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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11C |
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管理番号 | 1327378 |
審判番号 | 不服2016-1916 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-08 |
確定日 | 2017-05-09 |
事件の表示 | 特願2011-187344「不揮発性メモリ装置およびその動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開、特開2012-181907、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年8月30日(パリ条約に基づく優先権主張日2011年2月28日,大韓民国)を出願日とする出願であって,平成27年2月16日付けで拒絶理由が通知され,平成27年5月19日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ,平成27年10月2日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成28年2月8日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正がされ,平成28年3月4日付けで審査官により特許法第164条第3項に基づく前置報告がされたものである。 第2 平成28年2月8日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は,補正に係り請求人が付与したものである。) 「【請求項1】 複数のノーマルセルと複数の補助セルを各々含み,ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域と, 前記第1ページ領域または第2ページ領域のプログラム対象セルのうち基準電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生した場合,1ビットパス信号を出力するビットパス検出部と, 第1プログラム開始電圧が適用された前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を調節し,前記第1ページ領域の第2プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧調節部と, 前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用された前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を調節し,前記第2ページ領域の第2プログラム動作に適用する第2プログラム開始電圧調節部と, を備え, 前記第1ページ領域の各々のノーマルセルおよび補助セルと,前記第2ページ領域の各々のノーマルセルおよび各々の補助セルがマルチレベルセルMLCであり, 前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第1プログラム動作が下位ビットプログラム動作であり, 前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第2プログラム動作が上位ビットプログラム動作であり, 前記第1プログラム動作と前記第2プログラム動作は同一ページ内で行われ, 前記第1プログラム開始電圧調節部は, 前記第1プログラム開始電圧が適用された前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存する第1プログラムパルス印加回数保存部と, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を設定して前記第1ページ領域に対する第2プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧設定部を備え, 前記第2プログラム開始電圧調節部は, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数を臨界値と比較して電圧選択信号を生成する電圧選択信号生成部と, 前記電圧選択信号に応じて前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用された前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存する第2プログラムパルス印加回数保存部と, 前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を設定して前記第2ページ領域に対する第2プログラム動作に適用する第2プログラム開始電圧設定部と, を備える不揮発性メモリ装置。 【請求項2】 前記第1ページ領域に対する第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数をカウントして前記第1プログラムパルス印加回数保存部に伝達し,前記第2ページ領域に対する第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数をカウントして前記第2プログラムパルス印加回数保存部に伝達するプログラムパルスカウント部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項3】 前記第1ページ領域および第2ページ領域の複数のノーマルセルに対応するノーマルページバッファリング部と, 前記第1ページ領域および第2ページ領域の複数の補助セルに対応する補助ページバッファリング部と, をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項4】 前記第1プログラムパルス印加回数保存部が, 前記プログラムパルスカウント部から伝達されるプログラムパルスの印加回数を前記補助ページバッファリング部にセッティングし,前記第1ページ領域に対する第1プログラム動作中に前記プログラムパルスカウント部から伝達されるプログラムパルスの印加回数が前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されるようにすることを特徴とする請求項3に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項5】 前記第2プログラムパルス印加回数保存部が, 前記プログラムパルスカウント部から伝達されるプログラムパルスの印加回数を前記補助ページバッファリング部にセッティングし,前記第2ページ領域に対する第1プログラム動作中に前記プログラムパルスカウント部から伝達されるプログラムパルスの印加回数が前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されるようにすることを特徴とする請求項4に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項6】 前記電圧選択信号生成部が, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードした後,リードされたプログラムパルスの印加回数が臨界値より大きい場合,前記電圧選択信号を活性化させて前記第2ページ領域に対する第1プログラム動作に前記第1プログラム開始電圧が適用されるようにし, リードされたプログラムパルスの印加回数が臨界値より小さい又は臨界値と同じ場合, 前記電圧選択信号を非活性化され前記第2ページ領域に対する第1プログラム動作に前記第2プログラム開始電圧が適用されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項7】 前記第1プログラム開始電圧設定部が, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードした後,リードされたプログラムパルスの印加回数にステップ電圧を乗算し,その値の分だけ前記第1プログラム開始電圧値を増加させて前記第1ページ領域に対する第2プログラム動作に適用することを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項8】 前記第1プログラム開始電圧設定部が, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードした後,リードされたプログラムパルスの印加回数が臨界値より大きい場合,前記リードされたプログラムパルス印加回数と臨界値の差異の分だけステップ電圧を乗算し,その値の分だけ前記第1プログラム開始電圧値を増加させて前記第1ページ領域に対する第2プログラム動作に適用されるようにし, 