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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01N |
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管理番号 | 1327853 |
異議申立番号 | 異議2016-700603 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-07-08 |
確定日 | 2017-03-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5841645号発明「尿検査方法および尿検査装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5841645号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-6〕、〔7-12〕について訂正することを認める。 特許第5841645号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5841645号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成22年8月 3日を出願日とする特願2010-174191号の一部を平成26年7月30日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月20日に特許の設定登録がされ、その後、本件特許の請求項1ないし12に係る特許に対し、特許異議申立人奥村一正により特許異議の申立てがなされ、平成28年10月21日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月22日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、その訂正請求に対して特許異議申立人奥村一正から平成29年2月20日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成28年12月22日付け訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、同訂正請求書の記載によれば、以下の訂正事項1ないし訂正事項4のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択が可能であり、選択された一の尿定性測定項目の測定値と選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目 の選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つ の項目の選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、選択された一の尿定性測定項目と選択された一 の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記一の尿定 性測定項目の測定値と前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する 入力をユーザから受け付け、 前記一の尿定性測定項目と前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された 前記所定の関係を記憶し、」とあるのを、 「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の第1選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択であって前記第1選択とは別の第2選択が可能であり、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の前記第1選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の前記第2選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記所定の関係を記憶し、」に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の選択を受け付ける第2選択ボックスとの組を複数組含み、」とあるのを、 「前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第1選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第2選択を受け付ける第2選択ボックスとの組を複数組含み、」 に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に「前記情報処理部は、複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択が可能であり、選択された一の尿定性測定項目の測定値と選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を前記表示部に表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、選択された一の尿定性測定項目と選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記一の尿定性測定項目の測定値と前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記一の尿定性測定項目と前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記二つの項目の測定値間の所定の関係を記憶し、」とあるのを、 「前記情報処理部は、 複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の第1選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目であって前記第1選択とは別の第2選択が可能であり、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を前記表示部に表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の前記第1選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の前記第2選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記二つの項目の測定値間の所定の関係を記憶し、」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に「前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の選択を受け付ける第2選択ボックスの組を複数組含み、」とあるのを、 「前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第1選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第2選択を受け付ける第2選択ボックスの組を複数組含み、」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項の引用関係からみて、訂正事項1及び2は、請求項1ないし6を一群の請求項として、訂正事項3及び4は、請求項7ないし12を一群の請求項として、それぞれ請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 請求項1についての訂正事項 ア 訂正事項1について (ア) 新規事項の有無について 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0043】には、図8に示すステップS203において、図7に示す選択ボックスC14を選択して、1つの尿定性測定項目を選択することが記載されている。