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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B |
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管理番号 | 1327894 |
異議申立番号 | 異議2016-700736 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-12 |
確定日 | 2017-04-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5862988号発明「積層フィルムおよび包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5862988号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第5862988号の請求項1、3ないし4に係る特許を維持する。 特許第5862988号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5862988号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成22年8月4日の特許出願の一部を、平成26年10月22日に新たな特許出願としたものであり、平成28年1月8日にその特許権の設定登録がされた。 その後、その特許について、特許異議申立人中西恒裕により特許異議の申立てがされ、平成28年10月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年12月22日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年2月15日に意見書が提出された。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 ア 請求項1の「酸素吸収性樹脂(ただし、共役ジエン重合体環化物を除く。)と、酸素吸収反応触媒とを含む酸素吸収層と、」を「酸素吸収性樹脂(ただし、共役ジエン重合体環化物を除く。)と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナート亜鉛、アセチルアセトナートコバルトまたはアセチルアセトナート銅である酸素吸収反応触媒とを含む酸素吸収層と、」に訂正する。 イ 請求項1の「前記酸素吸収反応触媒は、前記酸素吸収層に対して重量比率で100ppm以上5000ppm以下含有され、」を「前記酸素吸収反応触媒は、前記酸素吸収層に対して重量比率で500ppm以上5000ppm以下含有され、」に訂正する。 ウ 請求項2を削除する。 エ 請求項3の「請求項1または2に記載の」を「請求項1に記載の」に訂正する。 オ 請求項4の「請求項1?3のいずれか1項に記載の」を「請求項1または3に記載の」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 上記アの訂正事項に関し、明細書の段落0031には「酸素吸収反応触媒としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナート亜鉛、アセチルアセトナートコバルトまたはアセチルアセトナート銅などの遷移金属触媒などが用いられる。」との記載がある。 上記イの訂正事項に関し、明細書の段落0011には「酸素吸収反応触媒は、酸素吸収層に対して重量比率で500ppm以上5000ppm以下含有される。」との記載がある。 ア、イの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、「酸素吸収反応触媒」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウの訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ、オの訂正は、ウの訂正に伴い、引用関係を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 酸素吸収性樹脂(ただし、共役ジエン重合体環化物を除く。)と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナート亜鉛、アセチルアセトナートコバルトまたはアセチルアセトナート銅である酸素吸収反応触媒とを含む酸素吸収層と、 ガスバリア性を有するバリア層とを備え、 前記酸素吸収反応触媒は、前記酸素吸収層に対して重量比率で500ppm以上5000ppm以下含有され、 前記酸素吸収層は、酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は前記酸素吸収層に対して重量比率で5ppm以上60ppm以下含有され、 前記バリア層は、酸素透過率が200ml/(m^(2)・24h・atm)以下であることを特徴とする積層フィルム。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記酸素吸収性樹脂が、エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、主鎖エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、ポリエーテルユニットポリマー、エチレンと歪んだ環状アルキレンのコポリマー、ポリアミド樹脂、酸変性ブタジエン、およびヒドロキシアルデヒドポリマーからなる群から選ばれる、請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項4】 請求項1または3に記載の積層フィルムを備えることを特徴とする包装体。 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1?4に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2)本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 (29条) 1.特開2008-73628号公報 2.国際公開第2006/095640号 3.国際公開第2007/126157号 (1?3は、甲第1?3号証に同じ) 請求項1?4に係る発明は、甲1?3発明のいずれとも同一、又は、いずれかから容易想到である。 (36条) 請求項1?4に係る発明は、所望の効果を奏さない発明を含み、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている。 (3)甲号証の記載 本件発明1で特定する「酸素吸収反応触媒」の含有量について、各証拠の記載は、以下のとおりである。 甲第1号証(特開2008-73628号公報)の請求項1には、「酸化促進成分(C)0.0001重量%?10重量%」と記載されている。 甲第2号証(国際公開第2006/095640号)の段落0049には、「酸化促進成分(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)中に0.0001重量%以上5重量%以下とするのが好ましい。好ましくは0.001重量%以上3重量%以下である」と記載されている。 