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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部無効 1項2号公然実施  A23L
審判 全部無効 1項1号公知  A23L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1328111
審判番号 無効2015-800119  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-04-27 
確定日 2017-04-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5439614号発明「容器詰トマト含有飲料及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5439614号の特許請求の範囲についてする訂正のうち、請求項〔1-12〕及び請求項13を削除する訂正を認める。 特許第5439614号の請求項14に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5439614号の請求項〔1-12〕及び請求項13についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5439614号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成25年3月25日に特許出願され、平成25年12月20日にその発明について特許の設定登録(請求項の数14)がなされた。
また、本件審判の請求に係る経緯は、以下のとおりである。
平成27年 4月27日 審判請求書、営業秘密に関する申出書の提出
平成27年 7月21日 審判事件答弁書(以下「第1答弁書」という。)の提出
平成27年 7月21日 訂正請求書、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書の提出
平成27年 9月 4日 審判事件弁駁書(以下「第1弁駁書」という。)の提出
平成27年10月 2日 補正許否の決定(請求の理由の補正を許可)
平成27年11月 6日 審判事件答弁書(以下「第2答弁書」という。)の提出
平成27年11月 6日 訂正請求書、訂正特許請求の範囲の提出
平成28年 1月27日 審理事項通知
平成28年 3月10日 口頭審理陳述要領書(請求人)、営業秘密に関する申出書の提出
平成28年 3月10日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
平成28年 3月24日 第1回口頭審理
平成28年 4月27日 審決の予告(以下「第1審決の予告」という。)
平成28年 7月 8日 上申書(被請求人)(以下「第1上申書」という。)の提出
平成28年 7月 8日 訂正請求書、訂正特許請求の範囲の提出
平成28年 8月 3日 弁駁書(以下「第2弁駁書」という。)の提出
平成28年 8月29日 審決の予告(以下「第2審決の予告」という。)
平成28年11月 4日 上申書(被請求人)(以下「第2上申書」という。)の提出
平成28年11月 4日 訂正請求書、訂正特許請求の範囲の提出
平成28年11月25日 弁駁書(以下「第3弁駁書」という。)の提出
平成28年12月 7日 訂正拒絶理由通知
平成29年 1月10日 意見書及び手続補正書の提出

なお、平成27年7月21日付け訂正請求書による訂正の請求、平成27年11月6日付け訂正請求書による訂正の請求及び平成28年7月8日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まず、「・・・」は記載の省略を意味する。証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。

第2 訂正の請求について
1 平成28年11月4日付け訂正請求書による訂正の内容
平成28年11月4日付け訂正請求書による訂正は、「特許第5439614号の特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?14について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は訂正箇所を示す)。

(1) 訂正事項1(請求項1?12からなる一群の請求項に係る訂正)
訂正前の請求項1?12を削除する。

(2) 訂正事項2(請求項13に係る訂正)
訂正前の請求項13を削除する。

(3) 訂正事項3(請求項14に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項14に
「γ-アミノ酪酸を60?90mg/100gに調整し、
γ-アミノ酪酸/カルシウムを5.9?8.1に調整し、
カルシウム量を18mg/100g以下を調整し、
γ-アミノ酪酸/ナトリウムを4.5?9.5に調整する
ことを特徴とする容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法。」
とあるのを、
「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料における、飲用後半に喉に残る後味不快味を低減する方法であって、
前記容器詰トマト含有飲料における配合量が40?50%となるようにBrixが5のトマト搾汁液を添加することで、
γ-アミノ酪酸を80.00?86.00mg/100gに調整し、
カルシウムを12.25?13.26mg/100gに調整し、
マグネシウムを12.65?13.3mg/100gに調整し、
カリウムを295?308mg/100gに調整し、
ナトリウムを11.48?11.65mg/100gに調整し、
カルシウム+マグネシウム+カリウム+ナトリウムを331.55?346.04に調整し、
(カルシウム+マグネシウム+カリウム+ナトリウム)/γ-アミノ酪酸を4.02?4.14に調整し、
γ-アミノ酪酸/カルシウムを6.49?6.53に調整し、
γ-アミノ酪酸/マグネシウムを6.32?6.47に調整し、
γ-アミノ酪酸/ナトリウムを6.87?7.49に調整し、
γ-アミノ酪酸/カリウムを0.27?0.28に調整することを特徴とする、方法。」
と訂正する。
なお、
「容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法。」を「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料における、飲用後半に喉に残る後味不快味を低減する方法であって、」「、方法。」とする訂正を、訂正事項3-1とし、
「前記容器詰トマト含有飲料における配合量が40?50%となるようにBrixが5のトマト搾汁液を添加することで、」を加入する訂正を、訂正事項3-2-1とし、
「γ-アミノ酪酸を60?90mg/100gに調整し、」を「γ-アミノ酪酸を80.00?86.00mg/100gに調整し、」とする訂正を、訂正事項3-2-2とし、
「カルシウム量を18mg/100g以下を調整し、」を「カルシウムを12.25?13.26mg/100gに調整し、」とする訂正を、訂正事項3-3とし、
「マグネシウムを12.65?13.3mg/100gに調整し、」を加入する訂正を、訂正事項3-4とし、
「カリウムを295?308mg/100gに調整し、」を加入する訂正を、訂正事項3-5とし、
「ナトリウムを11.48?11.65mg/100gに調整し、」を加入する訂正を、訂正事項3-6とし、
「カルシウム+マグネシウム+カリウム+ナトリウムを331.55?346.04に調整し、」を加入する訂正を、訂正事項3-7とし、
「(カルシウム+マグネシウム+カリウム+ナトリウム)/γ-アミノ酪酸を4.02?4.14に調整し、」を加入する訂正を、訂正事項3-8とし、
「γ-アミノ酪酸/カルシウムを5.9?8.1に調整し、」を「γ-アミノ酪酸/カルシウムを6.49?6.53に調整し、」とする訂正を、訂正事項3-9とし、
「γ-アミノ酪酸/マグネシウムを6.32?6.47に調整し、」を加入する訂正を、訂正事項3-10とし、
「γ-アミノ酪酸/ナトリウムを4.5?9.5に調整する」を「γ-アミノ酪酸/ナトリウムを6.87?7.49に調整し、」とする訂正を、訂正事項3-11とし、
「γ-アミノ酪酸/カリウムを0.27?0.28に調整する」を加入する訂正を、訂正事項3-12とする。

2 平成28年12月7日付け訂正拒絶理由通知の概要
上記訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない。
(1) 訂正事項3-1について
上記訂正事項3-1は、本件訂正前の「容器詰トマト含有飲料」を「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料」とする訂正事項を含むものであるが、当該「容器詰トマト含有飲料」が「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」ものであることは、願書に添付した明細書等に記載されておらず、また、当該明細書等の記載から自明な事項であるとも認められないところ、願書に添付した明細書等に記載した事項から導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものでなく、特許法第134条の2第9項が準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

(2) 訂正事項3-2-1について
上記訂正事項3-2-1は、本件訂正前の特許請求の範囲に「前記容器詰トマト含有飲料における配合量が40?50%になるようにBrixが5のトマト搾汁液を添加することで、」を加入する訂正事項であるが、当該訂正事項により、本件訂正後の発明の課題解決手段は、「糖度を逸脱させて製造したトマト含有飲料の不快味を低減するために、通常の範囲の糖度を有するトマト搾汁液を配合して、その配合量を調整すること」となった。
一方、本件発明の課題解決手段は、γ-アミノ酪酸やカルシウムといった配合成分及び配合量等に着目し、これを調整することであった(本件特許明細書【0011】参照)。
そうすると、本件訂正の前後において、本件発明は、その課題解決手段が変更されたものと認められる。そして、課題解決手段を変更するような訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当することが明らかであるから、訂正事項3-2-1は、特許法第134条の2第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。

3 平成29年1月10日付け手続補正の適否
(1) 平成29年1月10日付け手続補正の内容
上記手続補正の内容は、平成28年11月4日付け訂正請求書における訂正事項3(訂正事項3-1)について、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料における、飲用後半に喉に残る後味不快味を低減する方法であって、」という記載を「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造したトマト搾汁液Aを用い、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料における、飲用後半に喉に残る後味不快味を低減する方法であって、」という記載へと補正するものである(下線は補正箇所を示す)。

(2) 上記手続補正の適否
上記手続補正は、上記(1)のとおり、補正前後で訂正事項3(訂正事項3-1)の内容を変更するものであって、具体的には、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」ものが、上記補正前は「容器詰トマト含有飲料」であったのに対して、上記補正後は「トマト搾汁液A」に変更されるとともに、「容器詰トマト含有飲料」自体については、Brix範囲が何ら特定されないものに変更された。
このことは、訂正請求書に係る訂正を求める内容が変更され、審理の対象も変更されるから、訂正請求書の請求の趣旨の内容を実質的に変更するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものと認める。
よって、上記手続補正は認められない。

(3) 被請求人の主張について
上記手続補正の根拠について、被請求人は、平成29年1月10日付け意見書において「錯誤により訂正事項3-1から「トマト搾汁液A」という文言が欠落するという誤記が生じしていたため、訂正事項3-1が所謂新規事項の追加に該当するかのような表現となっておりました。」と主張する。
しかしながら、平成28年11月4日付け訂正請求書において、
『(a)訂正の目的について
訂正事項3-1は、訂正前の請求項14の後段にあった「容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法」なる記載を前段に移動させた上で、「容器詰トマト含有飲料」との記載を「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料」と限定するものである。当該限定は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。』(7頁9?16行)、
と記載されるとおり、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」という記載は、「容器詰トマト含有飲料」を限定する事項として説明がされている。
また、
『(c)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3-1は、特許掲載公報の明細書の発明の詳細な説明に基いて導き出せる構成である。まず、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」との記載は、明細書の段落番号【0005】?【0009】、特に、段落【0008】の第3?4行における「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を逸脱させて製造した」との記載に基づくものである。審判官殿も、平成28年4月27日付けの審決の予告において、【0005】?【0009】を引用した上で本件発明が対象とするトマト含有飲料が「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」ものであると認定されている(同審決の予告第22頁第16?20行)。』(9頁7?18行)
と記載されるとおり、本件発明が対象とするトマト含有飲料、すなわち「容器詰トマト含有飲料」が、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」ものであるとして説明がされている。
そして、
『更に、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料」の具体例は段落【0063】にも記載されている。より具体的には、同段落に記載のトマト搾汁液Aはトマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まないものであるところ、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」ものであることについても、審判官殿は、平成28年4月27日付けの審決の予告にて以下のとおりトマト搾汁液Aが高糖度のものであると認定されている。
「「トマト搾汁液A」は・・・具体的なBrix値の明示はないものの、「トマト搾汁液B」のBrix値「5」より相当程度数値の高いものであることは容易に理解できる」(第22頁第27?31行)
よって、訂正事項3-1に係る「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料」との記載は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
しかしながら、かかる訂正が万が一訂正要件に違反すると判断される場合には、被請求人は、当該訂正に代えて、本件発明の対象とするトマト含有飲料をトマト搾汁液Aそのもの、すなわち、「重炭酸ナトリウム以外の添加物を含まない、高糖度のトマト搾汁液」と訂正する準備があることを付言する。』(9頁21行?10頁8行)
という記載も、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料」の具体例として、「トマト搾汁液A」を含み得ることを主張しつつ、今次訂正が不備である場合には、本件発明の対象である「トマト含有飲料」を「トマト搾汁液A」としたい旨の訂正案まで提示するところ、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」との記載は、あくまで「容器詰トマト含有飲料」を限定するものとして認識していることが窺われる。

