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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H02G
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H02G
管理番号 1327299
審判番号 無効2015-800093  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-30 
確定日 2017-03-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第5465733号発明「掴線器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件の特許第5465733号に係る発明についての出願についての手続の経緯は以下の通りである。

平成22年 1月15日 実用新案登録出願(実用新案登録第316
3196号)
平成24年 1月24日 特許出願への変更(特願2012-121
75号)
平成26年 1月31日 特許の設定登録
平成27年 3月31日受付 無効審判請求
平成27年 7月 7日受付 審判答弁書
平成27年 9月16日付 審理事項通知
平成27年10月26日受付 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年10月29日受付 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成27年10月29日受付 弁駁書(請求人)
平成27年10月29日受付 上申書(請求人)
平成27年11月10日 口頭審理
平成27年11月16日受付 上申書(請求人)
平成27年12月21日受付 上申書(請求人)
平成28年 2月25日付 審理終結通知

なお、被請求人側に口頭審理への出頭を求めたが何人も出頭しなかった。
また、請求人株式会社永木精機は、実用新案登録第3163196号に対して、平成23年11月30日付で無効審判請求(無効2011-400009号)をしたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(乙第1号証)が、平成24年7月24日に確定している。



第2 本件特許発明

本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
長レバーのリング部に引張力を負荷することで、テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器において、その長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻ったことを特徴とする掴線器」



第3 請求人の主張

請求人は、「特許第5465733号発明の特許請求の範囲の請求項1に係る特許発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。そして、請求人の主張する無効理由、証拠方法、無効理由に係る主張の概要は以下のとおりである。


1 無効理由
(1)無効理由1
本件の請求項1に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証の記載にみられる周知技術に基づいて、本件特許の基礎となる実用新案登録出願の出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきである。

(2)無効理由2
願書に添付した明細書の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、本件特許は無効とすべきである。


2 証拠方法
(1)審判請求書とともに提出された証拠
甲第1号証 米国特許1942625号公報及び翻訳文
甲第2号証 特開2002-199568号公報
甲第3号証 特開2010-226872号公報
甲第4号証 特開2000-245024号公報

(2)口頭審理陳述要領書とともに提出された証拠
甲第5号証の1 米国特許3599297号公報及び翻訳文
甲第5号証の2 米国特許3599297号公報の図面の説明図
甲第6号証 特開平10-255547号公報
甲第7号証 特公昭42-10075号公報
甲第8号証の1 実開昭54-102800号公報
甲第8号証の2 実願昭52-176706号のマイクロフィルム
甲第9号証 特開2005-89084号公報
甲第10号証 特開2000-288952号公報
甲第11号証 特開2003-181539号公報
甲第12号証 特開2008-48488号公報
甲第13号証 特開2005-205492号公報
甲第14号証 特開平10-146619号公報


3 無効理由に係る請求人の主張の概要
(1)無効理由1について
ア 審判請求書における請求人の主張の概要
本件特許発明は、長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対し15°?45°に捻った」ことで、リング部の上部がケーブルに干渉することを避けてリング部中心をケーブル中心に接近させることができるように構成しているのに対し、甲第1号証に記載された発明は、本件特許発明の「長レバー」に相当するハンドル32の湾曲とピボット接続部33を調整することにより、リング部に相当する目37の上部がケーブルに干渉することを避けてリング部に相当する目37中心をケーブル中心に接近させることができるように構成している点において相違する。
甲第1号証は、本件特許発明と同一技術分野に属するものであり、かつ、ワイヤー38をのばすために引っ張る負荷が目37に適用されるとき、ハンドル32の湾曲とピボット接続部を調整することで、ワイヤーが曲がったり捻れたりしないようにしたものであるから、本件特許発明と同一の作用・効果を奏することは明らかである。
さらに、甲第1号証の「締め付け位置にあるワイヤー38の軸線(中心線)は、目37の方向に配置されている。従って、ワイヤーをのばす(stretching)ために、引っ張る負荷が目37に適用されるとき、ワイヤーが曲がったり、捻れたりせず、引っ張る動作は常にワイヤーのほぼ軸方向にある。」という記載から、甲第1号証には、本件特許発明が解決しようとする課題である「ケーブルの屈曲によるケーブル表面に生じる屈曲のクセ及び損傷等の不都合を解決する」という課題が示唆されているといえる。
また、本件特許発明と同一の技術分野に属する甲第2号証ないし甲第4号証発明において、金属型板状体を「捻る」ことは、甲第2号証及び甲第3号証に記載されているように周知であり、金属製板状体を「曲げる」ことは、甲第4号証に記載されているように周知である。
そして、本件特許発明の長レバーの後端に設けたリング部をその操作方向に対し15°?45°に捻ったとしても、実施態様によっては、ケーブル表面に損傷を生じることを防止する効果は殆ど得られるものではなく、本件特許発明そのものの効果としては認められない。
よって、甲第1号証記載の技術思想を有する当業者が周知・慣用技術を適用し、掴線器の長レバーのリング部2を15°?45°に捻ることで、リング部の上部がケーブルに干渉することを避けてリング部中心をケーブル中心に接近させる構成に想到することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものである。
したがって、甲第1号証発明に上記周知技術を適用し、相違点に係る本件特許発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
(審判請求書第3頁26行?第10頁2行)

イ 口頭審理陳述要領書における請求人の主張の概要
(ア)甲第1号証のハンドルを捻ることについて
掴線器について、ケーブルにリング部を近づけることで、ケーブルの屈曲によるケーブル表面に生じる屈曲のクセ及び損傷などの不都合を回避できることは、経験的に当業者は熟知しており、甲第1号証並びに甲第7号証、甲第8号証及び甲第9号証からも明らかであるから、リング部とケーブルとの接触(干渉)を回避する必要があることは、周知の技術的な課題といえる。
この課題を解決するために、甲第1号証では、ケーブルを「屈曲」ないしは「湾曲」することでケーブルとの接触(干渉)を回避している。また、甲第5号証及び甲第6号証においては、リング部の上部がケーブルに干渉することを避けてリング部中心をケーブル中心に接近させている。しかも、捻る技術は、広く一般的に多用されている周知技術ないし技術常識と認定される技術である。
このように、この課題を解決する技術手段として、ケーブルを「屈曲」ないしは「湾曲」させたり、あるいは特許発明のように「捻っ」たりすることで、リング部とケーブルとの接触(干渉)を回避することは、単なる設計変更にすぎない。
(口頭審理陳述要領書第2頁17行?第3頁32行)

(イ)甲第1号証ないし甲第4号証の適用について
発明の課題解決のために、関連する技術分野の技術手段に適用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮であるところ、甲第1号証の技術分野と甲第2号証及び甲第3号証の技術分野とは、技術分野における同一性を有している。
また、本件特許発明の技術的課題は、電線の架線工事の当業者において熟知している技術的課題であり、甲第1号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証の1、甲第8号証の2、甲第9号証に記載された発明において解決されており、リング部の上部がケーブルに干渉することを避けて長レバーのリング部中心をケーブル中心に接近させることも、甲第5号証及び甲第6号証に記載されている。
さらに、ある物品の干渉を避けてある物品の一の側面から別の側面に至らしめる技術は、甲第10号証ないし甲第14号証に記載されている。
よって、当業者が関連する技術分野の部材の一部を「捻る」ことは、周知の技術手段であるから、この「捻る」という技術手段を掴線器に適用を試みることは、自然な流れであって、当業者の通常の創作能力の発揮であることを踏まえると、甲第1号証の発明においてケーブルの屈曲によるケーブル表面に生じる屈曲のクセ及び損傷などの不都合を解決するという目的で、甲第2号証及び甲第3号証に記載された「捻る」という周知・慣用技術を採用する動機付けがある。
(口頭審理陳述要領書第3頁33行?第10頁16行)

(2)無効理由2について
ア 審判請求書における請求人の主張の概要
本件特許発明においては、「長レバー1及びケーブル3の平面に対して15°?45°に捻った」ことを特徴とするものである。ところが、「長レバー1及びケーブル3の平面」とはどこを指すのか、並びに「15°?45に捻る」とは、何に対して15°?45°の角度をなすのか、不明確である。ケーブル3には、平面が存在しないと思われるが、ケーブル3の平面に対して15°?45°に捻ったことを特徴としているが、不明確である。
このように、請求項中の発明を特定するための事項に対応する技術的手段が発明の詳細な説明中に単に抽象的、機能的に記載してあるだけで、それを具現するべき構成、方法などが不明瞭であり、しかもそれらが出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、具現するためには、過度の試行錯誤や実験を必要としており、当事者が請求項に係る発明を実施することができない。本件明細書は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載していない。
(審判請求書第10頁3行?第11頁7行)

イ 口頭審理陳述要領書における請求人の主張の概要
本件特許発明の発明特定事項である「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°捻った」を、単に明細書の「課題を解決するための手段」の欄に記載され、且つ、符号の説明の欄に「捻り箇所」とのみ記載されているに過ぎず、図面は三角法で記載されていないため、掲載図面からカムと三角レバーと長レバーの接続状態が不明瞭で、やはり三角法を用いた図面でなければ、各構成部品の形状が把握できず、実施不可能である。
また、発明特定事項の「長レバー」の平面とは何を指しているのか意味不明であり、発明特定事項の「断面円形のケーブルの平面」とは何を指しているのか意味不明である。
(口頭審理陳述要領書第10頁17行?第11頁7行)



