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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1327912
異議申立番号 異議2017-700206  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-02 
確定日 2017-05-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第5985808号発明「反射板用ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5985808号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5985808号(請求項の数6。以下,「本件特許」という。)は,平成23年10月20日に出願され,平成28年8月12日に特許権の設定登録がされ,同年9月6日に特許掲載公報の発行がされたものである。
これに対し,平成29年3月2日に特許異議申立人より請求項1ないし6に係る特許について本件特許異議の申立てがされた。


2 本件特許の請求項1ないし6に係る発明
(1) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は,それぞれ,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,請求項1ないし6の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する反射層と,支持層とを有するポリエステルフィルムであって,少なくとも,支持層,反射層,支持層がこの順で積層された構成を含み,
前記炭酸カルシウム粒子が,リン化合物が表面に存在していることにより粒子表面のCa活性が失活している炭酸カルシウム粒子であり,
炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.6?8μmであり,
反射層における炭酸カルシウム粒子の含有量が1?50質量%であり,
反射層に用いられる炭酸カルシウム粒子を小粒径側から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が140以下であり,
反射層の密度が1.20g/cm^(3)以下,反射層のポリエステルの固有粘度が0.45dL/g以上,0.50dL/g未満,フィルムのガスマークが100個/m^(2)以下である反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.8?6μmである請求項1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
反射層における炭酸カルシウム粒子の含有量が8?50質量%である請求項1または2に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
反射層の厚みが,フィルム全体厚み100に対して60?90である請求項1?3のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
支持層は,硫酸バリウム粒子0.1?10質量%と,全酸成分に対して1?10モル%のイソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99.9?90質量%とからなり,反射層は,炭酸カルシウム粒子1?50質量%と,全酸成分に対して5?20モル%のイソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99質量%以下とからなる請求項1?4のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
サイドライト方式バックライトユニット反射板用である請求項1?5のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。」

(2) なお,請求項1に記載された「反射層のポリエステルの固有粘度」なる文言は,「反射層の」という限定が加えられていること及び本件特許明細書の【0066】に,フィルムから反射層を剥離し,剥離した反射層にo-クロロフェノールを加えて溶解し,遠心分離装置で無機粒子を分離した後,固有粘度を測定することが記載されていることから,反射層形成用のポリエステルという素材そのものの固有粘度ではなく,反射板用ポリエステルフィルムを製造した後に,当該反射板用ポリエステルフィルムの反射層を構成しているポリエステルについて測定した固有粘度を指すものと解される。


3 申立ての理由の概要
特許異議申立人は,証拠として甲第1号証ないし甲第5号証(以下,それぞれを「甲1」ないし「甲5」という。)を提出し,本件特許発明1ないし6に係る特許は,甲1に記載された発明に,甲2に記載された発明,甲3又は甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,取り消すべきものである旨主張している。
なお,特許異議申立人が提出した甲1ないし甲5は,次のとおりである。
甲1:特開平8-217961号公報
甲2:特開2011-11370号公報
甲3:特開昭63-66222号公報
甲4:特開昭62-207337号公報
甲5:”炭酸カルシウム CaCO_(3) 白石工業株式会社”,1989年4月,p.1-16


4 引用例
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1(特開平8-217961号公報)は,本件特許に係る特許出願の出願より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲1には,次の記載がある。(下線部は,後述する甲1発明の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【請求項1】 リン化合物共重合ポリエステル(A)と本文中に規定したFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する炭酸カルシウム(B)および/または炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物(C)とを含有してなることを特徴とするポリエステル組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項3】 炭酸カルシウム(B)がリン化合物で表面処理されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリエステル組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項8】 請求項1?6のいずれか1項に記載のポリエステル組成物からなるフイルム。
【請求項9】 請求項8に記載のフイルムが白色であることを特徴とする白色フイルム。」

(イ) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリエステル組成物およびそれからなる成形品に関するものであり,詳しくはリン化合物共重合ポリエステルとFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する炭酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物とを含有してなるポリエステル組成物およびそれからなるフイルムなどの成形品に関するものであり,さらに詳しくは,印画紙,X線増感紙,カード,ラベル,表示板,白板などの基材として好適なポリエステル組成物およびそれからなるフイルムなどの成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは優れた物理的,化学的特性を有しており,繊維,フイルム,その他の成形品として広く使用されている。特にこれらの用途の中でカード,ラベル,表示板,白板などの基材として白色フイルムが使用されている。
【0003】従来,白色フイルムを得るために白色の無機粒子を多量にポリエチレンテレフタレートに添加することはよく知られている。・・・(中略)・・・しかし,上記従来技術において,硫酸バリウムを添加したものは粒子の分散性に劣り,得られたポリエステルを使用してフイルム成形した場合には十分な白度,隠蔽力,光沢性を有するフイルムが得られない。一方,酸化チタンを添加したものは粒子の屈折率が高いため隠蔽力は優れているものの,例えば,450nm以下の低波長領域での分光反射率の低下が認められ,十分な白度を有するフイルムが得られない。
【0004】さらに,・・・(中略)・・・単に炭酸カルシウムをポリエステル中に高濃度に含有させる場合には,炭酸カルシウムとポリエステルとの相互作用・反応によって,
○1(注:本決定では,丸囲み数字を「○1」,「○2」等と表示する。)ポリエステル中で炭酸カルシウム粒子が凝集する
○2ポリエステル組成物が高温滞留した場合に,変性し,異物となる
○3ポリエステル組成物が高温滞留した場合に,発泡するなどし,溶融熱安定性の良好なポリエステルが得られない。
【0005】この結果,該ポリエステル組成物から得られるフイルムは白度,隠蔽性,表面平滑性に劣る。
【0006】また,上記した欠点を解決するために特開昭62-207337号公報では,ポリエステルと炭酸カルシウムおよびリン化合物の混合物を単に溶融押出した後,フイルムを製造する方法,特開昭63-66222号公報ではポリエステルの反応系に炭酸カルシウムおよびリン化合物を添加する方法が開示されている。
【0007】一方,特開平6-271682号公報では,フイルムの透明性,滑り性,削れ性改良のため,溶融時のポリマー熱安定性に優れ,炭酸カルシウム粒子のポリエステルに対する分散性および親和性の向上させたポリエステル組成物を製造する目的で,粉体状態の炭酸カルシウムと特定量のリン原子含有ポリエステルとをベント式混練押出機で混練する方法が開示されている。
【0008】しかし,ポリエステルと炭酸カルシウムおよびリン化合物を単に混練する方法,ポリエステルの反応系に炭酸カルシウムおよびリン化合物を添加する方法,あるいは単に粉体状態の炭酸カルシウムと特定量のリン原子含有ポリエステルとをベント式混練押出機で混練する方法では,上述した炭酸カルシウムとポリエステルとの相互作用・反応によって生じる種々の問題をある程度は改良することができるが,充分に炭酸カルシウムとポリエステルとの相互作用・反応を抑制することができず,炭酸カルシウムを効率よく高濃度に含有させることが困難であったり,粒子の分散性改良効果,またポリマが高温滞留した場合の異物発生,発泡抑制効果が十分でない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,多量の白色無機粒子をポリエステルに含有させ白色性,隠蔽性,光沢性に優れた成形品を得るために,リン化合物共重合ポリエステルとFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する炭酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物とを含有してなるポリエステル組成物およびそれからなるフイルムなどの成形品を用いることによって,上記した従来の欠点を解決することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記した本発明の目的は,リン化合物共重合ポリエステル(A)と本文中に規定したFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する炭酸カルシウム(B)および/または炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物(C)とを含有してなることを特徴とするポリエステル組成物によって達成できる。」