前記リードされたプログラムパルスの印加回数が臨界値より小さい又は臨界値と同じ場合,前記第1プログラム開始電圧がそのまま前記第1ページ領域に対する第2プログラム動作に適用されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項9】 前記第2プログラム開始電圧設定部が, 前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードした後,リードされたプログラムパルスの印加回数にステップ電圧を乗算し,その値の分だけ前記第2プログラム開始電圧値を増加させて前記第2ページ領域に対する第2プログラム動作に適用することを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項10】 前記第2プログラム開始電圧設定部が, 前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードした後,リードされたプログラムパルスの印加回数が臨界値より大きい場合,前記リードされたプログラムパルス印加回数と臨界値の差異の分だけステップ電圧を乗算し,その値の分だけ前記第2プログラム開始電圧値を増加させて前記第2ページ領域に対する第2プログラム動作に適用されるようにして, 前記リードされたプログラムパルスの印加回数が臨界値より小さい又は臨界値と同じ場合,前記第2プログラム開始電圧がそのまま前記第2ページ領域に対する第2プログラム動作に適用されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。 【請求項11】 第1プログラム開始電圧を適用して複数のノーマルセルと複数の補助セルを含む第1ページ領域のプログラム動作を行う第1プログラム動作ステップと, 前記第1プログラム動作ステップで前記第1ページ領域のプログラム対象セルのうち検証電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生する前まで前記第1ページ領域に印加されるプログラムパルスの回数を前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存する第1保存ステップと, 前記第1プログラム動作ステップで前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を設定するステップと, 前記第1プログラム動作ステップ以後に前記設定するステップで設定された前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧を電圧選択信号に応じて選択的に適用し,複数のノーマルセルと複数の補助セルを含み前記第1ページ領域とストリングを共有する第2ページ領域のプログラム動作を行う第2プログラム動作ステップと, 前記第2プログラム動作ステップで前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記電圧選択信号の値を決定するステップと, 前記第1ページ領域の各々のノーマルセル,各々の補助セル,第2ページ領域の各々のノーマルセル,および各々の補助セルがマルチレベルセルMLCである時, 前記第2プログラム動作ステップで前記第2ページ領域のプログラム対象セルのうち検証電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生する前まで前記第2ページ領域に印加されるプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存する第2保存ステップと, 前記第2プログラム動作ステップで前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を設定するステップと, を含み, 前記第1ページ領域のプログラム動作は前記第1ページ領域の第1および第2プログラム動作に分けられて前記第2ページ領域のプログラム動作は前記第2ページ領域の第1および第2プログラム動作に分けられ, 前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第1プログラム動作が下位ビットプログラム動作であり, 前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第2プログラム動作が上位ビットプログラム動作であり, 前記第1プログラム動作と前記第2プログラム動作は同一ページ内で行われることを特徴とする不揮発性メモリ装置の動作方法。 【請求項12】 前記第1保存ステップが, 前記第1プログラム動作ステップで前記第1ページ領域のプログラム対象セルのうち検証電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生する前まで前記第1ページ領域に印加されるプログラムパルスの回数をカウントするステップと, 前記カウントするステップによって決定されたプログラムパルスの印加回数を前記第1ページ領域の複数の補助セルに対応する補助ページバッファにセッティングするステップと, 前記セッティングするステップ以後,前記第1プログラム動作ステップが継続して行われるようにして前記補助ページバッファにセッティングされたプログラムパルスの印加回数が前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されるようにするステップと, を含むことを特徴とする請求項11に記載の不揮発性メモリ装置の動作方法。 【請求項13】 前記設定するステップが, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードするステップと, 前記リードするステップによって出力されるプログラムパルスの印加回数にステップ電圧を乗算し,その値の分だけ前記第1プログラム開始電圧の値を増加させるステップと, を含むことを特徴とする請求項11に記載の不揮発性メモリ装置の動作方法。 【請求項14】 前記設定するステップが, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードするステップと, 前記リードするステップによって出力されるプログラムパルスの印加回数が臨界値より大きい場合,前記リードするステップによって出力されるプログラムパルスの印加回数と臨界値の差異にステップ電圧を乗算し,その値の分だけ前記第1プログラム開始電圧を増加させるステップと, 前記リードするステップによって出力されるプログラムパルスの印加回数が臨界値より小さい又は臨界値と同じ場合,前記第1プログラム開始電圧の値をそのまま維持するステップと, を含むことを特徴とする請求項11に記載の不揮発性メモリ装置の動作方法。 【請求項15】 前記決定するステップが, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数をリードするステップと, 前記リードするステップによって出力されるプログラムパルスの印加回数が臨界値より大きい場合,前記電圧選択信号を活性化させて前記第2プログラム動作ステップに前記設定するステップで設定された前記第1プログラム開始電圧が適用されるようにするステップと, 前記リードするステップによって出力されるプログラムパルスの印加回数が臨界値より小さい又は臨界値と同じ場合,前記電圧選択信号を非活性化され前記第2プログラム動作ステップに前記第2プログラム開始電圧が適用されるようにするステップと, を含むことを特徴とする請求項11に記載の不揮発性メモリ装置の動作方法。 【請求項16】 前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記第1保存ステップと前記第1プログラム開始電圧を設定するステップが行われ,行われた結果,設定された前記第1プログラム開始電圧が前記第1ページ領域の第2プログラム動作に適用され, 前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程で前記第2保存ステップと前記第2プログラム開始電圧を設定するステップが行われ,行われた結果,設定された前記第2プログラム開始電圧が前記第2ページ領域の第2プログラム動作に適用されることを特徴とする請求項15に記載の不揮発性メモリ装置の動作方法。」 (1)補正事項 本件補正により補正された請求項1?10は,平成27年5月19日付け手続補正により補正された請求項(以下,「補正前の請求項」という。)15?24に対応し,本件補正により補正された請求項11?16は補正前の請求項33?38に対応する。 請求項1の補正は,補正前の請求項13を引用する請求項14を更に引用する請求項15において,当該請求項15の記載を引用を用いない形式で記載したものである。 補正前の請求項15?24,33?38以外の他の請求項は削除された。 2.補正の適否 (1)特許法第17条の2第3,4項について 前記補正事項は,出願当初の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」と呼ぶ。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 また,特許法第17条の2第4項に違反するところはない。 (2)補正の目的について 本件補正は,補正前の請求項1?14,25?32を削除するものであるから,請求項の削除を目的としたものである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に適合する。 3.むすび 本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は前記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから,本願の請求項1?16に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。 第4 原査定の理由の概要 原査定の拒絶の概要は次のとおりである。 「この出願については,平成27年 2月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって,拒絶をすべきものです。 なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項1-38・引用文献等1-4(請求項1,25,33について) 引用文献1(特に[0070]-[0080],第12,13,16図等)には,ページ領域のプログラム対象セルのうち基準電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生した場合,1ビットパス信号を出力するものであって,ページ領域に対する第1プログラム動作過程で1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を保存するプログラムパルス印加回数保存部(プログラムパルスの印加回数格納部1614)と,保存されたプログラムパルスの印加回数に基づいてページ領域の第2のプログラム動作に対するプログラム開始電圧を設定するものが記載されている。 引用文献2(特に[0008]-[0032],第1,第3図等)や,引用文献3(特に[0011]-[0018],第1,2図等)に記載されているように,プログラム電圧調整に用いる情報をページ内の補助セル(引用文献2においては補正コードが格納されている領域,引用文献3においては書き込み電圧記憶領域1a)に格納するものは周知である。 引用文献4([0065]-[0078],第6図),特に[0066]段落には,「本実施例は一つの物理的頁(aphysicalpage)内に複数の論理頁(logicalpages)がプログラムされるマルチレベルセルプログラム方法に関するものである」と記載があり,当該記載は”マルチレベルセルにおいては,一行のメモリセル(物理的頁に対応)に対し,上位ページや下位ページ(論理的頁に対応)が配置される”という技術常識を勘案すると,マルチレベルセルの下位(上位)ビットプログラムにおいて調整したプログラム開始電圧に基づいて,同一ページの上位(下位)ビットプログラムを行うものが記載されていると認められる。 本願発明と引用文献1のものとを対比すると,本願発明は,プログラムパルスの回数を補助セルに格納するのに対し,引用文献1においては,プログラムパルスの回数はコントローラに格納されるものである点(以下「相違点1」とする),及び本願発明は,同一メモリセルの下位プログラムの結果に基づき,上位プログラムのプログラムパルス開始電圧を設定するものであるのに対し,引用文献1のものはそのようなものではない点(以下「相違点2」とする)で相違する。 ここで,上記相違点1について検討する。 引用文献1においては,プログラムパルスの回数はコントローラに格納されるものであって,補助セルに格納するものではないが,上記引用文献2や引用文献3に例示するように,プログラム電圧調整に用いる情報を補助セルに格納するものは周知技術であるから,上記周知技術を引用文献1のものに適用することは,当業者には容易に想到し得たことである。 上記相違点2について検討する。 引用文献1(【0073】)のものは,同一ブロック内に含まれたページのプログラム速度が大体同じであるという特性に基づき,隣接するページのプログラム電圧の調整を行うものであるが,これに代えて,引用文献4に記載されたもののように,同一メモリセル(当然,特性は似る)における下位ビットプログラムにおいて調整したプログラム開始電圧に基づいて,同一ページの上位ビットプログラムを行うものとすることは,当業者には容易に想到し得たことである。 なお,出願人は意見書において,特に争点となる引用文献4のものは,直前ページのプログラム動作の開始電圧に基づいて,次のページのプログラム開始電圧を再設定するもの」であって,マルチレベルセルの上位・下位ページプログラムの関係について記載されていない旨を主張する。 しかし,上記引用文献4についての認定のとおり,引用文献4には,「本実施例は一つの物理的頁(aphysicalpage)内に複数の論理頁(logicalpages)がプログラムされるマルチレベルセルプログラム方法に関するものである」との記載があり,さらに”マルチレベルセルにおいては,一行のメモリセル(物理的頁に対応)に対し,上位ページや下位ページ(論理的頁に対応)が配置される”という技術常識を勘案すると,引用文献4にはマルチレベルセルの下位(上位)ビットプログラムにおいて調整したプログラム開始電圧に基づいて,同一ページの上位(下位)ビットプログラムを行うものが記載されていると認められる。 したがって,出願人の意見は採用できない。 したがって,請求項1,25,33に係る発明は,引用文献1及び引用文献4及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (請求項2について) 引用文献1のものも,プログラムパルスの回数をカウントするものである。 (請求項3,4,17,18,19,26,34について) ノーマルセル,補助セルに対してページバッファを設けることは周知である。 (請求項5,9,21,23,27,31,35について) 引用文献1(【0073】や【0076】)のものも,プログラムパルスの印加回数にステップ電圧を乗算したものをプログラム開始電圧値としている。 (請求項6,10,12,15,16,20,22,24,28,32,36,37,38について) 引用文献1(【0076】,【0077】)にも,臨界値の概念が記載されている。 (請求項7,8,11,29,30について) 引用文献1のものは,同一ブロック内に含まれたページのプログラム速度が大体同じであるという特性に基づいて,プログラム電圧の調整を行なうものであるから,同様に同一ブロック内に含まれる偶数・奇数番目のセルでワード線を共有する周知の系のプログラムに用いることも格別ではない。また,引用文献1のものも,プログラムパルスの回数をカウントするものである。 さらに,ノーマルセル,補助セルに対してページバッファを設けることは周知である。 (請求項13,14,33について) 引用文献1のものも,第1,第2ページでストリングを共有するものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2010-182402号公報 2.特開2004-158053号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2001-084788号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2009-283117号公報 」 第5 当審判断 1.刊行物の記載事項 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-182402号公報)には,次の事項が記載されている。 ア.「【0004】 前記不揮発性メモリセルのプログラム動作の時にはプログラム対象セルが検証電圧以上にプログラムされたかどうかを確認する検証動作を遂行するようになる。シングルレベルセルプログラム方式では,互いに異なる二つの状態のセルのみが存在するので,前記検証電圧は一つであるが,マルチレベルセルプログラム方式では多くの状態のセルが一つのページに存在するようになるので,前記検証電圧も複数になる。例えば,2ビットマルチレベルセルプログラム方式で上位ビットMSBプログラム動作を遂行する場合には,三種類の検証電圧を基準として検証動作を遂行するようになる。 …(中略)… 【0007】 前記目的を達成するための本発明の不揮発性メモリ装置は,単一ページに含まれたプログラム対象セルのうち,基準電圧以上にプログラムされたセルが発生する場合,1ビットパス信号を出力するページバッファ部と,プログラムパルスの印加回数をカウンティングするカウンターと,第1ページに対するプログラム動作のうち,前記1ビットパス信号伝達の時まで印加されたプログラムパルスの個数を格納するプログラムパルスの印加回数格納部と,前記プログラムパルスの印加回数を基礎にして第2ページに対するプログラム開始電圧を設定するプログラム開始電圧設定部とを含むことを特徴とする。 