そうすると、上記訂正請求書においては、「トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した」という記載は、「容器詰トマト含有飲料」を限定する事項として一貫して説明がされている。
よって、上記訂正請求書において被請求人が主張する上記のような錯誤があったとまでは認められない。
仮に、被請求人が主張する上記のような錯誤があったとしても、補正の内容は単なる誤記のレベルを超える、訂正請求書に係る訂正を求める内容を大幅に変更するものであり、それにより、訂正請求書の請求の趣旨の内容は実質的に変更されるのであるから、訂正請求書の要旨を変更するものであることに変わりない。
よって、上記手続補正は、特許法134条の2第9項で準用する同法131条の2第1項の規定により認められない。

4 訂正の適否について
上記3に示したとおり上記手続補正は認められないから、本件訂正の内容は上記1に示したとおりの訂正事項1?3であって、以下、その適否について判断する。

(1) 訂正事項1及び訂正事項2について
訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の請求項1?12及び請求項13を削除するものであるから、特許法134条の2第1項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1及び訂正事項2については、特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法134条の2第9項の規定によって準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。

(2) 訂正事項3について
ア 訂正事項3は、平成28年12月7日付け訂正拒絶理由通知のとおり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しない(上記2参照)。

イ 被請求人の主張について
被請求人は、平成29年1月10日付け意見書において、訂正事項3-2-1に関して以下のとおり主張する。
『訂正事項3-2-1に関しまして、貴合議体は、「本件発明は、その課題解決手段が変更されたものと認められる、そして、課題解決手段を変更するような訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当することが明らかであるから、訂正事項3-2-1は、特許法第134条の2第9項が準用する同法第126条第6項の規定に適合しない」と認定しております。
しかしながら、「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいいますが、課題解決手段を変更するような訂正が、即ち「実質上特許請求の範囲を変更するものに該当することが明らかである」とまで認定可能か否かについては疑義があるものと思料いたします。
この点、特許法第126条第6項が、第三者にとって不測の不利益を生じさせないようにする観点から、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないようにすることを担保した規定であることに基づきますと、「変更」にあたるものとしては、カテゴリーの変更、対象の変更、目的の変更などが挙げられたとしても、課題解決手段を変更するような訂正が、即ち実質上特許請求の範囲を変更するものに該当することが明らかであるとまでは言えないものと思料いたします。
訂正事項3-2-1は、カテゴリーの変更、対象の変更、目的の変更のいずれにも該当せず、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本訂正前に特許権侵害ではなかったものが、本訂正後に侵害となるような事態を招くものでもございませんので、特許請求の範囲の実質的な拡張または変更には当たらないものと思料いたします。』

しかしながら、本件訂正前の明細書には、本件発明の課題解決手段に関して、
「本発明は、トマト本来の呈味を保持したトマト含有飲料におけるγ-アミノ酪酸を55?100mg/100gに調整し、且つγ-アミノ酪酸とカルシウムとの含有比率(γ-アミノ酪酸/カルシウム)を5.9?8.1に調整することにより、該トマト含有飲料における後味不快味を改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」(明細書【0011】)
と記載され、請求項14に係る発明は、
「【請求項14】
γ-アミノ酪酸を60?90mg/100gに調整し、
γ-アミノ酪酸/カルシウムを5.9?8.1に調整し、
カルシウム量を18mg/100g以下を調整し、
γ-アミノ酪酸/ナトリウムを4.5?9.5に調整する
ことを特徴とする容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法。」
と記載されるとおり、本件発明は、γ-アミノ酪酸、カルシウム及びナトリウムという配合成分の配合量と配合比に着目し、これを調整することで課題を解決する発明であった。
一方、訂正事項3-2-1により、本件訂正前の特許請求の範囲に「前記容器詰トマト含有飲料における配合量が40?50%になるようにBrixが5のトマト搾汁液を添加することで、」という構成要件を追加することで、訂正後の請求項14に係る発明は、「糖度を逸脱させて製造したトマト含有飲料の不快味を低減するために、通常の範囲の糖度を有するトマト搾汁液を配合して、その配合量を調整すること」(第2上申書6頁10?13行)で課題を解決する発明にされた。
また、本件訂正前の請求項14に係る発明における、γ-アミノ酪酸、カルシウム及びナトリウムという配合成分の配合量と配合比に着目し、これを調整する発明特定事項については、被請求人自ら「本件特許発明におけるγ-アミノ酪酸等の含有量の特定は、・・・本件特許発明を特定する上で必須の構成要件ではなくなる」、「本件特許発明における課題解決の本質を低糖度のトマト搾汁液の配合にある」、「請求項14に記載のγ-アミノ酪酸等の含有量等は、・・・本件発明を特定するのに必須の構成要件ではない」(第2上申書6頁13?20行)と主張していることも考慮すると、請求項14に係る発明は、訂正事項3-2-1により、課題解決手段を異にする別個の発明に変更されたというほかないから、この訂正は「実質上特許請求の範囲を変更する」ものであるといえる。
また、訂正事項3-2-1により、請求項14に係る発明は、課題解決手段を異にする別個の発明に変更されるから、それによって第三者にとって不測の不利益を生じさせることは明らかである。
よって、被請求の上記主張は採用することはできない。

5 まとめ
したがって、本件訂正のうち、請求項〔1-12〕からなる一群の請求項に係る訂正事項1及び請求項13に係る訂正事項2については、特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる事項を目的とし、同法134条の2第9項の規定によって準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕及び請求項13のとおり、請求項〔1-12〕及び請求項13を削除する訂正を認める。
そして、請求項14に係る訂正事項3については、特許法134条の2第9項の規定によって準用する同法126条5項又は6項の規定に適合しないため、訂正後の請求項14について訂正することは認められない。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正の適否が判断されたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?14は、次のとおりである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
γ-アミノ酪酸を60?90mg/100gに調整し、
γ-アミノ酪酸/カルシウムを5.9?8.1に調整し、
カルシウム量を18mg/100g以下を調整し、
γ-アミノ酪酸/ナトリウムを4.5?9.5に調整する
ことを特徴とする容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人は、「特許第5439614号の請求項1乃至14の発明に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として甲1?甲34を提出し、以下に示す無効理由1?8を主張するものであるが、請求項14に係る発明に対しては、そのうち無効理由1?5のみを主張する。

(1) 無効理由1(委任省令違反、実施可能要件違反)
本件特許は、その発明の詳細な説明の記載が、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、その特許は同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。

(2) 無効理由2(サポート要件違反)
本件特許は、その請求項1?14に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。

(3) 無効理由3(明確性要件違反)
本件特許は、その請求項1?14の記載において、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。

(4) 無効理由4(公然実施をされた発明による新規性の喪失)
本件特許の請求項1?14に係る発明は、甲6の1?甲14に基づく、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるから、特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

(5) 無効理由5(公然知られた発明による新規性の喪失)
本件特許の請求項1、4?6、並びに10?14に係る発明は、甲15?甲22、甲26及び甲27に基づく、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるから、特許法29条1項1号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

(6) 無効理由6(進歩性の欠如)
本件特許の請求項7?9に係る発明は、甲15?甲22に基づく公然知られた発明及び甲23に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

(7) 無効理由7(公然実施をされた発明に基づく進歩性の欠如)[平成27年10月2日付け補正許否の決定により許可]
訂正後の本件特許の請求項14に係る発明は、甲6の1?14及び甲16に基づく公然実施をされた発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

