℃粘度が1000Pa・sを上回る(A)成分を併用することも可能である。1000Pa・sを上回る粘度を有する(A)成分を用いることにより、硬化皮膜の柔軟性・耐クラック性を向上させることができる。ただし、良好な作業性を考慮すると、1000Pa・sを上回る粘度を有する(A)成分の含有量は、(A)成分全体に対して、好ましくは0?30質量部、さらに好ましくは0?15質量部の範囲である。25℃粘度が1000Pa・sを上回る(A)成分としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等、通常公知の成分を用いることができる。
【0016】
組成物全体に占める(A)成分合計の含有量としては、特に制限はないが、良好な硬化性を実現するためには、好ましくは30質量%?90質量%、さらに好ましくは35質量%?80質量%の範囲である。」

・「【0021】
ルチル型酸化チタンの粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば、0.01?1μmである。また、ルチル型酸化チタン粒子の表面処理剤も特に限定されない。ルチル型酸化チタンには、例えば、富士チタン工業(株)製「TR-600」、「TR-700」、「TR-750」、「TR-840」、石原産業(株)製「R-550」、「R-580」、「R-630」、「R-820」、「CR-50」、「CR-60」、「CR-90」、「CR-93」、チタン工業(株)製「KR-270」、「KR-310」、「KR-380」、テイカ(株)製「JR-1000」、「JR-805」, 「JR-806」等を使用することができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。酸化チタンの配合量は、(A)成分100質量部に対して30?800質量部であり、白色度と解像性とのバランスの点から、好ましくは35?500質量部であり、白色度と解像性とのバランスをより向上させる点から、特に好ましくは40?300質量部である。」

・「【0027】
上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を光硬化させる場合には、例えば銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブル配線板上に、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布し、その上から紫外線を照射させることにより、フレキシブル配線板上に目的とする硬化膜を形成させることができる。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物による硬化膜は、基板、特にフレキシブル基板のソルダーレジストとして好適に使用できるほか、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)電極、銀(銀電極・銀配線)、及び有機導電膜の保護膜としても好適に使用することができる。」

・「【0035】
結果を表1?表3にまとめた。
【表1】
・・・(略)・・・
【表2】

【表3】
・・・(略)・・・」

(イ)甲3発明
甲3の記載事項を整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「フレキシブルプリント配線板上に、スクリーン印刷等の方法によって、感光性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して塗膜を硬化させて、ソルダーレジストである硬化膜を形成する、感光性樹脂組成物であって、
EBECRYL3708等の25℃粘度が1000Pa・sを上回る成分、
反応性希釈剤等の分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する化合物、
酸化チタン、及び
光重合開始剤とを含み、
組成物全体に対する25℃粘度が1000Pa・sを上回る成分の含有量が0?27質量%である、感光性樹脂組成物。」

エ 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。

・「[請求項17] インクジェット記録用である請求項15または16に記載の硬化性組成物。」

・「[0017]<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物は、少なくとも、下記一般式(1)で表される多官能重合性化合物(A1)と、A1とは異なる多官能重合性化合物(A2)を含有する。本発明の硬化性組成物は、重合開始剤(B)を含有することが特に好ましく、必要に応じて更に、単官能重合性化合物(C)および溶剤(E)を含有してなる。また、増感色素、色材、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色調調整剤等、目的に応じて他の添加剤を含有してもよい。」

・「[0060] 本発明の硬化性組成物中には、成分A2として、上記一般式(M1)?(M3)で表される化合物以外に、例えば、任意成分として、ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはポリマーを含有させることができる。ここで、「オリゴマー」とは、分子量が1,000を超え、10,000以下の化合物をいう。ポリマーとは分子量が10,000を超える化合物をいう。」

・「[0065] また、市販のラジカル重合性オリゴマーとしては、・・・(略)・・・
また、エポキシ(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。」

・「[0127]<<硬化性組成物の適用>>
本発明の硬化性組成物は、各種の材料に使用することができる。
・・・(略)・・・
より具体的には、・・・(略)・・・レジスト・・・(略)・・・」