【0008】 また,前記目的を達成するための本発明の不揮発性メモリ装置の動作方法は,プログラム/消去動作回数増加によるプログラム速度増加の特性を補償するダミープログラムパルス印加方式において,第1ページに対してプログラム動作を遂行する段階と,検証電圧以上にプログラムされたセルが発生する前までプログラムパルスの印加回数をカウンティングし,前記プログラム動作及び検証動作を繰り返し遂行する段階と,前記検証電圧以上にプログラムされたセルが発生すればブラインド検証方法によってプログラム,及び検証動作を遂行して前記第1ページに対するプログラム動作を完了する段階と,前記検証電圧 以上にプログラムされたセルが発生された時点までのプログラムパルスの印加回数に応じて第2ページに対するプログラム開始電圧を設定する段階と,前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する段階とを含むことを特徴とする。 【発明の効果】 【0009】 以上のように本発明によれば,ダミープログラムパルス印加方式のプログラム方法とブラインド検証方法を適用するプログラム方法において,検証動作に必要とされる時間を最小化することができるという効果がある。ずなわち,第1ページに対するプログラム結果を基礎として第2ページに対するプログラム動作の時,最適のプログラム開始電圧を設定することができるいう効果がある。」 イ.「【0070】 図12は,本発明のまた他の実施例による不揮発性メモリ装置の動作方法を示した順序図で,図13は本発明のまた他の実施例による不揮発性メモリ装置の動作方法の概念を示した図面である。本実施例では図9または図10の実施例によるプログラム方法を使用するが,各ページ別プログラム開始電圧を設定することにおいて特徴的な構成を含んでいる。 【0071】 まず,第1ページに対してプログラム動作を完了する段階(1210)。前に説明した図9のプログラム方法または図10のプログラム方法を使用して第1ページに対してプログラム動作を完了する。すなわち,前に説明したように1ビットパス時点を基準としてブラインド検証方法を適用してプログラム動作を完了する。 【0072】 次に,前記プログラム動作の時第1検証電圧以上にプログラムされたセルが発生するまで印加されたプログラムパルス回数Aを算出する(段階1220)。すなわち,1ビットパスパスが発生する時までのプログラムパルス印加の回数Aを算出する。図13の場合,第1ページに対するプログラム動作の時,1ビットパス発生時点まで総5個のプログラムパルスが印加されたことが分かる。前記プログラムパルスの印加回数Aは,図9のプログラム方法の段階924または図10のプログラム方法の段階1024を通じて算出される。 【0073】 次に,前記算出されたプログラムパルスの印加回数に応じて第2ページに対するプログラム開始電圧を設定する(段階1230)。 【0074】 本発明では前記算出されたプログラムパルスの印加回数に応じて第2ページに対するプログラム開始電圧を設定しようとする。不揮発性メモリ装置ではページ単位でプログラム動作が遂行され,ブロック単位で消去動作が遂行される。したがって,同一ブロック内に含まれた各ページは同じプログラム/消去動作回数を持つようになり,プログラム/消去動作回数によるプログラム速度の特性は大体同じである。したがって,第1ページに対して設定したプログラム開始電圧を同一ブロックに含まれた隣接したページである第2ページに対しても印加しようとする。 【0075】 一方,1ビットパス発生の時のプログラムパルスの印加回数は該ページのプログラム速度の特性を意味する。1ビットパス発生の時のプログラムパルスの印加回数がすくなければ,プログラム速度の特性が相対的に速いことを意味し,前記プログラムパルスの印加回数が大きければプログラム速度の特性が相対的に遅いということを意味する。本発明のようにプログラム/消去動作の回数を考慮してプログラム開始電圧を低く設定してプログラム動作を遂行すれば,第1ページに対するプログラム動作の時1ビットパス発生時のプログラムパルスの印加回数が多くなる。以後,第2ページに対するプログラム動作の時にはこのような特性を考慮して第2ページに対してはプログラム開始電圧を増加させて印加する。 【0076】 前記臨界値Nは好ましくは2に設定する。前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより大きい場合には,前記プログラムパルスの印加回数Aと臨界値Nの差ほどステップ電圧Vstepを掛けた値を第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値に加えて第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定する。すなわち,次の数式1, (数式1) Vstart_2=Vstart_1+(A-N)×Vstep によってプログラム開始電圧を設定する。 【0077】 前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより小さい場合には,第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値を第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定する。すなわち,次の数式2, (数式2) Vstart_2=Vstart_1 によってプログラム開始電圧を設定する。 【0078】 図13を例をあげて説明すると,第1ページに対するプログラム動作で1ビットパス発 生時点までのプログラムパルスの印加回数は5であり,これは臨界値2より3ほど大きいので,第1ページに対するプログラム開始電圧に3倍のステップ電圧を加えて第2ページに対するプログラム開始電圧の設定する。 【0079】 次に,前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する(段階1240)。 【0080】 このように第1ページのプログラム結果を根拠として第2ページのプログラム開始電圧を可変的に設定するので,ダミープログラムパルスの印加に必要とされる時間を短縮させることができる。すなわち,図13の場合のように第2ページに対するプログラム動作の時三度のダミープログラムのパルス印加及び検証動作に所要される時間を減少させることができる。」 (2)引用文献1に記載された発明 (ア)前記ア.の「マルチレベルセルプログラム方式・・・不揮発性メモリ装置は,単一ページに含まれたプログラム対象セルのうち,基準電圧以上にプログラムされたセルが発生する場合,1ビットパス信号を出力するページバッファ部と,プログラムパルスの印加回数をカウンティングするカウンターと,第1ページに対するプログラム動作のうち,前記1ビットパス信号伝達の時まで印加されたプログラムパルスの個数を格納するプログラムパルスの印加回数格納部と,前記プログラムパルスの印加回数を基礎にして第2ページに対するプログラム開始電圧を設定するプログラム開始電圧設定部とを含む」との記載から「単一ページに含まれたプログラム対象セルのうち,基準電圧以上にプログラムされたセルが発生する場合,1ビットパス信号を出力するページバッファ部と,プログラムパルスの印加回数をカウンティングするカウンターと,第1ページに対するプログラム動作のうち,前記1ビットパス信号伝達の時まで印加されたプログラムパルスの個数を格納するプログラムパルスの印加回数格納部と,前記プログラムパルスの印加回数を基礎にして第2ページに対するプログラム開始電圧を設定するプログラム開始電圧設定部とを含むマルチレベルセルプログラム方式の不揮発性メモリ装置」をよみとることができる。 (イ)前記イ.の「第1ページに対してプログラム動作を完了する段階・・・前記プログラム動作の時第1検証電圧以上にプログラムされたセルが発生するまで印加されたプログラムパルス回数Aを算出する」との記載から「第1ページに対しての前記プログラム動作の時第1検証電圧以上にプログラムされたセルが発生するまで印加されたプログラムパルス回数Aを算出する」ことをよみとることができる。 (ウ)前記イ.の「前記算出されたプログラムパルスの印加回数に応じて第2ページに対するプログラム開始電圧を設定する・・・前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより大きい場合には,前記プログラムパルスの印加回数Aと臨界値Nの差ほどステップ電圧Vstepを掛けた値を第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値に加えて第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定する・・・前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより小さい場合には,第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値を第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定する」との記載から「前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより大きい場合には,前記プログラムパルスの印加回数Aと臨界値Nの差ほどステップ電圧Vstepを掛けた値を第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値に加えて第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定し,前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより小さい場合には,第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値を第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定する」ことをよみとることができる。 (エ)前記イ.の「前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する」との記載から「前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する」 ことをよみとることができる。 前記(ア)?(エ)によれば,引用文献1には前記ア.に記載された,第1ページに対するプログラム結果を基礎として第2ページに対するプログラム動作の時,最適のプログラム開始電圧を設定することができるいう効果がある次の発明(以下,「引用発明」という。)が示されている。 「単一ページに含まれたプログラム対象セルのうち,基準電圧以上にプログラムされたセルが発生する場合,1ビットパス信号を出力するページバッファ部と,プログラムパルスの印加回数をカウンティングするカウンターと,第1ページに対するプログラム動作のうち,前記1ビットパス信号伝達の時まで印加されたプログラムパルスの個数を格納するプログラムパルスの印加回数格納部と,前記プログラムパルスの印加回数を基礎にして第2ページに対するプログラム開始電圧を設定するプログラム開始電圧設定部とを含み, 第1ページに対しての前記プログラム動作の時第1検証電圧以上にプログラムされたセルが発生するまで印加されたプログラムパルス回数Aを算出し, 前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより大きい場合には,前記プログラムパルスの印加回数Aと臨界値Nの差ほどステップ電圧Vstepを掛けた値を第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値に加えて第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定し,前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより小さい場合には,第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値を第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定し, 前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する マルチレベルセルプログラム方式の不揮発性メモリ装置。」 (3)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-158053号公報)には,次の事項が記載されている。 ウ.「【0004】 【特許文献1】 特開2000-123584 【発明が解決しようとする課題】 上記の構成では,製品毎の最適なプログラム電圧のバラツキを補正することは可能であるが,1つの製品内でのバラツキを補正することは出来ない。現実には不揮発性半導体記憶装置の1つの製品においても,メモリセルの位置により酸化膜の厚さ等に若干の差があり,ワード線毎に最適なプログラム電圧は異なることになる。しかし上記のように製品毎にしか補正が出来ない構成では,最も条件が悪いワード線に対して確実にプログラム可能なプログラム電圧を採用するしかなく,プログラム動作の効率が悪いという欠点がある。 【0005】 以上を鑑みて,本発明は,ワード線毎に最適なプログラム電圧を設定可能な不揮発性半導体記憶装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 本発明による不揮発性半導体記憶装置は,縦横に配列されるメモリセルと,該メモリセルの各列に接続される複数のワード線と,該複数のワード線の選択されたワード線に接続される全メモリセルのうち一部のメモリセルから読み出したデータに基づいて該選択されたワード線に対するプログラム電圧を決定する制御回路を含むことを特徴とする。 …(中略)… 【0015】 図2の例においては,プログラム電圧補正コード格納用のメモリセルに対応するウェル24-1及び24-2を,通常の読み書きデータ格納用のメモリセルに対応するウェル23と分離している。これは,出荷時にテストされ書き込まれたプログラム電圧の最適な補正コードが,不揮発性半導体記憶装置をユーザが使用するときに,消去或いは再書込みされないようにするためである。プログラム電圧補正コード格納用のメモリセルに対する補正コードの書き込み又は消去は,製造業者が利用可能なテストモードにおいてのみ実行することができる。」 前記ウ.の「ワード線に接続される全メモリセルのうち一部のメモリセルから読み出したデータに基づいて該選択されたワード線に対するプログラム電圧を決定する・・・プログラム電圧補正コード格納用のメモリセル・・・通常の読み書きデータ格納用のメモリセル・・・と分離している・・・出荷時にテストされ書き込まれたプログラム電圧の最適な補正コードが,不揮発性半導体記憶装置をユーザが使用するときに,消去或いは再書込みされないようにする」との記載から,引用文献2には,ワード線に接続される全メモリセルのうち一部のメモリセルから読み出したデータに基づいて該選択されたワード線に対するプログラム電圧を決定するためのプログラム電圧補正コード格納用のメモリセルを通常の読み書きデータ格納用のメモリセルと分離し,出荷時にテストされ書き込まれたプログラム電圧の最適な補正コードが,不揮発性半導体記憶装置をユーザが使用するときに,消去或いは再書込みされないようにする技術が示されている。 (4)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2001-84788号公報)には,次の事項が記載されている。 エ.「【0010】またこの発明において,ブロックに応じて最適設定される書き込み電圧をEEPROMチップ内部に保持するために,例えば,メモリセルアレイの一部の領域を,ウェハテストの結果に基づいて各ブロック毎の書き込み用電圧を書き込んで記憶する書き込み用電圧記憶領域として用いる。或いは,ウェハテストの結果に基づいて各ブロック毎の書き込み用電圧を書き込んで記憶するフューズ回路を設けてもよい。」 前記エ.の記載から,引用文献3には,メモリセルアレイの一部の領域を,ウェハテストの結果に基づいて各ブロック毎の書き込み用電圧を書き込んで記憶する書き込み用電圧記憶領域として用いる技術が示されている。 (5)引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2009-283117号公報)には,次の事項が記載されている。 オ.「【0005】 このような不揮発性メモリ装置のプログラム動作において各セルの特性,プログラム/消去回数の差によりプログラム速度が変わる現象が発生する。一方,不揮発性メモリ装置のプログラム動作は,ISPPプログラム方法により行われるところ,各セルのプログラム速度を考慮してプログラム開始電圧を設定する必要がある。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 前述した必要性により本発明が解決しようとする課題は,各セルのプログラム速度に応じてプログラム開始電圧を異なって設定する不揮発性メモリ装置のプログラム方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 前述した課題を解決するための本発明の不揮発性メモリ装置のプログラム方法は,第1頁に対してプログラム動作を行う段階と,前記第1頁に対するプログラム動作が完了するまでプログラムパルス印加回数をカウントする段階と,前記カウントされたプログラムパルス印加回数としきい値を比較してプログラム開始電圧を再設定する段階と,第2頁に対して前記再設定されたプログラム開始電圧に応じてプログラム動作を行う段階を含むことを特徴とする。」 カ.「【0065】 図6は,本発明の他の実施例による不揮発性メモリ装置のプログラム方法を示した順序図である。 【0066】 本実施例は一つの物理的頁(a physical page)内に複数の論理頁(logical pages)がプログラムされるマルチレベルセルプログラム方法に関するものである。 【0067】 まず,第nの論理頁データが特定の物理頁に入力される(段階610)。 