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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24J
管理番号 1327438
審判番号 不服2014-15878  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-11 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2008- 99193「円周分割パラボラアンテナと,太陽光追尾架台」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月25日出願公開,特開2009-139077〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 経緯
本願に係る主な手続の経緯は,以下のとおりである。
平成20年 4月 7日 出願(先の出願に基づく優先権主張 平成19
年11月12日,特願2007-292994
号)
平成20年 8月 8日 手続補正書
平成20年10月 8日 手続補正書
平成23年 4月 4日 手続補正書
平成24年10月25日 拒絶理由通知書
平成24年12月26日 意見書及び手続補正書
平成25年 1月11日 手続補正書
平成25年 8月28日 拒絶理由通知書
平成25年10月31日 意見書及び手続補正書
平成26年 5月15日 拒絶査定
平成26年 8月11日 審判請求書,意見書及び手続補正書
平成27年 7月29日 拒絶理由通知書
平成27年 9月29日 意見書及び手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成27年9月29日付けの手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりである。
「【請求項1】
パラボラアンテナ半球面を円周に沿って分割し,隙間のある傘状に,一体とした円周分割パラボラアンテナ。
とこれを支持する,1次幹(2支持幹を支持),2次幹(3次支持,及び時刻回転軸受),3次幹(季節変動伸縮幹)架台機構を有する架台と,受光,受熱部は,回転機構とは別の受光支持台構造とした,パラボラアンテナ架台。」

第3 拒絶の理由
当審において通知した拒絶の理由(理由2)の概要は,本願発明は,その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
(引用例)
引用例1:特表昭57-501884号公報
引用例2:実公昭09-11040号公報(昭和9年実用新案出願公告第
11040号)

第4 引用例に記載された事項
1 引用例1
(1) 引用例1には,以下の事項が記載されている。
ア 「1. 太陽光線のエネルギーを吸収して他の形のエネルギーに変換する吸熱体と,該吸熱体から遠くにあって吸熱体と太陽の間に配置された枠体と,前述の関係に枠体と吸熱体を支持する手段と,少なくとも1つの軸に沿って動くように枠体に作動的に連結された太陽追尾手段と,いろいろな径の複数の環状円錐台とからなり,該環状の円錐台はそれらの幾何学的中心を通る軸線に対して前記枠体に同一中心でかつ段違い列に取りつけられ,前記円錐台の最外側のものによって形成された基部から,前記円錐台の最内側のものによって形成された頂部へと高くなっていて,前記列は,隣り合う円錐台の間に環状隙間を有し,該円錐台は,円錐状の内側空洞を囲み,外側表面と弧状の光反射性内側表面を有し,該内側表面は,各々単一の独特な放物面で構成され,各々前記軸線に対し上外側の傾斜方向に傾いていて入射太陽光線を受けとり,それらを1回の反射で前記環状隙間と内側空洞を通して吸熱体に伝達し,吸熱体は光反射放物面の円錐台に共通な焦点帯を有し,焦点帯は焦点の共通中心を有している可変エントロピイ太陽エネルギー集熱装置。
2. 前記太陽追尾手段は,東西軸に沿った太陽の日々の動きと南北軸に沿った太陽の季節的動きに応じて,2つの軸に沿って前記枠体を動かすようになっている請求の範囲第1項に記載の可変エントロピイ太陽エネルギー集熱装置。」(1頁22?23欄特許請求の範囲)
