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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) B65H
管理番号 1327028
判定請求番号 判定2016-600047  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 判定 
判定請求日 2016-09-16 
確定日 2017-03-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第4841871号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号取扱説明書、イ号写真及びイ号動画に示す丁合機は、特許第4841871号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨

請求人の請求の趣旨は、判定請求書に添付したイ号取扱説明書、イ号写真及びイ号動画に示す丁合機(以下、「イ号物件」という。)は、特許第4841871号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 手続の経緯及び本件特許発明

1 手続の経緯

平成17年 6月21日 特許出願(特願2005-181306号)
平成23年10月 5日 特許登録
平成28年 9月16日 本件判定請求書の提出
同 年11月 7日 判定請求答弁書の提出(被請求人)
同 年12月 6日 弁駁書の提出(請求人)

2 本件特許発明

請求人が上記判定を求める特許第4841871号に係る特許発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、その構成を構成要件毎に符号を付して分説すると、次のとおりである(以下、分説した各構成要件を「構成要件A」ないし「構成要件M」という。)。

「A 積載した用紙束から用紙を1枚ずつ取り出す給紙部を上下方向に複数並べて設け、
B この複数の給紙部から、各給紙部の高さ位置に応じた時間だけ給紙動作のタイミングをずらして1枚ずつ取り出した用紙を搬送しながら互いに重ね合わせることにより、
C 各給紙部より取り出した用紙を1枚ずつ含む1セット分の丁合束とする丁合装置において、
D この丁合装置によって丁合される全部数を設定する全カウント数設定手段を設け、
E 丁合装置が動作開始すると、1セット分の丁合を行うごとに全カウント数を1ずつ減算し、
F 全カウント数がゼロになったときには丁合装置を停止させるとともに、
G 複数の給紙部のうち、少なくとも一つの給紙部において、この給紙部固有の固有カウント数を設定する固有カウント数設定手段を設け、
H 丁合装置が動作開始すると、固有カウント数が設定された給紙部においては、1セット分の丁合を行うごとに該給紙部から用紙を取り出して固有カウント数を1ずつ減算するとともに、
I 該固有カウント数が設定された給紙部から取り出された用紙を含む丁合束を作成し、
J 固有カウント数がゼロになったときには、該給紙部を停止状態として、それ以降の給紙は行わず、
K 固有カウント数が設定されていない給紙部では、いずれかの給紙部で用紙無しが検知されるか、あるいは全カウント数がゼロになって丁合装置が停止するまで給紙を継続することにより、
L 固有カウント数がゼロになって停止状態となっている給紙部に積載されている用紙を含まない丁合束を作成するように制御する制御手段を有することを特徴とする
M 丁合装置。」

3 本件特許発明の目的及び効果

明細書の記載によれば、本件特許発明は、「丁合装置において設定した合計部数に満たない部数の用紙が含まれていても、丁合途中でのスイッチ操作や部数の再入力、計数による予備取り除きが不要で操作性の良い丁合装置を提供すること」(段落【0014】)を目的とし、「固有カウント数が設定されている給紙部では、設定されている固有カウント数分の給紙が終了すると停止状態とされるので、以後の給紙動作は行われなくなる。これに対し、固有カウント数が設定されていない給紙部では給紙が継続され、いずれかの給紙部において用紙無しが検知されるか、もしくは全カウント数C回分の給紙動作が完了すると丁合装置は停止する。」(段落【0040】)という効果を奏するものである。

第3 請求人の主張

1 請求人が提出した証拠方法

請求人からは、以下の書証が提出されている。

(1) 甲第1号証 本件特許公報(特許第4841871号)
(2) 甲第2号証 特開2001-97609号公報
(3) 甲第3号証 ”HITACHI:News Release:3/30”、[online]、平成12年3月30日、株式会社日立製作所、[2016年12月1日検索]、インターネット
(4) 甲第4号証 「H8S/2600シリーズ、H8S/2000シリーズ プログラミングマニュアル」(第4版)、2000年6月、株式会社日立製作所半導体グループカスタマサービス本部
(5) 甲第5号証 「岩波講座 マイクロエレクトロニクス 6 マイクロコンピュータのプログラミング」、1984年10月3日、岩波書店

2 請求人の主張するイ号物件

請求人は、平成28年9月16日付け判定請求書に、イ号取扱説明書、イ号写真及びイ号動画を添付しているが、イ号説明書は添付されていない。しかしながら、判定請求書において、イ号物件の構成について以下の記載がある(第5ページ第10行?第6ページ第14行)。