【0068】 プログラム動作は,通常,頁単位で行われるところ,特定の物理頁にプログラムされる第nの論理頁データが頁バッファに入力され,そのデータにより感知ノードSOに印加される電圧レベルが異になる。一方,プログラムパルス印加回数値mが1に初期化される。 【0069】 次に,プログラム開始電圧に応じてプログラム動作を行う(段階620)。ISPPプログラム動作によりプログラム電圧が印加される。 【0070】 次に,プログラム対象セルが基準電圧以上にプログラムされたかどうかを確認するプログラム検証動作を行う(段階630)。上記検証動作は,通常の不揮発性メモリ装置の検証動作により行われる。 【0071】 上記検証結果,プログラム対象セルが全て基準電圧以上にプログラムが完了した場合には,次の段階650を行う(段階640)。しかし,基準電圧よりもしきい値電圧が低いプログラム対象セルがある場合には,ステップ電圧だけプログラム電圧を増加させてプログラム動作を反復して行う(段階640,642,644)。この時,プログラム動作が繰り返されるため,プログラムパルス印加回数が1だけ増加する。 【0072】 上記段階640においてプログラム対象セルが全て基準電圧以上にプログラムが完了した場合には,プログラムパルス印加回数によりプログラム開始電圧を再設定する(段階650)。 【0073】 プログラムが完了した状態のプログラムパルス印加回数がしきい値よりも大きい場合には,プログラム速度が低い状態であるため,プログラム開始電圧を増加させる。望ましくは,プログラムパルス印加回数としきい値に差が出る回数だけステップ電圧を増加させる。例えば,プログラムパルス印加回数が13回であり,しきい値が10回の場合には,3×ステップ電圧だけプログラム開始電圧を増加させる。 【0074】 プログラムが完了した状態のプログラムパルス印加回数がしきい値よりも小さい場合には,プログラム速度が高い状態であるため,プログラム開始電圧を減少させる。望ましくは,プログラムパルス印加回数としきい値に差が出る回数だけステップ電圧を減少させる。例えば,プログラムパルス印加回数が7回であり,しきい値が10回の場合には,3×ステップ電圧だけプログラム開始電圧を減少させる。 【0075】 プログラムが完了した状態のプログラムパルス印加回数がしきい値と等しい場合には,プログラム開始電圧を変更させずに維持させる。 【0076】 次に,プログラムする論理頁がさらにある場合には,上記再設定されたプログラム開始電圧に応じてプログラム動作を反復して行う(段階660,662,610,620)。 【0077】 先の段階650でプログラム開始電圧が再設定された状態であるため,該当電圧に応じてプログラム動作が行われる。 【0078】 このように各論理頁別プログラム電圧パルスの印加回数をカウントし,それにより,プログラム開始電圧を再設定し,上記再設定されたプログラム開始電圧に応じて次の頁のプログラム動作を行う。即ち,第1の物理頁に対して第1の論理頁プログラム動作を行い,該第1の論理頁に対するプログラム動作が完了するまでプログラムパルス印加回数をカウントし,該カウントされたプログラムパルス印加回数と,しきい値とを比較してプログラム開始電圧を再設定し,第1の物理頁に対して再設定されたプログラム開始電圧に応じて第2の論理頁プログラム動作を行う。」 キ.「 」 (6)引用文献4に記載された技術 前記カ.の「一つの物理的頁(a physical page)内に複数の論理頁(logical pages)がプログラムされるマルチレベルセルプログラム方法・・・各論理頁別プログラム電圧パルスの印加回数をカウントし,それにより,プログラム開始電圧を再設定し,上記再設定されたプログラム開始電圧に応じて次の頁のプログラム動作を行う。即ち,第1の物理頁に対して第1の論理頁プログラム動作を行い,該第1の論理頁に対するプログラム動作が完了するまでプログラムパルス印加回数をカウントし,該カウントされたプログラムパルス印加回数と,しきい値とを比較してプログラム開始電圧を再設定し,第1の物理頁に対して再設定されたプログラム開始電圧に応じて第2の論理頁プログラム動作を行う」との記載,および,前記キ.の図6を参酌すると,前記第1の論理頁,第2の論理頁は逐次プラス1される第n-1の論理頁,第nの論理頁といえる点とから,引用文献4には,前記オ.に記載された「各セルのプログラム速度に応じてプログラム開始電圧を異なって設定する不揮発性メモリ装置のプログラム方法を提供する」ことを課題とした次の発明(以下,「引用文献4発明」という。)が示されている。 「一つの物理的頁内に複数の論理頁がプログラムされるマルチレベルセルプログラム方法において,各論理頁別プログラム電圧パルスの印加回数をカウントし,それにより,プログラム開始電圧を再設定し,上記再設定されたプログラム開始電圧に応じて次の頁のプログラム動作,即ち,第1の物理頁に対して第1の論理頁プログラム動作を行い,該第1の論理頁に対するプログラム動作が完了するまでプログラムパルス印加回数をカウントし,該カウントされたプログラムパルス印加回数と,しきい値とを比較してプログラム開始電圧を再設定し,第1の物理頁に対して再設定されたプログラム開始電圧に応じて第2の論理頁プログラム動作を行い,以下同様にして,第n頁までの複数の論理頁プログラム動作を行う方法。」 また,前記キ.の図3には論理頁の記載がないことから,複数の物理頁に係るプログラム方法に係るものであり,この複数の物理頁に係るプログラム方法と図6の複数の論理頁に係るプログラム方法とは,図3と図6とが同様のフローであることから,別の独立したプログラム方法であるといえる(図3が複数の物理頁に係るプログラム方法,図6が複数の論理頁に係るプログラム方法)。 2.対比 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。)と引用発明とを対比する。 A.引用発明の「単一ページに含まれたプログラム対象セル」,「第1ページ」「第2ページ」は,セルがワードラインとビットラインとに接続されセル間でストリングを共有する接続を有することは技術常識であり,してみれば,引用発明の「複数のノーマルセルと複数の補助セルを各々含み,ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域」と補正発明1の「複数のノーマルセルと複数の補助セルを各々含み,ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域」とは「複数のノーマルセルを各々含み,ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域」を備える点で共通し,補正発明1が「複数の補助セル」を含む点で相違する。この「複数の補助セル」に基づく相違点については,以下の対比において相違点として同様に言及したものとする。 B.引用発明の「基準電圧以上にプログラムされたセルが発生する場合,1ビットパス信号を出力するページバッファ部」は,当該1ビットパス信号を出力することが「第1ページに対するプログラム動作」においても「第2ページに対してプログラム動作を遂行する」場合においても出力されることは自明である点をふまえれば,引用発明の前記事項と補正発明1の「前記第1ページ領域または第2ページ領域のプログラム対象セルのうち基準電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生した場合,1ビットパス信号を出力するビットパス検出部」とに実質的な差異はない。 C.引用発明の「第1ページに対するプログラム動作」「第2ページに対してプログラム動作を遂行」は,それぞれ補正発明1の「第1ページ領域の第1プログラム動作」「第2ページ領域の第1プログラム動作」に対応付けることができる。「第1ページに対するプログラム動作のうち,前記1ビットパス信号伝達の時まで印加されたプログラムパルスの個数を格納するプログラムパルスの印加回数格納部」「プログラム開始電圧設定部」は「臨界値Nより大きい場合」等を考慮して「第1ページに対するプログラム開始電圧」を調節し「第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定し,前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する」ことから,補正発明1とは「第1プログラム開始電圧が適用された前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を調節し,プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧調節部」を備える点で共通する。 D.引用発明の「プログラムパルスの印加回数Aと臨界値Nの差ほどステップ電圧Vstepを掛けた値を第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値に加えて第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定し,前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより小さい場合には,第1ページに対するプログラム開始電圧Vstart_1値を第2ページに対するプログラム開始電圧Vstart_2に設定し,前記設定されたプログラム開始電圧に応じて第2ページに対してプログラム動作を遂行する」ことは補正発明1の「第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用された前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程」に相当する。 