イ 「本装置の太陽追尾操作は,自動的で,設置時に,集光器の日周軸を真の北方(または南方)に合わせ,そして水平面に対し日周軸を,その場所の地域の緯度に対応する角度になるように設置するために調整を1回必要とするだけである。この1回の調整で,地軸に対し平行に日周軸を配置する。」(4頁9欄2?7行)
ウ 「第1図を参照すると,太陽集熱器10が示されており,これは,段違い関係で互いに空気すきまだけ離れている4つの円錐台12a,12b,12c,12dの集中的巣ごもり形列からなる。円錐台は,それらの幾何学的中心を通過する焦点軸Aのまわりに対称的に配置されている。この列は,倒立截頭形の環状桶の形状であり(第2図),その両端が開いていて,最外側の円錐台12aで囲まれた基部から,最内側の円錐台12dで囲まれた頂部へと高くなっている。各円錐台には外側表面と内側の反射表面があり,後者は単一の独特な放物面で構成され,太陽に向かって上外側の傾斜方向に傾いている。このようにして,各円錐台の上側リムはその下側リムより大きい周縁になっている。4つの円錐台の上側リムには一対の細い横断リブ14と16が取りつけられていて,円錐台を互いに連結する。
円錐台12a,12b,12c,および12dの間の空気隙間(第2図)には,構造体に対する風抗力を減らし,焦点軸Aに沿って配置された焦点帯に,太陽光線を円錐台の内側表面に入射させそこで反射させて送るという二重の機能がある。円錐台の放物面形表面部分と中間の空気隙間は,平面図で,リブ14と16が横切っていて,実質的に破断のない環状表面の外観であり,円錐台12dの下側リムで囲まれた部分に等価な中央穴を囲むように計算する。」(4頁10欄7行?5頁11欄6行)
エ 「円錐台12aの外側表面にあるリブ14の一端に支柱18が取りつけられ,支柱の他端はアーム20に連結している。アーム20の他端は赤緯追尾モータのハウジング22に固定され,モータのロータ26はリンク機構を介して細長い棒24に連結されている。矢印C_(1)の方向にロータ26が軸Cのまわりを回転すると,アーム20が棒24に対して移動する。棒24は棒44に続き,これが,穴あきブラケットト32を含むスリーブ軸受30に入り込む。基盤36に取りつけられた筒状柱34が,上端に開口(図示せず)を含む軸38を回転自在に収容する。軸38の開口とこれに隣接するブラケット32の穴を通るピン40がスリーブ軸受30を柱34に旋回自在に連結する。支柱は,アーム20,棒24と44,スリーブ軸受30,柱34,軸38とそれらのリンク機構は,集熱器10と追尾連続装置の支持構造であり,これらが,以下に述べるように,2つの軸に沿って太陽の実際の動きを連続的に追うようになっている。」(5頁11欄7?24行)
オ 「吸熱体42の形の太陽エネルギー集光器が円錐台12a,12b,12c,および12dの共通焦点帯に配置されている。・・・吸熱体は集熱器構造と追尾装置から充分に離れたところに配置され,吸熱体から発生する高温によって後者が劣化するのを防止したり,追尾装置の機構をじゃましないようにする。同時に,集熱器や追尾装置からの距離は,吸熱体の近づきやすさを増し,吸熱体からのエネルギーの移送を容易にする。
「玉」のように図示した吸熱体42は,軸46の一端に取りつけられ,軸46は,焦点軸Aに中心合わせしてあり,棒44にある穴29の中を焦点軸に沿ってねじ式に動くことができる。・・・吸熱体42に対してこうして決められた焦点中心の位置は,日日のあるいは季節毎の追尾操作の間も固定したままである。」(5頁12欄1?19行)
カ 「円錐台12a,12b,12cと12dは軽量材料で作る。それらは,鋳造,成型,真空成形,その他の従来の製法によって別々にまたは一体に製造できる。」(5頁13欄8?10行)
キ 「この発明による集熱器-吸熱体用太陽追尾装置は,当業者に周知の方法や操作要素に基づいている。ここには,(北半球では)真の北,(南半球では)真の南を指すように柱34の軸38を回転して集熱器軸Aの一回調整を行う手段,および太陽の季節毎のそして日々の運行に従って連続的に調整する手段が含まれる。一回調整では,地球の回転軸に平行になるように,その場所の日周軸Dの傾斜角も定める。それは,設置時に,ブラケット32を赤道儀調整軸Bのまわりを矢印B_(1)の方向に回転し,その場所の緯度に数値的に対応する水平線との角度にスリーブ軸30,従って軸Aを乗せるようにして実施できる。季節的な調整は,棒24に対するアーム20の姿勢を変えて行う。これは,北から南へ太陽を追うように,ハウジング22を軸Cのまわりに矢印C_(1)の方向に動かすことによって行う。・・・日々の調整は,1時間当たり15°の速度で東から西へ太陽を追うように,軸Dのまわりを矢印D_(1)の方向に,スリーブ軸受30に対し一定速度で棒24を動かして行う。」(5頁14欄15行?6頁15欄10行)