また、段落【0044】には、図8に示すステップS205において、ステップS203の選択とは別に、図7に示す選択ボックスC15を選択して、1つの尿中有形成分測定項目を選択することが記載されている。そして、ステップS203の選択は第1選択と、ステップS205の選択は第2選択といえる。 よって、上記訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (イ) 訂正の目的の適否について 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明おいて、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」と「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」との関係が、何ら特定がされておらず、また、選択された「一の尿定性測定項目」と、選択された「一の尿中有形成分測定項目」との関係も、何ら特定がされていなかったものを、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」が「第1選択」であり、「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」が「第1選択とは別の第2選択」であり、選択された「一の尿定性測定項目」が「前記第1選択」によるものであり、選択された「一の尿中有形成分測定項目」が「前記第2選択」によるものであることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1による訂正は、その訂正に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 イ 請求項1についてのまとめ 以上のことから、請求項1に係る訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (2) 請求項2についての訂正事項 請求項1に係る訂正事項1により、請求項1を引用する請求項2も同様に訂正された。 そして、請求項1に係る訂正事項1は、上記「(1) 請求項1についての訂正事項」「イ 請求項1についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項1による訂正によって、請求項2に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、請求項1を引用する請求項2に係る訂正事項1は、同様に、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (3) 請求項3についての訂正事項 ア 訂正事項1について 請求項1に係る訂正事項1により、請求項1を引用する請求項3も同様に訂正された。 そして、請求項1に係る訂正事項1は、上記「(1) 請求項1についての訂正事項」「イ 請求項1についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項1による訂正によって、請求項3に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、請求項1を引用する請求項3に係る訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 訂正事項2について (ア) 新規事項の有無について 本件特許明細書等の段落【0043】及び【0044】には、上記「(1) 請求項1についての訂正事項」「ア 訂正事項1について」「(ア) 新規事項の有無について」において指摘したように、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」を「第1選択」とし、「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」を「第2選択」とする根拠となる記載が存在する。 よって、上記訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (イ) 訂正の目的の適否について 上記訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る発明では、第1選択ボックスが受け付ける選択と第2選択ボックスが受け付ける選択との関係が何ら特定がされていないのに対して、訂正後の請求項3に係る発明では、第1選択ボックスは、「前記第1」選択を受け付け、第2選択ボックスは、「前記第2」選択を受け付けることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、上記訂正事項2は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1及び上記訂正事項2による訂正は、その訂正に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 請求項3についてのまとめ 以上のことから、請求項3に係る訂正事項1及び訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (4) 請求項4ないし6についての訂正事項 請求項1に係る訂正事項1及び請求項3に係る訂正事項2により、請求項3を引用する請求項4ないし6も同様に訂正された。 そして、上記訂正事項1及び上記訂正事項2は、上記「(3) 請求項3についての訂正事項」「エ 請求項3についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項1及び上記訂正事項2による訂正によって、請求項4ないし6に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 よって、請求項4ないし6に係る訂正事項1及び訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (5) 請求項7についての訂正事項 ア 訂正事項3について (ア) 新規事項の有無について 本件特許明細書等の段落【0043】及び【0044】には、上記「(1) 請求項1についての訂正事項」「ア 訂正事項1について」「(ア) 新規事項の有無について」において指摘したように、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」を「第1選択」とし、「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」を「第2選択」とする根拠となる記載が存在する。 