(8) 無効理由8(公然知られた発明に基づく進歩性の欠如)[平成27年10月2日付け補正許否の決定により許可]
訂正後の本件特許の請求項14に係る発明は、甲15?甲22、甲26及び甲27に基づく公然知られた発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲1:特許登録原簿
甲2:GABA(γ-アミノ酪酸)の味覚への関与について
甲3:カルシウム摂取を調節する味覚受容体 カルシウムは第6の基本味?
甲4:新しい「日本食品標準成分表2010」による食品成分表改訂最新版
甲5:トマト加工品の日本農林規格最終改正平成21年5月19日農林水産省告示第669号
甲6の1:製品受注データスクリーンショット(受注No.00045164)
甲6の2:製品受領通知書(受注No.00045164)
甲7の1:製品受注データスクリーンショット(受注No.24042630)
甲7の2:製品受領通知書(受注No.24042630)
甲8の1:製品受注データスクリーンショット(受注No.00081514)
甲8の2:製品受領通知書(受注No.00081514)
甲9の1:製品受注データスクリーンショット(受注No.00043844)
甲9の2:製品受領通知書(受注No.00043844)
甲10の1:製品受注データスクリーンショット(受注No.00055264)
甲10の2:製品受領通知書(受注No.00055264)
甲11:株式会社ネットプライス プレスリリース
甲12の1?3:分析試験成績書(検体名:カゴメトマト100%賞味期限2013.12.2)
甲13:報告書(カゴメトマト100%の粘度測定結果について)
甲14:カゴメトマト100% 200m1/12×2H製造管理基準
甲15:カゴメトマト100%の外観写真
甲16:カゴメトマト100%の包装版下
甲17:お問い合わせの件(日本テトラパック株式会社からの確認書)
甲17の1:別紙(包装版下)
甲18:FOODS eBASE マニュアル
甲19:FOODS eBASE Portal よくあるご質問
甲20:eBASE プラグイン(スクリーンショット)
甲21:eB-workflow(スクリーンショット)
甲22:缶入り天然ジュースの物性測定
甲23:特許第5116884号公報
甲24:「アメーラ」(サンファーマーズ)HP
甲25:判定2014-600030に係る平成27年1月28日付け判定請求回答書
甲26:平成18年2月1日付け売買基本契約書(抄)
甲27:「お問い合わせの件」(2014年8月27日付け)
甲27の1:別紙(カゴメトマト100%の商品情報画面)
甲28:請求人従業員の陳述書
甲28の1:資料1(製造管理基準「第3版」)
甲28の2:資料2(同「第5版」)
甲28の3:資料3(同「第4版」II包装荷姿規格)
甲28の4:資料4(同「第5版」II包装荷姿規格)
甲28の5:資料5(2013年製造品賞味期限一覧)
甲28の6:資料6(甲6の2商品の製造日、賞味期限が記録されたDB画面)
甲28の7:資料7(甲7の2商品の製造日、賞味期限が記録されたDB画面)
甲28の8:資料8(甲8の2商品の製造日、賞味期限が記録されたDB画面)
甲28の9:資料9(甲9の2商品の製造日、賞味期限が記録されたDB画面)
甲28の10:資料10(甲10の2商品の製造日、賞味期限が記録されたDB画面)
甲29:「カゴメトマト100% 200m1 賞味期限2013.12.2」の空箱外観写真
甲30:「カゴメトマト100% 200m1 賞味期限2013.12.6」の空箱外観写真
甲31:甲第15号証を再印刷したもの
甲32:日本テトラパック株式会社の回答書
甲32の1:別紙(包装版下)
甲33:本件特許公報
甲34:「栄養基準(平成15年厚生労働省告示第176号)別表2)」

なお、甲6?甲10の各1及び2、甲14、甲17の1、甲21、甲26、甲27の1、甲28の1?4、甲28の6?10、甲32の1は、写しを原本として書証申出されたものである。
また、甲1?甲34の成立につき当事者間に争いはない。

第5 被請求人の主張
被請求人は、「本審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として乙1?乙13を提出し、上記請求人の主張に対し、請求人の主張には何れも理由がないと主張する。

[証拠方法]
乙1:特開2007-60990号公報
乙2:包装資材売買基本契約書
乙3:特開2000-60454号公報
乙4:特開2012-223140号公報
乙5:特開2012-223141号公報
乙6:特開2007-195415号公報
乙7:特開平9-225号公報
乙8:特開2012-223142号公報
乙9:特開2012-223144号公報
乙10:特願2012-173265号に対する平成25年2月12日付けの拒絶理由通知
乙11:J.Food Eng.,2003,59(4),p.361-367
乙12:平成20年(行ケ)第10237号 審決取消請求事件の判決
乙13:FOODS eBASE NB 商品データベースセンター 利用規約

なお、乙2は写しを原本として書証申出されたものである。
また、乙1?乙13の成立につき当事者間に争いはない。

第6 無効理由に対する当審の判断
以下、請求項14に係る発明(以下「本件発明」という。)に対する無効理由1?5について判断する。

1 無効理由1(委任省令違反、実施可能要件)について
(1) 請求人の主張
ア 課題とその解決手段との実質的関係の理解困難性(委任省令違反)
「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善すること」(段落【0010】)と、「トマト本来の呈味を保持したトマト含有飲料におけるγ-アミノ酪酸を55?100mg/100gに調整し、且つγ-アミノ酪酸とカルシウムとの含有比率(γ-アミノ酪酸/カルシウム)を5.9?8.1に調整すること」(段落【0011】)との実質的関係を理解することはできない。・・・「濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘味があり且つトマトの酸味が抑制された新規なトマト含有飲料」に必要なのは、「トマト含有飲料における糖度及び糖酸比を従来のトマト含有飲料から逸脱した特定範囲に調整すること」(段落【0005】)であるにもかかわらず、「糖度」及び「糖酸比」を特定範囲に調整することが「課題を解決する手段」とされていないのは全く理解できない。・・・技術常識として、「γ-アミノ酪酸」の水溶液に対して感じるのは、「甘味」よりも、むしろ「苦味」及び「酸味」である・・・また、「カルシウム」の水溶液に対して感じるのは、好ましい味ではなく、特に、カルシウムイオンに対して感じるのは、金属味又は渋味である・・・当該技術常識を踏まえると、何故、「γ-アミノ酪酸」及び「カルシウム」の量を所定量加えることが「フルーツトマト感」の強化になるのか、理解できない。仮に「γ-アミノ酪酸」及び「カルシウム」の作用が共に「フルーツトマト感」の強化であったとしても、作用が同じものの一方を分子とし、他方を分母として「γ-アミノ酪酸/カルシウム」(【0011】)とすることの技術上の意義は理解できない。(審判請求書「(5-2-1)」)

イ サンプル3?7(実施例1)の再現困難性
サンプル3?7を再現するにあたり、技術常識に基づいても当業者が理解できないのは、「トマト搾汁液A」を具現化する原材料である。・・・本件明細書が開示する「トマト搾汁液A」の配合から「トマト搾汁液A」を再現することはできない。・・・「トマト搾汁液A」を構成する・・・「トマトペースト」、「トマト汁B」、及び「トマト汁C」を具現化する原材料は、何ら開示されていない。・・・「トマト搾汁液A」の各物性値からも「トマト搾汁液A」を再現することはできない。・・・「トマト搾汁液A」は、濃縮トマトを還元したものとは異なる性質を有するトマト搾汁液であると言わざるを得ない。(審判請求書「(5-2-2)」)

ウ サンプル3?7以外の実施の形態の再現困難性
請求項1?14は、「トマト搾汁液B」の配合を発明特定事項としておらず、「トマト搾汁液A」のみからなる容器詰めトマト含有飲料が除外されていない・・・「トマト搾汁液A」のみを用いて調製する方法の開示はない。・・・「γ-アミノ酪酸」の含有量及び「カルシウム量」が相対的に高い「トマト搾汁液A」において、「γ-アミノ酪酸」の含有量を減らす方法も「カルシウム量」を減らす方法も不明である・・・再現するにあたり、過度な試行錯誤は免れない。(審判請求書「(5-2-3)」)

エ 課題の技術的意義の理解困難性
本件発明は、「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善すること」を解決すべき課題とする(本件明細書段落【0010】等)。しかし、「フルーツトマト」は、定義自体が存在しないものであり(甲第24号証)、本件明細書にもどのようなトマトを「フルーツトマト」とするかの定義もなく、また、「フルーツトマトのような味覚」とはいかなる風味を指すのかの定義もされていない。従って、「フルーツトマトのような味覚」とはどのような風味かは曖昧模糊として、これ当業者が理解することはできず、本件発明の課題の技術的意義を理解できず、本件発明を実施することができない(審判請求書31頁11?12行)。・・・当業者は、何が「フルーツトマトのような味覚」であるかを、本件明細書の記載に基づいて理解できないのであるから、上記発明の課題を解決できたものか否かを判断することができず、実施可能要件を欠くものである。
このことは、本件訂正で発明特定事項に加えられた「トマト由来の甘みや濃厚感」にもそのまま当て嵌まる。「トマト由来の甘みや濃厚感」を知覚する客観的評価軸は本件明細書に一切開示されておらず、「濃厚感」とは旨味のことなのか食感のことなのか、或いは鼻に抜ける香気のことなのか、当業者は、かかる一行記載によって、本件発明が具体的にどのような課題解決を志向しているのかを理解できない。(第2弁駁書「6-3-2」)

(2) 被請求人の主張
ア 特許法36条4項1号の規定により、省令委任している特許法施行規則24条の2の規定においては、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を記載すべきものとするが、当該規定は、実施可能要件の有無を判断するに当たっての間接的な判断要素として活用されるよう解釈適用されるべきであって、別個の独立した要件として、形式的に解釈適用されるべきではなく、もとより、特許法施行規則24条の2の求める事項は、発明の詳細な説明中の「課題及びその解決手段」に記載される必要もなく、当業者が発明の技術上の意義を当然に理解できれば足りるのであって、明示的な記載は必要ないと思料する(乙12)。この点、第1答弁書(11頁7行乃至13頁22行)において述べたとおり、本件特許においては、本件訂正明細書の実施形態の記載及び実施例の記載から本件特許発明が所望の効果を奏することは理解できるのであるから、本件特許発明について発明が解決しようとする課題及びその解決手段を理解することができるのは明らかである。(第2答弁書「(2-1-1)」)

イ 特許請求の範囲には単純方法の発明である請求項14のみが記載されることとなった。単純方法の発明について実施をすることができるとは、その方法を使用できることである。本件特許発明14には、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸/カルシウム、カルシウム、及びγ-アミノ酪酸/ナトリウムを所定の範囲内に調製することが規定されており、これらを調製する具体的な方法は、本件特許明細書の段落番号【0014】、【0015】、及び【0019】、並びに、実施例において開示されている。これら開示内容に基づけば、当業者は、本件特許発明14の規定内容に従い、γ-アミノ酪酸、カルシウム、及びナトリウムの量をそれぞれ調整することが可能であり、何の困難もなく本件特許発明14を実施することができる。(第2答弁書「(2-1-2)」)