(ウ) 「【0013】本発明のリン化合物共重合ポリエステル(A)は,リン化合物が共重合されている必要がある。ポリエステルに共重合するリン化合物としては,リン元素を含有し,かつポリエステルに共重合し得る化合物であれば特に限定されるものではない。例えば,リン酸,亜リン酸,ホスフィン酸,ホスホン酸,ホスフィンオキシドおよびそれらの誘導体などが挙げられる。・・・(中略)・・・
【0016】本発明の炭酸カルシウム(B)はFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する必要があり,1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを示さないものは,炭酸カルシウムの粒子分散性,ポリエステル組成物の高温滞留時の異物発生,発泡性に劣る。
【0017】本発明のFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルとは,炭酸カルシウムのFT-IR(バイオラットデジラボ社製FTS60A/896 分解能4cm^(-1))の拡散反射法によって測定したスペクトルと通常の何も処理していない炭酸カルシウムのスペクトルとの差スペクトルをいい,本発明の炭酸カルシウムは,この差スペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する必要がある。
【0018】本発明の炭酸カルシウム(B)を得る方法は,特に限定されるものではないが,例えば炭酸カルシウムを各種の処理剤で表面処理することによって得ることができる。各種の表面処理剤の中でも,特にリン化合物で表面処理することが好ましい。表面処理に使用するリン化合物は特に限定されることはないが,例えばリン酸,亜リン酸,ホスフィン酸,ホスホン酸およびそれらの誘導体などを挙げることができる。・・・(中略)・・・得られるポリエステル組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性,ポリエステル組成物の品質安定性,高温下で滞留した場合のポリマの発泡性,炭酸カルシウムに起因する異物発生などの点から,上述のリン化合物としては,・・・(中略)・・・さらに好ましくはリン酸,亜リン酸,ホスフィン酸,ホスホン酸またはそれらの炭素数3以下のアルキルエステル化合物である。・・・(中略)・・・
【0021】本発明の炭酸カルシウム(B)はFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有することに特徴があり,該吸収バンドは炭酸カルシウムをリン化合物で表面処理することによって確認されるようになる。この特有の吸収バンドを有する炭酸カルシウムを使用することで,炭酸カルシウムの表面活性を抑制することができ,炭酸カルシウムの粒子分散性が向上し,かつポリエステル組成物の高温滞留時の異物発生,発泡性が抑制できる。この吸収バンドは炭酸カルシウムの表面がリン化合物で処理された結果生じたもので,リン酸金属塩由来のものと推定される。
・・・(中略)・・・
【0023】本発明の炭酸カルシウムの粒子径および比表面積は特に限定されることはないが粒子径は平均粒子径で0.01?20μm,さらには0.1?10μm,特には0.2?5μmが白色性,隠蔽性,光沢性の点で好ましい。比表面積は0.5?100m^(2)/g,さらには1?70m^(2)/g,特には3?60m^(2)/gが白色性,隠蔽力,光沢性の点で好ましい。粒子径が平均粒子径で20μmを越えたり,比表面積が0.5m^(2)/g未満であると,ポリエステル組成物中の粒子分散性は良好であるものの,ポリエステル組成物をフイルム成形した場合,白色性,隠蔽性,光沢性が劣り好ましくない場合がある。一方,粒子径が平均粒子径で0.01μm未満であったり,比表面積が100m^(2)/gを越えると,ポリエステル組成物中の粒子分散性が著しく劣ったり,ポリエステル組成物が高温の場に滞留した場合に粗大な異物が発生したり,発泡したり,さらには,高重合度のポリエステルが得られないため好ましくない場合がある。
【0024】本発明の炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物(C)は,ポリエステル中に炭酸カルシウムが含有されているものであれば特に限定されるものでないが,炭酸カルシウムの粒子分散性,得られるポリエステル組成物の品質安定性,高温下で滞留した場合のポリマの発泡性,炭酸カルシウムに起因する異物発生などの点から,炭酸カルシウム(B)を含有したものが好ましい。・・・(中略)・・・
【0026】本発明のポリエステル組成物中の炭酸カルシウム含有量は特に限定されるものではないが,ポリエステル組成物中に5重量%を越え,80重量%以下含有することが好ましく,さらに好ましくは20?70重量%,特に好ましくは30重量%を越え,60重量%以下である。含有量が5重量%以下であると,ポリエステル組成物をフイルムに成形した場合,フイルムの白色性,隠蔽性が不十分となり好ましくない場合がある。含有量が80重量%を越えると,ポリエステル組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性が劣ったり,ポリエステル組成物の高温滞留時に異物が発生あるいは発泡したり,さらには,高重合度のポリエステルが得られずにフイルム強度が十分でない場合がある。
・・・(中略)・・・
【0030】本発明のポリエステル組成物から各種の成形品を得る方法は特に限定されるものではないが,溶融紡糸によって繊維,押出し成形あるいは射出成形などによって各種の成型品,また,溶融押出しによってシート状あるいはその後延伸することでフイルムを製造することができる。得られる各種の成形品は滑り性,光沢性,白色性,隠蔽性などに優れたものである。
【0031】本発明のポリエステル組成物からなるフイルムの具体的な製造方法を説明するとポリエステル組成物を乾燥後,溶融押出しして,未延伸シートとし,続いて二軸延伸,熱処理し,フイルムにする。二軸延伸は縦,横逐次延伸あるいは二軸同時延伸のいずれでもよく,延伸倍率は特に限定されるものではないが通常は縦,横それぞれ2.0?5.0倍が適当である。また,二軸延伸後,さらに縦,横方向のいずれかに再延伸してもよい。この際本発明のポリエステル組成物と各種のポリエステルと混合して炭酸カルシウムからなる改質剤の含有量を目的に応じて適宜変更することができる。また,混合する各種のポリエステルは本発明のポリエステル組成物のベースとなるポリエステルと同一であっても,異なってもよい。
【0032】上述の方法でポリエステル組成物から本発明のフイルムを得ることができる。本発明のフイルムは特に限定されないが,白色性,光沢性,隠蔽性に優れた二軸延伸フイルムを得るためには,フイルム中の炭酸カルシウムの含有量は5重量%を越え,40重量%以下とすることが好ましく,さらには7?30重量%,特に10?20重量%とすることが好ましい。炭酸カルシウムの含有量が5重量%以下であると白色性,隠蔽性に劣り好ましくない場合がある。含有量が40重量%を越えるとフイルムの機械特性に劣り好ましくない場合がある。またフイルムの密度はフイルムの生産性や機械特性の点で0.80g/cm^(3)以上とすることが好ましく,白色性,隠蔽性の点で1.38g/cm^(3)以下とすることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0034】また本発明のフイルムは,本発明のポリエステル組成物からなる層と他のポリエステル層からなる複合フイルムであってもよい。その際の積層構成は二層以上であれば特に限定されるものでない。例えば,本発明のポリエステル組成物からなる層の少なくとも片面に他のポリエステルからなる層,例えば透明なポリエステルの層,粗面化層,極性基や親水基を有する層を積層してもよい。これらの層の厚みは特に限定されないが,0.001?10μmが好ましい。これらの複合フイルムは,白色性に加えて,優れた表面光沢性,逆に粗面化により艶消し性や筆記性が,また接着性が良好となる。」