ク 「第2図は,円錐台12a,12b,12cと12dの内側表面に太陽光線R_(1),R_(2),R_(3)とR_(4)が到達し,反射して,空気間隙を通って,内側の空穴を通って,吸熱体42に54°?72°の間の入射角(反射角)で到達する様子を示している。」(6頁18欄14?18行)
(2) 上記の記載及び図面の記載からすると,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「いろいろな径の複数の環状の円錐台12a,12b,12c,12dと,一対の横断リブ14,16とからなり,円錐台12a,12b,12c,12dはそれらの幾何学的中心を通る焦点軸Aに対して横断リブ14,16に同一中心でかつ段違い列に取りつけられ,円錐台の最外側のものによって形成された基部から,円錐台の最内側のものによって形成された頂部へと高くなっていて,段違い列は,隣り合う円錐台の間に環状隙間を有し,円錐台は,円錐状の内側空洞を囲み,外側表面と弧状の光反射性内側表面を有し,内側表面は,各々単一の独特な放物面で構成され,各々軸線Aに対し上外側の傾斜方向に傾いていて入射太陽光線を受けとり,それらを1回の反射で環状隙間と内側空洞を通して焦点帯に伝達し,
円錐台12aの外側表面にある横断リブ14の一端に取りつけられた支柱18,支柱18の他端に連結されたアーム20,アーム20の他端にハウジング22が固定された赤緯追尾モータ,モータのロータ26に連結された棒24及び棒44,ブラケット32を含み棒44が入り込むスリーブ軸受30,筒状柱34が取りつけられた基盤36,筒状柱34に回転自在に収容され,ブラケット32が旋回自在に連結された軸38とからなる,支持構造と,
円錐台12a,12b,12c,12dの共通焦点帯に配置され,焦点軸Aに中心合わせしてある軸46の一端に取りつけられ,棒44にある穴29の中を焦点軸Aに沿ってねじ式に動くことができる吸熱体42とからなる,
太陽集熱器10」

2 引用例2
引用例2には,以下の事項が記載されている。
(1) 「縱骨材(1)及(2)ハ横骨材(3)及ヒ結合鈑(5)ニ「ボールト」ヲ以テ結合セシメ其ノ縱骨材ヲ支材トシテ幾多ノ横骨材(4)ヲ同心圓上ニ結合セシメ是等横骨材(4)ノ兩面ノ凹部ニ扇形ニ截斷シタル薄キ反射鈑(6)ヲ嵌メ込ミ抛物線體ノ一分解體〔第三圖〕ヲ作リ數個ノ分解體ヲ「ボールト」(7)ヲ以テ組合セ一個ノ抛物線體ヲ完成スルモノトス(1頁左から9?7行)
(2) 「抛物線形ニ屈曲セシメタル縱骨材ヲ反射鏡ノ中心ヨリ放射状ニ配列シ之レヲ支材トシテ兩面ニ溝ヲ有スル横骨材ヲ同心圓上ニ配列シ横骨材ノ溝ニ從ヒテ扇形ニ截斷シタル薄キ反射鈑ヲ曲ケ乍ラ嵌メ込ミ一種ノ抛物線體ヲ形成セシメタル集熱反射鏡ノ構造」(2頁3?5行)

第5 対比及び判断
1 対比
(1) 引用発明は,各円錐台12a,12b,12c,12dの内側の放物面にて,入射した太陽光線を焦点へと反射するものであるから,パラボラアンテナ半球面の機能を有しているといえ,複数の円錐台12a,12b,12c,12dが,一対の横断リブ14,16により連結される様子は,全体が傘状に一体としているといえる。
また,引用発明は「支持構造」により支持されるものであるところ,支柱18,アーム20及び赤緯モータは,季節的な調整に係るものであるから,本願発明の「3次幹(季節変動伸縮幹)架台機構」と,「3次幹(季節変動に係るもの)架台機構」である限りで一致し,棒24及び棒44とブラケット32及びスリーブ軸受30は,支柱18,アーム20及び赤緯モータの支持や日々の調整に係るものであるから,本願発明の「2次幹(3次支持,及び時刻回転軸受)」「架台機構」に相当し,筒状柱34及び基盤36と軸38は,棒24及び棒44とブラケット32及びスリーブ軸受30の支持に係るものであるから,「1次幹(2支持幹を支持)」「架台機構」に相当し,これらを合わせたものが,本願発明の「架台」に相当する。