第4 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めており、主張の概要及び証拠方法は以下のとおりである。

1 無効理由1に対する被請求人の主張の概要
(1)答弁書における被請求人の主張の概要
甲第1号証は、長レバーのリング部に於いて捻ったものでなく、長レバーのリング部と反対側に平行な段差状に屈曲を付けた物である点、平行な段差を付けたリング部中心とケーブル中心間距離は、捻られたリング部よりも必然的に長くなり、ケーブルに与える屈曲モーメントを増大させている点で相違し、甲第2号証?甲第4号証は、本件特許発明の掴線器でない軟鋼鉄の薄い板材を、他の部材との接続の目的のために単に90度捻ったもので硬い鋼鉄製の鍛造品をケーブルを屈曲させない目的の掴線器の為に捻ることとは相違する。
また、本件特許発明の掴線器は、只一種類の掴線器で、全てのケーブルサイズには対応できるものではなく、細線径のケーブル範囲に於いてはリング部の捻り角度は小さくなり、極太線径のケーブルに於いては捻り角度は大きくなることから、市場の要求する掴線範囲により設計者がその角度範囲内で、最適になるように自由に決定すればよい。
当業者が甲第1ないし4号証を根拠に本件特許発明が容易に考案できるものであれば、甲第1号証の発明日1934年1月9日より本件特許発明の原出願日2010年1月15日までの約76年間に、本件特許発明該当品が存在している筈であるが、存在していない。
(審判答弁書 「5.理由(1)?(3)、(5)」)

(2)口頭審理陳述要領書における被請求人の主張の概要
掴線器は、頑丈であること、耐久性があること、小型軽量であること、の三大要素を有すべきであるが、甲第2号証?甲第4号証の架線金物に使用される一般軟鋼材ではこれらの要素を満たすことは不可能である。
(口頭審理陳述要領書「4.陳述の要領 1)」)


2 無効理由2に対する被請求人の主張の概要
(1)答弁書における被請求人の主張の概要
通常の金属の鍛造品加工を知るものは、本件特許発明に於いて稔回箇所及び稔回方向が図示されていること、又、乙第3号証に記載されているように本件特許発明品は実用化され市販されていることから当業者は容易に実施できるものである。
(審判答弁書 「5.理由(4)」)

(2)口頭審理陳述要領書における被請求人の主張の概要
本件特許明細書の図1(a)及び(b)には、
・捻り箇所(4)が明示されている
・リング部(2)が、ケーブル(3)の後ろ側に捻られている
・A-A’線の断面図も捻り方向を、明示している
ので、本件特許明細書には特許発明が明確かつ十分に記載されている。
(口頭審理陳述要領書「4.陳述の要領(2)」)


3 証拠方法
被請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
乙1 無効2011-400009号の審決
乙2 リング部捻り角度とケーブル外径の関係図
乙3 掴線範囲の細径ケーブルと太径ケーブルを同じ掴線器で掴線し
た時、どちらもリング部中心に近く保持されていることの写真
、及び当発明品と従来品との緊張時の作用効果の比較で当発明
品はケーブルの屈曲が見られない作用効果がある写真。



第5 当審の判断

1 無効理由1について
(1)本件特許発明
本件特許発明は、上記「第2 本件特許発明」で認めたとおりであり、再掲すると、以下のとおりである。

「【請求項1】
長レバーのリング部に引張力を負荷することで、テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器において、その長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻ったことを特徴とする掴線器」

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「WIRE GRIP」(発明の名称)に関して、Fig.1-Fig.4とともに、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「One object of the invention is to provide an improved serviceable and efficient wire grip adapted to be employed in gripping and stretching or otherwise handling wires of various sizes.
Another object of the invention is to provide a wire grip in which a material length of the wire to be gripped is engaged, thereby preventing binding or kinking of the wire at or about the location of its gripping surface and without injury to, or mutilation of, wires of the insulated type.
Another object of the invention is to provide a wire grip which is light and simple in construction, thus facilitating its manual operation in conjunction with wires above the ground, and which is further advantageous because it will not catch or lock upon wires when it is being removed therefrom. 」(第1頁左欄6行-同23行)
(当審訳:「本発明の1つの目的は、さまざまなサイズのワイヤーを把持しかつのばしあるいは操作に用いるのに適する、改良された使いやすくかつ有用なワイヤー把持具を提供することである。
本発明の他の目的は、把持されるべきワイヤーの材料長が確保され、それによりその把持面の位置またはそのあたりでの結びや捻れを防止し、かつ絶縁型のワイヤーへの損傷や切断を生じないワイヤー把持具を提供することである。
本発明の他の目的は、軽量かつ構造が簡単で、それ故、地上でワイヤーとともに手動操作を容易にし、かつそこから取り外されたときにワイヤー上で掴みやロックを生じないため、さらに有利な導線ワイヤー把持具を提供することである。」)

(甲1b)「One form of wire grip 10 embodying the invention comprising a housing or frame 11 having a body portion 12 and an arm 15 forming with the body a substantially U-shaped configuration. Adjacent the junction of the body 12 and arm 15 a laterally extending oblong jaw 16 is integrally formed and is provided with a grooved face 17 which can be of any desired cross sectional form, such as arcuate or V-shaped.
A bell crank 18 formed with a shorter arm 20 and a longer arm 21 is pivoted upon a fulcrum pin 22 that is rigidly carried adjacent the outer extremity of the body 12 opposite the face of the jaw 16, and the shorter arm 20 has a bifurcated portion 23 for receiving an oblong jaw 25 that is pivotally carried upon a pin 26 secured in the bifur cated portion of the arm. In order to insure efficient gripping action between the jaws 16 and 25, a plurality of transverse grooves 27 are formed in the face of the jaw 25 which also is grooved longitudinally, as indicated at 28, to provide the desired arcuate, V-shaped, or other desired crosssectional contour. One end portion of the pivoted jaw 25 is provided with a lug 29 extending integrally at an angle therefrom. The grooved portions 17 and 28 are arranged in opposed relation and are movable toward and away from each other by pivoting the bell crank. 」(第1頁左欄31行-同右欄3行)
(当審訳:「ワイヤー把持具10の1つの外形は、ボディ部12およびボディとともに略U字形状を形成する腕15を有するハウジングもしくはフレーム11を備えた発明を具体化している。ボディ12および腕15の接合部に隣接して水平方向に伸長する楕円形の顎16が一体に形成され、例えば弓形またはV字状等の所望の断面形状をとり得る溝付きの面17を備える。
より短い腕20とより長い腕21が形成されたベルクランク18は、顎16の面とは反対側のボディ12の外側端に近接して強固に支持する支点ピン22により枢着され、より短い腕20は、腕の分岐部に固定されたピン26上で枢動される長方形の顎25を受けるための分岐部23を有する。顎16および25の間で有効な把持動作を確実にするために、複数の横断溝27が、28で示されるように、所望の弓形、V字状、あるいは他の所望の断面外形を有するように、長手方向に溝形成された顎25の表面に形成されている。枢着された顎25の一端部は、そこから斜めに一体的に伸長する取っ手29を備える。溝部17および28は、反対側の関係に配置され、ベルクランクを旋回することで互いに近づき離れ得る。」)