「a 積載したチラシの束からチラシを1枚ずつ取り出す棚を上下方向に複数並べて設け、
b この複数の棚から、各棚の高さ位置に応じた時間だけ給紙動作のタイミングをずらして1枚ずつ取り出したチラシを搬送しながら互いに重ね合わせることにより、
c 各棚より取り出したチラシを1枚ずつ含む1セット分のセット紙とする新聞広告自動丁合機において、
d この丁合機によって丁合されるセット数を設定数として入力する手段を設け、
e 丁合機が動作開始すると、1セット分の丁合を行うごとに設定数から1ずつ減算し、
f 設定数(残数)がゼロになったときには丁合機を停止させるとともに、
g 複数の棚のうち、少なくとも一つの棚において、OFF指定とともに、この棚に対する設定数(以下「OFF指定の設定数」という。)を設定する手段を設け、
h 丁合機が動作開始すると、前記OFF指定の設定数が設定された棚においては、1セット分の丁合を行うごとにその棚からチラシを取り出して前記OFF指定の設定数を1ずつ減算するとともに、
i OFF指定の設定数が設定された棚から取り出されたチラシを含むセット紙を作成し、
j OFF指定の設定数がゼロになったときには、該棚をOFFとして、それ以降の給紙は行わず、
k OFF指定の設定数が設定されていない棚では、いずれかの棚で紙なしが検知されるか、あるいは丁合機によって丁合されるセット数として設定された設定数がゼロになって丁合機が停止するまで給紙を継続することにより、
l OFF指定の設定数がゼロになって停止状態となっている棚に積載されているチラシを含まないセット紙を作成するように制御する制御手段を有することを特徴とする
m 丁合機。」

3 請求人の主張の概要

請求人は、判定請求書及び弁駁書において、概ね次の理由により、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属する旨を主張している。

(1)イ号物件は上記2の構成aないしmを備えるものであって、構成aないしmは、本件特許発明の構成要件AないしMにそれぞれ一致する(判定請求書第8ページ第22行?第53ページ第23行)。
(2)イ号物件の「残数」及び「端数設定残数」の表示が「1ずつ減算」されていることは、「1ずつ減算」するという制御が行われていることを強く推認させるものである(弁駁書第2ページ第13行?第3ページ第23行)。
(3)「1ずつ加算し、設定値がゼロになったら停止する」という制御と、「ゼロから1ずつ加算して設定値になったら停止する」という制御は、表現は異なるものの、制御内容としては全く同じである(弁駁書第4ページ第25行?第7ページ第7行)。

第4 被請求人の主張

1 被請求人が提出した証拠方法

被請求人は、判定請求答弁書とともに、以下の書証を提出している。

(1) 乙第1号証 本件特許出願の平成22年10月22日付け手続補正書
(2) 乙第2号証 本件特許出願の平成22年10月22日付け意見書
(3) 乙第3号証 本件特許出願の平成23年7月20日付け手続補正書
(4) 乙第4号証 本件特許出願の平成23年7月20日付け審判請求書
(5) 乙第5号証の1 イ号丁合機写真
(6) 乙第5号証の2 イ号丁合機動画

2 被請求人の主張の概要

被請求人は、判定請求答弁書において、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属さない理由を概ね次のように主張している。

(1)本件特許発明の「制御」と、「制御」に基づく所定の動作の結果を示すにすぎない「表示」とは全く異なるものである。結果として表示された数値が変化する様子のみをもって、イ号物件の制御手段が、全カウント数及び固有カウント数を1ずつ減算する処理を行って丁合しているとみなしている請求人の主張は、イ号物件の制御手段が当該処理を行って丁合していることの主張・立証を欠く(第3ページ第14行?第7ページ第32行)。
(2)構成要件EないしHに関して、イ号物件の「制御」が「加算」であるか「減算」であるかの論拠が示されていない。また、平成22年10月22日付け手続補正によって、本件特許発明が「減算」に係る「制御」を行うことが限定されているので、「加算」に係る「制御」の構成を、本件発明の技術的範囲に含めることはできない(第7ページ第33行?第17ページ第19行)。
(3)構成要件J及びLに関して、イ号物件の所定の丁合動作が完了したときの「端数設定残数」欄の表示は、「----」であり、0又はゼロとは表示されていない(第17ページ第20行?第19ページ第11行)。

第5 当審の判断

1 請求人提出書類等について

(1)イ号取扱説明書について

ア.表紙には「新聞広告自動丁合機」と記載されている。

イ.第5及び6ページの図からは、「ミス給紙スイッチ」が上下方向に複数並べて設けられていることが看取できる。

ウ.第7ページの「名称と機能一覧」の表には、「液晶モニター」について「折込みの総数、実行数、設定数、区域数を表示します。」及び「折込み枚数の設定、区域の設定、区域の作業時や紙揃え調整に使用します。」と記載されている。