(3) 当審の判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰トマト含有飲料及びその製造方法、並びに容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方に関する。」
(イ)「【0004】
容器詰野菜飲料は、その主原料であり且つ当該飲料の味を決定するベースとなる野菜があり、これまではニンジンとトマトがベース野菜の役割を主に果たしてきた。・・・トマトは、トマトが本来有する独特の青臭みを有するため搾汁したままでは飲みにくい上に、果汁との相性もニンジンと比べて良いとはいえない。・・・マスキング剤などの添加物を極力使用せずにトマト独特の青臭みが抑制され且つトマト本来の呈味を保持したトマト含有飲料が望まれていた。
【0005】
本発明者らは、特許文献5において、トマト含有飲料における糖度及び糖酸比を従来のトマト含有飲料から逸脱した特定範囲に調整することにより、主原料となるトマト以外の野菜や果汁等を極力配合しなくても濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘味があり且つトマトの酸味が抑制された新規なトマト含有飲料及びその製造方法、並びにトマト含有飲料の酸味抑制方法が得られるという知見に到達した。」
(ウ)「【0008】
かかるトマト含有飲料は、酸味、甘味、濃厚さ及びその総合評価を維持しながらも、容器充填工程における困難性を解決した点において一定程度の効果を得ることができたものの、呈味性や品質のさらなる向上は依然として技術課題である。特に、トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を逸脱させて製造した、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料においては、甘さや濃厚感はあるものの、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善するという技術課題は依然として残されたままであった。」
(エ)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、トマト本来の呈味を保持したトマト含有飲料におけるγ-アミノ酪酸を55?100mg/100gに調整し、且つγ-アミノ酪酸とカルシウムとの含有比率(γ-アミノ酪酸/カルシウム)を5.9?8.1に調整することにより、該トマト含有飲料における後味不快味を改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(オ)「【発明の効果】
【0013】
本発明は、フルーツトマトのような自然な甘味と酸味のバランスを有するトマト含有飲料において、γ-アミノ酪酸を55?100mg/100gに調整し、且つγ-アミノ酪酸とカルシウムとの含有比率(γ-アミノ酪酸/カルシウム)を5.9?8.1に調整することにより、後味不快味が改善したトマト含有飲料を提供することを目的とする。」
(カ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(γ-アミノ酪酸)
本発明のトマト含有飲料は、該飲料100gにおけるγ-アミノ酪酸量が55?100mg/100gであることを特徴とする。
・・・
容器詰トマト含有飲料におけるγ-アミノ酪酸量が100mg/100gを超えるとフルーツトマト感が強化されるものの飲用時後半に喉に残る不快味が出てくることがあるため好ましくない。また、容器詰トマト含有飲料におけるγ-アミノ酪酸量が55mg/100gを下回ると、そもそもフルーツトマト感を感じにくくなるため好ましくない。
・・・
γ-アミノ酪酸量を調整する方法としては、市販のγ-アミノ酪酸量の標準品や製剤等を用いる方法もあるが、全体の味や香りのバランスに悪影響を与える可能性や製造コスト抑制の観点からトマト原料に含まれるもの以外による添加を極力控えるのが好ましく、可能であればこれらを全く添加せずにトマト由来の原料でもって調整するのが最も好ましい。
・・・
【0015】
(カルシウム)
・・・
トマト含有飲料におけるカルシウム量が18mg/100gを超えるとフルーツトマト感が強化されるものの飲用時後半に喉に残る不快味が出てくることがあるため好ましくない。
カルシウム量を調整する方法としては、市販のカルシウム製剤等を用いる方法もあるが、全体の味や香りのバランスに悪影響を与える可能性や製造コスト抑制の観点からトマト原料に含まれるもの以外による添加を極力控えるのが好ましく、可能であればこれらを全く添加せずにトマト由来の原料でもって調整するのが最も好ましい。
・・・
【0017】
(マグネシウム)
・・・
トマト含有飲料におけるマグネシウム量が16mg/100gを超えるとフルーツトマト感が強化されるものの飲用時後半に喉に残る不快味が出てくることがあるため好ましくない。
マグネシウム量を調整する方法としては、市販のマグネシウム製剤等を用いる方法もあるが、全体の味や香りのバランスに悪影響を与える可能性や製造コスト抑制の観点からトマト原料に含まれるもの以外による添加を極力控えるのが好ましく、可能であればこれらを全く添加せずにトマト由来の原料でもって調整するのが最も好ましい。」
(キ)「【0019】
(ナトリウム)
・・・
トマト含有飲料におけるナトリウム量が12.4mg/100gを超えるとフルーツトマト感が強化されるものの飲用時後半に喉に残る不快味が出てくることがあるため好ましくない。
ナトリウム量を調整する方法としては、市販のナトリウム剤や食塩或いは重曹等を用いる方法もあるが、全体の味や香りのバランスに悪影響を与える可能性や製造コスト抑制の観点からトマト原料に含まれるもの以外による添加を極力控えるのが好ましく、可能であればこれらを全く添加せずにトマト由来の原料でもって調整するのが最も好ましい。
・・・
【0021】
(カリウム)
・・・
トマト含有飲料におけるカリウム量が350mg/100gを超えるとフルーツトマト感が強化されるものの飲用時後半に喉に残る不快味が出てくることがあるため好ましくない。」
(ク)「【0050】
(容器詰野菜飲料の製造方法)
本発明の容器詰トマト含有飲料は、上述のトマト搾汁を調製した後、必要であればホモジナイザー処理を行い、その後、必要に応じて水、食塩、香辛料、酸味料、調味料などを加えて味、濃度、成分値などを調整して、殺菌及び容器充填するなどして製造することができる。」
(ケ)「【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施例1:
(実施例1:トマト搾汁液の調製)
トマト搾汁液A及びトマト搾汁液Bを準備し、試験に供するためのサンプルを調製した。
(トマト搾汁液A)
トマトペースト(27.0質量%)、トマト汁B(2.47質量%)、トマト汁C(3.7質量%)の配合割合となるように調整し、目開き0.5?1.0mm程度のメッシュを用いて裏ごしして異物を除去し、重炭酸ナトリウムを適量添加することにより、トマト搾汁液Aを得た。
(トマト搾汁液B)
青果トマトを購入して搾汁することによりトマト搾汁液を準備し、これをトマト搾汁液Bとして用いた(Brix5、γ-アミノ酪酸50mg/100g、カルシウムが7.2mg/100g)。
【0064】
(サンプル調製)
以下の配合割合となるように、トマト搾汁液A?Bを混合・撹拌した。得られたトマト搾汁液混合液をPET容器に充填し、殺菌処理した。]
(コ)「【0065】
(表1)


(サ)「【0066】
<官能評価試験>
トマト含有飲料の官能評価試験は、10人のパネラーに委託して行い、各項目を以下に示す基準で評価したものである。ここで、表中の数値は、10人のパネラーの評価の平均値である。
<飲用時前半のフルーツトマトらしさ>
5点:フルーツトマトらしさが強く感じられる
4点:フルーツトマトらしさが感じられる
3点:フルーツトマトらしさがまあ感じられる
2点:フルーツトマトらしさがあまり感じられない
1点:フルーツトマトらしさが全く感じられない
<飲用時後半に喉に残る不快味低減>
5点:喉に残る不快味が全く感じられない
4点:喉に残る不快味が殆ど感じられない
3点:喉に残る不快味がまあ感じられる
2点:喉に残る不快味が感じられる
1点:喉に残る不快味が非常に感じられる
<飲用後のキレ・残り方>
5点:飲用後のキレ・残り方が非常に良い
4点:飲用後のキレ・残り方が良い
3点:飲用後のキレ・残り方は普通程度
2点:飲用後のキレ・残り方がやや悪い
1点:飲用後のキレ・残り方が非常に悪い
<全体を通してのバランス感>
5点:全体を通してのバランス感が非常に良い
4点:全体を通してのバランス感が良い
3点:全体を通してのバランス感が普通程度
2点:全体を通してのバランス感が悪い
1点:全体を通してのバランス感が非常に悪い
<総合評価>
上記各項目についての評点合計値に基づき、総合評価を算出した。
◎:18?25点(優)
○:15?17点(良)
△:10?14点(可)
×:1?9点(不可)」
(シ)「【0067】
(表2)


(ス)「【0068】
(考察)
サンプル1は飲用時前半にフルーツトマトらしさが全く感じられないばかりでなく、飲用時後半に喉に残る不快味や飲用後のキレ・残り方も決して高い評価が得られるものでなく、全体を通してのバランス感にも欠けるものであった。これに対して、サンプル10やサンプル11は、飲用時前半にフルーツトマトらしさに優れていたものの、飲用時後半に喉に残る不快味や飲用後のキレ・残り方には改善の余地があるものであった。
飲用時後半に喉に残る不快味や飲用後のキレ・残り方において評価が高かったのは、サンプル3?9であり、なかでもサンプル4?7は、いずれの項目においても高評価であるばかりでなく、総合的に評価が高かった。
以上の結果から、所望のトマト含有飲料を得るためには、γ-アミノ酪酸やカルシウムなどのミネラル成分を単独に調整するのではなく、各指標の比率にも着目する必要があることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善した容器詰トマト含有飲料を提供することができる。」

イ 事案に鑑み、まず、請求人の上記「(1)エ」の主張について検討する。
本件発明は「容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法」であり、「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善すること」を解決すべき課題(【0010】等)とするところ、本件発明の実施に際しては、「フルーツトマトのような味覚」がどのような味覚であるかが明確にされる必要があるといえる。
しかしながら、「フルーツトマト」には明確な定義がないと解され(甲24)、「フルーツトマトのような味覚」がどのような味覚であるかは明確でない。
そこで、本件特許明細書の記載を参酌すると、「フルーツトマトのような味覚」に関して以下の記載がみられる(下線は当審にて付与。)。
(ア)「トマト含有飲料における糖度及び糖酸比を従来のトマト含有飲料から逸脱した特定範囲に調整することにより、主原料となるトマト以外の野菜や果汁等を極力配合しなくても濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘味があり且つトマトの酸味が抑制された新規なトマト含有飲料」(【0005】)
(イ)「特に、トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を逸脱させて製造した、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料においては、甘さや濃厚感はあるものの、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善するという技術課題は依然として残されたままであった。」(【0008】)
(ウ)「フルーツトマトのような自然な甘味と酸味のバランスを有するトマト含有飲料」(【0013】)
上記(ア)及び(イ)の記載からは、フルーツトマトのような味覚とは、従来あるいは通常のトマト含有飲料が有する糖度(Brix)及び糖酸比を逸脱した特定範囲に調整することで得られるような甘さや濃厚感はあるものの、飲用時後半に喉に残る不快味があることが窺われる。一方、上記(ウ)の記載からは、フルーツトマトは、自然な甘味と酸味のバランスを有するものであるとされ、「自然」という語が「おのずからそうなっているさま。天然のままで人為の加わらないさま。あるがままのさま。」(広辞苑第六版)を意味することを勘案すると、上記(ウ)で把握されるフルーツトマトのような味覚は、上記(ア)及び(イ)の記載から把握される味覚とは全く異なるものである。
そうすると、もとより明確でない「フルーツトマトのような味覚」について、当業者は、本件特許明細書の記載に基づいても、どのようなものであるかを理解することはできない。
そして、「フルーツトマトのような味覚」がどのようなものであるのかが理解できない以上、「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善すること」について理解できない。
よって、当業者は、「本発明は、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善することを目的とする。」(【0010】)という本件発明の課題の技術的意義を理解することができない。
また、本件特許明細書には、本件発明の実施例としてサンプル1?11が調整され、これらサンプル1?11について、「飲用時前半のフルーツトマトらしさ」という評価項目で官能評価がされている(【0066】、【0067】(表2))。しかしながら、本件特許明細書には、「フルーツトマトらしさ」の定義は明らかにされておらず、仮に、当該「フルーツトマトらしさ」が「フルーツトマトのような味覚」のことであると解しても、上記のとおり当業者はその味覚を理解することができないのであるから、当業者は、サンプル1?11のうちいずれのものが「フルーツトマトのような味覚」を有するものであるかを確認することができない。また、本件発明の実施例における他の評価項目からもサンプル1?11のうちいずれのものが「フルーツトマトのような味覚」を有するものであるかを確認することはできない。
よって、当業者は、本件特許明細書の実施例を参酌しても、本件発明を実施することができない。
したがって、当業者は、本件特許明細書の記載に基づいて、本件発明を実施することができない。