(エ) 「【0035】
【実施例】以下本発明を参考例および実施例により,さらに詳細に説明する。参考例および実施例中の特性は次のようにして測定した。
【0036】A.炭酸カルシウムの比表面積,粒子径
比表面積はBET法表面積測定装置で測定し,また,粒子径は堀場製作所製超遠心式粒度分布測定装置 CAPA-700を用いて測定した。
【0037】B.ポリエステルおよび炭酸カルシウム中のリン元素量
ポリエステルおよび炭酸カルシウムを酸で湿式分解し,リンモリブデンブルー比色法で測定した。
【0038】C.ポリエステルの固有粘度
o-クロロフェノール溶媒を用い,25℃で測定した。
【0039】D.ポリエステル中の粒子分散性
ポリマ20mgを二枚のカバーグラス間にはさみ280℃で溶融プレス冷却後,顕微鏡観察によって判定した。
○;凝集粒子あるいは粗大粒子は観察されない。
△;凝集粒子あるいは粗大粒子がわずかに観察される。
×;凝集粒子あるいは粗大粒子が多く観察される。
【0040】E.フイルムの隠蔽性
マクベス社透過濃度計TD-504で,厚さ50μmのフイルムの可視光線透過濃度を測定し,隠蔽性とした。ここでいう透過濃度は次式より算出した。
O・D=-log(T/100)
ここで O・D;透過濃度[-]
T ;可視光透過率[%]
【0041】F.フイルムの白色性
日立自記分光光度計EPE-2を用いてタングステン光源で測定した450nmおよび550nmの厚さ50μmのフイルム各反射率R_(450)およびR_(550)から次式によって算出した。
白度(%)=4R_(450)-3R_(550)
【0042】G.フイルムの光沢性
JIS Z84741に従い,60度鏡面光沢を測定し,フイルムの光沢度を測定した。
【0043】参考例A
テレフタル酸86重量部,およびエチレングリコール39重量部とのエステル化反応物を貯留分として,これにテレフタル酸86重量部,およびエチレングリコール39重量部を加え,250℃でエステル化反応を続け,反応率が97%以上に達した反応物からテレフタル酸成分86重量部に相当する反応物を重縮合缶に移し,リン化合物としてリン酸を0.60重量部添加後,三酸化アンチモン0.04重量部加え,その後290℃の高温減圧下にて常法に従い重縮合反応を行ない固有粘度0.61dl/g,リン元素を1500ppm含有するリン化合物共重合ポリエステルを得た。
【0044】参考例B?D
表1に示した如く,参考例Aと同様の方法で,リン化合物種類,量を変更してリン化合物共重合ポリエステルを得た。
【0045】
【表1】

参考例E
平均粒子径1.2μm,比表面積8.0m^(2)/gのカルサイト型天然炭酸カルシウムの粉体を容器固定型混合機である(株)カワタ製スーパーミキサー内に仕込み,回転翼の回転数760rpmで攪拌しながら昇温し,缶内温度が50℃に達した時点で,リン化合物としてリン酸トリメチルを炭酸カルシウムに対して5重量%となるように噴霧させながら添加した。その後10分間混合し,表面処理した。得られた炭酸カルシウムにはリン元素が7900ppm含まれていた。さらに,FT-IRの拡散反射法によって測定した表面処理していない炭酸カルシウムと表面処理した炭酸カルシウムとの差スペクトルから1120cm^(-1)付近に顕著な吸収バンドが確認された。
【0046】参考例F?H
表2に示した如く,参考例Eと同様の方法で,炭酸カルシウムの種類および表面処理剤のリン化合物の種類,量を変更して,表面処理した炭酸カルシウムを得た。得られた炭酸カルシウム中のリン元素量を表2に示した。・・・(中略)・・・
【0047】
【表2】

参考例I
参考例Eの炭酸カルシウムの粉体30重量部と固有粘度0.65dl/gのポリエチレンテレフタレートチップ70重量部とを混合した後,フィダーを用いベント式二軸押出し機に供給し,ベント口を10torrの真空度に保持し,温度280℃,滞留時間5分で混練し,炭酸カルシウムを30重量%含有するポリエステル組成物を得た。
【0048】参考例J?L
表3に示した如く,参考例Iと同様の方法で,炭酸カルシウムの種類,量を変更して,炭酸カルシウムを含有するポリエステル組成物を得た。
【0049】
【表3】

実施例1
参考例Aのリン化合物共重合ポリエステル85重量部と参考例Eの炭酸カルシウム15重量部とを混合した後,フィダーを用いベント式二軸押出し機に供給し,ベント口を10torrの真空度に保持し,温度280℃,滞留時間5分で混練し,炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレートを得た。混練時に異物の発生もなく,発泡も見受けられなかった。また,得られた組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性も良好であった。さらに組成物中のリン元素量は比色法によって測定したところ2100ppmであった。
【0050】得られた炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレート100重量部に対して蛍光増白剤“OB-1”(イーストマン社製)0.02重量部配合し,十分乾燥した後,押出し機に供給して290℃で溶融し,T型口金よりシート状に押し出し,30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フイルムを得た。次いで未延伸フイルムを95℃に加熱して縦方向に3.3倍延伸し,さらに100℃に加熱して横方向に3.3倍延伸し,200℃で加熱処理して,厚さ50μmのフイルムを得た。得られたフイルムの特性結果を表4に示す。
・・・(中略)・・・
【0052】比較例1
リン化合物を添加しない以外は,参考例Aと同様の方法で,固有粘度0.61dl/gのリン化合物を共重合していないポリエステルを得た。該ポリエステルと平均粒子径1.2μm,比表面積8.0m^(2)/gの表面処理していないカルサイト型天然炭酸カルシウムの粉体15重量部とを用い,実施例1と同様の方法でベント式二軸押出し機を用いて炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレートおよびフイルムを得た。表4に各種特性結果を示した。
・・・(中略)・・・
【0054】実施例2?8
表4に記載した如く,実施例1と同様の方法でリン化合物共重合ポリエステルおよび炭酸カルシウムの種類,量を変更してポリエステル組成物およびフイルムを得た。表4に各種特性結果を示した。
・・・(中略)・・・
【0056】比較例2
リン化合物を添加しない以外は,参考例Aと同様の方法で,固有粘度0.61dl/gのリン元素を含有しないポリエステルを得た。該ポリエステル85重量部,平均粒子径1.2μm,比表面積8.0m^(2)/gの表面処理していないカルサイト型天然炭酸カルシウムの粉体15重量部を混合し,十分乾燥した。この混合物に,リン化合物としてリン酸トリメチルを炭酸カルシウムに対して5重量%となるように混合した後,ベント式でない通常の一軸押出し機に供給し,温度280℃,滞留時間5分で混練し,炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレートを得た。混練時には異物発生はなかったものの,ポリマの粘度低下が著しく,さらにポリマ中には微細な気泡が見受けられた。また,得られた組成物中には炭酸カルシウムの凝集粒子あるいは粗大粒子が観察された。
【0057】該炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレートを用い,実施例1と同様の方法でフイルムを得た。表4に各種特性結果を示した。
・・・(中略)・・・
【0059】
【表4】