エ.第7ページの「名称と機能一覧」の表には、「ミス給紙スイッチ」について「押すとランプが点灯して、その棚のチラシを給紙する状態になります。」と記載されている。

オ.第7ページの「名称と機能一覧」の表には、「ホッパー」について「セットされたチラシを積載する受台です。」と記載されている。

カ.第8ページには、「4.各段のテーブルにそれぞれの広告をセットします。\・1段当たり600?1000枚程度セットが可能です。」(「\」は原文における改行箇所を示す。以下、同様。)及び「3)広告のセット方法\・広告をセットする場合、I図の様にゴムローラーbが広告によって上に上がらない積み方を基本として下さい。」と記載されている。

キ.第10ページには、「9.テスト給紙したい段のミス(又は給紙)スイッチ(I又はJ)を押して下さい。\・広告が送り込まれる状態を観察します。\1)多重送りの発生する恐れがある広告に対しては、「紙サバキダイヤル」(L)を数字の大きい方へ回して下さい。」と記載されている。

ク.第11ページには、「広告の入れてある棚のミススイッチ(I)を全段入れることができます。」と記載されている。

ケ.第13ページの「(2)各段スイッチ部名称説明」の項には、「(I)ミス給紙スイッチ(橙色) 各段の給紙動作のON、OFFができます。スイッチのランプ点灯時(ON)は動作を行い、消灯時(OFF)は動作を停止します。」と記載されている。

コ.第19ページの「(2)折込み枚数をその都度設定する場合」の項には、「<3>設定数(セット数)の入力(2)\○2『数字』キーで丁合したいセット数を入れて下さい。」(「○2」は2を○で囲んだ丸数字を示す。以下、同様。)と記載されている。

サ.第20ページには、「<4>折込み開始\↓\スタートスイッチ(E)を押して下さい。」と記載され、その右側の図からは液晶モニターに「総数」が「0」、「実行数」が「0」、「設定数」が「100」、「残数」が「100」と表示された点を看取することができるとともに、「<5>折込み終了\↓\設定されたセット数が終了すると\○折込が完了しました。実行数をクリアしますか?\と表示し、丁合作業を停止します。」と記載され、その右側の図からは液晶モニターに「総数」が「100」、「実行数」が「100」、「設定数」が「100」、「残数」が「0」と表示された点を看取することができる。

シ.第55ページ?第85ページは「丁合指定表示機能説明書」であって、第56ページの「1 丁合指定表示機能・・・・ってなに?」の「<2>通常カウンター用の設定」の項には、「枚数で管理する場合に使用する設定で通常カウンターで作業を行う場合に使用します。\カウンター値がある設定数に到達したときに各棚SWのON/OFFを登録できる機能で設定は10個まで登録することができます。」と記載されている。

ス.第61ページの「3 通常カウンター用設定の操作手順」の項目として、同ページには「<2>[特殊モードメニュー画面]から\端数の設定、確認(総数)\を押してください。」、「<3>設定する棚の設定(ON/OFFの指定)」、第62ページには「<4>設定数(セット数)の入力」と記載されている。

セ.第65ページには、「<4>折込み途中の警告\設定のセット数に到達すると設定数の警告画面を表示して各段のスイッチ切換えを警告します。」、「○5棚スイッチの入換えは\セットを押すと一斉に切換えます。\※「セット」⇒「完了」に変化」及び「○6入換えを確認してから\確認を押してください。\↓\通常カウンター画面を表示します。」と記載されている。

ソ.第65ページには、「○7スタートスイッチ(E)を押して丁合を再開してください。」と記載されている。

タ.第61ページの「<3>設定する棚の設定(ON/OFFの指定)」の「○1設定したい棚を押して下さい。」の記載の下の「設定なし」、「ON指定」、「OFF指定」の図を踏まえると、第64ページの右側の3枚の図及び第65ページの右側の3枚の図においては、棚02、04、19、21が「OFF指定」されている。
そして、このうち上から1枚目の図では「セット」が表示されるとともに、棚02、04、19、21にそれぞれ隣接して1又は2の数字が表示され、上から2枚目の図では「完了」が表示されるとともに、棚02、04、19、21にそれぞれ隣接して数字が表示されていないから、「各段のスイッチの切換え警告」の枠内の図を踏まえると、「セット」が「完了」に変化すると、「OFF指定」された棚のスイッチがOFFになることが看取できる。
また、第64ページの「<3>折込み開始時」の記載の右側の液晶モニターの図においては、「実行数」が「0」、「端数総数」が「12」と表示され、第65ページの「○7スタートスイッチ(E)を押して丁合を再開してください。」の記載の右側の液晶モニターの図においては、「実行数」が「12」、「端数設定残数」が「----」と表示された点が看取できる。

