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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E04F
管理番号 1327597
審判番号 無効2016-800083  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-07-15 
確定日 2017-04-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第5140612号発明「畳表の整形装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第5140612号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、手続の経緯は、以下のとおりである。

平成21年 1月23日 本件出願(特願2009-13286号)
平成24年11月22日 設定登録(特許第5140612号)
平成28年 7月15日 本件無効審判請求
平成28年 9月30日 被請求人より審判事件答弁書提出
平成28年11月30日 審理事項通知書(起案日)
平成28年12月16日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成29年 1月 6日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成29年 1月20日 口頭審理



第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。また、それらをまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
装置フレームに設けられたレールに沿って水平移動する上前整形部と、前記上前整形部に対して水平旋回する下前整形部とから構成され、
上前整形部は、レールに沿って水平移動自在な移動ベースと、前記移動ベースに対して昇降自在に支持され、移動ベースの上面と共に畳表を挟持する上前定規とからなり、そして
下前整形部は、装置フレーム又はレールに垂直軸で軸着され、前記垂直軸を中心に水平旋回自在な旋回ベースと、前記旋回ベースに対して昇降自在に支持され、旋回ベースの上面と共に畳表を挟持する下前定規とからなる畳表の整形装置。
【請求項2】
移動ベースは、畳表を挟持するまで下降した上前定規の定規縁部に近接した上前揺動軸を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する上前折返し定規を設けた請求項1記載の畳表の整形装置。
【請求項3】
旋回ベースは、畳表を挟持するまで下降した下前定規の定規縁部に近接した下前揺動軸を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する下前折返し定規を設けた請求項1又は2いずれか記載の畳表の整形装置。
【請求項4】
装置フレームに設けられたレールに対して位置固定された上前整形部と、前記上前整形部に対して水平移動及び水平旋回する下前整形部とから構成され、
上前整形部は、レールに対して位置固定された固定ベースと、前記固定ベースに対して昇降自在に支持され、固定ベースの上面と共に畳表を挟持する上前定規とからなり、そして
下前整形部は、レールに沿って水平移動自在な移動ベースと、前記移動ベースに垂直軸で軸着され、前記垂直軸を中心に水平旋回自在な旋回ベースと、前記旋回ベースに対して昇降自在に支持され、旋回ベースの上面と共に畳表を挟持する下前定規とからなる畳表の整形装置。
【請求項5】
固定ベースは、畳表を挟持するまで下降した上前定規の定規縁部に近接した上前揺動軸を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する上前折返し定規を設けた請求項4記載の畳表の整形装置。
【請求項6】
旋回ベースは、畳表を挟持するまで下降した下前定規の定規縁部に近接した下前揺動軸を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する下前折返し定規を設けた請求項4又は5いずれか記載の畳表の整形装置。」



第3 請求人の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許発明1ないし6の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。

本件特許発明1ないし6は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、当該特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2005-314953号公報
甲第2号証:特開2006-322200号公報
甲第3号証:特開平9-250229号公報
甲第4号証:特開2001-314676号公報
甲第5号証:実願昭61-9658号(実開昭62-123501号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実公昭62-031273号公報
甲第7号証:特開2003-293566号公報


2 請求人の具体的な主張
(1)本件特許発明
ア 本件特許発明1について(審判請求書第25ないし26頁)
本件特許発明1は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、請求項1に記載されたとおり、下記の構成要件A?Dにあるものと思料される。
なお、符号については、理解のために付しておいたものである(以下、同様)。
(請求項1)
A.装置フレーム(1)に設けられたレール(11)に沿って水平移動する上前整形部(2)と、
B.前記上前整形部(2)に対して水平旋回する下前整形部(3)とから構成され、
C.上前整形部(2)は、
C-1.レール(11)に沿って水平移動自在な移動ベース(21)と、
C-2.前記移動ベース(21)に対して昇降自在に支持され、移動ベース(21)の上面と共に畳表(6)を挟持する上前定規(22)とからなり、そして
D.下前整形部(3)は、
D-1.装置フレーム(1)又はレール(11)に垂直軸(311)で軸着され、前記垂直軸(311)を中心に水平旋回自在な旋回ベース(31)と、
D-2.前記旋回ベース(31)に対して昇降自在に支持され、旋回ベース(31)の上面と共に畳表(6)を挟持する下前定規(32)とからなる畳表の整形装置。

イ 本件特許発明2について(審判請求書第26ないし27頁)
本件特許発明2は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、請求項2に記載されたとおり、下記の構成要件Eにあるものと思料される。
(請求項2)
E.移動ベース(21)は、畳表(6)を挟持するまで下降した上前定規(22)の定規縁部に近接した上前揺動軸(216)を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する上前折返し定規(215)を設けた請求項1記載の畳表の整形装置。

ウ 本件特許発明3について(審判請求書第27頁)
本件特許発明3は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、請求項3に記載されたとおり、下記の構成要件Fにあるものと思料される。
(請求項3)
F.旋回ベース(31)は、畳表(6)を挟持するまで下降した下前定規(32)の定規縁部に近接した下前揺動軸(315)を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する下前折返し定規(314)を設けた請求項1又は2いずれか記載の畳表の整形装置。

エ 本件特許発明4について(審判請求書第27ないし28頁)
本件特許発明4は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、請求項4に記載されたとおり、下記の構成要件G?Jにあるものと思料される。
(請求項4)
G.装置フレーム(1)に設けられたレール(11)に対して位置固定された上前整形部(4)と、
H.前記上前整形部(4)に対して水平移動及び水平旋回する下前整形部(5)とから構成され、
I.上前整形部(4)は、
I-1.レール(11)に対して位置固定された固定ベース(41)と、
I-2.前記固定ベース(41)に対して昇降自在に支持され、固定ベース(41)の上面と共に畳表を挟持する上前定規(42)とからなり、そして
J.下前整形部(5)は、
J-1.レール(11)に沿って水平移動自在な移動ベース(51)と、
J-2.前記移動ベース(51)に垂直軸(521)で軸着され、前記垂直軸(521)を中心に水平旋回自在な旋回ベース(52)と、
J-3.前記旋回ベース(52)に対して昇降自在に支持され、旋回ベース(52)の上面と共に畳表(6)を挟持する下前定規(53)とからなる畳表の整形装置。

オ 本件特許発明5について(審判請求書第28ないし29頁)
本件特許発明5は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、請求項5に記載されたとおり、下記の構成要件Kにあるものと思料される。
(請求項5)
K.固定ベース(41)は、畳表を挟持するまで下降した上前定規(42)の定規縁部に近接した上前揺動軸(415)を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する上前折返し定規(414)を設けた請求項4記載の畳表の整形装置。

カ 本件特許発明6について(審判請求書第29頁)
本件特許発明6は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、請求項6に記載されたとおり、下記の構成要件Lにあるものと思料される。
(請求項6)
L.旋回ベース(52)は、畳表を挟持するまで下降した下前定規(53)の定規縁部に近接した下前揺動軸(525)を中心に、上面から持ち上げて垂直面内で回動する下前折返し定規(524)を設けた請求項4又は5いずれか記載の畳表の整形装置。


(2)甲号証の記載について
ア 甲第1号証の記載について
(ア)甲第1号証には、本件特許発明1の構成要件A?Dに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第1号証には、
A.第2のユニットBのテーブル201には、左右に移動ローラ21が設けられており、テーブル201が枠体1上部を左右に移動可能に構成されている点、
B.第1のユニットAを備える点、
C.第2のユニットBは、
C-1.枠体1上部を左右に移動可能なテーブル201と、
C-2. テーブル201に対して昇降自在に支持され、テーブル201の上面と共に畳表8を挟持する押え定規プレート341とから構成されている点、
D.第1のユニットAは、
D-2. テーブルに対して昇降自在に支持され、テーブルの上面と共に畳表8を挟持する押え定規プレート34とからなる畳表裁断折曲げ装置が開示されている点、
が、開示されている。
(審判請求書第29ないし30頁)

(イ)甲第1号証には、本件特許発明4の構成要件G?Jに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第1号証には、
G.枠体1に対して位置固定された第1のユニットAを備える点。
H.第2のユニットBのテーブル201には、左右に移動ローラ21が設けられており、テーブル201が枠体1上部を左右に移動可能に構成されている点
I.第1のユニットAは、
I-1.枠体1に対して位置固定されている点、
I-2.テーブルに対して昇降自在に支持され、テーブルの上面と共に畳表8を挟持する押え定規プレート34とからなる畳表裁断折曲げ装置が開示されている点、
J.第2のユニットBは、
J-1.枠体1上部を左右に移動可能なテーブル201と、
J-3.テーブル201に対して昇降自在に支持され、テーブル201の上面と共に畳表8を挟持する押え定規プレート341とから構成されている畳表裁断折曲げ装置が開示されている点。
が、開示されている。
(審判請求書第31頁)

イ 甲第2号証の記載について
(ア)甲第2号証には、本件特許発明1の構成要件A?Dに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第2号証には、
A.ベースフレーム11に設けられたレール14に沿って水平移動する可動側ユニット16を備える点、
B.可動側ユニット16に対して水平旋回する固定側ユニット15を備える点、
C.可動側ユニット16は、
C-1.レール14に沿って水平移動自在な可動側フレーム60と、
C-2.可動側フレーム60に対して昇降自在に支持され、可動側フレーム60の上面(受けプレート66)と共に畳表100及び畳床101を挟持する床押え用プレート75とから構成されている点、
D.固定側ユニット15は、
D-1.ベースフレーム11に支点軸22で軸着され、支点軸22を中心に水平旋回自在な固定側フレーム20と、
D-2. 固定側フレーム20に対して昇降自在に支持され、固定側フレーム20の上面(受けプレート31)と共に畳表100及び畳床101を挟持する床押え用プレート38とからなる敷物の表カバー接着装置が開示されている点、
が、開示されている。
(審判請求書第32ないし33頁)

(イ)甲第2号証には、本件特許発明4の構成要件G?Jに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第2号証には、
G.固定側ユニット15を備える点、
H.固定側ユニット15に対して水平移動及び水平旋回する可動側ユニット16を備える点、
I.固定側ユニット15は、
I-1.固定側フレーム20と、
I-2.固定側フレーム20に対して昇降自在に支持され、固定側フレーム20の上面と共に畳表100及び畳床101を挟持する床押え用プレート38とから構成されている点、
J.可動側ユニット16は、
J-1.レール14に沿って水平移動自在な可動側フレーム60と、
J-2.支点軸(なお、段落【0017】にて可動側ユニット16と同様であるので、詳細な説明は省略する旨記載)で軸着され、支点軸を中心に水平旋回自在な可動側フレーム60と、
J-3.可動側フレーム60に対して昇降自在に支持され、可動側フレーム60の上面と共に畳表100及び畳床101を挟持する床押え用プレート75とからなる敷物の表カバー接着装置が開示されている点。
が、開示されている。
なお、甲第2号証では、可動側ユニット16において、支点軸の記載が省略されているが、甲第2号証の段落【0017】において、
『これら送りねじ機構61,62は、これらの送りねじ63,64が、上記した固定側フレーム20の送りねじ機構23における送りねじ24よりも長く設定されている以外は、その送りねじ機構23と同様であるので、詳細な説明は省略する。』
と記載されている。
従って、固定側ユニット15と同様に、甲第2号証の段落【0011】に記載されているように、可動側フレーム60が、固定側フレーム20と同様に、支点軸を中心に水平方向に回動されるように構成されていることは明らかである。
(審判請求書第34ないし35頁)

ウ 甲第3号証の記載について
(ア)甲第3号証には、本件特許発明1の構成要件A?Dに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第3号証には、
A.基台に沿って水平移動する架台21Lを備える点、
B.架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える点、
C.架台21Lは、
C-1.基台に沿って水平移動自在な裁断装置2Lと、
C-2.裁断装置2Lに対して昇降自在に支持され、テーブル22Lの上面と共に畳床7を挟持する床締部材25Lとから構成されている点、
D.架台21Rは、
D-1.回動中心26Rを中心に水平旋回自在な裁断装置2Rと、
D-2.裁断装置2Rに対して昇降自在に支持され、テーブル22Rの上面と共に畳床7を挟持する床締部材25Rとからなる畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置が開示されている点、
が、開示されている。
(審判請求書第35ないし36頁)

(イ)甲第3号証には、本件特許発明4の構成要件G?Jに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第3号証には、
G.基台に架台21Lを備える点、
H.架台21Lに対して水平移動及び水平旋回する架台21Rを備える点、
I.架台21Lは、
I-1.基台に備えられた裁断装置2Lと、
I-2.裁断装置2Lに対して昇降自在に支持され、テーブル22Lの上面と共に畳床7を挟持する床締部材25Lとから構成されている点、
J.架台21Rは、
J-1.基台に沿って水平移動自在な裁断装置2Rと、
J-2.回動中心26Rを中心に水平旋回自在な裁断装置2Rと、
J-3.裁断装置2Rに対して昇降自在に支持され、テーブル22Rの上面と共に畳床7を挟持する床締部材25Rとからなる畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置が開示されている点、
が、開示されている。
(審判請求書第36ないし37頁)

エ 甲第4号証の記載について
(ア)甲第4号証には、本件特許発明1の構成要件B、Dに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第4号証には、
B.水平旋回する裁断装置2を備える点、
D.裁断装置2は、
D-1.回動中心26を中心に水平旋回自在であり、
D-2. テーブル22に対して昇降自在に支持され、テーブル22の上面と共に畳床7を挟持する上前ストッパー23とからなる畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置が開示されている点、
が、開示されている。
(審判請求書第37頁)

(イ)甲第4号証には、本件特許発明4の構成要件H、Jに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第4号証には、
H.水平旋回する裁断装置2を備える点、
J.裁断装置2は、
J-2.回動中心26を中心に水平旋回自在であり、
J-3. テーブル22に対して昇降自在に支持され、テーブル22の上面と共に畳床7を挟持する上前ストッパー23とからなる畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置が開示されている点
が、開示されている。
(審判請求書第38頁)