実施例9
参考例Aのリン化合物共重合ポリエステル50重量部と参考例Iの炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物50重量部とを混合した後,フィダーを用いベント式二軸押出し機に供給し,ベント口を10torrの真空度に保持し,温度280℃,滞留時間5分で混練し,炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレートを得た。混練時に異物の発生もなく,発泡も見受けられなかった。また,得られた組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性も良好であった。さらに組成物中のリン元素量は比色法によって測定したところ1500ppmであった。
【0060】得られた炭酸カルシウムを15重量%含有するポリエチレンテレフタレート100重量部に対して蛍光増白剤“OB-1”(イーストマン社製)0.02重量部配合し,十分乾燥した後,押出し機に供給して290℃で溶融し,T型口金よりシート状に押し出し,30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フイルムを得た。次いで未延伸フイルムを95℃に加熱して縦方向に3.3倍延伸し,さらに100℃に加熱して横方向に3.3倍延伸し,200℃で加熱処理して,厚さ50μmのフイルムを得た。得られたフイルムの特性結果を表5に示す。
・・・(中略)・・・
【0062】実施例10?14
表5に記載した如く,実施例9と同様の方法でリン化合物共重合ポリエステルおよび炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物の種類,量を変更してポリエステル組成物およびフイルムを得た。表5に各種特性結果を示した。
・・・(中略)・・・
【0064】
【表5】



(オ) 「【0065】
【発明の効果】本発明は上述したように,リン化合物共重合ポリエステルとFT-IRの拡散反射法によって得られたスペクトルで1000?1200cm^(-1)間に吸収バンドを有する炭酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物とを含有してなるポリエステル組成物であり,炭酸カルシウム粒子の分散性,耐熱性の優れたポリエステル組成物を得ることができ,該ポリエステル組成物からは白色性,隠蔽性,光沢性に優れた成形品が得られる。特にポリエステル組成物をフイルム成形した場合には白度,隠蔽力,光沢性に優れた白色フイルムを製造することができ,印画紙,X線増感紙,カード,ラベル,表示板,白板などの基材として好ましく用いられる。」

イ 甲1に記載された発明
甲1の【0026】及び【0032】のポリエステル組成物中の好適な炭酸カルシウム含有量についての記載,並びに【0059】の表4及び【0064】の表5に示された各実施例の炭酸カルシウム含有量の値から,白色フィルムを形成するのに適した炭酸カルシウム含有量が,「5重量%を越え,50重量%以下」であると把握されるから,前記ア(ア)ないし(オ)の記載を含む甲1の全記載から,甲1に次の発明が記載されていると認めることができる。

「リン化合物共重合ポリエステル(A)と,リン化合物で表面処理されることで表面活性が抑制された炭酸カルシウム(B)とを含有してなるポリエステル組成物を乾燥後,溶融押出しして,未延伸シートとし,続いて二軸延伸,熱処理するという方法で製造された,印画紙,X線増感紙,カード,ラベル,表示板,白板などの基材として好適な白色フイルムであって,
前記炭酸カルシウム(B)の平均粒子径が,0.01?20μmであり,
前記炭酸カルシウム(B)の含有量が,5重量%を越え,50重量%以下であり,
密度が,0.80g/cm^(3)以上,1.38g/cm^(3)以下である,
白色フィルム。」(以下,「甲1発明」という。)

(2)甲2
ア 甲2の記載
甲2(特開2011-11370号公報)は,本件特許に係る特許出願の出願より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲2には,次の記載がある。(下線部は,後述する甲2技術事項の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【請求項1】
無機粒子を含有するポリエステル組成物からなる光反射層,およびその少なくとも一方の面に設けられたポリステルからなる支持層から構成される白色積層フィルムであって,支持層のポリエステルは,全ジカルボン酸成分を基準としてテレフタル酸成分95?99.9モル%およびイソフタル酸成分0.1?5モル%をジカルボン酸成分としてなる共重合ポリエチレンテレフタレートであり,白色積層フィルムの支持層について測定したポリエステルの固有粘度が0.54?0.65dl/gであり,光反射層のポリエステル組成物は無機粒子52?60重量%および芳香族熱可塑性ポリエステル40?48重量%からなり,白色積層フィルムの光反射層について測定したポリエステルの固有粘度が0.40?0.53dl/gであることを特徴とする,二軸延伸された,反射板用白色積層フィルム。
・・・(中略)・・・
【請求項4】
無機粒子が,硫酸バリウム,二酸化チタン,炭酸カルシウムおよび二酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種からなる平均粒径0.1?3.0μmの粒子である,請求項1記載の反射板用白色積層フィルム。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置のバックライトユニットの反射板として用いられる,反射板用白色積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトユニットには,大きく分けてディスプレイの背面に光源を置くバックライト方式と,側面に光源を置くサイドライト方式があり,いずれの方式においても,光源からの光が画面の背面へ逃げるのを防ぐために,背面に反射フィルムが設置されている。この反射フィルムには,薄くかつ高い反射率を備えることが要求される。
【0003】
反射フィルムとして,フィルムの内部に微細な気泡を含有する白色ポリエステルフィルムが知られており,液晶表示装置用反射フィルムとして広く利用されている。液晶テレビの普及にともない,特にディスプレイの背面に光源を置くバックライト方式において,高輝度のバックライトユニットが求められるようになっている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の反射フィルムで高輝度を得られるものは,断裁時に,フィルムの端面にヒゲ状物やカエリが発生し易い。ヒゲ状物は,裁断による切断面に発生する細い突起部であるが,これはごみとして除去する必要があるため,ヒゲ状物の発生があると生産性を低下させることになる。また,カエリは,裁断による切断面付近に発生する部分的に盛り上がった部分であり,カエリがあると反射面と光源間の距離が変わり,輝度に対して悪い影響を与え,均一な輝度を得ることができなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は,高い反射率を備え,液晶表示装置のバックライトユニットに反射板として用いたときに高い輝度を得ることができる反射板用白色積層フィルムであって,打ち抜き加工の際にカエリやヒゲ状物が発生し難い,打ち抜き性に優れる反射板用白色積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は,無機粒子を含有するポリエステル組成物からなる光反射層,およびその少なくとも一方の面に設けられたポリステルからなる支持層から構成される白色積層フィルムであって,支持層のポリエステルは,全ジカルボン酸成分を基準としてテレフタル酸成分95?99.9モル%およびイソフタル酸成分0.1?5モル%をジカルボン酸成分としてなる共重合ポリエチレンテレフタレートであり,白色積層フィルムの支持層について測定したポリエステルの固有粘度が0.54?0.65dl/gであり,光反射層のポリエステル組成物は無機粒子52?60重量%および芳香族熱可塑性ポリエステル40?48重量%からなり,白色積層フィルムの光反射層について測定したポリエステルの固有粘度が0.40?0.53dl/gであることを特徴とする,二軸延伸された,反射板用白色積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,高い反射率を備え,液晶表示装置のバックライトユニットに反射板として用いたときに高い輝度を得ることができる反射板用白色積層フィルムであって,打ち抜き加工の際にカエリやヒゲ状物が発生し難い,打ち抜き性に優れる反射板用白色積層フィルムを提供することができる。」