(2)イ号写真及びイ号動画について

チ.イ号写真1a及び1b並びにイ号動画1からは、各棚からチラシが1枚ずつ給紙され、複数の棚から給紙されたチラシが、先端が揃うように重ね合わされる点が看取できる。

ツ.イ号写真3aないし3j及びイ号動画3からは、液晶モニターにおいて「設定数」の表示が「100」である場合に、「実行数」の表示が「0」、「27」、「28」、「29」、「30」、「68」、「69」、「70」、「71」、「100」に順次変化するのに対応して、「残数」の表示がそれぞれ「100」、「73」、「72」、「71」、「70」、「32」、「31」、「30」、「29」、「0」に順次変化することが看取できる。

テ.イ号写真4bないし4g及びイ号動画3からは、液晶モニターにおいて、「設定数」の表示が「100」、「端数総数」の表示が「50」である場合に、「実行数」の表示が「27」、「28」、「29」、「30」、「48」、「49」に順次変化するのに対応して、「端数設定残数」の表示がそれぞれ「23」、「22」、「21」、「20」、「2」、「1」に順次変化することが、また、イ号写真4hないし4m及びイ号動画3からは、「設定数」及び「端数総数」の表示が同様の場合に、「実行数」の表示が「50」、「68」、「69」、「70」、「71」、「100」に順次変化する一方、「端数設定残数」の表示がいずれも「----」であることが看取できる。

2 イ号取扱説明書、イ号写真及びイ号動画により認められる事項

(a)上記イ.によれば、ミス給紙スイッチは上下方向に複数並べて設けられており、上記エ.によれば、ミス給紙スイッチは棚に対応して設けられているから、ミス給紙スイッチに対応する棚も上下方向に複数並べて設けられているといえる。
上記エ.及び上記ク.の記載を照合すると、「段」が「棚」を指し、「広告」が「チラシ」を指すことは明らかであり、上記カ.によれば、各段のテーブルには1段当たり600?1000枚程度の広告がセット可能であり、広告をセットする場合、ゴムローラーbが広告によって上に上がらない積み方をするのだから、棚(段)には複数枚のチラシ(広告)が積まれているといえる。
上記チ.によれば、棚はチラシを1枚ずつ給紙している。また、上記キ.によれば、各段(棚)で多重送りが発生する恐れがある場合には紙サバキダイヤル(L)の調整が行われるのだから、この点からも、通常は多重送りは発生せず、チラシ(広告)は1枚ずつ給紙されると認められる。

(b)上記チ.によれば、複数の棚から給紙されたチラシは先端が揃うように重ね合わされている。

(c)上記(a)のとおり、上記キ.及びチ.によれば、各棚からチラシが1枚ずつ給紙され、また、上記チ.によれば、複数の棚から給紙されたチラシが重ね合わされるから、上記オ.における「セットされたチラシ」は、各棚から給紙されたチラシを1枚ずつ含んでいるといえる。

(d)上記コ.によれば、折込み枚数をその都度設定する場合に丁合したいセット数を入力するのだから、イ号物件は、丁合したいセット数を設定するものである。

(e)上記コ.、サ.及びツ.によれば、「設定数」の表示がセット数を、「実行数」の表示が丁合を実行した数を、また、「残数」の表示が丁合の残数をそれぞれ示すことは明らかである。
上記サ.及びツ.によれば、折込み(丁合)開始から折込み(丁合)終了までの間に、「実行数」の表示が増加する分だけ「残数」の表示が減少しており、上記ツ.によれば、これらの増加及び減少は1ずつ行われているから、イ号物件は、丁合を開始すると、丁合が実行されるごとに「残数」の表示が1ずつ減少しているといえる。