オ 甲第5号証の記載について
甲第5号証には、本件特許発明1の構成要件B、D、本件特許発明4の構成要件H、Jに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第5号証には、
屋根の勾配に正確に合わせた切削ができるようにするための定規体1が開示されており、勾配に合わせてさお管9を回動するように構成した定規が開示され、図3で回動した状態が示されている点。
すなわち、対象物の傾斜した側辺に合わせて、定規を回動させることは、本件特許の出願前から周知であることが示されている。
(審判請求書第38頁)

カ 甲第6号証の記載について
甲第6号証には、本件特許発明1の構成要件B、D、本件特許発明4の構成要件H、Jに相当する構成が記載されている。
すなわち、甲第6号証には、
屋根工事用の手押し切カッタに関して、位置決め定規13が、被切断材11の一側縁部2に対して、一定角度で傾けるように回動することが開示され、図2で回動した状態が図示されている点。
すなわち、対象物の傾斜した側辺に合わせて、定規を回動させることは、本件特許の出願前から周知であることが示されている。
(審判請求書第39頁)

キ 甲第7号証の記載について
甲第7号証の図1?図3に示されている畳表の上前又は下前側を折目付けするための装置である。
すなわち、第7号証の図1?図3の実施例の装置のように、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することが開示されている。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第2頁)

(3)本件特許発明1の進歩性判断について
ア 本件特許発明1と先行技術発明との対比
本件特許が構成要件B、Dに示されているように、『下前整形部(3)が、上前整形部(2)に対して水平旋回する』構成であるのに対して、
甲第1号証の本件特許の下前整形部(3)に相当する第1のユニットAが、本件特許の上前整形部(2)に相当する第2のユニットBに対して、水平旋回しない構成である点で相違している。
(審判請求書第43頁)

相違点の判断
(ア)甲第2号証には、本件特許の構成要件A?Dに相当する構成を備えた敷物の表カバー接着装置(畳表100及び畳床101を固定して折り曲げる)が開示され、本件特許の下前整形部(3)に相当する固定側ユニット15が、本件特許の上前整形部(2)に相当する可動側ユニット16に対して水平旋回する構成が開示されている。
また、甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易である。
さらに、本件特許の作用効果も、甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することより、当然生じる作用効果に過ぎない。
従って、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、甲第2号証の水平旋回する構成の「固定側ユニット15」を適用して、本件特許の構成とすることは、いわゆる当業者にとって容易である。
(審判請求書第44頁)

(イ)甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の構成を適用することによって当業者が容易にできるものであることについての具体的な動機付けについて、
この点に関して、本件特許公報の段落【0006】に、
『ここで、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないことから、畳表の整形装置においても、前記畳床の平面視形状を加味して畳表に折目を付けることが望まれる。
この点、特許文献1が開示する整形装置には、こうした畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることに関して何ら明示又は示唆するところがない。
そこで、裁断装置や押上部材を省略し、畳床の平面視形状に合わせて畳表に折目を付ける作業だけに特化した整形装置を開発するため、検討した。』
とあるように、
本件特許の課題は、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
・・・(略)・・・
従って、甲第2号証には、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(3)に相当する固定側ユニット15が、本件特許の上前整形部(2)に相当する可動側ユニット16に対して水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第2号証の課題には共通性があり、また、甲第2号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第2号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。
また、甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第2号証は、畳表100及び畳床101を固定して折り曲げるための敷物の表カバー接着装置であり、いずれも畳表を折り曲げる技術分野であって、技術分野の関連性があることは明らかである。
・・・(略)・・・
すなわち、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、甲第2号証の水平旋回する構成の「固定側ユニット15」を適用して、本件特許の構成とすることの動機付けが、甲第2号証には示唆されていることは明白である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第3ないし6頁)

(ウ)「甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易である。」との主張についての具体的な根拠について、
甲第7号証の図1?図3に明示されているように、また、甲第7号証の上記の記載からも明らかなように、畳表に折目を付けるだけに特化した装置は公知であり、甲第1号証において、甲第7号証に示されているように、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易であることは明白である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第2ないし3頁)

(エ)甲第3号証には、本件特許の構成要件A?Dに相当する構成を備えた畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置、すなわち、
基台に沿って水平移動する架台21Lと、架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える構成が開示されているが、
本件特許が、畳表に折目を付けるだけに特化した、畳表の整形装置であるのに対して、甲第3号証が、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置という点で相違している。
しかしながら、甲第3号証の『基台に沿って水平移動する架台21Lと、架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える構成』を、甲第1号証に適用して、畳表に折目を付けるだけに特化した、畳表の整形装置とすることは、いわゆる当業者にとって容易である。
(審判請求書第46頁)

(オ)甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の構成を適用することによって当業者が容易にできるものであることについての具体的な動機付けについて、
上記(3)で説明したように、本件特許の課題は、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題である、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
・・・(略)・・・
このように、甲第3号証では、畳床の平面視形状は、対向する畳の框(短辺側)が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(3)に相当する架台21R(裁断装置2R)が、本件特許の上前整形部(2)に相当する架台21L(裁断装置2L)に対して水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
・・・(略)・・・
なお、両架台21R、21Lは、水平移動と水平旋回の両方をするように構成されているが、水平移動と水平旋回のいずれかをしないように構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更にすぎないものである。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第3号証の課題には共通性があり、また、甲第3号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第3号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。
また、甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第3号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。
・・・(略)・・・
従って、甲第3号証の『基台に沿って水平移動する架台21Lと、架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える構成』を、甲第1号証に適用することは、いわゆる当業者にとって容易である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第6ないし9頁)

(カ)甲第1号証に記載された発明に対する甲第4号証記載の構成の適用、及び、当該適用のための具体的な動機付けについて、
・・・(略)・・・
上記(3)で説明したように、本件特許の課題は、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題である、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
・・・(略)・・・
このように、甲第4号証では、畳床の平面視形状は、対向する畳の框(短辺側)が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(3)に相当する裁断装置2を水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
従って、甲第4号証には、本件特許の構成要件B、Dに相当する構成、すなわち、『回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2』が開示されている。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第4号証の課題には共通性があり、また、甲第4号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第4号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。
また、甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第4号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。
・・・(略)・・・
よって、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、甲第4号証の水平旋回する構成の「回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2」を適用することは、いわゆる当業者にとって容易である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第9ないし11頁)

(キ)甲第1号証に記載された発明に対する甲第5ないし6号証記載の周知技術の適用、及び、当該適用のための具体的な動機付けについて、
・・・(中略)・・・
このように、甲第5号証及び甲第6号証には、対象物の傾斜した側辺に合わせて、定規を回動させる周知の構成が開示されている。
・・・(中略)・・・
当業者であれば、・・・(中略)・・・甲第5号証及び甲第6号証に記載の被処理体の勾配(傾斜)に合わせて、定規を回動する周知の構成に着目して、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、このような周知の事項を適用することに動機付けがあることは明らかである。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第11ないし12頁)

(4)本件特許発明2及び3、5及び6の進歩性判断について
甲第1号証には、本件特許の構成要件E、F、K、Lに相当する構成、・・・(略)・・・『押込み手段7として、アングルプレート6が、畳表8を押し上げて、押え定規プレート34の上側に押込まれる』構成が開示されている。
また、甲第2号証には、本件特許の構成要件E、F、K、Lに相当する構成、・・・(略)・・・『表押え用プレート33、68が、畳床101の側面に沿うように折り曲げ、畳床101の裏面側へ押え付ける』構成が開示されている。
従って、これらの甲第1号証?甲第2号証の構成を考慮して、本件特許の構成要件E、F、K、Lに相当する構成することは、いわゆる当業者にとって容易である。
よって、これらの甲第1号証?甲第2号証からすれば、いわゆる当業者であれば、本件特許の構成要件E、F、K、Lの構成は容易に想到できるものである。
(審判請求書第50ないし52頁)

(5)本件特許発明4の進歩性判断について
ア 本件特許発明4と先行技術発明との対比
本件特許が構成要件H、Jに示されているように、『下前整形部(5)が、上前整形部(4)に対して水平旋回する』構成であるのに対して、
甲第1号証の本件特許の下前整形部(5)に相当する第2のユニットBが、本件特許の上前整形部(4)に相当する第1のユニットAに対して、水平旋回しない構成である点で相違している。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第13頁)

相違点の判断
(ア)甲第2号証には、本件特許の構成要件G?Jに相当する構成を備えた敷物の表カバー接着装置(畳表100及び畳床101を固定して折り曲げる)が開示され、
本件特許の下前整形部(3)に相当する可動側ユニット16が、本件特許の上前整形部(2)に相当する固定側ユニット15に対して水平移動及び水平旋回する構成が開示されている。
なお、甲第2号証では、可動側ユニット16において、支点軸の記載が省略されているが、甲第2号証の段落【0017】において、
『これら送りねじ機構61,62は、これらの送りねじ63,64が、上記した固定側フレーム20の送りねじ機構23における送りねじ24よりも長く設定されている以外は、その送りねじ機構23と同様であるので、詳細な説明は省略する。』
と記載されている。
従って、固定側ユニット15と同様に、甲第2号証の段落【0011】に記載されているように、可動側フレーム60が、固定側フレーム20と同様に、支点軸を中心に水平方向に回動されるように構成されていることは明らかである。
また、甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易である。
さらに、本件特許の作用効果も、甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することより、当然生じる作用効果に過ぎない。
従って、甲第1号証の水平旋回しない「第2のユニットB」に代えて、甲第2号証の水平旋回する構成の「可動側ユニット16」または「固定側ユニット15」を適用して、本件特許の構成とすることは、いわゆる当業者にとって容易である。
(審判請求書第56ないし57頁)

(イ)甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
上記の請求項1に関する発明について、上記(3)において説明したように、 本件特許の課題は、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
この点に関して、甲第2号証の図1?図2、甲第2号証の段落【0011】、特に、甲第2号証の段落【0026】に示されているように、甲第2号証には、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(5)に相当する可動側ユニット16が、本件特許の上前整形部(4)に相当する固定側ユニット15に対して水平移動及び水平旋回する構成が開示されている。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第2号証の課題には共通性があり、また、甲第2号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第2号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。
また、甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第2号証は、畳表100及び畳床101を固定して折り曲げるための敷物の表カバー接着装置であり、いずれも畳表を折り曲げる技術分野であって、技術分野の関連性があることは明らかである。
・・・(略)・・・
従って、甲第1号証の水平旋回しない「第2のユニットB」に代えて、甲第2号証の水平旋回する構成の「可動側ユニット16」を適用して、本件特許の構成とすることは、いわゆる当業者にとって容易である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第13ないし14頁)

(ウ)「甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易である。」との主張についての具体的な根拠について、
上記の請求項1に関する発明について、上記(2)において説明したように、甲第7号証の図1?図3に明示されているように、また、甲第7号証の上記の記載からも明らかなように、畳表に折目を付けるだけに特化した装置は公知であり、甲第1号証において、甲第7号証に示されているように、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易であることは明白である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第12ないし13頁)

(エ)甲第3号証には、本件特許の構成要件G?Jに相当する構成を備えた畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置、すなわち、
基台に備えられた架台21Lと、架台21Lに対して水平移動及び水平旋回する架台21Rを備える構成が開示されているが、
本件特許では、上前整形部(4)が位置固定されているのに対して、基台に備えられた架台21Lが、水平移動及び水平旋回する点が相違する。
しかしながら、甲第3号証において、基台に備えられた架台21Lを、本件特許の上前整形部(4)のように、位置固定する構成とすることは当業者に容易である。
(審判請求書第59頁)

(オ)甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の構成を適用することによって当業者が容易にできるものであることについての具体的な動機付けについて、
・・・(略)・・・
このように、甲第3号証では、畳床の平面視形状は、対向する畳の框(短辺側)が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(5)に相当する架台21R(裁断装置2R)を水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
また、本件特許では、上前整形部(4)が位置固定されているのに対して、基台に備えられた架台21Lが、水平移動及び水平旋回する点が相違する。
しかしながら、甲第3号証において、基台に備えられた架台21Lを、本件特許の上前整形部(4)のように、位置固定する構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更にすぎないものであって、当業者に容易である。
従って、上記(3)で説明したように、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第3号証の課題には共通性があり、また、甲第3号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第3号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。
また、甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第3号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。
・・・(略)・・・
従って、甲第3号証の『基台に沿って水平移動するとともに、架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える構成』を、甲第1号証に適用するとともに、甲第3号証において、基台に備えられた架台21Lを、本件特許の上前整形部(4)のように、位置固定する構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更にすぎないものであって、いわゆる当業者にとって容易である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第14ないし16頁)

(カ)甲第1号証に記載された発明に対する甲第4号証記載の構成の適用、及び、当該適用のための具体的な動機付けについて、
・・・(略)・・・
従って、甲第4号証には、本件特許発明4の構成要件H、Jに相当する構成、すなわち、『回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2』が開示されている。
従って、上記(3)で説明したように、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第4号証の課題には共通性があり、また、甲第4号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第4号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。
また、甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第4号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。
・・・(略)・・・
よって、甲第1号証の水平旋回しない「第2のユニットB」に代えて、甲第4号証の水平旋回する構成の「回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2」を適用することは、いわゆる当業者にとって容易である。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第16ないし18頁)

(キ)甲第1号証に記載された発明に対する甲第5ないし6号証記載の周知技術の適用、及び、当該適用のための具体的な動機付けについて、
・・・(略)・・・
このように、甲第5号証及び甲第6号証には、対象物の傾斜した側辺に合わせて、定規を回動させる周知の構成が開示されている。
・・・(略)・・・
当業者であれば、・・・(中略)・・・甲第5号証及び甲第6号証に記載の被処理体の勾配(傾斜)に合わせて、定規を回動する周知の構成に着目して、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットB」に代えて、このような周知の事項を適用することに動機付けがあることは明らかである。
(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第18ないし19頁)



第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成28年9月30日付け審判事件答弁書、平成29年1月6日付け口頭審理陳述要領書を参照。)。