ウ 次に、請求人の上記「(1)ア」の主張について検討する。
特許法36条4項1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則24条の2)は、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、明細書の発明の詳細な説明に記載することを規定するものである。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載についてみると、本件発明は「容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法」であるところ、本件発明の属する技術分野に関して、「本発明は、・・・容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方に関する。」(【0001】)ものであることが記載されている。
そして、本件発明が解決しようとする課題に関して、「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、・・・飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善することを目的とする。」(【0010】)と記載されている。
また、課題を解決する手段に関して、「本発明は、トマト本来の呈味を保持したトマト含有飲料におけるγ-アミノ酪酸を55?100mg/100gに調整し、且つγ-アミノ酪酸とカルシウムとの含有比率(γ-アミノ酪酸/カルシウム)を5.9?8.1に調整することにより、該トマト含有飲料における後味不快味を改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0011】)と記載され、このように成分を調整したものは「飲用時後半に喉に残る不快味低減」の評価が高いことが、実施例のサンプル5?7(【0063】?【0068】、(表2))として記載されている。
そのほか、上記の課題や当該課題を解決する手段に関しては、【発明の効果】の欄に「本発明は、フルーツトマトのような自然な甘味と酸味のバランスを有するトマト含有飲料において、γ-アミノ酪酸を55?100mg/100gに調整し、且つγ-アミノ酪酸とカルシウムとの含有比率(γ-アミノ酪酸/カルシウム)を5.9?8.1に調整することにより、後味不快味が改善したトマト含有飲料を提供することを目的とする。」(【0013】)と記載され、【産業上の利用可能性】の欄に「本発明によれば、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善した容器詰トマト含有飲料を提供することができる。」(【0069】)と記載されている。
このように、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題が記載され、これに対応したサンプルを作製した上で、官能試験に供してその評価実験を行っているから、課題を解決するための手段も記載されている。
しかしながら、上記「イ」で述べたように、「フルーツトマトのような味覚」がどのようなものであるかを当業者は理解できないから、本件発明が解決しようとする課題及びその解決手段として記載された内容を理解することができない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が記載されたものとすることはできず、特許法36条4項1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則24条の2)に規定する要件に違反するものといわざるを得ない。

エ 請求人の上記「(1)イ」の主張について検討する。
特許法36条4項1号は、実施例や比較例に記載された実験を完全に同一の条件で再現し得るまでの記載を要求する趣旨の規定とは解されないから、実施例に用いられた原料を再現できないことのみをもって、実施可能要件を満たしていないとすることはできない。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明に係るγ-アミノ酪酸及びカルシウムについての具体的な調整にあたっては、市販の標準品や製剤等を用いる方法でもよいことが示されるところ(【0014】及び【0015】)、一般的なトマト搾汁液に各成分の市販製剤等を適宜に添加したり、あるいは、加水することにより、各成分の含有量や含有比率を本件発明の範囲内のものに調整すること自体には、困難性があるとはいえない。
そうすると、請求人が主張するように実施例1のサンプルの調整試料である「トマト搾汁液A」の原材料「トマトペースト」、「トマト汁B」及び「トマト汁C」の再現が困難であるとしても、トマト搾汁液A自体の成分組成は、表2にサンプル11として明らかにされているし、それに基づく各サンプルの成分含有量や含有比率も表2に記載されているところ(【0067】)、当業者は、実施例として記載された各サンプルの再現はもちろん、本件発明の範囲に各成分を調整することも可能である。
よって、請求人の上記「(1)イ」の主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。

オ 請求人の上記「(1)ウ」の主張について検討する。
上記「(3)ウ」で述べたとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明に係るγ-アミノ酪酸及びカルシウムについての具体的な調整にあたっては、市販の標準品や製剤等を用いる方法でもよいことが示されるところ(【0014】及び【0015】)、原料となるトマト搾汁液に対しては、各成分の市販製剤等を適宜に添加することにより含有量を増やすことができる一方、各成分の含有量を減らす調整を行いたいときは、適宜に加水すれば可能となることは当業者の技術常識である。
そうすると、請求人が主張する「γ-アミノ酪酸」の含有量及び「カルシウム量」が相対的に高い「トマト搾汁液A」のみを用いた場合においても、適宜に加水するなどして「γ-アミノ酪酸」や「カルシウム量」を減らした上で、表2記載の各サンプルの再現はもちろん、本件発明の範囲に各成分を調整することは可能であって、当業者が過度な試行錯誤を強いられるものではない。
よって、請求人の上記「(1)ウ」の主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、本件特許は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項4号に該当する。
よって、本件発明についての特許は、無効理由1により無効とすべきである。

2 無効理由2(サポート要件違反)について
(1) 請求人の主張
ア 本件発明は、「後味不快味の改善」とともに「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持」することが課題であるにも関わらず(【0010】)、γ-アミノ酪酸とカルシウムの量を所定量に定めて解決できるということが当業者には理解できない。(口頭審理陳述要領書「6-1-2」)

イ 如何なる容器詰トマト含有飲料においても、「γ-アミノ酪酸」、「カルシウム量」、「γ-アミノ酪酸/カルシウム」、「γ-アミノ酪酸/ナトリウム」を調整することで「後味不快味を改善」できると当業者が認識できない。(口頭審理陳述要領書「6-6-3」)

ウ サンプル中のある成分・物性の影響を検討する場合、当該成分・物性以外の条件を揃えた上で、当該成分・物性のみを変化させてその結果を考察することは科学分析における技術常識であるが、本件明細書では、斯かる一変数固定下での他変数変動による分析が行われていないため、本件発明の課題である「後味不快味の低減」に対し、γ-アミノ酪酸、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの量が寄与しているのか、明細書段落【0067】【表2】において分析すらされていない他の成分量が寄与しているのかが、当業者にとって全く理解できないのである。このことは、段落【0067】【表2】中のサンプル6?7を構成する全成分をクレームアップして数値限定の上下限とした本件発明にもそのまま当て嵌まる事項である。(第2弁駁書「6-2-2(2)」)

エ 本件発明は、【表2】に記載のサンプル6、7の成分をクレームアップしたものに止まり、例えば、RI(糖度)、酸分、pH等の物性や、たんぱく質、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン、ショ糖、リコピン等の成分については何ら特定されていない。即ち、技術常識に照らして課題解決に貢献する可能性のある成分、物性を特定していない。(第2弁駁書「6-2-3(2)」)

オ 本件発明(本件訂正後)においてフルーツトマトのような味覚を左右するBrix値が定量的に特定されていない事実は、本件発明が、フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料を提供しようという課題において、これを解決するために必要な事項を発明特定事項として欠いているため、本件発明の記載では当業者において上記課題が解決できることを認識できないとの結論を導く。(第2弁駁書「6-2-4(1)」)

(2) 被請求人の主張
ア 本件発明は「後味不快味の低減方法」であり(【0011】)、γ-アミノ酪酸、カルシウム量、γ-アミノ酪酸/カルシウム、γ-アミノ酪酸/ナトリウムを本件発明で規定するように調整することにより、飲用時後半に喉に残る不快味低減の評価点が最高の値となることが実施例に示されている。
本件発明は、容器詰トマト含有飲料における後味不快味の低減方法におけるγ-アミノ酪酸、カルシウム量、γ-アミノ酪酸/カルシウム、γ-アミノ酪酸/ナトリウムの値を、後味不快味の低減が達成されたサンプル5?7の記載に基づいて限定して規定したものであり、本件発明に規定する構成要件とサンプル5?7との間には解離がないから、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化したものではない。(第2答弁書(2-2))

イ 各成分の含有量や含有比率は、本件特許明細書の表2におけるサンプル6及び7の各測定値に対応するよう訂正されている。すなわち、訂正後の請求項14においては、γ-アミノ酪酸等の含有量や含有比率が本件特許明細書において上記課題が解決されることが実際に裏付けられているサンプル6及7のものに対応するように限定されており、また、後味不快味低減が実現される対象も「フルーツトマトのような味覚を有する容器詰トマト含有飲料」に限定されている。(上申書「6-2.(1)」)