(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明を詳細に説明する。
本発明の反射板用白色積層フィルムは,光反射層およびその少なくとも一方の面に設けられたポリステルからなる支持層から構成される。
以下,支持層,光反射層の順に説明する。
【0010】
[支持層]
支持層のポリエステルは,全ジカルボン酸成分を基準としてテレフタル酸成分95?99.9モル%およびイソフタル酸成分0.1?5モル%をジカルボン酸成分としてなる共重合ポリエチレンテレフタレートである。この範囲でイソフタル酸成分を共重合することによって,支持層の良好な打ち抜き性を得ることができる。イソフタル酸成分が5モル%を超えるとヒゲ状物が生じ易くなる。0.1モル%未満であるとカエリが大きくなったり,フィルムの製膜性が悪化が懸念される。イソフタル酸成分の共重合量は,好ましくは0.1?4モル%,特に好ましくは0.1?3モル%である。
【0011】
白色積層フィルムの支持層について測定したポリエステルの固有粘度は0.54?0.65dl/gである。支持層の固有粘度が0.65dl/gを越えると溶融押出しができない等,フィルムの生産にあたり不具合が生じ,0.54dl/g未満であるとフィルムの製膜の際に破断しやすい。
特に良好な打ち抜き性と製膜性を得る観点からは,支持層のポリエステルの固有粘度は,光反射層のポリエステルの固有粘度よりも高いことが好ましい。
【0012】
[光反射層]
本発明における光反射層は,無機粒子をポリエステル中に含有させることによって白色を呈するようにした層である。
【0013】
[光反射層のポリエステル]
光反射層のポリエステルとしては,熱可塑性ポリエステルを用いる。この熱可塑性ポリエステルとしては,ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルを用いる。・・・(中略)・・・これらのポリエステルのなかでも芳香族ポリエステルが好ましく,特に,ポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは,ホモポリマーであってもよいが,共重合ポリマーが好ましい。共重合ポリマーである場合,共重合成分の割合は,全ジカルボン酸成分を基準として例えば1?20モル%,好ましくは2?15モル%,さらに好ましくは3?13モル%である。共重合成分の割合をこの範囲とすることによって,光反射層についても優れた製膜性を得ることができ,熱寸法安定性に優れた白色積層フィルムを得ることできる。
【0014】
白色積層フィルムの光反射層について測定したポリエステルの固有粘度は0.40?0.53dl/gである。固有粘度が0.53を越えると,光反射層のポリエステル組成物は高濃度の無機粒子を含んでいるため,溶融押出しができないといった生産上の不具合が生じる。他方,0.40dl/g未満であると,フィルムが破断して製膜できない。
【0015】
[光反射層の無機粒子]
光反射層の無機粒子としては,無機物質の粒子を用い,具体的には,硫酸バリウム粒子,二酸化チタン粒子,二酸化珪素粒子,炭酸カルシウム粒子を例示することができる。
無機粒子の平均粒径は,好ましくは0.1?3.0μm,さらに好ましくは0.2?2.5μm,特に好ましくは0.3?2.0μmである。この範囲の平均粒径の無機粒子を用いることで,ポリエステル中に適度に分散させることができ,無機粒子の凝集が起こりずらく,表面に粗大突起のない光反射層を得ることができる。同時に,光反射層の表面が荒れすぎず,適切な範囲の光沢度の表面を得ることができる。無機粒子として特に好ましいものは,平均粒径が0.1?3.0μmの硫酸バリウム粒子である。
【0016】
無機粒子の平均粒径は,d50(メジアン径)を採用するが,粒径の小さいものから10%のd10,小さいものから90%のd90で表した際,無機粒子の粒度分布のd90/d10は,好ましくは1?500,さらに好ましくは1?300,さらに好ましくは1?100,特に好ましくは1?50である。この範囲の粒度分布であると,フィルターに粗大粒子が詰まることがなく,微小粒子が再凝集することもなく,安定して製膜することができる。
無機粒子は,どのような粒子形状でもあってもよく,例えば,板状,球状であってもよい。白色無機粒子は,分散性を向上させるために表面処理を行ってあってもよい。
【0017】
光反射層は,無機粒子およびポリエステルからなるポリエステル組成物から構成される。この組成物において,無機粒子は52?60重量%,好ましくは53?59重量%,さらに好ましくは54?58重量%を占める。無機粒子の含有量が52重量%未満であると高い反射率を得ることができず,そして,打ち抜き加工性も劣るものとなる。無機粒子含有量が60%を超えると製膜が非常に困難になる。・・・(中略)・・・
【0019】
[層構成]
本発明の反射板用白色積層フィルムは,共押出し法により製造されたものであることが好ましい。すなわち,光反射層と支持層とは,好ましくは共押出し法により積層されている。・・・(中略)・・・
【0020】
本発明の反射板用白色積層フィルムは,光反射層の少なくとも一方の面に支持層が設けられた構成であり,具体的には,例えば,光反射層/支持層の2層構成,支持層/光反射層/支持層の3層構成,光反射層/支持層/光反射層の3層構成,支持層/光反射層/支持層/光反射層/支持層の5層構成をとることができる。これらのうち製膜性の安定性の観点から支持層/光反射層/支持層の3層構成が好ましい。
【0021】
本発明の反射板用白色積層フィルムの総厚みは,好ましくは150?250μm,さらに好ましくは170?230μmである。この範囲の総厚みであるでことによって良好なハンドリング性および生産性を得ることができる。
本発明の反射板用白色積層フィルムは,二軸延伸されている。二軸延伸されていることによって,高い機械的強度を得ることができる。
【0022】
[製造方法]
以下,本発明の反射板用白色積層フィルムを製造する方法の一例を説明する。以下,ポリマーのガラス転移点をTg,融点をTmということがある。
白色積層フィルムの製造に用いるポリエステルは,線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10?100μmの不織布型フィルターを用いて濾過を行うことが好ましい。この濾過を行うことで,通常は凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑え,粗大異物の少ない白色積層フィルムを得ることができる。・・・(中略)・・・濾過したポリエステルの組成物は,溶融した状態でフィードブロックを用いた同時多層押出法により,ダイから多層状態で押出し,未延伸積層シートを製造する。
【0023】
ダイより押出された未延伸積層シートは,キャスティングドラムで冷却固化され,未延伸積層フィルムとなる。この未延伸積層フィルムをロール加熱,赤外線加熱等で加熱し,縦方向に延伸して縦延伸積層フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸は,ポリエステルのTg以上の温度で行うことが好ましい。延伸倍率は,縦方向,縦方向と直交する方向(以降,横方向と呼ぶ)ともに,好ましくは2.5?4.3倍,さらに好ましくは2.7?4.2倍である。2.5倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず,4.3倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0024】
縦延伸後の積層フィルムは,続いて,横延伸,熱固定,熱弛緩の処理を順次施して積層二軸配向フィルムとするが,これらの処理は,フィルムを走行させながら行う。・・・(中略)・・・
【0025】
また,本発明の白色積層フィルムは,逐次二軸延伸法以外にも同時二軸延伸法を用いて製膜することができる。延伸倍率は,縦方向,横方向ともに,例えば2.7?4.3倍,好ましくは2.8?4.2倍である。」