そして,引用発明の「吸熱体42」は,太陽エネルギーの集光に係るものであるから,本願発明の「受光,受熱部」に相当し,引用発明における「吸熱体42」を含む「支持構造」全体は,その機能に照らして,本願発明の「パラボラアンテナ架台」に相当する。
(2) そうすると,本願発明と引用発明とは,次の点で一致し,相違するといえる。
(一致点)
「パラボラアンテナ半球面を,傘状に,一体としたパラボラアンテナ。
とこれを支持する,1次幹(2支持幹を支持),2次幹(3次支持,及び時刻回転軸受),3次幹(季節変動に係るもの)架台機構を有する架台と,受光,受熱部を有する,パラボラアンテナ架台。」
(相違点1)
本願発明は,パラボラアンテナが「パラボラアンテナ半球面を円周に沿って分割し,隙間のある傘状に(した)」「円周分割」パラボラアンテナであるのに対し,引用発明は,そのように構成されていない点。
(相違点2)
本願発明は,3次幹(季節変動に係るもの)架台機構が「3次幹(季節変動伸縮幹)架台機構」であるのに対し,引用発明は,支柱18,アーム20及び赤緯モータからなる点
(相違点3)
本願発明は,「受光,受熱部は,回転機構とは別の受光支持台構造とした」ものであるのに対し,引用発明は,「吸熱体42」が「焦点軸Aに中心合わせしてある軸46の一端に取りつけられ,棒44にある穴29の中を焦点軸Aに沿ってねじ式に動くことができる」構造としたものである点。

2 判断
(1) 相違点1について
ア 本願発明において,「パラボラアンテナ半球面を円周に沿って分割し,隙間のある傘状に(した)」構造が,どのような構造を意味しているのか必ずしも明確でないところ,複数のパラボラアンテナ半球面が同心円状に配置されることにより,半径方向に空間が分割され,全体として隙間のある傘状を呈している構造を意味するのであれば,引用発明は本願発明と相違するところはない。
イ 複数のパラボラアンテナ半球面が同心円状に配置されるとともに,各パラボラアンテナ半球面は,円周方向に分割された,複数の扇形や円弧状の部分からなり,全体として隙間のある傘状を呈している構造を意味するとしても,引用発明においてそのような構造とすることは,当業者にとって容易である。
すなわち,引用例1には,円錐台を,鋳造,成型,真空成形,その他の従来の製法によって別々にまたは一体に製造できる旨記載されており(前記第4・1(1)カ),円錐台を分割構造にする点について示唆があるといえる。
また,装置を構成するにあたり,その大きさや具体的な構造等を考慮して,分割・組立て可能な構造とすることは,通常行われているところであり,引用例2にも記載のとおり(前記第4・2),広く知られた技術である。
そうすると,引用発明において,円錐台を円周方向に分割した構造のものとすること,すなわち,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,装置の製作性等に応じて,当業者が容易に想到できた事項である。
(2) 相違点2について
本願発明の「3次幹(季節変動伸縮幹)架台機構」とは,その構造が必ずしも明確でないが,明細書及び図面の記載を参酌すれば,パラボラアンテナについての季節変動に係る角度調整動作に,部材の伸縮(摺動)が伴うものであると一応認められる。
他方,引用発明においても,支柱18,アーム20及び赤緯モータにより,円錐台12a,12b,12c,12dについて,季節変動に係る角度調整を行っており,その機能は基本的に同じである。このような角度調整に係る焦点を中心とした回転動作を,その他の適宜の構成により達成し得ることは技術的に明らかである。
そして,構成部材の伸縮(摺動)を伴う回動機構は周知であり,そのような周知の機構を採用することは,当業者が適宜なし得る事項であって,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
(3) 相違点3について
引用発明において,吸熱体42は太陽エネルギーの集光が主たる機能であって,各円錐台の共通の焦点帯に配置されていれば足りるもので,その設置箇所は集光可能な箇所であれば,当業者が適宜に設定しうるものである。棒44とともに日周運動をすることまで要しないことは技術的に明らかである。