(3) 当審の判断
上記「1(3)ウ」で検討したとおり、本件発明が解決しようとする課題は、「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味を改善すること」であるから、本件発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、実施例としてサンプル1?11を作製して、そのうち「飲用時後半に喉に残る不快味低減」の評価が「4」?「5」であり、かつ、「飲用時前半のフルーツトマトらしさ」が「3」?「5」であり、「総合評価」が「○」又は「◎」である8つのサンプル(サンプル2?9)が上記課題を解決し得るものであることを示すものとして記載されており(【0067】(表2))、そのうち、サンプル3?7におけるγ-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸/カルシウム、γ-アミノ酪酸/ナトリウム及びカルシウム量についての含有量や含有比率の値は、いずれも本件発明に規定された範囲のものとなっている。
しかしながら、これらの成分の含有量や含有比率を本件発明のとおりに調整することで「トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味を改善すること」が実現できるという因果関係や作用機序は、発明の詳細な説明に特段の記載はなく、本件特許出願時の技術常識でもないことから、不明であるし、「フルーツトマトのような味覚」を有するものとなっているかも確認できないものである(上記「1(3)イ」参照)。
また、サンプル中のある成分・物性の影響を検討する場合、当該成分・物性以外の条件を揃えた上で、当該成分・物性のみを変化させてその結果を考察することが一般的である。これに対して、上記サンプル1?11は、特定の成分組成を有するトマト搾汁液A及びトマト搾汁液Bの配合比率を順次変化させて作製したサンプルであるところ、上記サンプル3?7は、本件発明に関する(表2)中の含有量や含有比率も、上記配合比率に応じて順次変化したものとなっている。そうすると、上記サンプル3?7は、どの成分に着目しても、その他の条件が揃ったものとはならないから、結局、上記サンプル3?7からは、上記課題の解決にいかなるものが貢献するかを直ちに特定することはできない。
よって、上記サンプル3?7自体が上記課題を解決しているものであるとしても、当該サンプル3?7に含まれるいかなる成分・物性が上記課題の解決に貢献しているかは明らかでないし、(表2)に記載されていない成分・物性であっても、例えばトマト含有飲料の成分・物性の品質規格として用いられる、RI(糖度・Brix)、酸分、pH等の物性や、たんぱく質、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン類、ショ糖、リコピン等の成分(甲14参照)は、「フルーツトマトのような味覚」、「トマト由来の甘味や濃厚感」又は「飲用時後半に喉に残る不快味」に関わるものとして、上記課題の解決に貢献している可能性は排除できない。
そうすると、本件特許出願時の技術常識に照らしても、上記サンプル3?7の(表2)中のγ-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸/カルシウム、γ-アミノ酪酸/ナトリウム及びカルシウム量についての含有量や含有比率についてのみ特定し、上記サンプル3?7のその他の成分・物性等について何ら特定しない本件発明の範囲まで、上記課題を解決できると認識できる範囲のものとして、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえず、また、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法36条6項1号に規定する要件に適合しておらず、同法123条1項4号に該当する。
よって、本件発明についての特許は、無効理由2により無効とすべきものである。

3 無効理由3(明確性要件違反)について
(1) 請求人の主張
ア 本件発明の発明特定事項は「容器詰トマト含有飲料」であり、「フルーツトマトのような味覚を有する容器詰トマト含有飲料」のみならず、「フルーツトマトのような味覚を有しない容器詰トマト含有飲料」も含まれることは文言上明らかである。他方、本願の課題は「フルーツトマトのような味覚を有するトマト含有飲料において、トマト由来の甘味や濃厚感を維持しつつも、飲用時後半に喉に残る不快味や、これを含めた飲用時に感じる全体のバランス感を改善すること」(【0010】)である。「フルーツトマトのような味覚を有しない容器詰トマト含有飲料」をも含む本件発明の「容器詰トマト含有飲料」は、「γ-アミノ酪酸」や「カルシウム量」等の物性値を調整しただけでは、「トマト由来の甘味や濃厚感を維持」できないから、本件発明は、発明を特定する事項の技術的意味が理解できず、出願時の技術常識を考慮すると発明を特定するための事項が不足していることが明らかである。(審判請求書「(5-4)」)

イ 本件発明の「後味不快味の低減方法」は、どの程度低減されたら「低減方法」の実施となるのかその境界が不明確である。(口頭審理陳述要領書「6-1-3」)

ウ 「フルーツトマトのような」は、定性的な官能表現であり、人によって感じ方が異なるから、その程度が不明確であり、かつ、用語の意味が曖昧な表現である・・・しかも、「フルーツトマト」に属するトマトであっても、その糖度や酸度等は互いに異なる。つまり、本件特許請求の範囲において、特定されるべきは、「フルーツトマトのような甘味と酸味のバランス」ではなく、「フルーツトマトのような甘味と酸味のバランス」に寄与する「物性」及び「その値」である。そもそも、「フルーツトマト」自身、当業界においてどのような物性(糖度、酸度、糖酸比)により定義されるかが決まっているわけではなく、・・・「フルーツトマトのような」呈味を発明特定事項としたその一点において、本件発明の要旨の外延は、益々不明確なものとなった。(第1弁駁書「第7(4)」)。

(2) 被請求人の主張
本件発明は、容器詰トマト含有飲料における後味不快味の低減方法であり、γ-アミノ酪酸等を調整することにより、トマト含有飲料における後味不快味を改善することができることを見出してなされたものである(【0011】)。この観点から、本件発明において、発明特定事項は不足なく規定されており、発明特定事項の技術的意味も明確である。(第2答弁書「7.(2-3)」)

(3) 当審の判断
ア 請求人の上記主張「(1)ア」について検討すると、本件発明の特許請求の範囲の記載においては、「後味不快味の向上方法」を行うに際して、調整の対象となるのは、「容器詰トマト含有飲料」に含まれる「γ-アミノ酪酸」、「カルシウム」及び「ナトリウム」の3成分であって、調整する値は「γ-アミノ酪酸」、「γ-アミノ酪酸/カルシウム」、「カルシウム量」及び「γ-アミノ酪酸/ナトリウム」であることは明確に理解でき、そして、いずれの調整範囲についても、その数値範囲は特定されている。
よって、特許請求の範囲に記載された各事項の意味内容は明確に理解することができ、特許を受けようとする発明は、「方法」として明確に特定されているものと認められる。
なお、請求人の「本件発明は、・・・出願時の技術常識を考慮すると発明を特定するための事項が不足していることが明らかである。」旨の主張は、特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件の趣旨に照らして判断されるべきものである。

イ 請求人の上記主張「(1)イ」について検討すると、発明の詳細な説明に記載された実施例であるサンプル3?7は、「飲用時後半に喉に残る不快味低減」の評価項目において高い評価「4点:喉に残る不快味が殆ど感じられない」ないし「5点:喉に残る不快味が全く感じられない」を得ていることから(【0066】、【0067】(表2))、当該サンプル3?7の成分の含有量及び含有比率を含む数値範囲内を規定する本件発明が、当該数値範囲外のものであって、「飲用時後半に喉に残る不快味低減」の評価項目が「3点」以下のものに比して後味不快味を低減するものであることは明確である。よって、上記主張「(1)イ」は、当を得たものとはいえない。

ウ 請求人の上記主張「(1)ウ」について、請求項14は「フルーツトマトのような味覚」という記載のないものであるから、主張の理由はない。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、本件特許は、本件発明に係る請求項の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさないとはいえず、同法123条1項4号に該当しない。
よって、本件発明についての特許は、無効理由3により無効とすることはできない。

4 無効理由4(公然実施をされた発明による新規性の喪失)について
(1) 公然実施について
甲6?10の各1は、請求人の受注管理データベースの製品受注データを表示した画面のスクリーンショットであり、甲6?10の各2は、請求人の製品受領通知書である。そして、甲6?10の各1及び2の「品名」の欄に記載されている「カゴメ カゴメトマト100% 200ml」(以下「製品1」という。)は、当該製品1についての甲6?10の各1の「受注No」、「納品日」、「届け先名称」、「先方発注No」、「品名コード」、「数量」の記載と甲6?10の各2の「受注No」、「納品日」及び「受領印の日付」、「店名」、「御発注No」、「品名コード」、「数量」の記載を併せみると、請求人により、2013年3月21日に伊藤忠食品株式会社RT市川物流センター(市川市塩浜1-7-2プロロジ1 4階 楽天C内)に対して、同年3月22日にネットプライス出荷センター(厚木市長沼242富士ロジテック長沼倉庫)に対して、同年3月22日に国分株式会社西淀川流通センター量販倉庫(大阪市西淀川区西島1丁目1-60)に対して、同年3月22日に株式会社スハラ食品 大谷地センター(札幌市白石区流通センター1丁目5-3)に対して、及び、同年3月22日に株式会社日本アクセス 北九州支店(北九州市門司区新門司北2-2-7)に対して、それぞれ譲渡されたことが認められる。
一方、甲28は、請求人従業員である松本岳が2016年2月29日に作成した「「カゴメトマト100% 200ml紙パック」について」と題する陳述書であって、甲6?10の各2に記載された製品1の製造日及び賞味期限は請求人の社内データベースに記録されている旨記載されており、請求人の在庫・伝票データベースを表示した画面のスクリーンショットである甲28の6?10からは、「トマト100%200ml/12×2H」についての「品目コード」、「得意先名称」、「納品日」、「伝票No.」、「伝票数量」、「製造日」、「賞味期限」を確認することができ、当該品についてはいずれも製造日2013年3月8日、賞味期限2013年12月2日であることが示されている。
そして、甲28には、「カゴメトマト100% 200ml紙パック」の賞味期間を9ヶ月とすることが製造管理基準に定められていること及び賞味期間9ヶ月を270日として管理していることが記載され、当該製造管理基準である甲28の3及び4には、「製品コード:4047」、「製品名:トマト100%200ml/12×2H」について「賞味期間 9ヶ月」であることが示され、2013年製造品の賞味期間9ヶ月(270日)の賞味期限一覧表である甲28の5には、賞味期限2013年12月2日のものは、2013年3月8日に製造されたものであることが示されている。
そこで、甲28の6?10と甲6?10の各2の製品受領通知書とをそれぞれ照らし合わせてみると、甲28の6?10の「品目コード」、「得意先名称」、「納品日」、「伝票No.」、「伝票数量」は、それぞれ甲6?10の各2の「品名コード」、「店名」、「納品日」及び「受領印の日付」、「出荷No」、「数量」と一致していることから、甲28の6?10の「トマト100%200ml/12×2H」は、製品1と同じものであることが推認される。そうすると、製品1の賞味期限及び製造日は、甲28の6?10に示された賞味期限:2013年12月2日、製造日:2013年3月8日であるものと認められる。
以上より、製品1は、賞味期限が2013年12月2日、製造日が2013年3月8日の容器詰め(紙パック)されたトマト含有飲料であって、本件特許の出願前である2013年3月21日及び22日に日本国内において公然実施(譲渡)をされたものであることが認められる。