(甲1c)「The outer end of the longer arm 21 has a bifurcated portion. 30 for receiving the end of a curved link or handle 32 that is pivotally mounted upon a pin 33 carried in the bifurcated portion 30. A bracket 35 is formed integrally or rigidly upon the side of the arm 15 adjacent its outer end to provide a guide 36 for receiving and guiding the shank of the handle 32. One end of the handle 32 extending outwardly from the arm 15 is provided with an eye 37 formed therein and adapted to receive a tool, or other mechanical element, or it can be grasped directly by an operator to manipulate the grip.
By moving the handle 32 inwardly to pivot the bell crank 18 in a clockwise direction, as viewed in Fig.1, the lug 29 contacts the surface of the handle and is stopped. In striking the handle 32 the lug functions automatically to dispose the grooved face of the jaw 25 substantially parallel to the face of the jaw 16. This arrangement facilitates the insertion of a wire 38 between the jaws. As soon as the pivoted jaw 25 moves toward the jaw 19 and against the wire by drawing the handle 32 outwardly to turn the bell crank in a counter-clockwise direction, the wire is firmly gripped and the pulling force upon the wire through the handle may be applied to any degree without danger of the wire slipping from between the jaws. This action is insured because of the fact that the ratio between the bell crank arms 21 and 20 is approximately two to one.
The relationship of the short arm 20 of the bell crank, together with the jaw 25, to the clamping face 17 of the jaw 16 is such that the jaw 25 contacts the jaw 16, when the bell crank is turned in a counter-clockwise direction, at a position in which the pin 26 is outside a line drawn from the axis of the pin 22 at right angles to the face of the jaw 16.
In designing the wire grip described, particular attention has been directed to the desirability of arranging the structural elements in such manner that the section of the handle 32 including the eye 37 shall remain disposed substantially in alinement with the working face of the movable jaw 25, even while the grip is being adjusted and operated. The curvature of the handle 32 and the arc of movement of its pivotal connection 33, together with the shape and location of the guide 36, are so coordinated as to produce this result. The axis of the wire 38 in its clamped position is thus disposed in a direction toward the eye 37, although there is ample space to accommodate the wire without distorting it, as a result of the offsetting, as indicated at 39, of the arm 15 between the bracket 35 and the jaw 16. Therefore, the wire will not be bent or kinked when a pulling load is applied to the eye 37 for stretching the wire, and the pulling action will always be substantially axially of the wire. 」(第1頁右欄4行-第2頁左欄10行)
(当審訳:「より長い腕21の外端部は、曲げられたリンクの端を受け入れるための分岐部30を有し、分岐部30でピン33状に枢動できるように取り付けられるハンドル32を有する。ブラケット35は、ハンドル32の柄を受けて導くためのガイド36を備えるために、その外端部に隣接する腕15の側に、一体的に、または、しっかりと形成される。腕15から外の方に伸びているハンドル32の一端は、ツールまたは他の機械構成部品を受けるのに適しているか、グリップを操作するためにオペレータによって直接握られることができる、そこに形成された目37を備えている。
時計回り方向にベルクランク18を回転させるために内に向けてハンドル32を動かすことによって、図1に図示されるように、突起29は、ハンドルの表面を接触させて止められる。ハンドル32に突き当たることで、突起は、顎16の面と実質的に平行に顎25の溝を彫られた面を配置するために自動的に機能する。この装置は、顎の間に、ワイヤー38の挿入を容易にする。逆時計回り方向にベルクランクを回すために外の方にハンドル32を引くことにより、枢着された顎25が、ワイヤー38に対して顎16の方へ移動するとすぐに、ワイヤーは確実に握持され、そして、ハンドルによるワイヤーの牽引力は、顎の間からワイヤーがすべる危険のないようどのようにでも印加されることができる。この動きは、ベルクランク腕21および20間の比率が、ほぼ2?1であるという事実のため、保証される。
顎25と顎16のクランプ面17に対するベルクランクの短い腕20の関係は、顎25が顎16を接触させるものであり、そのとき、ピン26が顎16の面に直角でピン22の軸から引き出される線の外にある位置で、ベルクランクは、逆時計回り方向に回される。
記載されたワイヤー把持具を設計する際に向けられる特別な注意は、グリップが調整されたり、操作されたりしているときであっても、目37を含むハンドル32の部分は、可動顎25の作用面におおむね一直線状に配置された状態のままである、という望ましい構造要件の配置である。ガイド36のその形状と配置にあわせて、ハンドル32の屈曲と枢着接続部33の移動の円弧がよく調整されているので、このような結果をもたらす。39に示されるように、ブラケット35と顎16の間の腕15が中央線をはずれている結果として、ワイヤーを曲げることなく収納できる充分な空間があるが、このようにその締め付け位置にあるワイヤー38の中心線は、目37の方向に配置されている。従って、ワイヤーをのばすために、引っ張る負荷が目37に適用されるとき、ワイヤーが曲がったり、捻れたりせず、引っ張る動作は常にワイヤーのほぼ軸方向にある。」)

(甲1d)図1及び図3には、ハンドル32がピン33とブラケット35との間に段差状に屈曲する部分を有する構成が記載されている。

次に、上記甲第1号証の記載について検討する。

ア ワイヤー把持具10の作用効果について
上記(甲1a)には、「本発明の他の目的は、・・・中略・・・把持面の位置またはそのあたりでの結びや捻れを防止し、かつ絶縁型のワイヤーへの損傷や切断を生じないワイヤー把持具を提供する」ことが記載され、上記(甲1c)には、「記載されたワイヤー把持具を設計する際に向けられる特別な注意は、・・・中略・・・ガイド36のその形状と配置にあわせて、ハンドル32の屈曲と枢着接続部33の移動の円弧がよく調整され・・・中略・・・従って、ワイヤーをのばすために、引っ張る負荷が目37に適用されるとき、ワイヤーが曲がったり、捻れたりせず、引っ張る動作は常にワイヤーのほぼ軸方向にある」ことが記載されている。
よって、甲第1号証には、ワイヤー把持具10の作用効果として、「引っ張る負荷が目37に適用されるとき、ガイド36のその形状と配置にあわせて、ハンドル32の屈曲と枢着接続部33の移動の円弧がよく調整されているので、引っ張る動作は常にワイヤーのほぼ軸方向とされ、把持面の位置またはそのあたりで、ワイヤーが曲がったり捻れたりすることを防止し、かつ絶縁型のワイヤーへの損傷や切断を生じないワイヤー把持具」が記載されていると認められる。

イ ワイヤー把持具10の構成について
上記(甲1b)には、「ワイヤー把持具10の1つの外形は、ボディ部12およびボディとともに略U字形状を形成する腕15を有するハウジングもしくはフレーム11を備えた」ものであり、「ボディ12および腕15の接合部に隣接して水平方向に伸長する楕円形の顎16が一体に形成」され、「より短い腕20とより長い腕21が形成されたベルクランク18は、顎16の面とは反対側のボディ12の外側端に近接して強固に支持する支点ピン22により枢着され、より短い腕20は、腕の分岐部に固定されたピン26上で枢動される長方形の顎25を受けるための分岐部23を有する。」ことが記載されている。
また、上記(甲1c)には、「より長い腕21の外端部は、・・・中略・・・ピン33に枢動できるように取り付けられるハンドル32を有」し、「ブラケット35は、ハンドル32の柄を受けて導くためのガイド36を備えるために、その外端部に隣接する腕15の側に、一体的に、または、しっかりと形成」され、「外の方に伸びているハンドル32の一端は、・・・中略・・・目37を備えている」ことが記載されている。
さらに、上記(甲1d)から、図1及び図3には、ハンドル32がピン33とブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有することが記載されている。
よって、甲第1号証には、ワイヤー把持具10の構成として、「ワイヤー把持具10は、ボディ12および腕15を有するフレーム11を備え、ボディ12および腕15の接合部に隣接して顎16が形成され、より短い腕20とより長い腕21が形成されたベルクランク18は、ボディ12に支点ピン22により枢着され、より短い腕20は、ピン26上で枢動される顎25を受け、より長い腕21は、ピン33に枢動できるように取り付けられるハンドル32を有し、ハンドル32の柄を受けて導くためのガイド36を備えブラケット35は、その外端部に隣接する腕15の側に形成され、ハンドル32は、ピン33とブラケット35との間に段差状に屈曲する部分を有し、ハンドル32の外の方に伸びている一端は、目37を備えている」構成が記載さている。

ウ ワイヤー把持具10によるワイヤーを把持について
上記(甲1c)には、「逆時計回り方向にベルクランクを回すために外の方にハンドル32を引くことにより、枢着された顎25が、ワイヤー38に対して顎16の方へ移動するとすぐに、ワイヤーは確実に握持され」ることが記載されている。

上記アないしウから、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「ボディ12および腕15を有するフレーム11を備え、前記ボディ12および前記腕15の接合部に隣接して顎16が形成され、より短い腕20とより長い腕21が形成されたベルクランク18は、前記ボディ12に支点ピン22により枢着され、前記より短い腕20は、ピン26上で枢動される顎25を受け、前記より長い腕21は、ピン33に枢動できるように取り付けられるハンドル32を有し、前記ハンドル32の柄を受けて導くためのガイド36を備えたブラケット35は、その外端部に隣接する前記腕15の側に形成され、前記ハンドル32は、前記ピン33と前記ブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有し、前記ハンドル32の外の方に伸びている一端は目37を備えた、ワイヤー把持具であって、
逆時計回り方向に前記ベルクランクを回すために外の方に前記ハンドル32を引くことにより、枢着された前記顎25が、ワイヤー38に対して前記顎16の方へ移動するとすぐに、前記ワイヤー38は確実に握持され、
引っ張る負荷が前記目37に適用されるとき、前記ガイド36のその形状と配置にあわせて、前記ハンドル32の前記段差状の屈曲と枢着接続部の移動の円弧がよく調整されているので、引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向とされ、把持面の位置またはそのあたりで、前記ワイヤー38が曲がったり捻れたりすることを防止し、かつ絶縁型の前記ワイヤー38への損傷や切断を生じないワイヤー把持具。」

(3)甲第2号証?甲第14号証に記載された事項

ア 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「【0012】そして、腕金28の先端部にはねじりストラップ29の基端部がピン30で枢支連結され、ねじりストラップ29の先端部には、互いにピン31で直列に枢着された2個の耐張碍子23,23のうちの一方の耐張碍子23がピン32で枢支連結され、他方の耐張碍子23の先端部に電線支持ガイド部材22がピン33で枢支連結されている。」

(甲2b)図1には、「ねじりストラップ29」が、板状体のものをねじった構造であることが記載されている。

上記(甲2a)及び(甲2c)から、甲第2号証には、耐張碍子23を腕金28に連結するねじりストラップ29が、板状体のものをねじった構造であることが記載されている。

イ 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【0004】
図8は、上記したような従来の耐張碍子の碍子支持構造の一例を示す斜視図である。電柱EPに固定的に取り付けられた腕金CAには、捻りストラップ31が固定されている。捻りストラップ31は、一端を腕金CAに固定された平板状の二辺のアーム32からなり、これらのアーム32は、腕金CAに固定されていない方の自由端FE側が捻られて互いに接合されている。耐張碍子21は、その先端部にキャップ金具22を有している。キャップ金具22は、円錐形状をしており、先端部が二股に割れてスリット23を形成している。このような耐張碍子21は、キャップ金具22のスリット23に、捻りストラップ31が有する二辺のアーム32の接合する自由端FEが入り込み、これらの各部を連結ピン24が貫通することによって捻りストラップ31に回動自在に連結されている。耐張碍子21は、その後端部に取付け孔25が形成された取付けピン26を有している。この取付けピン26には、前述した張線状態の高圧線を挟持する引溜クランプが取り付けられたり、あるいは別の耐張碍子21が取り付けられたりする。」