(f)上記サ.によれば、イ号物件は、セット数分の丁合が終了すると丁合作業を停止しており、その際に「残数」の表示は「0」となっている。

(g)上記シ.によれば、イ号物件は、丁合指定表示機能において、通常カウンターのカウンター値がある設定数に到達したときに、各棚SWをON/OFFすることができる。ここで、ON/OFFとは、上記ク.によれば、各棚(段)の給紙動作を行うこと及び停止することである。
また、上記ス.には、メニュー画面から「端数の設定、確認(総数)」を選択して、設定する棚を決定し、設定数(セット数)の入力を行うことが示されており、上記タ.には、OFF指定を行う点が示されている(以下では、上記(d)及び(f)における「セット数」や、(e)における「設定数」の表示と区別するために、上記ス.における「設定数(セット数)」を「OFF指定の設定数」という。)。
OFF指定の設定数は、設定する棚を決定して入力されるのだから、各棚に固有のものであることは明らかである。
そうすると、イ号物件は、各棚において、各棚に固有のOFF指定の設定数の入力を行っている。

(h)丁合指定表示機能においては、上記セ.のとおり、設定のセット数に到達するまで折込み(丁合)が行われるところ、設定のセット数は、上記(g)におけるOFF指定の設定数であって、上記テ.において「端数総数」として表示される値であることは明らかである。そして、上記テ.によれば、「実行数」の表示が1ずつ増加するごとに、「端数設定残数」の表示は1ずつ減少しているから、「端数設定残数」の表示はOFF指定の設定数の残数を示すものである。
そうすると、「端数総数」の表示はOFF指定の設定数を、「端数設定残数」の表示はOFF指定の設定数の残数をそれぞれ示しており、イ号物件は、丁合を開始すると、固有のOFF指定の設定数が入力された棚においては、丁合が実行されるごとに「端数設定残数」の表示が1ずつ減少しているといえる。

(i)上記(g)によれば、OFF指定された棚においては、棚SWがOFFに切り換えられるまでは給紙動作を行う状態であることが明らかである。
そうすると、上記(c)も踏まえれば、イ号物件は、OFF指定の設定数が入力された棚から給紙されたチラシを含む給紙されたチラシを、セットされたチラシとしているといえる。

(j)上記セ.及びソ.によれば、スタートスイッチ(E)を押すと丁合が再開するのだから、スタートスイッチ(E)が押されるまでは丁合が停止していることは明らかであり、丁合が停止する際には、OFF指定の設定数が入力された棚からの給紙が停止されるのみならず、OFF指定の端数の設定数が入力されていない棚からの給紙も停止されていることは自明である。
上記タ.のとおり、丁合開始時に「実行数」の表示が「0」、「端数総数」の表示が「12」であったものが、丁合が再開する時点においては「実行数」の表示が「12」になっているから、上記(e)及び(h)を踏まえると、丁合が停止するのはOFF指定の設定数分の丁合が終了する時点であるといえる。
また、上記テ.によれば、「端数総数」の表示が「50」である場合に、「実行数」の表示が「49」から「50」に変化すると、「端数設定残数」の表示は「1」から「----」に変化し、それ以降の表示は「----」のままであるから、OFF指定の設定数の丁合が終了すると、端数設定残数の表示が「----」に変化し、以降の表示は「----」であるといえる。

(k)上記(j)のとおり、丁合が停止する際には、OFF指定の設定数が入力された棚からの給紙が停止されるのみならず、OFF指定の設定数が入力されていない棚からの給紙も停止されていることは明らかである。
また、上記セ.によれば、イ号物件は、セットを押すと棚スイッチを切換えているが、上記タ.によれば、棚スイッチを切換えることは、OFF指定された棚のスイッチをOFFとすることにほかならず、OFFとは、上記ケ.によれば、各棚の給紙動作を停止することであるから、セットを押すと、OFF指定の設定数が入力された棚においては、その後の給紙動作が停止するといえる。
そして、上記ソ.によれば、スタートスイッチ(E)を押すと丁合が再開するが、上述のとおり、OFF指定の設定数が入力された棚においては給紙動作が停止するのだから、給紙を再開するのはOFF指定の設定数が入力されていない棚のみになる。

(l)上記(k)のとおり、セットを押すとOFF指定された棚スイッチがOFFになり、その後のその棚からの給紙が停止されるのだから、その後に、上記ソ.のように丁合を再開すれば、給紙が停止された棚のチラシを含まないセットされたチラシが作成されることは明らかである。

3 当審によるイ号物件の認定

上記(a)ないし(l)の事項からみて、イ号物品の構成を、本件特許発明の構成要件の分説と対応するように分説すると、イ号物品は次の構成を具備するものである(以下、分説した各構成を「構成A_(2)」ないし「構成M_(2)」という。)。