オ 甲5の記載事項
甲5には、次の記載がある。

・「【請求項1】
1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、希釈剤(C)と、酸化チタン(D)と、エポキシ系熱硬化性化合物(E)とを含有する感光性樹脂組成物であって、
(A)成分として、二官能のエポキシ(メタ)アクリレート(A1)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項8】
前記2官能のエポキシ(メタ)アクリレートが、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート又は変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートである、請求項1、請求項3又は請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
ソルダーレジスト用である、請求項1?8何れかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のソルダーレジスト組成物の硬化膜を有する、電子部品搭載前又は搭載後のプリント配線板。」

・「【0013】
・・・(略)・・・二官能のエポキシ(メタ)アクリレートを用いることにより、基板作製時のクラック発生を防止することが可能になる。
【0014】
これらの二官能のエポキシ(メタ)アクリレートのうち、ビスフェノールA型エポキシアクリレートとして、リポキシSP-2600(昭和高分子製)、NKオリゴEA-1020、NKオリゴEA-6340(新中村化学製)、カラヤッドR-280、 カラヤッドR-190(日本化薬製)、Ebecryl600、Ebecryl3700(ダイセルサイテック)等が上市されている。また、変性ビスフェノールA型エポキシアクリレートについては、KRM7856、Ebecryl3604、Ebecryl3702、Ebecryl3703,Ebecryl3708(ダイセルサイテック)、LR9019(BASF)などが上市されている。これらの二官能のエポキシ(メタ)アクリレートは、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0015】
二官能のエポキシ(メタ)アクリレートの配合量としては、特に制限されるものではないが、クラック発生の防止効果を十分奏するために、(A)成分全体に対して、4?35質量%用いることが好ましい。さらに、良好なはんだ耐熱性を確保するためには、15?25質量%の範囲が好ましい。」

・「【0055】
【表1】



カ 甲6の記載事項
甲6には、次の記載がある。

・「【請求項1】
分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(B-1)及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート(B-2)及び一次粒径が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカ(C)を含有する成形に際して用いられるフィルム用の紫外線硬化型ハードコート樹脂組成物。
【請求項2】
光重合開始剤(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型ハードコート樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項4】
反応性希釈剤(F)を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型ハードコート樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項8】
エポキシ(メタ)アクリレート(B-2)がビスフェノールA型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物である請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の成形用紫外線硬化型ハードコート樹脂組成物。」

・「【0034】
本発明の樹脂組成物において、上記(B-1)及び/又は(B-2)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、通常1重量%以上79重量%以下であり、好ましくは5重量%以上60重量%以下である。反応性希釈剤(F)を用いない場合、1重量%以上75重量%以下であり、好ましくは5重量%以上70重量%以下である。反応性希釈剤(F)を用いる場合、(B-1)及び/又は(B-2)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分を100重量%とした場合、10重量%以上79重量%以下であり、好ましくは20重量%以上60重量%以下である。」

・「【0057】
【表1】

【0058】
【表2】



・「【0065】
表3



キ 甲7の記載事項
甲7には、次の記載がある。

・「【請求項1】
(A)分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリル基を有する化合物および(B)光重合開始剤を含有する硬化性組成物であって、
(A)成分が、分子中に2個以下の(メタ)アクリル基を有する化合物(A-1)および分子中に3個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物(A-2)を、(A-1)/(A-2)=6?13の質量比で含有することを特徴とする硬化性組成物。」

・「【0016】
・・・(略)・・・言うまでもなく、25℃粘度が1000Pa・sを上回る(A)成分を併用することも可能である。1000Pa・sを上回る粘度を有する(A)成分を用いることにより、硬化皮膜の柔軟性・耐クラック性を向上させることができる。ただし、良好な作業性を考慮すると、1000Pa・sを上回る粘度を有する(A)成分の含有量は、(A)成分全体に対して、好ましくは0?30質量部、さらに好ましくは3?15質量部の範囲である。25℃粘度が1000Pa・sを上回る(A)成分としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等、通常公知の成分を用いることができる。
【0017】
組成物全体に占める(A)成分合計の含有量としては、特に制限はないが、良好な硬化性を実現するためには、好ましくは30質量%?99質量%、さらに好ましくは50質量%?95質量%の範囲である。」

・「【0024】
また、本発明では、必要に応じて、さらに、種々の添加成分、例えば、消泡剤、分散剤、体質顔料、無機イオンキャッチャー等を適宜配合することができる。消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。・・・(略)・・・体質顔料は、硬化膜の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ等を挙げることができる。」