1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1の特徴
本件特許は「畳表の整形装置」である。これは本件特許の発明者が先に提案し、本件特許明細書中【先行技術文献】の【特許文献1】に挙げた甲1の「縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置」でもなければ、甲2ないし甲4のような公知の畳表と畳床を取り扱う畳製造装置でもない。ましてや、甲5や甲6のような建築用板状体の切断装置でもない。したがって、畳表のみを扱い、しかもその整形のみに特化し、畳表の裁断装置もないし、畳床との加工はしないから、畳表を畳床に縫い付けるミシンもなければ、接着装置も備えていない。このような装置は本件特許で初めて提案したものである。
本件特許の技術的解決課題は【0005】、【0006】に見られるように、畳床の平面視形状に合わせて畳表に折り目を付ける作業だけに特化した簡略な畳表整形装置の開発にある。
そのために、【請求項1】記載の畳表の整形装置の装置フレームには、構成A+Bからなる一体構成の「A レール(11)に沿って水平移動する上前整形部(2)と、B 前記上前整形部(2)に対して水平旋回する下前整形部(3)との構成」とし、上前側と下前側各装置の移動手段をそれぞれ水平移動と水平旋回に分担させて、装置の簡略化を図ったのである。
したがって、構成Aと構成Bのように2構成に分けるのではなく、A+B一体の構成要件とみるべきである。
このような本件特許発明の技術思想は、【請求項1】の構成A+Bと後述する【請求項4】の構成G+Hに共通するものとなり、審査の段階において引用された甲1や甲2の引用文献にはみられなく、これらの引用文献を合わせ考える動機付けや示唆もないから、特許になったものと思われる。
(平成28年9月30日付け審判事件答弁書第3頁)

(2)無効理由に対する被請求人の反論
本件特許発明と、甲1ないし甲6との間には課題の共通性が全く認められないから解決手段も全く異なる。請求人の主張には、重大な事実誤認とそれに基づく判断の誤りがあり、本件特許発明の解決課題に対する解決手段とその技術的意義を全く認識していない。
すなわち、本件特許発明の課題は、先に述べたように、「裁断装置や押上部材を省略し、畳床の平面視形状に合わせて畳表に折り目を付ける作業だけに特化した整形装置」を得ることにあり、そのために、【請求項1】のように上記「構成A+B」の組み合わせに特化したのである。
(平成28年9月30日付け審判事件答弁書第5頁)

2 本件特許発明4について
(1)本件特許発明4の特徴
本件特許は「畳表の整形装置」である。本件特許の発明者が先に提案した甲1の「縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置」でもなければ、甲2ないし甲4のような公知の畳表と畳床を取り扱う畳製造装置でもない。ましてや、甲5や甲6のような建築用板状体の切断装置でもない。したがって、畳表のみを扱い、しかもその整形のみに特化し、畳表の裁断装置もないし、畳床との加工はしないから、畳表を畳床に逢着ミシンもなければ、接着装置も備えていない。このような装置は本件特許で初めて提案したものである。
本件特許の技術的解決課題は【0005】、【0006】に見られるように、畳床の平面視形状に合わせて畳表に折り目を付ける作業だけに特化した簡略な畳表整形装置の開発にある。
そのために、【請求項4】では、畳表の整形装置の装置フレームには、G装置フレーム(1)に設けられたレール(11)に対して位置固定された上前整形部(4)と、Hこの上前整形部(4)に対して水平移動及び水平旋回する下前整形部(5)とから構成して、一方を固定にして他方の移動手段を水平移動と水平旋回に集約させて装置の簡略化を図ったのである。
したがって、構成Gと構成Hのように2構成に分けるのではなく、一体の構成要件G+Hとすべきである。
このような本件特許発明の技術思想は、前述の【請求項1】の構成A+Bと【請求項4】の構成G+Hに共通する構成要件となり、審査の段階において引用された甲1や甲2の引用文献にはみられない、これらの引用文献を合わせ考える動機付けや示唆もないから、特許になったものと思われることは前述の通りである。
(平成28年9月30日付け審判事件答弁書第9ないし10頁)

(2)無効理由に対する被請求人の反論
被請求人の反論趣旨は基本的には前記【請求項1】の内容と基本的には変わらない。【請求項1】の構成A+Bは「A 水平移動する上前整形部(2)と、B 前記上前整形部(2)に対して水平旋回する下前整形部(3)」であり、【請求項4】の構成G+Hは「G 位置固定された上前整形部(4)と、H 前記上前整形部(4)に対して水平移動及び水平旋回する下前整形部(5)」である。このように動きを簡略化した基本構成とすれば、技術思想や解決課題と解決手段が一致して発明の単一性が保てるのである。これらをことさら細かく分節して、各甲号証と対比した誤りがある。
請求人が引用した甲1ないし甲6のうち、甲1を除いては課題の共通性が全く認められない。したがって、甲1に甲2ないし甲6を組み合わせることに阻害要因が認められるから【請求項4】に至る困難性があることも、前記【請求項1】の無効理由に対するものと同様に反論できる。
(平成28年9月30日付け審判事件答弁書第11頁)

3 本件特許発明2及び3、5及び6について
本件特許の請求項2及び請求項3は、前記進歩性のある請求項1の従属項であるし、本件特許の請求項5及び請求項6は、前記進歩性を有する請求項4の従属項であるから、個々の反論は省略したが、これら従属請求項に係る発明にも特許法第29条第2項違反の無効理由はない。
(平成28年9月30日付け審判事件答弁書第11頁)

4 甲第1号証発明に甲第2号証ないし甲第6号証記載の構成を適用することの当業者にとって容易でない具体的な理由について
本稿第3の「通知書4(2)について」の項において、請求人の主張[審判請求書及び口頭審理陳述要領書(特に要領書3.(2)ないし(7))の反論]で述べた内容の、甲第1号証発明に甲第2号証ないし甲第6号証記載の構成を適用する動機付けに欠けることが、ここでの回答となる。
更に、本件特許発明の開発経過から説明すれば、本稿第4で述べたように、斬新な技術思想に基づいている。先ず、甲1の解決課題は、請求人が挙げた甲7(甲1の特許文献1)に開示された折曲げ装置では、「その構造上、畳表を(更に)鋭角的に折曲げることが困難であったが、甲1により、畳表を鋭角的に更に美しく折曲げることができる」ことにある(甲1[0010]の記載)。
そして、甲1になかった解決課題として、上記の本件特許明細書[0005]に加えて[0006]記載のように、完全に「畳表の整形装置」に簡略化しながら、畳床の平面視形状に合わせて畳表に折目を付ける作業だけに特化したのである。
したがって、甲1ないし甲6に甲7を加えても、これら7件の引用例からは、本件特許発明に至るだけの示唆も動機付けも見つけることは出来ないのである。
(平成29年1月6日付け口頭審理陳述要領書第11ないし12頁)



第5 当審の判断
1 本件特許発明について
(1)本件特許発明1ないし6は、本件特許の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された上記第2のとおりのものである。

(2)本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6には、裁断装置及び押上部材については記載されていない。そして、本件特許の明細書の「裁断装置や押上部材を省略し」(段落【0006】)及び「本発明の畳表の整形装置は、基本構成として、裁断装置や押上部材を省略し」(段落【0013】)との記載(下線は審決で付した。)からも、本件特許発明1ないし6は裁断装置及び押上部材を有しないと理解できる。


2 証拠について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。下記の甲第2ないし7号証も同様。)。

(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、主として縁布の無い畳、すなわち、縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置に関するものである。」

(イ) 「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を検討した結果、テーブルの上方から畳表のほぼ全長を押圧して折り癖をつける押圧刃を縁部に有する押え定規プレートと、該押え定規プレートによって押圧された畳表の前記押圧刃から表出した部分(畳表)に対して所定幅を残して裁断する裁断装置を設けた移動ベースと、該移動ベースを前記押え定規プレートに沿って前進又は後退させる駆動手段と、前記押え定規プレートの押圧刃の先端から畳表の厚み程度の間隔を置いて畳表のほぼ全長を畳表の下方から押し上げる長尺押上部材とからなる縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置とした。ここにいう所定幅とは畳表の上前又は下前の端縁から内方へ折返して畳側面を覆うのに充分な幅をいう。」

(ウ) 「【0013】
上記いずれかに記載の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置を1ユニットとして、枠体の左右に1ユニットずつ押え定規プレートの押圧刃が外側を向くように左右略対称に設けてなる縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置とすることも好ましい。」

(エ) 「【0019】
本例の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置は、図1?図2に見られるように、テーブル2、押え定規プレート34、移動ベース4、駆動手段42及びアングルプレート(長尺押上部材)6とからなり、移動ベース4には裁断装置5が設けられている。また、アングルプレート6を押え定規プレート34の上側に押込む押込み手段7がテーブル2の下側に設けられている。
【0020】
テーブル2は枠体1上に設置されており、テーブル2上に畳表8が載置される。押え定規プレート34は、テーブル2の上方から畳表8のほぼ全長を押圧し、折り癖をつける押圧刃35を縁部に有する。押圧刃35の先端部の位置は、テーブル2の縁部の位置と上下方向に一致する様に押え定規プレート34が設置されている(図8参照)。また、押え定規プレート34は上下動ベース3の下部に設置されており、上下動ベース3と枠体1とを連結した第1のシリンダ31と第2のシリンダ32によって畳表8の押え又は解除等のための上下動が可能である。このとき、畳表8は折返す方向が上向き、すなわち裏面を上向きにして、テーブル2上に載せられている。折返す部分は加湿するか蒸気噴霧、水塗布を行うと曲げ易い。」

(オ) 「【0029】
畳表8の裁断後、図6及び図9に示すように、昇降シリンダ64を伸張させて、アングルプレート6の立上がり部61に畳表8のほぼ全長を下方から押し上げさせる。これによって、畳表8がほぼ直角に折曲げられる(図12参照)。上記第1の実施例では、アングルプレート6の立上がり部61が畳表8を折曲げる構成としているが、これに制限されない。畳表8のほぼ全長を下方から押し上げて畳表8を直角に折曲げるだけであれば、アングルプレート6の代わりに長板状の部材を用いても良い。しかし、後述する様に、畳表8を鋭角的に折曲げるのであれば、アングルプレート6を用い、その立上がり部61が畳表8を折曲げる構成とする必要がある。」

(カ) 「【0034】
図13?図14は本発明の第2の実施例の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置を示しており、図13は第2の実施例の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置の正面図、図14は、図13において押圧刃35と押圧刃351との先端の間隔を、W1からW2に広げた状態の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置の正面図である。図15は、図13の状態の、第2の実施例の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置によって裁断、折曲げられた畳表8の斜視図である。
【0035】
本発明の第2の実施例では、図1?図7に示した、枠体1の一端部に設けた縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置(第1のユニットA)に、枠体1の他端部(図13では左側)に第2のユニットBを追加した構成としている。そして、枠体1の左右に1ユニットずつ、押え定規プレート34の押圧刃35及び押え定規プレート341の押圧刃351が外側を向くように各ユニットを左右略対称に設けた構成としたものである。また、枠体1の左右のユニットの間隔を、押圧刃35の先端と押圧刃351の先端の間隔を基準として、畳の巾に合わせて調整する調整手段9を設けたものである。これにより、畳表8の上前81側および下前82側(左右)を所望の寸法で同時に裁断・折曲げることが出来るのである。
【0036】
図13に示す様に、第2のユニットBのテーブル201には、左右に移動ローラ21が設けられており、テーブル201が枠体1上部を左右に移動可能としている。テーブル201の下面62には、枠体1上部の内側面に固定された位置決めモータ91によって回転する運動伝達用ねじ92(雄ねじ)に勘合した、位置決めボールねじ93(雌ねじ)が固定されており、枠体1の左右のユニットの間隔を調整する調整手段9を構成している。
【0037】
枠体1の左右のユニットの間隔を調整する具体的な方法としては、例えば、第2のユニットBの押え定規プレート341の押圧刃351の先端位置を検出する位置センサを、第1のユニットAの押え定規プレート34の押圧刃35の先端を基準として、所望の畳(京間、江戸間等)の巾に合わせて複数箇所設けて、第2のユニットBの押え定規プレート341の押圧刃351の先端が所望の畳の巾になる位置に到達するまで、位置決めモータ91を正転または反転させる制御手段を設けること等で実現することができる。図14は図13の状態から、第2のユニットBを第1のユニットAから遠ざけて、より大きな畳の巾W2に対応するようにしたものである。
【0038】
図13の状態の、本第2の実施例の縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置によって、裁断、折曲げられた畳表8の斜視図を図15に示す。畳の巾W1に合わせて、畳表8の上前81側および下前82側がともに分断、折曲げられている。この状態から上前81側及び下前82側を開き気味にして、畳床に被せて縫着するのである。」

(キ) 図面
上記(ア)ないし(カ)で摘記した事項を踏まえると、図13及び14には次の事項が図示されていることが看取できる。
・枠体1に対して第1のユニットAが位置固定されていること。
・第1のユニットA側(図13及び14の右側)において、図2の枠体1に対して位置固定されているテーブル2に対応する部材として、図上左側に描かれたテーブル201に対向するように、図上右側にテーブル(以下「テーブル2」という。)が描かれていることが見てとれる。
・第2のユニットB側(図13及び14の左側)のテーブル201が枠体1上部を左右に移動可能であること。
・押え定規プレート34がテーブル2の上面と共に畳表8を押圧すること。
・押え定規プレート341がテーブル201の上面と共に畳表8を押圧すること。
・第2のユニットBにおいて、図2の上下動ベース3と同様に描かれた部材の下部に押え定規プレート341が設置されており、押え定規プレート341はテーブル201に対して上下動が可能に設置されていること。
・第1のユニットA及び第2のユニットBにおいて、図2の移動ベース4、裁断装置5及びアングルプレート(長尺押上部材)6と同様に描かれた部材が配置されること。