「A_(2) 積まれた複数枚のチラシからチラシを1枚ずつ給紙する棚を上下方向に複数並べて設け、
B_(2) この複数の棚から1枚ずつ給紙したチラシを先端が揃うように重ね合わせることにより、
C_(2) 各棚より給紙されたチラシを1枚ずつ含むセットされたチラシとする新聞広告自動丁合機において、
D_(2) この新聞広告自動丁合機によって丁合したいセット数を設定し、
E_(2) 新聞広告自動丁合機が丁合を開始すると、丁合が実行されるごとに「残数」の表示が1ずつ減少し、
F_(2) セット数分の丁合が終了すると丁合作業を停止し、その際の「残数」の表示は「0」であり、
G_(2) 各棚において、各棚に固有のOFF指定の設定数の入力を行い、
H_(2) 丁合を開始すると、固有のOFF指定の設定数が入力された棚においては、丁合が実行されるごとにOFF指定の設定数の残数を示す「端数設定残数」の表示が1ずつ減少し、
I_(2) OFF指定の設定数が入力された棚から給紙されたチラシを含む給紙されたチラシを、セットされたチラシとし、
J_(2) OFF指定の設定数分の丁合が終了すると丁合作業を停止して、OFF指定の設定数が入力された棚及びOFF指定の設定数が入力されていない棚からの給紙を停止し、OFF指定の設定数の丁合が終了すると、端数設定残数の表示が「----」に変化し、以降の表示は「----」であり、
K_(2) セットを押すと棚スイッチを切換えてOFF指定の設定数が入力された棚のその後の給紙動作を停止し、OFF指定の設定数が入力されていない棚では、スタートスイッチ(E)を押すと給紙を再開し、
L_(2) OFF指定の設定数分の丁合が終了して給紙が停止された棚のチラシを含まないセットされたチラシが作成される
M_(2) 新聞広告自動丁合機。」

4 当審の対比・判断

(1)本件特許発明の各構成要件とイ号物件の各構成との対比・判断

イ号物件が本件特許発明1の構成要件AないしMを充足するか否かについて、構成要件AないしMをイ号物件の構成A2ないしM2にそれぞれ対応させて、対比検討する。

ア.構成要件Aについて
イ号物件の「積まれた複数枚のチラシ」は、束状をなすことは明らかであるから、本件特許発明の「積載した用紙束」に相当する。また、イ号物件の「チラシ」及び「棚」は、それぞれ本件特許発明の「用紙」及び「給紙部」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件Aを充足する。

イ.構成要件Bについて
イ号物件は、「チラシを先端が揃うように重ね合わせる」ところ、構成A2のように棚が上下方向に複数並んでいれば、棚によって給紙の際の搬送距離が異なることになるから、チラシの先端が揃うためには、棚の高さ位置に応じた時間だけ給紙動作のタイミングをずらしていることは明らかである。
したがって、イ号物件は構成要件Bを充足する。

ウ.構成要件Cについて
イ号物件の「セットされたチラシ」及び「新聞広告自動丁合機」は、本件特許発明の「1セット分の丁合束」及び「丁合装置」にそれぞれ相当する。
したがって、イ号物件は構成要件Cを充足する。

エ.構成要件Dについて
イ号物件の「丁合したいセット数」が、本件特許発明の「丁合される全部数」に相当する。
また、イ号物件は、「丁合したいセット数を設定」するのだから、その設定のための手段を有することは明らかであって、当該「丁合したいセット数を設定」する手段は、本件特許発明の「全カウント数設定手段」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件Dを充足する。

オ.構成要件Eについて
イ号物件の「残数」は、本件特許発明の減算される「全カウント数」に相当する。
イ号物件においては、「丁合が実行されるごとに「残数」の表示が1ずつ減少し」ている。そして、このような表示が行われるのだから、イ号物件が表示に対応して、残数を減算をしていることは明らかである。
そうすると、イ号物件は、丁合が実行されるごとに残数を1ずつ減算しているといえる。
したがって、イ号物件は構成要件Eを充足する。
なお、以上のとおりであるから、被請求人が主張する上記第4の2(2)の点には理由がない。

カ.構成要件Fについて
本件特許発明の「全カウント数がゼロになったときには丁合装置を停止させる」ことには、その文言に照らせば、全カウント数がゼロになったことを直接の起因として、丁合装置を停止することのみならず、全カウント数がゼロになるという条件が満たされた場合に、丁合装置を停止することが包含されると解される。
一方、イ号物件は、「セット数分の丁合が終了すると丁合作業を停止し、その際の「残数」の表示は「0」」であるから、上記オ.での検討を踏まえると、イ号物件は残数を減算して、残数が0になるという条件が満たされた場合に、丁合作業を停止しているといえる。
そして、イ号物件は丁合作業を行う装置であるから、丁合作業を停止することは、新聞広告自動丁合機を停止することにほかならない。
したがって、イ号物件は構成要件Fを充足する。