・「【0026】
本発明の感光性樹脂組成物による硬化膜は、基板、特にフレキシブル基板のソルダーレジストとして好適に使用できるほか、」

・「【0031】
【表3】



ク 甲8の記載事項
甲8には、次の記載がある。

・「【請求項1】
光学的に読み取り可能な面および印刷面を有する光ディスクであって、前記印刷面は、プレポリマー、少なくとも1つのモノマーおよび平滑剤を含む組成物を放射線硬化することによって形成される放射線硬化受容性コーティングを有し、前記組成物は印刷適正を妨げる表面改質剤を1つも含まず、前記硬化される組成物は水不溶性であり、水に吸収されない、光ディスク。
・・・(略)・・・
【請求項10】
さらに、光開始剤を含む、請求項1?9のいずれか1項に記載の組成物。
・・・(略)・・・
【請求項14】
放射線硬化性ジェットインクが、請求項1?10のいずれか1項に記載の光ディスクの印刷面上にジェット印刷され、次いで、放射線硬化される、プロセス。」

・「【0019】
・・・(略)・・・好ましいプレポリマーは、硬化する際に低レベルの収縮を示す。さらなる詳細および実施例は、G Websterによって編集された「Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings,Inks & Paints」,第II巻:Prepolymers & Reactive Diluentsに与えられ、その開示は本明細書中に参照として援用される。これらの中で、エポキシアクリレートが好ましく、ビスフェノールAエポキシアクリレートおよび改変されたビスフェノールAエポキシアクリレート(例えば、製造の間にアミノ基、ヒドロキシ基、ポリエステル基およびエトキシ基を組み込むことによって改変された)がより好ましい。特に好ましいのは、UCB社製のEbecryl 3701、Ebecryl 3700、Ebecryl 3500、Ebecryl 3708およびEbecryl 605、Cray Valley社製のCraynor CN104A80、Craynor CNUVE110/95およびActilane 320TP20という商標名で利用可能なこれらのエポキシアクリレートである。」

・「【0036】
・・・(略)・・・本発明の組成物の種々の成分は、最終的な硬化されたコーティングの所望の物理的および化学的特性に依存して、広範囲の量で存在し得る。しかしながら、概して、本発明者らは、放射線硬化性プレポリマーの1重量%?60重量%、より好ましくは20重量%?40重量%;放射線硬化性モノマーの5重量%?60重量%、より好ましくは20重量%?40重量%、光開始剤の0重量%?15重量%、より好ましくは0重量%?8重量%、平滑剤の0重量%?5重量%、好ましくは0重量%?3重量%、(使用する場合)顔料および/または充填剤および/または増量剤の1重量%?60重量%、好ましくは7重量%?50重量%、(使用する場合)構造化剤の0.1重量%?8重量%、好ましくは0.2重量%?5重量%を使用することを好む。」

ケ 甲9の記載事項
甲9には、次の記載がある。

・「【請求項1】
メルカプト基に対してα位および/またはβ位の炭素原子に置換基を有するメルカプト基含有基を有するチオール化合物及び光重合開始剤を含むことを特徴とする光重合開始剤組成物。
・・・(略)・・・
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の光重合開始剤組成物を含む感光性組成物。」

・「【0008】
本発明者らは、高感度で光硬化性に優れ、かつ保存安定性にもすぐれた感光性組成物を得るために、光重合開始剤組成物の選択が重要であること、特に該光重合開始剤組成物の一成分として用いるチオール化合物の選択が重要であることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、高感度で保存性に優れた光重合開始剤組成物、該光重合開始剤組成物を含む感光性組成物、および光重合開始剤組成物に好適な新規なチオール化合物を提供することを課題とする。」

・「【0066】
本発明の感光性組成物を用いた一定形状のパターン形成方法には、大別して2種類有る。一つはあらかじめ目的の形状に感光性組成物を塗布した後、光照射により硬化させる方法であり、もう一つは、基板上に一様に感光性組成物を塗布した後、露光部分が目的の形状となるように光照射して感光性組成物を硬化せしめた後、未露光部分を洗浄、剥離、物理研磨、化学研磨等の手段で除去し、残存した光硬化物によりパターンを形成する方法である。本発明の感光性組成物により形成されるパターンとは、基板上に一定形状を保つように形成された感光性組成物の光硬化物を意味し、具体的には光製版用レジスト、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、カラーフィルターレジスト、ホログラム、光造形、UVインク等の用途分野におけるパターンが挙げられる。本発明の感光性組成物は、特に精細なパターンを形成する現像型レジスト用として好適である。」