よって、上記訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (イ) 訂正の目的の適否について 上記訂正事項3は、訂正前の請求項7に係る発明おいて、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」と「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」との関係が何ら特定がされておらず、また、選択された「一の尿定性測定項目」と、選択された「一の尿中有形成分測定項目」の関係も、何ら特定がされていないのに対して、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」が「第1選択」であり、「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」が「第1選択とは別の第2選択」であり、選択された「一の尿定性測定項目」が「前記第1選択」によるものであり、選択された「一の尿中有形成分測定項目」が「前記第2選択」によるものであることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、上記訂正事項3は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項3による訂正は、その訂正に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 イ 請求項7についてのまとめ 以上のことから、請求項7に係る訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (6) 請求項8についての訂正事項 請求項7に係る訂正事項3により、請求項7を引用する請求項8も同様に訂正された。 そして、請求項7に係る訂正事項3は、上記「(5) 請求項7についての訂正事項」「イ 請求項7についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項3による訂正によって、請求項8に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、請求項7を引用する請求項8に係る訂正事項3は、同様に、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (7) 請求項9についての訂正事項 ア 訂正事項3について 請求項7に係る訂正事項3により、請求項7を引用する請求項9も同様に訂正された。 そして、請求項7に係る訂正事項3は、上記「(5) 請求項7についての訂正事項」「イ 請求項7についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項7による訂正によって、請求項9に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、請求項7を引用する請求項9に係る訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 イ 訂正事項4について (ア) 新規事項の有無について 本件特許明細書等の段落【0043】及び【0044】には、上記「(1) 請求項1についての訂正事項」「ア 訂正事項1について」「(ア) 新規事項の有無について」において指摘したように、「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」を「第1選択」とし、「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」を「第2選択」とする根拠となる記載が存在する。 よって、上記訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (イ) 訂正の目的の適否について 上記訂正事項4は、訂正前の請求項9に係る発明では、第1選択ボックスが受け付ける選択と第2選択ボックスが受け付ける選択との関係が何ら特定がされていないのに対して、訂正後の請求項9に係る発明では、第1選択ボックスは、「前記第1」選択を受け付け、第2選択ボックスは、「前記第2」選択を受け付けることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 よって、上記訂正事項4は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項3及び上記訂正事項4による訂正は、その訂正に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 請求項9についてのまとめ 以上のことから、請求項9に係る訂正事項3及び訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (8) 請求項10ないし12についての訂正事項 請求項7に係る訂正事項3及び請求項9に係る訂正事項4により、請求項9を引用する請求項10ないし12も同様に訂正された。 そして、上記訂正事項3及び上記訂正事項4は、上記「(7) 請求項9についての訂正事項」「エ 請求項9についてのまとめ」のとおりであり、また、上記訂正事項3及び上記訂正事項4による訂正によって、請求項10ないし12に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 よって、請求項10ないし12に係る訂正事項3及び訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-12〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定された次のとおりのものである。 【請求項1】 複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の第1選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択であって前記第1選択とは別の第2選択が可能であり、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の前記第1選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の前記第2選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記所定の関係を記憶し、 尿検体について尿定性測定項目と尿中有形成分測定項目を測定し、 記憶した組み合わせに係る尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が前記所定の関係にある場合、二つの前記測定値が前記所定の関係にあることを示す情報を出力する、尿検査方法。 【請求項2】 前記クロスチェック設定画面は、記憶された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の複数の組合せをそれぞれユーザが指定可能に表示し、前記複数の組合せの中で、指定された一または複数の組み合わせについて、尿検体を測定して得られた尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が所定の関係にあるか否かを判定する、請求項1に記載の尿検査方法。 【請求項3】 前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第1選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第2選択を受け付ける第2選択ボックスとの組を複数組含み、 前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスのそれぞれの組毎に、選択された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の組み合わせを記憶する、請求項1または請求項2に記載の尿検査方法。 【請求項4】 複数の前記第1選択ボックスと、複数の前記第2選択ボックスは、それぞれ列状に並んで表示される、請求項3に記載の尿検査方法。 