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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F17C
管理番号 1327020
異議申立番号 異議2017-700084  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-01 
確定日 2017-04-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第5959778号発明「液化天然ガスの受入設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5959778号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5959778号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成26年2月28日を国際出願日として出願した特願2016-504862号の一部を平成28年3月1日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 久世 良樹により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5959778号の請求項1、2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として以下の書証(以下、各々「刊行物1」等という。)
甲第1号証(刊行物1):総合資源エネルギー調査会総合部会供給構造高度化小委員会(平成22年度第1回)配付資料3-3「エネルギー供給構造高度化に向けた都市ガス業界の取組み」、池島賢治、(社)日本ガス協会、2010年8月12日
甲第2号証(刊行物2):Sixteenth International Conference & Exhibition on Liquefied Natural Gas, Paper Session 3, PS3-7「TECHNICAL ISSUES RELATED TO SEND OUT GAS CALORIFIC VALUE CONTROL AT LNG RECEIVING TERMINALS IN JAPAN」, Yoshifumi Numata et al, 2010年4月19日、及びその抄訳
甲第3号証(刊行物3):「天然ガスプロジェクトの軌跡 未来をめざす東京ガス」、平成2年8月第2刷第430ページ、東京ガス株式会社発行
甲第4号証(刊行物4):Sixteenth International Conference & Exhibition on Liquefied Natural Gas,2010.4.18-21、プログラムアジェンダの写し
甲第5号証(刊行物5):特開2012-241604号公報
甲第6号証(刊行物6):特開2007-247474号公報
甲第7号証(刊行物7):特開2008-175151号公報
甲第8号証(刊行物8):特開2000-73862号公報
甲第9号証(刊行物9):特開2013-95257号公報
甲第10号証(電気通信回線情報1):経済産業省のホームページ(http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100812aj.html)の写し
甲第11号証(電気通信回線情報2):日本貿易振興機構のホームページ(http://www.jetro.go.jp/j-messe/tradefair/LNG16_22773)の写し
を提出し、請求項1、2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.刊行物等の記載
(1)刊行物1には、第12ページに都市ガス事業者の取り組みについてのブロック図が記載され、ローディングアームからLNGタンクに至る経路と、LNGタンクからBOG圧縮機が2段組まれた後、図中(8)に至る経路と、1段目のBOG圧縮機と2段目のBOG圧縮機との間から再液化装置によりBOGを液化してLNGタンクに戻す経路と、LNGタンクからLNGポンプ、LNG気化器に至る経路と、LNG気化器からでる天然ガスと2段目のBOG圧縮機からでる昇圧されたBOGとを混合(10)して発電所(9)へ至る経路及びLNG気化器からでる天然ガスがLPGとの混合で熱量が調整され都市ガス供給路へ至る経路と、が組まれた都市ガス事業者による有効利用された製造プロセスの取り組み形態が記載されている。
(2)刊行物2には、特にFigure-5としてACCを使用するPower Plant 21(発電所)への燃料供給に関して、BOGをBOG compressorにて加圧したガスと、LNGをLNG vaporizerにて気化したガスとを一緒にした上で、Gas mixing vessel(ガス混合容器)に導くとした記載があり、BOGコンプレッサが何らかの理由でトリップした場合であっても、ACC(advanced combined cycle:複合サイクル)が許容する発熱量変化の範囲内に混合燃料ガスの維持を図るとしたことが記載されている。
(3)刊行物3には、コージェネレーション・システムとして図の上段に示されたLNGタンクから気化装置、ガスホルダーを介してガスエンジン・ガスタービン及び発電機への経路により電気エネルギーと熱エネルギーを生むシステムが記載されている。
(4)刊行物5には、複合発電システムに関して、LNG基地6で発生したBOGを燃料とするガスエンジン2により第1発電機4を駆動して発電を行う部分と、ガスエンジン2の排ガスを用いて冷媒タービン3を動かし、冷媒タービン3が第2発電機5を駆動して発電を行う部分とを備えた複合発電システムが記載されている。
(5)刊行物6には、ホテル、病院、工場等の小規模施設においてコージェネレーションシステムを実現すること(【0003】)や、図1に図示されたとおり、当該コージェネレーションシステムが、LNG供給設備1と、排熱利用システム20とから構成された形態が記載され、発電機22はLNGを気化することにより得られたガスとBOG加温機6からのガスとを混合したものを燃料として駆動されるガスエンジン21により駆動されることが記載されている。
(6)刊行物7には、LNG3又はNGHを気化する気化器4からの燃料ガスを燃料として駆動するガスエンジン5及び当該ガスエンジン5により駆動され発電する発電機1により発電を行うシステムが記載されている。
(7)刊行物8には、液化天然ガス(LNG)を燃料とするガスエンジン1を駆動し(【0022】)、ガスエンジン1が発電機2を駆動することにより発電を行う発電システム(【0025】)が記載されている。
(8)刊行物9には、船舶用給電装置であって、燃料ユニットから取り出された25M?30MPaの圧縮された(【0044】)天然ガスであってBOGの発生がない(【0041】)が、発電ユニット13のエンジン11の運転に使用され、エンジン11の出力軸に連結された発電機12により発電が行われること(【0045】)が記載されている。