コ 甲10の記載事項
甲10には、次の記載がある。なお、原文の摘記は省略し、訳文として、特許異議申立人が提出した甲10の翻訳文を援用して摘記する。

・「2.A)少なくとも一つのエチレンやアセチレン性不飽和モノマーまたはそれらの混合物、B)少なくとも一つのチオール、C)少なくとも一つのラジカル光開始剤、D)少なくとも一つのホスホン酸、E)ベンゼン環またはナフタレン環に結合した少なくとも2個のヒドロキシル置換基を含む少なくとも1つのベンゼン環またはナフタレン環を備えるベンゼン又はナフタレン成分とを含む、請求項1に記載の硬化性組成物、好ましくは光硬化性組成物。」(第26ページ第9ないし18行)

・「本発明の目的は、特に、室温(25℃)と高温(65℃)における長期の保存安定性を備えた、光硬化性で、安定な、チオール組成物を提供することにある。
また本発明の目的は、高い反応性と感光性を備えた、光硬化性で、安定なチオールエン組成物を提供することにあり、三次元の硬化物には、低収縮、低脆性、及び高いノッチ衝撃強度が付与される。」(第2ページ第27ないし34行)

・「本発明に係る組成物において使用される好適なチオールの例は、・・・(略)・・・を含む。」(第12ページ第13ないし21行)

・「本発明によると、硬化性組成物は、好ましくは光硬化性であり、好ましくは少なくとも一つのラジカル光開始剤を含む。」(第12ページ第23及び24行)

サ 甲11の記載事項
甲11には、次の記載がある。

・「[請求項10] チクソトロピー指数が、1.1以上であることを特徴とする請求項2?9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。」

・「[0025] 本発明の硬化性組成物をフレキシブル配線板上にスクリーン印刷法で印刷を行うと、印刷物のにじみを抑制することができ、かつ本発明の硬化性組成物を硬化する際の、該組成物が印刷されたフレキシブル配線板の反りが小さい。しかもこの硬化性組成物を硬化することによって得られる硬化物は、可撓性及び長期電気絶縁特性に優れている。よって、本発明の硬化性組成物はソルダーレジストインキに代表される配線の絶縁保護用レジストインキとして有用であり、本発明の硬化物は、配線の絶縁保護用レジスト等の保護膜として有用である。」

・「[0145] なお、本明細書に記載の「チクソトロピー指数」とは、コーン/プレート型粘度計(Brookfield社製 型式;DV-III+Pro スピンドルの型番;CPE#52)を用いて測定した、25℃における回転数1rpmのときの粘度と25℃における回転数10rpmのときの粘度の比(1rpmのときの粘度/10rpmの時の粘度)であると定義する。
[0146] 本発明(II)の硬化性組成物を配線の絶縁保護用レジストインキ組成物として使用する場合、本発明(II)の硬化性組成物の印刷性を良好するために、該組成物のチクソトロピー指数が、1.1以上であることが好ましく、さらに好ましくは1.1?3.0の範囲であり、特に好ましくは、1.1?2.5の範囲である。」

シ 甲12の記載事項
甲12には、次の記載がある。

・「【請求項1】
第1電極、有機発光層及び第2電極が積層された有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1電極を形成した基板上に、未硬化の硬化型材料との濡れ性の低い薄膜を形成す
る薄膜形成工程と、
前記薄膜上の前記第2電極を形成すべき箇所を除いた領域に、前記薄膜との接触角が90度より大きな状態で接着する未硬化の硬化型材料を複数の線状に印刷する硬化型材料印刷工程と、
前記印刷された未硬化の硬化型材料を硬化させる硬化工程と、
前記薄膜の前記硬化型材料で覆われていない部分を除去する薄膜除去工程と
からなる第2電極分離構造製造工程を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記薄膜はフッ素コートされて形成されたものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記硬化型材料はソルダーレジストである請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項5】
前記硬化型材料は、未硬化の状態においてチクソトロピー・インデックスが1以上2以下である請求項3又は請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。」