(甲3b)図8には、「捻りストラップ31」が、平板状のアームを捻った
構造であることが記載されている。

上記(甲3a)及び(甲3b)から、甲第3号証には、耐張碍子21を腕金CAに連結する捻りストラップ31が、板状体のアーム32を捻った構造であることが記載されている。

ウ 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【0016】図4において、電線を振分けて引留める耐張碍子24と引留めクランプ25を示す。耐張碍子24は実施形態では一対の碍子を連結し、碍子のキャップ金具24aを前記ストラップの取付け穴10に合致させてピン36で結合し、かつ碍子の他端の取付け穴24dには引留めクランプの取付け穴をピン37で結合して連接してある。引留めクランプ25は一端に前記碍子24と連接する取付け穴と、他端部には電線の皮剥ぎ部を拘持しうる裸線拘持部26と、その拘持部26の楔体27と、該楔体を締付けるボルト28と、張線器50を接続する取付け穴25bが形成されている。この耐張碍子24と引留めクランプ25とは地上で予め連接して、その周りに合成樹脂製の碍子保護用ネットカバー(図示せず)が取り外し自由に被せられる。
【0017】図5において、30は引留めクランプと電線を張線する張線器で、調整手段の調整ボルト、或いは調整ネジ部を回して伸縮杆31を軸方向に伸縮させるもので、その張線器の器体の一端にフック32を設けてクランプの端部の取付け穴に引っかけ、かつ伸縮杆31の先端には電線を嵌めて挟持しうる掴線器33を備えたものである。この張線器は、一端のフック部32を引留めクランプの穴に引っかけるとともに他端の掴線器33の掴持金具34で電線を挟持して張線器30の調整手段を回して伸縮杆を伸縮して電線と耐張碍子と引留めクランプを緊張させる。」

(甲4b)「【0025】図9、図10において、通り電線に裸線部分を形成する工程と、裸線部分を引留めクランプに拘持する工程を示す。絶縁操作棒の先端に張線器30を取付け、一端を前記取付けた引留めクランプの先端の穴25bにフック32を引っかけ、伸縮杆31の先端の掴線器33を通り電線にかける。また、通り電線の所定の箇所を皮剥ぎ器により所定の長さだけ皮むきして裸線部分Fを形成する(図4、図5参照)。」

(甲4c)図4には、引き留めクランプ25が、平板状のものを曲げた構造を有していることが記載され、図9には、張線器30を耐張碍子24に連結する引き留めクランプ25が記載されている。

(甲4d)図5には、掴線器33のレバー状の部位が、張線器30の伸縮杆31の先端に連結された構成が記載されている。

上記(甲4a)ないし(甲4d)から、甲第4号証には、張線器30を耐張碍子24に連結する引き留めクランプ25が平板状のものを曲げた構造を有すること、掴線器33の捻りのないレバー状の部位が張線器30の伸縮杆31の先端に連結されることが記載されている。

エ 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「Now referring more particularly to the drawings, a wire grip generally designated as 1, is shown as comprising a body portion 10 from one end of which extends an arm 12 formed with a guide opening 14. Formed as an integral part of the body 10 at the upper portion thereof is a laterally projecting, stationary, longitudinally extending jaw member 16. As best seen in FIG. 2, jaw 16 is provided with a longitudinally grooved face 18, which may be V-shaped or arcuate.
A bellcrank lever 20 is pivotally mounted on a fulcrum pin 22 and has a pair of angularly disposed, integral arms 24 and 26. Fulcrum pin 22 is in turn nonrotatably fixed to a lower depending portion of body portion 10. Arm 24 has a bifurcated portion 28, which receives an apertured flange 30 forming a downward extension of a second jaw member 32. Flange 30 is pivotally connected to bifurcated portion 28 by means of a pin 34.
Again referring to FIG. 2, jaw member 32 is shown as as being provided with a longitudinally grooved face 36, which is a mirror image of the face of jaw 16. As desired, the faces of jaws 16, 32 may be provided with transversely extending grooves or the like, not shown, in order to obtain a positive grip on a wire 38 to be clampingly engaged by the jaws.
The arm 26 is pivotally connected at its lower or free end with a link or handle 40 by means of laterally projecting, headed pin 42. As will be apparent from viewing FIGS. 1 and 3, link 40 is slidably received within guide opening 14 for movement between jaw-opening and jaw-closing positions, respectively. Suitable means, such as a coil spring 44 carried on pin 42 is preferably employed to bias arm 26 and link 40 into their jaw-opening positions; arm 26 and link 40 being normally retained in their jaw-opening position by engagement of link step abutment 45 with arm 12. The outer end of link 40 has an eye 46, which is adapted to be engaged by a tool, not shown, or directly by the operator for the purpose of moving the link longitudinally to move jaw 32 towards or away from stationary jaw 16. When wire 38 is a high-tension cable, a tool in the form of a long insulated rod having a hooked end and commonly referred to as a "Hot Stick" is employed. More particularly, by moving link 40 inwardly, such as to pivot bellcrank lever 20 in a clockwise direction, as viewed in FIG. 1, jaw 32 is moved away from jaw 16, and by moving link 40 outwardly jaw 32 is moved toward jaw 16, as viewed in FIG. 3.
It will be understood that, due to the arrangement of the body portion and jaws, there is defined a side opening, indicated in FIG. 2 at 48, through which wire 38 may be admitted. This arrangement facilitates the insertion of a wire between the jaws, which is accomplished when the jaws are open, as viewed in FIGS. 1 and 2. After insertion of the wire and closing the jaws under control of spring 44 to clamp the wire therebetween, a pulling force exerted on the link 40 will both increase the clamping pressure exerted by the jaws and cause the wire to be stretched. 」(第1頁左欄47行-同右欄28行)
(当審訳:「さて、より詳細に図面を参照すると、ワイヤー把持具は、一般的に1として示され、ガイド開口部14を有して形成された腕12が一端から伸びる本体部分10を含むものとして示される。その上部において本体10の一体部分として形成されているので、顎部材16は、横方向に突出し、固定され、長手方向に伸長している。図2に最もよく見られるように、顎16は、長手方向に溝を彫られた表面18を備えており、それは、V字形でも円弧形でもよい。
ベルクランクレバー20は、支点ピン22に枢動可能に取付けられ、角度傾斜して配置された、一対の一体腕24および26を有している。支点ピン22は、本体部分10の下側の従属している部分に回動不能に固定されている。腕24は、分岐部分28を有し、それは、第2の顎部材32の下方への伸長を形成している開口部を有するフランジ30を受ける。フランジ30は、ピン34により、分岐部分28に枢動可能に接続されている。
再度、図2を参照すると、顎部材32は、長手方向に溝を彫られた表面36を備えたものとして示され、それは、顎16の表面の鏡像である。顎により締めるように係合されるべきワイヤー38上に積極的なグリップを得るために、所望により、顎16,32の表面は、図示しない、横方向に伸びる溝または同様のものを備えてもよい。
腕26は、横方向に突出する有頭ピン42により、その下側またはリンクを有する自由端またはハンドル40において枢動可能に接続されている。図1および3の観察から明らかなように、リンク40は、それぞれ顎開口および顎閉鎖位置の間で運動するためにガイド開口部14の範囲内で摺動可能に受けられる。適切な手段、例えばピン42に載架されるコイルスプリング44は、腕24およびリンク40をその顎開口位置に付勢するのに好ましくは使用され、腕24およびリンク40は、通常、腕12を有するリンクステップ橋脚45の咬合によりその顎開口位置に保持される。リンク40の外端部は、目46を有し、図示しないツールにより、あるいは、顎32を固定顎16に向かってあるいは離れるように動かすために長手方向にリンクを動かすために、オペレータにより直接係合されるのに適している。ワイヤー38が、高圧ケーブルであるとき、かぎ状端を有する長い絶縁ロッド状で、かつ「ホット スティック」と一般的に呼ばれるツールが使用される。より詳しくは、図1に見られるように、リンク40を内側に動かすことにより、ベルクランクレバー20を時計方向に例えば枢動することにより、顎32は、顎16から遠ざかり、そして、図3に見られるように、リンク40を外側に動かすことにより、顎32は、顎16に近づく。
本体部分と顎との配置により、48において図2に示される、ワイヤー38が入り得る側面開口が、定義されていることが理解されるであろう。この配置は、顎の間にワイヤーが挿入されるのを容易にし、それは、図1および2に示されるように、顎が開いたときに達成される。
ワイヤーを挿入し、ワイヤーをその間で締めるために、ばね44の制御のもとで顎を閉じた後、リンク40に及ぼされた牽引力は、顎により及ぼされた締め圧力を増加させかつワイヤーを伸長させる。」)