イ 甲第1号証に記載の発明の認定
甲第1号証には、上記ア(ア)ないし(カ)で摘記した事項及び上記(キ)を踏まえると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「枠体1に対して位置固定された第1のユニットAと、
左右に移動ローラ21が設けられたテーブル201により、枠体1上部を左右に移動可能な第2のユニットBとからなり、
第1のユニットAは、
枠体1に対して位置固定されたテーブル2と、
前記テーブル2に対して上下動が可能に設置され、テーブル2の上面と共に畳表8を押圧する押え定規プレート34とを備え、そして
第2のユニットBは、
枠体1上部を左右に移動可能なテーブル201と、
前記テーブル201に対して上下動が可能に設置され、前記テーブル201の上面と共に畳表8を押圧する押え定規プレート341とを備えるものであって、
さらに、第1のユニットA及び第2のユニットBは、該押え定規プレート34,341によって押圧された畳表8の押圧刃から表出した部分(畳表8)に対して所定幅を残して裁断する裁断装置5を設けた移動ベース4と、
前記押え定規プレートの押圧刃34,341の先端から畳表8の厚み程度の間隔を置いて畳表のほぼ全長を畳表の下方から押し上げる長尺押上部材6とを備える縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置。」


(2)甲第2号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、板状をなす床材の表面及び側面を表カバーで覆う構成とされた敷物を製造する際に、表カバーの端部を、床材の側面を覆うように接着剤により床材に接着するための表カバー接着装置に関する。」

イ 「【背景技術】
【0002】
敷物、例えば畳においては、板状をなす床材(畳床)の表面及び側面を表カバーとなる畳表で覆った構成となっている。・・・(略)・・・」

ウ「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の製造方法では次のような問題点がある。まず、パウダー状のホットメルト3を接着剤として使用する場合、これをアイロン等で加熱して溶かす必要がある。このため、畳表1の材料として天然のい草の場合には殆ど問題はないが、合成樹脂製のものの場合には、加熱により畳表1が変形しやすいという問題がある。また、畳表1の端部1aを、床材2の裏面2bまで回り込ませずに、床材2の側面2aにおいて接着しようとする場合、パウダー状のホットメルト3を床材2の側面2aに付着させることができず、また、畳表1の端部1aの上面にパウダー状のホットメルト3を振り掛けても、畳表1の端部1aを床材2の側面2a側に折り曲げた際に、そのホットメルト3が床材2側に移動して、畳表1の折り目部分(床材2の下端部の近傍)に集まってしまい、この結果、畳表1の端部1aを床材2の側面2aに接着させることができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたもので、表カバーの端部を床材に接着する際に、表カバーが熱で変形することがなく、また、畳表の端部を床材の側面にも、床材の裏面にも良好に接着することができる敷物の表カバー接着装置を提供することを目的とする。」

エ 「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明による敷物の表カバー接着装置は、板状をなす床材の表面及び側面を表カバーにより覆う構成とされた敷物を製造する際に、前記表カバーの端部を、前記床材の側面を覆うように接着剤により前記床材に接着するためのものであって、前記表カバーを下側にし、かつその表カバーの端部を前記床材の側面から側方へ張り出させた状態で、前記表カバー及び床材を重ねた状態で載置する載置台と、流動性を有し、かつ加熱せずに固化する接着剤を、前記床材の側面、前記床材の裏面の縁部、前記床材から張り出した前記表カバーの端部の上面のうち少なくとも一箇所に塗布することが可能な接着剤塗布手段と、前記床材から張り出した前記表カバーの端部を前記床材側へ折り曲げると共に前記接着剤が塗布された部分に対応する部分を押え付けて、前記表カバーの端部を前記床材に接着させる押え手段とを備えたことを特徴とする。」

オ 「【0009】
以下、本発明の一実施例について図1ないし図12を参照して説明する。
まず、全体の概略構成を示す図1?図4において、本装置のベースフレーム11は、鋼材を組み合わせて左右方向に長い矩形の枠状に構成されている。このベースフレーム11の上部における前フレーム12及び後フレーム13の上面には、それぞれ左右方向に延びるレール14が設けられている。このベースフレーム11の上部には、図1において左側に固定側ユニット15が配設され、右側に可動側ユニット16が配設されている。
【0010】
固定側ユニット15の固定側フレーム20は、正面から見て右側が開放したほぼコ字形をなしている。この固定側フレーム20の前後両側の下部には、2個ずつのコロ21が回転可能に設けられていて、これらコロ21が上記レール14上に転動可能に配置されている。なお、コロ21の幅は、レール14の幅より十分に大きく設定されている。また、固定側フレーム20は、後部側の下部に設けられた支点軸22を支点として前部側が水平方向へ回動可能な構成となっている。支点軸22は、ベースフレーム11に回動可能に支持されている。
【0011】
ベースフレーム11において、固定側フレーム20の前部の下方に位置させて、位置調整手段を構成する送りねじ機構23が配設されている。この送りねじ機構23は、ベースフレーム11に左右方向に延びた状態で軸受24aを介して回転可能に設けられた送りねじ24と、この送りねじ24に螺合した送りねじナット25と、送りねじ24を歯車機構26を介して回転させる正逆回転が可能なモータ27と、送りねじナット25と固定側フレーム20とを連結した連結金具28とから構成されている。ここで、モータ27が一方向へ回転されると、歯車機構26を介して送りねじ24が一方向に回転され、送りねじナット25がその送りねじ24に沿って例えば左方向へ移動され、また、モータ27が逆方向へ回転されると、歯車機構26を介して送りねじ24が反対方向に回転され、送りねじナット25がその送りねじ24に沿って右方向へ移動されるようになり、これに伴い固定側フレーム20が、上記支点軸22を中心に水平方向に回動されるようになる。このとき、コロ21の幅はレール14より十分に大きく設定されているので、コロ21はレール14上を移動しても、レール14からは外れないようになっている
【0012】
固定側フレーム20の下部には2個のシリンダ30(図4参照)が上向きに設けられていると共に、これら2個のシリンダ30のロッド30aの上端部に、載置台を構成する受けプレート31が連結されていて、この受けプレート31が、2個のシリンダ30により上下方向へ移動されるようになっている。受けプレート31は、前後方向に長い矩形板状をなしている。固定側フレーム20において、受けプレート31の左側に位置させて、ブロック状の固定プレート32が固定状態に設けられ、この固定プレート32の上面に、押え手段を構成する表押え用プレート33が、プレートガイド34に沿って左右方向に移動可能に設けられている。表押え用プレート33は、2個のエアシリンダ35(図2参照)により左右方向へ移動されるようになっている。
・・・(略)・・・
【0014】
固定側フレーム20の上部には、上記受けプレート31の上方に位置させて、床押え用プレート38が設けられている。この床押え用プレート38は、固定側フレーム20に設けられた2個の下向きのエアシリンダ39により上下方向へ移動されるようになっている。また、固定側フレーム20の上部には、前後方向に延びる走行レール40が設けられていて、この走行レール40に、走行ユニット41がこの走行レール40に沿って移動可能に設けられている。走行ユニット41における走行ベース42には、筋付け手段を構成する筋付けローラ43と、接着剤塗布手段を構成するホットメルト用ガン44とが設けられている。筋付けローラ43は、走行ベース42に回動アーム45を介して支点45aを中心に回動可能に取り付けられている。回動アーム45の一端部には、エアシリンダ46のロッド46aの先端部が連結されていて、筋付けローラ43は、そのロッド46aの移動に伴い支点45aを中心に前後方向へ回動されるようになっている。ホットメルト用ガン44は、走行ベース42に支点47を中心に回動可能に取り付けられている。」

カ 「【0016】
次に、可動側ユニット16について説明する。この可動側ユニット16の可動側フレーム60は、正面から見て左側が開放したほぼコ字形をなしていて、上記固定側フレーム20と対向するように配置されている。この可動側フレーム60の前後両側の下部にも、固定側フレーム20と同様に、2個ずつのコロ21が回転可能に設けられていて、これらコロ21が上記レール14上に転動可能に配置されている。
【0017】
ベースフレーム11において、可動側フレーム60の下方における前部と後部に位置させて、位置調整手段を構成する送りねじ機構61,62が配設されている(図2参照)。これら送りねじ機構61,62は、これらの送りねじ63,64が、上記した固定側フレーム20の送りねじ機構23における送りねじ24よりも長く設定されている以外は、その送りねじ機構23と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0018】
ここで、前部側の送りねじ機構61のモータ27が回転されることに伴い送りねじ63が回転されると、送りねじナット25を介して可動側フレーム60の前部が左方向または右方向に移動され、また、後部側の送りねじ機構62のモータ27が回転されることに伴い送りねじ64が回転されると、送りねじナット25を介して可動側フレーム60の後部が左方向または右方向に移動されるようになっている。
【0019】
可動側フレーム60の下部にも、固定側ユニット15と同様に、2個の上向きのシリンダ65と、このシリンダ65により上下方向へ移動される受けプレート(載置台)66が設けられ、また、受けプレート66の右側に位置させて、固定プレート67と、この固定プレート67の上面に、表押え用プレート(押え手段)68が、プレートガイド69に沿って左右方向に移動可能に設けられている。表押え用プレート68は、2個のエアシリンダ70により左右方向へ移動されるようになっている。表押え用プレート68にも、冷却手段を構成するエア吹出し口71が複数箇所に設けられている。このエア吹出し口71にも左横向きと下向きとがあり、接続口71aには図示しないエア供給源に接続された接続チューブが接続される。
・・・(略)・・・
【0021】
この走行ユニット78は、固定側ユニット15の走行ユニット41と基本的に同様な構成となっているので、同一の機能の部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。従って、この走行ユニット78にも、筋付けローラ43及びホットメルト用ガン44が設けられている。なお、走行ユニット78における筋付けローラ43及びホットメルト用ガン44は、前記走行ユニット41における筋付けローラ43及びホットメルト用ガン44に対して対称となるように配置されている。」

キ 「【0024】
まず、図1に二点鎖線で示すように、シート状をなす畳表100を下にし、かつその畳表100の端部を畳床101の側面から側方へ張り出させた状態(図8参照)で、これら畳表100及び畳床101を重ねて左右の受けプレート31,66の上面に掛け渡した状態で載置する。なお、左右の受けプレート31,66間の距離と、畳床101の長さ寸法とが対応しない場合は、可動側ユニット16の送りねじ機構61,62のモータ27を駆動させることにより、左右の受けプレート31,66間の距離を畳床101の長さ寸法に対応させる。」

ク 「【0026】
そして、畳床101の左側の側面と、固定側ユニット15の表押え用プレート33の端面との位置を合わせる。このとき、畳床101の左側の側面に曲(くせ)がある場合には、その曲に合わせるように、送りねじ機構23のモータ27を駆動させて、固定側フレーム20の前部を支点軸22を中心に回動させる。また、畳床101の右側の側面と、可動側ユニット16の表押え用プレート33の端面との位置を合わせる。このときも、畳床101の右側の側面に曲がある場合には、その曲に合わせるように、送りねじ機構61,62を駆動させて、可動側フレーム60の向きを調整する。なお、図5には、畳床101の長さが短く、しかも、右側の側面に曲がある場合に、可動側ユニット16を、その曲に合わせるように位置を傾けた状態が示されている。」

ケ 図面
上記オで摘記した事項を踏まえると、図1から、ほぼコ字形の固定側フレーム20は、固定側ユニット15の主要部をなすことが看取できる。固定側フレーム20が水平方向へ回動することは、固定側ユニット15が水平方向へ回動することを意味するといえる。
また、上記カで摘記した事項を踏まえると、図1から、ほぼコ字形の可動側フレーム60は可動側ユニット16の主要部をなすことが看取できる。可動側フレーム60の向きを調整することは、可動側ユニット16の向きを調整することを意味するといえる。


(3)甲第3号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第3号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、畳床の框を所定の寸法に裁断し、裁断された框に畳表を縫い付ける框縫装置に関し、特に、一連の框縫い作業の省力化を図ったものである。

イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の方法によると、畳床の裁断から畳表を固定するまでの一連の作業において、重い畳を移動させるのに多くの労力を必要とし、裁断する寸法を誤らないように注意しなければならなかった。
【0004】そこで、この発明は、畳床の框の裁断および畳表の框縫いにおける労力を軽減して、省力化するとともに、裁断する寸法の設定を容易ならしめるために考えられたものである。」

ウ 「【0005】
【課題を解決するための手段】この発明の畳床7の框を裁断して畳表を縫い付ける装置は、基台上で間隔を変化し得る一対の架台21R、21L、両架台の間隔を検出する第1のエンコーダ20、両架台にそれぞれ載置されて裁断角度を変え得るカッター24R、24L、このカッター24R、24Lの裁断角度を検出する第2のエンコーダ29R、29L、予め入力された畳のくせのデータと上記各エンコーダ20、29R、29Lの出力に基づいて両架台21R、21Lの間隔および上記カッター24R、24Lの裁断角度を制御する制御手段を有し、畳床の框をくせ取りしながら所定の寸法に裁断する左右の裁断装置2R、2Lと、一対の架台21R、21Lの中間に配置されて上下に昇降できるターン・テーブル5と、畳表にテンションを付与する畳表チャック装置4、テンションが付与された状態で畳床を畳表とともに固定する床締部材35、畳床の框に畳表を縫い付けるミシン31を有する縫着装置3とにより構成されている。」

エ 「【0007】
畳床7の框を裁断する裁断装置2R、2Lは、図1および図2に示すように、スクリューによって基台上で互いに反対方向へ同じ距離だけ移動して間隔を変化できる一対の架台21R、21Lと、両架台21R、21Lにそれぞれ載置された2つのカッター24R、24Lと、両架台21R、21Lの中間に設けられたターン・テーブル5により構成されている。
【0008】
両架台21R、21Lに載置された裁断装置2R、2Lは、畳床7を載せるテーブル22R、22Lと、このテーブル22R、22Lの端部に取り付けられ、畳床7の上前を押し当てて位置決めする上前ストッパー23R、23Lと、テーブル22R、22Lに載せられた畳を固定する第1の床締部材25R、25Lと、畳床7を裁断するカッター24R、24Lとを備え、裁断装置2R、2Lは、その端部を回動中心26R、26Lとしてモータ27R、27Lおよびスクリュー28R、28Lによって回動できるように構成され、両回動中心26R、26Lの間には、その間隔を検出するためのエンコーダ20が設けられ、また、裁断装置2R、2Lの回動角度をそれぞれ検出するためのエンコーダ29R、29Lが設けられている。」

オ 「【0016】
(4) 押釦スイッチS1を押すと、エンコーダ20の出力が設定された上前の長さとなるように、一対の架台21R、21Lの間隔を変化させ、エンコーダ29R、29Lの出力が設定された框のくせと一致するように裁断装置2R、2Lの回動角度を変化させて、カッター24R、24Lの裁断条件を設定する。」