E.引用発明の「第1ページ」「第2ページ」はそれぞれ「単一ページに含まれたプログラム対象セル」を有し補正発明1の「第1ページ領域の各々のノーマルセル」「第2ページ領域の各々のノーマルセル」に相当し,引用発明は「マルチレベルセル」プログラム方式に係ることから補正発明1の「マルチレベルセルMLC」に相当する。してみれば,引用発明と補正発明1とは「前記第1ページ領域の各々のノーマルセルと,前記第2ページ領域の各々のノーマルセルがマルチレベルセルMLCであ」る点で共通する。 F.前記C.で言及したように,引用発明の「プログラム開始電圧設定部」「印加回数格納部」は補正発明1の「第1プログラム開始電圧調節部」「第1プログラムパルス印加回数保存部」に相当する。してみれば,引用発明の「第1ページに対するプログラム動作のうち,前記1ビットパス信号伝達の時まで印加されたプログラムパルスの個数を格納するプログラムパルスの印加回数格納部」と補正発明1とは「前記第1プログラム開始電圧調節部は, 前記第1プログラム開始電圧が適用された前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を保存する第1プログラムパルス印加回数保存部」を備える点で共通する。 G.前記D.で言及した「プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより大きい場合」と「前記プログラムパルスの印加回数Aが臨界値Nより小さい場合」とで選択的にいずれかの「プログラム開始電圧Vstart_2に設定」することは補正発明1の「保存されたプログラムパルスの印加回数を臨界値と比較して電圧選択信号を生成する電圧選択信号生成部」,および「前記電圧選択信号に応じて前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用され」ることに相当する。 前記A.?G.の対比によれば,補正発明1と引用発明とは次の点で一致し,そして相違する。 [一致点] 複数のノーマルセルとを各々含み,ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域と, 前記第1ページ領域または第2ページ領域のプログラム対象セルのうち基準電圧より大きい電圧でプログラムされたセルが発生した場合,1ビットパス信号を出力するビットパス検出部と, 第1プログラム開始電圧が適用された前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を調節し,プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧調節部と, 前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用された前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程と, を備え, 前記第1ページ領域の各々のノーマルセルと,前記第2ページ領域の各々のノーマルセルがマルチレベルセルMLCであり, 前記第1プログラム開始電圧調節部は, 前記第1プログラム開始電圧が適用された前記第1ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を保存する第1プログラムパルス印加回数保存部と, 保存されたプログラムパルスの印加回数を臨界値と比較して電圧選択信号を生成する電圧選択信号生成部と, 前記電圧選択信号に応じて前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用されたプログラムパルス印加回数保存部と, を備える不揮発性メモリ装置。 〈相違点1〉 ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域が,補正発明1は「複数の補助セル」を各々含むのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。 〈相違点2〉 プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧調節部に関し,補正発明1は,プログラムパルスの回数を「前記第1ページ領域の複数の補助セル」に保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を調節し,「前記第1ページ領域の第2」プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧調節部であるのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。 〈相違点3〉 第2ページ領域の第1プログラム動作過程に関し,補正発明1は「前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を調節し,前記第2ページ領域の第2プログラム動作に適用する第2プログラム開始電圧調節部」に係るものであるのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。 〈相違点4〉 セルに関し,補正発明1は,第1ページ領域の各々のノーマルセル「および補助セル」と,前記第2ページ領域の各々のノーマルセル「および各々の補助セル」がマルチレベルセルMLCであるのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。 〈相違点5〉 第1プログラム動作,第2プログラム動作が,補正発明1は,「前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第1プログラム動作が下位ビットプログラム動作であり, 前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第2プログラム動作が上位ビットプログラム動作であり, 前記第1プログラム動作と前記第2プログラム動作は同一ページ内で行われ」るのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。 〈相違点6〉 第1プログラム開始電圧調節部が,補正発明1では,プログラムパルスの回数を「前記第1ページ領域の複数の補助セルに」保存する第1プログラムパルス印加回数保存部と,「前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を設定して前記第1ページ領域に対する第2プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧設定部」を備えるのに対し,引用発明ではそのような特定がされていない点。 〈相違点7〉 補正発明1は,「前記第2プログラム開始電圧調節部は, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに」保存されたプログラムパルスの印加回数を臨界値と比較して電圧選択信号を生成する電圧選択信号生成部と, 前記電圧選択信号に応じて前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用された「前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存する第2プログラムパルス印加回数保存部と, 前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を設定して前記第2ページ領域に対する第2プログラム動作に適用する第2プログラム開始電圧設定部」を備えるのに対し,引用発明はそのような特定がされていない点。 3.判断 〈相違点1〉について 「補助セル」について,〈相違点1〉?〈相違点4〉,〈相違点6〉〈相違点7〉についても同様に「補助セル」の構成が特定されているので,ここで,これらを代表して言及することとする。 引用文献2には,ワード線に接続される全メモリセルのうち一部のメモリセルから読み出したデータに基づいて該選択されたワード線に対するプログラム電圧を決定するためのプログラム電圧補正コード格納用のメモリセルを通常の読み書きデータ格納用のメモリセルと分離し,出荷時にテストされ書き込まれたプログラム電圧の最適な補正コードが,不揮発性半導体記憶装置をユーザが使用するときに,消去或いは再書込みされないようにする技術が示され,また,引用文献3には,メモリセルアレイの一部の領域を,ウェハテストの結果に基づいて各ブロック毎の書き込み用電圧を書き込んで記憶する書き込み用電圧記憶領域として用いる技術が示されている。 