(甲5b)図2には、リンク40が捻りのない平板状であり、かつ、ピン42の軸方向に屈曲していない形状であり、ピン42の軸に垂直な平面であってリンク40が移動する平面にはワイヤー38、顎16及び顎32が存在しない構成が記載され、図3には、顎32と顎16がワイヤーを挟んだ状態では、リンク40の外端部の目46は、ワイヤーに近接した位置にある構成が記載されている。

上記(甲5a)及び(甲5b)から、甲第5号証には、ワイヤー把持具において、リンク40が捻りのない平板状であり、かつ、ピン42の軸方向に屈曲していないため、ピン42の軸に垂直な平面であって、リンク40が移動する平面では、ワイヤー38、顎16及び顎32が存在しておらず、顎32と顎16がワイヤーを挟んだ状態では、リンク40の外端部の目46は、ワイヤー38に近接した位置にある構成が記載されている。

オ 甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【0021】つぎに、連結部材7の連結部19が連結された引っ張り手段、例えば張線装置の装置本体を縮小するよう作動させて、連結部材7をd矢印方向に引っ張る。作動部材3は、上記の連結部材7が引っ張られていくのに伴って支軸17を支点として図1のe矢印方向へ回動して、図2の状態となる。その結果、可動側掴線部4は、図2に示すように、僅かに斜め上方に向けて押し上げられて、その嵌合溝38に嵌まり込んだ線状体Wを固定側掴線部2と共に上下から挟み付けて掴持する。その後に、引っ張り手段が線状体把持器をさらにd矢印方向に引っ張ると、両掴線部2,4で掴持された線状体Wもd矢印方向に引っ張られていく。」

(甲6b)図1及び図2には、線状体把持器の連結部材7の連結部19を引っ張ると、連結部19が線状体側に重なる位置まで移動する構成が記載されている。

上記(甲6a)及び(甲6b)から、甲第6号証には、線状体把持器において、連結部材7の連結部19を引っ張ると、連結部材7が引っ張られて連結部19は線状体に重なる位置まで移動し、作動部材3は回動して可動側掴線部4を押し上げることで線状体Wを固定側掴線部2と共に上下から挟み付けて掴線する構成ことが記載されている。

カ 甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、「ワイヤー緊張機」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

(甲7)「これらの把持手段はカムの大表面に直角の平面内で平坦である凸状把持表面をもつカム状部材であり、そしてそれらの把持作用は隣接するアンビル上の凹面に対してワイヤーを押しつぶすものとなっている。
・・・中略・・・
第2にカムがワイヤーを凹所に圧迫するということは凹面に一致するようにワイヤーを曲げてしまい、その結果軟質のワイヤーが使用されている場合、或る期間にわたってワイヤー上の歪がこのように形成された屈曲部をまっすぐにしようとする傾向があり、そこでワイヤーを再緊張する必要がでるかもしれない。」(第1頁右欄2行?19行目)

上記(甲7)から、甲第7号証には、把持表面が凹面であるアンビルと凸状であるカム状部材からなるワイヤー緊張機は、把持作用によりワイヤーを押しつぶし、ワイヤーを凹面に一致するよう曲げてしまうことが記載されている。

キ 甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、「掴(審決注:当庁のシステムは旧字体のフォントに対応していないため、新字体を用いることとする。以下、同じ。)線器」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「斯種掴線器としては、第3図に示す如きものがあるが、後述の如く、作業時に曲がりぐせがつき作業後もこれを矯正することができず、又内装金属線を屈曲位置にて著しく損傷するという欠陥を有していた。即ち第3図に示す如く、滑車(a)に捲回した索条(b)を引張し、作動レバー(d)の端部(e)をP方向に引張すると、力のバランス上、反時計回りの回転モーメント(Q)が発生し、P方向線を被張設線(f)の引張部(負荷部)(A)の中心線(1)に一致させんとする。この結果作動レバー(d)の端部(e)は被張設線(f)の自由部(無負荷部)(c)を持上げ、又被張設線(f)の挟持部(B)を傾斜させ、この中心線(m)を前記中心線(1)に対しθの角度傾斜させることとなる。」(第2頁4行?17行目)

(甲8b)「本考案は前記端部(4)を鉛直断面U形状とし被張設線(f)の自由部(C)を上下移行自由に通挿せしめるように構成しているので、前記端部(4)の上方向移行は何らの障害もなく円滑に行なわれ、端部(4)の中心(引張力の作用点)(E)が前記中心線(1)に一致するまで回動する。」(第6頁2行?7行目)

(甲8c)第1図及び第2図には、作動レバー(3)が、捻った部分を有さず、ピン(12)の軸方向に屈曲していない棒状であり、作動レバー(3)の端部(4)は、鉛直断面U形状とした構成が記載されている。

上記(甲8a)ないし(甲8c)から、甲第8号証には、掴線器において、被張設線を掴線するために作動レバーの端部を引張すると、作動レバーの端部は被張設線の自由部(無負荷部)を持上げ被張設線の挟持部を傾斜させるので、被張設線に曲がりぐせがつき著しく損傷するという欠陥を有していたこと、及び、捻った部分及び屈曲した部分を有しない作動レバーの端部を鉛直断面U形状とすることで、該端部の上方向移行は何らの障害もなく円滑に行われることが記載されている。

ク 甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

(甲9a)「【0004】
しかしながら、上記掴線器の一対の掴線部の各々の把持溝の溝面に形成されている滑り止め用凹凸部は、多数の係止条部が把持溝の溝方向に対し直交方向に配設されて溝方向に沿った断面形状が鋸歯状となっているので、両把持溝に嵌まり込んだエレベータ用ケーブルが一対の掴線部により上下から掴持されたときには、各係止条部が、螺旋状に延びる各ケーブル素線に対し直交する相対配置で相対向するから、掴線器を介して張線状態のエレベータ用ケーブルに対して大きな引っ張り力が加わった場合には、その引っ張り力に対応して一対の掴線部によるエレベータ用ケーブルに対する掴持力が増大して、各係止条部がケーブル素線に食い込んでケーブル素線を損傷させてしまうおそれがある。エレベータ用ケーブルは、エレベータを吊り下げ状態に支持しながら昇降させるものであるから、上述のような損傷の発生を極力避けることが好ましい。
【0005】
そこで、大きな引っ張り力の発生に伴う掴持力の増大時にもエレベータ用ケーブルが損傷されないことを目的として、エレベータ用ケーブルに沿った長さを大きくした一対の掴線部を備えた掴線器を用いることにより、掴持したときにエレベータ用ケーブルに対し局所的に掴持力が作用しないようにしながらもケーブルを確実に掴持することが考えられる。ところが、その場合には、掴線器の全体形状が極めて大型化して、これの操作性が悪くなり、ひいてはケーブル配設の作業性が低下するという、新たな問題が生じる。」

(甲9b)図1ないし図5には、連結部材(11)が、捻った部分を有さず、支軸(12)の軸方向に屈曲していない平板状の形状である構成が記載されている。

上記(甲9a)及び(甲9b)から、甲第9号証には、掴線器において、一対の掴線部の各々の把持溝の溝面が、滑り止め用凹凸部である多数の係止条部を有しているため、エレベータ用ケーブルが一対の掴線部により上下から掴持されたとき、各係止条部がケーブル素線に食い込んでケーブル素線を損傷させてしまうこと、及び、掴線器の連結部材(11)が、捻った部分を有さず、支軸(12)の軸方向に屈曲していない平板状の形状であることが記載されている。

ケ 甲第10号証に記載された事項
甲第10号証には、以下の事項が記載されている。

(甲10)「【0003】従って、締めつけ角度の少ない(60度未満)の所では、レバー部が干渉して、締めつけができない場合がある。
【0004】片側先端の稜部を6個のアールにして、ボルト締めつけ中心軸をずらして、レバーの干渉を避けたものも有るが、強度、締めつけ力を強くできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題点】本発明は上述の問題に鑑み、六角棒の稜部を最小曲げ半径として90度曲げて、さらに一方の面部にα度のねじりを与えた六角レンチである。またα度は1度以上、59度以下であるが30度を標準とする。」

上記(甲10)から、甲第10号証には、六角レンチにおいて、レバーの干渉を避けるため、六角棒の稜部を最小曲げ半径として90度曲げ、さらに一方の面部にα度のねじりを与えることが記載されている。

コ 甲第11号証に記載された事項
甲第11号証には、以下の事項が記載されている。

(甲11a)「【0025】図5(a),(b)は本発明に係る自動車ボデーの補修工具の第3作用図である。(a)において、自動車ボデー35に凹み36が発生した場合、補修工具10の延長部12をねじれ角β((b)参照)だけねじり、ねじり部37を形成するとともに、所定形状に折曲げて曲げ部38,38を形成することで、補強部材41やブラケット42に干渉することなく、押圧部13を凹み36へ挿入することで補強部材41やブラケット42を回転時(矢印Fcの方向)の支点として利用し、自動車ボデー35の凹み36を補修することができる。」