(4)甲第4号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】基台のミシン側又は反対側の他端に固定された裁断装置と、基台上を移動する移動架台を備えており、移動架台は上下に昇降し畳床を180度旋回させるターン・テーブルと畳床を保持する保持装置とを具備し、移動架台と裁断装置の間隔を検出する第1のエンコーダと該裁断装置の裁断角度を検出する第2のエンコーダ、予め入力された畳のくせのデータと上記各エンコーダの出力に基づいて、上記移動架台の位置および上記裁断装置の裁断角度を制御する制御手段を有し、畳床の框をくせ取りしながら所定の寸法に裁断するカッターと、畳表にテンションを付与する畳表チャック装置、テンションが付与された状態で畳床を畳表とともに固定する床締部材、畳床の框に畳表を縫い付けるミシンを有する縫着装置とを具備することを特徴とする畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、畳床の框を所定の寸法に裁断し、裁断された框に畳表を縫い付ける框縫装置に関し、特に、一連の框縫い作業の省力化を図ったものである。」

ウ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】特開平9-250229号による装置は畳床の框を所定の寸法に裁断する為、左右2台の裁断装置を備えている。この装置は「畳床を所定の寸法に裁断し」「裁断された框に伸張した畳表を縫い付ける」という二つの作用を行うものである。他方畳の製作は「裁断した畳床に畳表を縫い付ける」『新畳』製作のための作業と「古い畳の畳表を剥がし、畳表を裏返し、または取り替えて縫い付ける」『表替え』の作業に大別される。
【0004】この『表替え』の作業は、敷込まれていた部屋から持ち帰った畳の寸法を測定し、畳表を縫い付けていた糸を切って畳表を剥がす作業が行われる。この剥がし作業のためには通常角材等で枠を作った台とかテーブルが使用される。
【0005】然るに特開平9-250229号の装置のように中央のターンテーブルをはさんで左右に2台の裁断装置を備えていると、裁断用のカッターや床締部材が上部にあるため、この装置の上で畳表を剥がす作業を行うことができない。また、裁断機を2台有するため、装置も複雑で高価なものとなり、さらに設置スペースも大きくなる。
【0006】そこで、左右2台あった裁断機を1台にして、そのテーブル上で畳表を剥がす作業を行うことができ、より安価で設置スペースも少ない「畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置」を提供するために考えられたものである。

エ 「【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の畳床7の框を裁断して畳表を縫い付ける装置は、基台上の1端に固定された固定架台86、基台上を移動する移動架台61、移動架台61と裁断カッター24との距離を測定する第1のエンコーダ80、ミシン側の基台端近くに載置された裁断架台21は基台上でその端部を回動中心26としてカッター24の裁断角度を変えることが出来る。このカッターの裁断角度を検出する第2のエンコーダ29、予め入力された畳のくせのデータと上記各エンコーダ80、29の出力に基づいて移動架台61と裁断架台21の間隔および上記カッター24の裁断角度を制御する制御手段を有し、畳床の框をくせ取りしながら所定の寸法に裁断する裁断装置2と、移動架台61に配置されて上下に昇降できるターン・テーブル65と、ターン・テーブル65上に畳床を固定するため、ターン・テーブル65に取付けられた保持装置66、畳表にテンションを付与する畳表チャック装置4、テンションが付与された状態で畳床を畳表とともに固定する床締部材35、畳床の框に畳表を縫い付けるミシン31を有する縫着装置3とにより構成されている。」

オ 「【0009】畳床7の框を裁断する裁断装置2は、図1及び図2に示すようにスクリュー82によって基台上を左右に移動して、裁断架台21との間隔を変化させることができる移動架台61とミシン側の基台端近くに載置された裁断架台21により構成されている。
【0010】
・・・(略)・・・裁断装置2には畳床7を載せるテーブル22、位置決めするために畳床7を押し当てる上前ストッパー23、位置決めされた畳床7を固定する床締部材25と畳床7を裁断するカッター24を備え、裁断装置2はその端部を回動中心26としてモーター27及びスクリュー28によって回動出来るように構成され、裁断装置2の回動角度を検出する為のエンコーダ29が設けられている。また、移動架台61と裁断カッター24との間隔を検出するため、エンコーダ80が設けられている。」

カ 「【0041】
【発明の効果】・・・(略)・・・また、裁断装置2を縫着装置3側に設けることにより、固定架台86、移動架台61のターン・テーブル65上を作業台として活用できる。装置全体として小型になり、設置面積の少ない装置となる。」

(5)甲第5号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 明細書第1頁第13行目-第2頁第4行目
「1.考案の目的
本考案は、建築用定規に関するものである。
従来、建築用の外壁財を適当な長さに切削するときにおいて、・・・(略)・・・
そこで、本考案はこのような課題を解決するために、作業能率のあがる便利な定規を提供することを目的とするものである。」

イ 明細書第3頁第13行目-第4頁第11行目
「 而して、いま本考案の定規を使用するときは、板金業者などの作業者は、工事現場において大工からその屋根勾配を聞く。すると、大工は屋根の寸勾配を作業者に言うから、その寸勾配に合わせてさお管(9)を円弧長孔(8)を介して回動し、円弧長孔(8)上に表示している所定の勾配角度目盛(6)上において螺子(10)を緊締する。しかる後に、このさお管(9)を所定の外壁材(a)の長手方向の側縁部に当接する。すると、定規体(1)の長手方向の長さ目盛(3)部側が外壁材(a)の上面に角度を形成して位置するから、ここでこの定規体(1)の長辺部の曲折部(2)に沿つて線(1)を引く。しかる後に、定規体(1)を横方向に位動し丸鋸(b)の刃先が前記線(1)上に来る位置において切削を始めるが、このとき鋸台(c)の側縁部は定規体(1)の長辺部の曲折部(2)に当接して移動していく。(以上につき第3図参照)
これによつて、所定の屋根勾配角度を有する外壁材が形成される。」


(6)甲第6号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第6号証には、次の事項が記載されている。

ア 第1頁第2欄第2行目-第2頁第3欄第5行目
「 本考案は、基台に設けたV字状固定刃、L字状固定刃と、ハンドルに設けたV字状可動刃、L字状可動刃との間で、被切断材を位置決めし切断可能とすることを基本として、例えば木造建築物の屋根工事用の遮水板、平ぶき板等として加工される素板の所定個所に、はぜ継ぎ用のはぜ片形成に必要なV字状あるいはL字状の切欠部を簡易、迅速にしかも精度よく形成することを可能とした手押し切りカツタに関する。
・・・(略)・・・
本考案はかかる問題点を解決しうる手押し切りカツタの提供を目的とし、以下その一実施例を、図面に基づいて説明する。」

イ 第2頁第3欄第6-39行目
「第1?5図において本考案の手押し切りカツタ1は、一側縁部2にV字状固定刃3とL字状固定刃5とが設けられた基台6の該一側縁部2前端2aに、ハンドル7を回動自在に枢着するとともに、該ハンドル7にV字状可動刃9とL字状可動刃10とを設け、かつ該基台6上に被切断材11の切断幅および切断位置を定める、幅決め定規12と位置決め定規13とを設けたものである。
基台6は、平担な上面を有する矩形板状の上板15周縁に脚板16を下設してなり、その一側縁部2には、稍前端寄り部位に、前記V字状固定刃3を嵌め込むV字状の切欠凹部17が、又該切欠凹部17との後方に所定間隔を隔てて、前記L字状固定刃5を嵌め込むためのL字状の切欠凹部19が設けられている。該V字状固定刃3は、その刃稜3aが外方に向けV字状に開くごとく形成され、又L字状固定刃5は、その刃稜5aが、基台6の内方に向け斜め後方に延び、その先端部で折曲がり基台6の前後方向前方に延び、基台6の後端縁部20に至るL字状を呈するごとく形成され、両固定刃3,5の刃稜3a,5aは基台6の上面21と略同一平面上にある。又該V字状固定刃3およびL字状固定刃5の、一側縁部2からの最大隔て幅L1,L2を略等しく設定するとともに、V字状固定刃3とL字状固定刃5との間隔は、V字状固定刃3の折曲点23とL字状固定刃5の折曲点25との距離Lが約9.09cm(3寸)となるように設定している。なお該間隔は、第6?7図に示すごとき、屋根と外壁との境界部分に取付けらる遮水板24を形成する素板26一短辺の、略中央部と側部に設けられる、V字状の切欠部27の折曲点29とL字状の切欠部30の折曲点31との間の距離L′(通常約9.09cm(3寸))に等しく設定したものである。」

ウ 第3頁第5欄第9-16行目
「 前記幅決め定規12および位置決め定規13は、通常状態においては前記のごとく移動するが、第2図において一点鎖線で示すごとく、被切断材11の幅寸度の関係から一側縁部2に対し一定の角度をもつて傾くばあいもある。かかるばあいには前記位置決め定規13を、同図において一点鎖線で示すごとく、例えば、幅決め定規12と直交するように傾ける。」


(7)甲第7号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許出願前に頒布された甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0009】
【発明の実施の形態】図1?図3は本発明の実施例であって、図1は畳表の上前又は下前側を折目付けするための本発明の装置正面図であり、図2は同装置の側面図、図3は折目付け後の本発明の装置の側面図である。この装置は、機台1の上方から畳表の上前又は下前のほぼ全長を所定幅で押圧保持する鋭角断面の上下動押え定規プレート2が設けられている。所定幅とは畳表の上前又は下前の端縁から内方へ折返して畳側面を覆うのに充分な幅Wであり、畳床の厚み、畳表の幅等に合わせて上前又は下前の端縁から内方へとる幅である。上下動押え定規プレート2は機台1の上方に設けられたシリンダ3によって畳表4の押え又は解除のための上下動が可能である。このとき、畳表4は折返す方向が上向き、すなわち裏面を上向きにして、機台1上に載せられている。折返す部分は加湿するか蒸気噴霧、水塗布を行うと曲げ易い。
【0010】上下動押え定規プレート2の端縁から畳表4の略厚み程度の間隔を置いて、保持する畳表4のほぼ全長を下面側から支持するように回動折曲版5が軸6,6で機台1側へ軸支されている。回動折曲版5はその保持枠7へ回動シリンダ8のロッドが連結されており、畳表の上前又は下前の端縁の所定幅Wを図1のように下方で支持した状態から、回動シリンダ8の伸長によって保持する畳表の上前又は下前の端縁を図3のように定規プレート2に沿って折返すのである。このように畳表に畳縁の上前又は下前に沿って折目が付けられると、畳床へ正確かつ容易に縫着することができる。」

イ 図1ないし3から、畳表の上前又は下前側を折目付けするための装置は、裁断装置を有していないことが読み取れる。


3 本件特許発明1の進歩性要件について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「枠体1」は、本件特許発明1の「装置フレーム」に相当し、同様に、「左右に移動」は「水平移動」に、「第2のユニットB」は「上前整形部」に、「第1のユニットA」は「下前整形部」に、「テーブル201」は「移動ベース」に、「上下動が可能に設置され」ることは「昇降自在に支持され」ることに、「畳表8」は「畳表」に、「押圧する」は「挟持する」に、「押え定規プレート341」は「上前定規」に、「押え定規プレート34」は「下前定規」にそれぞれ相当する。

イ 甲1発明の「テーブル2」と本件特許発明1の「旋回ベース」とは、「水平移動しないベース」である点で共通する。

ウ 甲1発明の「縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置」は、「整形」が「裁断折曲げ」を含むことから、本件特許発明1の「畳表の整形装置」に相当する。

エ したがって、両者は、
「装置フレーム上で水平移動する上前整形部と、
下前整形部とからなり、
上前整形部は、
装置フレーム上で水平移動自在な移動ベースと、
前記移動ベースに対して昇降自在に支持され、移動ベースの上面と共に畳表を挟持する上前定規とを備え、そして
下前整形部は、
水平移動しないベースと、
前記水平移動しないベースに対して昇降自在に支持され、水平移動しないベースの上面と共に畳表を挟持する下前定規とを備える畳表の整形装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「下前整形部」について、
本件特許発明1は「下前整形部」が「前記上前整形部に対して水平旋回する」構成であって、「下前整形部」に「装置フレーム又はレールに垂直軸で軸着され、前記垂直軸を中心に水平旋回自在な旋回ベース」を備えるのに対して、甲1発明は「テーブル2」が「枠体1に対して位置固定され」ており、水平旋回しない点。

[相違点2]
本件特許発明1は、裁断装置及び押上部材を有しないのに対し(上記1(2)を参照。)、甲1発明は裁断装置及び押上部材を有する点。

[相違点3]
「水平移動自在な移動ベース」について、
本件特許発明1は「装置フレームに設けられたレールに沿って水平移動する」のに対し、甲1発明は「テーブル201」に「移動ローラ21が設けられ」て水平移動するが、レールの特定がない点。