【請求項5】 前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスは、プルダウンメニューである、請求項3または請求項4に記載の尿検査方法。 【請求項6】 前記クロスチェックテーブルは、前記第1選択ボックスにおいて選択された一の尿定性測定項目の測定値について設定された複数のランクと、前記第2選択ボックスにおいて選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値について設定された複数のランクとによって分割された複数のセルからなるテーブルであり、 前記セルの選択を受け付けることにより、組み合わせとして選択された二つの測定項目の測定値間の前記所定の関係の入力を受け付ける、請 求項3ないし5のいずれか一項に記載の尿検査方法。 【請求項7】 尿検体について複数の尿定性測定項目を測定可能な尿定性測定部と、 尿検体について複数の尿中有形成分測定項目を測定可能な尿中有形成分測定部と、 表示部を含む情報処理部と、を備え、 前記情報処理部は、 複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の第1選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目であって前記第1選択とは別の第2選択が可能であり、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を前記表示部に表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の前記第1選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の前記第2選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記二つの項目の測定値間の所定の関係を記憶し、 前記尿定性測定部と前記尿中有形成分測定部の両方において測定された尿検体であって、記憶した組み合わせに係る尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が前記所定の関係にある尿検体について、二つの前記測定値が前記所定の関係にあることを示す情報を前記表示部に出力させる、尿検査装置。 【請求項8】 前記クロスチェック設定画面は、記憶された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項 目の複数の組合せをそれぞれユーザが指定可能に表示し、前記情報処理部は、前記複数の組合せの中で、指定された一または複数の組み合わせについて、尿検体を測定して得られた尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が所定の関係にあるか否かを判定する、請求項7に記載の尿検査装置。 【請求項9】 前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第1選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第2選択を受け付ける第2選択ボックスの組を複数組含み、 前記情報処理部は、前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスのそれぞれの組毎に、選択された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の組み合わせを記憶する、 請求項7または請求項8に記載の尿検査装置。 【請求項10】 複数の前記第1選択ボックスと、複数の前記第2選択ボックスは、それぞれ列状に並んで表示される、請求項9に記載の尿検査装置。 【請求項11】 前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスは、プルダウンメニューである、請求項9または請求項10のいずれか一項に記載の尿検査装置。 【請求項12】 前記クロスチェックテーブルは、前記第1選択ボックスにおいて選択された一の尿定性測定項目について設定された複数のランクと、前記第2選択ボックスにおいて選択された一の尿中有形成分測定項目について設定された複数のランクとによって分割された複数のセルからなるテーブルであり、 前記情報処理部は、前記セルの選択を受け付けることにより、組み合わせとして選択された二つの項目の測定値間の前記所定の関係の入力を受け付ける、請求項9ないし11のいずれか一項に記載の尿検査装置。 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし12に係る特許に対して平成28年10月21日付けで特許権者に通知した取消理由は次の通りである。 請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許に係る発明の出願遡及日前に周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 甲号証の記載 甲第1号証:特開平9-218197号公報(以下、「甲1」という。) (1) 甲1の記載事項 本件特許に係る発明の出願遡及日前に頒布された刊行物である甲1には、特に【特許請求の範囲】、段落【0007】-【0009】、【0024】-【0029】ならびに図1、図2、図4、図7の記載から、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「尿定性検査装置による複数の測定項目から少なくとも1つの測定項目と、尿沈渣検査装置による複数の測定項目から少なくとも1つの測定項目から少なくとも1つの測定項目とを選択可能であり、 尿定性検査装置による測定項目のうちの選択された一の測定項目の測定範囲を区分けするランクと、尿沈渣検査装置による測定項目のうち選択された一の測定項目の測定範囲を区分けするランクとに対応したエリア設定用桝目を設定するためのキーをキーボードに配置し、 キーボードにおいて、尿定性検査装置による測定項目のうち一の測定項目と尿沈渣検査装置による測定項目のうち一の測定項目の選択を受け付け、 CRTにおいて、尿定性検査装置による測定項目のうち選択された一の測定項目と尿沈渣検査装置による測定項目のうち選択された一の測定項目とが設定されたエリア設定用画面を表示し、 尿定性検査装置による測定項目のうち一の測定項目の測定範囲ランクと尿沈渣検査装置による測定項目のうち一の測定項目の測定範囲のランクとの関係を設定する入力を受け付け、 尿定性検査装置による測定項目のうち一の測定項目と尿沈渣検査装置による測定項目のうち一の測定項目の相関関係を示す、入力された相関データおよび入力されたランクを記憶し、 尿定性検査装置および尿沈渣検査装置によって測定された測定データが記憶した相関関係を有するマッチングエリアに存在しない項目に符号「?」を表示する、 データチェック装置における尿検査方法。」 4 判断 (1) 取消理由通知に記載した取消理由について ア 本件発明1について 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明は、「クロスチェック設定画面において、」「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の」「第1選択をユーザから受け付けるとともに、」「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の」「第2選択をユーザから受け付け、」「前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記所定の関係を記憶」する構成を有していない点(以下、「相違点」という。)