(甲11b)「【0028】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1では、握り部から連続して延長部を設け、延長部の先端側に押圧部を形成した自動車ボデーの補修工具において、延長部を一方向の剛性に対して直交方向の剛性を大とし、一方向へは人手により折曲げ自在な長尺部材で構成したので、延長部には、軟らかさとともに、所望の強度を与えることができる。その結果、延長部を所望の形状に曲げて、例えば、ドア内に配設した補強部材などの干渉物を避けて、ドアの凹みに先端の押圧部を当てることができるとともに、押し出し力を付与して凹みの補修を行うことができる。
【0029】請求項2では、延長部の断面を偏平に軟鉄にて形成し、断面の長辺方向に屈曲させて屈曲延長部を形成するとともに、屈曲延長部の先端に押圧部を形成したので、延長部には、軟らかさとともに、所望の強度を与えることができる。その結果、延長部を所望のねじれ角だけねじることができると同時に、所望の形状に曲げることができ、例えば、ボデー内に配設した補強部材などの干渉物を避けて、ボデーの凹みに先端の押圧部を当てることができるとともに、押し出し力を付与して凹みの補修を行うことができる。」

上記(甲11a)及び(甲11b)から、甲第11号証には、自動車ボデーの補修工具において、延長部が所望のねじれ角だけねじることができると同時に、所望の形状に曲げることができるので、干渉物を避けてボデーの凹みに先端の押圧部を当てることができることが記載されている。

サ 甲第12号証に記載された事項
甲第12号証には、以下の事項が記載されている。

(甲12)「【0007】
隣接する回転電機巻線の巻線端部が干渉しないように、巻線端部を長手方向に180°捻ることにより、平角導体を幅方向に180°折り曲げる場合に較べ、平角導体が大きく変形を強いられることはなくなり、その結果、被覆された絶縁物の損傷や平角導体自身の割れ及び亀裂の発生を防止し得る回転電機巻線を備えた回転電機を得ることができる。」

上記(甲12)から、甲第12号証には、回転電機巻線において、巻線端部を長手方向に180°捻ることにより、隣接する回転電機巻線の巻線端部が干渉しないことが記載されている。

シ 甲第13号証に記載された事項
甲第13号証には、以下の事項が記載されている。

(甲13a)「【0039】
図13に示す多穴管31は、内側が連結壁2により2つの連通穴部3、3に区画されている。また、多穴管31には、本実施例の曲げ部製造装置によって、曲げ部32,33が形成されるとともに、多穴管31の軸心を中心として両端間で90度円周方向にねじり成形が施されている。例えば、車両のエンジンルームでは多穴管などの接続管がレイアウト上3次元的に屈曲されているが、特にスペースが限られ位置関係により多穴管のレイアウトの制約が厳しい場合、図13に示す多穴管31のようにねじり成形を施したものが用いられる。
【0040】
そして、図9?図13に示す本実施例の曲げ部製造装置は、前述した第1実施例と比べて、芯金本体11の構成が異なっており、その他の構成は基本的に前述した第1実施例と同様である。
【0041】
すなわち、芯金本体11は、連通穴部3、3の断面形状と略同一の断面形状(略半円筒状の断面形状)の芯金基部19を有し、この芯金基部19は、連通穴部3、3の内面に当接する湾曲部20と、連結壁2に当接する平坦部21とを備えている。湾曲部20の先端側には、曲げられる連通穴部3、3の内面との干渉を避ける逃げ斜面20aが形成されている。また、平坦部21の先端側には、多穴管31を曲げる際に連結壁2に当接して連結壁2の変形を防止する座屈防止面21aが形成されるとともに、平坦部21の後端側には、両側端を切り落すことにより、ねじられた連結壁2との干渉を避ける後部逃げ面21b、21bが形成されている。この後部逃げ面21b、21bの角度及び長さ寸法は、多穴管31のねじり量に応じて設定されており、また、後部逃げ面21b、21bの角度は、平坦部21に対して所定角度で形成されている。
【0042】
この第2実施例にあっても、多穴管31を曲げるとともに所定角度のねじり成形を施すとき、芯金本体19の湾曲部20が連通穴部3、3の内周面に当接することにより、連通穴部3、3の内壁9の局部的な変形が防止される。同時に、平坦部21が連結壁2に当接し、この平坦部21の先端の座屈防止面21aが連結壁2の曲げ部の内周側に当接することにより、連結壁2の変形を防止する。このとき、平坦部21の両側端を切り落すことにより後部逃げ面21b、21bが形成されているので、芯金本体19の平坦部21がねじられた連結壁2との干渉を避けることができる。」

(甲13b)「【0048】
すなわち、芯金本体11は、連通穴部3、3の断面形状と略同一の断面形状(略半円筒状の断面形状)の芯金基部19を有し、この芯金基部19は、連通穴部3、3の内周面に当接する湾曲部20と、連結壁2に当接する平坦部21とを備えている。湾曲部20の先端側には、曲げられる連通穴部3、3の内周面との干渉を避ける逃げ斜面20aが形成されている。また、平坦部21の先端側には、図13に示す多穴管31を曲げる際に連結壁2に当接して連結壁2の変形を防止する座屈防止面21aが形成されるとともに、平坦部21の後端側には、両側端を切り落すことにより、ねじられた連結壁2との干渉を避ける後部逃げ面21c、21cが形成されている。この後部逃げ面21c、21cの角度及び長さ寸法は、多穴管31のねじり量に応じて設定されている。なお、後部逃げ面21c、21cの角度は、平坦部21に対して後端側では比較的大きな所定角度で形成され、前端側へ向かうにつれて後部逃げ面21c、21cの角度が徐々に小さくなっている。
【0049】
この第3実施例にあっても、多穴管31を曲げるとともに所定角度のねじり成形を施すとき、芯金本体19の湾曲部20が連通穴部3、3の内周面に当接することにより、連通穴部3、3の内壁9の局部的な変形が防止される。同時に、平坦部21が連結壁2に当接し、この平坦部21の先端の座屈防止面21aが連結壁2の曲げ部の内周側に当接することにより、連結壁2の変形を防止する。このとき、平坦部21の両側端を切り落すことにより後部逃げ面21c、21cが形成されているので、芯金本体19の平坦部21がねじられた連結壁2との干渉を避けることができる。」

上記(甲13a)及び(甲13b)から、甲第13号証には、多穴管において、多穴管を曲げるとともに所定角度のねじり成形を施すことで、芯金本体の平坦部がねじられた連結壁との干渉を避けることができることが記載されている。

ス 甲第14号証に記載された事項
甲第14号証には、「チューブの曲げ装置」(発明の名称)に関して、図とともに、以下の事項が記載されている。

(甲14a)「【0018】次いで、ステップS15に進んで、チューブ1が送り可能となる位置まで、制御装置10の指令で作動する捻りモータ3によってチューブ1が捻られる。そして、ステップS16に進んで、制御装置10の指令により作動する送り出し装置5によって、チューブ1は次の曲げ加工位置まで軸芯方向に送られ、該曲げ加工位置で制御装置10の指令で作動する捻りモータ3によって、曲げ型6と干渉することなく次の曲げ方向位置まで回動される。さらに、制御装置10の指令で作動する曲げ型ドライバ13、クランプドライバ14および圧力型ドライバ15によって、曲げ型6、クランプ8および圧力型7が、加工準備位置にセットされ、ステップS1に戻って再び曲げ加工が開始される。」

(甲14b)「【0026】
【発明の効果】以上述べた通り本発明によると、曲げ加工が施されたチューブを次の曲げ加工位置に移動する際に、制御装置に入力される曲げ角度のデータに基づいて、チューブと曲げ型とが干渉しないように、送り出し手段により前記チューブが送り出され、かつ回動手段により曲げ型が回動されるように、制御装置による制御が行われるので、オペレータによる移動データの入力が不要で、チューブの特性、曲げ加工条件、曲げ型の形状に応じて、チューブに変形や表面加工面の破損などを生じることなく、曲げ加工を能率的に行うチューブ曲げ装置を提供することが可能になる。」

上記(甲14a)及び(甲14b)から、甲第14号証には、チューブの曲げ装置において、曲げ加工が施されたチューブを次の曲げ加工位置に移動する際にチューブが捻られて、チューブと曲げ型とが干渉しないチューブ曲げ装置が記載されている。

(4)本件特許発明と甲1発明との対比
ア 構成要素の対応関係について
本件明細書の段落【0001】には、「本発明は、電力の送電線及び配電線を緊張する際に使用される、ケーブル(電線)を掴む掴線器に関する」と記載されている。一方、甲1発明は、「絶縁型の前記ワイヤー38への損傷や切断を生じないワイヤー把持具」であるところ、該「絶縁型の前記ワイヤー38」は何らかの電線として利用されるものであると認められるので、甲1発明の「ワイヤー」は、本件特許発明の「ケーブル」に相当し、また、甲1発明の「ワイヤー把持具」は、「掴線器」と呼び得るものである。
また、本件特許発明では、「長レバーのリング部」は「引張力を負荷」されるものであるところ、甲1発明の「ワイヤー把持具」の「ハンドル32」は、「外の方に伸びている一端は、目37を備え」たものであり、甲第1号証には、(甲1c)に「ワイヤーをのばすために、引っ張る負荷が目37に適用されるとき、ワイヤーが曲がったり、捻れたりせず、引っ張る動作は常にワイヤーのほぼ軸方向にある。」ことが記載されていることから、甲1発明の「ハンドル32」、「目37」は、本件特許発明の「長レバー」、「リング部」に相当している。