(2)相違点1について
ア 甲第2号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第2号証に記載の技術
甲第2号証には、上記2(2)アないしクで摘記した事項及びケの事項を踏まえると、板状をなす床材(畳床101)の表面及び側面を表カバー(畳表100)で覆う構成とされた敷物(畳)を製造する際に、表カバー(畳表100)の端部を、床材(畳床101)の側面を覆うように接着剤により床材(畳床101)に接着するための表カバー接着装置において、
左右方向に長い矩形の枠状に構成されているベースフレーム11と、このベースフレーム11の上部における前フレーム12及び後フレーム13の上面でそれぞれ左右方向に延びるレール14と、前記上部の左側に配設された固定側ユニット15と、前記上部の右側に配設された可動側ユニット16とを備え、
固定側ユニット15は、正面から見て右側が開放したほぼコ字形をなす固定側フレーム20と、位置調整手段として、固定側フレーム20の前部の下方に位置され、モータ27の回転によって、後部側の下部に設けられた支点軸22を中心に固定側フレーム20を水平方向に回動される送りねじ機構23と、載置台を構成する受けプレート31と、流動性を有しかつ加熱せずに固化する接着剤を塗布することが可能な接着剤塗布手段を構成するホットメルト用ガン44と、前記表カバー(畳表100)の端部を前記床材(畳床101)に接着させる前記押え手段を構成する表押え用プレート33を有し、
可動側ユニット16は、正面から見て左側が開放したほぼコ字形をなし、上記固定側フレーム20と対向するように配置されている可動側フレーム60と、位置調整手段として、可動側フレーム60の下方における前部と後部に位置され、モータ27の回転によって可動側フレーム60の前部と後部を左方向または右方向に移動させる送りねじ機構61,62と、前記載置台を構成する受けプレート66と、前記接着剤塗布手段を構成するホットメルト用ガン44と、前記押え手段を構成する表押え用プレート68を有し、
左右の受けプレート31,66は、前記表カバー(畳表100)を下側にし、かつその表カバー(畳表100)の端部を前記床材(畳床101)の側面から側方へ張り出させた状態で、前記表カバー(畳表100)及び床材(畳床101)を重ねた状態で載置する載置台を構成し、
前記載置台を構成する左右の受けプレート31,66間の距離と、畳床101の長さ寸法とが対応しない場合は、可動側ユニット16の送りねじ機構61,62のモータ27を駆動させることにより、左右の受けプレート31,66間の距離を畳床101の長さ寸法に対応させて、
畳床101の左側の側面に曲(くせ)がある場合には、その曲に合わせるように、送りねじ機構23のモータ27を駆動させて、固定側ユニット15の前部を支点軸22を中心に水平方向に回動させるとともに、畳床101の右側の側面に曲がある場合には、その曲に合わせるように、送りねじ機構61,62を駆動させて、可動側ユニット16の向きを調整する機構を備える技術事項(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

甲2技術の「固定側ユニット15」の前部を支点軸22を中心に水平方向に回動させる(「水平旋回」)機構、及び、「可動側ユニット16」の「左右の受けプレート31,66間の距離を畳床101の長さ寸法に対応させ」るように位置調整する(「水平移動」)するとともに、「可動側ユニット16」の向きを調整する(「水平旋回」)機構を、それぞれ以下「位置調整機構」という。
甲2技術の位置調整機構においては、「固定側ユニット15」が「水平旋回」し、「可動側ユニット16」が「水平移動」及び「水平旋回」する。

(イ)甲1発明に対する甲2技術の適用について
甲2技術の表カバー接着装置は、加工対象物として「畳表100」及び「畳床101」を載置した状態において、畳床に畳表を固定(接着)する工程の装置である。
これに対し、甲1発明の畳表裁断折曲げ装置は、「畳表8」単体を加工対象物とするものであって(甲第1号証の段落【0038】、図15を参照。)、畳床に畳表を固定する前の工程の装置である。
してみると、甲2技術の表カバー接着装置と甲1発明の畳表裁断折曲げ装置とは、畳の製造装置という点では技術分野は関連しているが、異なる工程の装置であることに加え、加工対象物(畳、畳表)が異なるものである。
そして、甲2技術の課題は、「敷物の表カバー接着装置において、表カバーが熱で変形することがなく、また、畳表の端部を床材の側面にも、床材の裏面にも良好に接着することが出来るようにすること」(甲第2号証の段落【0005】を参照。)である。
一方、甲1発明の課題は、「一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の裁断折曲げ装置を提供する」こと(甲第1号証の段落【0006】を参照。)であるから、甲1発明と甲2技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明と甲2技術とは、技術分野は関連しているが、それぞれ扱う工程及び加工対象物が異なる上に、課題の共通性がないから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「 この点に関して、本件特許公報の段落【0006】に、
『ここで、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないことから、畳表の整形装置においても、前記畳床の平面視形状を加味して畳表に折目を付けることが望まれる。
この点、特許文献1が開示する整形装置には、こうした畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることに関して何ら明示又は示唆するところがない。
そこで、裁断装置や押上部材を省略し、畳床の平面視形状に合わせて畳表に折目を付ける作業だけに特化した整形装置を開発するため、検討した。』
とあるように、
本件特許の課題は、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
・・・(略)・・・
従って、甲第2号証には、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(3)に相当する固定側ユニット15が、本件特許の上前整形部(2)に相当する可動側ユニット16に対して水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第2号証の課題には共通性があり、また、甲第2号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第2号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第4ないし5頁)。
しかしながら、「甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題」である「畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けること」は甲第1号証に記載されておらず、上記3(2)ア(イ)で説示したように、甲1発明と甲2技術に課題の共通性は認められない。そして、甲1発明は畳表の端部を折り曲げ加工するものであるのに対し、甲2技術は畳床に畳表を重ねた状態で端部を折り曲げ加工するものであるから、作用及び機能が共通しているとはいえない。
また、請求人は、「甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第2号証は、畳表100及び畳床101を固定して折り曲げるための敷物の表カバー接着装置であり、いずれも畳表を折り曲げる技術分野であって、技術分野の関連性があることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第5頁)。
しかしながら、技術分野には関連性があるとしても、上記3(2)ア(イ)で説示したように、それぞれ扱う工程及び加工対象物が異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

b 請求人は、「甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、甲第2号証の水平旋回する構成の「固定側ユニット15」を適用して、本件特許の構成とすること」が当業者に容易である旨を主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第6頁)。
しかしながら、仮に、甲1発明に甲2技術を適用することを当業者が試みるとしても、甲2技術は左右の「固定側ユニット15」及び「可動側ユニット16」を1セットにして全体として位置調整の機能を発揮するものであるから、甲2技術の左右のユニットのうち片方(「固定側ユニット15」)の位置調整機構のみを取り出して、甲1発明の左右のユニットの片方(「第1のユニットA」)の位置調整機構として適用することは、当業者に容易とはいえない。加えて、甲2技術の位置調整機構の「水平旋回」のみに着目して甲1発明に適用することも、当業者に容易とはいえない。
また、甲2技術の左右両方のユニット(「固定側ユニット15」及び「可動側ユニット16」)を1セットにして甲1発明の左右のユニットに代えて適用すると、甲1発明において左右のユニットのうち一方が「水平旋回」し、他方が「水平移動」及び「水平旋回」するものとなり、本件特許発明1とは異なる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲2技術を適用して、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。


イ 甲第3号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第3号証に記載の技術
甲第3号証には、上記2(3)アないしオで摘記した事項を踏まえると、畳床の框を所定の寸法に裁断し、裁断された框に畳表を縫い付ける框縫装置において、
基台上で間隔を変化し得る一対の架台21R、21L、両架台の間隔を検出する第1のエンコーダ20、両架台にそれぞれ載置されて裁断角度を変え得るカッター24R、24L、このカッター24R、24Lの裁断角度を検出する第2のエンコーダ29R、29L、予め入力された畳のくせのデータと上記各エンコーダ20、29R、29Lの出力に基づいて両架台21R、21Lの間隔および上記カッター24R、24Lの裁断角度を制御する制御手段を有し、畳床の框をくせ取りしながら所定の寸法に裁断する左右の裁断装置2R、2Lと、
一対の架台21R、21Lの中間に配置されて上下に昇降できるターン・テーブル5と、
畳表にテンションを付与する畳表チャック装置4、テンションが付与された状態で畳床を畳表とともに固定する床締部材35、畳床の框に畳表を縫い付けるミシン31を有する縫着装置3とにより構成され、
一対の架台21R、21Lは、スクリューによって基台上で互いに反対方向へ同じ距離だけ移動して間隔を変化できるものであって、
裁断装置2R、2Lは、その端部を回動中心26R、26Lとして、設定された框のくせと一致するように、モータ27R、27Lおよびスクリュー28R、28Lによって回動できる機構を備える技術事項(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

甲3技術の裁断装置2R、2Lはそれぞれ、スクリューによって基台上で互いに反対方向へ同じ距離だけ移動(「水平移動」)するとともに、その端部を回動中心26R、26Lとして、設定された框のくせと一致するように、モータ27R、27Lおよびスクリュー28R、28Lによって回動(「水平旋回」)できる機構(以下「位置調整機構」という。)を備えている。

(イ)甲1発明に対する甲3技術の適用について
甲1発明と甲3技術の裁断装置2R、2L(架台21R、21Lを含む。)とは、畳の製造装置という点では技術分野は関連しているが、甲3技術の裁断装置2R、2Lは、畳床7の框を裁断するものであるのに対し、甲1発明は畳表の上前及び下前を裁断するものである(甲第1号証の段落【0035】を参照。)。すなわち、甲1発明と甲3技術の裁断装置2R、2Lとは、加工対象物が異なる装置であって(畳表、畳床)、しかも裁断箇所が異なる(上前及び下前、框)。
そして、甲3技術の課題は、「畳床の框の裁断および畳表の框縫いにおける労力を軽減して、省力化するとともに、裁断する寸法の設定を容易ならしめる」こと(甲第3号証の段落【0004】を参照。)であるのに対して、甲1発明の課題は、「一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の裁断折曲げ装置を提供する」こと(甲第1号証の段落【0006】を参照。)であるから、甲1発明と甲3技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明と甲3技術とは、技術分野は関連しているが、加工対象物及び裁断箇所が異なることに加えて、課題の共通性がないから、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「 上記(3)で説明したように、本件特許の課題は、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題である、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
・・・(略)・・・
このように、甲第3号証では、畳床の平面視形状は、対向する畳の框(短辺側)が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(3)に相当する架台21R(裁断装置2R)が、本件特許の上前整形部(2)に相当する架台21L(裁断装置2L)に対して水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
・・・(略)・・・
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第3号証の課題には共通性があり、また、甲第3号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第3号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第6ないし8頁)。
しかしながら、「甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題」である「畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けること」は甲第1号証に記載されておらず、上記3(2)イ(イ)で説示したように、甲1発明と甲3技術に課題の共通性は認められない。そして、甲1発明は畳表の端部を裁断加工するものであるのに対し、甲3技術は畳床の端部を裁断加工するものであるから、作用及び機能が共通しているとはいえない。
また、請求人は、「甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第3号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第8頁)。
しかしながら、技術分野には関連性があるとしても、上記3(2)イ(イ)で説示したように、加工対象物及び裁断箇所が異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

b 請求人は、「両架台21R、21Lは、水平移動と水平旋回の両方をするように構成されているが、水平移動と水平旋回のいずれかをしないように構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更にすぎない。」及び「甲第3号証の『基台に沿って水平移動する架台21Lと、架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える構成』を、甲第1号証に適用することは、いわゆる当業者にとって容易である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第8ないし9頁)。
しかしながら、仮に、甲1発明に甲3技術を適用することを当業者が試みるとしても、甲3技術は左右の架台21R、21Lが「水平移動」及び「水平旋回」の両方をするものであって、両者(左右の架台21R、21L)が全体として位置調整の機能を発揮するものであるから、甲3技術の位置調整機構の「水平移動」と「水平旋回」のいずれかを取り出して甲1発明に適用すること、ましてや、甲1発明の一方には「水平移動」、他方には「水平旋回」の位置調整機構を適用することは、当業者に容易とはいえない。
また、甲3技術の左右の架台21R、21Lを1セットにして甲1発明の左右のユニットの位置調整機構に代えて適用すると、甲1発明において左右のユニットがそれぞれ「水平移動」及び「水平旋回」するものとなり、本件特許発明1とは異なる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲3技術を適用して、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

ウ 甲第4号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第4号証に記載の技術
甲第4号証には、上記2(4)アないしカで摘記した事項を踏まえると、畳床の框を所定の寸法に裁断し、裁断された框に畳表を縫い付ける框縫装置において、
基台上の1端に固定された固定架台86と、
スクリュー82によって基台上を左右に移動(「水平移動」)する移動架台61に配置され、上下に昇降し畳床7を180度旋回させるターン・テーブル65及び畳床7を保持する保持装置66と、
ミシン側の基台端近くに載置された裁断架台21、畳床7を載せるテーブル22、移動架台61とカッター24との距離を測定する第1のエンコーダ80、このカッターの裁断角度を検出する第2のエンコーダ29、予め入力された畳のくせのデータと上記各エンコーダ80、29の出力に基づいて移動架台61と裁断架台21の間隔および上記カッター24の裁断角度を制御する制御手段を有し、畳床7の框をくせ取りしながら所定の寸法に裁断する裁断装置2と、
畳表7にテンションを付与する畳表チャック装置4と、畳床7の框に畳表を縫い付けるミシン31を有する縫着装置3とを具備し、
裁断装置2を構成する裁断架台21は、基台上でその端部を回動中心26としてモーター27及びスクリュー28によって回動(「水平旋回」)出来るように構成される技術事項(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

(イ)甲1発明に対する甲4技術の適用について
甲1発明と甲4技術の裁断装置2とは、畳の製造装置という点では技術分野は関連しているが、甲4技術の裁断装置2は、畳床7の框を裁断するものであるのに対し、甲1発明1は畳表の上前及び下前を裁断するものである(甲第1号証の段落【0035】を参照。)。すなわち、甲1発明と甲4技術の裁断装置2とは、加工対象物が異なる装置であって(畳表、畳床)、しかも裁断箇所が異なる(上前及び下前、框)。
そして、甲4技術の課題は、「左右2台あった裁断機を1台にして、そのテーブル上で畳表を剥がす作業を行うことができ、より安価で設置スペースも少ない「畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置」を提供する」こと(甲第4号証の段落【0006】を参照。)であるのに対して、甲1発明の課題は、「一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の裁断折曲げ装置を提供する」こと(甲第1号証の段落【0006】を参照。)であるから、甲1発明と甲4技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明と甲4技術とは、技術分野は関連しているが、加工対象物及び裁断箇所が異なることに加えて、課題の共通性がないから、甲1発明に甲4技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第4号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「 上記(3)で説明したように、本件特許の課題は、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題である、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
・・・(略)・・・
このように、甲第4号証では、畳床の平面視形状は、対向する畳の框(短辺側)が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(3)に相当する裁断装置2を水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
従って、甲第4号証には、本件特許の構成要件B、Dに相当する構成、すなわち、『回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2』が開示されている。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第4号証の課題には共通性があり、また、甲第4号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第4号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第9ないし10頁)。
しかしながら、「甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題」である「畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けること」は甲第1号証に記載されておらず、上記3(2)ウ(イ)で説示したように、甲1発明と甲4技術に課題の共通性は認められない。そして、甲1発明は畳表の端部を裁断加工するものであるのに対し、甲4技術は畳床の端部を裁断加工するものであるから、作用及び機能が共通しているとはいえない。
また、請求人は、「甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第4号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第10頁)。
しかしながら、技術分野には関連性があるとしても、上記3(2)ウ(イ)で説示したように、加工対象物及び裁断箇所が異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明に甲4技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

b 請求人は、「・・・(略)・・・甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、甲第4号証の水平旋回する構成の「回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2」を適用することは、いわゆる当業者にとって容易である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第10ないし11頁)。
しかしながら、甲4技術は、基台上の1端に固定された「固定架台86」と、スクリュー82によって基台上を左右に移動する移動架台61に配置され、上下に昇降し畳床7を180度旋回させる「ターン・テーブル65」と、ミシン側の基台端近くに載置された裁断架台21を備える「裁断装置2」の3つの部材を1セットにして用いることにより、「裁断装置2を縫着装置3側に設けることにより、固定架台86、移動架台61のターン・テーブル65上を作業台として活用できる」という効果を発揮するものである(甲第4号証の段落【0041】を参照。)。
仮に、甲1発明に甲4技術を適用することを当業者が試みるとしても、上記3つの部材のうち「裁断装置2」を構成する「裁断架台21」の回動(「水平旋回」)の構成のみを取り出して、甲1発明の「第1のユニットA」に位置調整機構として適用することは、当業者に容易とはいえない。
また、甲1発明に甲4技術の上記3つの部材の全体を適用しても、本件特許発明1とは異なる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲4技術を適用して、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