甲第3号証(国際公開第2007/126157号)の請求項17には、「前記遷移金属塩(Β)が、前記熱可塑性樹脂(Α) の質量を基準として1?50,000ppmの割合で含有される」と、24ページ16?22行には、「該樹脂組成物が、後述のように、熱可塑性樹脂(Α) に加えてマトリックス樹脂(E)およぴ相容化剤(F)を含有する場合には、該遷移金属塩(B)は、熱可塑性樹脂(A)、マトリックス樹脂(E)、および相容化剤(F)の合計質量を基準として、好適には金属元素換算で1?50,000ppmの割合で含有される。いずれの場合にも、より好適には、遷移金属塩(B)は5?10,000ppm、さらに好適には10?5,000ppmの範囲で含有される」と、記載されている。 (4)判断 ア 特許法第29条 本件発明1で特定する「酸素吸収反応触媒」の含有量について、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0008】 本願発明者の鋭意検討の結果、上記構成において、酸素吸収反応触媒を酸素吸収層に対して重量比率で100ppm以上5000ppm以下酸素吸収層に含有させ、酸化防止剤を酸素吸収層に対して重量比率で0ppm以上170ppm以下酸素吸収層に含有させることにより、上記積層フィルムの酸素吸収量が多くなるとともに、積層フィルムの外観の低下が抑制されることが明らかとなった。」 「【0012】 本願発明者の鋭意検討の結果、上記構成において、酸素吸収反応触媒を酸素吸収層に対して重量比率で500ppm以上5000ppm以下酸素吸収層に含有させ、酸化防止剤を酸素吸収層に対して重量比率で0ppm以上120ppm以下酸素吸収層に含有させることにより、初期(密封した状態で保管を開始して1日目)の積層フィルムの酸素吸収量が多くなるとともに、積層フィルムの外観の低下が抑制されることが明らかとなった。」 「【0118】 実施例1?26に係る包装体200は、比較例1?10に係る包装体に比べて、酸素吸収量が多く、高い酸素吸収性を有していた。また、実施例1?26に係る包装体200の外観は色味がついておらず良好であったのに対して、比較例8?10に係る包装体の外観は色味がついており不良であった。」 以上から、本件発明1で特定する「酸素吸収反応触媒」の含有量を「500ppm以上5000ppm以下」と特定した技術的意義は、「外観の低下が抑制される」ことである。 本件発明1で特定する「酸素吸収反応触媒」の含有量について、各証拠記載のものは、以下のとおりである。 甲第1号証:0.0001重量%?10重量%、すなわち、1?100000ppm 甲第2号証:0.0001重量%?5重量%、すなわち、1?50000ppm 甲第3号証:1?50000ppm 「酸素吸収反応触媒」の含有量について、本件発明1と各証拠記載のものとを対比すると、各証拠記載のものは、いずれも、本件発明1よりも広い範囲である。 また、各証拠には、「外観の低下が抑制される」ことについて、記載も示唆もない。 本件発明1は、「酸素吸収反応触媒」の含有量を「500ppm以上5000ppm以下」と特定することにより、「外観の低下が抑制される」という効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、各証拠記載の発明であるとも、各証拠記載の発明から容易に発明をすることができたとすることもできない。 本件発明3、4は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、同様の理由により、各証拠記載の発明であるとも、各証拠記載の発明から容易に発明をすることができたとすることもできない。 申立人は、本件発明1の範囲が各証拠記載の発明の範囲に含まれるから、同一又は容易と主張する。 しかし、本件発明1と、各証拠記載の発明とは、技術的意義が異なるから、同一とは言えず、容易とする根拠もない。 申立人は、甲第3号証の実施例12.1に実施例9.1を適用し、容易とも主張する。しかし、異なる両実施例を組み合わせる動機は明らかでなく、申立人の主張は根拠がない。 イ 特許法第36条第6項第1号 本件訂正により、本件発明1の実施例は、段落0117、表1の実施例5、8?12、16、19、22、24?25、である。 これらは、いずれも「酸素吸収量」が他の例よりも多く、「外観」は「○」である。 よって、本件発明1と、その効果とは整合しており、発明の詳細な説明に記載されたものと言える。本件発明3、4についても、同様である。 申立人は、実施例15と16の「酸素吸収量」の「1日目」の値が同じであることをもって、効果を奏さない旨、主張する。 しかし、「3日目」、「7日目」の値は、実施例16が上回り、効果を奏していることから、申立人の主張は根拠がない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、3?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸素吸収性樹脂(ただし、共役ジエン重合体環化物を除く。)と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナート亜鉛、アセチルアセトナートコバルトまたはアセチルアセトナート銅である酸素吸収反応触媒とを含む酸素吸収層と、 ガスバリア性を有するバリア層とを備え、 前記酸素吸収反応触媒は、前記酸素吸収層に対して重量比率で500ppm以上5000ppm以下含有され、 前記酸素吸収層は、酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は前記酸素吸収層に対して重量比率で5ppm以上60ppm以下含有され、 前記バリア層は、酸素透過率が200ml/(m^(2)・24h・atm)以下であることを特徴とする積層フィルム。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記酸素吸収性樹脂が、エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、主鎖エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、ポリエーテルユニットポリマー、エチレンと歪んだ環状アルキレンのコポリマー、ポリアミド樹脂、酸変性ブタジエン、およびヒドロキシアルデヒドポリマーからなる群から選ばれる、請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項4】 請求項1または3に記載の積層フィルムを備えることを特徴とする包装体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-03-27 |
出願番号 | 特願2014-215309(P2014-215309) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B) P 1 651・ 121- YAA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岸 進 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 井上 茂夫 |
登録日 | 2016-01-08 |
登録番号 | 特許第5862988号(P5862988) |
権利者 | 住友ベークライト株式会社 |
発明の名称 | 積層フィルムおよび包装体 |
代理人 | 特許業務法人 クレイア特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人クレイア特許事務所 |