キ.構成要件Gについて
イ号物件の「OFF指定の設定数」は、本件特許発明の「固有カウント数」に相当する。
イ号物件は、「各棚において、各棚に固有のOFF指定の設定数の入力を行」うものであるから、複数の棚のうち、少なくとも一つの棚において、棚に固有のOFF指定の設定数の入力を行うものであるといえる。
そして、「OFF指定の設定数の入力」によって、OFF指定の設定数が設定されるのであるから、イ号物件がその設定のための手段を有することは明らかである。
したがって、イ号物件は構成要件Gを充足する。

ク.構成要件Hについて
イ号物件の「OFF指定の設定数の残数」は、本件特許発明の減算される「固有カウント数」に相当する。
イ号物件においては、固有のOFF指定の設定数が入力された棚においては、丁合が実行されるごとにOFF指定の設定数の残数を示す「端数設定残数」の表示が1ずつ減少しているから、上記オ.の検討を踏まえると、イ号物件が表示に対応して、OFF指定の設定数の残数を減算していることは明らかである。
したがって、イ号物件は構成要件Hを充足する。

ケ.構成要件Iについて
イ号物件の「OFF指定の設定数が入力された棚から給紙されたチラシ」は、本件特許発明の「該固有カウント数が設定された給紙部から取り出された用紙」に相当し、同様に「セットされたチラシ」は、「丁合束」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件Iを充足する。

コ.構成要件Jについて
本件特許発明の「固有カウント数がゼロになったときには、該給紙部を停止状態として、それ以降の給紙は行わ」ないことには、その文言に照らせば、固有カウント数がゼロになったことを直接の起因として、給紙部を停止状態として、それ以降の給紙は行わないことのみならず、固有カウント数がゼロになるという条件が満たされた場合に、給紙部を停止状態として、それ以降の給紙は行わないことが包含されると解される。
一方、イ号物件は、OFF指定の設定数分の丁合が終了すると丁合作業を停止して、OFF指定の設定数が入力された棚からの給紙を停止している。そして、停止した以降に給紙が行われないことは明らかである。
また、イ号物件では、「端数設定残数」の表示は、OFF指定の設定数分の丁合が終了すると「----」に変化し、以降の表示は「----」であり、一方、OFF指定の設定数の残数は、OFF指定の設定数分の丁合が終了すると0になり、以降も0であることは明らかである。そうすると、「端数設定残数」の「----」という表示は、OFF指定の設定数の残数が0である状態に対応しているから、OFF指定の設定数の残数が0であることを示すと解するのが自然である。
そうすると、上記カ.及びク.での検討を踏まえると、イ号物件はOFF指定の設定数の残数を減算して、OFF指定の設定数の残数が0になるという条件が満たされた場合に、OFF指定の設定数が入力された棚からの給紙を停止して、停止した以降は給紙を行われないといえる。
したがって、イ号物件は構成要件Jを充足する。
なお、以上のとおりであるから、被請求人が主張する上記第4の2(3)の点には理由がない。