イ 甲1発明のワイヤーを把持するための力の作用について
甲1発明の「ワイヤー把持具」は、「枢着された前記顎25が、ワイヤー38に対して前記顎16の方へ移動」することで、「ワイヤー」が「確実に握持」されるものであるが、該「顎25」を「顎16の方へ移動」させるためには、「逆時計回り方向にベルクランクを回す」ことが行われる。
そして、該「ベルクランク」には、「より短い腕20とより長い腕21が形成され」ておりいるところ、甲第1号証の(甲1c)には、「ハンドルによるワイヤーの牽引力は、顎の間からワイヤーがすべる危険のないようどのようにでも印加されることができる。この動きは、ベルクランク腕21および20間の比率が、ほぼ2?1であるという事実のため、保証される。」ことが記載されていることから、「ベルクランク」は、ピン22の軸を支点とし、より長い腕21のピン33の位置を力点としてハンドル32からの力を受け、より短い腕20のピン26の位置を作用点として顎25を移動させる、テコとして機能するものであると解される。

上記の対応関係から、本願発明と甲1発明は、下記の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「長レバーのリング部に引張力を負荷することで、テコを利用してケーブルを把持する構造の掴線器において、その長レバーの後端にリング部を設けた掴線器。」

(相違点)
本件特許発明は、「その長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」ものであるのに対し、甲1発明は、「ハンドル32は、前記ピン33と前記ブラケット35との間に段差状に屈曲する部分を有し」ているが、「捻った」部分を有するものではない点。

(5)相違点についての判断
甲1発明は、「引っ張る負荷が前記目37に適用されるとき、引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向とすることで、把持面の位置またはそのあたりで、前記ワイヤー38が曲がったり捻れたりすることを防止し、かつ絶縁型の前記ワイヤー38への損傷や切断を生じない」ことを目的としている。そこで、最初に甲1発明に基づく「ワイヤー38が曲がったり」しない構成について検討する。
次に、甲第2号証ないし甲第14号証における、各甲号証に記載された「捻った」構成、各甲号証に記載された掴線器の構成、各甲号証に記載されたワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷の原因と回避するための構成についてそれぞれ確認後、甲1発明に甲第2号証ないし甲第14号証に記載された事項を適用することで、本件特許発明が容易に想到し得たかについて検討する。

ア 甲1発明の「ワイヤー38が曲がったり」しない構成について
甲1発明では、引っ張る負荷が目37に適用された場合、ワイヤー38が曲がったりしないようにするため、「引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向とする」ことが求められており、そのための構成として、「前記ガイド36のその形状と配置にあわせて、前記ハンドル32の前記段差状の屈曲と枢着接続部の移動の円弧がよく調整され」ている。
また、甲第1号証の図1及び図3において、ピン33に垂直な平面には、ワイヤー38が存在し、ハンドル32の段差状の屈曲した部分より目37側の部分がブラケット35のガイド36を通って移動する平面には、ワイヤー38が存在しない配置構成が記載されている。そして、仮に、ハンドル32に段差状の屈曲した部分が形成されていなかった場合には、ハンドル32を引っ張ることによってハンドル32がワイヤー38に接触してしまい、目37の位置がワイヤー38に接近できなくなり、「引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向とする」ことが不可能になることから、ハンドル32に段差状の屈曲した部分を形成することで、ハンドル32を引っ張ったとしてもハンドル32がワイヤー38に接触せず移動して目37の位置がワイヤー38に接近でき、「引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向とする」ことが可能になったものであることが読み取れる。
よって、甲1発明は、「ハンドル32は、前記ピン33と前記ブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有し」、「前記ガイド36のその形状と配置にあわせて、前記ハンドル32の前記段差状の屈曲と枢着接続部の移動の円弧がよく調整され」ているので、ハンドル32がワイヤー38に接触せず移動して目37の位置がワイヤー38に接近し、「引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向」にすることが可能になることで、「ワイヤー38が曲がったり」しないとする目的が達成されていると解される。

イ 各甲号証に記載された「捻った」構成について
甲第2号証ないし甲第14号証のうち「捻った」構成が記載されているのは、甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証ないし甲第14号証である。
そこで、記載されている各「捻った」部位について確認すると、上記第5、1、(3)のア、イ、ケないしスに記載された事項から、甲第2号証は「ねじりストラップ29」、甲第3号証は「捻りストラップ31」、甲第10号証は「六角レンチ」、甲第11号証は「自動車ボデーの補修工具」、甲第12号証は「回転電機巻線」、甲第13号証は「多穴管」、甲第14号証は「チューブ1」である。
しかしながら、甲第10号証ないし甲第14号証に記載されたものは、そもそも電線等のワイヤーに直接用いられる器具ではないことから、甲1発明と技術分野の関連性は認められない。
また、甲第2号証及び甲第3号証に記載された「ストラップ」は、何れも電線の架線に用いられる器具ではあるものの掴線器の一部を構成するものではないので、請求人が審判請求書において主張している、「本件特許発明及び甲第1号証ないし甲第4号証発明が同一の技術分野に属することは、明白である。」(第8頁7行?8行)とまではいえない。さらに、該「ストラップ」自体が、甲1発明の「ハンドル32」のように外力により連結されたベルクランク18のような部位を動かす「ハンドル」又は「レバー」の機能を有するものでもなく、しかも、該「捻った」ことによる構成が、ストラップの移動によりストラップが他の部位との干渉を避けるために設けられたものでもない。
なお、甲第4号証には、張線器30を耐張碍子24に連結する引き留めクランプ25が、平板状のものを「曲げた」構造を有することが記載されているものの、「捻った」構成のものではない。
よって、甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証ないし甲第14号証に記載された「捻った」構成を有する部位は、甲1発明とは技術分野の関連性が認められないものか、技術分野の関連性が認められたとしても、甲1発明の「ハンドル32」と同様の機能を有するものではなく、該「捻った」構成が、移動により他の部位との干渉を避けることを目的とするものでもない。

ウ 各甲号証に記載された掴線器の構成について
甲第2号証ないし甲第14号証のうち掴線器が記載されているのは、甲第4号証ないし甲第6号証、甲第8号証、及び甲第9号証である。
そこで、記載されている各掴線器について、甲1発明の「ハンドル32」に対応する部位が「捻った」部分を有するかについて確認すると、上記第5、1、(3)のウないしオ、キ及びクに記載された事項から、甲1発明の「ハンドル32」に対応する、甲第5号証の「ワイヤー把持具」の「リンク40」、甲第8号証の「掴線器」の「作動レバー3」、甲第9号証の「掴線器」の「連結部材11」は、それぞれ捻りのない構造になっており、また、甲第4号証及び甲第6号証には、甲1発明の「ハンドル32」に対応する「掴線器33」の「レバー状の部位」または「線状体把持器」の「連結部材7」が、捻りを有することは記載されていない。
よって、甲第4号証ないし甲第6号証、甲第8号証、及び甲第9号証には、掴線器において、甲1発明の「ハンドル32」に対応する部位が「捻った」部分を有することは、記載も示唆もされていない。

エ 各甲号証に記載されたワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷について
甲1発明は、「引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向」とすることで、「ワイヤー38が曲がったり」しないものであるから、甲1発明では、ワイヤー把持具が、ワイヤー38のほぼ軸方向に引っ張られないことが原因で、ワイヤー38が曲がったりしていたものを、ワイヤー38を引っ張る方向をワイヤー38のほぼ軸方向とすることで回避したものであるといえる。
甲第2号証ないし甲第14号証のうちワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷を回避する構成が記載されているのは、甲第7号証ないし甲第9号証である。
そこで、記載された各「ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷」の「原因」と「回避のための構成」について確認すると、上記第5、1、(3)のカないしクに記載された事項から、甲第7号証では、ワイヤー緊張機の把持表面の凹凸により「ワイヤーを押しつぶす」ことでワイヤーが損傷するので、該損傷を回避するために把持表面の形を変形するものであり、甲第8号証では、掴線器の作動レバー(d)の端部(e)により被張設線(f)が持上げられ被張設線(f)が損傷するので、該損傷を回避するために作動レバー(d)の端部(e)を鉛直断面U形状とするものであり、甲第9号証では、掴線器の把持溝に形成した滑り止め用凹凸部が「ケーブル素線に食い込」むことでケーブル素線が損傷するので、該損傷を回避するために把持溝にストランド条部を形成するものである。
よって、甲第7号証及び甲第9号証に記載された「ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷」の原因及び回避のための構成は、甲1発明とは異なる。また、第8号証に記載された「ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷」の原因は、甲1発明と関連するものの、その回避のための構成は、甲1発明とは異なる。

オ 甲第2号証ないし甲第14号証に記載された事項の適用について
(ア)甲1発明の「ハンドル32」を捻る必要性について
甲1発明は、上記アで検討したように、「ハンドル32は、前記ピン33と前記ブラケット35との間に段差状の屈曲する部分を有し」、「前記ガイド36のその形状と配置にあわせて、前記ハンドル32の前記段差状の屈曲と枢着接続部の移動の円弧がよく調整され」ているので、ハンドル32がワイヤー38に接触せず移動して目37の位置がワイヤー38に接近し、「引っ張る動作は常に前記ワイヤー38のほぼ軸方向」にすることが可能になり、「ワイヤー38が曲がったり」しないとする目的が達成されている。
そのため、甲1発明の「ハンドル32」の「目37」を、「ワイヤー38が曲がったり」しないために、さらに「捻った」構成としなければならない必要性は見当たらない。そして、甲1発明では、目37がワイヤー38に接近した位置となるように調整されているので、さらに「捻った」構成とした場合には、目37がワイヤー38に接触してしまう恐れが生じてしまう。逆に、目37がワイヤー38に接触せずに「捻った」構成とするためには、ガイド36の形状と配置の変更、ハンドル32の段差状の屈曲と枢着接続部の移動の円弧の再調整が必要になることから、甲1発明の「ハンドル32」を「捻った」構成とすることには、阻害要因があると認められる。
よって、甲第2号証ないし甲第14号証に記載された事項を適用して、甲1発明の「ハンドル32」をさらに「捻った」ものとして相違点を構成することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