これらの技術における「全メモリセルのうち一部のメモリセル」や「プログラム電圧補正コード格納用のメモリセルを通常の読み書きデータ格納用のメモリセルと分離」したもの,「メモリセルアレイの一部の領域」は,補正発明1の「複数の補助セル」,「第1ページ領域の複数の補助セル」 「第2ページ領域の複数の補助セル」に相当するといえるとしても,これらの技術,例えば,前記出荷時にテストされ書き込まれたプログラム電圧の最適な補正コードは,不揮発性半導体記憶装置をユーザが使用するときに,消去或いは再書込みされないようにする,いわば,出荷後,読み出し専用に用いるセルであり,補正発明1のように「プログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存」するといった,書き込みをする使用法のものではない。 したがって,引用発明において,複数のノーマルセルと「複数の補助セル」を各々含み,ストリングを共有する第1ページ領域および第2ページ領域と成すことは,引用文献2,3に記載された技術を参酌することにより,直ちに,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 〈相違点2〉について 引用発明は,要するに,前記1.(1)ア.に記載されたように,「第1ページに対するプログラム結果を基礎として第2ページに対するプログラム動作の時,最適のプログラム開始電圧を設定する」ものであり,第1ページに対するプログラム動作,第2ページに対するプログラム動作は,物理ページ(又は論理ページ)のうちのいずれかにおけるプログラム動作であって,物理ページと論理ページの組合せの示唆はなく,その上,引用文献4には,「一つの物理的頁内に複数の論理頁がプログラムされるマルチレベルセルプログラム方法において,各論理頁別プログラム電圧パルスの印加回数をカウントし,それにより,プログラム開始電圧を再設定し,上記再設定されたプログラム開始電圧に応じて次の頁のプログラム動作,即ち,第1の物理頁に対して第1の論理頁プログラム動作を行い,該第1の論理頁に対するプログラム動作が完了するまでプログラムパルス印加回数をカウントし,該カウントされたプログラムパルス印加回数と,しきい値とを比較してプログラム開始電圧を再設定し,第1の物理頁に対して再設定されたプログラム開始電圧に応じて第2の論理頁プログラム動作を行い,以下同様にして,第n頁までの複数の論理頁プログラム動作を行う方法」(引用文献4発明)が示されているが,当該「第1の論理頁プログラム動作」「第2の論理頁プログラム動作」はいずれも択一的な論理頁プログラム動作を示すにとどまり,物理頁と論理頁の組み合わせを対象としたプログラム動作ではなく,しかも,引用文献4には,図3のn番目の頁までの頁プログラム動作と図6のn番目までの論理頁プログラム動作とは同様のフローに係るものであって,これらは,別の独立した実施例として記載されていることからして,図3の実施例(例えば,隣接する物理頁)と図6の実施例(隣接する論理頁)を組み合わせることの示唆はどこにもない。即ち,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用することにより,複数の物理頁に係るものを複数の論理頁に係るものに代えることはいえるとしても,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用して組み合わせることは直ちに導出できるものであるとはいえない。 してみれば,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用することにより,第1の単一の複数の適用する第1プログラム開始電圧調節部に関し,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を調節し,「前記第1ページ領域の第2」プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧調節部とすることは当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 〈相違点3〉について 前記「〈相違点2〉について」において言及したように,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用して組み合わせることは直ちに導出できるとはいえない以上,「前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存した後,保存されたプログラムパルスの回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を調節し,前記第2ページ領域の第2プログラム動作に適用する第2プログラム開始電圧調節部」を構成することは当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 〈相違点4〉について 前記「〈相違点1〉について」において言及したとおりである。 〈相違点5〉について 前記「〈相違点2〉について」において言及したように,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用して組み合わせることは直ちに導出できるとはいえない以上,第1プログラム動作,第2プログラム動作が,「前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第1プログラム動作が下位ビットプログラム動作であり, 前記第1ページ領域および第2ページ領域に対する第2プログラム動作が上位ビットプログラム動作であり, 前記第1プログラム動作と前記第2プログラム動作は同一ページ内で行われ」るように成すことは当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 〈相違点6〉について 前記「〈相違点2〉について」において言及したように,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用して組み合わせることは直ちに導出できるとはいえない以上,第1プログラム開始電圧調節部が,プログラムパルスの回数を「前記第1ページ領域の複数の補助セルに」保存する第1プログラムパルス印加回数保存部と,「前記第1ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第1プログラム開始電圧を設定して前記第1ページ領域に対する第2プログラム動作に適用する第1プログラム開始電圧設定部」を備えるように構成することは当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 〈相違点7〉について 前記「〈相違点2〉について」において言及したように,引用発明において,引用文献4発明を参酌適用して組み合わせることは直ちに導出できるとはいえない以上,「前記第2プログラム開始電圧調節部は, 前記第1ページ領域の複数の補助セルに」保存されたプログラムパルスの印加回数を臨界値と比較して電圧選択信号を生成する電圧選択信号生成部と, 前記電圧選択信号に応じて前記第1プログラム開始電圧と第2プログラム開始電圧が選択的に適用された「前記第2ページ領域の第1プログラム動作過程で前記1ビットパス信号が出力される時点まで印加されたプログラムパルスの回数を前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存する第2プログラムパルス印加回数保存部と, 前記第2ページ領域の複数の補助セルに保存されたプログラムパルスの印加回数に応じて前記第2プログラム開始電圧を設定して前記第2ページ領域に対する第2プログラム動作に適用する第2プログラム開始電圧設定部と」を備えるように構成することは当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 また,本件補正後の請求項1を直接的,間接的に引用する請求項2?10に係る発明,請求項1とはカテゴリが異なるが,実質的に特徴的事項を備える請求項11に係る発明,請求項11を直接的,間接的に引用する請求項12?16に係る発明についても同様のことがいえる。 第6 むすび 以上のとおり,本願の請求項1?16に係る発明は,当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではないから,原査定の拒絶理由を検討しても,その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-04-20 |
出願番号 | 特願2011-187344(P2011-187344) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G11C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 滝谷 亮一 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
辻本 泰隆 須田 勝巳 |
発明の名称 | 不揮発性メモリ装置およびその動作方法 |
代理人 | 大川 宏 |