(2) 公然実施をされた発明
ア 甲12の1?3は、「カゴメトマト100% 賞味期限2013.12.2」という検体(以下「検体1」という。)について分析した分析試験成績書(2013年5月15日、一般財団法人日本食品分析センター作成)であり、検体1に含まれる成分について、以下の分析結果が記載されている。
γ-アミノ酪酸:66mg/100g
カルシウム:10.7mg/100g
ナトリウム:12.1mg/100g
そして、検体1は、その名称からみて請求人が製造したものと認められるところ、賞味期限2013年12月2日という記載から、検体1の製造日は2013年3月8日であることが理解される(甲28の5参照)。
一方、甲14は、請求人の「カゴメトマト100% 200ml/12×2H 製造管理基準」の「第4版(制定日2013年2月22日)」であり、その「栄養成分表示関連」の表の「品質規格項目[表示成分名]」、「単位」、「内容品質規格表示値」の欄の記載を参照すると、「カゴメトマト100% 200ml」に含まれる成分の栄養成分表示に係る内容品質規格表示値(200.00ml当たり)について、以下の値が記載されている。
ギャバ(γ-アミノ酪酸):140mg
カルシウム:20mg
ナトリウム:23mg
これらの表示値を、一般的なトマトジュースの比重が1.03であることを踏まえて(甲22、甲25)、100g当たりに換算すると、以下のとおりとなる。
ギャバ(γ-アミノ酪酸):67.9mg/100g
カルシウム:9.7mg/100g
ナトリウム:11.2mg/100g
そして、製品1は、その製造管理基準に依拠して製造されることが当然であるところ、甲14の製造管理基準「第4版」は制定日が2013年2月22日であり、甲28の1の同「第3版」及び甲28の2の同「第5版」の制定日を踏まえれば、製造日が2013年3月8日である製品1は、甲14に依拠して製造されたものといえる。
ここで、栄養表示基準(甲34)の3条6号及び別表第2等を参照すると、栄養成分の表示値は、当該製品の栄養成分量の少なくともプラス・マイナス20%程度の誤差の許容範囲内にある値とすることが認められていることを考慮すると、製造日が2013年3月8日であり、甲14の製造管理基準に依拠して製造されたといえる「製品1」は、製造日が同じく2013年3月8日であると認められ、γ-アミノ酪酸、カルシウム、ナトリウムの分析値が甲14の製造管理基準の表示値と略一致し(プラス・マイナス20%程度の誤差の許容範囲内)、「カゴメトマト100%」という検体名の「検体1」と同じものであると認められる。

イ そうすると、製品1に含まれている成分の含有量及び含有比率は、甲12の1?3の分析値を参酌すると、以下のとおりであるといえる。
γ-アミノ酪酸:66mg/100g
カルシウム:10.7mg/100g
ナトリウム:12.1mg/100g
γ-アミノ酪酸/カルシウム=66/10.7=6.17
γ-アミノ酪酸/ナトリウム=66/12.1=5.45

よって、本件特許出願前に公然実施をされた製品1から特定される発明(以下「公然実施発明」という。)は、次のとおりのものである。
「γ-アミノ酪酸を66mg/100gに調整し、
カルシウムを10.7mg/100gに調整し、
γ-アミノ酪酸/カルシウムを6.17に調整し、
γ-アミノ酪酸/ナトリウムを5.45に調整する、
容器詰トマト含有飲料を製造する方法。」

(3) 本件発明と公然実施発明との対比、判断
本件発明と公然実施発明とを対比すると、両者は、γ-アミノ酪酸、カルシウム及びナトリウムを成分として含む容器詰トマト含有飲料を調整する方法についてのものであり、それら成分の配合量や配合比の調整の範囲についても一致するものであるが、本件発明は、容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法であるのに対して、公然実施発明は、容器詰トマト含有飲料を製造する方法である点において、一応相違するものである。
しかしながら、両者とも、γ-アミノ酪酸、カルシウム及びナトリウムを成分として含み、それら成分の配合量や配合比の調整の範囲についても一致するところ、公然実施発明である容器詰トマト含有飲料を製造する方法によれば、当該容器詰トマト含有飲料の後味不快味の向上も当然に実現されているといえるから、上記一応の相違点は、実質的な相違点とはならない。
よって、本件発明は、公然実施発明といえる。

(4) まとめ
以上のとおり、本件発明は、公然実施発明といえるから、特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当する。
よって、本件発明についての特許は、無効理由4により無効とすべきである。

5 無効理由5(公然知られた発明による新規性の喪失)について
(1) 公然知られた事項について
ア 甲16は、請求人が2013年1月8日に承認する旨の署名がなされた「カゴメトマト100%」の包装版下であり、甲16における商品包装図案には、以下の記載を確認することができる。
・左右及び中央の「さらっと甘い」という文字の下並びに上部に「カゴメトマト100%」という大きめの文字
・左側の「カゴメトマト100%がさらっと甘い理由」という文字の下方に「酸味が少なく甘さを感じるトマトを選んで使用」、「すっきりとした味わいでジュースに適した南欧産のトマトを使用」、「カゴメ独自の技術により、トマト4.5個分を使って、さらっと飲みやすいジュースにしました。」という文字
・右側の黒枠囲いの中に「●品名:トマトジュース(濃縮トマト還元)●原材料名:トマト●内容量:200ml」の文字
・右側の赤枠囲いの中に「栄養成分表示(1パック/200ml当たり)」、「ナトリウム 23mg」、「カルシウム 20mg」、「カリウム 610mg」、「GABA 140mg」の文字
一方、甲17は、日本テトラパック株式会社(以下「日本テトラパック」という。)が請求人に宛てた2014年8月27日付けの書面であって、甲16と同一のものと認められる別紙書面(甲17の1)について、(1)日本テトラパックは、2013年1月8日付けで請求人が承認した甲17の1に従い、2013年3月4日に、カゴメトマト100%用に係る包装を製造したこと、(2)上記(1)で製造された包装には、甲17の1に記載されたとおりの栄養成分表示が印刷されていること、及び(3)日本テトラパックは、2013年3月7日には、上記(2)で栄養成分表示を印刷した包装を請求人に納品したこと、が記載されている。
甲26は、請求人と日本テトラパックとの売買基本契約書であって、「第13条(秘密保持)」には、「甲乙のいずれも、本契約の有効期間及びその後も、本契約の締結及び内容を含む本契約の履行中に知る事になった如何なる秘密事項も、第三者に漏らしてはならないものとする。」と記載されている。
甲32は、日本テトラパックが請求人に宛てた2016年3月2日付けの書面であって、甲16及び甲17の1と同一のものと認められる別紙書面(甲32の1)について、甲32の1の「カゴメトマト100%」用包材の内容については、請求人が外部にその製品情報を開示された以降、請求人と日本テトラパックとの間の売買基本契約書(甲26)第13条により秘密保持義務が課されている「秘密事項」ではないと日本テトラパックは認識していること、が記載されている。

イ 甲18は、「FOODS eBASE」なる食の原材料情報・商品情報管理データベースシステムであって、加工食品メーカーの商品データを食品卸業者及び食品小売業に提供することができることを示した書類であり、「FOODS eBASE オプション機能/サービス」のひとつに「eB-workflow 仕様書承認進捗管理機能」があることが記載され、「仕様書情報の承認作業を支援するWeb対応型機能です。進捗状況をビジュアルで確認、承認履歴も管理できます。進捗があった際、担当者に進捗メールが自動配信されます。」という説明がされている。
甲20は、「FOODS eBASE」のeBASEプラグイン画面のスクリーンショットであって、「カゴメトマト100%」の包材についての情報が示されたものである。具体的には、以下の情報が示されていることが確認できる。
・上部左側のカテゴリ選択の右欄に「コープネット(東京)/コープネットドライ」の文字
・左上の「画像・一括表示」の欄に、商品の包材画像及び商品画像
・左下の「一括表示」の欄に「品名 トマトジュース(濃縮トマト還元)」、「原材料名 トマト」、「内容量 200ml」の文字
・右側の「栄養成分包材表示」の欄に「対象名 カゴメトマト 100%」、「※その他入力欄 1本/200ml当たり」、「ナトリウム(mg) 23」、「カルシウム(mg) 20」、「カリウム(mg) 610」、「GABA(mg) 140」の文字
・下部に「訂正元仕様書コード F1703004-L7RS6FRQ-L7RS6FRQ」、「仕様書コード F1703004-L7RS6FRQ-L7RS6FRQ」、「修正日 2013/02/13」の文字
そして、上記「画像・一括表示」の欄の商品の包材画像は、その図案や記載された文字を照らし合わせると、甲16、甲17の1及び甲32の1の包装版下の商品包装図案と同じものであることが確認できる。
甲21は、eB-workflowを表示した画面のスクリーンショットであって、「商品名 カゴメトマト100%」、「規格 200ml」、「訂正元仕様書コード F1703004-L7RS6FRQ-L7RS6FRQ」についてのものであって、「申請テンプレート」が「コープネット」について、「作成者」が「完了日 2013/02/13」に「弊社仕様書を送信いたします。」というコメントが添えられて「完了」していること、及び「生協1次点検」が「完了日 2013/03/04」に「承認済」であることが確認できる。

ウ 甲27の1は、甲20と同様の「FOODS eBASE」のeBASEプラグイン画面のスクリーンショットであって、「画像・一括表示」の欄、「一括表示」の欄及び「栄養成分包材表示」の欄について、甲20と同内容の情報が示されているものである。
そして、甲27は、コープしこく事業連帯機構(以下「コープしこく」という。)が請求人に宛てた2014年8月27日付けの書面であって、(1)コープしこくは、2013年1月4日にeBASE上に登録されたカゴメトマト100%の商品情報画面が甲27の1のとおりであり、当該商品情報画面を1月下旬頃に閲覧したこと、(2)コープしこくは、当該商品情報画面を閲覧するにあたり、当該商品情報に関する何らの秘密保持義務をも負っていないこと、が記載されている。

エ 乙13は、「FOODS eBASE NB 商品データベースセンター 利用規約」であって、以下の規約が記載されている。
・FOODS eBASE NB 商品データベースセンター(以下「当サービス」という。)とは、eBASE株式会社(以下「当社」」という。)が企画開発し、運営提供するサービスの総称であること(第1条1.)
・製品情報とは、主に製造企業で生成される、製品に関する名称・コード・特徴・仕様等の情報であり、当サービス上にて入力または提供される情報のことであること(第1条2.(1))
・食品メーカー会員とは、自己の保有する商品(製品)情報データを当社所定の方法によりWebにアップロードして提供する会員であること(第2条1.(1))
・食品卸会員とは、食品メーカー会員のアップロードした商品(製品)情報データをWeb上で確認する会員であること(第2条1.(2))
・食品小売会員とは、食品メーカー会員が配信した商品(製品)情報データを当社所定の方法によりWebからダウンロードして利用する会員であること(第2条1.(3))
・参加企業は、当社が指定するECサイト事業者やWEBサービス事業者等のサービス連携を行う事業者が当サービスにアクセスして商品情報データを表示すること、また、食品小売会員がサービス連携をしている事業者のサービスにアクセスして、商品情報データを頒布、公衆送信(これに必要な複製を含む)ことを了承するものとすること(第3条)
・食品メーカー会員は、食品小売会員が商品情報データを当サービスよりダウンロードし、これを業務利用目的で複製、頒布することを予め当社に許諾すること(第6条1.(2))
・食品卸会員、食品小売り会員が遵守すべきこととして、当サービスから得た各種情報は、宣伝、広告目的に限り利用できること(第10条1.(1))