(エ) 「【実施例】
【0026】
以下,実施例により本発明を詳述する。なお,各特性値は以下の方法で測定した。
なお,PETは,ポリエチレンテレフタレート,IPAは,イソフタル酸を意味する。
【0027】
(1)反射率
分光光度計(島津製作所製UV-3101PC)に積分球を取り付け,BaSO4白板を100%としたときのサンプルフィルムの光線反射率を波長550nmで測定した。
【0028】
(2)輝度
液晶表示装置に反射板として用いたときの表示装置の輝度を評価した。ソニー(株)製32インチテレビ(ブラビアKDL-32V2500)のバックライトの反射フィルムを取り外し,かわりに評価対象のサンプルフィルムを設置し,輝度計(大塚電子製Model MC-940)を用いて,バックライトの中心を真正面より測定距離500mmで輝度を測定した。
【0029】
(3)無機粒子の平均粒径
粒度分布計(堀場製作所製LA-950)にて,粒子の粒度分布を求め,d50での粒子径を平均粒径とした。
【0030】
(4)打ち抜き性
穴あけ治具CARL CP-5を用いて,フィルムを50回打ち抜き(円形状の穴の直径は6mm,打ち抜く速度は50回/1分間とした),打ち抜いた端部を光学顕微鏡にて倍率25倍にて観察しヒゲ状物の発生の有無とカエリの発生の有無を観察した。
ヒゲ状物については,打ち抜き部分から長さ1mm以上飛び出しているヒゲ状物がある打ち抜き穴を「発生有」とし,カエリについては,打ち抜き部分の一部または全部がフィルム平面を基準として0.5mm以上盛り上がっている打ち抜き穴を「発生有」とした。
ヒゲ状物およびカエリのそれぞれについて,下記式で発生割合を算出した。
発生割合(%)=「発生有」の個数/50個
【0031】
(5)固有粘度
フィルムの原料のポリエステルまたは白色積層フィルムから各層ごとに剥離したポリエステル0.3gに対し,o-クロロフェノール25ml加え100℃で溶解し,溶解後25℃に冷却された状態で測定した。なお,無機粒子を含んでいるものは,o-クロロフェノールに溶解後,遠心分離装置(日立工機製CF-15RXII型)を用いて12000rpmにて30分間遠心分離を行い,無機粒子とo-クロロフェノールに溶解したポリエステルとを分離した後,固有粘度を測定,算出した。固有粘度は下記換算式にて求めた。
固有粘度=測定値/{(100-無機粒子濃度)/100}
【0032】
(6)各層の厚み比
日立製作所製S-4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用い,倍率500倍にて,フィルムの断面を観察し,測定数5点の平均にてフィルムの各層の厚み比を求めた。
【0033】
(7)フィルムの厚み
接触式厚み計(アンリツ製 K-402B)を用いてフィルム厚みを測定した。
【0034】
[実施例1]
(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの合成)
テレフタル酸ジメチル132重量部,イソフタル酸ジメチル18重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準に12モル%),エチレングリコール98重量部,ジエチレングリコール1.0重量部,酢酸マンガン0.05重量部,酢酸リチウム0.012重量部を精留塔,留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み,撹拌しながら150?240℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後,リン酸トリメチル0.03重量部,二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し,反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.3mmHgまで減圧するとともに292℃まで昇温し,重縮合反応を行い,イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの固有粘度は0.72dl/gであった。以下,このポリマーを樹脂Eという。
【0035】
また重縮合時の反応温度を,292℃から260℃に変更した他は実施例1と同様にして重合を行い,イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの固有粘度は0.55dl/gであった。このポリマーを樹脂Fという。
樹脂Fを,予備加熱器(滞留30分)を経て,ジャケット付き(210℃熱媒通過)縦型円筒状の固相反応器の上部へ供給し,器内に一定の滞留時間を保つように設定し,下部より乾燥した210℃の窒素を供給して上部より窒素排出させて窒素気流下での連続固相重合を行った。滞留時間が5時間で得られたポリマーの固有粘度は0.79dl/gであった。以下,このポリマーを樹脂Gという。
【0036】
(ポリエチレンテレフタレートの合成)
テレフタル酸ジメチル132重量部およびイソフタル酸ジメチル18重量部のかわりに,テレフタル酸ジメチル150重量部を用いる他は,上記のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートの合成と同様にして,ポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの固有粘度は0.71dl/gであった。以下,このポリマーを樹脂Hという。
【0037】
重縮合時の反応温度を,292℃から260℃に変更した他は実施例1と同様にして重合を行い,ポリエチレンテレフタレートを得た。このポリマーの固有粘度は0.54dl/gであった。以下,このポリマーを樹脂Iという。
樹脂Iを,予備加熱器(滞留30分)を経て,ジャケット付き(210℃熱媒通過)縦型円筒状の固相反応器の上部へ供給し,器内に一定の滞留時間を保つように設定し,下部より乾燥した210℃の窒素を供給して上部より窒素排出させて窒素気流下での連続固相重合を行った。滞留時間が5時間で得られたポリマーの固有粘度は0.79dl/gであった。以下,このポリマーを樹脂Jという。
【0038】
(無機粒子マスターチップの作成)
樹脂Eと平均粒径1.0μmの硫酸バリウム粒子を用いて,真空ベント式二軸押出機にて65重量%となるように樹脂温度270℃にて押出し,マスターチップの作成をした。作成したマスターチップの固有粘度は0.59dl/gであった。以下,このマスターチップを樹脂Kという。
【0039】
樹脂Eと平均粒径0.2μmのルチル型二酸化チタンを用いて,樹脂K同様に60重量%となるよう二酸化チタンのマスターチップを作成した。固有粘度は0.60dl/gであった。以下,このマスターチップを樹脂Lという。
樹脂Eと平均粒径0.6μmの二酸化珪素を用いて,樹脂K同様に50重量%となるよう二酸化珪素のマスターチップを作成した。固有粘度は0.61dl/gであった。以下,このマスターチップを樹脂Mという。
【0040】
樹脂Eと平均粒径1.0μmの炭酸カルシウムを用いて,樹脂K同様に50重量%となるよう炭酸カルシウムのマスターチップを作成した。固有粘度は0.61dl/gであった。以下,このマスターチップを樹脂Nという。
樹脂Hと平均粒径1.0μmの硫酸バリウムを用いて,樹脂K同様に65重量%となるよう硫酸バリウムのマスターチップを作成した。固有粘度は0.61dl/gであった。以下,このマスターチップを樹脂Oという。
【0041】
(白色積層フィルムの製造)
上記で得た樹脂Iと樹脂Kを用いて支持層(A層)の原料とし,表に記載した割合にて樹脂を混合し,イソフタル酸成分の共重合量,硫酸バリウム粒子の含有量が表に記載されている濃度とした。また光反射層(B層)も同様に樹脂E,G,H,JおよびKを混合し,表に記載されている濃度とした。これらの原料を用い,それぞれ270℃に加熱された2台の押出機に供給し,A層の原料とB層の原料を,A層/B層/A層となるような3層フィードブロック装置を使用して合流させ,その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。A層/B層/A層の厚み比が2軸延伸後に4/92/4となるように各押出機の吐出量で調整した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化し未延伸フィルムとした。この未延伸フィルムを74℃の予熱ゾーンつづけて76℃の予熱ゾーンを通して,93℃に保たれた縦延伸ゾーンに導き,長手方向(縦方向)に3.1倍に延伸し,25℃のロール群で冷却した。続いて,フィルムの両端をクリップで保持しながら114℃の余熱ゾーンを通して126℃に保たれた横延伸ゾーンに導き長手方向に垂直な方向(横方向)に3.7倍に延伸した。その後テンター内で194℃で熱固定を行い,縦弛緩率2%で熱弛緩し,幅入れ率2%,幅入れ温度145℃で横方向の幅入れを行い,室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムは,厚み225μmの白色積層フィルムであり反射率は98.6%であった。得られた白色積層フィルムの特性を表4に示す。
【0042】
【表1】
・・・(中略)・・・
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】
・・・(中略)・・・
【0045】
【表4】