で相違する。 そして、上記相違点に係る構成は、本件特許に係る発明の出願遡及日前において周知の事項であるとはいえない。 しかも、本件発明1は、上記構成を有することにより、本件特許明細書等の段落【0005】に記載されているように、「ユーザの希望に応じて新たな測定項目の組み合わせによるチェックを容易に行なうことができるように」するという新規な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2ないし6について 本件発明2ないし6は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明7について 本件発明7は、「尿検査方法」の発明である本件発明1の発明のカテゴリーを「尿検査装置」に変更したものに過ぎない。 したがって、本件発明7は、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明8ないし12について 本件発明8ないし12は、本件発明7を更に減縮したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 特許異議申立人の意見について (ア) 訂正要件についての主張 特許異議申立人奥村一正は、平成29年2月20日付け意見書において、訂正事項1ないし4について、「単に「複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の選択」をすることを「第1選択」と命名し、「複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択」をすることを「第2選択」と命名する、いわば、言い回しを変更するのみの無意味な訂正であると断定せざるを得ない。」と主張し、特許請求の範囲を減縮するものとはいえず、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の目的に該当せず、訂正前から明確であった記載事項の言い回しを変更する訂正にすぎないので同第3号の目的に該当せず、さらには、同第2号および同第4号の目的に該当するものともいえないことから、却下されるべきであると主張している。 しかしながら、訂正事項1ないし4により、本件発明1ないし12は、「第1選択」及び「第2選択」が定義され、「尿定性測定項目の中から一つの項目」が「第1選択」により選択され、「尿中有形成分測定項目の中から一つの項目」が「前記第1選択とは別の第2選択」により選択される点が特定されるものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的としていると認められ、かかる主張は採用できない。 (イ) 進歩性についての主張 特許異議申立人奥村一正は、意見書の提出に伴い、以下の甲第3号証ないし甲第9号証を提出した。 甲第3号証:山形県臨床検査技士会一般検査部門研修会の配付資料,シスメックス(株)仙台支店学術情報係,2009年3月8日 甲第4号証:特開2000-241409号公報 甲第5号証:特開2001-13130号公報 甲第6号証:特開2004-191129号公報 甲第7号証:米山正芳、外1名,尿中有形成分情報の活用,臨床病理レビュー特集第125号,社団法人 東京都臨床検査技士会,p.95-101,2003年4月 甲第8号証:全自動尿中有形成分分析装置UF-1000i運用事例集,シスメックス株式会社,発行日不明 甲第9号証:福田嘉明,尿沈渣検査結果の入力システムの比較,都臨技会誌 Vol.34,No.3,p.155-162,2006年5月 (以下、「甲3」等という。) そして、本件訂正が認められる場合であっても、本件発明1ないし12は、甲1及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨、及び、甲1に記載された事項に周知の技術を適用することにより当業者が容易に発明できたものである旨を主張している。 そこで、上記主張を以下に検討する。 甲3には、第1頁に、「測定(定量)項目:赤血球・白血球・上皮細胞・円柱・細菌」「フラグ(定性)項目:病的円柱・小円形上皮細胞・結晶・酵母様真菌・精子・粘液糸」と記載され、第12頁には「定性検査とのクロスチェック」との記載があり、第13頁には、「定量5項目・フラグ6項目、各々に対し再検判定基準値を設定可能」との記載が存在する。 しかしながら、測定(定量)項目とフラグ(定性)項目は、どちらにも「尿中有形成分」に相当する項目が含まれていることから、どちらを本件発明1等における「尿定性測定項目」あるいは「尿中有形成分測定項目」に対応付けられるのか不明であり、また、「定性検査とのクロスチェック」の記載からは、クロスチェックに用いられる項目がどのように選択されたどのようなものか全く不明である。さらに、「定量5項目・フラグ6項目、各々に対し再検判定基準値を設定可能」とは、各々の項目について、すなわち、11項目について、「再検判定基準値を設定可能」であることが記載されているのであって、複数の項目の組み合わせについて言及されたものではない。 したがって、甲3の記載に基づいて、当業者が本件発明1の上記相違点に係る構成を想到することができたとは認められない。 そして、特許異議申立人奥村一正は、上記意見書の第22頁第3行ないし第6行において、甲3ないし甲9に関して、「甲第3?9号証は、いずれも、尿検査等を含む測定機器に関して、「測定項目を任意に選択する」ことを記載しており、これらの多数の甲号証の記載からすれば、尿検査等を含む測定機器の分野において、「測定項目を任意に選択すること」は、周知の技術である。」と主張している。 確かに、「測定項目を任意に選択すること」自体は周知の技術であると認められるが、当該周知の技術に基づいて、当業者が、本件発明1の上記相違点に係る構成を想到することができたとは認められない。 したがって、この点においても特許異議申立人奥村一正の主張は採用できない。 (2) 取消理由通知において採用しなかった取消理由について 特許異議申立人奥村一正は、特許異議申立書において、甲1に加えて甲第2号証(特開平6-102272号公報。以下、「甲2」という。)を示し、請求項7ないし12に係る発明は、甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している。 そして、甲2には、尿定性分析部及び尿沈渣分析部を備えた尿自動分析装置の構成が記載されている。 しかしながら、甲2には、本件発明1の上記相違点に係る構成は何ら記載されていないことから、甲2の記載事項に基づき、当業者が、本件発明1の上記相違点に係る構成を想到することができたものとは認められず、「尿検査方法」の発明である本件発明1の発明のカテゴリーを「尿検査装置」に変更した本件発明7、及び、本件発明7を更に減縮した本件発明8ないし12が、甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の第1選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択であって前記第1選択とは別の第2選択が可能であり、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の前記第1選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の前記第2選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記所定の関係を記憶し、 尿検体について尿定性測定項目と尿中有形成分測定項目を測定し、 記憶した組み合わせに係る尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が前記所定の関係にある場合、二つの前記測定値が前記所定の関係にあることを示す情報を出力する、尿検査方法。 