エ 甲第5ないし6号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第5ないし6号証に記載の技術
甲第5号証には、上記2(5)アないしイで摘記した事項を踏まえると、所定の屋根勾配角度を有する外壁材を形成する際に、定規体(1)のさお管(9)を屋根の寸勾配に合わせて回動し、このさお管(9)を所定の外壁材(a)の長手方向の側縁部に当接して長辺部の曲折部(2)に沿つて線(1)を引いた後に、定規体(1)を横方向に位動し丸鋸(b)で切削する機構(以下「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。
また、甲第6号証には、上記2(6)アないしウで摘記した事項を踏まえると、基台6上に被切断材11の切断幅および切断位置を定める幅決め定規12と位置決め定規13とを設けた手押し切りカツタ1において、被切断材11が屋根と外壁との境界部分に取付けらる遮水板24を形成する素板26であって、前記幅決め定規12および位置決め定規13は被切断材11の幅寸度の関係から一側縁部2に対し一定の角度をもつて傾く機構(以下「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

(イ)甲1発明に対する甲5ないし6技術の適用について
甲5ないし6技術は、屋根工事に関するものであり、甲1発明の畳表裁断折曲げ装置とは技術分野が明らかに異なる。
しかも、甲5技術の課題は「作業能率のあがる便利な定規を提供すること」(甲第5号証の明細書第2頁第3-4行目を参照。)、甲6技術の課題は「例えば木造建築物の屋根工事用の遮水板、平ぶき板等として加工される素板の所定個所に、はぜ継ぎ用のはぜ片形成に必要なV字状あるいはL字状の切欠部を簡易、迅速にしかも精度よく形成することを可能とした手押し切りカツタ」(甲第6号証の第1頁第2欄第5-10行目を参照。)の提供であるのに対して、甲1発明の課題は、「一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の裁断折曲げ装置を提供する」こと(甲第1号証の段落【0006】を参照。)であるから、甲1発明と甲5ないし6技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明に甲5ないし6技術を適用する動機付けとなるものがない。屋根工事の技術分野において甲5ないし6技術の当該機構が周知であったとしても、甲1発明の畳表裁断折曲げ装置に当該機構を適用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)請求人の主張について
請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第5ないし6号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「・・・(中略)・・・
このように、甲第5号証及び甲第6号証には、対象物の傾斜した側辺に合わせて、定規を回動させる周知の構成が開示されている。
・・・(中略)・・・
当業者であれば、・・・(中略)・・・甲第5号証及び甲第6号証に記載の被処理体の勾配(傾斜)に合わせて、定規を回動する周知の構成に着目して、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットA」に代えて、このような周知の事項を適用することに動機付けがあることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第11ないし12頁)。
しかしながら、上記3(2)エ(イ)で説示したように、甲1発明と甲5ないし6技術とは技術分野が明らかに異なる上に、甲1発明と甲5ないし6技術との間には課題の共通性がないから、甲1発明に甲5ないし6技術を適用する動機付けとなるものがない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲5ないし6技術を適用して、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

オ 小括
以上のとおり、甲1発明において、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。


(3)相違点2について
ア 甲1発明の課題と解決手段について
(ア)甲第1号証では、甲第7号証が特許文献1として提示されている。甲第1号証の【背景技術】に、「【0004】・・・(略)・・・しかし、畳表を折曲げる前段階で、予め、畳表を裁断しておく必要があり、この工程の簡素化が求められていた。畳表の裁断前には、畳表に裁断位置や折曲げ位置をあらかじめマーキングする必要もあった。上記特許文献1に開示された装置に、上前側又は下前側に沿って移動しながら裁断する裁断カッターを設けることも考えられるが、上記特許文献1に開示された装置は畳表の折曲げに際して、その構造上、畳表折曲げ部の外側及び上側に保持枠と回動折曲版のためのスペースが必要であり、これらが裁断カッターの移動手段等と干渉する可能性があった(特許文献1、第3図参照)。」と記載されている(下線は当審で付した。以下、(イ)及び(ウ)も同様。)。
(イ)甲1号証の【発明が解決しようとする課題】に、「【0006】本発明は上記課題を解決するものであり、一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置を提供するものである。」(段落)と記載されている。
(ウ)甲1号証の【課題を解決するための手段】に、「【0007】上記課題を検討した結果、テーブルの上方から畳表のほぼ全長を押圧して折り癖をつける押圧刃を縁部に有する押え定規プレートと、該押え定規プレートによって押圧された畳表の前記押圧刃から表出した部分(畳表)に対して所定幅を残して裁断する裁断装置を設けた移動ベースと、該移動ベースを前記押え定規プレートに沿って前進又は後退させる駆動手段と、前記押え定規プレートの押圧刃の先端から畳表の厚み程度の間隔を置いて畳表のほぼ全長を畳表の下方から押し上げる長尺押上部材とからなる縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置とした。ここにいう所定幅とは畳表の上前又は下前の端縁から内方へ折返して畳側面を覆うのに充分な幅をいう。
【0008】長尺押上部材が、畳表のほぼ全長を畳表の下方から押し上げて畳表を折曲げる構造のため、長尺押し上げ部材等が、移動ベースや駆動手段等と干渉しにくいため設計自由度が高く、一台で畳表の裁断と折曲げが可能な縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置となる。」と記載されている。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)で摘記した事項を踏まえると、「一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置を提供する」という課題を解決するためには、該押え定規プレートによって押圧された畳表の前記押圧刃から表出した部分(畳表)に対して所定幅を残して裁断する裁断装置を設けた移動ベースと、前記押え定規プレートの押圧刃の先端から畳表の厚み程度の間隔を置いて畳表のほぼ全長を畳表の下方から押し上げる長尺押上部材とが必須である。
すなわち、甲1発明は、上記課題を解決するために、裁断装置及び押上部材を必須とするといえる。

イ 甲第7号証の記載事項の適用について
甲第7号証には、上記2(7)アで摘記した事項及びイの事項(図1ないし3の実施例)を踏まえると、畳表に折目を付ける作業だけを行う装置に係る技術事項(以下「甲7技術」)が記載されていると認められる。
しかしながら、甲7技術については、上記のとおり、甲第1号証において背景技術として問題点が指摘されている(甲第1号証の段落【0004】を参照。)。甲1発明は甲7技術の当該問題点を解決するために裁断装置及び押上部材を必須とするのであるから、甲第7号証に畳表に折目を付ける作業だけを行う装置に係る甲7技術が記載されているとしても、甲1発明に甲7技術を適用することは、当業者であっても容易に着想し得るものではないといえる。
すなわち、甲1発明に甲7技術を適用することについては阻害要因があるから、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者にとって容易想到でないといえる。
そして、位置調整機構を有しない、単なる折り曲げだけの装置である甲7技術に当業者が接したとしても、甲1発明における折り曲げ装置に着目して、裁断装置及び押上部材を省略することは容易に着想し得ない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、「甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易である。」との主張についての具体的な根拠について、
「・・・(略)・・・甲第7号証の図1?図3に明示されているように、また、甲第7号証の上記の記載からも明らかなように、畳表に折目を付けるだけに特化した装置は公知であり、甲第1号証において、甲第7号証に示されているように、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易であることは明白である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第2ないし3頁)。
しかしながら、上記3(3)イで説示したように阻害要因があるから、甲1発明に甲7技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たものではないといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、甲1発明において、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。


(4)相違点3について
ア 相違点3に係る当審の判断
甲1発明の「枠体1上部を左右に移動可能」(本件特許発明1の「水平移動自在」に相当する。)な「テーブル201」の「移動ローラ21」について、その移動方向を何らかの手段で左右の方向(水平方向)に規定することが必要であることは明らかである。ここで、移動ローラを水平移動させる手段として装置フレームにレールを設けることは周知技術であるから(例:甲第2号証の上記2(2)オで摘記した事項を参照。)、甲1発明の「枠体1」(本件特許発明1の「装置フレーム」に相当する。)に「レール」を設けることは当業者に自明である。

イ 被請求人は、レールの有無について特段主張していない。

ウ 小括
以上のとおり、甲1発明において、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。


(5)まとめ
以上のとおりであるから、甲1発明において、本件特許発明1の相違点1及び2に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明1は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明1についての特許は、無効とすべきものではない。


4 本件特許発明2及び3の進歩性要件について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1に従属し、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明2及び3は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明2及び3についての特許は、無効とすべきものではない。


5 本件特許発明4の進歩性要件について
(1)本件特許発明4と甲1発明との対比
ア 本件特許発明4と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「枠体1」は、本件特許発明4の「装置フレーム」に相当し、同様に、「第1のユニットA」は「上前整形部」に、「左右に移動」は「水平移動」に、「第2のユニットB」は「下前整形部」に、「テーブル2」は「固定ベース」に、「上下動が可能に設置され」ることは「昇降自在に支持され」ることに、「押圧する」は「挟持する」に、「押え定規プレート34」は「上前定規」に、「畳表8」は「畳表」に、「テーブル201」は「移動ベース」に、「押え定規プレート341」は「下前定規」にそれぞれ相当する。

イ 甲1発明の「第2のユニットB」と本件特許発明4の「下前整形部」とは、「水平移動する」点で共通する。

ウ 甲1発明の「縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置」は、「整形」が「裁断折曲げ」を含むことから、本件特許発明4の「畳表の整形装置」に相当する。

エ したがって、両者は、
「装置フレームに対して位置固定された上前整形部と、
前記上前整形部に対して水平移動する下前整形部とからなり、
上前整形部は、
装置フレームに対して位置固定された固定ベースと、
前記固定ベースに対して昇降自在に支持され、固定ベースの上面と共に畳表を挟持する上前定規とを備え、そして
下前整形部は、
装置フレームに沿って水平移動自在な移動ベースと、
昇降自在に支持され、畳表を挟持する下前定規とを備える畳表の整形装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点4]
「下前整形部」について、
本件特許発明4は「下前整形部」が「前記上前整形部に対して」「水平旋回する」構成であって、「下前整形部」に「前記移動ベースに垂直軸で軸着され、前記垂直軸を中心に水平旋回自在な旋回ベース」を備えるのに対して、甲1発明は「第2のユニットB」が水平旋回しない点。

[相違点5]
本件特許発明4は、裁断装置及び押上部材を有しないのに対し(上記1(2)を参照。)、甲1発明は裁断装置及び押上部材を有する点。

[相違点6]
「位置固定された固定ベース」及び「水平移動自在な移動ベース」について、
本件特許発明4は「装置フレームに設けられたレール」に対して「位置固定された固定ベース」、及び、「装置フレームに設けられたレール」に沿って「水平移動自在な移動ベース」を有するのに対し、甲1発明は「位置固定されたテーブル2」及び「左右に移動ローラ21が設けられたテーブル201」を有するが、レールの特定がない点。


(2)相違点4について
ア 甲第2号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第2号証に記載の技術
甲第2号証には、上記3(2)ア(ア)で述べたように、甲2技術が記載されていると認められる。