【0046】
[実施例2?9]
表1,2および3に示す条件をとる他は実施例1と同様にして白色積層フィルムを作成した。得られた白色積層フィルムの特性を表4に示す。
【0047】
[比較例1?7]
表1,2および3に示す条件をとる他は実施例1と同様にして白色積層フィルムを作成した。得られた白色積層フィルムは,反射率が低く加工性や製膜性に劣るものであった。」

(オ) 「【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の白色積層フィルムは,液晶表示装置の反射フィルムとして好適に用いることができる。」

イ 甲2に記載された技術事項
前記ア(ア)ないし(オ)の記載を含む甲2の全記載から,甲2に次の技術事項が記載されていると認められる。

「無機粒子を含有するポリエステル組成物からなる光反射層,及びその少なくとも一方の面に設けられたポリステルからなる支持層から構成され,二軸延伸されており,内部に微細な気泡を含有する白色積層フィルムであって,液晶表示装置のバックライトユニットの反射板として用いられる反射板用白色積層フィルムにおいて,
反射板用白色積層フィルムの層構成としては,製膜性の安定性の観点から,支持層/光反射層/支持層の3層構成が好ましく,
前記光反射層を形成するためのポリエステル組成物としては,無機粒子の含有量が52重量%未満であると高い反射率を得ることができず,打ち抜き加工性も劣るものとなり,60重量%を超えると製膜が非常に困難になることから,無機粒子52?60重量%および芳香族熱可塑性ポリエステル40?48重量%からなるものを用い,
当該光反射層のポリエステルは,固有粘度が0.53を越えると,溶融押出しができないといった生産上の不具合が生じ,0.40dl/g未満であると,フィルムが破断して製膜できないことから,固有粘度が0.54?0.65dl/gのものを用い,
前記ポリエステル組成物は,濾過を行うことで,通常は凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑え,粗大異物の少ない白色積層フィルムを得ることができることから,平均目開き10?100μmのフィルターを用いて濾過を行うことが好ましく,
前記無機粒子には,硫酸バリウム,二酸化チタン,炭酸カルシウムおよび二酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種からなる平均粒径0.1?3.0μmの粒子が用いられるが,特に好ましいものは,平均粒径が0.1?3.0μmの硫酸バリウム粒子であり,
当該無機粒子には,粒径の小さいものから10%のd10,小さいものから90%のd90で表した際,d90/d10が1?50の範囲の粒度分布のものを用いると,前記フィルターに粗大粒子が詰まることがなく,微小粒子が再凝集することもなく,安定して製膜することができること。」(以下,「甲2技術事項」という。)

(3)甲3及び甲4
甲3(特開昭63-66222号公報)及び甲4(特開昭62-207337号公報)は,いずれも,本件特許に係る特許出願の出願より前に頒布された刊行物であるところ,甲3の特許請求の範囲,1ページ左下欄18行ないし右下欄5行,5ページ右上欄11ないし13行の記載や,甲4の特許請求の範囲,2ページ左上欄13ないし16行,2ページ左上欄20行ないし右上欄2行,2ページ右上欄20行ないし左下欄6行,2ページ右下欄16ないし19行,4ページ右上欄1ないし6行,4ページ右下欄の第2表,5ページ左上欄2ないし7行の記載から,甲3及び甲4には,いずれにも次の技術事項が開示されていると認められる。

「ポリエチレンテレフタレートと炭酸カルシウム粒子とを含有する組成物を用いて,白色フィルムを形成する際に,前記組成物中にリン化合物を含有させることで,気泡発生を防止できること。」(以下,「甲3又は甲4技術事項」という。)

(4)甲5
甲5(炭酸カルシウム CaCO_(3) 白石工業株式会社)は,本件特許に係る特許出願の出願より前に頒布された刊行物であるところ,甲5の6ページ2段落1ないし3行及び7ページの図1の記載から,甲5に,次の技術事項が開示されていると認められる。

「炭酸カルシウム粒子に風力分級を実施して所望の粒子径の炭酸カルシウムを分級すること。」(以下,「甲5技術事項」という。)


5 判断
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明の対比
(ア) 甲1発明の「リン化合物で表面処理されることで表面活性が抑制された炭酸カルシウム(B)」は,平均粒子径が0.01?20μmであるのだから,「炭酸カルシウム粒子」であることは自明であり,甲1発明の「リン化合物共重合ポリエステル(A)」は,本件特許発明1の「ポリエステル」に相当するから,本件特許発明1と甲1発明は,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する層を有するポリエステルフィルム」である点で共通する。(以下,便宜上「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する層」を「特定層」という。)

(イ) 甲1発明の「炭酸カルシウム(B)」における「リン化合物で表面処理されることで表面活性が抑制された」との構成は,本件特許発明1の「炭酸カルシウム粒子」の「リン化合物が表面に存在していることにより粒子表面のCa活性が失活している」点に相当するから,甲1発明は,本件特許発明1の「前記炭酸カルシウム粒子が,リン化合物が表面に存在していることにより粒子表面のCa活性が失活している炭酸カルシウム粒子であり,」という発明特定事項を充足する構成を具備している。