・「【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記硬化型材料は、未硬化の状態においてチクソトロピー・インデックスが1以上2以下である。この発明では、未硬化の硬化型材料と薄膜との接触角が90度より大きな状態で接着し易くなる。」

・「【0029】
硬化型材料22は、未硬化の状態において、粘度が100dPa・s以上200dPa・s以下で、チクソトロピー・インデックスが1以上2以下のものが使用される。未硬化の状態において、粘度が高すぎても、低すぎても高寸法精度で隔壁14を形成し難くなる。チクソトロピー・インデックスが高すぎると気泡が発生してしまい、逆に低すぎるとレジスト形状が崩れやすくなる。この実施形態では、粘度が170dPa・sで、チクソトロピー・インデックスが1.1の紫外線硬化型材料を使用した。」

(2)対比・判断
ア 甲1を主引用文献とした進歩性違反について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「基板上に、インクジェット印刷法・スクリーン印刷法等によって、光硬化性組成物を塗布し、光を照射して硬化させて、ソルダーレジストのパターンを形成することができ、アルカリ水溶液によって現像する工程が不要な、光硬化性組成物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「塗布対象部材の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に塗布して用いられ、
光の照射により硬化されて用いられ、かつ現像を行わずにレジスト膜を形成するために用いられ、
非現像型レジスト光硬化性組成物」に相当し、以下、同様に、「リン酸エステル構造を有さない(メタ)アクリレートモノマー」は「2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレートではなく、2000以上の重量平均分子量を有さず、かつエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光硬化性化合物」に、「ルチル型酸化チタン」は「白色顔料」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレート」を含み、かつ「前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である」のに対し、甲1発明においては、「カルボキシル基を有さず、重量平均分子量が1000?20000であるエポキシ(メタ)アクリレート等の光硬化性樹脂」を含有する点。

(イ)判断
相違点1について検討する。
甲1には、重量平均分子量が2000未満の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合と2000以上の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合とにおける効果の差異や、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量を5重量%以上、30重量%以下とすることによる効果の差異は記載も示唆もされていない。
さらに、甲4ないし12にも、重量平均分子量が2000未満の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合と2000以上の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合とにおける効果の差異や、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量を5重量%以上、30重量%以下とすることによる効果の差異は記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1は、「カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレート」を含み、かつ「前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である」という発明特定事項を有することにより、本件特許明細書の【0137】の【表1】、【0138】の【表2】及び【0139】の【表3】並びに平成29年2月2日付け意見書に添付された乙第2号証(以下、「乙2」という。)の【表1】に示されるように、「エポキシ(メタ)アクリレート」として2000未満の重量平均分子量を有するものを使用した場合及び「エポキシ(メタ)アクリレートの含有量」が「5重量%以上、30重量%以下」の範囲外である場合と比べて、格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、甲1発明において、甲2ないし12の記載事項を考慮しても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、本件特許発明1は、甲1発明及び甲4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本件特許発明2ないし12は、請求項1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 甲2を主引用文献とした進歩性違反について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明における「プリント配線板上に、スクリーン印刷等の塗工方法によって、白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を現像する必要がない場合にはネガフィルムを使用せずに、活性エネルギー線を照射して塗膜を光硬化させ、ソルダーレジスト膜を形成する、白色活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「塗布対象部材の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に塗布して用いられ、
光の照射により硬化されて用いられ、かつ現像を行わずにレジスト膜を形成するために用いられ、
非現像型レジスト光硬化性組成物」に相当し、以下、同様に、「反応性希釈剤」は「2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレートではなく、2000以上の重量平均分子量を有さず、かつエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光硬化性化合物」に、「酸化チタン」は「白色顔料」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレート」を含み、かつ「前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である」のに対し、甲2発明においては、「1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物に対し、該エポキシ基の開環反応を利用して(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上導入して得られる化合物である多官能エポキシ(メタ)アクリレート」を含む点。