なお、甲第4号証、第10号証、及び第11号証については、甲第4号証は上記刊行物2が公表された日を立証するために提出されたものであり、甲第10号証及び甲第11号証は、各々、上記刊行物1の閲覧先を示す目的、及び、上記刊行物2の発表の契機とされた第16回液化天然ガス国際会議が開催された事実を確認する目的で提出されたものであって、本件特許の技術的事項と関係する事項を示す公知文献ではないため、記載を省略する。

5.判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、当該刊行物1には、(A)「発電機を駆動するガスエンジン」を液化天然ガスの受入設備が備えるとした点、(B)「前記ボイルオフガスラインから分岐して設けられ、前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを前記ガスエンジンに燃料として供給するための燃料ガスライン」を備えるとした点、(C)「前記受入ラインを介した液化天然ガスの受け入れに起因した、当該燃料ガスラインに供給されるボイルオフガスの供給量の変化を吸収すると共に、前記ガスエンジンに供給されるボイルオフガスの性状の変化を緩和するための、ガス混合部を備えるガスホルダー」を液化天然ガスの受入設備が備えるとした点が記載されていない。
これらの(A)ないし(C)の相違点は、(A)で特定されている液化天然ガスの受入設備内にガスエンジンを備えたことが、刊行物2-3及び5-9のいずれにも記載されていないし、(B)については刊行物5でボイルオフガスを燃料としたガスエンジン2が記載されてはいるものの、当該ガスエンジン2への供給ラインについて当該(B)に関し本件請求項1に係る発明で特定する「前記ボイルオフガスラインから分岐して設けられ、前記貯蔵タンク内で発生したボイルオフガスを前記ガスエンジンに燃料として供給するための燃料ガスライン」は、刊行物2-3及び5-9のいずれにも記載されていないし、(C)については請求項1に係る発明で特定された「前記受入ラインを介した液化天然ガスの受け入れに起因した、当該燃料ガスラインに供給されるボイルオフガスの供給量の変化」、及び「前記ガスエンジンに供給されるボイルオフガスの性状の変化」に対応するとしたことが、刊行物2-3及び5-9のいずれにも記載されていない。刊行物2は外部の発電所を想定し、かつ、燃料ガスが加圧BOGと気化LNGの混合ガスであり、BOGの圧縮機のトリップ対策としてガス混合容器を設置したのであって、液化天然ガスの受け入れに起因する技術ではない。
したがって、請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び刊行物2-3及び5-9に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の一部構成である「ボイルオフガスライン」を変更したものであるが、刊行物1に記載の発明と対比した場合、上記相違点は(A)ないし(C)と変わるものではないので、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記刊行物1に記載された発明及び刊行物2-3及び5-9に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

以上のとおり、請求項1、2に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2-3及び5-9に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-04-12 
出願番号 特願2016-39092(P2016-39092)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (F17C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谿花 正由輝  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 長清 吉範
西村 泰英
登録日 2016-07-01 
登録番号 特許第5959778号(P5959778)
権利者 日揮株式会社
発明の名称 液化天然ガスの受入設備  
代理人 井上 俊夫  
代理人 瀧澤 宣明  

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