オ 上記ア?エから把握される事項について検討すると、「FOODS eBASE」のeBASEプラグイン画面のスクリーンショットに示された「カゴメトマト100%」の包材についての情報(甲20、甲27の1)は、コープネットにより、遅くとも2013年3月4日までに閲覧されたこと(甲20)、また、コープしこくにより2013年1月下旬頃に閲覧されたこと(甲27)が認められる。コープネット及びコープしこくは、「FOODS eBASE NB 商品データベースセンター 利用規約」(乙13)からみて、食品卸会員又は食品小売会員にあたり、「カゴメトマト100%」の包材についての情報を、サービス連携をしている事業者のサービスにアクセスして、頒布、公衆送信(これに必要な複製を含む)することができ(第3条)、また、業務利用目的で複製、頒布することができるのであるから(第6条1.(2))、これらの閲覧は守秘義務を負わずに行われたものと認められる。よって、「FOODS eBASE」のeBASEプラグイン画面のスクリーンショットに示された「カゴメトマト100%」の包材についての情報(甲20、甲27の1)は、2013年1月下旬頃以降、公然知られたものとなったと認められる。
一方、請求人と日本テトラパックとの売買基本契約書の第13条には、「甲乙のいずれも、本契約の有効期間及びその後も、本契約の締結及び内容を含む本契約の履行中に知る事になった如何なる秘密事項も、第三者に漏らしてはならないものとする。」(甲26)と記載され、文言上は、契約上の秘密保持の対象は、抽象的かつ広範であるから、概念上は、甲16の「カゴメトマト100%」の包装版下における商品包装図案の内容についても、秘密保持の対象となり得るものといえる。
しかしながら、「カゴメトマト100%」のような容器詰飲料は、製造メーカーから食品卸や食品小売店を通じて広く一般消費者に対して販売される性質の商品であるところ、当該食品卸や食品小売店は、当該商品の仕入れや販売の検討、一般消費者に対する宣伝・広告に当たり、当該商品の包装図案などの商品情報を事前に知っておく必要があることを考慮すると、「カゴメトマト100%」の包装図案などの商品情報は、その製造・販売前から商談資料等としてもともと第三者への開示が予定されていたものということができ、このことは、「FOODS eBASE」を利用して、請求人が「カゴメトマト100%」の商品情報を掲載し、コープしこくは当該情報を、日本テトラパックにおける当該商品の包装材の製造・納品前である2013年1月下旬頃に閲覧していた(甲20、甲27の1)ことからも窺える。当業者におけるこのような事情を勘案すると、「カゴメトマト100%」の商品情報である商品包装図案の内容は、上記売買基本契約書(甲26)第13条にいう「秘密事項」には該当しないものということができるし、日本テトラパックが、請求人が「カゴメトマト100%」用包材の内容を外部に開示した以降は、当該「秘密事項」ではないと認識していることにも合理性が認められる。
そうすると、甲20及び甲27の1に示された情報と同内容の情報を記載された甲16、甲17の1及び甲32の1の包装版下の商品包装図案については、2013年1月下旬頃以降、請求人と日本テトラパックとの間の売買基本契約書(甲26)第13条により秘密保持義務が課されている「秘密事項」ではないものと認められる。そして、日本テトラパックは、甲17の1の包装版下に従って、2013年3月4日にカゴメトマト100%用に係る包装を製造し、2013年3月7日に当該包装を請求人に納品した。
よって、甲16における商品包装図案に記載された事項については、本件特許の出願日(2013年3月25日)前に公然知られたものと認められる。

(2) 公然知られた発明
甲16における商品包装図案には、上記「(1)ア」で述べたとおり事項が記載されているところ、本件特許出願前に公然知られた甲16の商品包装図案から特定される発明(以下「公知発明」という。)は、次のとおりのものである。
「栄養成分表示(1パック/200ml当たり)が、
ナトリウム 23mg
カルシウム 20mg
GABA 140mg
である、
さらっと飲みやすいパック詰めトマトジュースにする方法。」

(3) 本件発明と公知発明の対比、判断
ア 公知発明は、ナトリウム、カルシウム、GABAが栄養成分表示として表示されるものであり、GABAはγ-アミノ酪酸であることは当業者において明らかであるから、本件発明とは、「ナトリウム、カルシウム及びγ-アミノ酪酸を成分として含む」点において共通するものといえる。
そして、栄養成分表示値から、公知発明において、GABA/カルシウムは140/20=7.00、GABA/ナトリウムは140/23=6.09であることが理解できる。
また、1パック/200ml当たりであるナトリウム、カルシウム及びGABAの栄養成分表示値を、一般的なトマトジュースの比重が1.03であることを踏まえて(甲22、甲25)、100g当たりに換算すると、当該表示値は、ナトリウム:11.17mg/100g、カルシウム:9.71mg/100g、カリウム:296mg/100g、GABA:67.96mg/100gとなる。
また、公知発明の「パック詰めトマトジュース」は、本件発明の「容器詰トマト含有飲料」に相当するから、公知発明と本件発明とは「ナトリウム、カルシウム及びγ-アミノ酪酸を成分として含む容器詰トマト含有飲料」についてのものである点において共通するものである。
そして、本件発明の「後味不快味」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0004】、【0008】)を参酌すると、「飲みにくさ」として把握される感覚であるということができるから、本件発明の「後味不快味の向上方法」は、「飲みにくさの改善」、すなわち「飲みやすくする」ことと軌を一にするものといえる。そうすると、公知発明の「さらっと飲みやすいパック詰めトマトジュースにする方法」と本件発明の「容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法」とは、「容器詰トマト含有飲料を飲みやすくする方法」である点において共通するものといえる。よって、両者は、「ナトリウム、カルシウム及びγ-アミノ酪酸を成分として含む容器詰トマト含有飲料を飲みやすくする方法」である点で一致し、また、γ-アミノ酪酸、カルシウム、γ-アミノ酪酸/カルシウム及びγ-アミノ酪酸/ナトリウムの調整範囲についても一致している。
そうすると、両者は、容器詰トマト含有飲料を飲みやすくする方法について、本件発明が、容器詰トマト含有飲料における後味不快味の向上方法であるのに対して、公知発明が、さらっと飲みやすいパック詰めトマトジュースにする方法である点において、一応相違するものであるが、公知発明においても、本件発明の調整範囲内に各成分が調整されたものであるところ、さらっと飲みやすいパック詰めトマトジュースが、飲みやすさとして、後味不快味の向上したものともなっているといえるから、上記一応の相違点は、実質的な相違点とはならない。
よって、本件発明は、公知発明といえる。

(4) まとめ
以上のとおり、本件発明は、公知発明といえるから、特許法29条1項1号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当する。
よって、本件発明についての特許は、無効理由5により無効とすべきである。

第7 本件特許の請求項1?13についての本件審判の請求について
上記「第2」のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕及び請求項13のとおり、請求項〔1-12〕及び請求項13を削除する訂正が認められることより、本件特許の請求項1?12及び請求項13についての本件審判の請求は、その対象が存在しないものとなった。
したがって、本件特許の請求項1?12及び請求項13についての本件審判の請求は、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法135条の規定により、却下すべきものである。

第8 むすび
以上のとおり、本件発明についての特許は、無効理由1、無効理由2、無効理由4及び無効理由5により無効とすべきものである。
また、本件特許の請求項1?12及び請求項13についての本件審判の請求は、却下すべきものである。
審判に関する費用は、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
トマト含有飲料が通常に有するBrix範囲を高くなるほうに逸脱させて製造した、トマト以外の野菜を原料として使用せず、且つ果汁を含まない容器詰トマト含有飲料における、飲用後半に喉に残る後味不快味を低減する方法であって、
前記容器詰トマト含有飲料における配合量が40?50%となるようにBrixが5のトマト搾汁液を添加することで、
γ-アミノ酪酸を80.00?86.00mg/100gに調整し、
カルシウムを12.25?13.26mg/100gに調整し、
マグネシウムを12.65?13.3mg/100gに調整し、
カリウムを295?308mg/100gに調整し、
ナトリウムを11.48?11.65mg/100gに調整し、
カルシウム+マグネシウム+カリウム+ナトリウムを331.55?346.04に調整し、
(カルシウム+マグネシウム+カリウム+ナトリウム)/γ-アミノ酪酸を4.02?4.14に調整し、
γ-アミノ酪酸/カルシウムを6.49?6.53に調整し、
γ-アミノ酪酸/マグネシウムを6.32?6.47に調整し、
γ-アミノ酪酸/ナトリウムを6.87?7.49に調整し、
γ-アミノ酪酸/カリウムを0.27?0.28に調整することを特徴とする、方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-02-14 
結審通知日 2017-02-16 
審決日 2017-02-28 
出願番号 特願2013-62978(P2013-62978)
審決分類 P 1 113・ 112- ZAB (A23L)
P 1 113・ 536- ZAB (A23L)
P 1 113・ 537- ZAB (A23L)
P 1 113・ 111- ZAB (A23L)
P 1 113・ 121- ZAB (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 晋也藤井 美穂  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
千壽 哲郎
登録日 2013-12-20 
登録番号 特許第5439614号(P5439614)
発明の名称 容器詰トマト含有飲料及びその製造方法  
代理人 北谷 賢次  
代理人 松山 智恵  
代理人 遠山 友寛  
代理人 岩坪 哲  
代理人 竹内 工  
代理人 遠山 友寛  
代理人 北谷 賢次  
代理人 速見 禎祥  
代理人 松山 智恵  
代理人 竹内 工  
代理人 中村 勝彦  
代理人 中村 勝彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 宮下 洋明  
代理人 内藤 和彦  
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