(イ)甲1発明に対する甲2技術の適用について
甲2技術の表カバー接着装置は、加工対象物として「畳表100」及び「畳床101」を載置した状態において、畳床に畳表を固定(接着)する工程の装置である。
これに対し、甲1発明の畳表裁断折曲げ装置は、「畳表8」単体を加工対象物とするものであって(甲第1号証の段落【0038】、図15を参照。)、畳床に畳表を固定する前の工程の装置である。
してみると、甲2技術の表カバー接着装置と甲1発明の畳表裁断折曲げ装置とは、畳の製造装置という点では技術分野は関連しているが、異なる工程の装置であることに加え、加工対象物(畳、畳表)が異なるものである。
そして、上記3(2)ア(イ)で述べたように、甲1発明と甲2技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明と甲2技術とは、技術分野は関連しているが、それぞれ扱う工程及び加工対象物が異なる上に、課題の共通性がないから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「 上記の請求項1に関する発明について、上記(3)において説明したように、本件特許の課題は、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けることを課題とするものである。
この点に関して、甲第2号証の図1?図2、甲第2号証の段落【0011】、特に、甲第2号証の段落【0026】に示されているように、甲第2号証には、畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(5)に相当する可動側ユニット16が、本件特許の上前整形部(4)に相当する固定側ユニット15に対して水平移動及び水平旋回する構成が開示されている。
従って、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第2号証の課題には共通性があり、また、甲第2号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第2号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第13ないし14頁)。
しかしながら、「甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題」である「畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けること」は甲第1号証に記載されておらず、上記5(2)ア(イ)で説示したように、甲1発明と甲2技術に課題の共通性は認められない。そして、甲1発明は畳表の端部を折り曲げ加工するものであるのに対し、甲2技術は畳表を畳床に重ねた状態で端部を折り曲げ加工するものであるから、作用及び機能が共通しているとはいえない。
また、請求人は、「甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第2号証は、畳表100及び畳床101を固定して折り曲げるための敷物の表カバー接着装置であり、いずれも畳表を折り曲げる技術分野であって、技術分野の関連性があることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第14頁)。
しかしながら、技術分野には関連性があるとしても、上記5(2)ア(イ)で説示したように、それぞれ扱う工程及び加工対象物が異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

b 請求人は、「甲第1号証の水平旋回しない「第2のユニットB」に代えて、甲第2号証の水平旋回する構成の「可動側ユニット16」を適用して、本件特許の構成とすることは、いわゆる当業者にとって容易である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第14頁)。
しかしながら、仮に、甲1発明に甲2技術を適用することを当業者が試みるとしても、甲2技術は左右の「固定側ユニット15」及び「可動側ユニット16」を1セットにして全体として位置調整の機能を発揮するものであるから、甲2技術の左右のユニットのうち片方(「可動側ユニット16」)の位置調整機構のみを取り出して甲1発明の左右のユニットの片方(「第2のユニットB」)の位置調整機構として適用することは、当業者に容易とはいえない。加えて、甲2技術の位置調整機構の「水平旋回」のみに着目して甲1発明に適用することも、当業者に容易とはいえない。
また、甲2技術の左右両方のユニット(「固定側ユニット15」及び「可動側ユニット16」)を1セットにして甲1発明の左右のユニットに代えて適用すると、甲1発明において左右のユニットのうち一方が「水平旋回」し、他方が「水平移動」及び「水平旋回」するものとなるから、本件特許発明4とは異なる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲2技術を適用して、本件特許発明4の相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

イ 甲第3号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第3号証に記載の技術
甲第3号証には、上記3(2)イ(ア)で述べたように、甲3技術が記載されていると認められる。

(イ)甲1発明に対する甲3技術の適用について
甲1発明と甲3技術の裁断装置2R、2L(架台21R、21Lを含む。)とは、畳の製造装置という点では技術分野は関連しているが、甲3技術の裁断装置2R、2Lは、畳床7の框を裁断するものであるのに対し、甲1発明は畳表の上前及び下前を裁断するものである(甲第1号証の段落【0035】を参照。)。すなわち、甲1発明と甲3技術の裁断装置2R、2Lとは、加工対象物が異なる装置であって(畳表、畳床)、しかも裁断箇所が異なる(上前及び下前、框)。
そして、上記3(2)イ(イ)で述べたように、甲1発明と甲3技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明と甲3技術とは、技術分野は関連しているが、加工対象物及び裁断箇所が異なることに加えて、課題の共通性がないから、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「・・・(略)・・・
このように、甲第3号証では、畳床の平面視形状は、対向する畳の框(短辺側)が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、本件特許の下前整形部(5)に相当する架台21R(裁断装置2R)を水平旋回させて、位置合わせすることが開示されている。
また、本件特許では、上前整形部(4)が位置固定されているのに対して、基台に備えられた架台21Lが、水平移動及び水平旋回する点が相違する。
しかしながら、甲第3号証において、基台に備えられた架台21Lを、本件特許の上前整形部(4)のように、位置固定する構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更にすぎないものであって、当業者に容易である。
従って、上記(3)で説明したように、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第3号証の課題には共通性があり、また、甲第3号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第3号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第14ないし15頁)。
しかしながら、「甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題」である「畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けること」(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第4頁を参照。)は甲第1号証に記載されておらず、上記5(2)イ(イ)で説示したように、甲1発明と甲3技術に課題の共通性は認められない。そして、甲1発明は畳表の端部を裁断加工するものであるのに対し、甲3技術は畳床の端部を裁断加工するものであるから、作用及び機能が共通しているとはいえない。
また、請求人は、「甲第1号証は、畳表裁断折曲げ装置であり、甲第3号証は、畳床の框を裁断して畳表を縫い付ける装置であり、技術分野の関連性があることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第15頁)。
しかしながら、技術分野には関連性があるとしても、上記5(2)イ(イ)で説示したように、加工対象物及び裁断箇所が異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明に甲3技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

b 請求人は、「・・・(略)・・・
従って、甲第3号証の『基台に沿って水平移動するとともに、架台21Lに対して水平旋回する架台21Rを備える構成』を、甲第1号証に適用するとともに、甲第3号証において、基台に備えられた架台21Lを、本件特許の上前整形部(4)のように、位置固定する構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である設計変更にすぎないものであって、いわゆる当業者にとって容易である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第15ないし16頁)。
しかしながら、仮に、甲1発明に甲3技術を適用することを当業者が試みるとしても、甲3技術は左右の架台21R、21Lが「水平移動」及び「水平旋回」の両方をするものであって、両者(左右の架台21R、21L)が全体として位置調整の機能を発揮するものであるから、甲3技術の左右の架台21R、21Lの一方(21R)をそのまま甲1発明に適用するとともに、他方(21L)を位置固定とすることは、当業者に容易とはいえない。
また、甲3技術の左右の架台21R、21Lを1セットにして甲1発明の左右のユニットの位置調整機構に代えて適用すると、甲1発明において左右のユニットがそれぞれ「水平移動」及び「水平旋回」するものとなり、本件特許発明4とは異なる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲3技術を適用して、本件特許発明4の相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

ウ 甲第4号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第4号証に記載の技術
甲第4号証には、上記3(2)ウ(ア)で述べたように、甲4技術が記載されていると認められる。

(イ)甲1発明に対する甲4技術の適用について
甲1発明と甲4技術の裁断装置2とは、畳の製造装置という点では技術分野は関連しているが、甲4技術の裁断装置2は、畳床7の框を裁断するものであるのに対し、甲1発明は畳表の上前及び下前を裁断するものである(甲第1号証の段落【0035】を参照。)。すなわち、甲1発明と甲4技術の裁断装置2とは、加工対象物が異なる装置であって(畳表、畳床)、しかも裁断箇所が異なる(上前及び下前、框)。
そして、上記3(2)ウ(イ)で述べたように、甲1発明と甲4技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明と甲4技術とは、技術分野は関連しているが、加工対象物及び裁断箇所が異なることに加えて、課題の共通性がないから、甲1発明に甲4技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第4号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「・・・(略)・・・
従って、甲第4号証には、本件特許発明4の構成要件H、Jに相当する構成、すなわち、『回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2』が開示されている。
従って、上記(3)で説明したように、甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題と、甲第4号証の課題には共通性があり、また、甲第4号証と作用、機能の共通性があるとともに、甲第4号証の上記記載内容に、本件特許の構成とする動機付けとなる示唆が明らかに存在する。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第17頁)。
しかしながら、「甲第1号証(本件特許公報の特許文献1)に存在すると被請求人が指摘する課題」である「畳床の平面視形状は、対向する上前及び下前が完全な平行ではないので、畳床の平面視形状を加味して、畳表に折目を付けること」(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第4頁を参照。)は甲第1号証に記載されておらず、上記5(2)ウ(イ)で説示したように、甲1発明と甲4技術に課題の共通性は認められない。そして、甲1発明は畳表の端部を裁断加工するものであるのに対し、甲4技術は畳床の端部を裁断加工するものであるから、作用及び機能が共通しているとはいえない。
しかしながら、技術分野には関連性があるとしても、上記5(2)ウ(イ)で説示したように、加工対象物及び裁断箇所が異なる。
以上のとおりであるから、甲1発明に甲4技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

b 請求人は、「・・・(略)・・・甲第1号証の水平旋回しない「第2のユニットB」に代えて、甲第4号証の水平旋回する構成の「回動中心26を中心に水平旋回自在な裁断装置2」を適用することは、いわゆる当業者にとって容易である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第17ないし18頁)。
しかしながら、甲4技術は、基台上の1端に固定された「固定架台86」と、スクリュー82によって基台上を左右に移動する移動架台61に配置され、上下に昇降し畳床7を180度旋回させる「ターン・テーブル65」と、ミシン側の基台端近くに載置された裁断架台21を備える「裁断装置2」の3つの部材を1セットにして用いることにより、「裁断装置2を縫着装置3側に設けることにより、固定架台86、移動架台61のターン・テーブル65上を作業台として活用できる」という効果を発揮するものである(甲第4号証の段落【0041】を参照。)。
仮に、甲1発明に甲4技術を適用することを当業者が試みるとしても、上記3つの部材のうち「裁断装置2」を構成する「裁断架台21」の回動(「水平旋回」)のみを取り出して、甲1発明の「第2のユニットB」に位置調整機構として適用することは、当業者に容易とはいえない。
また、甲1発明に甲4技術の上記3つの部材の全体を適用しても、本件特許発明4とは異なる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲4技術を適用して、本件特許発明4の相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

エ 甲第5ないし6号証に記載の技術の適用について
(ア)甲第5ないし6号証に記載の技術
甲第5号証には、上記3(2)エ(ア)で述べたように、甲5技術が記載されていると認められる。
また、甲第6号証には、上記3(2)エ(ア)で述べたように、甲6技術が記載されていると認められる。

(イ)甲第5ないし6号証に記載の技術の適用について
甲5ないし6技術は、屋根工事に関するものであり、甲1発明の畳表裁断折曲げ装置とは技術分野が明らかに異なる。
しかも、上記3(2)エ(イ)で述べたように、甲1発明と甲5ないし6技術との間には課題の共通性がない。
以上から、甲1発明に甲5ないし6技術を適用する動機付けとなるものがない。屋根工事の技術分野において甲5ないし6技術の当該機構が周知であったとしても、甲1発明の畳表裁断折曲げ装置に当該機構を適用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)請求人の主張について
請求人は、甲第1号証に記載された発明に甲第5ないし6号証記載の構成を適用する具体的な動機付けについて、
「・・・(中略)・・・
このように、甲第5号証及び甲第6号証には、対象物の傾斜した側辺に合わせて、定規を回動させる周知の構成が開示されている。
・・・(中略)・・・
当業者であれば、・・・(中略)・・・甲第5号証及び甲第6号証に記載の被処理体の勾配(傾斜)に合わせて、定規を回動する周知の構成に着目して、甲第1号証の水平旋回しない「第1のユニットB」に代えて、このような周知の事項を適用することに動機付けがあることは明らかである。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第18ないし19頁)。
しかしながら、上記5(2)エ(イ)で説示したように、甲1発明と甲5ないし6技術とは技術分野が明らかに異なる上に、甲1発明と甲5ないし6技術との間には課題の共通性がないから、甲1発明に甲5ないし6技術を適用する動機付けとなるものがない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(エ)小括
したがって、甲1発明に甲5ないし6技術を適用して、本件特許発明4の相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

オ 小括
以上のとおり、甲1発明において、本件特許発明4の相違点4に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。


(3)相違点5について
ア 甲1発明の課題と解決手段について
甲1発明は、「一台で畳表の裁断と綺麗な折曲げが可能な縁無し畳の畳表裁断折曲げ装置を提供する」という課題を解決するために、裁断装置ないし押上部材を必須とするといえる(上記3(3)アを参照。)。

イ 甲第7号証の記載事項の適用について
甲第7号証には、上記3(3)イで述べたように、畳表に折目を付ける作業だけを行う装置に係る技術事項(「甲7技術」)が記載されていると認められるが、甲1発明に甲7技術を適用することについては阻害要因があるから、本件特許発明4の相違点5に係る発明特定事項とすることは、当業者にとって容易想到でないといえる。
そして、位置調整機構を有しない、単なる折り曲げだけの装置である甲7技術に当業者が接したとしても、甲1発明における折り曲げ装置に着目して、裁断装置及び押上部材を省略することは容易に着想し得ない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、「甲第1号証において、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易である。」との主張についての具体的な根拠に関して、
「甲第7号証の図1?図3に明示されているように、また、甲第7号証の上記の記載からも明らかなように、畳表に折目を付けるだけに特化した装置は公知であり、甲第1号証において、甲第7号証に示されているように、裁断装置を省略して、畳表に折目を付けるだけに特化することは、いわゆる当業者にとって容易であることは明白である。」と主張している(平成28年12月16日付け口頭審理陳述要領書第12ないし13頁)。
しかしながら、上記5(3)イで説示したように阻害要因があるから、甲1発明に甲7技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たものではないといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、甲1発明において、本件特許発明4の相違点5に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。


(4)相違点6について
ア 相違点6に係る当審の判断
甲1発明の「枠体1上部を左右に移動可能」(本件特許発明4の「水平移動自在」に相当する。)な「テーブル201」の「移動ローラ21」について、その移動方向を何らかの手段で左右の方向(水平方向)に規定することが必要であることは明らかである。ここで、移動ローラを水平移動させる手段として装置フレームにレールを設けることは周知技術であるから(例:甲第2号証の上記2(2)オで摘記した事項を参照。)、甲1発明の「枠体1」(本件特許発明4の「装置フレーム」に相当する。)に「レール」を設けることは当業者に自明である。

イ 被請求人は、レールの有無について特段主張していない。

ウ 小括
以上のとおり、甲1発明において、本件特許発明4の相違点6に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。


(5)まとめ
以上のとおりであるから、甲1発明において、本件特許発明4の相違点4及び5に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明4は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明4についての特許は、無効とすべきものではない。


6 本件特許発明5及び6の進歩性要件について
本件特許発明5及び6は、本件特許発明4に従属し、本件特許発明4の発明特定事項をすべて含むものであるから、同様の理由により、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、本件特許発明5及び6は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明5及び6についての特許は、無効とすべきものではない。



第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし6は、請求人が提出した証拠に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1ないし6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものではないので、無効とすべきではない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-27 
結審通知日 2017-03-02 
審決日 2017-03-15 
出願番号 特願2009-13286(P2009-13286)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瓦井 秀憲  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 藤田 都志行
赤木 啓二
登録日 2012-11-22 
登録番号 特許第5140612号(P5140612)
発明の名称 畳表の整形装置  
代理人 木村 厚  
代理人 森 寿夫  
代理人 森 廣三郎  
代理人 牧村 浩次  
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