(ウ) 甲1発明の「0.01?20μm」という「炭酸カルシウム(B)」の平均粒子径の数値範囲は,本件特許発明1の「0.6?8μm」という「炭酸カルシウム粒子」の平均粒径の数値範囲を完全に包含するところ,甲1の【0049】ないし【0059】に記載された実施例1ないし8で用いている「炭酸カルシウム(B)」の平均粒子径は,【0047】の表2によれば,0.6μm,1.2μm及び3.0μmのいずれかであるから,甲1発明において,「炭酸カルシウム(B)」の平均粒子径として,「0.01?20μm」という数値範囲のうちの「0.6?8μm」の範囲のものを選択することは,甲1に記載されたも同然の事項である。
したがって,甲1発明は,本件特許発明1の「反射層」における「炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.6?8μmであり,」という発明特定事項を充足する構成を具備しているといえる。

(エ) 甲1発明の「5重量%を越え,50重量%以下」という「炭酸カルシウム(B)」の含有量は,本件特許発明1の「1?50質量%」という「炭酸カルシウム粒子」の含有量の数値範囲に完全に包含されるから,甲1発明は,本件特許発明1の「反射層」における「炭酸カルシウム粒子の含有量が1?50質量%であり,」という発明特定事項を充足する構成を具備している。

(オ) 甲1発明の「0.80g/cm^(3)以上」という密度は,本件特許発明1の「1.20g/cm^(3)以下」という「反射層」の密度の数値範囲と,「0.80g/cm^(3)以上1.20g/cm^(3)以下」という範囲で重複するところ,甲1の【0059】の表4によれば,実施例3の密度は「1.20g/cm^(3)」であるから,甲1発明において,密度として,「0.80g/cm^(3)以上」という数値範囲のうちの「0.80g/cm^(3)以上1.20g/cm^(3)以下」の範囲のものを選択することは,甲1に記載されたも同然の事項である。
したがって,甲1発明は,本件特許発明1の「反射層」における「密度が1.20g/cm^(3)以下」という発明特定事項を充足する構成を具備しているといえる。

(カ) 前記(ア)ないし(オ)に照らせば,本件特許発明1と甲1発明は,
「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層を有するポリエステルフィルムであって,
前記炭酸カルシウム粒子が,リン化合物が表面に存在していることにより粒子表面のCa活性が失活している炭酸カルシウム粒子であり,
炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.6?8μmであり,
前記特定層における炭酸カルシウム粒子の含有量が1?50質量%であり,
前記特定層の密度が1.20g/cm^(3)以下である,ポリエステルフィルム。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件特許発明1が「反射板用」であって,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層」が「反射層」であり,本件特許発明1が少なくとも,支持層,反射層,支持層がこの順で積層された構成を含むのに対して,
甲1発明は,「印画紙,X線増感紙,カード,ラベル,表示板,白板などの基材として好適な白色フイルム」であって,「反射板用」とはいえず,また,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層」(甲1発明自体)が反射板に適した反射率を有しているとはいえないことから,当該特定層は「反射層」とはいえず,かつ,甲1発明が支持層,反射層,支持層がこの順で積層された構成を含んでいるともいえない点。

相違点2:
本件特許発明1では,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層」(反射層)の炭酸カルシウム粒子を小粒径側から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が140以下であるのに対して,
甲1発明では,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層」(甲1発明自体)の炭酸カルシウム粒子のD90/D10の値は不明である点。

相違点3:
本件特許発明1では,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層」(反射層)のポリエステルの固有粘度が0.45dL/g以上0.50dL/g未満であるのに対して,
甲1発明では,「少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する特定層」(甲1発明自体)のポリエステルの固有粘度の値は不明である点。

相違点4:
本件特許発明1では,フィルムのガスマークが100個/m^(2)以下であるのに対して,
甲1発明では,フィルムのガスマークの値は不明である点。

イ 相違点についての判断
(ア) 相違点1について検討する。
a 甲1発明は,「印画紙,X線増感紙,カード,ラベル,表示板,白板などの基材として好適な白色フイルム」であるところ,甲1には,甲1発明が「反射板用」として用いることができることはおろか,甲1発明が如何ほどの反射率を有するものとなるのかについて,記載も示唆もされていないから,甲1発明を「反射板用」として用いることには動機がない。
加えて,甲2の記載によれば,反射板用白色積層フィルムにおいて,「光反射層を形成するためのポリエステル組成物としては,無機粒子の含有量が52重量%未満であると高い反射率を得ることができない」(甲2技術事項)のであるから,甲1発明における「5重量%を越え,50重量%以下」という炭酸カルシウム(B)の含有量では,反射板として用いるのに適した高い反射率を有していないものと推察される。したがって,当業者は,そのような甲1発明を「反射板用」として用いようと考えることはないというべきである。
そして,甲1発明を「反射板用」として用いることの動機がない以上,当業者が,反射板用白色積層フィルムの層構成である甲2技術事項の「支持層/光反射層/支持層の3層構成」を,甲1発明において採用することもないというほかない。
b また,仮に,当業者が,甲2技術事項に基づいて,甲1発明を「反射板用白色積層フィルム」として構成しようと試みたと想定してみても,その場合,当業者は,甲1発明を反射板として用いるのに適した高い反射率を有するものとするために,甲1発明における「炭酸カルシウム(B)」の含有量を「52?60重量%」に変更して「光反射層」とし,当該変更後の甲1発明の表面及び裏面に「支持層」を積層して3層構成にすることとなるのであって,このような「反射板用白色積層フィルム」における炭酸カルシウムの含有量は,本件特許発明1の「1?50質量%」という炭酸カルシウム粒子の含有量についての要件を満足しないものとなる。
そして,甲3又は甲4技術事項や甲5技術事項を含め,甲1発明における「炭酸カルシウム(B)」の含有量を「5重量%を越え,50重量%以下」に維持したまま,甲1発明の反射率を,反射板として用いるのに適した値にできることを示す証拠は見当たらない。
したがって,当業者が,甲1発明を出発点として,本件特許発明1に至ることはない。

(イ) 以上によれば,他の相違点の容易想到性について検討するまでもなく,本件特許発明1は,甲1発明,甲2技術事項,甲3又は甲4技術事項及び甲5技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許の請求項2ないし6は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件特許発明1の発明特定事項を全て具備し,これにさらなる限定を付したものに該当するところ,本件特許発明1が,甲1発明,甲2技術事項,甲3又は甲4技術事項及び甲5技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件特許発明2ないし6も,甲1発明,甲2技術事項,甲3又は甲4技術事項及び甲5技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。


6 むすび
以上のとおり,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-04-25 
出願番号 特願2011-230862(P2011-230862)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 中田 誠
清水 康司
登録日 2016-08-12 
登録番号 特許第5985808号(P5985808)
権利者 帝人デュポンフィルム株式会社
発明の名称 反射板用ポリエステルフィルム  
代理人 為山 太郎  
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