(イ)判断
相違点2について検討する。
甲2には、甲2発明における「1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物に対し、該エポキシ基の開環反応を利用して(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上導入して得られる化合物である多官能エポキシ(メタ)アクリレート」の重量平均分子量については何ら記載されていない。
また、甲2には、重量平均分子量が2000未満の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合と2000以上の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合とにおける効果の差異は記載も示唆もされていない。
さらに、甲2には、実施例としては、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量は5重量%以上、30重量%以下のものは記載されておらず(甲2の段落【0047】の【表1】によると、34.5%(=40/(40+5+1+40+25+5)×100)のものしか記載されていない。)、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量を5重量%以上、30重量%以下とすることによる効果の差異も記載も示唆もされていない。
さらにまた、甲4ないし12号証にも、重量平均分子量が2000未満の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合と2000以上の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合とにおける効果の差異や、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量を5重量%以上、30重量%以下とすることによる効果の差異は記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1は、「カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレート」を含み、かつ「前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である」という発明特定事項を有することにより、本件特許明細書の【0137】の【表1】、【0138】の【表2】及び【0139】の【表3】並びに乙2の【表1】に示されるように、「エポキシ(メタ)アクリレート」として2000未満の重量平均分子量を有するものを使用した場合及び「エポキシ(メタ)アクリレートの含有量」が「5重量%以上、30重量%以下」の範囲外である場合と比べて、格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、甲2発明において、甲4ないし12の記載事項を考慮しても、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本件特許発明2ないし12は、請求項1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明及び甲4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 甲3を主引用文献とした進歩性違反について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明における「フレキシブルプリント配線板上に、スクリーン印刷等の方法によって、感光性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して塗膜を硬化させて、ソルダーレジストである硬化膜を形成する、感光性樹脂組成物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「塗布対象部材の表面上に、部分的にかつ複数の箇所に塗布して用いられ、
光の照射により硬化されて用いられ、かつ現像を行わずにレジスト膜を形成するために用いられ、
非現像型レジスト光硬化性組成物」に相当し、以下、同様に、「反応性希釈剤等の分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する化合物」は「2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレートではなく、2000以上の重量平均分子量を有さず、かつエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する光硬化性化合物」に、「酸化チタン」は「白色顔料」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点3>
本件特許発明1においては、「カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレート」を含み、かつ「前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である」のに対し、甲3発明においては、「EBECRYL3708等の25℃粘度が1000Pa・sを上回る成分」を含み、かつ「組成物全体に対する25℃粘度が1000Pa・sを上回る成分の含有量が0?27質量%である」である点。

(イ)判断
相違点3について検討する。
甲3発明における「EBECRYL3708等の25℃粘度が1000Pa・sを上回る成分」は、その含有量は0質量%であってもよいものであり、任意成分にすぎず、しかもその効果は、硬化被膜の柔軟性・耐クラック性の向上であり、本件特許発明1の効果と異なる。
また、甲3には、重量平均分子量が2000未満の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合と2000以上の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合とにおける効果の差異は記載も示唆もされていない。
さらに、甲3において、「EBECRYL3708」が唯一用いられた実施例17の光硬化性組成物では、「EBECRYL3708」が、本件特許発明1の下限5重量%に満たない4.5重量%(5/(50+8+15+30+53)×100)の量で用いられているにすぎず、甲3には、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量を5重量%以上、30重量%以下とすることによる効果の差異は記載も示唆もされていない。
さらにまた、甲4ないし12にも、重量平均分子量が2000未満の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合と2000以上の「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いた場合とにおける効果の差異や、「エポキシ(メタ)アクリレート」の含有量を5重量%以上、30重量%以下とすることによる効果の差異は記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1は、「カルボキシル基を有さず、かつ2000以上の重量平均分子量を有するエポキシ(メタ)アクリレート」を含み、かつ「前記エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が5重量%以上、30重量%以下である」という発明特定事項を有することにより、本件特許明細書の【0137】の【表1】、【0138】の【表2】及び【0139】の【表3】並びに乙2の【表1】に示されるように、「エポキシ(メタ)アクリレート」として2000未満の重量平均分子量を有するものを使用した場合及び「エポキシ(メタ)アクリレートの含有量」が「5重量%以上、30重量%以下」の範囲外である場合と比べて、格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、甲3発明において、甲4ないし12の記載事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、本件特許発明1は、甲3発明及び甲4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本件特許発明2ないし12は、請求項1を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明及び甲4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない

(3)むすび
以上のとおりであるから、請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではない。

第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-04-07 
出願番号 特願2015-533778(P2015-533778)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤澤 高之  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 加藤 友也
原田 隆興
登録日 2016-02-26 
登録番号 特許第5889491号(P5889491)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 光硬化性組成物及び電子部品の製造方法  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

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