(イ)甲第2号証ないし甲第14号証に基づく容易想到性について
ここで、仮に、甲1発明の「ハンドル32」を「捻った」構成とすることに阻害要因がなく、甲1発明の「ハンドル32」の構成を変更する必要性がないとしても、当業者が甲第2号証ないし甲第14号証に接した場合に、甲1発明の「ハンドル32」の構成を「捻った」構成とすることが容易であるかについて検討する。
また、審判請求人は、口頭審理陳述要領書において、「甲第1号証の発明においてケーブルの屈曲によるケーブル表面に生じる屈曲のクセ及び損傷などの不都合を解決するという目的で、甲第2号証及び甲第3号証に記載された「捻る」という周知・慣用技術を採用する動機付けがある。」と主張している(第10頁10行?13行)。

(A)そこで、最初に、各甲号証に記載された「捻った」構成に基づく容易想到性について検討する。
「捻った」構成を有する部位については、甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証ないし甲第14号証に記載されているところ、上記イで検討したように、甲第2号証及び甲第3号証の「捻った」構成を有する部位である「ストラップ」は、甲1発明の「ハンドル32」と同様の機能を有するものではなく、かつ、「捻った」構成が移動により他の部位との干渉を避けることを目的としたものでもない。また、甲第10号証ないし甲第14号証に記載された「六角レンチ」等は、干渉を避ける構成を有していたとしても、甲1発明だけでなく甲第2号証及び甲第3号証に記載された「ストラップ」とも技術分野の関連性が認められない。
よって、甲第2号証、甲第3号証、甲第10号証ないし甲第14号証に記載された「捻った」構成が周知・慣用技術であったとしても、掴線器である甲1発明の「ハンドル32」を「捻った」ものとすることが、当業者が容易に想到できたとはいえない。

(B)次に、各甲号証に記載された掴線器に基づく容易想到性について検討する。
甲1発明と同じ技術分野である掴線器については、甲第4号証ないし甲第6号証、甲第8号証、甲第9号証に記載されているところ、上記ウで検討したように、各甲号証には、甲1発明の「ハンドル32」に対応する部位が「捻った」部分を有することについて、記載も示唆もされていない。
よって、掴線器が記載された甲第4号証ないし甲第6号証、甲第8号証、甲第9号証に接した当業者といえども、甲1発明の「ハンドル32」に「捻った」部分を有するように構成することは容易とは言えない。
なお、甲1発明と技術分野の関連性を有する甲第2号証及び甲第3号証に記載された「ストラップ」の「捻った」構成が周知・慣用技術であることを踏まえたとしても、上記(B)に記載したように該「ストラップ」は、甲1発明の「ハンドル32」と同様の機能を有するものではなく、かつ、該「捻った」構成が移動により他の部位との干渉を避けることを目的としたものでもないことから、甲1発明の「ハンドル32」を「捻った」ものとすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。

(C)次に、各甲号証に記載されたワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷を回避する構成に基づく容易想到性について検討する。
ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷を回避する構成については、甲第7号証ないし甲第9号証に記載されているところ、上記エで検討したように、甲第7号証及び甲第9号証に記載された「ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷」の原因及び回避する構成は、甲1発明とは異なり、また、第8号証に記載された「ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷」の原因は、甲1発明と関連するものの、そのための回避する構成は、甲1発明とは異なる。
よって、ワイヤー等の屈曲のクセ及び損傷を回避する構成が記載された甲第7号証ないし甲第9号証に接した当業者といえども、甲1発明の「ハンドル32」の端部を鉛直断面U形状とすることは容易であるとしても、「捻った」部分を有するように構成することは容易とはいえない。

(6)小括
以上、本件特許発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効理由1によっては、本件特許発明を無効とすることはできない。


2 無効理由2について
(1)本件明細書等に記載された事項
本件明細書及び図面には、下記の事項が記載されている。

ア「【背景技術】
【0002】
従来からテコを利用した掴線器は、長レバーとその端部にあるリング部が同一平面上にある掴線器が使用されている。(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら長レバーとリング部が同一平面上にある掴線器では、リング部の上部がケーブルに干渉してリング部中心をケーブル中心に接近させることが出来ない欠点があった。(図2b参照) その為、ケーブル中心とリング部中心との位置が大きくズレることになる。このズレの大きさが、ケーブルを緊線した際にケーブルを屈曲させることになる。
(図3参照)
この屈曲によるケーブル表面に生じる屈曲のクセ及び損傷等(図4参照)の不都合を解決することを課題とする。」

イ「【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、掴線器の長レバーのリング部を15°?45°の角度に捻ることにより、リング部の上部がケーブルに干渉することを避けてリング部中心をケーブル中心に接近させることが出来ることにより(図1参照)及び(図1b参照)、上記課題を解決するものである。この角度の範囲外では実用的に不適当である。
【発明の効果】
【0005】
本発明による掴線器は、部品数を増やす必要もなく、只、長レバーのリング部を捻るだけで容易に製作できる。また、ケーブル表面の損傷等(図4参照)を防止して、長期間設置され続けるケーブルの信頼性を向上させることが出来る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1aは、長レバーの端部にあるリング部を捻った掴線器の正面図であり、図1bは図1aにおけるA-A´線の断面図である。
【図2】図2aは、従来使われている長レバーと端部にあるリング部が同一平面上にある掴線器の正面図であり、図2bは図2aにおけるA-A´線の断面図である。」

ウ 図1(a)には、長レバーにおいて、捻り箇所が「4」として記載され、図2(a)には、長レバーがリング部とは反対の端部にある支軸を中心に回動しながら移動する構成が記載されている。

(2)本件特許発明の「長レバー及びケーブルの平面」について
上記アには、「長レバーとリング部が同一平面上にある掴線器では、リング部の上部がケーブルに干渉してリング部中心をケーブル中心に接近させることが出来ない欠点があった。」ことが記載されている。
また、図2(a)には、長レバーがリング部とは反対の端部にある支軸を中心に回動しながら移動する構成が記載されているので、長レバーは、該支軸に垂直な平面内を支軸を中心に回動しながら移動するものと認められる。
ここで、仮に、該支軸に垂直な平面内にケーブル自体が存在していなければ、「長レバーとリング部が同一平面上」にあったとしても、リング部の上部がケーブルに干渉することはないところ、本件明細書の従来の「掴線器」は、「リング部の上部がケーブルに干渉してリング部中心をケーブル中心に接近させることが出来ない」ものであるから、長レバーが回動する支軸に垂直な平面内に、ケーブル自体と「長レバーとリング部」が存在していると解される。
一方、本件特許発明は、「リング部」を「捻った」ものであるものの、上記イには、「本発明による掴線器は、部品数を増やす必要もなく、只、長レバーのリング部を捻るだけ」であることが記載されているので、捻られていない「長レバー」の部分は依然として前記「同一平面」上に存在するものであるから、本件特許発明の「長レバー」と「ケーブル」も依然として「長レバーが回動する支軸に垂直な平面内」に存在していると解される。
してみると、本件特許発明の「長レバー及びケーブルの平面」とは、「長レバーが回動する支軸に垂直な平面」であると解することができる。

(3)本件特許発明の「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」ことについて
上記(2)で検討したように、「長レバー及びケーブルの平面」とは、「長レバーが回動する支軸に垂直な平面」と解されるので、「長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」とは、「長レバーが回動する支軸に垂直な平面」に「対して15°?45°に捻った」ことであると解される。

(4)実施可能性
上記ウから、図1(a)に長レバーの捻り箇所4が図示されており、上記(2)及び(3)で検討したように、本件明細書の記載では、本件特許発明の「長レバー及びケーブルの平面」とは、「長レバーが回動する支軸に垂直な平面」であると解することができる。
してみると、本件特許発明の「長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」とは、本件図面の図1(a)において、長レバーの捻り箇所4の位置で、「長レバーが回動する支軸に垂直な平面」に対して「15°?45°に捻った」ことであると解されるので、当業者であれば、本件明細書の記載から、該「長レバーの後端に設けたリング部を、長レバー及びケーブルの平面に対して15°?45°に捻った」ものとすることを実施できるというべきである。
よって、本件明細書は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載していない、とはいえない。

(5)小括
以上、本件特許発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、無効理由2によっては、本件特許発明を無効にすることはできない。



第6 むすび

以上、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明に係る特許を無効とすることはできない。
また、他に本件特許発明に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-25 
結審通知日 2016-03-02 
審決日 2016-03-28 
出願番号 特願2012-12175(P2012-12175)
審決分類 P 1 113・ 536- Y (H02G)
P 1 113・ 121- Y (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 鈴木 匡明
飯田 清司
登録日 2014-01-31 
登録番号 特許第5465733号(P5465733)
発明の名称 掴線器  
代理人 扇谷 一  
代理人 竹中 俊夫  
代理人 岡田 全啓  

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