サ.構成要件Kについて
本件特許発明は、「固有カウント数が設定されていない給紙部では、いずれかの給紙部で用紙無しが検知されるか、あるいは全カウント数がゼロになって丁合装置が停止するまで給紙を継続する」ものであるところ、「継続」の一般的な用語の意味は「前の状態・活動がつづくこと。また、受け継いでつづけること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であることから、本件特許発明は、丁合装置が一旦停止した後に再度動作を開始して、一旦停止する前の状態・活動がつづく態様をただちに排除するものではない。
そこで、本件特許発明の下位の請求項である請求項2に係る発明をみると、「前記固有カウント数が設定された給紙部において固有カウント数分の給紙が完了すると一旦丁合装置が停止し、その後丁合作業を再スタートさせると、固有カウント数分の給紙が完了した給紙部以外の給紙部で給紙が継続される一旦停止モード」を有しており、請求項3に係る発明をみると、「前記固有カウント数が設定された給紙部において固有カウント数分の給紙が完了すると一旦丁合装置が停止し、その後再スタートの操作が行われると、該給紙部の給紙動作を伴うことなく、丁合装置が再度動作開始する」ものであって、いずれも丁合装置が一旦停止した後に再度動作を開始する態様を包含しているから、これらの請求項の上位の請求項に係る本件特許発明は、丁合装置が一旦停止した後に再度動作を開始する態様を含むものというべきである。また、請求項4に係る発明が、本件特許発明について「前記固有カウント数が設定された給紙部において固有カウント数分の給紙が完了すると、丁合装置が停止することなく、以後は該給紙部の給紙動作を伴わずに丁合装置の動作が継続すること」を発明特定事項として付すものであることからも、その上位の請求項である本件特許発明は、請求項4において特定された丁合装置が停止しない態様以外の態様を含むものであって、丁合装置が一旦停止した後に再度動作を開始する態様を排除するものではない。
以上の解釈は、本件明細書からも裏付けられる。即ち、本件明細書には「一旦停止モードであれば、給紙動作を最下位まで終了した後、丁合装置1を一旦停止させる(S308)。その後スタートスイッチ60cを押すと丁合装置1は再度動作開始し、CPU50が発生した次回の基準信号に応じて各給紙部3から給紙動作が行われるが、給紙部3bは停止状態とされているので、給紙動作は行われない。」(段落【0038】)、及び、「以上の動作により、固有カウント数が設定されている給紙部では、設定されている固有カウント数分の給紙が終了すると停止状態とされるので、以後の給紙動作は行われなくなる。これに対し、固有カウント数が設定されていない給紙部では給紙が継続され、いずれかの給紙部において用紙無しが検知されるか、もしくは全カウント数C回分の給紙動作が完了すると丁合装置は停止する。」(段落【0040】)との記載があって、丁合装置を一旦停止させ、その後、再度動作開始し給紙動作が行われることを含めて、「固有カウント数が設定されていない給紙部では給紙が継続され」るとしており、このことからも、本件特許発明の「給紙を継続する」ことには、丁合装置が一旦停止した後に再度動作を開始する態様が包含されることが裏付けられる。
これをイ号物件についてみると、OFF指定の設定数が入力された棚及びOFF指定の設定数が入力されていない棚からの給紙を停止した後、セットを押すと棚スイッチを切換えてOFF指定の設定数が入力された棚のその後の給紙動作を停止し、スタートスイッチ(E)を押すとOFF指定の設定数が入力されていない棚では給紙を再開するのだから、一旦停止した後に再度動作を開始するものということができ、よって、OFF指定の設定数が入力されていない棚での給紙を「継続」しているといえる。
また、イ号物件の「OFF指定の設定数が入力されていない棚」は、本件特許発明の「固有カウント数が設定されていない給紙部」に相当する。
したがって、イ号物件は構成要件Kを充足する。

シ.構成要件Lについて
イ号物件は、上記オ.及びカ.のとおり、丁合が実行されるごとに残数を1ずつ減算して、残数が0になったときに丁合作業を停止し、上記ク.ないしサ.のとおり、OFF指定の設定数の残数を減算し、給紙されたチラシをセットされたチラシとし、OFF指定の設定数の残数が0であるときに給紙を停止し、OFF指定の設定数が入力されていない棚では給紙を再開している。また、OFF指定の設定数分の丁合が終了して給紙が停止された棚のチラシを含まないセットされたチラシが作成されるものである。
ここで、「制御」の一般的な意味は「機械や設備が目的通り作動するように操作すること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であるところ、イ号物件において、上記のように残数やOFF指定の設定数の残数の状態に対応して、丁合作業及び給紙を停止し、給紙を再開し、セットされたチラシを作成することが、目的通りの作動であることは明らかだから、イ号物件にこれらの動作を行わせることは制御であるといえ、また、イ号物件がそのための制御手段を有することは明らかである。
したがって、イ号物件は構成要件Lを充足する。
なお、上記カ.及びコ.での検討を踏まえると、本件特許発明は全カウント数や固有カウント数を直接の起因として丁合装置を制御することのみならず、全カウント数や固有カウント数について所定の条件が満たされる場合に丁合装置を制御することを包含するものであって、「イ号物件の制御手段が、全カウント数及び固有カウント数を1ずつ減算する処理を行って丁合している」か否かについて論じるまでもなく、本項での検討のとおり、イ号物件は構成要件Lを充足するといえるから、被請求人が主張する上記第4の2(1)の点には理由がない。

ス.構成要件Mについて
イ号物件は構成要件Mを充足する。

(2)まとめ

したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件AないしMを充足する。

第6 むすび

以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件AないしMを充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2017-03-22 
出願番号 特願2005-181306(P2005-181306)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 孝明  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
畑井 順一
登録日 2011-10-14 
登録番号 特許第4841871号(P4841871)
発明の名称 丁合装置  
代理人 飯野 茂  
代理人 井上 正  
代理人 峰 隆司  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 蔵田 昌俊  
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