【請求項2】 前記クロスチェック設定画面は、記憶された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の複数の組合せをそれぞれユーザが指定可能に表示し、前記複数の組合せの中で、指定された一または複数の組み合わせについて、尿検体を測定して得られた尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が所定の関係にあるか否かを判定する、請求項1に記載の尿検査方法。 【請求項3】 前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第1選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第2選択を受け付ける第2選択ボックスとの組を複数組含み、 前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスのそれぞれの組毎に、選択された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の組み合わせを記憶する、請求項1または請求項2に記載の尿検査方法。 【請求項4】 複数の前記第1選択ボックスと、複数の前記第2選択ボックスは、それぞれ列状に並んで表示される、請求項3に記載の尿検査方法。 【請求項5】 前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスは、プルダウンメニューである、請求項3または請求項4に記載の尿検査方法。 【請求項6】 前記クロスチェックテーブルは、前記第1選択ボックスにおいて選択された一の尿定性測定項目の測定値について設定された複数のランクと、前記第2選択ボックスにおいて選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値について設定された複数のランクとによって分割された複数のセルからなるテーブルであり、 前記セルの選択を受け付けることにより、組み合わせとして選択された二つの測定項目の測定値間の前記所定の関係の入力を受け付ける、請求項3ないし5のいずれか一項に記載の尿検査方法。 【請求項7】 尿検体について複数の尿定性測定項目を測定可能な尿定性測定部と、 尿検体について複数の尿中有形成分測定項目を測定可能な尿中有形成分測定部と、 表示部を含む情報処理部と、を備え、 前記情報処理部は、 複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の第1選択が可能であり、複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の選択であって前記第1選択とは別の第2選択が可能であり、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定入力するためのクロスチェック設定画面を前記表示部に表示し、 前記クロスチェック設定画面において、前記複数の尿定性測定項目の中から一つの項目の前記第1選択をユーザから受け付けるとともに、前記複数の尿中有形成分測定項目の中から一つの項目の前記第2選択をユーザから受け付け、 前記クロスチェック設定画面において、前記第1選択により選択された一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された一の尿中有形成分測定項目とが設定されたクロスチェックテーブルを表示し、前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目の測定値と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の測定値との所定の関係を設定する入力をユーザから受け付け、 前記第1選択により選択された前記一の尿定性測定項目と前記第2選択により選択された前記一の尿中有形成分測定項目の組み合わせと、入力された前記二つの項目の測定値間の所定の関係を記憶し、 前記尿定性測定部と前記尿中有形成分測定部の両方において測定された尿検体であって、記憶した組み合わせに係る尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が前記所定の関係にある尿検体について、二つの前記測定値が前記所定の関係にあることを示す情報を前記表示部に出力させる、尿検査装置。 【請求項8】 前記クロスチェック設定画面は、記憶された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の複数の組合せをそれぞれユーザが指定可能に表示し、前記情報処理部は、前記複数の組合せの中で、指定された一または複数の組み合わせについて、尿検体を測定して得られた尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の二つの測定値が所定の関係にあるか否かを判定する、請求項7に記載の尿検査装置。 【請求項9】 前記クロスチェック設定画面は、複数の尿定性測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第1選択を受け付ける第1選択ボックスと、複数の尿中有形成分測定項目を表示してその中から一つの項目の前記第2選択を受け付ける第2選択ボックスの組を複数組含み、 前記情報処理部は、前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスのそれぞれの組毎に、選択された尿定性測定項目および尿中有形成分測定項目の組み合わせを記憶する、請求項7または請求項8に記載の尿検査装置。 【請求項10】 複数の前記第1選択ボックスと、複数の前記第2選択ボックスは、それぞれ列状に並んで表示される、請求項9に記載の尿検査装置。 【請求項11】 前記第1選択ボックスおよび前記第2選択ボックスは、プルダウンメニューである、請求項9または請求項10のいずれか一項に記載の尿検査装置。 【請求項12】 前記クロスチェックテーブルは、前記第1選択ボックスにおいて選択された一の尿定性測定項目について設定された複数のランクと、前記第2選択ボックスにおいて選択された一の尿中有形成分測定項目について設定された複数のランクとによって分割された複数のセルからなるテーブルであり、 前記情報処理部は、前記セルの選択を受け付けることにより、組み合わせとして選択された二つの項目の測定値間の前記所定の関係の入力を受け付ける、請求項9ないし11のいずれか一項に記載の尿検査装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-03-16 |
出願番号 | 特願2014-155506(P2014-155506) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(G01N)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 赤坂 祐樹 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
▲高▼橋 祐介 福島 浩司 |
登録日 | 2015-11-20 |
登録番号 | 特許第5841645号(P5841645) |
権利者 | シスメックス株式会社 |
発明の名称 | 尿検査方法および尿検査装置 |
代理人 | 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所 |