この点,引用例1には,「吸熱体は集光器構造と追尾装置から充分に離れたところに配置され(る)」旨記載されており(前記第4・1(1)オ),太陽に対して追尾運動をする構造体から離れた位置に吸熱体を配置することの示唆があるといえる。また,「集光器や追尾装置からの距離は,吸熱体の近づきやすさを増し,吸熱体からのエネルギーの移送を容易にする」旨の記載は,吸熱体へのアクセスやエネルギーの移送の観点から適宜の箇所に設置可能であることを示唆している。
このような示唆を踏まえると,引用発明において,回転機構とは別の例えば,基盤36に支持する構造とすることは,当業者にとって格別困難なことではなく,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
(4) 本願発明が奏する効果をみても,引用発明及び引用例2に記載された事項から十分予測可能な範囲内のものであって,格別ではない。
(5) 請求人の主張に関し
ア 請求人は,引用発明の枠体の隙間は,風抗力を減らすための空洞であるのに対し,本願発明の隙間は集光点を反射鏡下部へ導くためのものである,引用発明の円錐台は最内側のものにそって形成された頂部へと高くなるのに対し,本願発明の断面はハート状である,と主張している。
しかし,引用発明の各円錐台の間の隙間も,本願発明と同様,集光点を反射鏡下部へ導くためのものであるし,引用発明の円錐台の断面形状に関する主張は,本願の請求項1の記載に基づかない主張である。
イ また,請求人は,引用発明の吸熱体は,支持する手段と作動的に連結されたものであるのに対し,本願発明の吸熱体を地上に固定し,動作はさせない,引用発明の円錐台の支持は片持ちアームであるのに対し,本願発明は強度,剛性を保持するため両側を支持するものである,と主張している。
しかし,引用発明における吸熱体42の位置に関しては,既に述べたとおり,その設置箇所は集光可能な箇所であれば,当業者が適宜に設定しうるものである。例えば,基盤36に設置することは,当業者にとって格別困難なことではない。引用発明の支持構造に関する主張は,本願の請求項1の記載に基づかない主張である。
ウ そして,請求人は,引用発明は剛性が悪いため焦点帯が楕円になるのに対し,本願発明は,精度,剛性良くし焦点は円形になる,引用発明は,1軸目は設置時固定し,2軸構成であるのに対し,本願発明は,3軸構成とし地軸の変動にも現場対応し,時々,1日一回程度の調整で1軸のみの等速回転で太陽を追尾するものである,と主張している。
しかし,引用発明の焦点帯の形状に関する主張も,本願の請求項1の記載に基づかない主張であるし,引用例1には,焦点が楕円となる旨の記載はあるものの,基本的には焦点が円形となる技術と解される(引用例1・7頁19欄)。
また,引用発明も,ブラケット32と軸38の間(赤道儀調整軸B),赤緯追尾モータと棒24の間(季節的な調整に係る軸C),棒44とスリーブ軸受30の間(日周軸D)で,角度調整が可能であって,3軸構成といえるものである。
エ さらに,請求人は,引用発明は製造に高精度が必要であるのに対し,本願発明は,リブと平面反射材を格子状に保持し微小弾性変形で簡単で高精度な制作をすることができる,引用例2に記載のものは「數多ノ載頭圓錘體連續シテ組合セ」部材が短冊形であるのに対し,本願発明は,帯状の長材を帯状に使用するものである,とも主張している。
しかし,引用発明の製造に関する主張はその根拠が不明であるとともに,引用例2に関する主張も,本願の請求項1の記載に基づかない主張である。相違点1に係る本願発明の効果を主張しているとしても,既に述べたとおり,相違点1に係る事項は容易想到であって,その効果は引用発明及び引用例2に記載された事項から当業者であれば予測の範囲内のものである。
オ 以上のとおり,請求人の主張は,いずれも,採用することができない。
(6) 以上を総合すると,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-06 
結審通知日 2016-02-02 
審決日 2016-02-17 
出願番号 特願2008-99193(P2008-99193)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 英隆  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
山崎 勝司
発明の名称 円周分割パラボラアンテナと、太陽光追尾架台  

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